(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記処理する工程の前に、前記レールが少なくもと1つの溶接欠陥を含み、かつ前記処理する工程が、該少なくとも1つの溶接欠陥を減ずるかまたは除去する、請求項1記載の方法。
前記処理する工程の前に、レールが、前記溶接継手に関連する少なくとも1つの割れを含み、かつ少なくとも1つの割れに沿った鋭い端部構造を面取りする工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
処理された継手の逆磁歪信号のパラメータ値が参照の逆磁歪信号のパラメータ値に近づくように、前記超音波衝撃処理のパラメータを調整する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
前記処理する工程が、振動速度方向を変換する導波管および少なくとも1つの圧子を含む超音波衝撃工具により行われ、該導波管が、第1の方向の超音波振動を得て、第1の方向とは異なる第2の方向にある少なくとも1つの圧子の超音波振動に該振動を変換するよう構成される、請求項1記載の方法。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
レールは、鉄道および地下鉄の車両、路面電車、機関車、モノレール、トロリー、および他の移動可能な回転および回動構造物
を運搬する手段を提供するために用いられる。レールは、それが設置されている国によって決定される様々な基準および規格を満たさなければならない。レールは
、適当な材料で製造
することができ、またテルミット溶接などの適当な方法で連結
することができる。レールのテルミット溶接中に、化学反応によってテルミット鋼が生成され、それが鋳造構造を有する溶接部を形成する。不十分な予熱または溶接面間の大きすぎる
間隙の結果として起こる不完全な融合により、溶接中にレールに割れが生じる可能性がある。割れはまた、レール端
の位置のずれによって生じる可能性もある。溶接レールの他の欠陥には、溶込み不良および
高温結晶化割れが含まれる。
【0003】
頭上移動クレーン用および鉄道車両交通用などのレール継手は、
往々にして、高い使用率、大きな
輪重、および接触応力に曝される。摩損し
た、損傷を受け
た、
壊れた、または分離されたレール継手は、輸送産業において、重大かつ高コストの問題になり得る。したがって、列車および生産クレーンを、効率的な割合ならびに
少ない保守修理時間および
低いコストで、安全
かつ確実に作動するよう保つことが、不可欠である。したがって、
健全なレールの状態がクレーンまたは列車の良好な
作動のために必要である。
【0004】
より具体的には、多くのレールの問題は、摩損、破壊、および/または分離のいずれかが生じたことによる継手破損に起因する。劣化したレール継手は、クレーン/列車、および例えば梁、橋梁、建造物支柱などの支持構造物に大きな衝撃荷重をもたらす。衝撃荷重は、台車、鉄道車両、および構造部材中の疲労割れを加速するだけでなく、車輪軸受の破損および車軸破壊を導くことが分かっている。さらに、クレーン/列車内の他の構成要素
は、
欠陥のあるレール継手上を走行するクレーン/列車の衝撃振動により、破損または損傷を被りやすい。
【0005】
レール継手によって引き起こされる多くの問題は、修理に費用が掛かり、および/または迅速で容易な解決法がない。
長年にわたって、様々なレール連結方法が、レールの割れおよびレール継手破損を修理および/または予防するために用いられてきた。これらのレール連結方法には、継目板ボルト締め、電気的アーク溶接、テルミット溶接、フラッシュバット溶接、およびガス圧接が含まれる。これらの方法のうち、テルミット溶接プロセスが、とりわけ費用の点で有利なので、線路網で最も頻繁に用いられる。しかし、新しいレールを敷くためにはフラッシュバット溶接プロセスがより頻繁に採用されつつある。
【0006】
フラッシュバット溶接は、他の連結方法と比較して最も破壊耐性が大きい高品質の継手を提供する方法である。さらに、フラッシュバット溶接部は、他の連結方法で経験
される一般的な問題である摩損が無い。フラッシュバット溶接プロセスによって連結されたレールは、真に連続したレールに近い状態を示す。フラッシュバット溶接プロセスは、レール
のセクションを連結するための自動化されたプロセスである。
複数のレールが、電荷を負荷された溶接機によって整列され、レールの端同士が
引き合わせられる。端部が接触すると、アークが形成され、溶接棒を使用しないで端部同士を溶融し溶接する。全溶接プロセスにおよそ2〜3分を要し、その結果生じる継手は強くかつ均一であり、破損の危険性が低い。
【0007】
電気的アーク溶接によって優れた溶接継手を得ることは、多くの場合完成に10〜12時間を要し、非常に有能な技能者が必要な、困難かつ時間の掛かる手法である。電気的アーク溶接技術
では、レール頭部の端に35°フルベベル、腹部に35°ダブルベベル、および基部の上部側に35°フルベベル
が必要
である。確実に真直ぐにするために、溶接継手を介したレール
を溶接前に整列させることが必要である。1/8インチのルート
間隔が、継手
の間隙の下に中心がある8×2×1/4インチの銅シムによって通常規定される。シムは、最初の溶接ビード用の
裏打ちプレートとして役立ち、溶接部が冷えるとともに生じる収縮歪みを補正するのを助ける
縦方向の上反りを提供する。レール端を500°Fまで予熱し、溶接の間、この温度を維持する。レールの基部、腹部、および頭部の溶接は、両側で交互に、順次進行する。完全な溶込みを
確実にするために、異物、スラグ等が取り込まれるのを回避するための特別措置を採ることが必要である。次に、過剰な溶接材が、研削およびそれに続く700°Fまでの
後熱により除去される。溶接部は、断熱ブランケットによって雨または雪、および低い周囲温度から保護される。継手は、可能な限りゆっくりと周囲温度まで冷却しなければならない。
