(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記画像処理部は、さらに、再抽出された前記一方の特徴量に基づいて生成した第1の特徴量画像データと、前記他方の特徴量に基づいて生成した第2の特徴量画像データとの差分を表す差分画像データを生成することを特徴とする請求項9に記載の超音波観測装置。
前記画像処理部は、さらに、前記Bモード画像データに基づくBモード画像と前記特徴量画像データに基づく特徴量画像との少なくとも1つと、前記合成画像データに基づく合成画像とを含む画面を表す表示用の画像データを生成することを特徴とする請求項11に記載の超音波観測装置。
前記画像処理部は、前記一方の特徴量が再抽出された場合に、さらに、再抽出された前記一方の特徴量と前記他方の特徴量とを対比させたグラフ又は表を表す画像データを生成することを特徴とする請求項2に記載の超音波観測装置。
前記演算部は、前記受信した超音波に対して周波数スペクトル解析を行うことにより周波数スペクトルを算出し、該周波数スペクトルに対する近似処理の結果を用いて前記特徴量を抽出することを特徴とする請求項1に記載の超音波観測装置。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る超音波観測装置、超音波観測装置の作動方法、及び超音波観測装置の作動プログラムの実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、これらの実施の形態により本発明が限定されるものではない。また、各図面の記載において、同一部分には同一の符号を附して示している。
【0030】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る超音波観測装置の構成例を示すブロック図である。同図に示す超音波観測装置1は、超音波を用いて検体を観測する装置である。また、
図2は、超音波観測装置1の構成例を示す模式図である。
【0031】
超音波観測装置1は、外部に超音波パルスを出力するとともに、外部で反射された超音波エコーを受信する超音波探触子2と、該超音波探触子2との間で電気信号の送受信を行う送受信部3と、超音波エコーを変換した電気的なエコー信号に対して所定の演算処理を施す演算部4と、超音波エコーを変換した電気的なエコー信号に対応する画像データの生成を行う画像処理部5と、当該超音波観測装置1に対する各種情報の入力を受け付ける入力部6と、液晶又は有機EL等からなる表示パネルを用いて実現され、画像処理部5が生成した画像を含む各種情報を表示する表示部7と、エコー信号に対する演算処理及び画像処理にそれぞれ用いられるパラメータや、これらの処理の結果等の各種情報を記憶する記憶部8と、超音波観測装置1の動作制御を行う制御部9と、患者150に対する超音波探触子2の相対的な位置関係を表す相対位置情報を取得する位置情報取得部としてのセンサ部10とを備える。
【0032】
超音波探触子2は、送受信部3から受信した電気的なパルス信号を超音波パルス(音響パルス信号)に変換して送信すると共に、検体で反射された超音波エコーを受信して電気的なエコー信号に変換する複数の超音波振動子からなる信号変換部21と、当該超音波探触子2の位置を検知するためのマーカ部22とを有する。超音波探触子2は、複数の超音波振動子に対するメカ的な制御により所定の方向に超音波を送信して検体を走査するものであってもよいし(機械走査式とも呼ばれる)、複数の超音波振動子に対する電子的な制御により所定の方向に超音波を送信して検体を走査するものであってもよい(電子走査式とも呼ばれる)。
【0033】
図2に示すように、実施の形態1においては、患者150の体内に挿入される挿入部11aの先端部に超音波探触子2を設け、超音波により患者150の体内を観測する超音波内視鏡11に本発明を適用する例を説明する。もちろん、本発明は一般的な体外式超音波探触子に適用することも可能である。
【0034】
マーカ部22は、後述するセンサ部10によって検出可能な部材によって形成される。本実施の形態1のように、超音波探触子2を患者150の体内に挿入する場合、一例として、永久磁石や、電流が流れることにより磁界を発生するコイルのように、患者150の体外から検出可能な磁界発生部材によってマーカ部22を形成すると良い。
【0035】
送受信部3は、超音波探触子2と電気的に接続され、パルス信号を超音波探触子2に送信するとともに、超音波探触子2からエコー信号を受信する。より詳細には、送受信部3は、予め設定された波形及び送信タイミングに基づいてパルス信号を生成し、この生成したパルス信号を超音波探触子2へ送信する。また、送受信部3は、受信したエコー信号に増幅、フィルタリング等の処理を施した後、A/D変換することによってデジタルRF信号を生成して出力する。なお、超音波探触子2が電子走査式である場合、送受信部3は、複数の超音波振動子に対応したビーム合成用の多チャンネル回路を有する。以下において、送受信部3により生成されたデジタルRF信号のことを音線データという。
【0036】
演算部4は、送受信部3から出力された音線データから特徴量を抽出する。言い換えると、超音波エコーの受信方向における検体の特徴量を取得する。本実施の形態1においては、特徴量の一例として周波数特徴量を抽出する。より詳細には、本実施の形態1における演算部4は、送受信部3が出力した音線データに高速フーリエ変換(FFT)を施して周波数解析を行うことにより周波数スペクトルを算出する周波数解析部41と、周波数解析部41が算出した各箇所の周波数スペクトルに対し、回帰分析に基づく近似処理及び超音波が伝播する際に該超音波の受信深度および周波数に応じて発生する減衰の寄与を削減する減衰補正処理を行うことにより、検体の特徴量を抽出する特徴量抽出部42と、を有する。
【0037】
周波数解析部41は、各ラインの音線データに対し、所定のデータ量からなるFFTデータ群を高速フーリエ変換することによって音線上の複数の箇所(データ位置)における周波数スペクトルを算出する。一般に、周波数スペクトルは、検体の組織性状によって異なる傾向を示す。これは、周波数スペクトルが、超音波を散乱する散乱体としての検体の大きさ、密度、音響インピーダンス等と相関を有しているためである。なお、本実施の形態1において、「組織性状」とは、例えば癌、内分泌腫瘍、粘液性腫瘍、正常組織、脈管などのいずれかである。
【0038】
特徴量抽出部42は、回帰分析によって周波数スペクトルを一次式(回帰直線)で近似することにより、この近似した一次式を特徴付ける減衰補正前の特徴量(以下、補正前特徴量という)を抽出する。具体的には、特徴量抽出部42は、まず、一次式の傾きa
0および切片b
0を補正前特徴量として抽出する。なお、近似部124は、傾きa
0および切片b
0以外の補正前特徴量として、周波数帯域(f
L<f<f
H)の中心周波数f
M=(f
L+f
H)/2における強度(Mid-band fitともいう)c
0=a
0f
M+b
