特許第5797477号(P5797477)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5797477多気筒回転式圧縮機及び冷凍サイクル装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5797477
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】多気筒回転式圧縮機及び冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F04C 29/12 20060101AFI20151001BHJP
   F04C 23/00 20060101ALI20151001BHJP
   F04C 18/356 20060101ALI20151001BHJP
   F04C 28/02 20060101ALI20151001BHJP
   F04C 28/06 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   F04C29/12 C
   F04C23/00 F
   F04C18/356 V
   F04C28/02
   F04C28/06 E
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-141902(P2011-141902)
(22)【出願日】2011年6月27日
(65)【公開番号】特開2013-7358(P2013-7358A)
(43)【公開日】2013年1月10日
【審査請求日】2014年4月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088720
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞一
(74)【代理人】
【識別番号】100118430
【弁理士】
【氏名又は名称】中原 文彦
(72)【発明者】
【氏名】平山 卓也
(72)【発明者】
【氏名】二見 俊彦
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−141483(JP,A)
【文献】 特開2000−130870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 29/12
F04C 18/356
F04C 23/00
F04C 28/02
F04C 28/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉ケースと、
前記密閉ケース内に収容された一つの電動機部と、
前記密閉ケース内に収容されて前記電動機部の両側に配置され、前記電動機部に連結されて作動流体を圧縮する二つの圧縮機構部と、
前記密閉ケースの外周側に前記各圧縮機構部に近接させて配置され、吸込配管を介して近接して位置する側の前記圧縮機構部に個々に接続された二つのアキュムレータと、
を備える多気筒回転式圧縮機であって、
前記密閉ケース内を、前記電動機部が収容された電動機部収容空間と前記各圧縮機構部が収容された圧縮機構部収容空間とに区画する二つのバッフル体と、
前記各圧縮機構部で圧縮された作動流体を前記電動機部収容空間内に吐出する吐出部と、
前記各圧縮機構部収容空間に連通され、前記圧縮機構部収容空間内の作動流体を前記密閉ケース外に吐出する吐出管と、
前記各圧縮機構部収容空間内に設けられ、前記圧縮機構部収容空間内に貯留された潤滑油を前記圧縮機構部に給油する給油部と、
を有し、
前記各バッフル体は、前記電動機部収容空間と前記各圧縮機構部収容空間とを、これらの電動機部収容空間と圧縮機構部収容空間との間で作動流体と潤滑油とが移動可能、及び、前記電動機部収容空間と各圧縮機構部収容空間に差圧を生じるように区画することを特徴とする多気筒回転式圧縮機。
【請求項2】
二つの前記アキュムレータ間には、これらのアキュムレータ内に溜まった液体状態の作動流体を移動可能とする連通路が接続されていることを特徴とする請求項1記載の多気筒回転式圧縮機。
【請求項3】
前記各圧縮機構部には、ローラと、このローラが偏心回転可能に収容されるシリンダ室を備えたシリンダと、このシリンダに摺動可能に設けられて先端部を前記ローラの外周面に当接させることにより前記シリンダ室内を前記ローラの回転方向に沿って二分するブレードとを備えた二つの圧縮部が設けられ、
前記一方の圧縮機構部の前記一方の圧縮部の前記ローラと前記他方の圧縮部の前記ローラとが180°の位相をもって回転する位置に配置され、
前記一方の圧縮機構部における前記二つの圧縮部の前記各シリンダには、前記ブレードの後端側を摺動可能に収容するとともに前記密閉ケース内の空間に対して気密状態とされ、互いに連通したブレード背室が設けられ、
