特許第5797388号(P5797388)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5797388
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】火災報知設備
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20151001BHJP
【FI】
   G08B17/00 L
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-222517(P2010-222517)
(22)【出願日】2010年9月30日
(65)【公開番号】特開2012-79012(P2012-79012A)
(43)【公開日】2012年4月19日
【審査請求日】2013年3月6日
【審判番号】不服2014-11715(P2014-11715/J1)
【審判請求日】2014年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 隆行
【合議体】
【審判長】 冨岡 和人
【審判官】 島田 信一
【審判官】 中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平6−96376(JP,A)
【文献】 特開平8−180281(JP,A)
【文献】 特開2002−251679(JP,A)
【文献】 特開平8−273076(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれにアドレスが割り付けられた複数の端末機器と、前記複数の端末機器とアドレスに基づく信号伝送を行う火災受信機と、該火災受信機から送信される信号に基づいて表示を行う火災表示機と、からなる火災報知設備において、
前記火災受信機は、端末機器から火災または故障の信号を受信したときに、その端末機器の重複しない一意的な番号であって変更されることがないアドレスおよび前記アドレスに対応する重複や変更の可能性がある地区名を表示する火災受信機表示操作部と、その端末機器の少なくとも前記アドレスと前記地区名を火災表示機へ伝送する表示機用伝送部を備え、
前記火災表示機は、表示手段と、該表示手段に前記火災受信機から送信された前記アドレスまたは前記地区名、または、前記アドレスと前記地区名の両方を表示するための表示切り替え手段を備えたことを特徴とする火災報知設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災報知設備に関するものであり、特に火災表示機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
感知器や中継器などの端末機器にアドレスが割り付けられ、火災受信機は、端末機器のアドレスに基づいて伝送を行い火災や故障の情報を収集する火災報知設備がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、火災受信機では、火災や故障などの防災に係わる信号が受信部で受信されると、信号に対応した地区名を表す棟・階・地区のデータをROMから読み出し、火災表示機に伝送し、火災表示機はそのデータを受信して表示していた(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
上記により、建物を利用しているユーザーは、火災表示機に表示された地区名から火災等の異常が発生した場所を火災受信機以外でも容易に判別することができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−255294号公報
【特許文献2】特開平6−96376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
地区名での表示はユーザーには、わかりやすい表示ではあるが、1つの地区に複数の端末機器が設置されている場合は、設置されているどの端末機器が信号を発したときにも火災表示機に同じ地区名が表示され、また、間仕切りが変更になったなどの理由により、端末機器が属する地区が変更されると地区名が変更されてしまうため、メンテナンスなどの際に端末機器を特定するためには、信号を発した端末機器の近くに火災表示機が設置されていたとしても、火災受信機まで行って確認をしなければならなかった。