0を算出してもよい。
【0039】
3つの特徴量のうち、傾きa
0は、超音波の散乱体の大きさと相関を有し、一般に散乱体が大きいほど傾きが小さな値を有すると考えられる。また、切片b
0は、散乱体の大きさ、音響インピーダンスの差、散乱体の密度(濃度)等と相関を有している。具体的には、切片b
0は、散乱体が大きいほど大きな値を有し、音響インピーダンスが大きいほど大きな値を有し、散乱体の密度(濃度)が大きいほど大きな値を有すると考えられる。中心周波数f
Mにおける強度(以下、単に「強度」という)c
0は、傾きa
0と切片b
0から導出される間接的なパラメータであり、有効な周波数帯域内の中心におけるスペクトル強度を与える。このため、強度c
0は、散乱体の大きさ、音響インピーダンスの差、散乱体の密度に加えて、Bモード画像の輝度とある程度の相関を有していると考えられる。なお、特徴量抽出部42が算出する近似多項式は一次式に限定されるわけではなく、二次以上の近似多項式を用いることも可能である。
【0040】
続いて、特徴量抽出部42は、超音波が伝播する際に該超音波の受信深度及び周波数に応じて発生する減衰の寄与を削減する減衰補正処理を行う。
一般に、超音波の減衰量A(f,z)は、
A(f,z)=2αzf ・・・(1)
と表される。ここで、αは減衰率であり、zは超音波の受信深度であり、fは周波数である。式(1)からも明らかなように、減衰量A(f,z)は、周波数fに比例している。減衰率αの具体的な値は、観察対象が生体である場合、0.0〜1.0(dB/cm/MHz)、より好ましくは0.3〜0.7(dB/cm/MHz)であり、生体の部位に応じて定まる。例えば、観察対象が膵臓である場合には、α=0.6(dB/cm/MHz)と定めることがある。なお、本実施の形態1において、減衰率αの値を入力部6からの入力によって設定または変更可能な構成としてもよい。
【0041】
特徴量抽出部42は、近似処理により取得した補正前特徴量(傾きa
0,切片b
0,強度c
0)を、以下のように減衰補正することによって特徴量を抽出する。
a=a
0+2αz …(2)
b=b
0 …(3)
c=c
0+2αzf
M(=af
M+b) …(4)
式(2)、(4)からも明らかなように、特徴量抽出部42は、超音波の受信深度zが大きいほど、補正量が大きい補正を行う。また、式(3)によれば、切片に関する補正は恒等変換である。これは、切片が周波数0(Hz)に対応する周波数成分であって減衰の影響を受けないためである。
【0042】
補正済みの特徴量に対応する直線は、次式によって表される。
I=af+b=(a
0+2αz)f+b
0 …(5)
この式(5)からも明らかなように、補正済みの特徴量に対応する直線は、補正前特徴量に対応する直線と比較して、傾きが大きく、かつ切片が同じである。
【0043】
なお、より好ましくは、演算部4に、送受信部3が出力した音線データに対して受信深度によらず増幅率を一定とする増幅補正を行う増幅補正部が設けられる。ここで、送受信部3においては、通常、アナログ信号波形の振幅を全周波数帯域にわたって均一に増幅させるSTC(Sensitivity Time Control)補正が行われる。超音波の振幅を利用するBモード画像を生成する際には、STC補正を行うことによって十分な効果を得ることができる一方で、超音波の周波数スペクトルを算出するような場合には、超音波の伝播に伴う減衰の影響を正確に排除できるわけではない。この問題を解決するには、Bモード画像を生成する際にSTC補正を施した受信信号を出力する一方、周波数スペクトルに基づいた画像を生成する際に、Bモード画像を生成するための送信とは異なる新たな送信を行い、STC補正を施していない受信信号を出力することが考えられる。ところがこの場合には、受信信号に基づいて生成される画像データのフレームレートが低下してしまうという問題がある。そこで、生成される画像データのフレームレートを維持しつつ、Bモード画像用にSTC補正を施した信号に対して一度STC補正の影響を排除するために、周波数解析部41の前段において、増幅率の補正を行う。
【0044】
画像処理部5は、音線データにおける振幅を輝度に変換して表示するBモード画像データを生成するBモード画像データ生成部51と、音線データから抽出された特徴量を輝度に変換して表示する特徴量画像データを生成する特徴量画像データ生成部52と、同一の患者に対する過去の検査において記憶された画像データとの差異を表す差分画像データを生成する比較画像データ生成部53と、これらの各部において生成された画像データを用いて、表示用の画像データを作成する表示画像データ生成部54と、を有する。
【0045】
Bモード画像データ生成部51は、デジタルRF信号(音線データ)に対してバンドパスフィルタ、対数変換、ゲイン処理、コントラスト処理等の公知の技術を用いた信号処理を行うとともに、表示部7における画像の表示レンジに応じて定まるデータステップ幅に応じたデータの間引き等を行うことによってBモード画像データを生成する。
【0046】
本実施の形態1において、特徴量画像データ生成部52は、特徴量抽出部42が抽出した周波数特徴量を画素値に変換することにより、特徴量画像データを生成する。この特徴量画像データにおいて各画素に割り当てられる情報は、周波数解析部41が周波数スペクトルを算出する際のFFTデータ群のデータ量に応じて定められる。具体的には、例えば1つのFFTデータ群のデータ量に対応する画素領域には、そのFFTデータ群から算出される周波数スペクトルの特徴量に対応する情報が割り当てられる。なお、本実施の形態1において、特徴量画像データを生成する際に使用する特徴量の数は任意に設定することが可能である。
【0047】
比較画像データ生成部53は、リアルタイム(最新)の観測点において抽出された特徴量に基づく特徴量画像データと、データ選択部92により選択されたデータに含まれる特徴量画像データ(即ち、最新の観測点と同一又は近傍の過去の観測点における特徴量画像データ)との差分を算出することにより、差分画像データを生成する。
【0048】
表示画像データ生成部54は、リアルタイム(最新)の観測点において抽出された特徴量と、データ選択部92により選択されたデータに含まれる特徴量とを対比するグラフ又は表を表す画像データや、Bモード画像データと差分画像データとを用いた合成画像データを生成し、これらの画像データに基づく画面を表示部7に表示するための画像データを作成する。
【0049】
入力部6は、キーボード、マウス、タッチパネル、カードリーダ等のインタフェースを用いて実現され、操作者等により外部からなされた操作に応じた信号を制御部9に入力する。具体的には、入力部6は、患者150を特定するための患者識別情報や、関心領域の設定指示や、各種動作の開始指示等を受け付け、これらの情報や指示を表す信号を制御部9に入力する。ここで、関心領域とは、表示部7に表示されたBモード画像に対して、超音波観測装置1の操作者が入力部6によって指定する画像中の領域のことである。
【0050】
