(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5797368
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】半導体チップのボンディング装置及びボンディング方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20151001BHJP
【FI】
H01L21/60 311T
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2008-302756(P2008-302756)
(22)【出願日】2008年11月27日
(65)【公開番号】特開2010-129771(P2010-129771A)
(43)【公開日】2010年6月10日
【審査請求日】2011年10月18日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000110859
【氏名又は名称】キヤノンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100148987
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 礼子
(72)【発明者】
【氏名】末田 哲也
【審査官】
宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−297749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフレームと、
回路基板を支持するための加工ステージと、
前記ベースフレームにより上下動可能に支持されたスライダと、
前記ベースフレームに固定され、前記スライダを上下方向に移動させる駆動装置と、
前記スライダにより上下方向に移動自在に支持された可動ロッドと、
該可動ロッドの下端部に保持され半導体チップを保持し得る保持ツールと、
該可動ロッドに設けられ前記スライダへの接触により前記可動ロッドを下降位置に保持するストッパと、
前記スライダと前記可動ロッドとに設けられた距離センサであって、前記スライダに対する前記可動ロッドの上下方向の位置を検知する変位センサと、
該変位センサからの検知信号に基づいて前記駆動装置を作動させる制御信号を出力する制御部と、
前記ベースフレームに取り付けられたシリンダと、前記可動ロッドに設けられたプランジャとを備えた流体圧駆動のシリンダ機構により構成され、前記保持ツールを下方へ押圧する加圧手段と、
前記保持ツールに保持された前記半導体チップのバンプを加熱するための加熱装置とを備え、
前記スライダおよび前記可動ロッドを下降させて、前記保持ツールにて保持されている前記半導体チップを前記加工ステージにて支持されている前記回路基板に接触させた後、前記スライダのみをさらに下降させて前記ストッパと前記スライダとの間に所定の間隔の微小隙間を設けた状態として前記バンプを前記回路基板に確実に接触させるように加圧力を作用させ、その加圧状態で前記加熱装置による加熱を行いつつ、前記ストッパと前記スライダとの間を加圧後の微小間隙とし、その微小間隙を維持した状態で、バンプを溶融させ、このバンプ溶融後に、前記可動ロッドを前記加圧後の微小間隙だけ下降させるように制御し、かつ、前記変位センサは一対のセンサ部材を有し、このセンサ部材間の距離によって前記スライダに対する可動ロッド位置を検知し、初期状態の当初のセンサ部材間の間隔をH0とし、加圧前のセンサ部材間の間隔をH1とし、加圧後のセンサ部材間の間隔をH2としたときに、加圧前の前記微小隙間が(H1−H0)となり、加圧後の前記微小間隙が(H2−H0)となることを特徴とする半導体チップのボンディング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のボンディング装置を用いて前記半導体チップを前記回路基板に結合するためのボンディング方法であって、
前記加工ステージに前記回路基板を固定し、
前記スライダを上昇した位置とし、該スライダに前記ストッパを接触させて前記可動ロッドを下降位置に保持し、
前記半導体チップを前記バンプが下方に位置するようにして前記保持ツールに保持し、
次に、前記駆動装置により前記スライダを下降させ、
該下降により前記バンプを前記回路基板に接触させ、前記半導体チップを前記保持ツール及び前記可動ロッドと共にそれ以上の下降が阻止された状態とし、
