特許第5797486号(P5797486)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5797486
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】燃焼圧検知センサ付きグロープラグ
(51)【国際特許分類】
   F23Q 7/00 20060101AFI20151001BHJP
   F02P 19/00 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   F23Q7/00 V
   F23Q7/00 605Z
   F02P19/00 B
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2011-160513(P2011-160513)
(22)【出願日】2011年7月22日
(65)【公開番号】特開2013-24488(P2013-24488A)
(43)【公開日】2013年2月4日
【審査請求日】2014年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097434
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和久
(72)【発明者】
【氏名】沖中 学
(72)【発明者】
【氏名】佐々 司光
【審査官】 藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−177782(JP,A)
【文献】 特開2007−057140(JP,A)
【文献】 特開2004−163091(JP,A)
【文献】 特開2005−331236(JP,A)
【文献】 特開2002−364843(JP,A)
【文献】 特開2010−182443(JP,A)
【文献】 特開2006−308245(JP,A)
【文献】 特開2004−278934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23Q 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製で筒状をなすハウジング内に、その先端から自身の先端を露出させた棒状をなすヒータが軸線方向に先後動可能に配置されており、該ヒータが燃焼圧によって先端から後方に押されることによって発生する先後動によって歪部材を変形させ、その歪部材の変形から前記燃焼圧を検知可能のセンサを備えてなる燃焼圧検知センサ付きのグロープラグであって、
金属製の軸部材が、該ヒータと共に軸線方向に先後動可能であり、かつ、前記ハウジングの内周面との間で電気的絶縁が保持された状態で、該ヒータの後方に配置されており、しかも、この軸部材には、その軸線回りを包囲する形で、絶縁材からなる絶縁リングが固定されている一方、
前記歪部材は、該歪部材の外周側部位が前記ハウジングに固定され、該歪部材の内周側部位が前記絶縁リングに固定されてなる構造を有する燃焼圧検知センサ付きグロープラグにおいて、
前記軸部材は、その後端寄り部位において、その後端から先方に向けて、小径軸部と、これより太く前記絶縁リングが締り嵌め状態で固定される絶縁リング嵌合用軸部とを備えており、
前記絶縁リングは、その内周面のうちの先端寄り部位が、前記絶縁リング嵌合用軸部の外周面に締り嵌め状態で固定されて、該絶縁リングの内周面のうちの後端寄り部位と前記小径軸部との間で環状空隙を有しており、
前記絶縁リングのうち、前記環状空隙に対応する先後部位の外周面に、前記歪部材の内周側部位が締り嵌め状態で固定されていることを特徴とする燃焼圧検知センサ付きグロープラグ。
【請求項2】
金属製で筒状をなすハウジング内に、その先端から自身の先端を露出させた棒状をなすヒータが軸線方向に先後動可能に配置されており、該ヒータが燃焼圧によって先端から後方に押されることによって発生する先後動によって歪部材を変形させ、その歪部材の変形から前記燃焼圧を検知可能のセンサを備えてなる燃焼圧検知センサ付きのグロープラグであって、
金属製の軸部材が、該ヒータと共に軸線方向に先後動可能であり、かつ、前記ハウジングの内周面との間で電気的絶縁が保持された状態で、該ヒータの後方に配置されており、しかも、この軸部材には、その軸線回りを包囲する形で、絶縁材からなる絶縁リングが固定されている一方、
前記歪部材は、該歪部材の外周側部位が前記ハウジングに固定され、該歪部材の内周側部位が前記絶縁リングに固定されてなる構造を有する燃焼圧検知センサ付きグロープラグにおいて、
前記軸部材の後端寄り部位に、外向きに突出するフランジが形成されていると共に、このフランジには内周側に環状空隙を有するように、後方に向けて突出する環状凸部を備えており、
この環状凸部の内周面に、前記絶縁リングの先端寄り部位の外周面が締り嵌め状態で固定され、
この絶縁リングの後端寄り部位の外周面に、前記歪部材の内周側部位の内周面が締り嵌め状態で固定されていることを特徴とする燃焼圧検知センサ付きグロープラグ。
【請求項3】
金属製で筒状をなすハウジング内に、その先端から自身の先端を露出させた棒状をなすヒータが軸線方向に先後動可能に配置されており、該ヒータが燃焼圧によって先端から後方に押されることによって発生する先後動によって歪部材を変形させ、その歪部材の変形から前記燃焼圧を検知可能のセンサを備えてなる燃焼圧検知センサ付きのグロープラグであって、
金属製の軸部材が、該ヒータと共に軸線方向に先後動可能であり、かつ、前記ハウジングの内周面との間で電気的絶縁が保持された状態で、該ヒータの後方に配置されており、しかも、この軸部材には、その軸線回りを包囲する形で、絶縁材からなる絶縁リングが固定されている一方、