記憶部8は、実施の形態1に係る超音波観測装置1の作動プログラムや所定のOSを起動するプログラム等が予め記憶されたROM、及び各処理において用いられるパラメータやデータ等を記憶するRAM等を用いて実現される。より詳細には、記憶部8は、周波数解析部41が行う周波数解析処理の際に使用する窓関数を記憶する窓関数記憶部81と、観測が行われた観測点ごとに、周波数解析結果を含む検査データを記憶する検査データ記憶部82と、を有する。
【0051】
窓関数記憶部81は、Hamming、Hanning、Blackmanなどの窓関数のうち少なくともいずれか一つの窓関数を記憶している。
【0052】
図3は、検査データ記憶部82が記憶する検査データのデータ構造を説明するための模式図である。
図3においては、患者150内の臓器(食道151、胃152、肝臓153、膵臓154)と、該臓器内において超音波観測が行われた観測点P1〜P4に関する記録データとを関連付けて示している。
【0053】
図3に示すように、検査データ記憶部82は、患者150に対して実施された1回の検査ごとに、患者150を特定するための患者識別情報(患者ID、患者名等)と、検査を特定するための検査識別情報(検査ID、検査日時等)と、観測点P1〜P4ごとに作成された記録データD(P1)〜D(P4)とを格納する。各記録データD(P1)〜D(P4)は、観測点P1〜P4の位置情報、観測点P1〜P4に関して画像処理部5が生成した画像データ、観測点P1〜P4に関して演算部が取得した特徴量(例えば周波数特徴量)、該特徴量を取得する際に用いられた演算パラメータ、画像データ生成の際に用いられた画像処理パラメータ、過去の検査との間における特徴量の対比結果等を含むデータセットである。このうち、画像データは、Bモード画像データや、特徴量画像データや、差分画像データを含む。また、演算パラメータは、特徴量を抽出するための関心領域の大きさ及び位置、減衰補正の係数、周波数スペクトルの近似方法、窓関数等を含む。画像処理パラメータは、Bモード画像及び特徴量画像を生成するためのゲイン、コントラスト、ガンマ補正係数等を含む。
【0054】
制御部9は、入力部6から入力された関心領域の設定指示に従ってBモード画像に対して関心領域を設定する関心領域設定部91と、患者150に対する超音波探触子2の相対位置情報に基づいて記憶部8から所定の条件を満たす情報を取得するデータ選択部92と、センサ部10から出力された情報に基づき、患者150に対する超音波探触子2の相対的な位置座標を算出する位置情報算出部93と、演算部4における演算処理及び画像処理部5における画像処理の実行を制御する実行制御部94と、表示部7における表示動作を制御する表示制御部95と、を有する。
【0055】
データ選択部92は、位置情報算出部93が算出した超音波探触子2の相対的な位置座標に基づいて記憶部8に記憶された検査データを検索することにより、検査対象の患者150と同一の患者に対して過去に実施された検査において取得された、最新の観測点と同一又は近傍の観測点に関するデータを選択する。
【0056】
位置情報算出部93は、患者位置情報取得部101から出力された情報に基づいて患者150の位置座標を算出し、基準位置情報として記憶部8に記憶させると共に、探触子位置情報取得部102から出力された情報に基づいて超音波探触子2の位置座標を算出し、さらに、基準位置情報をもとに超音波探触子2の位置座標を患者150に対する相対位置座標に変換する。そして、この相対位置座標を、観測中の部位に関するデータと関連づけて、該観測点の位置情報として記憶部8に記憶させる。
【0057】
センサ部10は、患者150の位置や姿勢を取得する患者位置情報取得部101と、超音波探触子2の位置や姿勢を取得する探触子位置情報取得部102と、を有する。
【0058】
図2に示すように、患者位置情報取得部101は、例えば、2台の光学カメラ101aと、患者150の体表に装着された基準マーカ101bとによって構成される。基準マーカ101bとしては、例えば、目立つ色で彩色されたカラーボールやカラー円盤等、光学カメラ101aで写した画像内において容易に検出可能な物体が用いられる。基準マーカ101bは、患者150の体表の所定の少なくとも3か所に配置される。2台の光学カメラ101aは、これらの基準マーカ101bが各視野内に入り、且つ、互いに異なる方向からこれらの基準マーカ101bを撮像可能な位置に配置されている。
【0059】
各光学カメラ101aは、基準マーカ101bを撮像することにより生成した画像データを出力する。これに応じて、位置情報算出部93は、基準マーカ101bが写った2つの画像の各々から基準マーカ101bの位置を検出し、公知のステレオビジョンの手法により各基準マーカ101bの位置を測定する。それによって得られた少なくとも3つの基準マーカ101bの位置情報を、当該検査における患者150の位置情報(基準位置情報)として記憶部8に記憶させる。
【0060】
なお、患者位置情報取得部101の構成は、上述した光学カメラ101a及び基準マーカ101bからなる構成に限定されない。例えば、磁石からなる少なくとも3つの基準マーカと、これらの基準マーカから発生する磁界を互いに異なる位置において検出する複数の磁気センサとによって患者位置情報取得部101を構成しても良い。
【0061】
探触子位置情報取得部102は、超音波探触子2に設けられたマーカ部22に応じて構成される。例えばマーカ部22が永久磁石やコイルによって形成される場合、探触子位置情報取得部102は、複数の磁気センサによって構成される。この場合、探触子位置情報取得部102は、マーカ部22から発生した磁界を検出し、該磁界の強度を表す検出信号を出力する。これに応じて、位置情報算出部93は、マーカ部22の位置座標を算出する。さらに、位置情報算出部93は、基準位置情報をもとに、マーカ部22の位置座標を相対位置座標に変換し、その時点における超音波探触子2の相対位置情報として出力する。
【0062】
このようなセンサ部10と、上述した位置情報算出部93とが、患者150に対する超音波探触子2の相対的な位置を表す相対位置情報を取得する相対位置情報取得手段を構成する。
【0063】
以上の機能構成を有する超音波観測装置1の超音波探触子2及びセンサ部10以外の構成要素は、演算及び制御機能を有するCPUを備えたコンピュータ1aを用いて実現される。超音波観測装置1が備えるCPUは、記憶部8が記憶、格納する情報及び上述した超音波観測装置1の作動プログラムを含む各種プログラムを記憶部8から読み出すことにより、本実施の形態1に係る超音波観測装置1の作動方法に関連した演算処理を実行する。
【0064】
なお、本実施の形態1に係る超音波観測装置の作動プログラムは、ハードディスク、フラッシュメモリ、CD−ROM、DVD−ROM、フレキシブルディスク等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して広く流通させることも可能である。
【0065】
