(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
歩行者が保持する操作桿と、前記操作桿に設けられ、歩行者が前記操作桿に与える操作力を検出する操作力検出装置と、第1および第2の電動モータと、前記第1および第2の電動モータの回転速度をそれぞれ検出する第1および第2の速度検出手段と、前記第1および第2の電動モータによりそれぞれ回転駆動する第1および第2の駆動輪と、前記操作力検出装置からの信号に基づき前記第1および第2の電動モータに制御電流を供給する制御装置と、を備える電動式ハンディカートにおいて、
前記ハンディカートの前方における障害物の画像を検出する画像検出装置を備え、
前記制御装置は、
前記操作力検出装置からの力信号に基づき目標速度信号を演算する目標速度演算手段と、
前記第1および第2の速度検出手段からの第1および第2の検出速度信号を平均化して平均速度信号を出力する平均化手段と、
前記平均化手段からの平均速度信号と、前記目標速度演算手段からの目標速度信号との偏差信号に基づき、前記電動モータに供給する目標電流信号を演算する目標電流演算手段と、
前記画像検出装置からの障害物の画像信号に基づき前記障害物の輪郭を複数の点位置信号に変換する障害物画像検出手段と、
前記複数の点位置信号を中心位置とする所定の径の複数の膨張円に対応する複数の膨張円信号を形成する障害物画像膨張手段と、
前記膨張円信号に基づき前記複数の膨張円のうちいずれか一つの前記膨張円のみに接するとともに前記カートの正面方向線に最も近接した経路接線を演算し、前記経路接線と前記正面方向線との角度である経路角信号を演算する経路取得手段と、
前記経路角信号に基づき回避信号を出力する回避信号出力手段と、
前記回避信号により前記目標電流信号を加減して調整し、第1および第2の調整電流信号を出力する第1および第2の調整手段と、
前記第1および第2の調整手段からの前記第1および第2の調整電流信号に対応し、前記第1および第2の電動モータに第1および第2の制御電流をそれぞれ供給する第1および第2の電流出力手段と、を備え、
前記障害物画像膨張手段は、前記複数の点位置信号を中心位置とする第1の径の複数の第1の膨張円に対応する複数の第1の膨張円信号、および前記第1の膨張円よりも径の大きい第2の径の複数の第2の膨張円に対応する複数の第2の膨張円信号を形成し、
前記経路取得手段は、前記複数の第1の膨張円信号に基づき前記複数の第1の膨張円のうちいずれか一つの前記第1の膨張円のみに接するとともに前記正面方向線に最も近接した第1の経路接線を演算し、前記第1の経路接線と前記正面方向線との角度である第1の経路角信号を演算し、さらに、前記複数の第2の膨張円信号に基づき前記複数の第2の膨張円のうちいずれか一つの前記第2の膨張円のみに接するとともに前記正面方向線に最も近接した第2の経路接線を演算し、前記第2の経路接線と前記正面方向線との角度である第2の経路角信号を演算し、
前記制御装置は、前記第1および第2の経路角信号を比較し、第1および第2の経路角の差分角度が所定の角度未満である場合には、前記第2の経路角信号を選択し、前記差分角度が所定の角度以上である場合には、前記第1の経路角信号を選択する経路選択手段を備え、
前記回避信号出力手段は、前記経路選択手段により前記第1および第2の経路角信号より選択されたいずれか一つの経路角信号に基づき回避信号を出力すること、を特徴とする電動式ハンディカート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(電動式ハンディカートの実施形態)
次に、本発明の電動式ハンディカートの実施形態について、
図1に基づいて説明する。
図1は本実施形態における電動式ハンディカートの斜視図である。
【0011】
図1に示すように、電動式ハンディカート1は、パイプ部材より形成された本体フレーム2と、本体フレーム2の上部に取り付けられ、歩行者が保持する棒状の操作桿3と、本体フレーム2に設けられたケースCと、本体フレーム2の両側に取り付けられた第1および第2の電動モータ(4,5)と、第1および第2の電動モータ(4,5)によりそれぞれ回転駆動する第1および第2の駆動輪(6,7)と、を備える。そして、ケースC内には、制御装置10と、電動モータ(4,5)に電流を供給するバッテリ30と、が設けられている。また、ハンディカート1は、電動モータ(4,5)の回転速度をそれぞれ検出する第1および第2の速度検出手段(4a,5a)を備えている。
【0012】
また、操作桿3の上端部にはハンドグリップ8が取り付けられており、ハンドグリップ8には画像検出装置としてのステレオカメラ40が設けられているとともに、ハンドグリップ8内には操作力検出装置9が設けられている。ここで、ステレオカメラ40は、上下方向(操作桿の軸方向)に縦型に配置された2つのCCDカメラ(41,42)を備え、ハンディカート1の前方における障害物の画像を検出する。操作力検出装置9は、歩行者が操作桿3に与える操作力を検出する。ここで、操作力は、歩行者が操作桿3の軸方向にハンディカート1を押し引きする力である。なお、操作桿3の中央部には、買い物かご等を懸架することができるかご用フック60が取り付けられている。
【0013】
(制御装置)
次に、
図2に基づきハンディカート1に備わる制御装置10について説明する。
図2は電動式ハンディカート1における制御装置10を示すシステムブロック図である。
【0014】