前記歪部材は、該歪部材の外周側部位が前記ハウジングに固定され、該歪部材の内周側部位が前記絶縁リングに固定されてなる構造を有する燃焼圧検知センサ付きグロープラグにおいて、
前記軸部材の後端寄り部位に、外向きに突出するフランジが形成されていると共に、このフランジには内周側に環状空隙を有するように、後方に向けて突出する環状凸部を備えており、
この環状凸部の内周面又は外周面に、前記絶縁リングの先端寄り部位の外周面又は内周面が締り嵌め状態で固定され、
この絶縁リングの後端寄り部位の内周面又は外周面に、前記歪部材の内周側部位における外周面又は内周面が締り嵌め状態で固定されていることを特徴とする燃焼圧検知センサ付きグロープラグ。
【請求項4】
前記絶縁リングを、直管をなす円筒体としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃焼圧検知センサ付きグロープラグ。
【請求項5】
前記締り嵌めは圧入による締り嵌めとしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃焼圧検知センサ付きグロープラグ。
【請求項6】
前記絶縁リングをセラミック製としたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃焼圧検知センサ付きグロープラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの燃焼室内における着火の促進と、それに加えて燃焼室内の圧力(燃焼圧)を検知(検出)する機能を備えた燃焼圧検知センサ付きグロープラグに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の燃焼圧検知センサ付きグロープラグ(以下、単にグロープラグともいう)は、燃焼室内に、棒状をなすヒータの先端を露出させるようにエンジンヘッドに取り付けられ、そのヒータにて燃料の着火促進が図られる。一方、燃焼圧(燃焼ガス圧)の検知手段としては、ヒータが燃焼圧によって先端から後方に押されることによって発生する先後動(燃焼圧センサの固定位置に対する軸方向へのヒータの相対的変位)によって、グロープラグに設けられた例えばダイヤフラム等を有する歪部材を変形させ、その歪部材の変形から燃焼圧を検知するセンサを用いたものがある(特許文献1)。このようなグロープラグでは、筒状をなす主体金具(ハウジング)内に、その先端から自身の先端を露出させた棒状をなすヒータが軸線方向に先後動可能に配置されており、燃焼圧によってヒータを先後動させて歪部材を変形させ、その歪部材の変形から歪センサ(ゲージ)等のセンサにて燃焼圧を検知するように構成されている。このグロープラグでは、図8(同文献の図3)に示したように、主体金具40内の後端寄り部位に、ヒータ(図示せず)への電圧印加用の金属製の軸部材(中軸30)が、ヒータと共に軸線方向に先後動可能に、そのヒータの後方に配置されている。一方、その軸部材(中軸)30には、環状(又は筒状)の金属製のダイヤフラム部を有する歪部材(ダイヤフラムともいう)210がその内周側部位(円筒状の小径部211)を介して固定されており、その外周側部位(大径部212)が主体金具40の後端に固定されている。このものでは、ヒータが受圧した圧力を軸部材30に伝達させ、その軸部材の変位(先後動)によって前記圧力を、その後端又は後端寄り部位に設けられた歪部材210に伝達し、この歪部材の環状のダイヤフラム215を変形させることで、例えばそれに取付けられた歪検出素子220によって抵抗値変化を測定して燃焼圧を検知するというような構成を有している。
【0003】
ところで、このような燃焼圧検知センサ付きグロープラグにおいて、軸部材30に、ダイヤフラムを構成する金属製の歪部材210の内周側部位211を固定させるためには、軸部材30と歪部材210相互間で電気的絶縁を保持する必要がある。というのは、このようなグロープラグにおいては、ヒータの電極のうちの接地側電極は、筒状の金属製のハウジングである主体金具40接続されており、歪部材210はこの主体金具に溶接等により固定されているためである。このため、軸部材30に、歪部材210の内周側部位211を固定させる構造においては、図9の拡大図に示したように、軸部材30の外周面と、歪部材210の内周側部位(円筒状の小径部211)の内周面との間に、絶縁部材(絶縁リング、筒部材)260を介在させ、それぞれの間を接着等により固定していた(特許文献1の段落0025等参照)。
【0004】
より具体的には、軸部材30の外周面と、これに嵌合、外嵌されている絶縁部材260の内周面との間と、絶縁部材260の外周面と歪部材210の小径部211の内周面との間のそれぞれに、接着剤310,320を流し込んで接着していた。すなわち、円筒状の絶縁部材(リング)260を介して、内外に位置する軸部材30と歪部材210とを、それぞれの間に絶縁性を有する接着剤(ガラスやセメント)310,320を流し込んで、それぞれの間を接着して固定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−57140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記した従来のグロープラグにおけるように、絶縁部材(リング)260を介して、軸部材30に歪部材210を固定する構造では、その内外に位置する軸部材30と歪部材210との間に、それぞれ絶縁性を有する接着剤(ガラスやセメント)310,320を流し込んで接着することになる。このため、その接着工程では、各部材間の位置決めを要すると共に、それらの接着剤310,320の流し込み工程を要する。しかも、その流し込み後、固化までには相当の時間を要することから、グロープラグの製造、組立ての効率が悪いといった問題があった。