次に、超音波観測装置1の動作について説明する。
図4は、超音波観測装置1の動作を示すフローチャートである。
まず、ステップS10において、超音波観測装置1は、患者150の位置を表す基準位置情報を取得する。即ち、
図2に示すように、少なくとも3つの基準マーカ101bを2つの光学カメラ101aによって撮像し、それによって得られた画像から基準マーカ101bの位置を測定し、この測定結果を基準位置情報とする。基準マーカ101bの数を少なくとも3つとすることで、患者150の体表の所定位置を通る平面を基準面として設定することができる。
【0066】
続くステップS11において、超音波観測装置1は、患者ID、患者名、生年月日、性別等を含む患者識別情報を取得する。超音波観測装置1は、これらの患者識別情報を、入力部6に対してなされた入力操作に従って取得する。具体的には、キーボードに対するテキスト入力や所定のマウス操作に従って患者識別情報を取得することができる。或いは、患者のカルテに記載されたバーコードをバーコードリーダによって読み取ることにより患者識別情報を取得しても良い。さらには、ネットワークサーバを介して患者識別情報を取得しても良い。この後、
図5に示すように、超音波内視鏡11の挿入部11aを患者150内に挿入する。
【0067】
ステップS12において、フリーズを解除する指示信号が入力部6から入力されると(ステップS12:Yes)、超音波観測装置1は、超音波探触子2の位置情報の測定を開始する(ステップS13)。即ち、制御部9の制御に従って探触子位置情報取得部102が作動を開始し、これに応じて、位置情報算出部93が、探触子位置情報取得部102から出力された検出信号を取得してマーカ部22の位置座標を算出すると共に、基準位置情報をもとに患者150に対する超音波探触子2の相対位置情報を算出する。
【0068】
一方、フリーズを解除する指示信号が入力されない場合(ステップS12:No)、超音波観測装置1は動作を終了する。
【0069】
ステップS13に続くステップS14において、超音波観測装置1は、超音波探触子2によって新規の検体の測定を行う。即ち、超音波探触子2から検体に向けて超音波パルスを送信すると共に、該検体によって反射された超音波エコーを受信し、該超音波エコーを電気信号に変換してさらにデジタル信号に変換することにより音線データを取得する。
【0070】
続くステップS15において、Bモード画像データ生成部51は、ステップS14において取得した音線データをもとに、Bモード画像データを生成する。Bモード画像は、色空間としてRGB表色系を採用した場合の変数であるR(赤)、G(緑)、B(青)の値を一致させたグレースケール画像である。
【0071】
このとき、関心領域の設定がなされていない場合(ステップS16:No)、制御部9は、Bモード画像データ生成部51が生成したBモード画像データをもとに、Bモード画像を表示部7に表示させる制御を行う(ステップS17)。
図6は、Bモード画像の表示例を示す模式図である。
図6に示す表示画面200は、ID、名前、性別等の患者識別情報が情報表示領域201と、画像表示領域202とを含む。この画像表示領域202に、超音波探触子2が受信した超音波エコーに基づくBモード画像203が表示される。
【0072】
その後、データを記録する指示信号が入力部6から入力された場合(ステップS18:Yes)、制御部9は、このときの超音波探触子2の相対位置情報を観測点の位置情報として、Bモード画像データ及び該Bモード画像の生成時に用いられた画像処理パラメータと共に1つのデータセットとして検査データ記憶部82に記憶させる(ステップS19)。その後、超音波観測装置1の動作はステップS20に移行する。一方、データを記録する指示信号が入力されない場合(ステップS18:No)、超音波観測装置1の動作はそのままステップS20に移行する。
【0073】
ステップS20において、動作を終了する指示が入力部6によって入力されたとき(ステップS20:Yes)、超音波観測装置1は動作を終了する。これに対し、動作を終了する指示が入力部6によって入力されないとき(ステップS20:No)、超音波観測装置1の動作はステップS13に戻る。
【0074】
一方、ステップS16において、入力部6を介して関心領域が設定された場合(ステップS16:Yes)、演算部4は、ステップS14において取得した音線データに対する特徴量解析を行う(ステップS21)。本実施の形態1においては、特徴量解析の一例として、周波数解析部41が、FFT演算による周波数解析を行うことによって周波数スペクトルを算出する。なお、周波数解析においては、画像の全領域を関心領域として設定することも可能である。
【0075】
図7は、特徴量解析処理(周波数解析処理)を示すフローチャートである。
まず、周波数解析部41は、解析対象の音線を識別するカウンタkをk
0とする(ステップS211)。
【0076】
続いて、周波数解析部41は、FFT演算用に取得する一連のデータ群(FFTデータ群)を代表するデータ位置(受信深度に相当)Z
(k)の初期値Z
(k)0を設定する(ステップS212)。
図8は、1つの音線のデータ配列を模式的に示す図である。同図に示す音線SR
kにおいて、白または黒の長方形は、1つのデータを意味している。音線SR
kは、送受信部3が行うA/D変換におけるサンプリング周波数(例えば50MHz)に対応した時間間隔で離散化されている。
図8では、音線SR
kの1番目のデータ位置を初期値Z
(k)0として設定した場合を示しているが、初期値の位置は任意に設定することができる。
【0077】
その後、周波数解析部41は、データ位置Z
(k)のFFTデータ群を取得し(ステップS213)、取得したFFTデータ群に対し、窓関数記憶部81が記憶する窓関数を作用させる(ステップS214)。このようにFFTデータ群に対して窓関数を作用させることにより、FFTデータ群が境界で不連続になることを回避し、アーチファクトが発生するのを防止することができる。
【0078】
続いて、周波数解析部41は、データ位置Z
(k)のFFTデータ群が正常なデータ群であるか否かを判定する(ステップS215)。ここで、FFTデータ群は、2のべき乗のデータ数を有している必要がある。以下、FFTデータ群のデータ数を2
n(nは正の整数)とする。FFTデータ群が正常であるとは、データ位置Z
(k)がFFTデータ群で前から2
n-1番目の位置であることを意味する。換言すると、FFTデータ群が正常であるとは、データ位置Z
(k)の前方に2
n-1−1(=Nとする)個のデータがあり、データ位置Z
(k)の後方に2
n-1(=Mとする)個のデータがあることを意味する。
図8に示す場合、FFTデータ群F
2、F
3はともに正常である。なお、
図8ではn=4(N=7,M=8)の場合を例示している。
【0079】
ステップS215における判定の結果、データ位置Z
(k)のFFTデータ群が正常である場合(ステップS215:Yes)、周波数解析部41は、後述するステップS217に移行する。