【0008】
現在、電気的アーク溶接が
、特定の用途において一般的に使用され続けており、許容できる継手を提供している。しかし、長さおよそ3インチの摩損
作用が、固有の損耗特性である。この状態の発生を認識して
早期に是正措置を取
らないと、摩損領域が深くなり、ひいては車輪が継手を通過するとき
により高い衝撃が生じ、それにより破壊がもたらされる。
【0009】
継手の継目板ボルト締めは、最初は修理方法として、次に機関車を線路に戻す事業に用いられた。必要な継手の数を減少させるために、60フィートのレール長が標準の長さとなった。当初は、クレーン/列車は、新しくボルト締めされた継手の上を静かに滑らかに走る。しかし数か月の内に端部が摩耗し、
欠けることになる。乗り心地を滑らかにするために、溶接修理を行う。これらの溶接修理は、一時的な解決策に過ぎないことが判明
しており、頻繁に繰り返す必要がある。ボルト継手の
その他の特性
により修理業務
はさらに複雑に
なり、その望ましさの度合いが低くなる。
【0010】
欠陥を
取り除いた後にレールをジャッキで下ろして間隙を閉じるだけでは、継目板、レールクリップ、およびボルトから
の干渉のため、不十分である。さらに、継目板のところでレールクリップを除去
しなければならず、ボルト
が緩み、レール端の間に間隙が生じる。
弱くなったボルト孔部位で
レールが壊れるという
事例も起こっている。今日では、継目板ボルト継手は、
特定のレール用途においては許容されるものではないと一般に認められている。
【0011】
レールのテルミット溶接プロセスでは、アルミニウムと酸化鉄
との間の高い発熱性反応の結果、溶鋼が生産され、それが溶接されるべき間隙を囲む鋳型へ注ぎ込まれる。過熱された溶融金属が、溶接されるべき間隙の端でレールを溶融しかつ
溶加材としても働くため、レール由来の材料は、加えられた溶鋼が凝固して溶接部を形成する際にこれと
合体しかつ接合する。
【0012】
テルミット溶接の手順は一般に、レールを直角に切断し、
そして溶接されるべき間隙を予め規定された範囲内に加工
することにより行われる。溶接される端は、錆、ギザギザ、酸化物、または油汚れを除去するために、ブラシワイヤまたは研磨具で機械的に清浄する。長い鋼の直線縁端を用いてレール頭部の
連続端を一直線にそろえる。
テルミット鋼の凝固および冷却中の収縮を吸収する
ために、レール端を「盛り上げる(peak)」。レールの「押湯(rising)」が行われない場合は、レール頭部(より多くの材料が使われており、そのため冷却がより遅い)とレール脚部
とが異なる冷却をされるために、冷却後に継手がたわむことになる。たわんだ継手は乗り心地を悪くし、レール保守上の問題となる。そのような継手は、動力が増加すると、より大きな応力を受ける。
【0013】
次にるつぼ用およびトーチ用のスタンドを、レール頭部に、溶接間隙の
両側の適切な位置で固定し、トーチスタンドの高さを、その上に予熱バーナーまたは溶接トーチを置くことによってチェックして調節し、次にそれを除去して、後の使用のために傍に置いておく。次に、適切なレールセクション
のための
、あらかじめ作製された鋳型
一式を選択する。鋳型は鋳型
止め即ちクランプ中に、
目塗り用の砂を用いて適切に据え付ける。鋳型の配置は間隙上の中央でなければならない。何故なら、そうでなければ溶融金属を注いでいる間
に一方のレール端が他方より多くの熱を得て、他方のレールの金属の融合が完全でなくなる可能性があるからである。流し込む間
に溢れ出るスラグおよび溶融金属を集めるため
、鋳型
止めにスラグ鉢を取り付ける。マグネサイトで内側を覆ったるつぼを、回転しているるつぼスタンド上の正確な高さおよび位置に収容する。次に、閉鎖ピンを底部に開口を覆って置く。ピンの頭は約5グラムのアスベスト粉末で覆われており、それにより溶融金属
と接触するときに
は溶けず、「
オートタップ」が起こる。るつぼを動かしてレールから遠ざけ、一部(溶融金属を生成する自然発火する混合物)をるつぼに注いで、円錐形
の中にふんだんに入れる。
【0014】
市販のシリンダーおよび酸素を用いて、予熱バーナーまたは溶接トーチを点火し、炎を調整する。このトーチを間隙の上に固定されたその
スタンドに設置し、炎を中央開口部を通して鋳型の上に向ける。炎が、各レールセクションに対して規定時間だけレール端部を熱し、
そして予熱ガス
が使用
される。予熱が完了するとともに、火花装置に点火しるつぼの中にそれを入れることによってテルミット反応が開始される。反応が規定時間起こり、スラグが溶融金属から分離される。
【0015】
その後、閉鎖ピン
が外側からあき、それにより鋳型の
先端の中央
の穴へ金属を放出する。その後、るつぼおよびトーチのスタンドを撤去する。凝固後であるが金属がまだ赤熱しているときに、レール頭部の上
の過剰テルミット鋼(頭部
の押湯(riser))
はすべて、手動で刻み取るかまたは水圧式溶接トリマーを用いるかのいずれかで除去される。残りの
頑固な金属を除去し、溶接
部の脚部の鍔に付着した鋼の通気押湯を切り取る。次に、くさびを除去し、
外されていたすべての締め金具
を再固定し、レール頭部を研磨する。
【0016】
テルミット反応では、アルミニウムが高発熱反応によって酸化鉄、特に酸化第二鉄と反応し、酸化鉄を遊離鉄に還元して、酸化アルミニウムのスラグを形成する。この反応は以下の通りであり得る。
【0017】
溶鋼の
適正な生成量および温度を得るために、様々な酸化鉄を適切な割合で用いる。数秒の発熱反応の後に、ほぼ等しい量の溶鋼および液体酸化アルミニウムが、約2400℃で分離される。そのような反応から得られる鉄は柔らかく、レールを連結するための溶接金属として使用することはできない。