【0007】
また、絶縁部材(リング)260にセラミックのような硬質材を用いたとしても、それを挟む各部品相互間に接着剤(層)310,320が存在するため、軸部材30の先後動による変位を歪部材210のダイヤフラム215に付与する際には、その接着剤310,320がある分、接着剤310,320自身が変形ないし歪むことからクッション作用を生じてしまうことになる(図9参照)。すなわち、このような接着による場合には、軸部材30の先後動変位がそのまま歪部材210に伝わるのが好ましいところ、実際には絶縁部材260の内外の接着剤310,320自体も変形ないし歪みを発生してしまう。これにより、その変位が減殺されて歪部材210に伝わることになる。このため、軸部材30と歪部材210との間に、かかる固定構造を有する燃焼圧検知センサ付きグロープラグにおいては、燃焼圧の検知精度(ないし感度)が低下することがあった。
【0008】
本発明は、こうした問題点を解消するためになされたもので、上記したようなグロープラグにおいて、歪部材を絶縁部材(絶縁リング)を介して軸部材に固定するのに、接着剤を用いることなく簡易に行うことができるようにするとともに、接着剤層を用いないことで軸部材の先後動変位を歪部材にそのまま伝わるようにして、燃焼圧の検知精度を高めることをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、金属製で筒状をなすハウジング内に、その先端から自身の先端を露出させた棒状をなすヒータが軸線方向に先後動可能に配置されており、該ヒータが燃焼圧によって先端から後方に押されることによって発生する先後動によって歪部材を変形させ、その歪部材の変形から前記燃焼圧を検知可能のセンサを備えてなる燃焼圧検知センサ付きのグロープラグであって、
金属製の軸部材が、該ヒータと共に軸線方向に先後動可能であり、かつ、前記ハウジングの内周面との間で電気的絶縁が保持された状態で、該ヒータの後方に配置されており、しかも、この軸部材には、その軸線回りを包囲する形で、絶縁材からなる絶縁リングが固定されている一方、
前記歪部材は、該歪部材の外周側部位が前記ハウジングに固定され、該歪部材の内周側部位が前記絶縁リングに固定されてなる構造を有する燃焼圧検知センサ付きグロープラグにおいて、
前記軸部材は、その後端寄り部位において、その後端から先方に向けて、小径軸部と、これより太く前記絶縁リングが締り嵌め状態で固定される絶縁リング嵌合用軸部とを備えており、
前記絶縁リングは、その内周面のうちの先端寄り部位が、前記絶縁リング嵌合用軸部の外周面に締り嵌め状態で固定されて、該絶縁リングの内周面のうちの後端寄り部位と前記小径軸部との間で環状空隙を有しており、
前記絶縁リングのうち、前記環状空隙に対応する先後部位の外周面に、前記歪部材の内周側部位が締り嵌め状態で固定されていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、金属製で筒状をなすハウジング内に、その先端から自身の先端を露出させた棒状をなすヒータが軸線方向に先後動可能に配置されており、該ヒータが燃焼圧によって先端から後方に押されることによって発生する先後動によって歪部材を変形させ、その歪部材の変形から前記燃焼圧を検知可能のセンサを備えてなる燃焼圧検知センサ付きのグロープラグであって、
金属製の軸部材が、該ヒータと共に軸線方向に先後動可能であり、かつ、前記ハウジングの内周面との間で電気的絶縁が保持された状態で、該ヒータの後方に配置されており、しかも、この軸部材には、その軸線回りを包囲する形で、絶縁材からなる絶縁リングが固定されている一方、
前記歪部材は、該歪部材の外周側部位が前記ハウジングに固定され、該歪部材の内周側部位が前記絶縁リングに固定されてなる構造を有する燃焼圧検知センサ付きグロープラグにおいて、
前記軸部材の後端寄り部位に、外向きに突出するフランジが形成されていると共に、このフランジには内周側に環状空隙を有するように、後方に向けて突出する環状凸部を備えており、
この環状凸部の内周面に、前記絶縁リングの先端寄り部位の外周面が締り嵌め状態で固定され、
この絶縁リングの後端寄り部位の外周面に、前記歪部材の内周側部位の内周面が締り嵌め状態で固定されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、金属製で筒状をなすハウジング内に、その先端から自身の先端を露出させた棒状をなすヒータが軸線方向に先後動可能に配置されており、該ヒータが燃焼圧によって先端から後方に押されることによって発生する先後動によって歪部材を変形させ、その歪部材の変形から前記燃焼圧を検知可能のセンサを備えてなる燃焼圧検知センサ付きのグロープラグであって、
金属製の軸部材が、該ヒータと共に軸線方向に先後動可能であり、かつ、前記ハウジングの内周面との間で電気的絶縁が保持された状態で、該ヒータの後方に配置されており、しかも、この軸部材には、その軸線回りを包囲する形で、絶縁材からなる絶縁リングが固定されている一方、
前記歪部材は、該歪部材の外周側部位が前記ハウジングに固定され、該歪部材の内周側部位が前記絶縁リングに固定されてなる構造を有する燃焼圧検知センサ付きグロープラグにおいて、
前記軸部材の後端寄り部位に、外向きに突出するフランジが形成されていると共に、このフランジには内周側に環状空隙を有するように、後方に向けて突出する環状凸部を備えており、
この環状凸部の内周面又は外周面に、前記絶縁リングの先端寄り部位の外周面又は内周面が締り嵌め状態で固定され、
