特許第5797432号(P5797432)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5797432
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】白髪防止剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/67 20060101AFI20151001BHJP
   A61K 31/07 20060101ALI20151001BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20151001BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   A61K8/67
   A61K31/07
   A61Q5/00
   A61P17/00
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2011-65440(P2011-65440)
(22)【出願日】2011年3月24日
(65)【公開番号】特開2012-201606(P2012-201606A)
(43)【公開日】2012年10月22日
【審査請求日】2014年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102496
【氏名又は名称】エスエス製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100068700
【弁理士】
【氏名又は名称】有賀 三幸
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】並木 千晶
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 一朗
【審査官】 團野 克也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−255089(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102166178(CN,A)
【文献】 特開2001−131031(JP,A)
【文献】 特表2011−513213(JP,A)
【文献】 特開平05−221834(JP,A)
【文献】 特開2002−275060(JP,A)
【文献】 特開平08−053327(JP,A)
【文献】 Reuben Lotan et al.,"Stimulation of Melanogenesis in a Human Melanoma Cell Line by Retinoids",CANCER RESEARCH,1980年 9月,Vol.40,pp.3345-3350,[検索日:平成27年5月28日,URL,http://cancerres.aacrjournals.org/content/40/9/3345.full.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC A61K8/00−8/99
A61Q1/00−90/00
DB CAplus/REGISTRY/MEDLINE/
EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/
JST7580(JDreamIII)
Thomson Innovation
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルミチン酸レチノールからなる白髪防止剤。
【請求項2】
パルミチン酸レチノールからなるメラニン生成促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素細胞におけるメラニン生成を促進して白髪の発生を防止改善することができる白髪防止剤に関する。
【背景技術】
【0002】
白髪の増加は、男女を問わず、美容上大きな問題であるが、これに対する対応手段としては染毛が主である。しかし、近年、色素細胞におけるメラニン生成を促進させる成分が見出され、白髪防止剤として有用であることが報告されている。そのような白髪防止剤としては、cAMP増加剤とプロテインキナーゼC阻害剤とを配合した白髪防止黒化剤(特許文献1)、スギナ、スイカズラ、ヒキオコシ、ブドウ、ヘチマ、セイヨウニワトコ、ブッチャーブハーム、タイソウ、キンギンカ等の植物抽出物を含有する毛髪防止剤(特許文献2、3、4)、シメジ科、ハリタケ科等の担子菌の培養液を配合した頭髪料(特許文献5)等が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平04−124122号公報
【特許文献2】特開平11−124318号公報
【特許文献3】特開2001−288098号公報
【特許文献4】特開2010−280720号公報
【特許文献5】特開平07−316026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの白髪防止剤は、未だ十分満足すべき効果を有さないとともに安全性や使用性の点で解決すべき点がある。