適正な組成の合金を生成するために、フェロマンガンのような合金と軟鋼片とを、溶鉄中に迅速に溶解するようどちらも小さな粒子として混合物に加え、温度を制御して「金属回収率」を増加させる。炭酸カルシウムおよび蛍石のような化合物を加えることにより、短時間での完全なスラグ分離、および溶融金属のより優れた流動性が達成される。
【0018】
注いだ溶融金属がレール端の表面酸化を洗い流すのを助けるためには、レール端の予熱(約1000℃まで)が必要である。何故なら、そうしなければ溶融金属は冷たいレール端に接すると、表面酸化を洗い落とさずに、冷えて直ちに凝固してしまうからである。
【0019】
テルミット溶接は、レールの連結に有利であるが、テルミット溶接部には問題があり得る。テルミット溶接部に関連した問題には、低い引張延性、低い衝撃強靱度、粗粒状の樹枝状結晶微細構造、混入および有孔性、内部の割れの進行、割れの伝播のし易さ、重大な欠陥となる孔、溶接部に入り込む砂、ならびに疲労破損が含まれるがこれらに限定されない。本発明は、テルミット溶接部に関連したこれらの問題および欠点に取り組む。
【発明の開示】
【0020】
発明の概要
本発明は、熱溶接即ちテルミット溶接、例えばアルミノテルミット溶接もしくは銅テルミット溶接などの溶接、ならびにアーク溶接、ガス圧接溶接、およびフラッシュ溶接などの溶接プロセスによって相互連結されたレールのセクションの性能を、溶接前、溶接中、溶接後、または使用
されたレールの修理中のいずれかに溶接継手を超音波衝撃処理(UIT)プロセスを利用して再加工することによって改善することに関する。これは、
継続的なまたは数回に分けた、手動または自動的方法での超音波衝撃工具によるUITの適用による、継手、継手のまわり、および/またはレール全長の処理を含み、溶接されたレールセクションの疲労寿命および/または他の特性を増加させることを目的
とする。
【0021】
本発明による超音波衝撃処理によって、レールの溶接シーム中の内部応力の減少、補正、および
再分布、ならびに
好ましい圧縮応力の生成が達成される。そのような結果は、溶接レール
において表面を周期的パルスエネルギー衝撃処理することにより内部
の圧縮波を引き起こし、レールの溶接シームの近傍にまたはレール自体に金属可塑性状態を誘起することによって達成される。
【0022】
このように、本発明により、超音波衝撃技術の非破壊表面処理工程が、
圧縮波パターンにより、溶接レール中の溶接部近傍
に可塑性状態を作りだ
す。その圧縮波パターンは
、応力を緩和して
勾配を有する応力パターンを導入し、溶接部位を著しく強化する。その結果生じる溶接レール中の内部
の勾配を有する微細構造パターンが、溶接部近傍の金属粒子構造のまわりに通常
は集中する微細
な応力集中境界を回避する。これが、より長い寿命およびより高い耐荷重能力を有する溶接レールをもたらす。そのようなUIT処理工程は、最初の製品製造、保守作業、および寿命回復のための応力疲労または
激甚な破損の処理において有用である。
【0023】
本発明のある態様では、
溶接レールの表面上に、UITトランスデューサーヘッドが、
残留応力を緩和しかつ溶接金属および熱影響部の微細構造に影響を与えるのに十分な超音波応力およびインパルス応力を溶接部内部にもたらす超音波の
波長の4分の1の倍数の距離
を置いて、間隔を
空けて配置され
る。溶接部領域の温度は、周囲温度から溶融金属温度までの範囲で変動する。超音波トランスデューサーヘッドは
、超音波の波節点および波腹点
が確実に溶接継手セクションに沿って変位するよう移動可能であってもよいし、または、例えば
、低い多周波数から高い多周波数へ
のおよびその逆
への多周波数の変化に対応する
共振領域の範囲中での加振搬送周波数
の「掃引」を用いて超音波の波節および波腹の位置を制御する場合には
、静止していてもよい。超音波トランスデューサーヘッドは溶接部またはその近接領域の表面に取り付けられ;表面の温度は周囲温度から材料の可塑性温度まで変動し得る。超音波トランスデューサーヘッドは、溶接部または
熱影響部の表面に沿って移動し、
好ましい圧縮応力により、表面層
に塑性変形領域を作りだし、前記領域を通して材料中に超音波を
惹起し、その超音波は、残留応力を緩和
しかつ溶接金属および
熱影響部の微細構造に影響を与えるのに十分な超音波応力
分布および変形を伴う。
【0024】
超音波衝撃処理により溶接継手を処理すること
により、下記の中の少なくとも一つ
が提供
される:
− 強靱性、接触強度、熱および収縮
によるサイズ変化に対する耐性、低サイクルおよび高サイクル耐久性、腐食および腐食疲労損傷に対する耐性、変動する荷重下
での耐久限度、
ならびに耐衝撃性が増大すること;
− 材料の強度に対して保証される最大許容荷重が、
現在の一般水準と比べて増大すること;
− 溶接部横断面
、熱影響部(HAZ)
、および溶接部止端
において、微細粒構造に対し
て保証された均一性が提供されること;
− 液相
状態の溶接材料の収率が増大すること;
− ガス抜きされ
た、溶接された材料が提供されること;
− 超音波衝撃処理パルスの影響下で溶融池の中央から液体金属を移動させることにより、溶接部の境界
における衝風冷却領域中の熱
交換および質量交換が最適化されること;
− 超音波衝撃処理パルスを作用させることに起因する現象による、孔、液化(liquidation)割れ、不安定相、粒間の
析出および損傷、ならびに不完全融合の形で存在するミクロおよびマクロの欠陥が抑制されること;
− 第一、第二、および第三の種類の応力および構造変形が制御されること;
− 材料のたわみモード、ならびに粒子
構造、亜粒子
構造、およびモザイク構造に影響を与えることにより決定される材料特性が制御されること;
− 引張応力領域中の溶接部およびHAZ金属のたわみモード
が最適化されること;
− 超音波衝撃処理影響下
における改善されたプロセス信頼度および継手品質に基づいて、溶接用の溶接継手を準備する際および溶接中に
、技術的パラメータの範囲が拡大して制限が最小限になること;ならびに