【0080】
ステップS215における判定の結果、データ位置Z
(k)のFFTデータ群が正常でない場合(ステップS215:No)、周波数解析部41は、不足分だけゼロデータを挿入することによって正常なFFTデータ群を生成する(ステップS216)。ステップS215において正常でないと判定されたFFTデータ群は、ゼロデータを追加する前に窓関数が作用されている。このため、FFTデータ群にゼロデータを挿入してもデータの不連続は生じない。ステップS216の後、周波数解析部41は、後述するステップS217に移行する。
【0081】
ステップS217において、周波数解析部41は、FFTデータ群を用いてFFT演算を行うことにより、複素数からなる周波数スペクトルを得る(ステップS217)。この結果、例えば
図9に示すようなスペクトルC
1が得られる。
【0082】
続いて、周波数解析部41は、データ位置Z
(k)をステップ幅Dで変化させる(ステップS218)。ステップ幅Dは、記憶部8が予め記憶しているものとする。
図8では、D=15の場合を例示している。ステップ幅Dは、Bモード画像データ生成部51がBモード画像データを生成する際に利用するデータステップ幅と一致させることが望ましいが、周波数解析部41における演算量を削減したい場合には、そのデータステップ幅より大きい値を設定してもよい。
【0083】
その後、周波数解析部41は、データ位置Z
(k)が音線SR
kにおける最大値Z
(k)maxより大きいか否かを判定する(ステップS219)。データ位置Z
(k)が最大値Z
(k)maxより大きい場合(ステップS219:Yes)、周波数解析部41はカウンタkを1増加させる(ステップS220)。一方、データ位置Z
(k)が最大値Z
(k)max以下である場合(ステップS219:No)、周波数解析部41はステップS213へ戻る。このようにして、周波数解析部41は、音線SR
kに対して、[{(Z
(k)max−Z
(k)0)/D}+1]個のFFTデータ群に対するFFT演算を行う。ここで、[X]は、Xを超えない最大の整数を表す。
【0084】
ステップS220の後、周波数解析部41は、カウンタkが最大値k
maxより大きいか否かを判定する(ステップS221)。カウンタkがk
maxより大きい場合(ステップS221:Yes)、周波数解析部41は一連のFFT演算を終了する。一方、カウンタkがk
max以下である場合(ステップS221:No)、周波数解析部41はステップS212に戻る。
【0085】
このようにして、周波数解析部41は、(k
max−k
0+1)本の音線の各々について複数回のFFT演算を行う。
【0086】
なお、ここでは、あらかじめ入力部6によって特定の関心領域の設定入力を受け付けて、その関心領域内においてのみ周波数解析処理を行っているが、周波数解析部41が超音波信号を受信したすべての領域に対して周波数解析処理を行うようにしても良い。
【0087】
ステップS21に続くステップS22において、演算部4は、特徴量解析の結果に基づき、音線データから特徴量を抽出する。本実施の形態1においては、特徴量抽出部42が、周波数解析部41が算出したP個の周波数スペクトルを回帰分析し、さらに減衰補正を行うことによって特徴量を抽出する。具体的には、特徴量抽出部42は、周波数帯域f
LOW<f<f
HIGHの周波数スペクトルを近似する一次式を回帰分析によって算出することにより、3つの補正前特徴量a
0、b
0、c
0を算出する。
図9に示す直線L
1は、この処理によって得られる補正前の回帰直線である。
【0088】
特徴量抽出部42は、さらに、データ位置Z
(k)の値を上述した式(2)〜(4)の受信深度zに代入することにより、補正済みの特徴量である傾きa,切片b,強度cを算出する。
図9に示す直線L
1’は、このステップS22において得られる回帰直線である。
【0089】
続くステップS23において、画像処理部5は、ステップS22において抽出された特徴量をもとに特徴量画像データを生成する。本実施の形態1においては、特徴量画像データ生成部52が、ステップS22において抽出された周波数特徴量をもとに特徴量画像データを生成する。具体的には、特徴量画像データは、Bモード画像に対して設定された関心領域ROI内の各画素のR(赤)、G(緑)、B(青)に、切片bを均等に割り当てたグレースケールの画像データである。或いは、関心領域ROI内の各画素のR(赤)、G(緑)、B(青)に傾きa、切片b、強度cをそれぞれ割り当てることにより、カラーの特徴量画像データを生成しても良い。または、関心領域ROI内の各画素のR(赤)、G(緑)、B(青)に傾きa、切片b、強度cをそれぞれ割り当てたカラーの画像データとBモード画像データとを所定の比率で混合させることによって特徴量画像データを生成しても良い。
【0090】
ステップS24において、データ選択部92は、以下の条件を満たす記録データが検査データ記憶部82に記憶されているか否かを判定する。まず、データ選択部92は、患者識別情報をもとに、検査中の患者150と同一の患者に対して過去に実施された検査の検査データを検索する。このとき、当該患者150に対して過去に実施された検査が複数ある場合、直近の日付の検査を選択する。
【0091】
続いて、データ選択部92は、現在の超音波探触子2の相対位置情報をもとに、選択した検査データに含まれる各記録データの位置情報を参照し、位置情報が現在の超音波探触子2の相対位置情報と最も近い記録データを選択する。例えば
図3に示すように、過去の検査データに観測点P1〜P4に関する記録データD(P1)〜D(P4)が格納されている場合において、
図5に示すように、超音波探触子2が食道151の上部に位置するとき、該超音波探触子2に対して観測点P1の位置が最も近いので、記録データD(P1)が選択される。
【0092】
さらに、データ選択部92は、超音波探触子2が、選択された記録データにおける表示判定範囲に含まれるか否かを判定する。表示判定範囲とは、観測点からの距離が所定の範囲内である領域のことであり、データの記録が行われた各観測点に対して設定される。例えば
図10及び
図11に示すように、観測点P1〜P4に対して、表示判定範囲R1〜R4がそれぞれ設定される。
【0093】
ここで、
図10に示す位置に超音波探触子2が存在する場合、超音波探触子2に最も近い観測点は、観測点P3である。しかしながら、このとき、超音波探触子2は、観測点P3の表示判定範囲R3に含まれていない。この場合、データ選択部92は、条件を満たす記録データはないと判定する(ステップS24:No)。
【0094】
一方、
図11に示す位置に超音波探触子2が存在する場合、超音波探触子2に最も近い観測点は観測点P3であり、且つ、超音波探触子2は、観測点P3の表示判定範囲R3に含まれている。この場合、データ選択部92は、条件を満たす記録データがあると判定する(ステップS24:Yes)。
【0095】