この絶縁リングの後端寄り部位の内周面又は外周面に、前記歪部材の内周側部位における外周面又は内周面が締り嵌め状態で固定されていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記絶縁リングを、直管をなす円筒体としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃焼圧検知センサ付きグロープラグである。
請求項5に記載の発明は、前記締り嵌めは圧入による締り嵌めとしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃焼圧検知センサ付きグロープラグである。
【0014】
請求項6に記載の発明は、前記絶縁リングをセラミック製としたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃焼圧検知センサ付きグロープラグである。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、前記軸部材への前記絶縁リングの固定と、その絶縁リングに対する前記歪部材の固定を、従来のような接着とせず、締り嵌め状態での固定としたため、圧入や焼き嵌め等により行うことができる。したがって、接着による固定に比べるとその固定が短時間でできるので、グロープラグの製造、組立の効率化が図られる。しかも、軸部材の先後動(変位)におけるダイヤフラム等の歪部材への変位の伝播(軸方向への圧力の伝達)においては、接着剤が存在しないため、それによるクッション作用の発生がない。したがって、軸部材の先後動の変位の伝達性が高められるので、その分、燃焼圧の検知精度が高められる。なお、本発明において、歪部材のハウジングへの固定と、歪部材の絶縁リングへの固定は、いずれも、直接固定されている場合と、別部材を介して間接的に固定されている場合でもよい。もちろん、別部材を介する場合は、クッション作用の発生しない剛体を用いることが好ましい。
【0016】
本発明において、絶縁リングは、前記歪部材と前記軸部材との間の電気的絶縁が確保され、かつ、軸部材の先後動(変位)を歪部材に高感度で伝達できるように、その両者を一体的に結合できるものであればよい。したがって、弾性係数が大きい硬質の絶縁性のあるセラミックが好ましいが、強化繊維を含有するエンジニアリングプラスチックなどのプラスチック製とすることもできるし、金属製とし、その表面に酸化膜(絶縁膜)を形成したものとしてもよい。ただし、セラミック製とする場合には、絶縁リング自体の変形(歪)も小さく、したがって、軸部材の軸方向変位をダイレクトに歪部材に付与できるため、特に好ましい。なお、セラミック製とする場合には、アルミナ、ジルコニア、又は窒化珪素が例示される。また、絶縁リングは、直管をなす円筒体とするのが好ましい。本発明では、前記軸部材に対する前記絶縁リングの締り嵌め、及び前記絶縁リングに対する前記歪部材の締り嵌めの手段は、特に限定されないが、圧入によるのが容易であり好ましいが、金属が外嵌めとなる場合には、それを加熱して行う焼き嵌めを併用してもよい。
【0017】
請求項1の発明のように、絶縁リングを軸部材に外嵌状態で締り嵌めとし、この絶縁リングの外周面に歪部材の内周側部位の内周面を外嵌状態で締り嵌めとすると、絶縁リングの壁を挟んで、歪部材と軸部材とを固定できるため、絶縁確保や固定工程の容易性より好ましい。すなわち、請求項1の発明のように、絶縁リングを介して先後において、軸部材と歪部材との締り嵌め部位が重ならないようにするのが好ましい。このようにした場合には、絶縁リングはその先端寄り部位が拡径されるような締り嵌め状態にあり、その後端寄り部位が縮径されるような締り嵌め状態にある。したがって、このような絶縁リングは、その内、外周面を、先後方向において重なる位置で、半径方向に締り嵌めとなるため、絶縁リングの壁を挟んでこれを2部材で圧縮して潰すような応力状態とならないため、セラミック製としてもワレ等の損傷を招き難い。
【0018】
しかも、例えば、絶縁リングの外周面の先後において、絶縁リングを縮径するように軸部材及び歪部材の各内周面が外嵌めされている場合には、一方の締め代が大きいなど、絶縁リングの先後における径方向の締め代が異なると、締め代の小さい方の固定力が低下するため、固定の信頼性が低下することがある。これに対して、請求項1の発明ではこうした危険性も小さくすることができる。
【0019】
また、請求項2に記載の発明においては、絶縁リングには、その先後において、半径方向の外方から内方(軸部材の中心)に向けて、歪部材と、軸部材に設けられた環状凸部の双方の内周面により、縮径されるような作用を受ける。絶縁リングにセラミックを用いる場合には、このような応力にも大きく抗することができる。なお、絶縁リングは、先後に同径の直管をなす筒体(筒形状)とするのが好ましいため、これに外嵌される歪部材の内周面と、軸部材に設けられた環状凸部の内周面とは、同径とし、絶縁リングの先後における固定力が同じとなるような締め付けが与えられるように、外嵌めされる相手方両部材の部位の厚み等を設定するのが好ましい。なお、請求項2に記載の発明においては、高温下で圧入(焼き嵌め)をするのに適する。というのは、絶縁リングは両相手方(金属)に対して内嵌めされる構造をなしているため、加熱する場合には、相手方(金属)の熱膨張が大きいため、嵌めやすくなるからである。なお、軸部材に対する絶縁リングの締り嵌めと、絶縁リングに対する歪部材の締り嵌めの各構造は、上記したものに限定されるものでなく、請求項3に記載のように、適宜の組合せとしても具体化できる。なお、本発明における「軸部材」は、中実の軸に限らず中空の軸(パイプ)を用いることもできる。パイプを用いることで、その軽量化が図られる。また、この軸部材は、ヒータへの電圧印加を兼ねるものとすることもできるが、例えば、中空の軸(パイプ)を用いることにより、その内部(パイプ内)に別途、電線を通し、この電線にてヒータへの電圧印加を行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明を具体化した燃焼圧検知センサ付きグロープラグ(第1実施形態例)の縦断面図、及びその先端寄り部位と、後端寄り部位(要部)の拡大図。