該状態から、前記変位センサによる検知に基づきさらに微小距離だけ前記スライダを下降させて該スライダと前記ストッパとの間に前記微小隙間を形成し、
前記加圧手段により前記バンプを前記回路基板に確実に接触させるように加圧力を作用させ、
該加圧状態で前記加熱装置を作動させて前記バンプを加熱し、
装置構成部材の熱膨張による変動が生じないように前記変位センサの検知に基づき前記駆動装置を作動させて前記加圧後の微小間隙を保ち、
前記加熱により前記バンプを溶融させ、
該溶融の際に前記半導体チップ及び前記保持ツールと共に下降する前記可動ロッドを前記ストッパが前記スライダに接触して位置を保持し、
その後、前記駆動装置を作動し前記変位センサによる検知の下に前記スライダを、前記加圧後の微小間隙に相当する距離を基準として上昇させることにより、溶融した前記バンプの形状を整え、該バンプを冷却固化させることを特徴とする半導体チップのボンディング方法。
【請求項3】
前記半導体チップの前記バンプが前記回路基板に接触した後の前記スライダの下降を前記変位センサに検知させることにより、前記半導体チップと前記回路基板との接触を検出することを特徴とする請求項2に記載のボンディング方法。
【請求項4】
前記バンプの溶融の際の前記加圧後の微小間隙の急激な変化を、前記変位センサによって検知させることにより、前記バンプの溶融を検出することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のボンディング方法。
【請求項5】
溶融した前記バンプが固化するまで、前記変位センサに基づき前記加圧後の前記微小間隙に相当する距離を基準とした位置に前記スライダを保持することを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のボンディング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンプにより半導体チップを回路基板に結合するためのボンディング装置及びボンディング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フリップチップ等の半導体チップをリードフレーム等の回路基板に結合するためのボンディングは、加工ステージ上に回路基板を載置し、保持ツールで半導体チップを保持し、バンプを回路基板に接触させた状態で加熱し、バンプを溶融させて回路基板の接続部に結合させるというようにして行なわれる。このとき、バンプの溶融に伴って接触状態が変化すると、バンプの適正形状が保てなかったり、適正位置から流出したりするという問題を生じることがある。したがって、回路基板に対する半導体チップの位置を高い精度で制御する必要がある。特に、近年の半導体回路の高密度化に伴ってバンプの配置密度は高くなる傾向にあり、ボンディングの制御精度が低いと、隣り合うバンプが溶融時に接触してショートを生じるおそれもある。
【0003】
高精度の制御のためには、保持ツール等の装置の構成部材に生じる、加熱時の熱膨張をも考慮することが不可欠である。これに関し、種々の提案がなされている。
特許文献1に記載の装置は、ボンディングの際の加熱によって保持部に生じる伸縮量を検出するに当たり、保持部の下端付近の位置を測定するレーザ変位計を設けると共に、それより下方の部材に温度センサを設けその部材の検出温度を伸縮量に変換する。これらの検出値に基づく駆動指令は、半導体部品の保持高さを制御する上下駆動ドライバに送られ、その駆動量の制御により熱膨張による誤差の発生が防止される。
【0004】
特許文献2の装置は、駆動制御手段により上下動されるホルダー支持手段(シリンダー)内に上下に作動するツールホルダー(ピストン)を支持し、上下位置に加圧ポートを設けて復動型のシリンダ・ピストン機構とした制御部を備えている。半導体チップを保持し得る保持ツールがツールホルダーの下端に取り付けられ、ホルダー支持手段(シリンダー)の上端内面に設けた高さ検出手段によりツールホルダー(ピストン)の位置を検出し得るようになっている。ボンディングを行なうには、ツールホルダー及びツールホルダーと共にホルダー支持手段を下降させて半導体チップを回路基板に接触させた後、ホルダー支持手段を所定距離だけさらに下降させ、この状態で上部の加圧ポートを通じた加圧によりツールホルダーを下方へ押しつけて全てのバンプを回路基板に接触をさせる。次に、下部の加圧ポートを通じて下方から圧力を掛けツールホルダーの自重を打ち消した状態とし、保持ツールによる加熱を行なってバンプを溶融させる。その後、ホルダー支持手段を前述の所定距離上昇させてツールホルダーとの位置関係を復元させ、これに基づきツールホルダーの上下位置を調整して溶融したバンプの形状を矯正する。