ステップS24において、条件を満たす過去の記録データはないと判定された場合(ステップS24:No)、超音波観測装置1は、実行制御部94の制御の下で、特徴量画像及び特徴量を含む表示画面を生成して表示部7に表示する(ステップS25)。具体的には、表示画像データ生成部54が、ステップS23において生成された特徴量画像データに基づく周波数特徴画像と、ステップS22において抽出された周波数特徴量とを含む表示画面の画像データを生成し、制御部9が、この画像データに基づく表示画面を表示部7に表示させる。
【0096】
図12は、ステップS25において表示される表示画面の例を示す模式図である。
図12に示す表示画面210は、ID、名前、性別等の患者識別情報や、抽出された周波数特徴量に関する情報や、ゲインやコントラスト等の超音波画質情報等が表示される情報表示領域211と、第1画像表示領域212と、第2画像表示領域213とを含む。特徴量に関する情報としては、特徴量(傾きa、切片b、強度c)の他、関心領域の内部に位置する複数のFFTデータ群の周波数スペクトルの特徴量の平均、標準偏差を利用した表示を行うことも可能である。
【0097】
また、第1画像表示領域212には、ステップS15において生成されたBモード画像データに基づくBモード画像203が表示される。一方、第2画像表示領域213には、ステップS23において生成された特徴量画像データに基づく周波数特徴量画像214が表示される。このように、Bモード画像203と周波数特徴量画像214とを並べて表示することにより、操作者は関心領域における組織性状を正確に把握することができる。
【0098】
なお、ステップS25においては、Bモード画像203と周波数特徴量画像214とを必ずしも並べて表示する必要はなく、例えば周波数特徴量画像214のみを単独で表示しても良い。
【0099】
また、その後のステップS18において、データを記録する指示信号が入力された場合(ステップS18:Yes)には、超音波探触子2の相対位置情報(即ち、観測点の位置情報)、Bモード画像データ、特徴量画像データ、周波数特徴量、特徴量解析に用いられた演算パラメータ、Bモード画像データ及び特徴量画像データの生成にそれぞれ用いられた画像処理パラメータが、1つのデータセットとして検査データ記憶部82に記憶させる(ステップS19)。続くステップS20は、上述したとおりである。
【0100】
一方、ステップS24において、条件を満たす過去の記録データがあると判定された場合(ステップS24:Yes)、超音波観測装置1は、実行制御部94の制御の下で、当該過去の記録データを選択して取得し、記録データに含まれるBモード画像データに基づく過去のBモード画像と、リアルタイムに観測中のBモード画像とを含む画面を表示部7に表示する(ステップS26)。このような画面表示を介して、条件を満たす過去の記録データが存在する旨を操作者に通知することができ、操作者は、現在の観測点の近傍に、過去のデータとの対比が可能な観測点が存在することを認識することができる。即ち、本実施の形態1において、表示部7は、条件を満たす過去の記録データが選択された旨を操作者に通知する通知手段としても機能する。
【0101】
図13は、ステップS26における画面の表示例を示す模式図である。
図13に示す表示画面220においては、情報表示領域211に、ID、名前、性別等の患者識別情報の他、条件を満たす過去の記録データが取得された検査を特定するための情報(検査日等)が表示される。
【0102】
また、第1画像表示領域212には、選択された過去の記録データに含まれるBモード画像データに基づくBモード画像222が表示される。一方、第2画像表示領域213には、ステップS15において生成されたBモード画像データに基づくリアルタイムのBモード画像203が表示される。このとき、画像処理部5は、過去の記録データから画像処理パラメータ(ゲイン、コントラスト、ガンマ補正係数等)を取得し、これらの画像処理パラメータを用いて、リアルタイムのBモード画像を再生成しても良い。
【0103】
操作者は、表示画面220に表示された過去のBモード画像222を参照しながら超音波探触子2の位置を調整することにより、リアルタイムに観測中のBモード画像203に写った検体を、過去のBモード画像222に写った検体に合わせ込む。これにより、過去のBモード画像222とリアルタイムのBモード画像203とを正確に対比することができる。
【0104】
ステップS27において、実行制御部94は、画像をフリーズする指示信号が入力部6から入力されたか否かを判定する。画像をフリーズする指示信号が入力されない場合(ステップS27:No)、超音波観測装置1の動作はステップS18に移行する。
【0105】
一方、画像をフリーズする指示信号が入力された場合(ステップS27:Yes)、実行制御部94は、この指示信号をトリガーとして、選択された過去の検査データから演算パラメータ及び画像処理パラメータを取得し(ステップS28)、これらのパラメータを用いて、ステップS14において取得された音線データに対する処理を、演算部4及び画像処理部5に対し再実行させる(ステップS29〜S31)。
【0106】
具体的には、ステップS29において、周波数解析部41は、ステップS28において取得された演算パラメータを用いて、ステップS14において取得された音線データに対する特徴量解析を再実行する。なお、特徴量解析処理の詳細は、ステップS21と同様である。
【0107】
また、ステップS30において、特徴量抽出部42は、特徴量解析の再実行により得られた解析結果に基づいて、音線データから特徴量を再抽出する。なお、特徴量抽出処理については、ステップS22と同様である。
【0108】
さらに、ステップS31において、画像処理部5は、ステップS28において取得された画像処理パラメータを用いて、ステップS30において再抽出された特徴量をもとに特徴量画像データを再生成する。特徴量画像データの生成処理については、ステップS23と同様である。また、この際に、画像処理部5は、該画像処理パラメータを用いて、Bモード画像データを再生成しても良い。
【0109】
続くステップS32において、比較画像データ生成部53は、選択された過去の記録データから過去の特徴量画像データを取得し、該過去の特徴量画像データと、ステップS31において再生成された特徴量画像データとの差分画像データを生成する。この差分画像データは、当該観測点における検体の過去の検査時から今回の検査時までの経時的な変化を表す。
【0110】
ステップS33において、表示画像データ生成部54は、選択された過去の記録データに含まれる過去の特徴量(本実施の形態1においては周波数特徴量)と、ステップS30において再抽出された今回の特徴量(同上)とを対比して示すグラフ又は表の画像データを生成する。
【0111】
ステップS34において、超音波観測装置1は、ステップS32において生成された差分画像データに基づく差分画像、及びステップS33において生成されたグラフ又は表を含む表示画面を生成して表示部7に表示する。
【0112】
図14は、ステップS34において生成された表示画面の表示例を示す模式図である。