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、火災表示機が、地区名データと、アドレスデータのどちらか一方、または、両方を表示するための表示切り替え手段を備えるため、通常使用時においては、火災表示機で地区データ(棟階地区)を表示するので、ユーザーが火災等の発生場所を容易に判別でき、メンテナンス時においては、火災表示機でアドレスデータを表示するので、火災受信機以外の場所でもメンテナンス作業者がメンテナンスを行う端末機器の設置場所を容易に判別できることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係わる火災報知設備は、それぞれにアドレスが割り付けられた複数の端末機器と、前記複数の端末機器とアドレスに基づく信号伝送を行う火災受信機と、該火災受信機から送信される信号に基づいて表示を行う火災表示機と、からなる火災報知設備において、火災受信機は、端末機器から火災または故障の信号を受信したときに、その端末機器の重複しない一意的な番号であって変更されることがないアドレスおよび前記アドレスに対応する重複や変更の可能性がある地区名を表示する火災受信機表示操作部と、その端末機器の少なくともアドレスと地区名を火災表示機へ伝送する表示機用伝送部を備え、火災表示機は、表示手段と、表示手段に火災受信機から送信されたアドレスまたは地区名、または、アドレスと地区名の両方を表示するための表示切り替え手段を備えたものである。

【発明の効果】
【0012】
火災表示機が、地区名データと、アドレスデータのどちらか一方、または、両方を表示するための表示切り替え手段を備えるため、通常使用時においては、火災表示機で地区データ(棟階地区)を表示するので、ユーザーが火災等の発生場所を容易に判別でき、メンテナンス時においては、火災表示機でアドレスデータを表示するので、火災受信機以外の場所でもメンテナンス作業者がメンテナンスを行う端末機器の設置場所を容易に判別できる。
【0013】
また、ユーザーとメンテナンス作業者が一緒に端末機器を確認する場合には、両方を表示することによりユーザーもメンテナンス作業者も端末機器の設置場所を容易に判別できる。
【0014】
また、火災受信機から地区名データと、アドレスデータを火災表示機に送信するため、火災表示機に火災表示機記憶部に地区名データを設定する必要が無いので間仕切り変更などで地区名データを変更する際、火災受信機のデータを変更するだけでよい。
【0015】
また、火災受信機から受信した端末機器のアドレスデータだけを送信して、火災表示機で火災表示機記憶部からアドレスデータに対応する地区名データを読み出すため、火災受信機と火災表示機の間の通信の負荷が軽くすることができる。
【0016】
また、メンテナンス作業者が表示切り替えを戻し忘れても、火災表示機は、所定時間経過後に自動的に地区名データ表示に戻るため、ユーザーが混乱することがない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の形態1に係わる火災報知設備の全体構成図である。
図2】実施の形態1に係わる火災報知設備の構成を説明するブロック図である。
図3】実施の形態1に係わる火災時における火災表示機の表示の一例である。
図4】実施の形態1に係わる故障時における火災表示機の表示の一例である。
図5】実施の形態1に係わる火災報知設備の設備図の一例である。
図6】実施の形態1に係わる故障時における火災表示機の表示の一例である。
図7】実施の形態1に係わる故障時における火災表示機の表示の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本実施の形態1
本実施の形態1では、本発明に係わる火災報知設備は、伝送信号(パルス信号)を送受信することによって火災感知器等が検知した火災信号等を受信すると火災発生を報知させるいわゆるR型の火災報知設備である場合を例に説明する。
【0019】
(火災報知設備の全体構成)
まず、本実施の形態1に係わる火災報知設備について説明する。
図1は、実施の形態1に係わる火災報知設備の全体構成図である。図2は、本実施の形態1に係わる火災報知設備の構成を説明するブロック図である。火災受信機FAには、信号線DGを介して火災表示機が接続され、さらに信号線SGを介して、各種の端末機器が接続されている。
【0020】
図1では、火災表示機DPが信号線DGに接続されていて、光電式アナログ感知器AD1〜AD9、熱アナログ感知器AD10〜AD15、アドレッサブル発信器AD16〜AD18、地区音響用中継器AD19〜AD24が信号線SGに接続されている。なお、本実施の形態1では、信号線SGにより火災受信機FAに接続された機器を、端末機器と総称する場合がある。
【0021】
光電式アナログ感知器AD1〜9は、煙感知器の一種であって、検出した煙のアナログ値を火災受信機FAに送信する。
【0022】
熱アナログ感知器AD10〜15は、熱感知器の一種であって、検出した周囲温度のアナログ値を火災受信機FAに送信する。
【0023】
アドレッサブル発信機AD16〜AD18は、いわゆる火災発信機であって、火災の発見者が手動操作する押しボタンを備え、押しボタンがオンされると火災信号を火災受信機FAに送信する。