【0005】
【特許文献1】特開平9−153522号公報
【特許文献2】特開2000−353725号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の装置は、熱膨張量の検出値に基づき上下駆動ドライバの駆動量を制御するのみであるので、バンプを回路基板に押しつけることと、溶融したバンプの形状を押しつけ力により損ねないようにすることとの両立が困難である。したがって、半導体チップが複数のバンプを有する場合に、全てのバンプを回路基板に確実に結合し得ないおそれがあるという問題があった。
【0007】
特許文献2の装置は、シリンダ・ピストン機構に基づく加圧により複数のバンプを回路基板に押しつけることができるが、バンプの溶融時にはツールホルダーの自重を打ち消した状態とするので、その際に一部のバンプにおいて回路基板への接触が不良となるおそれがある。したがって、この装置による場合も、複数のバンプを回路基板に結合させる際の確実性に欠けるという問題があった。
【0008】
本発明は、これら従来技術の問題を解決し、半導体チップが複数のバンプを有する場合にも全てのバンプを確実に回路基板に結合し得るボンディング装置及びボンディング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記目的を達成するため、ベースフレームと、回路基板を支持するための加工ステージと、前記ベースフレームにより上下動可能に支持されたスライダと、前記ベースフレームに固定され、前記スライダを上下方向に移動させる駆動装置と、前記スライダにより上下方向に移動自在に支持された可動ロッドと、該可動ロッドの下端部に保持され半導体チップを保持し得る保持ツールと、該可動ロッドに設けられ前記スライダへの接触により前記可動ロッドを下降位置に保持するストッパと、前記スライダと前記可動ロッドとに設けられた距離センサであって、前記スライダに対する前記可動ロッドの上下方向の位置を検知する変位センサと、該変位センサからの検知信号に基づいて前記駆動装置を作動させる制御信号を出力する制御部と、前記ベースフレームに取り付けられたシリンダと、前記可動ロッドに設けられたプランジャとを備えた流体圧駆動のシリンダ機構により構成され、前記保持ツールを下方へ押圧する加圧手段と、前記保持ツールに保持された前記半導体チップのバンプを加熱するための加熱装置とを備え、前記スライダおよび前記可動ロッドを下降させて、前記保持ツールにて保持されている前記半導体チップを前記加工ステージにて支持されている前記回路基板に接触させた後、前記スライダのみをさらに下降させて前記ストッパと前記スライダとの間に所定の間隔
の微小隙間を設けた状態として
前記バンプを前記回路基板に確実に接触させるように加圧力を作用させ、その加圧状態で前記加熱装置による加熱を行いつつ、前記ストッパと前記スライダとの間を加圧後の微小間隙とし、その微小間隙を維持した状態で、バンプを溶融させ、このバンプ溶融後に、前記可動ロッドを前記
加圧後の微小間隙だけ下降させるように制御し
、かつ、前記変位センサは一対のセンサ部材を有し、このセンサ部材間の距離によって前記スライダに対する可動ロッド位置を検知し、初期状態の当初のセンサ部材間の間隔をH0とし、加圧前のセンサ部材間の間隔をH1とし、加圧後のセンサ部材間の間隔をH2としたときに、加圧前の前記微小隙間が(H1−H0)となり、加圧後の前記微小間隙が(H2−H0)となることを特徴とする半導体チップのボンディング装置を提供するものである。
【0010】
本発明はまた、前記目的を達成するため、上記ボンディング装置を用いて前記半導体チップを前記回路基板に結合するためのボンディング方法であって、前記加工ステージに前記回路基板を固定し、前記スライダを上昇した位置とし、該スライダに前記ストッパを接触させて前記可動ロッドを下降位置に保持し、前記半導体チップを前記バンプが下方に位置するようにして前記保持ツールに保持し、次に、前記駆動装置により前記スライダを下降させ、該下降により前記バンプを前記回路基板に接触させ、前記半導体チップを前記保持ツール及び前記可動ロッドと共にそれ以上の下降が阻止された状態とし、
該状態から、前記変位センサによる検知に基づきさらに微小距離だけ前記スライダを下降させて該スライダと前記ストッパとの間に
前記微小
隙間を形成し、