従って、本発明の課題は、メラノサイトに作用し、メラノサイトにおけるメラニン生成を強く促進し、かつ長期間使用可能な白髪防止剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明者は、従来から医薬品として使用され、安全性が確認されている成分を対象としてメラノーマにおけるメラニン生成に対する作用を検討してきた結果、アラントイン等の特定の成分が優れたメラニン生成促進作用を有し、白髪防止剤として有用であることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、アラントイン又はその塩、エテンザミド、フェニレフリン又はその塩、グアイフェネシン、スルファメトキサゾール、パルミチン酸レチノール、ビサコジル、ネオスチグミン又はその塩及びレゾルシンから選ばれる化合物を有効成分とする白髪防止剤を提供するものである。
また、本発明は、アラントイン又はその塩、エテンザミド、フェニレフリン又はその塩、グアイフェネシン、スルファメトキサゾール、パルミチン酸レチノール、ビサコジル、ネオスチグミン又はその塩及びレゾルシンから選ばれる化合物を有効成分とするメラニン生成促進剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の白髪防止剤は、色素細胞(メラノサイト)におけるメラニン生成量を顕著に増加させる作用を有し、その結果白髪の発生を防止する。従って、本発明の白髪防止剤を用いれば、白髪の発生が防止され、白髪が減少する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の白髪防止剤及びメラニン生成促進剤の有効成分は、アラントイン又はその塩、エテンザミド、フェニレフリン又はその塩、グアイフェネシン、スルファメトキサゾール、パルミチン酸レチノール、ビサコジル、ネオスチグミン又はその塩及びレゾルシンから選ばれる化合物である。
このうち、アラントイン又はその塩としては、アラントイン、アルジオキサ(ジヒドロキシアルミニウムアラントイネート)等が挙げられ、このうちアルジオキサが好ましい。アラントイン又はその塩は、傷修復作用、抗潰瘍作用等を有することが知られているが、メラニン生成に対する作用は知られていない。
エテンザミド(2−エトキシベンズアミド)は、サリチル酸系の解熱鎮痛消炎剤として知られているが、メラニン生成に対する作用は知られていない。
【0009】
フェニレフリン又はその塩としては、フェニレフリン、塩酸フェニレフリン、硝酸フェニレフリン、硫酸フェニレフリン等が挙げられるが、塩酸フェニレフリンが特に好ましい。フェニレフリン又はその塩は、α1アドレナリン作動薬の一種であり、鼻粘膜の血管を収縮させることにより鼻炎治療薬として用いられる。しかし、フェニレフリン又はその塩のメラニン生成に対する作用は知られていない。
グアイフェネシン(グアヤコールグリセリルエーテル)は、視床下部の抑制及び気管支の弛緩による鎮咳作用と気道分泌液の増加による去痰作用を有し、鎮咳去痰剤として用いられている。しかし、メラニン生成に対する作用は知られていない。
スルファメトキサゾールは、スルホンアミド系の抗菌剤として広く知られているが、メラニン生成に対する作用は知られていない。
【0010】
パルミチン酸レチノールは、パルミチン酸とレチノール(ビタミンA)のエステルであり、皮膚保護作用、網膜細胞保護作用等が知られているが、メラニン生成に対する作用は知られていない。
ビサコジル(4,4’−(ピリジン−2−イルメチレン)ビス(フェニルアセテート)は、大腸を刺激して排便を促進する便秘薬として広く知られているが、メラニン生成に対する作用は知られていない。
ネオスチグミン又はその塩としては、ネオスチグミン、ネオスチグミンメチル硫酸塩等が挙げられる。ネオスチグミン又はその塩は、コリンエステラーゼを阻害し、眼の調節機能を改善する目的で目薬に広く用いられている。しかし、メラニン生成に対する作用は知られていない。
レゾルシン(レゾルシノール)は防腐剤、殺菌剤として用いられているが、メラニン生成に対する作用は知られていない。
【0011】
これらの成分は、いずれも医薬品又は医薬品原料として広く用いられており、市販品を用いることができる。
【0012】
これらの成分は、後記実施例に示すように、メラノサイトにおけるメラニン生成を促進し、メラノサイト中のメラニン量を顕著に増加させる作用を有することから、メラニン生成促進剤及び白髪防止剤として有用である。
【0013】
本発明の白髪防止剤及びメラニン生成促進剤中の前記有効成分の含有量は、特に制限されないが、0.001〜90質量%が好ましく、0.01〜20質量%がより好ましい。
【0014】
本発明の白髪防止剤及びメラニン生成促進剤は、種々の製剤とすることができ、例えば経口投与用製剤、注射用製剤、皮膚外用剤等とすることができるが、皮膚外用剤の形態とするのが好ましい。皮膚外用剤の形態としては、液剤、ローション、乳液、クリーム、軟膏、ゲル軟膏、坐剤、エアゾール、チンキ、貼付剤、テープ等の形態が挙げられる。
【0015】