前記一方の圧縮機構部の前記ブレード背室に吐出側作動流体の圧力を作用させることにより前記ブレードの先端部を前記ローラの外周面に当接させる運転状態と、前記ブレード背室に吸込側作動流体の圧力を作用させることにより前記ブレードの先端部を前記ローラの外周面から離反させる休筒状態とに切替える作用圧力切替部が設けられている、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の多気筒回転式圧縮機。
【請求項4】
前記電動機部は固定子とこの固定子内に回転可能に設けられた回転子とを有し、前記回転子はこの回転子の軸方向に分割された二つの分割回転子からなり、個々の前記分割回転子とこれらの分割回転子に隣接して位置する前記圧縮機構部とがそれぞれ異なる駆動軸により連結されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の多気筒回転式圧縮機。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の多気筒回転式圧縮機と、前記多気筒回転式圧縮機に接続された凝縮器と、前記凝縮器に接続された膨張装置と、前記膨張装置と前記多気筒回転式圧縮機との間に接続された蒸発器とを備えた冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、多気筒回転式圧縮機及びこの多気筒回転式圧縮機を用いた冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍サイクル装置内を循環するガス冷媒を圧縮する多気筒回転式圧縮機において、電動機部と電動機部の両側に配置された二つの圧縮機構部とを有し、これらの電動機部と圧縮機構部とを密閉ケース内に収容した構造のものが知られている(下記特許文献1参照)。この特許文献1に記載された多気筒回転式圧縮機では、圧縮機構部に低圧のガス冷媒を吸い込んで圧縮し、圧縮した後の高圧のガス冷媒を密閉ケース内に吐出している。そして、密閉ケース内に吐出された高圧のガス冷媒を、凝縮器に吐出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭48−105105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には図示されておらず、及び、言及もされていないが、特許文献1に記載されたタイプの多気筒回転式圧縮機おいては、圧縮機構部に低圧のガス冷媒を吸い込む場合、そのガス冷媒中に含まれている液体状態の冷媒を除去するためにアキュムレータを用いている。
【0005】
特許文献1に示された多気筒回転式圧縮機においてアキュムレータを設けるとすれば、密閉ケースの外周側であって二つの圧縮機構部の中間位置に1つのアキュムレータを配置することが考えられる。アキュムレータと二つの圧縮機構部との間は、ガス冷媒が流れる吸込配管により接続される。
【0006】
その場合、アキュムレータと圧縮機構部とを接続する吸込配管が長くなり、冷媒が吸込配管内を流れる場合の流路抵抗が大きくなり、発生する圧力損失が大きくなって多気筒回転式圧縮機の性能が低下する。
【0007】
アキュムレータと圧縮機構部とを接続する吸込配管の長さ寸法に関しては、圧縮機構部の吸気周波数との関係で、多気筒回転式圧縮機を最も効率良く運転できる長さ寸法が存在する。しかし、吸込配管の長さ寸法が長くなることに伴い、多気筒回転式圧縮機を最も効率良く運転できるように吸込配管の長さ寸法を調整することが困難になる。
【0008】
本発明の実施形態の目的は、電動機部の両側に二つの圧縮機構部を有する高性能な多気筒回転式圧縮機、及び、その多気筒回転式圧縮機を用いた冷凍サイクル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の多気筒回転式圧縮機によれば、密閉ケースと、密閉ケース内に収容された一つの電動機部と、密閉ケース内に収容されて電動機部の両側に配置され、電動機部に連結されて作動流体を圧縮する二つの圧縮機構部と、密閉ケースの外周側に各圧縮機構部に近接させて配置され、吸込配管を介して近接して位置する側の圧縮機構部に個々に接続された二つのアキュムレータと、を備える多気筒回転式圧縮機であって、密閉ケース内を、電動機部が収容された電動機部収容空間と各圧縮機構部が収容された圧縮機構部収容空間とに区画する二つのバッフル体と、各圧縮機構部で圧縮された作動流体を電動機部収容空間内に吐出する吐出部と、各圧縮機構部収容空間に連通され、圧縮機構部収容空間内の作動流体を密閉ケース外に吐出する吐出管と、各圧縮機構部収容空間内に設けられ、圧縮機構部収容空間内に貯留された潤滑油を圧縮機構部に給油する給油部と、を有し、各バッフル体は、電動機部収容空間と各圧縮機構部収容空間とを、これらの電動機部収容空間と圧縮機構部収容空間との間で作動流体と潤滑油とが移動可能、及び、電動機部収容空間と各圧縮機構部収容空間に差圧を生じるように区画する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態の冷凍サイクル装置である空気調和機の冷凍サイクルを示す模式図である。
