【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
{実施例1}
(ノルボルナジエン化合物(2a-1)の合成)
【化16】
アセトニトリル10mlにブロモノルボルナジエン化合物(a-1)(300mg、1.32mmol)を溶解し、これに(R)−1−フェニルエチルアミン(b1)(0.50ml、3.92mmol)を加えた。次に、攪拌下に110℃で10時間、還流下に反応を行った。
反応終了後、室温まで冷却し、反応液を減圧下に蒸留して溶媒を除去した。得られた残渣を酢酸エチルに溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で有機層を洗浄した。有機層を分取し、有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水後、無水硫酸ナトリウムを除去し、減圧下に蒸留して溶媒を除去した。次いで得られた残渣をカラムクロマトグラフィーを用いて精製を行って油状のノルボルナジエン化合物(2a-1)を得た(収率89%)。
(ノルボルナジエン化合物(2a-1)の同定データ)
・元素分析 計算値(C
19H
25N):C,85.34%;H,9.42%;N、5.24%測定値:C,85.46%;H,9.42%;N、5.02%
・
1H NMR (CDCl
3) d: 7.27-7.15 (m, 5H), 6.66 (s, 2H), 6.02 (s, 1H), 3.68 (q, 1H, J = 6.8 Hz), 3.41 (s, 1H), 3.18 (s, 1H), 2.45 (m, 1H), 2.40 (m, 1H), 2.15 (m, 2H), 1.93 (m, 2H), 1.40 (m, 4H), 1.33 (d, 3H, J = 6.8 Hz), 1.15 (brs, 1H).
・
13C NMR (CDCl
3) d: 158.6, 145.8, 143.8, 142.3, 133.3, 128.3, 126.7, 126.5, 73.4, 58.3, 53.4, 50.0, 47.7, 31.3, 30.0, 25.0, 24.4.
・比旋光度[α]
D=+36.8(クロロホルム中、室温で測定、c=0.10g/dL)
【0048】
(ロジウム錯体(4a-1)の合成)
【化17】
ジクロロメタン4.0mlにクロロビス(エチレン)ロジウムダイマー(3)(185mg、0.48mmol)を溶解し、これにノルボルナジエン化合物(2a-1)(280mg、1.09mmol)を溶解したジクロロメタン4.0mlを加え、アルゴン雰囲気中で15時間、室温(25℃)で反応を行った。
反応終了後、反応液を減圧下に蒸留して溶媒を除去し、残渣をジクロロメタン−ペンタン混合溶媒により再結晶して精製し、ロジウム錯体(4a-1)を得た(収率83%)。
(ロジウム錯体(4a-1)の同定データ)
・元素分析 計算値(C
19H
25NClRh):C,56.24%;H,6.21%;N、3.45%測定値:C,56.31%;H,6.39%;N、3.35%
【0049】
(三座配位子ロジウム錯体(1a―1)の合成)
【化18】
シュレンクチューブに、ロジウム錯体(4a-1)(60mg、0148mmol)、テトラフェニルホウ酸ナトリウム(5a-1)(55.8mg、0.163mmol)を仕込み、アルゴンガスで置換した。次いで、ジクロロメタン5.5mlを仕込み、室温(25℃)で一晩反応を行った。
反応終了後、ろ過してテトラフェニルホウ酸ナトリウム(5a-1)を除去後、ろ液を減圧下に蒸留して溶媒を除去した。残渣をジクロロメタン−ペンタン混合溶媒により再結晶して精製し、三座配位子ロジウム錯体試料(1a―1)を得た(収率89%)。
(三座配位子ロジウム錯体(1a―1)の同定データ)
・元素分析 計算値(C
43H
45BNRh):C,74.9%;H,6.59%;N、2.03%測定値:C,74.60%;H,6.31%;N、1.94%
・
1H NMR (CDCl
3) d: 7.37-7.00 (m, 20H), 6.60 (m, 2H), 6.38 (m, 1H), 6.25 (m, 1H), 5.84 (m, 1H), 3.80 (s, 1H), 3.71 (m, 1H), 3.66 (m, 1H), 3.46 (m, 1H), 3.31(m, 1H), 3.14 (m, 1H), 2.42 (brs, 1H), 2.31 (brs, 1H), 2.06 (m, 1H), 1.38-1.29 (m, 7H), 1.09-1.00 (m, 4H).
【0050】
{実施例2}
(ノルボルナジエン化合物(2a-2)の合成)
【化19】
N,N−ジメチルホルムアミド8mlにブロモノルボルナジエン化合物(a-1)(676.8mg、2.98mmol)を溶解し、これに(R)−1−フェニルエタノール(b2)(364mg、2.28mmol)を加えた。次に、NaH(含有量50%、184.7mg、5.54mmol)を加え、攪拌下に60で6時間、反応を行った。
反応終了後、室温まで冷却し、反応液に飽和炭酸ナトリウム水溶液を添加し、次いでジエチルエーテルで抽出した。有機層を分取し、有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水後、無水硫酸ナトリウムを除去し、減圧下に蒸留して溶媒を除去した。次いで得られた残渣をHPLCを用いて精製を行って油状のノルボルナジエン化合物(2a-2)を得た(収率38%)。
(ノルボルナジエン化合物(2a-2)の同定データ)
・元素分析 計算値(C
19H
24O):C,83.03%;H,9.01%測定値:C,84.99%;H,8.72%
・
1H NMR (CDCl
3) d: 7.33-7.30 (m, 5H), 6.73 (s, 2H), 6.09 (s, 1H), 4.38 (q, 1H, J = 6.4 Hz), 3.48 (s, 1H), 3.27 (m, 3H), 2.16 (m, 2H), 1.94 (m, 2H), 1.52 (m, 4H), 1.42 (d, 3H, J = 6.0 Hz).