【0024】
地区音響用中継器AD19〜AD24には、それぞれに地区ベルBが接続されていて、火災受信機FAからの制御信号に従って、地区ベルBに電圧を印加して、火災を報知するために地区ベルBを鳴動させる。
【0025】
光電式アナログ感知器AD1、AD2と熱アナログ感知器AD10および地区音響用中継器AD19は、例えば図1に示されるように複数ある棟のうち棟1の1階の地区1に設置されている。また、光電式アナログ感知器AD3と熱アナログ感知器AD11とアドレッサブル発信機AD16および地区音響用中継器AD22は、棟1の1階の地区2に設置されている。その他の端末機器についても図1に示される棟、階、地区に設置されている。
【0026】
火災表示機DPは、火災受信機からの制御信号によって、火災発生場所等の表示を行う。
【0027】
(火災報知設備のブロック図)
次に火災報知設備の詳細な構成を説明する。
図2では、説明の都合上、火災受信機FAと火災表示機DPを中心に記載しているため、端末機器は光電式アナログ感知器AD2以外を省略している。
【0028】
(火災受信機)
火災受信機FAは、火災受信機制御部11、火災受信機表示操作部12、火災受信機記憶部13、端末機器用送受信部14、および火災表示機用送受信部15を備える。火災受信機制御部11は、火災受信機記憶部13に予め記憶された制御プログラム等に従って、火災受信機表示操作部12や端末機器用送受信部14や火災表示機用送受信部15を含む全体の動作の制御を行う。火災受信機表示操作部12は、端末機器が検知した火災に関する情報や各端末機器の状態等を表示する画面やランプなどの表示手段と、火災受信機FAや各端末機器や各火災表示機に対する操作を行うためのタッチパネルやボタンなどの操作手段を備えている。
【0029】
火災受信機記憶部13は、火災受信機制御部11を動作させるためのプログラムおよび端末機器がどの地区に設置されているかの地区名データ等の各種データが格納されている。端末機器用送受信部14は、火災受信機制御部11に制御されて各端末機器に対して信号を送信し、また、各端末機器から送信された信号を受信する。火災表示機用送受信部15は、火災受信機制御部11に制御されて火災表示機DPに対して信号を送信し、また、火災表示機から送信された信号を受信する。
【0030】
(端末機器)
端末機器である、光電式アナログ感知器AD2は、端末機器制御部16、センサ17、端末機器記憶部18、および端末機器送受信部19を備える。端末機器制御部16は、端末機器記憶部18に予め記憶された制御プログラム等に従って、センサ17から検出した煙のアナログ値を読み出したり、端末機器送受信部19を含む全体の動作の制御を行ったりする。センサ17は、LED等の発光素子を発光させて煙による散乱光を受光素子で検出して煙の濃度を検出する。端末機器が熱アナログ式感知器の場合は、サーミスタ等の温度により抵抗値が変化する素子などにより温度を検出する。
【0031】
端末機器記憶部18は、端末機器制御部16を動作させるためのプログラムおよびアドレスの番号等の各種データが格納されている。端末機器送受信部19は、端末機器制御部16に制御されて火災受信機FAに対して信号を送信し、また、火災受信機FAから送信された信号を受信する。
【0032】
(火災表示機)
火災表示機DPは、火災表示機制御部20、火災表示機表示操作部21、火災表示機記憶部22、および火災表示機送受信部23を備える。火災表示機制御部20は、火災表示機記憶部22に予め記憶された制御プログラム等に従って、火災表示機表示操作部21や火災表示機送受信部23を含む全体の動作の制御を行う。火災表示機表示操作部21は、火災受信機FAから送信された端末機器が検知した火災に関する情報や各端末機器の状態等を表示する画面やランプなどの表示手段と、火災表示機DPの操作を行うためのタッチパネルやボタンなどの操作手段を備え、操作手段の一つとしての表示切り替え手段である表示切り替えスイッチ24を備えている。
【0033】
火災表示機記憶部22は、火災表示機制御部20を動作させるためのプログラムが格納されている。火災表示機送受信部23は、火災受信機FAから送信された信号を受信し、また火災表示機制御部20に制御されて火災受信機FAに対して信号を送信する。
【0034】
(火災受信機と端末機器の通信動作)
火災受信機FAと端末機器との間で行われる通信について説明する。
端末機器には、重複しない一意的な番号であるアドレスが設定されている。火災受信機FAは、そのアドレスにより端末機器の個体の識別を行い、通信を行う。
【0035】
図1においては、端末機器に付された符号の数字部分がアドレス番号を示しており、例えば光電式アナログ感知器AD1には、アドレス1が設定されていて、熱アナログ感知器AD10にはアドレス10が設定されている。