図2】第1の実施形態の多気筒回転式圧縮機の側面図である。
図3】第1の実施形態の多気筒回転式圧縮機の正面図である。
図4】第1の実施形態の多気筒回転式圧縮機の縦断正面図である。
図5】第2の実施形態の多気筒回転式圧縮機の縦断正面図である。
図6】第3の実施形態の多気筒回転式圧縮機の縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について、図1ないし図4に基づいて説明する。冷凍サイクル装置である空気調和機1は、図1にその冷凍サイクル図を示すように、多気筒回転式圧縮機2と、四方弁3と、冷房運転時には凝縮器として機能するとともに暖房運転時には蒸発器として機能する熱源側熱交換器である室外熱交換器4と、膨張装置5と、冷房運転時には蒸発器として機能するとともに暖房運転時には凝縮器として機能する利用側熱交換器である室内熱交換器6とをサイクル状に連通して形成されている。多気筒回転式圧縮機2には二つのアキュムレータ7、8を備えており、これらのアキュムレータ7、8は同じ構造に形成されている。
【0013】
この空気調和機1では、冷房運転時には、作動流体である高圧のガス冷媒が多気筒回転式圧縮機2から吐出されて実線の矢印で示すように流れ、四方弁3を経由して室外熱交換器(凝縮器)4内に流入し、室外熱交換器4内で外気と熱交換して凝縮される。凝縮された冷媒(液体状態の冷媒)は、膨張装置5を経由して室内熱交換器(蒸発器)6内に流入し、室内熱交換器6内で室内空気と熱交換して蒸発し、室内空気を冷却する。蒸発した冷媒(ガス冷媒)は、四方弁3を経由して多気筒回転式圧縮機2内に吸込まれる。
【0014】
一方、暖房運転時には、高圧のガス冷媒が多気筒回転式圧縮機2から吐出されて破線の矢印で示すように流れ、四方弁3を経由して室内熱交換器(凝縮器)6内に流入し、室内熱交換器6内で室内空気と熱交換して凝縮され、室内空気を加熱する。凝縮された冷媒は、膨張装置5を経由して室外熱交換器(蒸発器)4内に流入し、室外熱交換器4内で室外空気と熱交換して蒸発する。蒸発したガス冷媒は、四方弁3を経由して多気筒回転式圧縮機2内に吸込まれる。
【0015】
上述したように冷媒の循環が継続されることにより、空気調和機1の冷房運転又は暖房運転が継続される。
【0016】
多気筒回転式圧縮機2は、図2及び図3に示すように、横長の向きに設置された円筒形状の密閉ケース9と、密閉ケース9の外周側に縦長の向きに設置された円筒形状の二つのアキュムレータ7、8とを備えている。密閉ケース9内には後述するように、ガス冷媒を圧縮する圧縮機構部と圧縮機構部を駆動する電動機部とが収容されている。また、密閉ケース9内には、圧縮機構部の摺動部分を潤滑する潤滑油が貯留されている。
【0017】
アキュムレータ7、8は図2に示すように、連結片10を用いて密閉ケース9の外周側に溶接して固定されている。アキュムレータ7、8の上部には図2及び図3に示すように、熱交換されて蒸発したガス冷媒が流入する流入路11が設けられている。アキュムレータ7、8の下部からは、アキュムレータ7、8内に流入したガス冷媒を密閉ケース9内の
圧縮機構部に供給する吸込配管12が延出している。吸込配管12におけるアキュムレータ7、8内に位置する一端側は、図3の破線で示すように、アキュムレータ7、8内の上端側まで延出して開口しており、ガス冷媒中に含まれる液体状態の冷媒をアキュムレータ7、8内に貯留し、液体状態の冷媒を除去したガス冷媒のみを圧縮機構部に供給する構造となっている。吸込配管12の他端側は圧縮機構部の吸込側に接続されている。
【0018】
密閉ケース9内の構造を、図4に基づいて説明する。密閉ケース9内には、その長手方向の中央部に配置された一つの電動機部13と、電動機部13の両側に配置された二つの圧縮機構部14、15とが収容されている。電動機部13には中心線回りに回転する二つの駆動軸16、17が設けられ、電動機部13と一方の圧縮機構部14とが駆動軸16を介して連結され、電動機部13と他方の圧縮機構部15とが駆動軸17を介して連結されている。二つの圧縮機構部14、15の基本的な構成は同じであり、吸込配管12を経由してアキュムレータ7、8から吸込んだ低圧のガス冷媒を圧縮し、高圧・高温のガス冷媒を得る。なお、密閉ケース9の外周側に溶接されているアキュムレータ7、8のうち、一方のアキュムレータ7は一方の圧縮機構部14に近接させて配置され、他方のアキュムレータ8は他方の圧縮機構部15に近接させて配置されている。
【0019】
電動機部13は、固定子18と回転子19とを有し、固定子18が密閉ケース9の内周部に接着や圧入などにより固定され、回転子19が固定子18の内側に回転可能に挿入されている。回転子19の中央部には駆動軸16、17が固定されている。駆動軸16、17にはそれぞれ二つの偏心部20、21が設けられ、これらの偏心部20、21は、駆動軸16、17の回転方向に沿って180°の位相をもって配置されている。