− 溶接継手の溶接後熱処理プロセスの統計的信頼度が改善されること、および溶接継手の熱処理が廃止されること。
【0025】
好ましい態様の詳細な説明
本発明は、熱溶接即ちテルミット溶接、例えばアルミノテルミット溶接もしくは銅テルミット溶接などの溶接、ならびにアーク溶接、ガス圧接溶接、およびフラッシュ溶接などの溶接プロセスによって相互連結されたレールのセクションの性能を、溶接前、溶接中、溶接後、または使用
されたレールの修理中のいずれかにおいて、超音波衝撃処理(UIT)プロセスを利用して溶接継手を再加工することによって改善することに関する。これは、
継続的なまたは数回に分けた、手動または自動的方法での超音波衝撃工具による超音波衝撃処理の適用による、継手、継手のまわり、および/またはレール全長の処理を含み、溶接されたレールセクションの疲労寿命および/または他の特性を増加させることを目的
とする。
【0026】
本発明による超音波衝撃処理によって、レールの溶接シーム中の内部応力の減少、補正、および
再分布、ならびに
好ましい圧縮応力の生成が達成される。そのような結果は、溶接レール
において表面を周期的パルスエネルギー衝撃処理することにより内部
の圧縮波を引き起こし、レールの溶接シームの近傍にまたはレール自体に金属可塑性状態を誘起することによって達成される。
【0027】
適用されたパルスエネルギーは、溶接部接合部とレールの母材部位
との間に
漸減する勾配を有する応力パターンを作り
だすような様式で、レール内に圧縮波を作り
だす。これが、生成物全体の耐荷重能力を低下させて破損および疲労に弱い部域を
導く応力欠陥および予測不能または制御不能な応力パターンを除去する。最大の効果をあげるために
、衝撃処理
を超音波により引き起こす
ことが好ましい。
【0028】
全体として本発明は、
製造、保守、および修理の種々の段階において、溶接レールの内部微細構造を再加工して
、溶接部近傍またはレール自体の構造応力パターンを緩和し
再分布させることにより、先行技術の欠陥を修正する。この処置が、レールの寿命および耐荷重能力を低下させる
重大な応力パターンまたは
応力集中を、除去または最小化する。したがって、本発明によって
提供される超音波衝撃技術の
適用は、いくつかの先行技術の技術的操作
に取って代わり、溶接レールの耐荷重能力の改善、ならびに疲労、応力腐食、および
激甚な破損をもたらす応力集中中心の減少に役立つ。
【0029】
このようにして、本発明にしたがって、超音波衝撃技術の非破壊的表面処理工程は、
応力を緩和しかつ溶接部位を著しく強化する勾配を有する応力パターンを導入する圧縮波パターンにより、溶接レール中の溶接部の近傍
に可塑性状態を作りだす。その結果生じる溶接レール中の内部
の勾配を有する微細構造パターンは、溶接部の近傍の金属粒子構造の周囲に通常は集中する微細
な応力集中境界を回避する。これが、より長い寿命、より高い耐荷重能力、および増大した耐摩耗性を有する溶接レールをもたらす。そのようなUIT処理工程は、最初の製品製造、保守作業、および寿命を回復するための応力疲労または
激甚な破損の処理において有用である。
【0030】
割れなどの欠陥の修理
という技術的操作において、本発明は、
内部残留応力欠陥を緩和しかつ割れの形成と進行の変遷パターンに影響を及ぼすためのさらなる手段として、鋭いエッジを面取りする機械的変形工程
および溶接レール上に強化構造を溶接する追加の工程
で補足された、UIT処理の基本的方法の工程を特徴とする。本発明のある態様では、
溶接レールの表面上に、UITトランスデューサーヘッドが、
残留応力を緩和しかつ溶接金属および熱影響部の微細構造に影響を与えるのに十分な超音波応力およびインパルス応力を溶接部内部にもたらす超音波の
波長の4分の1の倍数の距離
を置いて、間隔を
空けて配置され
る。溶接部領域の温度は、周囲温度から溶融金属温度までの範囲で変動する。超音波トランスデューサーヘッドは
、超音波の波節点および波腹点
が確実に溶接継手セクションに沿って変位するよう移動可能であってもよいし、または、例えば
、低い多周波数から高い多周波数へ
のおよびその逆
への多周波数の変化に対応する
共振領域の範囲中での加振搬送周波数
の「掃引」を用いて超音波の波節および波腹の位置を制御する場合には
、静止していてもよい。超音波トランスデューサーヘッドは溶接部またはその近接領域の表面に取り付けられ;表面の温度は周囲温度から材料の可塑性温度まで変動し得る。超音波トランスデューサーヘッドは、溶接部または
熱影響部の表面に沿って移動し、
好ましい圧縮応力により、表面層
に塑性変形領域を作りだし、前記領域を通して材料中に超音波を
惹起し、その超音波は、残留応力を緩和
しかつ溶接金属および
熱影響部の微細構造に影響を与えるのに十分な超音波応力
分布および変形を伴う。
【0031】
したがって本発明は、
必要とする工程または技術的操作
が最小限である、最初の溶接時
における耐荷重寿命および強度を増大させるためのレール処理の非破壊的変形方法であって
、以下を含む方法を提供する:好ましくは
ある周波数および大きさ
の周期的
な超音波衝撃エネルギーを用いて、レールの溶接部または継手の外表面に、
該レー
ル外表面上の部位に溶接されている
シームの近傍で、パルス衝撃エネルギーを非破壊的に引き起こす工程;溶接シーム接合部の近く
およびそれを含む箇所の内部
の圧縮波パターンによって誘起される一時的
な可塑性部域をレールの内部に誘起し、それによりレールの内部結晶組織を再配列させて、レール表面
の溶接シーム接合部に、実質的に無粒
の白色層を構成す
るパターン化
された粒子構造を作りだし、レール中の内部基底点に向けられた
勾配を有する応力パターンへと導く工程。その結果生じる粒子構造
の勾配は、粒界に集中する傾向がある内部
の微細応力中心を実質的に欠き、したがって、超音波エネルギーが