図2図1の要部(B部)のさらなる拡大図。
図3図2のC部の拡大図。
図4】軸部材に絶縁リングを圧入すると共に、その絶縁リングに歪部材を圧入する工程を説明する部分拡大図。
図5】第2実施形態例の要部の拡大図。
図6】変形例の要部の拡大図。
図7】変形例の要部の拡大図。
図8】従来の燃焼圧検知センサ付きグロープラグの要部の拡大図。
図9図8の拡大図のさらなる拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を具体化した実施形態例(第1実施形態例)の燃焼圧検知センサ付きグロープラグについて、図1図4に基づいて説明する。本例のグロープラグ101は、金属製で概略円筒状をなすハウジング40と、その内側において先端(図示、下方端)10aを、先端側筒状ハウジング50の先端53から突出させてなるセラミックヒータ10と、さらには、同ハウジング40内においてこのヒータ10の後端から後方に延びるように配置された、電圧印加用の軸部材(中実の軸部材)30、及びこの軸部材30の後端寄り部位においてその外周面とハウジング40の内周面との間に設けられた燃焼圧検知センサを構成する歪部材210等から構成されている。本発明は、軸部材30に絶縁リング260を締り嵌め状態で固定し、この絶縁リング260に歪部材210を締り嵌め状態で固定して取り付ける構造にその特徴を有するものであるが、以下、先ずこのグロープラグ101の全体構成について順次説明する。
【0022】
本例において、ハウジング40は、例えばSUS303からなり、概略円筒状のハウジング本体41と、その先端側に同軸で突合せ状に嵌合され、溶接された先端側筒状ハウジング50等とから構成されている。セラミックヒータ10は円柱状をなし、先端10aがこの先端側筒状ハウジング50の先端53から突出するようにハウジング50の軸線Gと同軸状に配置されている。このヒータ10は、そのセラミック基体の内部に先端10aにおいて折り返し状(U字状)に配置された抵抗発熱体(導電性セラミック)12を有しており、ヒータ10の後端寄り部位の側面に通電用の各電極端子16、17を露出させている。ただし、ヒータ10には、その中間部位に金属パイプ15が圧入で外嵌めされており、その後端寄り部位の内周面にて、相対的に先端側に位置する接地用の電極端子16に電気的に接続されている。そして、この金属パイプ15には金属製のベローズ18が外嵌状に遊挿されている。このベローズ18は、その後端部を、先端側筒状ハウジング50の先端寄り部位の内周面においてシール状に溶接され、その先端側を金属パイプ15の外周面にシール状に溶接されている。すなわち、ベローズ18は、ハウジング40に対するヒータ10の先後動(変位)を許容すると共に、ヒータ10の接地用の電極端子16とハウジング40との中継導通部をなし、かつ、ヒータ10をハウジング40内において保持すると共に、先端側内部を封止する役割を担っている。
【0023】
また、ヒータ10の後端には、それと同軸で、電圧印加用の軸部材30が配置されており、ハウジング40内において絶縁(本実施例では空気絶縁)を保持するようにして後端に向けて、ハウジング40と同軸で配置されている。ただし、ヒータ10の後端と、軸部材30の先端には、金属の連結パイプ19が圧入等により外嵌されており、ヒータ10の相対的に後方に位置する電極端子(正電位側端子)17は、この連結パイプ19の内周面にてその導通が保持され、軸部材30に電気的に接続されている。すなわち、連結パイプ19は、ヒータ10と軸部材30との一体化とともに、その導通確保も担っている。
【0024】
本例では、ハウジング40は、ハウジング本体41と先端側筒状ハウジング50等とからなり、その本体41の外周面には、図示しないエンジンヘッドのプラグホールにねじ込み方式でグロープラグを固定するためのネジ43が所定長さで形成されている。また、このハウジング本体41の後端寄り部位は、後端から先端に向けた所定範囲が、相対的に大径をなすように拡径された拡径筒部45をなしており、この拡径筒部45の後端には、後端側が相対的に小径で異径円筒状をなす後端側筒状ハウジング60であるシール用保護筒(キャップ)が、次記するセンサ用の歪部材210の外周寄り部位を挟んで取り付けられている。なお、この歪部材210は全体としてみると円環状(又は円筒状)をなすもので、詳細は後述するが、その内周寄り部位において、絶縁リング260を介して、軸部材30の後端寄り部位に固定されている。
【0025】
本例において軸部材30は、その全長において先端寄り部位と後端寄り部位が部分的に太く形成されている。そして、後端がハウジング本体41の後端から後方に突出され、後端のシール用保護筒(後端側筒状ハウジング)60の大径筒部63の先端寄り部位に位置している。また、軸部材30の後端寄り部位のうち、そのハウジング本体41の拡径筒部45の先端部分に相当する位置から、その後端に向けてテーパ状で同軸で縮径されたテーパ縮径部33と、テーパ縮径部33の後端において同軸でさらに縮径された絶縁リング嵌合用軸部をなす平行縮径軸部34を有している。そして、この平行縮径軸部(絶縁リング嵌合用軸部)34の後方には、同心でこれより細い小径軸部35を有している。軸部材30の後端であるこの小径軸部35の後端には、後端のシール用保護筒60内において先後方向の変位を許容する端子バネ71を介し、後端外方に突出するプラグ端子73を有する端子金具75が溶接されて接続されている。なお後端のシール用保護筒60における後端側の小径部位65内には、例えばゴムからなるシール部材69が装填されている。