【0036】
火災受信機FAは、信号線SGに接続された各端末機器(図1参照)の状態情報を収集するため、各端末機器と通信を行う。
【0037】
火災受信機FAは、各端末機器との間で、以下の3種の方法により端末機器の状態情報を収集したり、端末機器等を制御したりすることができる。
【0038】
(1)ポイントポーリング
火災受信機FAは、複数接続されている端末機器の状態を収集するために、何台かを1つのグループとして端末機器に状態情報要求命令を送信する。一方、それぞれの端末機器は、状態情報要求命令に対して、自己のアドレスに応じてタイミングをはかり、状態情報を火災受信機FAに通報する。火災受信機FAは、このようなグループへの通信を所定周期毎に繰り返し行い、全端末機器の状態情報を収集する。
【0039】
(2)セレクティング
火災受信機FAは、所望の端末機器に対応するアドレスを指定して所定の制御命令を送信し、当該端末機器を制御する、あるいは、所望の端末機器に状態情報等の要求命令を送信し、個々の端末機器から状態情報を収集することができる。アドレスを指定された端末機器は、制御命令に対して火災受信機FAへ制御結果を通報したり、要求された状態情報を通報したりする。
【0040】
(3)システムポーリング
火災受信機FAは、全ての端末機器に対して共通の制御命令を送信し、各端末機器を制御することができる。ここで、システムポーリングによる制御命令としては、例えば、火災復旧命令(火災信号を出力した感知器や中継器等を正常な監視状態に復旧させる命令)、地区音響停止命令(鳴動中の地区音響用中継器AD19〜AD24を停止させる命令)等がある。
【0041】
(火災受信機と火災表示機の通信動作)
火災受信機FAと火災表示機DPとの間で行われる通信について説明する。
【0042】
火災受信機FAは、信号線DGに接続された火災表示機DP(図1参照)の状態情報を収集するため、火災表示機と通信を行う。
【0043】
火災受信機FAは、火災表示機DPとの間で、以下の2種の方法により火災表示機DPの状態情報を収集したり、火災表示機DPを制御して、表示を行わせたりすることができる。
【0044】
(1)ポーリング
火災受信機FAは、火災表示機DPの状態を収集するために、火災表示機DPに状態情報要求命令を送信する。一方、火災表示機DPは、状態情報要求命令に対して、状態情報を火災受信機FAに通報する。
【0045】
(2)移報制御命令
火災受信機FAは、端末機器から火災等の状態情報を受信したとき、火災表示機DPに移報制御命令を送信する。移報制御命令を受信した火災表示機DPは、移報制御命令に従い表示を行い火災等の報知をする。
【0046】
(火災報知設備の動作)
火災報知設備の動作の一例を説明する。
まず、端末機器として接続された光電式アナログ感知器AD1〜9が煙を検出し、あるいは熱アナログ感知器AD10〜15が熱を検知する、またはアドレッサブル発信機AD16〜18が押しボタンのオンを検出すると、その情報が信号線SGを介して火災受信機FAに状態情報として伝送される。
【0047】
火災受信機FAは、光電式アナログ感知器AD1〜9や熱アナログ感知器AD10〜15やアドレッサブル発信機AD16〜18から伝送される状態情報を収集しており、この収集した状態情報に火災の情報(所定のしきい値を超える検出情報、またはボタンのオンの検出情報)が含まれている場合には、地区音響用中継器AD19〜AD24に制御信号を送信して地区ベルBを鳴動させるとともに、火災表示機DPに移報制御信号を送信して火災発生場所を表示させる。
【0048】
ここで、火災報知設備の動作を、光電式アナログ感知器AD2が火災を検出した時を例に、さらに詳細に説明する。
【0049】
光電式アナログ感知器AD2は、火災受信機FAのポイントポーリングに対して、端末機器記憶部18に設定されている自己のアドレスであるアドレス2に応じたタイミングで、状態情報を通報する。火災受信機FAは、収集した状態情報を確認して、光電式アナログ感知器AD2が所定のしきい値を超えていることを検出すると、アドレス2で火災が発生したと判断する。火災受信機FAは火災を報知するために、アドレス2に対応する地区名データである1棟1階1地区と、さらに地区名をわかりやすく表示するために任意に設定されたメッセージデータを火災受信機記憶部13から読み出し、火災受信機表示操作部12に火災が発生した端末機器のアドレスおよび地区名およびメッセージを表示する。
【0050】
火災表示機FAは、表示により火災を報知する他に、火災受信機記憶部13からアドレス2と同じ地区に設置されている地区音響用中継器のアドレスを読み出し、地区音響用中継器AD19に、セレクティングにより地区ベルを鳴動させるための制御命令を送信して、地区ベルを鳴動させる。火災受信機記憶部13に、直上階および直下階への火災の報知のためなどのように、地区音響用中継器AD19以外の他の地区音響用中継器のアドレスが設定されている場合は、その地区音響用中継器にもセレクティングにより制御命令を送信する。