取り去られそれに伴う一時的
な可塑性状態が終了した後にレールに残る勾配
区域について、粒界
の応力中心
の顕著な微細欠陥が除去される。
【0032】
このように、前述の態様によって説明したように、本発明は、レールの耐荷重寿命および強度を増大させるために、最初の
製造過程
中、溶接
中、溶接
後、または使用されたレールの修理中に、レールを処理する新規な方法を提供する。それは、本発明の態様に関連して以下に詳述する他の長所、特徴、および態様を有する。
【0033】
本発明はまた、レールの破断または割れのような
激甚な破損を修理する方法を包含する。さらに、この修理方法は、最低限の専門的な機械設備を用いて、割れ領域の内部残留応力を緩和することと、塑性変形
によって
、高められた強度特性
の領域を生み出すことと、内部微細構造
の応力の欠陥および集中部を減少させることと、割れおよびそれに隣接した溶接シーム接合部の近くの境界層中に好ましい圧縮応力領域を形成することと、溶接シームからレール中へと広がる
勾配を有する応力パターンを作りだし、それによってレールの溶接継手の外部応力および内部応力を減少させることと、
処理後のレールの
有用性存続期間においてさらなる割れの進行および応力疲労破損を減少させるかまたは予防することとに役立つ。さらに
、割れおよび割れ端部
の応力中心に沿った鋭い端部構造が破壊的に除去されること
により、更新された
推定耐用寿命のさらに顕著な延長、および応力疲労の減少も達成される。
【0034】
本発明の方法はまた、特定の信頼性基準により決定される溶接継手の状態および特性を制御する手段とし
て超音波衝撃処理
を使用
することに基づ
き、現在の
限定的な一般水準を
高める方法を提供する。信頼性基準には、溶接継手の下記の機械的特徴が含まれる:降伏強度、極限強度、衝撃強度、および疲労耐性(顧客によって指定されたサイクル数での疲労限界に基づいて評価される)。この基準は、以下に関して使用することができる:(a) 溶接部および
熱影響部の局所的超音波衝撃処理;(b)
溶接継手の低周波振動と共振する溶接部か
らレール
長に沿った
、およびその横断面
における、
超音波パルスによって応力波腹領域および移動波腹領域に惹起される、遠隔超音波衝撃処理;または(c) 溶接中の冷たい金属に対する、または作業環境
によっては溶接後の
焼きならし加熱を伴う、遠隔超音波衝撃処理。UIT手順
は、この後で詳述するように、手動の、携帯用の、および/または機械化された超音波衝撃処理工具を用いて実行することができる。
【0035】
本発明の方法は、上記の超音波衝撃処理手順に基づいて、鉄道の荷重が絶えず増大している条件下において、溶接継手の所定の品質および信頼性を保証する手段として、結果の一貫性を増大させ、結果のばらつきを最小限にする方法を提供する。標準
試験においては、結果のばらつきは60%までであることは常識である。UIT後のばらつきは15%を超えることはない。
【0036】
この後に詳述するように、本発明に従う超音波衝撃処理を用いてテルミット溶接継手およびレールを処理すること
は、溶接部、継手、およびレールの特徴および/もしくは特性を改善し、
かつ/または溶接部、継手、およびレールの新しい特徴および/もしくは特性を提供する。改善されたおよび/または新しい特徴および/または特性は、レールの溶接前に、溶接中に、溶接後に、および/または修理中に得られ得る。さらに、これらの溶接継手またはレールの改善されたおよび/または新しい特性は、超音波衝撃処理を、溶接継手を修理するためだけでなく、レールを製造および補修するために使うことにより、テルミット溶接および他の
種類の溶接の用途を拡張する。超音波衝撃処理により処理された溶接継手の改善されたおよび/または新しい特性には、溶接部、
熱影響部(HAZ)、溶接部止端、ソルバイト構造およびベイナイト構造中に、微細な粒子および優れた均一性の粒子を有すること、ならびに高温割れ、気孔、孔、スラグ混入、および不良融合などの欠陥の除去が含まれるが、これらに限定されない。さらに、
レールのテルミット溶接または他の
種類の溶接と組み合わせて超音波衝撃処理で処理されたレールの母材の他の特性には、増大した衝撃強度、接触強度、熱および収縮によるサイズ
変化に対する耐性、低サイクルおよび高サイクル強度、腐食および腐食疲労損傷に対する耐性、変動する荷重下の疲労限界および耐衝撃性、ならびに現在の
一般水準と同程度の材料強度レベルにおいて保証される最大許容荷重の増大が含まれる。
【0037】
テルミット溶接部、および溶接部を囲む領域に超音波衝撃処理を適用することにより達成される溶接継手の改善されたおよび新しい構造特性には以下も含まれるが、これらに限定されない:液相
状態の溶接材料の改善された収率;超音波衝撃処理パルスの影響下で溶融池の中心から液体金属を移動させることによる、溶接部の境界
における衝風冷却領域中での最適化された熱
交換および質量交換;ならびに超音波衝撃処理パルスを作用させることにより引き起こされる、孔、液化割れ、不安定相、粒間の
析出および損傷、ならびに不完全融合の形のミクロおよびマクロの欠陥の抑制。溶接欠陥の例を
図9(a)〜9(e)に示し、
そして図10(a)〜10(e)には、超音波衝撃処理
を伴う溶接
によるこれらの欠陥の最小化を示す。
【0038】
本発明の方法はまた、第一、第二、および第三の種類の応力および構造変形の制御、ならびにその応力変形状態への影響ならびに粒子、亜粒子、およびモザイクブロックのレベルの構造への影響により決定される材料特性の制御を提供する。上に列挙した効果は、
そのモードが作業に依存して設定される、
多様な超音波衝撃の直接的作用の結果である。制御されるパラメータには、荷重下の超音波トランスデューサー振動の振幅および周波数、
モードおよび、処理される材料の特性に依存する
反発のパラメータが含まれる。
【0039】