【0026】
さて、次に本発明の要部をなすところの、圧力検知用のセンサを構成する歪部材210と軸部材30とが、絶縁リング260を介して固定されている構造等について説明する(図2図3参照)。歪部材210は、ハウジング本体41の後端においてその内側と軸部材30の後端寄り部位の外周との間の環状空間を先後に閉塞するよう配置されており、全体としてみると環状(円筒状)をなしている。そして、軸部材30がヒータ10の先後動変位を受けて歪部材210自体が同時に変形するように設けられている。すなわち、この歪部材210は、外周に環状厚肉部212aを有しており、この環状厚肉部212aを、拡径筒部45の後端と、その後方のシール用保護筒(後端側筒状ハウジング)60の先端とで挟む形で突き合わせるようにして相互に嵌合され、例えば、その各突合せ部において、外周面側から周方向にレーザ溶接で固定されている。
【0027】
一方、この歪部材210は、外周の環状厚肉部212aの内側において後方(図2上方)に延びる外側筒部212を有しており、この外側筒部212の後端内側には環状膜部(円環状のダイヤフラム部)215を有している。そして、この環状膜部215の内側(内周側部位)においては、先方に延びる内側筒部211を有している。なお内側筒部211は外周の環状厚肉部212aよりも先端側に位置するように延びており、内側筒部211の外周面のうち先端寄り部位211aの外径は相対的に小径とされ、その先端寄り部位211aが相対的に薄肉とされている。
【0028】
他方、本例では、円筒体をなす絶縁リング260が、軸部材30の後端寄り部位における平行縮径軸部34に締り嵌め状態で固定されている。すなわち、絶縁リング260はその先端寄り部位の内周面を平行縮径軸部34に締り嵌め状態として固定されている。そして、この絶縁リング260における後端寄り部位の外周面に対し、上記した歪部材210における内側筒部211の先端寄り部位211aの内周面が締り嵌め状態で固定されている。なお、本例では、これらの締り嵌めは圧入によっており、したがって、各部の圧入前寸法は適度の締り嵌めが得られるように次のように設定されている(図3参照)。すなわち、平行縮径軸部34の外径D1に対し絶縁リング260の内径D2は適度に小さく設定されている。また、絶縁リング260の外径D3に対し歪部材210における内側筒部211の先端寄り部位211aの内径D4も適度に小さく設定されている。
【0029】
なお、この圧入は、図4に示したように、軸部材30の後端側から絶縁リング260を同軸配置として圧入し、その圧入後の絶縁リング260に、歪部材210における内側筒部211を同軸配置としてその先端寄り部位211aを外嵌め状に圧入すればよい。そして、このような圧入後の軸部材30側半組立体における軸部材30の先端にヒータ10を連結パイプ19で連結しておき、ハウジング40に組み込むようにすればよい。なお、圧入は、3部品を同軸配置にして、同時に圧入してもよい。また、本例では、端子バネ71付きの端子金具75における端子バネ71を軸部材30の小径軸部35に溶接した後、この端子金具75の後方から、絶縁リング260及び歪部材210を外嵌め状にして臨ませてから、その圧入を行っており、したがって、これが可能なように、これらの各部品の内外径寸法が設定されている。絶縁リング260は、本例では、窒化珪素質セラミックからなるものとされている。
【0030】
このような本例のグロープラグ101では、絶縁リング260のうち、先端寄り部位の平行縮径軸部34に外嵌めされている部位より後方の内周面は、軸部材30をなす小径軸部35との間に空隙(環状空隙)K1を有している。また、歪部材210の内側筒部211の先端寄り部位211aの内周面は、軸部材30の平行縮径軸部34に対応する先後位置において絶縁リング260の外周面に締り嵌め状態にあるのではなく、その先端寄り部位211aの内周面は、絶縁リング260の内周面のうち、小径軸部35との間の環状空隙K1を有している部位の外周面に締り嵌め状態にあるようにして固定されている。すなわち、軸部材30の平行縮径軸部34の後端と、歪部材210の内側筒部211の先端との先後間には、寸法がL1が保持されるように各部品間の圧入深さ(La、Lb)が設定されている(図2図3参照)。
【0031】
なお、歪部材210の例えば環状膜部(環状ダイヤフラム部)215の後端向き面側には、適数の歪センサ(センサ素子)220が取り付けられており、図示しない回路を含む装置を介して、軸部材30の先後動変位を受けて変形する歪部材210の変形に基づく歪量を検知し、それに基づく電気信号を図示しない出力取り出し用の電線を介して出力するように構成されている。これにより、本例グロープラグ101は、燃焼圧によりヒータ10及び軸部材30が一体となってその両者の軸線G方向に先後動することで歪部材210を変形させ、その歪部材210の変形から歪センサ(歪ゲージ)220を用いることで燃焼圧が検知されるよう構成されている。
【0032】