【0051】
また、火災受信機FAは、自身で火災を報知すると同時に、火災表示機DPでも火災を報知させるため、火災表示機DPへ火災表示機用送受信部15から移報制御信号を送信する。移報制御信号には、火災が発生しているアドレス情報であるアドレス2と地区名データである1棟1階1地区およびメッセージデータが含まれている。
【0052】
火災表示機DPは、火災表示機送受信部23で移報制御信号を受信すると、火災表示機表示操作部21に、図3のように地区名である「1棟1階1地区」と端末機器の種別である「光電式アナログ感知器」とメッセージである「○○○○レストラン」を表示して火災を報知する。
【0053】
以上のように、ユーザーは、火災受信機FAで火災発生場所を認知できるほかに、火災表示機DPにおいても火災発生場所を認知することができる。
【0054】
次に、図4に光電式アナログ感知器AD2で故障が発生したときの火災表示機DPの火災表示機表示操作部21での故障の報知を示す。火災表示機DPへの故障の報知のための方法は、上述の火災を報知する方法とほぼ同様である。
【0055】
火災受信機FAは、ポイントポーリングにより収集した端末機器の状態情報を確認して、光電式アナログ感知器AD2が故障の情報を検出すると、アドレス2に対応する地区名データとメッセージデータを火災受信機記憶部13から読み出し、火災受信機表示操作部12に光電式アナログ感知器AD2の故障を表示するとともに、火災表示機DPにアドレス情報と地区名データとメッセージデータを含む移報制御信号を送信する。
【0056】
火災表示機DPは、火災受信機FAから送信された移報制御信号を受信すると、地区名と端末機器の種別とメッセージを表示して、光電式アナログ感知器AD2の故障の報知を行う。故障の報知を発見したユーザーは、メンテナンス業者に連絡して故障を修理してもらう。
【0057】
ここで、火災表示機DPに表示されている故障表示を見てみると、ユーザーにわかりやすい表示である「1棟1階1地区」により、故障が発生している地区名はわかるが、メンテナンス作業者が、故障した端末機器を特定するとき、図1の例のように光電式アナログ感知器AD1と光電式アナログ感知器AD2が設置されているため、同じ地区に複数の同一種別が設置されており、どちらの光電式アナログ感知器が故障であるか判別がつかない。
【0058】
また、たとえ同じ地区に1つの光電式アナログ感知器しか設置されていない場合であっても、端末機器がどこに設置されているかが記載されている建物の設計図には、例えば図5(a)に示すように、光電式アナログ感知器AD2を地区名ではなくアドレスで示している。これは、同じ地区名が複数の端末機器に設定できることに加え、例えば、図5(b)のようにテナントが入れ替わり、区画が変更された際には、光電式アナログ感知器AD2の地区名が変更される可能性があるのに対して、火災受信機FAが重複しない一意的な番号であるアドレスに基づいて端末機器を管理しているため、端末機器に設定されたアドレスは変更されることがないためである。
【0059】
そこで、メンテナンス作業者は、故障を修理する際には、故障が発生している端末機器のアドレスを調べるために、火災表示機DPの火災表示機表示操作部21に設けられた表示切り替えスイッチ24を操作する。火災表示機DPは、表示切り替えスイッチ24を操作すると、故障した端末機器の地区名を表示していた図4から、火災受信機FAから送信されたアドレスデータに従い、図6のようにアドレスでの表示に切り替える。
【0060】
これにより、メンテナンス作業者は、火災表示機DPにて故障が発生している端末機器のアドレスを知ることができ、図5(a)の設備図から故障した端末機器の設置場所がわかるので端末機器の修理を早く行うことができる。
【0061】
さらに、火災表示機DPは、表示切り替えスイッチ24を再度操作すると図6の表示から、図7のように地区名とアドレスの両方を表示するように表示を切り替える。このように、地区名とアドレスの両方を表示すれば、ユーザーとメンテナンス作業者が一緒に故障が発生している場所に行き、故障している端末機器を特定するのに便利である。
【0062】
また、火災表示機DPは、アドレスでの表示(図6)、または地区名の表示とアドレスでの表示(図7)に切り替えられてから一定時間経過後に、地区名の表示(図4)に戻る機能を備えており、故障の修理が終わった後に、地区名での表示に切り替え忘れたとしても地区名での表示に自動的に戻るため、ユーザーが混乱することがない。
【0063】
なお、故障の報知の場合の火災表示機DPの表示切り替えについて説明したが、火災の報知の場合にも表示切り換えスイッチ24を操作することにより、同様にアドレスの表示、または地区名とアドレスの表示に切り替えることも可能である。