図14に示す表示画面230においては、情報表示領域211に、患者識別情報及び超音波画質情報の他、過去の検査において抽出された周波数特徴量と今回の検査において抽出された周波数特徴量とを対比して示すグラフ231が表示される。なお、グラフ231の代わりに、周波数特徴量の対比をテキストで示す表を表示しても良い。
【0113】
また、第1画像表示領域212には、ステップS15において生成されたBモード画像データに基づくBモード画像203が表示される。なお、ステップS31においてBモード画像データも再生成した場合には、再生成されたBモード画像データに基づくBモード画像が表示される。一方、第2画像表示領域213には、該Bモード画像データとステップS32において生成された差分画像データとを所定の比率で混合させた合成画像232が表示される。或いは、Bモード画像に設定された関心領域ROI内を差分画像に置換した合成画像を生成しても良い。操作者は、このような表示画面230を参照することにより、関心領域ROIにおける検体の経時的な変化を直接的且つ正確に把握することができる。
【0114】
その後のステップS18において、データを記録する指示信号が入力された場合(ステップS18:Yes)には、超音波探触子2の相対位置情報(即ち、観測点の位置情報)、Bモード画像データ、再生成された特徴量画像データ、差分画像データ、再抽出された周波数特徴量、該周波数特徴量の対比結果(グラフ又は表)、特徴量解析の再実行に用いられた演算パラメータ、及びBモード画像データ及び特徴量画像データの再生成にそれぞれ用いられた画像処理パラメータが、1つのデータセットとして検査データ記憶部82に記憶させる(ステップS19)。続くステップS20は、上述したとおりである。
【0115】
以上説明したように、本実施の形態1によれば、過去の検査においてデータが記録された観測点と同一又は近傍の観測点において観測を行う際に、過去の検査時と同じパラメータで周波数解析及び特徴量の抽出と画像生成とを行うので、過去の検査と今回の検査との間で、当該観測点における検体の特徴量や画像を正確に対比することができる。このような特徴量や画像を対比して示す画面を表示することにより、ユーザは、過去の検査時から今回の検査時までに生じた検体の特徴量の経時的な変化を直接的に把握することが可能となる。
【0116】
(変形例1)
次に、本実施の形態1の変形例1について説明する。
上記実施の形態1においては、過去の検査時に使用したパラメータを用いて、リアルタイムに取得された音線データに対する処理を行った(ステップS29〜S31参照)。しかしながら、反対に、リアルタイムな処理(ステップS21〜S23参照)の際に用いられたパラメータを用いて、過去の記録データ側を再処理しても良い。この場合も、過去のデータ及び今回のデータに対し、同じパラメータを用いて特徴量解析及び画像処理を行うので、両者を正確に対比することが可能となる。
【0117】
(変形例2)
次に、本発明の実施の形態1の変形例2について説明する。
上記実施の形態1においては、入力部6から入力された指示信号をトリガーとして(ステップS27参照)、特徴量解析の再実行(ステップS29参照)〜特徴量画像の再生成(ステップS31参照)を行った。しかしながら、条件を満たす過去の記録データがあると判定された時点で(ステップS24参照)、これらの再処理を自動的に開始する構成としても良い。
【0118】
(変形例3)
次に、本発明の実施の形態1の変形例3について説明する。
上記実施の形態1においては、条件を満たす過去の記録データがあると判定された場合に(ステップS24参照)、過去の時点におけるBモード画像及びリアルタイムに表示されるBモード画像を表示部7に表示させることで、当該過去の記録データが存在する旨を操作者に通知した。しかしながら、通知方法はこれに限定されず、例えば、「超音波探触子の近傍に、記録された過去のデータあります。」といったメッセージを表示部7にテキスト表示させたり、同様のメッセージを音声で通知したり、通知音を発生させるなどしても良い。音声や通知音で通知を行う場合、
図15に示す超音波観測装置301のように、制御部9の制御の下で音声や通知音を発生させるスピーカ302を通知手段として設ければ良い。
【0119】
このように、テキストメッセージや音声等により通知を行う場合、実行制御部94は、過去のBモード画像を表示させる指示信号が入力部6から入力された際に、過去のBモード画像及びリアルタイムのBモード画像を含む画面(
図13参照)を表示部6に表示させる。それにより、操作者は、所望のタイミングで過去のBモード画像を参照し、リアルタイムのBモード画像に写った検体を、過去のBモード画像に写った検体に合わせ込むことができる。
【0120】
(変形例4)
次に、本発明の実施の形態1の変形例4について説明する。
過去の記録データにおける特徴量と今回の検査において算出された特徴量の対比結果や差分画像の表示態様は、
図14に示す表示画面230に限定されず、種々の表示態様が可能である。例えば、過去の記録データにおける特徴量に基づく特徴量画像と、再抽出された特徴量に基づく特徴量画像とを並べて表示しても良い。或いは、過去の記録データにおけるBモード画像と、該過去の記録データにおける画像処理パラメータを用いて再生成したリアルタイムのBモード画像とを並べて表示しても良い。
【0121】
また、別の例として、
図16に示すように、3つの画像を並べて表示しても良い、
図16に示す表示画面240は、患者識別情報、超音波画質情報、及び周波数特徴量と対比して示すグラフ231と、3つの画像表示領域241〜243とを含む。
【0122】
第1画像表示領域241には、ステップS15において生成されたBモード画像データに基づくBモード画像203が表示される。第2画像表示領域242には、ステップS23において生成された特徴量画像データに基づく周波数特徴量画像214が表示される。さらに、第3画像表示領域243には、差分画像をBモード画像に重畳した合成画像232が表示される。
【0123】
(変形例5)
次に、本発明の実施の形態1の変形例5について説明する。
本発明を体外式の超音波探触子に適用する場合、探触子位置情報取得部102の構成としては、磁気センサの他、さらに様々な構成を適用することができる。例えば、探触子位置情報取得部102を2台の光学カメラによって構成し、超音波探触子が写った画像から該超音波探触子の位置や姿勢(患者に対する角度等)を検出しても良い。この場合、患者位置情報取得部101と探触子位置情報取得部102とを共通の光学カメラで構成することも可能である。或いは、超音波探触子に重力センサを設けることにより、該超音波探触子の姿勢を検出しても良い。
【0124】
(変形例6)
次に、本発明の実施の形態1の変形例6について説明する。
図4に示すステップS22又はS30において周波数特徴量を抽出する際には、周波数スペクトルの回帰分析を行う前に減衰補正を行っても良い。
【0125】