【0020】
一方の圧縮機構部14は、図示しない固定部材により密閉ケース9内に固定され、二つの圧縮部22、23を有している。二つの圧縮部22、23はそれぞれ、シリンダ室24を備えたシリンダ25、外周面の一部をシリンダ室24の内周面に当接させながらシリンダ室24内に偏心回転可能に収容されたローラ26、シリンダ25に設けられて先端部をローラ26の外周面に当接させることによりシリンダ室24内をローラ26の回転方向に沿って二分するスライド可能なブレード27を備えている。ブレード27の後端側にはスプリング28が配置され、このスプリング28はブレード27をその先端部がローラ26の外周面に当接する向きに付勢している。シリンダ室24内には駆動軸16の偏心部20、21が位置し、これらの偏心部20、21の外周部にローラ26が嵌合されている。したがって、二つのローラ26は、駆動軸16の回転方向に沿って180°の位相をもって配置される。
【0021】
シリンダ25の一方の端面であって二つの圧縮部22、23の間の部分は、仕切板29により閉止されている。シリンダ25の他方の端面は、駆動軸16を回転可能に支持する軸受30により閉止されている。
【0022】
圧縮機構部14の外周側には、この圧縮機構部14で圧縮されたガス冷媒が吐出される吐出マフラ31が設けられ、吐出マフラ31と軸受30との間には、吐出マフラ31内のガス冷媒を密閉ケース9内に吐出する吐出部である吐出隙間32が形成されている。さらに、圧縮機構部14には、密閉ケース9内に貯留されている潤滑油を圧縮機構部14の内部に供給する給油部33が設けられている。給油部33による潤滑油の供給は、例えば、シリンダ室24内と密閉ケース9内との差圧を利用して潤滑油を微小な隙間部分から吸込むことにより行われる。なお、密閉ケース9における圧縮機構部14の上方位置には、密閉ケース9内のガス冷媒を密閉ケース9外に吐出する吐出管34が接続されている。
【0023】
他方の圧縮機構部15は、その基本的な構成は圧縮機構部14と同じであり、同じ構成の部分は同じ符号で示し、説明を省略する。ここでは、圧縮機構部14と構成の異なる部
分について説明する。圧縮機構部15における二つの圧縮部22、23のシリンダ25には、ブレード27の後端側を摺動可能に収容し、及び、密閉ケース9内の空間に対して気密状態とされたブレード背室35が形成されている。二つの圧縮部22、23の間に位置する仕切板29には、一方の圧縮部22のブレード背室35と他方の圧縮部23のブレード背室35とを連通する連通路36が形成されている。また、各ブレード背室35内には、ブレード27がその先端部をローラ26の外周面から離反させてガス冷媒の圧縮を行わない休筒状態となった場合に、そのブレード27を吸着して保持する永久磁石37が設けられている。なお、永久磁石37は、二つのブレード背室35にまたがって一体に形成しても良い。
【0024】
さらに、圧縮機構部15には、ブレード背室35に作用するガス冷媒の圧力の大きさを切替える作用圧力切替部38が設けられている。この作用圧力切替部38は、三方弁39と、一端が密閉ケース9の底部に接続されて他端が三方弁39に接続された高圧導入管40と、一端がアキュムレータ7の吸込配管12に接続されて他端が三方弁39に接続された低圧導入管41と、一端が三方弁39に接続されて他端がブレード背室35に接続された圧力導入管42とにより構成されている。三方弁39を切替え、吐出側作動流体である圧縮機構部14で圧縮されて密閉ケース9内に吐出されたガス冷媒の圧力を潤滑油を介してブレード背室35に作用させると、その圧力によりブレード27が付勢され、付勢されたブレード27の先端部がローラ26の外周面に当接され、圧縮機構部15はガス冷媒を圧縮する運転状態となる。一方、三方弁39を切替え、吸込側作動流体である圧縮機構部14で圧縮される前のアキュムレータ7内のガス冷媒の圧力をブレード背室35に作用させると、ブレード27の先端部をローラ26の外周面に当接させる向きにブレード27を付勢する力がなくなり、ブレード27の先端部がローラ26の外周面から離反し、圧縮機構部15はガス冷媒の圧縮を行わない休筒状態となる。先端部をローラ26の外周面から離反させたブレード27は、永久磁石37により吸着されて先端部をローラ26から離反させた位置で位置固定に保持される。
【0025】
密閉ケース9内にはこの密閉ケース9内を三つの空間に区画する二つのバッフル体43が設けられている。これらのバッフル体43はリング形状に形成され、電動機部13と圧縮機構部14、15との間に位置する軸受30の外周部に嵌合され、密閉ケース9内を、電動機部13が収容された一つの電動機部収容空間44と、圧縮機構部14、15が収容された二つの圧縮機構部収容空間45、46とに区画している。吐出マフラ31の吐出隙間32は、電動機部収容空間44に開口している。バッフル体43は、電動機部収容空間44と圧縮機構部収容空間45、46とを、これらの電動機部収容空間44と圧縮機構部収容空間45、46との間でガス冷媒と潤滑油とが移動可能、及び、電動機部収容空間44が圧縮機構部収容空間45、46より高圧となる差圧を生じるように区画している。
