(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5797407
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】車両における前面衝突をセンシングするための回路装置
(51)【国際特許分類】
G01P 15/00 20060101AFI20151001BHJP
B60R 21/16 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
G01P15/00 D
B60R21/16
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-640(P2011-640)
(22)【出願日】2011年1月5日
(62)【分割の表示】特願2003-501719(P2003-501719)の分割
【原出願日】2002年5月31日
(65)【公開番号】特開2011-73675(P2011-73675A)
(43)【公開日】2011年4月14日
【審査請求日】2011年1月5日
【審判番号】不服2014-9844(P2014-9844/J1)
【審判請求日】2014年5月27日
(31)【優先権主張番号】101 27 326.6
(32)【優先日】2001年6月6日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】101 38 764.4
(32)【優先日】2001年8月7日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(72)【発明者】
【氏名】ジモーネ クラインシュミット
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル レレケ
(72)【発明者】
【氏名】アルミン ケーラー
【合議体】
【審判長】
酒井 伸芳
【審判官】
関根 洋之
【審判官】
堀 圭史
(56)【参考文献】
【文献】
特開平4−252757(JP,A)
【文献】
特開昭53−27933(JP,A)
【文献】
特開平10−152014(JP,A)
【文献】
特開平9−76872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 15/00-15/08
B60R 21/16-21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両において乗員拘束手段をトリガするための回路装置であって、
少なくとも1つの衝突センサ(2)が前記乗員拘束手段のトリガのために制御装置(4)内に設けられており、
少なくとも1つの衝突センサ(1)が前記トリガをスタンバイ状態にするために、アップフロントセンサとして車両前面に設けられており、
前記制御装置(4)において、前記アップフロントセンサ(1)からの加速度信号を直接、第1の閾値(6)と比較する比較を行い、かつ、該少なくとも1つのアップフロントセンサ(1)の加速度信号(7)の積分によって求められた速度信号(9)と別の第2の閾値(10)とを比較する別の比較を行い、両比較の結果の論理OR結合(14)を実行して、該論理OR結合(14)の結果に基づいて、前記乗員拘束手段のトリガをスタンバイ状態にすべきか否かを決定し、
制御装置(4)は前記論理OR結合(14)の結果を所定の時間にわたって一時記憶し、前記論理OR結合(14)の結果を該所定の時間にわたって、乗員拘束手段(5)のトリガ決定のために使用し、
前記論理OR結合(14)の結果が衝突を示す場合、前記制御装置(4)のプロセッサ(3)により実行される、前記乗員拘束手段(5)をトリガするためのトリガアルゴリズムを開始する
ことを特徴とする回路装置。
【請求項2】
制御装置(4)は、該制御装置(4)内の前記少なくとも1つの衝突センサ(2)の信号が所定の閾値を下回る場合、乗員拘束手段(5)のトリガを阻止する、請求項1記載の回路装置。
【請求項3】
制御装置は、衝突時にアップフロントセンサ(1)が機能不全になっても、前記アップフロントセンサ(1)を用いて求められて記憶された前記OR結合の結果と、所定の閾値を上回ったときの制御装置(4)内の前記少なくとも1つの衝突センサ(2)の信号とによって、該制御装置(4)内の前記プロセッサ(3)により実行される前記トリガアルゴリズムを開始し、
前記トリガアルゴリズムによって下されたトリガ決定によって乗員拘束手段(5)のトリガが実行される、請求項1または2記載の回路装置。
【請求項4】