図17は、本変形例7における減衰補正方法を説明するための模式図である。ステップS21又はS29において、例えば
図17に示す周波数スペクトル曲線C
2が取得された場合、特徴量抽出部42は、上述した式(1)の減衰量Aを強度Iに加える補正を全ての周波数fに対して行うことにより、新たな周波数スペクトル曲線C
2'を得る。これにより、超音波の伝播に伴う減衰の寄与を削減した周波数スペクトルを得ることができる。
【0126】
この後、特徴量抽出部42は、減衰補正された全ての周波数スペクトルを回帰分析することによって周波数スペクトルの特徴量を抽出する。具体的には、特徴量抽出部42は、回帰分析によって一次式の傾きa、切片b及び中心周波数f
MIDにおける強度cを算出する。
図17に示す直線L
2は、周波数スペクトル曲線C
2に対して特徴量抽出処理を行うことによって得られる回帰直線(切片b
2)である。
【0127】
このような補正方法によっても、操作者は、周波数特徴量画像によって表される検体の組織性状をより正確に把握することが可能になる。
【0128】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。
図4に示すステップS21又はS29において実行される特徴量解析としては、周波数解析の他にも、公知の種々の解析法を適用することができる。本実施の形態2においては、コントラストハーモニックエコー(CHE)法により得られた超音波エコーに対する造影解析を適用する場合を説明する。
【0129】
CHE法とは、患者の体内にマイクロバブル等の造影剤を導入し、該造影剤に超音波が照射されることにより発生する高調波信号を抽出して画像化し、血流情報を取得する技術である。CHE法の詳細については、例えば特開2010−259672号公報を参照されたい。
【0130】
CHE法を行う場合、
図4に示すステップS21又はS29において、演算部4は、送受信部3から出力された音線データに対して造影解析を行う。より詳細には、位相を180°ずらした2つの超音波信号を超音波探触子2から続けて送信し、これらの超音波エコーをそれぞれ受信することにより生成された音線データに対し、演算部4は、これらの音線データを加算することにより、基本波成分が相殺され、且つ2次高調波成分が強調された信号を生成する。
【0131】
或いは、位相が同じで振幅が1:nの2つの超音波信号を超音波探触子2から続けて送信し、これらの超音波エコーをそれぞれ受信することにより生成された音線データに対し、演算部4が一方の音線データをn倍して他方の音線データから減算することにより、基本波成分が相殺され、且つ2次高調波成分が強調された信号を生成しても良い。
【0132】
或いは、超音波信号を超音波探触子2から1回送信し、その超音波エコーを受信することにより生成された音線データに対し、演算部4がハイパスフィルタ処理を施すことにより、高調波成分を抽出しても良い。
【0133】
また、この場合、ステップS22又はS30において、演算部4は、高調波成分の信号に対して包絡線検出処理を施し、該包絡線の振幅を特徴量として抽出する。
【0134】
また、この場合、ステップS23又はS31において、特徴量画像データ生成部52は、Bモード画像に対して設定された関心領域ROI内の各画素のR(赤)、G(緑)、B(青)に、演算部4により抽出された特徴量(包絡線の振幅)を均等に割り当てることにより、CHE画像データを生成する。
【0135】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3について説明する。
図4に示すステップS21及びS29において実行される特徴量解析として、超音波エラストグラフィ法により得られた超音波エコーに対する弾性解析を行っても良い。超音波エラストグラフィ法は、組織弾性イメージングとも呼ばれ、超音波探触子を患者の体表に当接させて押圧し、生体組織が圧迫されたときに生じる該生体組織の変位(ひずみ)の分布を画像化することにより、生体組織の硬さを可視化する技術である。生体組織は硬いほど変形しにくいため変位は小さくなり、柔らかいほど変位は大きくなる。超音波エラストグラフィ法の詳細については、例えば特開2007−105400号公報を参照されたい。
【0136】
超音波エラストグラフィ法を行う場合、
図4に示すステップS21又はS29において、演算部4は、送受信部3から出力された音線データに対して弾性解析を行う。より詳細には、演算部4は、送受信部3から出力された音線データをフレームごとに蓄積し、最新のフレームデータ(1フレーム分の音線データ)と、該最新のフレームデータの所定時間前のフレームデータとに対して1次元又は2次元相関処理を施すことにより、断層像上の各点における変位又は移動ベクトル(変位の方向及び大きさ)を計測する。
【0137】
この場合、ステップS22又はS30において、演算部4は、断層像上の各点における変位又は移動ベクトルの大きさを特徴量(歪み量)として抽出する。
【0138】
また、この場合、ステップS23又はS31において、特徴量画像データ生成部52は、演算部4が抽出した断層像上の各点における歪み量に対し、座標空間におけるスムージング処理、コントラスト最適化処理や、フレーム間における時間軸方向におけるスムージング処理等の画像処理を施す。そして、Bモード画像に対して設定された関心領域ROI内の各画素のR(赤)、G(緑)、B(青)に、画像処理後の歪み量に応じた画素値(輝度)を均等に割り当てることにより、グレースケールの弾性画像データを生成する。具体的には、歪み量が多いほど、輝度が高くなるようにする。或いは、歪み量に応じて、各色に対する画素値の割当量を変化させることにより、カラーの弾性画像データを生成しても良い。具体的には、歪み量が多い画素にはR(赤)の割当量を多くし、歪み量が少ない画素にはB(青)の割当量を多くする。
【0139】
以上、本発明の実施の形態1〜3及び変形例を説明したが、本発明は、実施の形態1〜3及び変形例に限定されるものではなく、各実施の形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明を形成できる。例えば、各実施の形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を除外して形成しても良いし、異なる実施の形態や変形例に示した構成要素を適宜組み合わせて形成しても良い。
超音波観測装置は、観測点の位置を表す位置情報と、該観測点に関して演算部が抽出した特徴量と、該観測点に関して画像処理部が生成した画像データと、特徴量の抽出時及び画像データの生成時にそれぞれ用いられたパラメータとを含む複数のデータセットを記憶する記憶部と、患者と超音波探触子との相対的な位置を表す相対位置情報をもとに複数のデータセットを検索して、所定の条件を満たすデータセットを選択するデータ選択部と、該所定の条件を満たすデータセットが選択された場合に、演算部に、該データセットに含まれるパラメータを用いて特徴量を再抽出させる実行制御部とを備える。