本発明の方法はまた、引張応力が作用する以下の領域において、溶接金属およびHAZの最適化されたたわみモードを提供する:(1) 溶接継手の横断面中およびその表面;(2) 溶接継手金属中および表面、レールの頭部、壁および下部、ならびに要素間の
隅肉領域中のそれらの端の、応力集中領域;(3) 溶接部とHAZ金属
との間の、およびHAZとレール
母材との間の移行領域;ならびに(4) 修理された場所。
【0040】
加えて、本発明の方法は、超音波衝撃処理効果の下での改善されたプロセス信頼度および継手品質に基づいて、溶接
用の溶接継手を準備する際および溶接中に
、技術的パラメータの範囲を拡大し、制限を最小限にすることを提供する。技術的パラメータ(より正確には要件)には、以下が含まれる:(a) 溶接
用の継手の準備に対する要件:間隙、端部の垂直性、面取り;(b) 溶接条件:入熱(アーク溶接のための電流および電圧)、速度、電極直径、予熱および併行して行われる加熱の温度;ならびに(c)
溶接材料:溶接部の、
種類、化学組成、単位長または単位体積当たりの
溶接材料の量。改善されたプロセス信頼度とは、溶接継手の物理的・機械的特性のばらつきが最小である、
製造対象物の安定的で再現可能
な性能をもたらす可能性を意味する。改善されたプロセス信頼度は、
対象物の所定の性能
の獲得に関与するプロセスパラメータを精密に制御できる可能性によって達成される。
【0041】
本方法はまた、本発明の超音波衝撃処理手法に基づいて、溶接継手の溶接後熱処理プロセスの統計的信頼度を改善し、およびさらに、特定の材料特性を有しかつ
断面領域間の
継手要素の特定の比率を有する溶接継手の熱処理を廃止する。
【0042】
本方法は、溶接処理中および超音波衝撃処理中における溶接継手の品質管理の手段を提供する。本方法は、材料の状態を変化させる超音波衝撃処理中に、能動的制御を提供するために
逆磁歪信号を用いる工程、および高品質用の基準値と比較した振幅および周波数の特徴の分析に基づいて、その規格に適合させる工程を提供する。この方法は、材料状態変化のインプロセス(UIT中の)制御のための、および高品質参照試料の製造工程の特徴と比較した振幅・周波数の特徴の分析に基づいて、材料を標準的な要件に適合させるための、
逆磁歪信号(back magnetostriction signal)の使用を意味する。様々なプロセスが引き起こす、溶接中に生じる溶接継手中の不規則性が、
逆磁歪信号の振幅・周波数の特徴を変化させる。これらの特徴と高品質参照試料の特徴との比較の結果を、プロセスの間リアルタイムで記録してインプロセス制御に用いる。能動的制御は、超音波衝撃処理パラメータが高品質用の基準値へ最大限近づくように管理する信号を生成し、それによって、超音波衝撃処理中のプロセスの能動的制御および管理がもたらされ、その結果、処理後の受動的制御に取って代わる。
【0043】
本発明の方法にしたがって、使用中のレールの溶接継手の状態を評価し予測するために、移動可能な音響監視システムを用いる。このシステムは、溶接部領域
における標準化された衝撃に対するレールの応答信号を
利用する。前述の信号のパラメータの数学的処理、および
溶接継手についての最初のUIT
パスの後に得られた結果および/または高品質参照試料の作製中に記録された結果との比較により、レールの状態を予測すること、または現在の
基準に対するそれの一致度を検査することが可能になる。
【0044】
本発明の方法によって、レールが使用されている間の溶接レール継手の状態の評価および予測が可能である。これは、
標準化された衝撃に対するレール溶接部からの応答信号を用い
ること、ならびに溶接部特性を、溶接継手の最初の超音波衝撃処理の後に得られる結果とおよび/または高品質用の参照信号のパラメータと比較して数学的に処理することに基づ
き、本発明の方法の携帯型装備によって、遂行される。この応答信号は、トランスデューサーの逆磁気歪み電圧のオシロスコープ画像またはそのオシロスコープ画像のディジタル記述である。オシロスコープ画像またはそのディジタル記述の形は、標準化された超音波衝撃に対する処理された表面の応答によって生じる。その信号は、処理された
対象物の状態に関する情報機能を有する。参照信号のパラメータは、
それらの作製後に高品質参照試
料または標準
的な継手か
らさらなるモニタリングのために得られた、応答信号に対応する値を反映する。
【0045】
溶接レールに関連するいくつかの欠陥には、導入された圧縮応力または引張応力の緩和、内部欠陥の存在、Q係数で表される内部摩擦基準に照らした粒度、および表面硬度が含まれる。これらの特徴は、
逆磁歪信号パラメータによって容易に同定することができる。主な
逆磁歪信号パラメータには、周波数、振幅、位相、および減衰率が含まれる。
【0046】
超音波衝撃処理を用いてテルミット溶接継手を処理することにより、下記の中の少なくとも一つが提供される:
− 強靭性、接触強度、熱および収縮
によるサイズ変化に対する耐性、低サイクルおよび高サイクル耐久性、腐食および腐食疲労損傷に対する耐性、変動する荷重下
での耐久限度、
ならびに耐衝撃性が増大すること;
− 材料の強度に対して保証される最大許容荷重が
現在の一般水準と比べて増大すること;
− 溶接部横断面
、HAZ
、および溶接部止端
において、微細粒構造に対し
て保証された均一性が提供されること;
− 液相
状態の溶接材料の収率が増大すること;
− ガス抜きされ
た、溶接された材料が提供されること;
− 超音波衝撃処理パルスの影響下で溶融池の中央から液体金属を移動させることによる、溶接部の境界
における衝風冷却領域中の熱
交換および質量交換が最適化されること;
− 超音波衝撃処理パルスを作用させることに起因する現象による、孔、液化割れ、不安定相、粒間の
析出および損傷、ならびに不完全融合の形で存在するミクロおよびマクロの欠陥が抑制されること;
− 第一、第二、および第三の種類の応力および構造変形が制御されること;