前記制御装置(4)内の前記少なくとも1つの衝突センサ(2)の信号が第3の閾値を下回る場合、該制御装置(4)内の前記プロセッサ(3)により実行される前記トリガアルゴリズムは開始しない、請求項3記載の回路装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の特徴を有する、車両における前面衝突をセンシングするための回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
すでに、公報GB2293681Aからは、乗員拘束システムのための中央制御装置のトリガ決定の妥当性を検査するためにアップフロントセンサを使用することが公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】GB2293681A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、乗員拘束システムの妥当性検査をより確実に行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題は、
制御装置において、アップフロントセンサからの加速度信号を直接、第1の閾値と比較する比較を行い、かつ、該アップフロントセンサの加速度信号の積分によって求められた速度信号と別の第2の閾値とを比較する別の比較を行い、両比較の結果の論理OR結合の結果に基づいて、前記制御装置内の衝突センサによる前記乗員拘束手段のトリガをスタンバイ状態にすべきか否かを決定し、
制御装置は前記論理OR結合の結果を所定の時間にわたって一時記憶し、一時記憶された前記論理OR結合の結果を該所定の時間にわたって、乗員拘束手段のトリガ決定のために使用することを特徴とする回路装置
によって解決される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】本発明による回路装置の第1のブロック回路図である。
【
図5】妥当性信号を検出するためのブロック回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
一般的には、エアバッグ制御装置のトリガ決定の確実性を向上させるため、制御装置内の加速度センサの他に、別の妥当性センサも使用する。この妥当性センサは制御装置内で使用することもできるし、非集中的にたとえばアップフロントセンサとして使用することもでき、相応する組み合わせも可能である。ここでは、加速度センサとして圧電センサないしはマイクロメカニカル半導体センサが使用される。しかし、別のセンサタイプも使用することができる。
【0008】
本発明では、妥当性信号がアップフロントセンサによって形成される、前面衝突をセンシングするための回路装置が提案される。妥当性信号は、加速度信号と、積分された加速度信号である速度信号とに依存して形成される。ここでは、加速度信号および速度信号をそれぞれの閾値と比較して論理OR結合が実行される。1つの発展形態では、妥当性信号、つまりOR結合の結果が、一定の時間、たとえば10msにわたって一時記憶される。そうすることによって、たとえば前面衝突時に破壊されて妥当性センサが機能不全になっても、一定の時間中は妥当性信号を供給することができる。さらに、制御装置内に配置された衝突センサの信号、つまり加速度センサの信号もノイズ閾値より下回っているか否かが検査される。もしそうであれば、トリガアルゴリズムは開始されず、それゆえ乗員拘束手段のトリガは阻止される。しかしトリガアルゴリズムは、この信号がノイズ閾値を上回っていれば開始される。さらにそれぞれの妥当性信号または一時記憶された妥当性信号が存在している場合、制御装置はトリガスタンバイ状態となる。アルゴリズムによってトリガ決定がなされると、乗員拘束手段はトリガされる。
【0009】
衝突センサという概念はここでは上位概念として使用されており、アップフロントセンサは車両前面にある衝突センサ、通常はクラッシャブルゾーン内の衝突センサを表している。一般的には、衝突センサとして加速度センサが使用される。しかし、ストレインゲージ、圧力センサおよび温度センサを使用することもできる。
【実施例】
【0010】
図1は、制御装置内に配置された加速度センサおよび車両内のアップフロントセンサが設けられている場所が概観図で示されている。アップフロントセンサ1はX方向の加速度をセンシングする。つまり、ここでは車両の縦方向の加速度をセンシングする。しかし制御装置内には、衝突を検出するための加速度センサ構成体が設けられており、この加速度センサ構成体は、X方向およびY方向(つまり車両の横方向)の加速度を検出する。これによって、側面衝突もまた識別することができる。アップフロントセンサ1は車両内の適切な位置に配置される。アップフロントセンサ1を配置するのに適しているのは、たとえばラジエータ支持体またはフードロック支持部である。