【0064】
上記のように火災表示機が、地区名データと、アドレスデータのどちらか一方、または、両方を表示するための表示切り替え手段を備えるため、通常使用時においては、火災表示機で地区データ(棟階地区)を表示するので、ユーザーが火災等の発生場所を容易に判別でき、メンテナンス時においては、火災表示機でアドレスデータを表示するので、火災受信機以外の場所でもメンテナンス作業者がメンテナンスを行う端末機器の設置場所を容易に判別できる。
【0065】
また、ユーザーとメンテナンス作業者が一緒に端末機器を確認する場合には、両方を表示することによりユーザーもメンテナンス作業者も端末機器の設置場所を容易に判別できる。
【0066】
また、火災受信機から地区名データと、アドレスデータを火災表示機に送信するため、火災表示機の火災表示機記憶部に地区名データを設定する必要が無いので間仕切り(地区の)変更などで地区名データを変更する際、火災受信機のデータを変更するだけでよい。
【0067】
また、メンテナンス作業者が表示切り替えを戻し忘れても、火災表示機は、所定時間経過後に自動的に地区名データ表示に戻るため、ユーザーが混乱することがない。
【0068】
実施の形態2
前述の実施の形態1では、火災受信機から、火災が発生したまたは故障した端末機器の地区名データとアドレスデータとメッセージデータを火災表示機に送信する例を示した。本実施の形態2では、火災受信機から、火災が発生したまたは故障した端末機器のアドレスデータだけを火災表示機に送信する例を光電式アナログ感知器AD2故障が発生した場合を中心に示す。なお、本実施の形態2では、前述の実施の形態1との相違点を中心に説明し、実施の形態1と同一または対応する構成要素については、同一の符号を付す。
【0069】
本実施の形態2の火災表示機の火災表示機記憶部は、実施の形態1の火災表示機記憶部が、火災表示機制御部を動作させるためのプログラムを格納していたのに加えて、端末機器がどの地区に設置されているかの地区名データおよびメッセージデータが格納されている。
【0070】
火災受信機FAは、ポイントポーリングにより収集した端末機器の状態情報を確認して、光電式アナログ感知器AD2が故障の情報を検出すると、アドレス2に対応する地区名データとメッセージデータを火災受信機記憶部13から読み出し、火災受信機表示操作部12に光電式アナログ感知器AD2の故障を表示するとともに、火災表示機DPにアドレスデータを含む移報制御信号を送信する。
【0071】
火災表示機DPは、火災受信機FAから送信された移報制御信号を受信すると、受信したアドレスデータに対応する地区名データとメッセージデータを火災表示機記憶部22から読み出し、図4のように、地区名およびメッセージを火災表示機表示操作部21に表示して、光電式アナログ感知器AD2の故障を報知する。故障を発見したユーザーは、メンテナンス業者に連絡して故障を修理してもらう。
【0072】
メンテナンス作業者は、故障を修理する際には、故障が発生している端末機器のアドレスを調べるために、火災表示機DPの表示切り替えスイッチ24を操作する。表示切り替えスイッチ24を操作すると、火災表示機DPは、故障した端末機器の地区名を表示していた図4から、火災受信機から送信されたアドレスデータに従い、図6のようにアドレスでの表示に切り替える。
【0073】
これにより、メンテナンス作業者は、火災表示機DPにて故障が発生している端末機器のアドレスを知ることができ、図5(a)の設備図から故障した端末機器の設置場所がわかるので端末機器の修理を早く行うことができる。
【0074】
上記のように、火災表示機が、地区名データと、アドレスデータのどちらか一方、または、両方を表示するための表示切り替え手段を備えるため、通常使用時においては、火災表示機で地区データ(棟階地区)を表示するので、ユーザーが火災等の発生場所を容易に判別でき、メンテナンス時においては、火災表示機でアドレスデータを表示するので、火災受信機以外の場所でもメンテナンス作業者がメンテナンスを行う端末機器の設置場所を容易に判別できる。
【0075】
また、火災受信機から受信した端末機器のアドレスデータだけを送信して、火災表示機で火災表示機記憶部からアドレスデータに対応する地区名データを読み出すため、火災受信機と火災表示機の間の通信の負荷が軽くすることができる。
【符号の説明】
【0076】
FA 火災受信機、DP 火災表示機、11 火災受信機制御部、12 火災受信機表示操作部、13 火災受信機記憶部、14 端末機器用送受信部、15 火災表示機用送受信部、20 火災表示機制御部、21 火災表示機表示操作部、22 火災表示機記憶部、23 火災表示機送受信部、24 表示切り替えスイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7