− 材料のたわみモード、ならびに粒子
構造、亜粒子
構造、およびモザイク構造に影響を与えることにより決定される材料特性が制御されること;
− 引張応力領域中の溶接部およびHAZ金属のたわみモードが最適化されること;
− 超音波衝撃処理影響下
における改善されたプロセス信頼度および継手品質に基づいて、溶接用の溶接継手を準備する際および溶接中に
、技術的パラメータの範囲が拡大して制限が最小限になること;ならびに
− 溶接継手の溶接後熱処理プロセスの統計的信頼度が改善されること、および溶接継手の熱処理が廃止されること。
【0047】
図1〜3に示すように、溶接中にまたは溶接後に、本発明の超音波振動をレールへ導入する。超音波衝撃処理は好ましくは、溶接中
の冷たい金属に対して、また
は作業条件に
よっては溶接後の焼きならし加熱を伴って
、行われる。
図1は、加振中の、レール上の波動応力波腹領域の超音波振動を示す。
図1は、応力波と溶接部領域
とを重ね合せた条件下での、超音波トランスデューサーの搬送周波数でのレールの超音波振動
の加振の概略図を示す。レールの超音波振動を加振するために、超音波衝撃工具を、レールに垂直に、溶接継手の
横断面から
、超音波の最初の1/4
に等しいかまたはその倍数の距離に
置く。
【0048】
図2は、溶接中にレールを加振している間の、移動波腹領域でのレールの超音波振動を示す。その際、超音波衝撃工具はレールに垂直に置かれる。
【0049】
図3は、溶接
中に加振
している間の、レールの輪郭横断面に沿った、レール上の超音波振動を示す。
図3は、工具をレール頭部に取付けた場合の、レール頭部からレール基部までのレール軸に垂直な方向のレールの横断面中の、超音波応力および超音波変位振幅の分布を示す。最大変位振幅は、レール頭部およびレール基部表面に位置するセクション点に対応する。最大超音波応力は、最小変位(あるいは波節)の領域に対応し、それはこの場合レール基部に生じる。しかし、例えば
、加振周波数を
、多重共振領域中で低い多周波数から高い多周波数へ
とおよびその逆
へと「掃引する」ことによって、超音波の波節および波腹の位置を制御することが可能である。
【0050】
本発明による、テルミット溶接されたレール基部継手の超音波衝撃処理を、
図4に示す。レールの超音波衝撃処理
は、好ましくは冷たい金属
に対して、または
、作業条件に
よっては溶接後の焼きならし加熱を
伴って、行な
われる。
図5は、本発明による超音波衝撃処理で使用するための好ましい超音波衝撃処理工具を示す。超音波衝撃工具30は、好ましくは振動速度方向変換器-導波管32、ピンホルダ取付具34、導波管32の第一端上の、ピンホルダ取付具34により導波管32へ接続するピンホルダ36を含む。ピンホルダ36の自由端は、好ましくはその上に少なくとも一個の圧子38を有する。工具は、レールに沿って移動可能なトロリーまたは他の適当な
種類の車両
上に置いて、手動で用いることができる。本発明の超音波衝撃処理を、適所にトロリーを固定して、またはレールに沿って動かしながら、行うことができる。
【0051】
図6は、超音波衝撃工具30を用いて、レールの溶接部輪郭に沿って行なわれる、溶接部の機械化
された超音波衝撃処理の一態様を示す。
【0052】
図7は、手動の超音波衝撃工具を用いる、レールの溶接継手輪郭に沿った手動超音波衝撃処理の一態様を示す。処理は、冷たい金属
に対して、または作業条件に
よっては溶接後の焼きならし加熱を
伴って、行な
われる。超音波衝撃処理により、溶接継手輪郭に沿っ
て(レールの輪郭全周に沿っ
て)溶接部表面および溶接部止端
が処理
される。
【0053】
図8は、レールの溶接領域の側面図を示す。示されているように、溶接部に隣接する領域と共に、溶接部領域
が超音波衝撃処理により処理
される。
【0054】
図9(a)〜9(e)は、高温割れ、気孔、孔、スラグ混入、および不良融合を含む、超音波衝撃処理をして
いないレールに生じる可能性のあるいくつかの欠陥を、それぞれ示す。
図10(a)〜10(e)は、
図9(a)〜9(e)の溶接欠陥が、溶接および超音波衝撃処理の後に最小化されたことを示し、それには、高温割れ、気孔、孔、スラグ混入、および不良融合のそれぞれの除去または最小化が含まれる。
【0055】
溶接部の破損
の大部分は、溶接部の疲労または混入物により生じる。疲労破損は、
ほとんどの場合、レールの腹部および下側領域の
隅肉の溶接部止端で生じる。
図11は、レール40上の疲労割れの開始部位を示す。レール40は、レール頭部44、レール腹部48、レール基部50、およびレール腹部48とレール基部50との間の
腹部-基部間隅肉46を有する。レール40は、レール頭部44上に内部疲労割れ42、
隅肉46中の溶接部止端に疲労割れ52、および基部50中の溶接部止端に疲労割れ52を有する。
【0056】
レールは、その製造後に、
現場での組立て前にまたは組立て後に、保守および損傷防止の
一環として、甚大な損耗の後に、または任意の他の適当な期間に、処理してもよい。
【0057】
超音波衝撃処理を用いたレールのテルミット溶接部の疲労寿命の改善を測定するために
、二段階で
試験を行なった。段階1は、大まかな疲労寿命の増加の指標を得るための基部、腹部、および頭部をUITで処理した試料の最初の
試験 − 最初のセールス
試験であった。テルミット溶接部の疲労寿命に対する標準的な要件は、
下記のように、荷重を掛けての
試験プログラム下
で200万サイクル以上
であることである。母材と溶接材料
との接合部において、溶接部の両側の母材のHAZ中を距離15mmに亘って、試料を、超音波衝撃処理により処理した。超音波衝撃処理を、レール頭部、レール腹部、およびレール基部を含むレール全体に行った。UIT処理した
被検物の最初の
試験結果は500万サイクルまでに及び、
試験を停止した。試料は破損しなかった。
【0058】
段階2で、3つの