前記加圧手段により前記バンプを前記回路基板に確実に接触させるように加圧力を作用させ、該加圧状態で前記加熱装置を作動させて前記バンプを加熱し、装置構成部材の熱膨張による変動が生じないように前記変位センサの検知に基づき前記駆動装置を作動させて前記加圧後
の微小間隙を保ち、前記加熱により前記バンプを溶融させ、該溶融の際に前記半導体チップ及び前記保持ツールと共に下降する前記可動ロッドを前記ストッパが前記スライダに接触して位置を保持し、その後、前記駆動装置を作動し前記変位センサによる検知の下に前記スライダを、前記加圧後
の微小間隙に相当する距離を基準として上昇させることにより、溶融した前記バンプの形状を整え、該バンプを冷却固化させることを特徴とする半導体チップのボンディング方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るボンディング装置及びボンディング方法は、以下の効果を奏する。加工ステージに回路基板を固定し、バンプが下方に位置するようにして半導体チップを保持ツールに保持する。そして、ストッパにより可動ロッドをスライダ上に保持した状態でスライダを下降させ、半導体チップが回路基板に接触した後に、さらに微小距離だけスライダを下降させ、スライダとストッパとの間に微小間隙を形成する。この微小間隙により、可動ロッドの位置の自由度が得られ、加圧手段による加圧で、バンプを回路基板に確実に接触させることができる。
【0012】
この状態で、加熱装置によりバンプを加熱しつつ、変位センサの検知に基づき駆動装置を作動させて加圧後の前記微小間隙を保ちながら、バンプを溶融させる。すなわち、加熱により装置構成部材が熱膨張しても、スライダとストッパの微小間隙が変動しないようにスライダの位置を制御し、バンプが溶融する時には、可動ロッドは微小間隙だけ下降してストッパがスライダに接触することにより位置が保持される。したがって、半導体チップへの加圧力を保ち、複数のバンプを確実に回路基板に接触させた状態で、バンプを溶融させることができる。その結果、複数のバンプの全てを確実に回路基板に結合することができる。
【0013】
バンプの溶融に伴う可動ロッドの下降により、前記微小間隙は僅かに狭まるが、再び変位センサによる検知の下にスライダを、前記加圧後の微小間隙に相当する距離を基準として上昇させることができる。これにより、溶融したバンプの形状を溶融前の上下寸法を基準として調整することができる。
【0014】
なお、この調整において、「スライダを、前記加圧後の微小間隙に相当する距離を基準として上昇させる」という形態は、前記加圧後の微小間隙と等しい距離の上昇のみならず、該距離に対し所定量だけ長い距離又は短い距離だけ上昇させることも含む。その上昇距離は、微小間隙の設定やバンプのサイズ等に応じて適切なバンプ形状を得られるように決められる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明に係る半導体チップのボンディング装置の一実施形態を示す斜視図であり、
図2はその縦断側面図である。なお、以下の図では、理解し易いように、半導体チップC、回路基板A及びバンプBの厚さや大きさ、並びにセンサ部材の間隔等を拡大して示している。
【0016】
図示のように、このボンディング装置は、動作部材を支持するベースフレーム10と、回路基板Aを支持する加工ステージ20とを備えている。ベースフレーム10は、装置全体の機台に結合されて水平に延びる支持梁11と、該支持梁に支持された支持フレーム12とを備えている。支持フレーム12は、全体として縦長の直方体形状をなし、上壁121、下壁122及び後壁123を備え、前面側の中央部が切欠かれた形状となっており、後壁123の背面が支持梁11に結合されている。
【0017】
支持フレーム12には、スライダ30が設けられ、駆動装置40により上下動される。駆動装置40は、支持フレーム12の上壁121及び下壁122に上下端を支持され雄ねじを施された駆動ロッド41と、支持フレーム12の上壁121に固定され、該駆動ロッドの上端に駆動軸を結合されたサーボモータ42とを備えている。スライダ30は、直方体形状をなし、上下に延びるねじ孔31が形成され、該ねじ孔が駆動ロッド41の雄ねじに螺合している。これにより、サーボモータ42を回転させれば、駆動ロッド41の回転によって、スライダ30が上下動する。スライダ30の前寄り部分には、上下に延びる貫通孔32が形成されている。
【0018】