【0026】
図3に戻って、二つのアキュムレータ7、8の底部側の間には、連通路47が接続されている。さらに、二つのアキュムレータ7、8の吸込配管12の間には、シリンダ室24より下側に位置して連通路48が接続されている。アキュムレータ7、8の底部側の間に連通路47が接続されることにより、アキュムレータ7、8内に溜まった液体状態の冷媒が連通路47を通ってアキュムレータ7、8の間で移動可能となる。また、アキュムレータ7、8の吸込配管12の間に連通路48が接続されることにより、圧縮機構部15が休筒状態となって圧縮機構部15のシリンダ室24内に潤滑油が溜まった場合、その潤滑油が連通路48内を通って運転状態となっている圧縮機構部14側に吸引される。
【0027】
このような構成において、空気調和機1の運転時には、電動機部13が駆動されて駆動軸16、17が回転し、駆動軸16、17の偏心部20、21に嵌合されているローラ26が各圧縮機構部14、15のシリンダ室24内で偏心回転する。ローラ26がシリンダ室24内で偏心回転することにより、低圧のガス冷媒がアキュムレータ7、8から吸込配
管12を経由してシリンダ室24内に吸込まれ、圧縮される。
【0028】
シリンダ室24内で圧縮されることにより高圧となったガス冷媒は、シリンダ室24から吐出マフラ31内に吐出され、さらに、吐出マフラ31の吐出隙間32から電動機部収容空間44内に吐出される。電動機部収容空間44内に吐出された高圧のガス冷媒は、バッフル体43による区画部分を通過して圧縮機構部収容空間45、46内に移動し、圧縮機構部収容空間45、46内に移動した高圧のガス冷媒は、吐出管34から密閉ケース9外に吐出される。
【0029】
ここで、この多気筒回転式圧縮機2では、電動機部13と電動機部13の両側に位置する二つの圧縮機構部14、15とが密閉ケース9内に収容され、密閉ケース9の外周側に位置する二つのアキュムレータ7、8が圧縮機構部14、15に近接させて配置され、互いに近接して位置するアキュムレータ7と圧縮機構部14、及び、アキュムレータ8と圧縮機構部15とがそれぞれ吸込配管12を介して接続されている。このため、吸込配管12の長さ寸法を短くすることができ、それによってガス冷媒が吸込配管12内を流れる場合の流路抵抗を小さくすることができ、発生する圧力損失を小さくして多気筒回転式圧縮機2の性能を向上させることができる。
【0030】
また、アキュムレータ7、8と圧縮機構部14、15とを接続する吸込配管12の長さ寸法に関しては、圧縮機構部14、15の吸気周波数との関係で、多気筒回転式圧縮機2を最も効率良く運転できる長さ寸法が存在する。この多気筒回転式圧縮機2では、吸込配管12の長さ寸法を短くすることができるため、多気筒回転式圧縮機2を最も効率良く運転できるように吸込配管12の長さ寸法を調整することが可能となる。
【0031】
さらに、圧縮機においてアキュムレータを使用する場合、そのアキュムレータにおいて必要な容積は圧縮機のシリンダ容積により決定される。この多気筒回転式圧縮機2では、二つのアキュムレータ7、8を使用するため、個々のアキュムレータ7、8の容積を1つのアキュムレータを使用する場合に比べて半減させることができ、個々のアキュムレータ7、8を小型化することができる。そして、小型化された二つのアキュムレータ7、8を密閉ケース9の側方に配置した場合には、大型の一つのアキュムレータを密閉ケース9の側方に配置する場合に比べて、多気筒回転式圧縮機2における密閉ケース9の長手方向と直交する方向の幅寸法を小さくすることができる。これにより、多気筒回転式圧縮機2を小型化することができ、及び、多気筒回転式圧縮機2の設置面積を狭くすることができる。
【0032】
つぎに、密閉ケース9内には図4に示すように、この密閉ケース9内を電動機部収容空間44と圧縮機構部収容空間45、46との三つに区画する二つのバッフル体43が設けられ、圧縮機構部14、15において圧縮されたガス冷媒が電動機部収容空間44に吐出される。バッフル体43は、電動機部収容空間44と圧縮機構部収容空間45、46とを、これらの電動機部収容空間44と圧縮機構部収容空間45、46との間でガス冷媒と潤滑油とを移動可能に区画し、及び、電動機部収容空間44が圧縮機構部収容空間45、46より高圧となる差圧を生じるように区画している。このため、多気筒回転式圧縮機2の運転時には、電動機部収容空間44内の圧力が圧縮機構部収容空間45、46内の圧力より高くなり、密閉ケース9内の潤滑油が電動機部収容空間44から圧縮機構部収容空間45、46内に移動し、電動機部収容空間44内に貯留される潤滑油の量が少なくする。これにより、電動機部収容空間44内において回転する回転子19が潤滑油に浸されることを防止することができ、潤滑油に浸された回転子19の回転抵抗が大きくなって多気筒回転式圧縮機2の性能が低下するということを防止できる。一方、圧縮機構部収容空間45、46では貯留される潤滑油の量が多くなるため、給油部33により行う圧縮機構部14、15への潤滑油の供給を円滑に行うことができる。