被検物を作製し、次
に本明細書に記述したように
UITで処理した。段階2では、レール基部および腹部領域のみを処理した。処理域は
、母材と溶接材料
との接合部
における、
溶接部の両側の、母材のHAZ
の15mmに亘る距離であった。
図12(a)および12(b)に示すように、処理領域を、溶接
フィラー材と
母材との間の
接合部域「A」、および部域「A」のすぐ隣りのレール母材上に約10mm〜約15mmの幅を持つHAZ部域「B」として示す。
【0059】
本発明では、任意の適当な超音波衝撃システムを用いてよい。しかし、上の
試験では、無荷重時の振幅が26ミクロンの1Kwシステムを備えた手動工具を有する携帯式超音波衝撃処理システムを用いた。工具の周波数は27kHzであり、かつ電力設定はフルパワーであった。圧子には、標準的な半径3mmおよび長さ25mmの針を用いた。
【0060】
試験溶接部を、超音波衝撃処理による処理後に目視により検査した。
図13および14は、処理されたレール基部の下側を示す。
図15は処理されたレール腹部を示し、および
図16は、処理されたレール頭部の下側を示す。
【0061】
次に、処理されたレールの疲労
試験を行なった。
図17に示すように、750kN MTS
試験機を用いて、処理されたレールに対して4点
曲げ疲労試験を行なった。
図18に示すように、
試験機上の支持ローラー60の間の距離は、1,250mmであり、また
加圧ローラー62の間の距離は150mmであった。しかし、支持ローラー間および
加圧ローラー間の任意の適当な距離を有する任意の適当な
試験機を用いてもよい。レールのレール基部は、
試験中
、引張応力に曝された。
【0062】
本試験を、レール基部下側での応力範囲+20〜+200MPa (応力振幅180MPa)、周波数8Hzで行なった。試料は破損
することなく519万サイクルに達した。このとき、応力範囲を応力振幅200MPa (+20MPa〜+220MPa)に増加させた。応力を、313,000MPaの抵抗モーメントによって計算した。
試験は、ヨーロッパアクセプタンスプログラム/European Acceptance Programの
基準およびガイドラインに合致するように行なった。
【0063】
疲労
試験の結果の概要を
図30に示し、この後に詳述する。
【0064】
試料No.1は、応力振幅180MPaで5.19×10
6サイクル
の後に、割れも損傷も示さない。振幅を200MPaに増加させた後、試料は、この振幅での追加の3.39×10
6サイクル
の後に
壊れた。この試料の破断は、テルミット溶接プロセスによってレール基部の下側に生じた過剰
な溶接金属の「過剰
な膨らみ(over blousing)」(レールの境界から膨れ出る)のところで始まった。試料No.1の破断方向を
図19および20に示し、試料No.1の破断面を
図21および22に示す。
【0065】
試料No.2は、応力振幅180MPaで2.25×10
6サイクル
の後に
壊れた。破断は、レール基部の下側の混入物(砂粒子)のところで始まった。試料No.2の破断方向を
図23および24に示し、試料No.2の破断面を
図25および26に示す。
【0066】
試料No.3は、応力振幅180MPaで2.44×10
6サイクル
の後に
壊れた。破断は、レール基部の上側のテルミット溶接プロセスの結果の混入物のところで始まった。試料No.3の破断方向を
図27に示し、試料No.3の破断面を
図28および29に示す。
【0067】
顕微鏡検査のために試料No.2のレール基部の横断面を取り出した。検査は、溶接金属と母材の
熱影響部との間の移行領域に
的を絞った。検査の結果を
図31〜37に示す。
図31は、レール基部の下側のテルミット溶接部の横断面を示す。
図32は、
図31のレール基部(左)
の溶接部の下側
における、レール基部の溶接部から母材への移行領域を示し、これはUIT処理領域の塑性変形ならびに「過剰に膨らんだ」過剰
な溶接金属を示す。
図33は、
図31の破断後のレール基部(右)
の溶接部の下側
における、レール基部の溶接部から母材への移行領域を示す。
図34は、
図32の四角で囲まれた領域の、高倍率での詳細を示す。
図35は、
図33の四角で囲まれた領域の、高倍率での詳細を示す。
図36は、
図34の四角で囲まれた領域
の変形の
、高倍率での詳細を示し
、超音波衝撃処理の結果
の最大変形深度
が100μmであることを示す。
図37は、
図35の四角で囲まれた領域
の変形の
、高倍率での詳細を示し
、超音波衝撃処理の結果
の最大変形深度
が80μmであることを示す。一般に、顕微鏡検査中の可視の変形の深度は、50μm〜100μmである。
【0068】
試験の結果、試料No.1は、
規定の応力振幅
180MPaで5.19×10
6サイクル
の後では、
壊れなかった。応力振幅を200MPaに
増加させて初めて、
被検物は、追加の3.39×10
6サイクルを実行した後に破断された。試料No.2および3は、
規定の応力振幅
180MPaで2.25×10
6および2.44×10
6サイクル
の後に、それぞれ破断された。両方の試料とも溶接部中の混入物により破損した。規格
では
、応力負荷振幅
180MPaで2×10
6サイクル
が必要とされ、それはこれらの試料の両方によって達成された。
通常の未処理の条件下
、即ち超音波衝撃処理なしでは、
溶接部に混入物を有する試料は1.5×l0
6サイクルより極めて前に破損
したであろうこと
が、歴史的データによる結論として示されている。
【0069】
溶接部欠陥が有ってさえも、本発明による超音波衝撃処理により、2×10
6という望ましい基準を達成することができる。
【0070】
当業者に明白であるように、前述の明細書の範囲内で様々な改変を行うことができる。当業者の能力の範囲内であるそのような改変は、本発明の一部を形成し、添付の特許請求の範囲に包含される。