【0011】
図2には、本発明による回路装置がブロック回路図として示されている。この回路装置は、アップフロントセンサ1と、加速度センサ構成体2およびプロセッサ3を有しておりかつ乗員拘束手段5に接続されている制御装置4とを有している。
【0012】
アップフロントセンサ1は、たとえばエネルギーを受け取るための線路を介してプロセッサ3に接続されている。したがって電力線通信が可能である。つまり、センサ1に伝送されるエネルギーは、センサデータに対して変調される。
【0013】
プロセッサ3の第2のデータ入力端には、加速度センサ構成体2が接続されている。データ出力端を介してプロセッサ3は、シートベルトテンショナおよびエアバッグである乗員拘束手段5に接続されている。さらに、乗員拘束手段5は点火回路を有しており、衝突が識別された際にはこれによって乗員拘束手段5をトリガする。センサ1および2は信号処理部を有しており、この信号処理部によって加速度信号は増幅およびデジタル化される。プロセッサ3は、衝突センサ1および2から送信される信号に依存してトリガアルゴリズムを計算し、乗員拘束手段5を点火すべきか否かを判断する。このトリガアルゴリズムでは、センサ信号に対して固定的な閾値および/または適応的に計算された閾値を使用することができる。加速度信号および速度信号を使用することによって、軽度な衝突および重度の衝突を識別することができる。軽度の衝突時には、シートベルトテンショナのみを点火するだけでよい場合もある。これに対して、重度の衝突時には原則的にエアバッグも点火しなければならないこともある。さらに、乗員拘束手段5の制御は乗員識別に依存して実行しなければならない。つまり、乗員が各車両座席に存在しているか否か、危険にさらすことなく乗員のために乗員拘束手段を点火できるか否かも識別するべきである。
【0014】
図3は、アップフロントセンサ1から送出される加速度センサの加速度‐時間グラフを示している。アップフロントセンサ1は加速度信号7を送出し、この加速度信号は所定の閾値6と比較される。アップフロントセンサ7は複数配置してもよい。時点8で信号7は加速度閾値6を上回る。この時点で重度の衝突が識別され、相応の妥当性信号がプロセッサ3へ伝送されるか、または伝送された加速度信号7からプロセッサ3によって、重度の衝突に対する妥当性条件が満たされたことが検出される。それによって、加速度センサ1がセンサデータのみをプロセッサ3へ伝送するか、またはすでに評価された妥当性信号を伝送するか、という選択肢が生じる。評価された妥当性信号は、少なくとも1つの閾値(加速度および速度)をアップフロントセンサ信号が超えたか否かを指示する。
【0015】
図4は、積分された加速度信号、つまり速度信号が閾値10と比較されている速度‐時間グラフを示している。時点11で、妥当性条件が満たされたことが識別される。つまり、軽度の衝突が発生している。このこともまた、プロセッサ3またはセンサ1内の相応の電子装置によって検出される。
【0016】
図5は、信号処理が妥当性信号と関連してどのように実行されるかをブロック回路図のレベルで示している。ブロック12では、加速度信号aが加速度センサ1によって形成される。この加速度信号aはブロック13において閾値6と比較され、閾値6を上回る場合には妥当性信号が形成され、この妥当性信号はOR結合部14に第1の入力量として供給される。しかし加速度信号aはブロック16で積分もされ、速度信号が形成される。この速度信号はブロック17で閾値10と比較される。ブロック17の出力信号、つまり、閾値10もまた上回ったか否かはORゲート14へ第2の入力量として案内される。両閾値6または10のうち少なくとも1つを上回った場合、ブロック15で妥当性信号が形成され、トリガアルゴリズムによって下されるトリガ決定によって乗員拘束手段を物理的にトリガするか否かを決定するのに使用される。このことは、加速度センサ構成体2の加速度信号に依存する。
【0017】
ブロック15における妥当性信号は所定の時間にわたって、たとえば10msにわたって一時記憶され、アップフロントセンサ1が機能不全になっても一定の時間中は使用でき、妥当性信号が存在する場合にはトリガアルゴリズムがトリガされることもある。存在するという言葉は、ここでは妥当性信号が衝突を指示していることを意味する。
【符号の説明】
【0018】
1 アップフロントセンサ
2 制御装置4内の衝突センサ
4 制御装置
5 乗員拘束手段