このような本例のグロープラグ101によれば、軸部材30に対する絶縁リング260の固定と、絶縁リング260に対する歪部材210の固定を、従来のような接着とせず、締り嵌め状態での固定としたため、その固定を圧入や焼き嵌め等により行うことができる。したがって、接着による固定に比べるとその固定に要する時間が短縮できるので、グロープラグの製造、組立の効率化が図られる。しかも、軸部材30の先後動(変位)におけるダイヤフラム等の歪部材210への変位の伝播(軸方向への圧力の伝達)においては、接着剤が存在しないため、それによるクッション作用をなくすることができるから、軸部材30の先後動の変位の伝達性ないし伝達感度が高められるので、その分、燃焼圧の検知精度が高められる。
【0033】
しかも本例では、軸部材30に絶縁リング260を外嵌状態で締り嵌めとし、この絶縁リング260の外周面に歪部材210の内側筒部211の内周面を外嵌状態で締り嵌めとしている。このため、絶縁リング260の壁(円筒体の壁)を挟んで、歪部材210と軸部材30とを固定できるため、絶縁性確保に優れるし、その固定工程の容易化が図られる。さらに、本例では、絶縁リング260を介して先後において、軸部材30と歪部材210との締り嵌め部位が重ならないように構成されている。このため、絶縁リング260はその先端寄り部位が拡径されるような締り嵌め状態にあり、その後端寄り部位は縮径されるような締り嵌め状態にあると共に、軸部材30と歪部材210とで絶縁リング260の壁を挟んでこれを圧縮して潰すような応力状態とならないため、ワレ等の損傷を招き難い。
【0034】
なお、上記例では締り嵌めを得るのに圧入を例示したが、これを容易とするために、圧入される軸側、穴側の各圧入開始端の角(図3中のC1〜C4)には、テーパ等のガイドや、適宜の角度、大きさの面取りを周方向に沿って付与、形成しておくとよい。また、本例で歪部材210を絶縁リング260に圧入する際には、これを加熱下で行う焼き嵌めとすると、圧入抵抗を低減できる。そして、圧入においては滑剤を用いるのがよく、その滑剤(圧入用滑剤)としてはステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムを用いるとよい。因みに、円筒体をなす絶縁リング260は、グロープラグ101の全体の寸法上、その外径は5mm、内径は2mm程度で、肉厚1.5mm程度で、長さ10〜20mm程度のものとなる。このような絶縁リング260をセラミックとする場合、その圧入代は、直径(両側)で20〜40μmとなるように、各圧入部の寸法(D1〜D4)を設定するのが好ましい。なお、圧入深さ(La、Lb)は、1〜5mmの範囲で設定するのが好ましい。
【0035】
次に、本発明のグロープラグを具体化した第2実施形態例について、その要部を示す図5に基づいて説明する。ただし、本例のものは、上記形態と、軸部材30の後端寄り部位のうち、絶縁リング260が固定される部位の構造、及び固定構造のみが相違するだけである。したがって、同図中、上記形態と同一の部位には、同一の符号を付すに止め、その相違点のみ説明する。以下の例でも同じとする。
【0036】
すなわち、本例における軸部材30は、上記例におけるその後端寄り部位のようにテーパ縮径部33やその後端で縮径された平行縮径軸部34は備えておらず、このテーパ縮径部33が設けられている先後位置に相当する位置に、次記するフランジ36を有しており、このフランジ36の後方は、その先方の軸部材(本体部)30の径より細い小径軸部35を同軸で有している。なお、本例における軸部材30は、上記例のものより細いものとされている。すなわち、本例では、軸部材30の後端寄り部位に、その周方向において外向きに突出する円環状のフランジ(環状フランジ)36を備えている。そして、この環状フランジ36の外周部には、内周側の小径軸部35との間に環状空隙K2をするように、環状凸部37が後方に向けて突出するように形成されている。なお、この環状凸部37はその後端と、歪部材210における内側筒部211の先端との間に、空隙(絶縁保持寸法)が付与されている。そして、環状凸部37の内周面の径(内径)は、歪部材210における内側筒部211の内周面の径(内径)と同じとされている。また、本例では、軸部材30の環状凸部37の径方向に肉厚(壁厚)は、歪部材210における内側筒部211の先端寄り部位211aの肉厚と同じとなるように設定されている。
【0037】
しかして、本例では、絶縁リング260は、その先端寄り部位の外周面において、軸部材30の環状凸部37の内周面に圧入されて締り嵌め状態にて固定されている。なお、絶縁リング260は、その内周面と小径軸部35との間に環状空隙K2を有しており、先端を円環フランジ36の後端向き面に当接状態として、圧入における先後方向の位置決めがなされている。このようにして軸部材30に締り嵌め状態で固定された絶縁リング260の後端寄り部位の外周面には、歪部材210における内側筒部211の先端寄り部位(薄肉部)211aが外嵌め状にて圧入され、締り嵌め状態で固定されている。なお、内側筒部211の先端と、軸部材30の環状凸部37の後端との間には、上記したように空隙が保持され絶縁が確保されている。
【0038】
このような本例のグロープラグにおいても、上記例と同様の効果が得られる。すなわち、歪部材210の内周側部位である内側筒部211と、軸部材30り環状凸部37との各間において、絶縁リング260を、接着ではなく締り嵌め状態で嵌合、固定してなる構成とされているため、その固定は圧入等により行うことができる。したがって、接着剤による固定に比べると固定が簡易にできるので、グロープラグの製造、組立の効率化が図られる。しかも、軸部材30の先後動変位における歪部材210への変位の伝播(軸方向への圧力の伝達)においては、接着剤を使用していないため、それがダイレクトになされるのも上記例と同様である。したがって、圧力の伝達性、感度が高められるので、その分、燃焼圧の検知精度が高められる。
【0039】
