【実施例】
【0017】
  以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0018】
実施例1  ヒト太陽光誘発沈着色素排出促進試験1
  ジクロフェナクナトリウム、フェルビナク及びインドメタシンを用いて太陽光誘発沈着色素排出促進作用を検討した。
A.試験方法
(1)被験者
    健康成人男性(43歳)
(2)試験薬剤
  (i)ジクロフェナクナトリウム1%含有ゲル製剤(略号:DF−Na)
  (ii)フェルビナク3%含有ゲル製剤(略号:FLB)
        (フェルビナク3%、l−メントール3%含有)
  (iii)インドメタシン1%含有ゲル製剤(略号:IM)
        (インドメタシン1%、l−メントール3%含有)
(3)測定装置
  メグザメーターMX18(Courage−Khazaka  Inc,Germany))
(4)日焼け用デバイス
  日焼け用デバイスは、直径22mmの穴が8個開いたシートをシート状ゴムにアルミ箔を裏打ちして作成した。
(5)実験方法
  1)太陽光曝露法
  ヒトの左右上腕部内側(日常的に太陽光に曝露しない部位)に日焼け用デバイスを装着し、晴天の日を選択し上腕部内側を太陽光に曝した。これにより約直径22mmの日焼け部位8個を上腕部内側に生成させた。
  2)太陽光曝露日及び時間
  ・曝露日
    計9日間
  ・曝露時間
    昼間の15分間
  3)薬物投与条件
  太陽光曝露最終日から1週間後、日焼けによる炎症が発症していないのを確認し、日焼け部位への薬剤の塗布を開始した。
  4)薬物投与方法
  試験薬剤を毎日、入浴後(就寝前)に1回、各薬剤の投与部位に塗布した。なお、薬物の配置は1列目と2列目で逆順に塗布し(各薬剤2部位)、薬物の位置が偏らないようにした。なお、このとき、薬剤非塗布部位(Nontreart)を2部位、日焼けを行わず、薬剤も非塗布の部位(Intact  skin)を1部位設けた。
  5)投与時間及び投与期間
  計65日
  入浴後(就寝前)、1日1回投与
  6)メグザ値及び紅斑値の測定
  各適用部位をメグザメーターを用い、メグザ値及び紅斑値を計測した。
  水道水で湿らせたケイドライ(日本製紙クレシア株式会社)で薬剤を除去し、10分間放置したのち、測定を行った。測定はDay0(投与前)、Day10、Day22、Day31、Day48、Day65に行った。
【0019】
B.結果
  ジクロフェナクナトリウム製剤、インドメタシン製剤及びフェルビナク製剤をヒト日焼け皮膚に適用したときのメグザ値を表1に、投与前メグザ値との差(Δメグザ値)を表2、
図1に、紅斑値を表3に、投与前紅斑値との差(Δ紅斑値)を表4、
図2に示した。
【0020】
  太陽光曝露していないIntact  skin部位において、メグザ値の変動は見られなかったが、太陽光に曝露し日焼けを形成した薬剤非塗布部位では経時的にメグザ値の低下が観察された。これは日焼けした皮膚の新生に伴う生理的な変動と考えられた。もし、薬剤に皮膚新生の促進作用があるならば、生理的な変動を上回る変化があると期待される。しかし、投与前における各部位のメグザ値が異なることから、単純比較は困難である。そこで、投与前メグザ値との差(Δメグザ値)を算出し、各適用部位の推移を薬剤非塗布部位と比較した。ジクロフェナクナトリウム製剤及びフェルビナク製剤適用部位では適用期間を通じて薬剤非塗布部位よりΔメグザ値が低く推移した。インドメタシン製剤適用部位では薬剤非塗布部位よりむしろ高値であった。
  一方、紅斑値は適用期間を通じていずれの薬剤適用部位も薬剤非塗布部位と同様の推移を示し、いずれの製剤も炎症を伴う反応を誘引、あるいは抑制しないものと考えられた。
  なお、インドメタシン製剤適用部位ではΔメグザ値が薬剤非塗布部位と比べて高値であった。また、このときインドメタシン製剤適用部位でシワの形成が見られている。
【0021】
  メグザメーターは皮膚色を解析してメラニンと紅斑を測定する機器で、メグザ値は皮膚メラニン量と関連がある測定値である。試験した製剤において、紅斑値に対する作用は見られなかったが、メグザ値においてはジクロフェナクナトリウム製剤及びフェルビナク製剤適用群で低下作用が見られ、皮膚に沈着したメラニンの低下に寄与していることが示された。ジクロフェナクナトリウム及びフェルビナクは非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)に分類される薬物である。日焼けにおけるメラニンの生成は炎症反応によって促進されると考えられており、NSAIDsにより炎症を抑制することで、結果としてメラニン生成を抑制する可能性は容易に推察される。しかしながら、太陽光の曝露から1週間が経過して、日焼けが形成された後に試験を開始していること、紅斑値(炎症と関連)には影響を及ぼさなかったこと、インドメタシンでは作用が見られなかったことを考え合わせると、上述とは異なる作用機序であると考えられる。すなわち、すでに生成したメラニンを皮膚から排出していると考えられる。したがって、ジクロフェナクナトリウム及びフェルビナクにおいて、日焼けの予防ではなく、皮膚に沈着した色素の排出効果が確認された。また、イブプロフェン、ケトプロフェン、ロキソプロフェンについても皮膚に沈着した色素の排出効果を有すると考えられる。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
【表3】
【0025】
【表4】
【0026】
試験例3  ヒト太陽光誘発沈着色素排出促進試験2
  試験例1で用いたジクロフェナクナトリウム製剤と基剤との対比試験を行った。試験方法は試験例1と同じである。薬剤は、ジクロフェナクナトリウム1%含有ゲル及びそのゲル基剤(アジピン酸イソプロピル、イソプロパノール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、乳酸、ピロ亜硫酸ナトリウムを含有)で、塗布部位は各薬剤4部位とした。その結果を
図3に示す。
図3から、ジクロフェナクナトリウムゲルに用いられているゲル基剤だけでは色素排出促進作用はなく、ゲルに含まれているジクロフェナクナトリウムに色素排出促進作用があることが確認された。