この貫通孔には可動ロッド50が上下方向に移動自在に挿入されている。可動ロッド50は、半導体チップを保持し得る保持ツール60が下端部に取り付けられ、上端部は径の大きいヘッド部51とされている。ヘッド部51の下面は、スライダ30上面への接触により可動ロッド50を下降位置に保持するストッパ52として作用する。保持ツール60は、チューブ61により図外の吸引装置に接続され、その下面に半導体チップCを吸着し、内蔵された加熱装置62により半導体チップCを加熱し得るようになっている。
【0019】
スライダ30及びヘッド部51には、変位センサ70を構成するセンサ部材71,72が各々取り付けられている。変位センサ70は、センサ部材71,72間の距離により、スライダ30に対する可動ロッド50の上下方向の位置を検知する。変位センサ70は、この実施形態では、渦電流式の距離センサとされ、ストッパ52がスライダ30上に接触したときに、センサ部材71,72間に僅かな間隙が形成されるように配置される。変位センサ70は、スライダ30と可動ロッド50との距離を測定し得るものであれば、光学式センサ、静電容量型センサ、可変抵抗型の接触式センサ、超音波式センサ等、種々のセンサを使用することができる。
【0020】
支持フレーム12の上壁121の前端には、加圧手段80が取り付けられている。加圧手段80は、下方へ開いたシリンダボアを有するシリンダ81を備え、該シリンダ内に可動ロッド50のヘッド部51が挿入されプランジャとして作用する。シリンダ81内には、図外の供給装置からチューブ82を介して送られる加圧空気が作用し、ヘッド部51を押し下げることにより、可動ロッド50下端の保持ツール60を下方へ押圧するようになっている。
【0021】
加工ステージ20への回路基板Aの供給、及び、保持ツール60への半導体チップCの供給は、手動もしくは別機構のロボット等を使用した自動供給により行なわれる。
【0022】
変位センサ70から送られる信号の処理、サーボモータ42の動作、加熱装置の作動等を含むボンディング装置における信号処理及び動作制御は、それらの部材に接続された制御部90(
図2)により行なわれる。
【0023】
次に、この装置を用いて行なうボンディング方法について説明する。
図3はボンディング工程における装置の動作とツール温度の関係を示す図である。
【0024】
ボンディングを行なうには、先ず、加工ステージ20に回路基板Aを固定し、保持ツール60によりバンプBが下方に位置するようにして半導体チップCを保持する(
図3(a))。このとき、スライダ30は駆動装置40により上昇した位置とし、可動ロッド50はストッパ52がスライダ30に接触した下降位置とする。
【0025】
次に、駆動装置40によりスライダ30を下降させ、バンプを回路基板に接触させる(
図3(b1))。これにより、半導体チップは保持ツール及び可動ロッドと共にそれ以上の下降が阻止された状態となる。
【0026】
この状態で、駆動装置40を作動し続けることにより、センサ部材71,72間の間隔が当初の間隔H0から拡大し始める(
図3のグラフにおける点P1以後)。したがって、この間隔の変化を検知することにより、半導体チップCが回路基板Aに接触したことを検出することができる。この検出に基づいて、加熱装置62の作動を開始する(
図3のグラフにおける点Q1以後)。
【0027】
半導体チップと回路基板との接触の検知に基づきセンサ部材71,72間が所定の間隔H1となるようにスライダ30を下降させてスライダとストッパとの間に微小間隙を形成する(
図3(b2)及びグラフの点P2)。なお、後に行なわれる間隔H1を保持する制御は、装置構成部材の熱膨張という緩慢な変動に対して行なわれる。この変動は、駆動装置40によってスライダ30が下降させられるときのセンサ部材間隔の変化に比べて遙かに遅い。したがって、センサ部材71,72によって検知される変化の速度に閾値を設けることにより、これらの変化を判別し、各々の動作に応じた制御を行なうことができる。
【0028】
こうして形成された微小間隙を利用して、加圧手段80による加圧を半導体チップCに作用させる。これにより、バンプBが多数設けられている場合でも、それらのバンプBを回路基板Aに確実に接触させることができる。一部のバンプBが回路基板Aから離反していた場合は、この加圧により、それらが回路基板Aに接触すると共に、前述の間隔H1は僅かに縮小する場合がある。この場合は、加圧による縮小量をセンサ部材71,72で検知し、加圧後の微小間隙を間隔H1として以下の制御を行なう。
【0029】