【0033】
圧縮機構部14の二つの圧縮部22、23のローラ26は、駆動軸16の回転方向に沿って180°の位相をもって配置されている。このため、圧縮機構部15を休筒状態に切替えて圧縮機構部14の二つの圧縮部22、23のみを運転した場合において、トルク変動の少ない低振動の運転を行うことができる。
【0034】
運転状態と休筒状態とに切替えることができる圧縮機構部15においては、二つの圧縮部22、23の各ブレード背室35が連通路36により連通され、しかも、これらの二つの圧縮部22、23のローラ26が180°の位相をもって配置されている。このため、これらのブレード背室35に高圧導入管40と圧力導入管42とを経由して高圧が作用している運転状態において、ブレード27の摺動に伴って一方のブレード背室35内の圧力が上がる場合には他方のブレード背室35の圧力が下がるため、二つのブレード背室35では圧力の変動が互いに相殺され、圧力導入管42や高圧導入管40内ではブレード27の摺動に伴う潤滑油の往復流動が発生せず、圧力導入管42や高圧導入管40における潤滑油の配管振動の発生を防止することができ、多気筒回転式圧縮機2の性能、耐久性を向上させることができる。
【0035】
2つのアキュムレータ7、8の間には、図3に示すように連通路47が接続され、この連通路47によってアキュムレータ7、8内に溜まった液体状態の冷媒が移動可能となっている。このため、多気筒回転式圧縮機2の運転時おいていずれか一方のアキュムレータ7、8に液体状態の冷媒が多量に溜まるということを防止することができ、二つのアキュムレータ7、8内に溜まる液体状態の冷媒の量を同じにすることができる。これにより、アキュムレータ7、8内の容積を液体状態の冷媒を貯めるために有効に利用することができ、アキュムレータ7、8の容積の小型化を図ることができ、及び、片側のアキュムレータ7、8に液体状の冷媒が多量に溜まるという不都合の発生を防止して多気筒回転式圧縮機2の信頼性を高めることができる。
【0036】
また、2つのアキュムレータ7、8における吸込配管12の間であってシリンダ室24より下側の位置には、図3に示すように連通路48が接続され、この連通路48によって休筒状態となっている圧縮機構部15のシリンダ室24内に溜まった潤滑油を運転状態となっている圧縮機構部14側に吸引することができる。これにより、休筒状態の圧縮機構部15のシリンダ室24に浸入した潤滑油を圧縮機構部14側に吸入して圧縮機構部15に接続されているアキュムレータ8内に溜まることを防止することができる。これにより、圧縮機構部15が休筒状態となった場合に、潤滑油がアキュムレータ8内に溜まることを防止し、密閉ケース9内の潤滑油の液面低下を防止することができる。
【0037】
なお、本実施の形態では、圧縮機構部14、15におけるシリンダ室24の容積が同じである場合を想定しているが、圧縮機構部14のシリンダ室24の容積と圧縮機構部15のシリンダ室24の容積とを異ならせてもよい。例えば、休筒状態とされる圧縮機構部15のシリンダ室24の容積を圧縮機構部14のシリンダ室24の容積より大きくすることにより、圧縮機構部15を休筒させた場合の多気筒回転式圧縮機2の出力を通常の運転状態の出力の1/2より小さくすることができる。
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態を図5に基づいて説明する。なお、本実施形態及び以下に説明する他の実施形態において、先行して説明した実施形態の構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付け、重複する説明は省略する。
【0038】
第2の実施形態の多気筒回転式圧縮機2Aの基本的な構成は第1の実施形態の多気筒回転式圧縮機2と同じであり、第2の実施形態の多気筒回転式圧縮機2Aと第1の実施形態の多気筒回転式圧縮機2との異なる点は、圧縮機構部14における一方の圧縮部22が運
転状態と休筒状態とに切替可能な点である。
【0039】
圧縮機構部14における一方の圧縮部22のシリンダ25には、ブレード27の後端側を摺動可能に収容し、及び、密閉ケース9内の空間に対して気密状態とされたブレード背室35が形成されている。そして、圧縮機構部14には、ブレード背室35に作用するガス冷媒の圧力の大きさを切替える作用圧力切替部51が設けられている。この作用圧力切替部51は、三方弁52と、一端が密閉ケース9の底部に接続されて他端が三方弁52に接続された高圧導入管53と、一端がアキュムレータ7の吸込配管12に接続されて他端が三方弁52に接続された低圧導入管54と、一端が三方弁52に接続されて他端がブレード背室35に接続された圧力導入管55とにより構成されている。