・
13C NMR (CDCl
3) d: 158.7, 144.3, 143.8, 142.4, 133.5, 128.4, 127.3, 126.1, 77.9, 73.4, 68.5, 53.4, 50.0, 31.2, 29.6, 24.2, 23.8.
・比旋光度[α]
D=−66(クロロホルム中、室温で測定、c=0.10g/dL)
【0051】
(ロジウム錯体(4a-2)の合成)
【化20】
ジクロロメタン5.0mlにクロロビス(エチレン)ロジウムダイマー(3)(160mg、0.41mmol)を溶解し、これにノルボルナジエン化合物(2a-2)(243mg、0.91mmol)を溶解したジクロロメタン3.0mlを加え、大気雰囲気中で室温(25℃)で19時間反応を行った。
反応終了後、反応液を減圧下に蒸留して溶媒を除去し、残渣をジクロロメタン−ペンタン混合溶媒により−78℃で再結晶して精製し、ロジウム錯体(4a-2)を得た(収率66%)。
【0052】
(三座配位子ロジウム錯体(1a―2)の合成)
【化21】
シュレンクチューブに、ロジウム錯体(4a-2)(30mg、0.073mmol)、テトラフェニルホウ酸ナトリウム(5a-1)(26.5mg、0.077mmol)を仕込み、アルゴンガスで置換した。次いで、ジクロロメタン2.0mlを仕込み、室温(25℃)で一晩反応を行った。
反応終了後、ろ過してテトラフェニルホウ酸ナトリウム(5a-1)を除去後、ろ液を減圧下に蒸留して溶媒を除去した。残渣をジクロロメタン−ペンタン混合溶媒により再結晶して精製し、三座配位子ロジウム錯体(1a―2)を得た(収率79%)。
(三座配位子ロジウム錯体(1a―2)の同定データ)
・元素分析 計算値(C
43H
44BORh):C,74.79%;H,6.42%測定値:C,73.17%;H,6.16%
・
1H NMR (CDCl
3) d: 7.41-7.03 (m, 20H), 6.67 (m, 1H), 6.50 (m, 1H), 6.43 (m, 1H), 6.20 (m, 1H), 5.79 (m, 1H), 4.35 (q, 1H, J = 6.8 Hz), 3.77 (brs, 1H), 3.63 (brs, 1H), 3.46 (brs, 1H), 3.33 (brs, 1H), 3.21 (m, 2H), 3.15 (brs, 1H), 2.07 (m, 2H), 1.43-1.01 (m, 9H).
【0053】
{実施例3〜4}
(らせん状構造を有する置換ポリアセチレン誘導体(7b)の合成)
【化22】
置換アセチレン(6b)を0.2Mになるようにテトラヒドロフランに溶解し、重合開始剤試料に対する置換アセチレンのモル比が100となるように重合開始剤試料を添加し、30℃で24時間重合反応を行った。反応終了後に重合溶液をメタノールに投入し、沈殿したポリマーを単離した。
(らせん状構造を有する置換ポリアセチレン誘導体(7b)の同定データ)
1H NMR (CD
2Cl
2) δ 0.81-1.80 (m, 23H), 3.87 (broad, 2H), 4.30 (broad, 2H), 4.37 (broad, 4H), 6.70-7.20 (broad, 3H).
【0054】
<らせん状構造を有する置換ポリアセチレン誘導体(7b)の物性評価>
(評価1);実施例3及び実施例4で得られた置換ポリアセチレン誘導体(7b)について、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)を求めた。また、平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)からPDI(Mw/Mn)を算出した。その結果を収率とともに表1に示した。
なお、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)の評価は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC;JASCO PU−980/RI−930クロマトグラフィー、ポリスチレン換算)により行った。
(評価2);実施例3及び実施例4で得られた置換ポリアセチレン(7b)についてCHCl
3中で比旋光度及びUV−visスペクトルを20℃で測定した。なお、CHCl
3中の置換ポリアセチレンのモノマー単位の濃度は0.10mMとした。
得られたCDスペクトルとUV−visスペクトルを
図1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
図1の結果から、実施例3及び実施例4で得られた置換ポリアセチレン誘導体はCHCl
3溶解中で大きい比旋光度を示すこと、また、主鎖ポリアセチレンに基づくCDシグナル、UV−可視シグナルは文献値(Journal of the American Chemical Society, (2003),125(21),6346-6347)と一致し、300nm付近にピークを示したことから主鎖がらせん構造を形成していることが確認された。
また、生成した置換ポリアセチレン誘導体(7b)は、主鎖の吸収領域に明確なコットン効果を示し、巻き方向の偏ったらせん構造を形成していることが明らかになった。使用した重合開始剤のアミン部位、エーテル部位の立体配位はともに(R)であるが、得られた置換ポリアセチレン(7b)のコットン効果は正負が逆であった。