また、本例では、絶縁リング260の固定構造上、絶縁リング260には、その先後において外周面側から軸線Gに向けて縮径されるような応力が作用する。このため、絶縁リング260は主として、その全体に圧縮応力を受けることになると考えられる。このため、セラミックのような引張り応力や曲げ力に弱い素材からなる絶縁材では、それ自身の耐久性の向上ないし安定が期待される。さらに、本例では、歪部材210における内側筒部211の先端寄り部位211aの肉厚を相対的に薄肉とし、この薄肉部と、軸部材30の環状凸部37の径方向に肉厚は、同じとなるように設定されているので、軸部材30と歪部材210を同素材(又は同程度の強度、剛性を有する素材)で形成し、同様の締め代(圧入代)で圧入することで、絶縁リング260にその先後に同様の応力を与えることができるため、弛緩のない安定した固定が得られる。
【0040】
前記形態例からも理解されるが、本発明では、歪部材は、その外周側部位がハウジングに固定され、歪部材の内周側部位が絶縁リングに固定されてなる構造を有する燃焼圧検知センサ付きグロープラグにおいて、絶縁リングを軸部材に締り嵌め状態で固定すると共に、この絶縁リングに、歪部材の内周側部位を締り嵌め状態で固定したものであればよい。したがって、軸部材に対する絶縁リングの締り嵌めは、外嵌めでも、内嵌めでもよい。また、上記各例では歪部材210の内周側部位に対し、絶縁リング260を内嵌めしたものとして具体化した場合を例示したが、これは逆に絶縁リングを歪部材の内周側部位に外嵌めすることとしてもよい。すなわち、本発明では歪部材が軸部材に対して、接着剤を用いることなく、相互に締り嵌めで固定された絶縁リングを介し、締り嵌めで、絶縁を保持して固定されていればよいためである。
【0041】
したがって、図6に示した変形例のように、上記例において、絶縁リング260を、軸部材30の環状凸部37と歪部材210における内側筒部211の先端寄り部位211aとの双方に対し、外嵌めの締り嵌め状態で固定してもよい。また、図7に示した変形例のように、上記例において、絶縁リング260を軸部材30の環状凸部37に内嵌めとし、歪部材210における内側筒部211の先端寄り部位211aには外嵌めとして、それぞれにおいて締り嵌め状態で固定してもよい。なお、上記各例では、歪部材210の外周側部位は、ハウジングの外周面において溶接で固定した場合を説明したが、ハウジングの内周面において溶接で固定してもよいし、溶接でなく、カシメ等により固定してもよい。
【0042】
本発明のグロープラグは、上記した各例のものに限定されるものではなく、適宜に変更して具体化できる。例えば、上記例では絶縁リングを、いずれも直管をなす円筒体としたが、異径の円筒体とすることもできるし、円筒体でなくともよい。すなわち、絶縁リングは、軸部材にその軸線回りを包囲する形で、それとの電気的絶縁性を有する状態で固定され、この絶縁リングに、歪部材の内周側部位が固定されている状態で、歪部材と軸部材との間の電気的絶縁が保持され得るものであればよい。したがって、必ずしも一部材で構成される必要もなく、複数の部材を軸部材の周囲に断続的に配置するような形態であってもよい。また、上記例では、軸部材をヒータへの電圧印加用の中実の軸(棒材)としたが、これは中空の軸(円管などのパイプ)としてもよい。このようなパイプを用いる場合には、その内部(パイプの内側)に別途、リード線(電線)を通し、このリード線にてヒータへの電圧印加(給電)を行うこととしてもよい。
【0043】
また、上記例では、歪部材を、縦断面において、半径方向の片側が、後方において折り返す形状、構造のものとしたが、歪部材は、ヒータが燃焼圧によって先端から後方に押されることによって発生する先後動により変形し、センサにてその変形から燃焼圧を検知可能のものであればよく、したがって、円環板状の単なるダイヤフラム(薄膜)とするなど適宜の形状、構造のものとすることができる。また、センサとして上記例では歪ゲージを用いたが、ピエゾ抵抗体を備えた半導体素子のような、半導体歪ゲージなど各種のセンサ(センサ素子)を用いることができる。さらに、上記各例では、歪部材を、ハウジング本体の後端と、軸部材の後端寄り部位に位置する部位で配置した場合を例示したが、歪部材は、ハウジングや軸部材における先後方向の中間部位において設けることもできる。なお、上記例のグロープラグにおいては、本発明の要部とは直接関係のないベローズについて、その後端部を、先端側筒状ハウジングの先端寄り部位の内周面にシール状に溶接されているという構成のものとして説明したが、このベローズの後端部は、先端側筒状ハウジングの後端とハウジング本体の先端とのつなぎ目(突合せ部)に挟み込ませて溶接するなど、変更して具体化できる。すなわち、本発明のグロープラグにおいては、発明の要部でない部位については適宜に変更することができる。
【0044】
また、上記例のグロープラグは、ヒータにセラミックヒータを用いたもので具体化したが、本発明の燃焼圧検知センサ付きグロープラグにおいては、先端が閉じられた金属管内に抵抗発熱コイルを内蔵してなるメタルグロープラグを用いるものにも適用できる。
【符号の説明】
【0045】
10 ヒータ
30 軸部材
34 絶縁リング嵌合用軸部
35 軸部材の後端寄り部位の小径軸部
36 軸部材の後端寄り部位のフランジ
37 環状凸部
40 ハウジング
53 ハウジングの先端
101 燃焼圧検知センサ付きのグロープラグ
210 歪部材
220 センサ
260 絶縁リング
G 軸線
K1 絶縁リングの内周面と小径軸部との間の環状空隙
K2 フランジの内周側の環状空隙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9