三方弁52を切替え、圧縮機構部14で圧縮されて密閉ケース9内に吐出されたガス冷媒の圧力を潤滑油を介してブレード背室35に作用させると、その圧力によりブレード27が付勢され、付勢されたブレード27の先端部がローラ26の外周面に当接され、圧縮機構部14の圧縮部22が運転状態となる。一方、三方弁52を切替え、圧縮機構部14で圧縮される前のアキュムレータ7内のガス冷媒の圧力をブレード背室35に作用させると、ブレード27の先端部をローラ26の外周面に当接させる向きにブレード27を付勢する力がなくなり、ブレード27の先端部がローラ26の外周面から離反し、圧縮機構部14の圧縮部22はガス冷媒の圧縮を行わない休筒状態となる。先端部をローラ26の外周面から離反させたブレード27は、永久磁石37により吸着されて先端部をローラ26から離反させた位置で位置固定に保持される。
【0040】
このような構成において、この第2の実施形態によれば、第1の実施形態で説明した構成を全て具備するため、第1の実施形態で説明した作用及び効果を全て奏する。
【0041】
さらに、作用圧力切替部38の切替と併せて作用圧力切替部51の切替を行うことにより、多気筒回転式圧縮機2Aの運転状態を4段階に切替えることができる。運転状態の4段階の切替えは、以下の通りである。
【0042】
まず、圧縮機構部14において二つの圧縮部22、23を運転状態とし、及び、圧縮機構部15において二つの圧縮部22、23を運転状態とする。これにより、多気筒回転式圧縮機2Aは、圧縮機構部14の二つの圧縮部22、23と、圧縮機構部15の二つの圧縮部22、23とで圧縮を行う四シリンダ形式の運転状態となる。
【0043】
つぎに、圧縮機構部14において圧縮部22を休筒状態とするとともに圧縮部23を運転状態とし、及び、圧縮機構部15において二つの圧縮部22、23を運転状態とする。これにより、多気筒回転式圧縮機2Aは、圧縮機構部14の一つの圧縮部23と、圧縮機構部15の二つの圧縮部22、23とで圧縮を行う三シリンダ形式の運転状態となる。
【0044】
つぎに、圧縮機構部14において二つの圧縮部22、23を運転状態とし、及び、圧縮機構部15において二つの圧縮部22、23を休筒状態とする。これにより、多気筒回転式圧縮機2Aは、圧縮機構部14の二つの圧縮部22、23で圧縮を行う二シリンダ形式の運転状態となる。
【0045】
つぎに、圧縮機構部14において圧縮部22を休筒状態とするとともに圧縮部23を運転状態とし、及び、圧縮機構部15において二つの圧縮部22、23を休筒状態とする。これにより、多気筒回転式圧縮機2Aは圧縮機構部14の一つの圧縮部23でのみ圧縮を行う一シリンダ形式の運転状態となる。
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態を図6に基づいて説明する。第3の実施形態の多気筒回転式圧縮機2Bの基本的な構成は第1の実施形態の多気筒回転式圧縮機2と同じであり、第3の
実施形態の多気筒回転式圧縮機2Bと第1の実施形態の多気筒回転式圧縮機2との異なる点は、密閉ケース9内に収容された電動機部71の構成である。
【0046】
密閉ケース9内には、その長手方向の中央部に配置された電動機部71と、電動機部71の両側に配置された二つの圧縮機構部14、15とが収容されている。
【0047】
電動機部71は、固定子72と回転子73とを有し、固定子72が密閉ケース9の内周部に接着や圧入などにより固定され、回転子73が固定子72の内側に回転可能に挿入されている。なお、回転子73は、この回転子73の軸方向に分割された二つの分割回転子73a、73bから構成されている。
【0048】
一方の分割回転子73aの中央部には回転子内腔74が形成され、この回転子内腔74には駆動軸75が挿入して固定され、この駆動軸75が分割回転子73aに隣接して位置する一方の圧縮機構部14に連結されている。他方の分割回転子73bの中央部には回転子内腔76が形成され、この回転子内腔76には駆動軸77が挿入して固定され、この駆動軸77が分割回転子73bに隣接して位置する他方の圧縮機構部15に連結されている。
【0049】
一方の駆動軸75は、一方の分割回転子73aの回転子内腔74に挿入され、さらに、その先端部が他方の分割回転子73bの回転子内腔76に挿入されている。
【0050】
駆動軸75の一端と駆動軸77の一端との対向する部分には、駆動軸75、77同士を回り止めする回り止め機構部としてそれぞれ半月状の切欠部78が形成され、これらの切欠部78が互いに嵌合されている。
【0051】
分割回転子73aと分割回転子73bとには、分割回転子73a、73b同士を回り止めす回り止め機構部として複数の回り止めピン79が駆動軸75、77と平行な向きに挿入されている。これらの回り止めピン79は、分割回転子73aに形成された軸挿入孔80と分割回転子73bに形成された軸挿入孔81とに挿入されている。
【0052】
分割回転子73aと分割回転子73bとの合計した軸方向の長さ寸法“L1”は、固定子72の軸方向の長さ寸法“L2”より大きく設定されている。