本発明の白髪防止剤又はメラニン生成促進剤は、医薬品、医薬部外品及び化粧品のいずれでもよい。
【0016】
本発明の白髪防止剤又はメラニン生成促進剤を前記の投与形態にするには、各投与形態に応じた各種添加剤を配合することができる。経口投与用製剤の場合には、賦形剤、結合剤、崩壊剤、安定剤、安定化剤、界面活性剤、可塑剤、滑沢剤、滑沢化剤、可溶剤、可溶化剤、還元剤、緩衝剤、甘味剤、基剤、稀釈剤、吸着剤、矯味剤、懸濁剤、懸濁化剤、抗酸化剤、光沢化剤、コーティング剤、剤皮、湿潤剤、湿潤調整剤、充填剤、消泡剤、清涼化剤、接着剤、咀嚼剤、着色剤、着香剤、香料、糖衣剤、等張化剤、軟化剤、乳化剤、粘稠剤、粘稠化剤、発泡剤、pH調整剤、分散剤、崩壊補助剤、崩壊延長剤、芳香剤、防湿剤、放出制御膜、防腐剤、保存剤、溶解剤、溶解補助剤、溶剤、流動化剤、増量剤、保湿剤、付湿剤等を配合することができる。一方、皮膚外用剤の場合には、溶剤、油性成分、乳化剤、安定化剤、安定剤、界面活性剤、可塑剤、可溶剤、可溶化剤、還元剤、緩衝剤、基剤、稀釈剤、吸着剤、結合剤、懸濁剤、懸濁化剤、抗酸化剤、支持体、湿潤剤、湿潤調整剤、充填剤、消泡剤、清涼化剤、接着剤、着色剤、着香剤、香料、等張化剤、軟化剤、粘着剤、粘着増強剤、粘稠剤、粘稠化剤、発泡剤、pH調整剤、皮膚保護剤、賦形剤、分散剤、噴射剤、崩壊剤、崩壊補助剤、崩壊延長剤、芳香剤、防湿剤、放出制御膜、防腐剤、保存剤、無痛化剤、溶解剤、溶解補助剤、流動化剤、帯電防止剤、増量剤、保湿剤、付湿剤等を配合することができる。このような添加剤の例は、医薬品添加物事典、食添、医薬部外品原料規格、日本汎用化粧品原料集、化粧品種別許可基準、化粧品原料基準外成分規格、CTFA等に記載されている。
【0017】
本発明の白髪防止剤及びメラニン生成促進剤は、各有効成分量として成人1日あたり0.01mg〜5g投与することができる。
【実施例】
【0018】
以下実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0019】
実施例1
(1)細胞調製:試験はB16F0メラノーマ(B16F0)細胞の組織培養系を用いた。B16F0メラノーマ細胞はATCC(American Type Culture Collection:カタログNo.CRL−6322)より購入し、10%牛胎児血清及び抗生物質を含むダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagle Medium:DMEM: シグマ社製)で維持・継代しているものを用いた。
【0020】
(2)被験物質:アルジオキサ、エテンザミド、塩酸フェニレフリン、グアイフェネシン、スルファメトキサゾール、パルミチン酸レチノール、ビサコジル、メチル硫酸ネオスチグミン及びレゾルシンはそれぞれ10%DMEMで溶解し、メンブランフィルターで除菌後、所定濃度に調製した。メラニン生成阻害の陽性対照物質としてはホルボール12−ミリステート13−アセテート(phorbol 12−myristate 13−acetate:PMA)あるいはコウジ酸(kojic acid:K.A.)を用いた。
【0021】
(3)試験方法:B16F0メラノーマ細胞は、10%DMEM培地で4×104/mLに調製し、その2mLを6穴プレートの各穴に添加し、5%二酸化炭素濃度、37℃で一晩培養した。翌日、所定濃度に調製した被験物質あるいはPMAをB16F0メラノーマ細胞にそれぞれ2mL添加し、さらに5%二酸化炭素濃度、37℃で72時間培養した。培養終了後、細胞内のメラニン含有量の測定はカゲヤマらの方法(The Journal of Biological Chemistry,279(26),27774−27780(2004))を一部改変して行った。B16F0細胞は、リン酸緩衝生理食塩液で洗浄後、1Nの水酸化ナトリウムを添加し、室温で20〜60分間放置した。続いてマイクロプレート・ミキサーで攪拌し、細胞を完全に溶解させ、細胞溶解液とした。細胞溶解液の120μLを200μLのマイクロチューブに移し、サーマル・サイクラーで80℃、1時間処理後、それぞれの80μLを96穴プレートの各穴に移し、マイクロ・プレートリーダーで405nmの吸収波長を指標にして細胞内メラニン量を測定した。なお、細胞内メラニン量は予め作成しておいた標準メラニンの標準曲線より算出した。また、上記細胞溶解液をリン酸緩衝生理食塩液で10倍希釈したB16F0細胞溶解液中の総タンパク質量はビーシーエープロテインアッセイキット(BCA Protein Assay Kit:PIERCE社製)を用いて測定した。B16F0細胞のメラニン含量は、上記で測定された処理液中のメラニン量と細胞溶解液中の総タンパクの質量から、処理液中のメラニン量(μg)/細胞溶解液中の総タンパク質量(mg)で表し、媒体対照群と比較したメラニン生成率を求めた。この結果を以下に示した。なお、試験結果はいずれも3例の平均値である。
【0022】
【表1】
【0023】
表1から明らかなように、アルジオキサ、エテンザミド、塩酸フェニレフリン、グアイフェネシン、スルファメトキサゾール、パルミチン酸レチノール、ビサコジル、メチル硫酸ネオスチグミン及びレゾルシンは、優れたメラニン生成促進効果を示し、白髪防止剤として有用である。