この状態で、加熱装置62を作動させる。これにより半導体チップCが加熱され、熱伝導によりバンプBが加熱される。この加熱で可動ロッド50等の装置構成部材が熱膨張するが、これによる変動が生じないように変位センサ70の検知に基づいて駆動装置40を作動させて間隔H1を保つ。この保持は、変位センサ70の検出値を駆動装置40の作動に瞬時に反映させるようにフィードバック制御で行なうのが望ましい。なお、複数のバンプの高さにばらつきがあり、加圧手段80による加圧で間隔H1が縮小した場合は、縮小した間隔をH1として、これを保持する制御を行なう。加熱温度は、例えば、加熱装置62のヒータ部分が500℃程度までの温度となるように行なう。
【0030】
この加熱により、バンプBの溶融に至る(
図3(c))。バンプの溶融に伴って、バンプによる支持力を失った半導体チップC、保持ツール60及び可動ロッド50は下降する。下降は、前述の微小間隙の分だけ生じ、ストッパ52がスライダ30に当接して制止される(
図3のグラフにおける点P3〜点P4)。これに伴うH1からの間隔の縮小は急激に生じるので、これを変位センサ70によって検知することにより、バンプの溶融を検出することができる。そして、これに基づいて、加熱装置の作動停止等の制御を行なうことができる(
図3のグラフにおける点Q2)。この場合も、前述のように、センサ部材71,72によって検知される変化の速度に閾値を設けることにより、バンプ溶融による可動ロッド50の下降と、部材の熱膨張による変化とを判別し、各々の動作に応じた制御を行なうことができる。
【0031】
センサ部材71,72の間隔がH1となるようにスライダ30を下降させて形成されるスライダとストッパとの間の微小間隙は、上に説明した作用が得られるようにして決められ、例えば0.1〜500μmとするのが望ましく、5〜10μmとするのがより望ましい。この微小間隙が大きすぎると、バンプ溶融時の可動ロッド及び保持ツールの落下距離が大きくなり、その衝撃でバンプの位置ずれや流出を生じる。またこの微小間隙が小さすぎると、複数のバンプを確実に回路基板に接触させるための加圧手段による押圧力が全てのバンプに十分に作用しないことがある。
【0032】
このようにして、加圧手段80による半導体チップCへの加圧力をバンプBが溶融するまで維持することができるので、バンプは全て回路基板Aに接触した状態で溶融し、確実に回路基板に結合される。
【0033】
バンプの溶融に伴う可動ロッド50の下降により、間隔H1(微小間隙)は僅かに狭まり、バンプBは押し縮められた形状となるが、再び変位センサ70による検知の下に駆動装置40を作動させてスライダ30を上昇させることができる。この上昇は、前記微小間隙に相当する距離、又はこれより僅かに大きい距離とするのが望ましい。
【0034】
バンプの固化後は、保持ツール60に作用させていた吸引を停止させ、駆動装置40を作動させて可動ロッド50及び保持ツール60を上昇させる。加工ステージ20上では、半導体チップCがバンプBにより回路基板Aに結合された状態となっているので、これを取り出せばよい。
【0035】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、加熱装置は、保持ツール60に設けるのに代え又は追加して、加工ステージに設けてもよい。加圧手段としては、空気圧駆動に代えて油圧等の流体圧駆動のシリンダ・プランジャ機構を利用したものとすることができ、この他、種々の機械的、電気的、又は電磁的手段を用いることができる。また、可動ロッドに直接又は間接的に錘の重量を作用させる構造としてもよい。駆動装置は、前述の送りねじ式のものの他、ラック・ピニオン機構、リンク機構、ベルト機構等、種々の機構を用いたものとすることができる。半導体チップと回路基板との接触の検知、又はバンプの溶融の検知のために、ロードセル等の感圧センサを装置の部材間に介在させることができ、例えば、スライダ30とストッパ52との間のように、駆動装置による駆動力を受ける箇所や、加圧手段80による加圧力を受ける箇所に感圧センサを設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明に係る半導体チップのボンディング装置の一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示したボンディング装置の縦断側面図である。
【
図3】
図1に示したボンディング装置の動作と変位センサの出力及び加熱温度の関係を示す図である。
【0037】
10 ベースフレーム
20 加工ステージ
30 スライダ
40 駆動装置
50 可動ロッド
51 ヘッド部
52 ストッパ
60 保持ツール
62 加熱装置
70 変位センサ
71,72 センサ部材
80 加圧手段
A 回路基板
B バンプ
C 半導体チップ