【0053】
このような構成において、この第3の実施形態によれば、第1の実施形態で説明した構成を全て具備するため、第1の実施形態で説明した作用及び効果を全て奏する。
【0054】
さらに、電動機部71の回転子73が二つに分割された分割回転子73a、73bから構成されているため、この多気筒回転式圧縮機2Bでは、電動機部71と圧縮機構部14、15との連結を、圧縮機構部14が連結された駆動軸75に分割回転子73aを固定し、及び、圧縮機構部15が連結された駆動軸77に分割回転子73bを固定し、これらの分割回転子73a、73bを固定子72内に両側から挿入することにより行える。このため、固定子内に挿入された回転子に固定されている駆動軸に圧縮機構部を連結する場合に比べ、電動機部71と圧縮機構部14、15との連結を容易に行うことができる。
【0055】
また、一方の分割回転子73aの回転子内腔74に挿入された一方の駆動軸75の先端部が、他方の分割回転子73bの回転子内腔76にも挿入されている。このため、二つの分割回転子73a、73bの中心を容易に一致させることができ、固定子72と分割回転子73a、73bとの間のギャップを均等に確保することができる。
【0056】
また、駆動軸75、77の端部にはそれぞれ半月状の切欠部78が形成され、それらの
切欠部78同士が嵌合されている。このため、圧縮機構部14、15側でトルクの変動などが生じても、駆動軸75と駆動軸77とが常に一体に回転し、分割回転子73aと分割回転子73bとが回転方向に位置ずれすることを防止でき、分割回転子73aと分割回転子73bとが回転方向に位置ずれすることが原因となる電動機部71の性能低下を防止することができる。
【0057】
また、分割回転子73aと分割回転子73bとは、軸挿入孔80、81に挿入された回り止めピン79により回り止めされている。このため、分割回転子73aと分割回転子73bとの回転方向の位置ずれをより一層確実に防止することができる。
【0058】
分割回転子73aと分割回転子73bとの合計した軸方向の長さ寸法“L1”が、固定子72の軸方向の長さ寸法“L2”より大きく設定されている。このため、固定子72と回転子73との間には、分割回転子73a、73b同士を引き寄せる向きの力が作用し、分割回転子73aと分割回転子73bとは端面を当接させた状態で回転する。これにより、分割回転子73a、73bが回転中に軸方向に移動することや、分割回転子73a、73bが接離して異音を発生するということを防止できる。
【0059】
なお、本実施形態では、分割回転子73aと分割回転子73bとの軸方向の長さ寸法が同じ場合を例に挙げて示しているが、圧縮機構部14、15の負荷トルクが異なる場合には、その負荷トルクの違いに応じて分割回転子73a、73bの軸方向の寸法を変えてもよい。例えば、運転時における圧縮機構部14の負荷トルクが圧縮機構部15より大きい場合には、圧縮機構部14に連結されている分割回転子73aの軸方向の寸法を分割回転子73bの軸方向の長さ寸法より大きくする。これにより、圧縮機構部14側で大きな負荷トルクが作用しても、駆動軸75と分割回転子73aとの間で位置ずれが生じるということを防止できる。
【0060】
以上説明した各実施形態によれば、電動機部13と電動機部13の両側に位置する二つの圧縮機構部14、15とが密閉ケース9内に収容され、密閉ケース9の外周側に位置する二つのアキュムレータ7、8が圧縮機構部14、15に近接させて配置され、互いに近接して位置するアキュムレータ7と圧縮機構部14、及び、アキュムレータ8と圧縮機構部15とがそれぞれ吸込配管12を介して接続されている。このため、吸込配管12の長さ寸法を短くすることができ、それによってガス冷媒が吸込配管12内を流れる場合の流路抵抗を小さくすることができ、発生する圧力損失を小さくして多気筒回転式圧縮機2、2A、2Bの性能を向上させることができる。
【0061】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、様々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
1…空気調和機(冷凍サイクル装置)、2…多気筒回転式圧縮機、2A…多気筒回転式圧縮機、2B…多気筒回転式圧縮機、4…室外熱交換器(凝縮器、蒸発器)、5…膨張装置、6…室内熱交換機(蒸発器、凝縮器)、7、8…アキュムレータ、12…吸込配管、13…電動機部、14、15…圧縮機構部、22、23…圧縮部、24…シリンダ室、25…シリンダ、26…ローラ、27…ブレード、32…吐出隙間(吐出部)、33…給油部、34…吐出管、35…ブレード背室、38…作用圧力切替部、43…バッフル体、44…電動機部収納空間、45、46…圧縮機構部収納空間、47…連通路、72…固定子
、73…回転子、73a、73b…分割回転子、75、77…駆動軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6