制御装置10は、計測手段11と、目標速度演算手段12と、障害物画像検出手段としての画像情報取得手段13および障害物画像変換手段14と、障害物画像膨張手段15と、経路取得手段16と、経路選択手段17と、回避信号出力手段18と、減算器19と、目標電流演算手段20と、第1の調整手段としての加算器21と、第2の調整手段としての減算器22と、第1および第2の電流出力手段(23,24)と、加算器25と、平均化手段26と、を備える。
【0015】
計測手段11は、操作力検出手段9からの信号をサンプリングし、この信号に対応する
力信号を出力する。目標速度演算手段12は、力信号を積分処理することにより、目標速度信号(Vr)を演算する。
【0016】
また、第1および第2の速度検出手段(4a,5a)で検出された電動モータ(4,5)の回転速度に対応する第1および第2の検出速度信号(Va1,Va2)は、加算器25で加算されるとともに、平均化手段26にて平均化され平均速度信号(Vave)として出力される。そして、減算器19により目標速度信号(Vr)から平均速度信号(Vave)が減じられ、目標速度信号(Vr)と平均速度信号(Vave)との偏差信号(Vε)が減算器19より出力される。
【0017】
さらに、目標電流演算手段20は、減算器19からの偏差信号(Vε)に基づき、電動モータ(4,5)に供給する目標電流信号(i0)を演算する
【0018】
次に、
図2を参照し、ステレオカメラ(画像検出装置)40からの障害物の画像信号に基づき電動式ハンディカート1に備わる電動モータ(4,5)に、障害物を回避するための制御電流(I1,I2)それぞれを供給する手段について説明する。
【0019】
ステレオカメラ40からの画像信号は、カメラ40から「仮ゴール」までの所定の距離R0(参照半径)以内(例えば、R0=5m以内)の画像信号が参照され、制御装置10での処理情報として用いられ、制御装置10において、この処理情報に基づき障害物を回避するための制御が行われる。
【0020】
ステレオカメラ40により検出された障害物の画像信号は、画像情報取得手段13において障害物の輪郭が複数の回転座標系の点位置信号に変換され、この回転座標系の点位置信号は、障害物画像変換手段14によりXY座標系の点位置信号に変換される。このようにして、障害物の外表面の輪郭が複数の点位置信号として検出される。なお、点位置信号は、ステレオカメラ40を中心とする放射方向に角度「0.25度」おきに等ピッチに検出される。
【0021】
そして、障害物画像膨張手段15により、複数の点位置信号を中心位置とする第1、第2および第3の径(L1,L2,L3)の複数の第1、第2および第3の膨張円に対応する複数の第1、第2および第3の膨張円信号が形成される。ここで、第1の膨張円の第1の径(L1)は、ハンディカート1の車体幅(L0)と等しく設定されている(L1=L0)。また、第2の膨張円の第2の径(L2)は、第1の膨張円の第1の径(L1)よりも長さα1だけ長く設定されており(L2=L1+α1)、第3の膨張円の第3の径(L3)は、第1の膨張円の第1の径(L1)よりも長さα2だけ長く設定されている(L3=L1+α2)。ここで、長さα2は長さα1よりも長く(α2>α1>0)、短い径から順に第1、第2、第3の膨張円となっている(L1<L2<L3)。なお、本実施の形態では、第1の径(L1)は60cm(L1=60cm)、第2の径(L2)は80cm(L2=80cm)、第3の径(L3)は100cm(L3=100cm)に設定されている。
【0022】
次に、経路取得手段16により、複数の第1から第3の膨張円信号に基づき、障害物を回避してハンディカート1を進めるべき方向である角度に対応する「経路角信号」が演算される。
【0023】
経路取得手段16では、複数の第1の膨張円信号に基づき、カメラ40から放射状に伸びる線において複数の第1の膨張円のうちいずれか一つの第1の膨張円のみに接するとともに「正面方向線」に最も近接した第1の経路方向線を演算し、第1の経路方向線と正面方向線との角度である第1の経路角度信号(θ1)が演算される。ここで、「正面方向線
」は、カート1から正面方向に設定された「仮ゴール」に向けて伸びる仮想直線をいう。
【0024】
また、経路取得手段16では複数の第2およびの膨張円信号に基づき、カメラ40から放射状に伸びる線において複数の第2の膨張円のうちいずれか一つの第2の膨張円のみに接するとともに「正面方向線」に最も近接した第2の経路方向線を演算し、第2の経路方向線と正面方向線との角度である第2の経路角度信号(θ2)が演算される。
【0025】
さらに、経路取得手段16では複数の第3およびの膨張円信号に基づき、カメラ40から放射状に伸びる線において複数の第3の膨張円のうちいずれか一つの第3の膨張円のみに接するとともに「正面方向線」に最も近接した第3の経路方向線を演算し、第3の経路方向線と正面方向線との角度である第3の経路角度信号(θ3)が演算される。
【0026】
次に、経路選択手段17により、第1から第3の経路角信号(θ1,θ2,θ3)のうちいずれか一つの経路角信号が選択される。
【0027】
経路選択手段17では、まず、第1の経路角信号(θ1)と第3の経路角信号(θ3)が比較され、第1および第3の経路角(θ1,θ3)の差分角度(|θ1−θ3|)が所定の角度未満(|θ1−θ3|<φ1)である場合には、調整経路角(θ)として第3の経路角信号(θ3)が選択される(θ=θ3)。
【0028】
そして、第1および第3の経路角(θ1,θ3)の差分角度(|θ1−θ3|)が所定の角度以上(|θ1−θ3|≧φ1)である場合には、さらに、第1の経路角信号(θ1)と第2の経路角信号(θ2)が比較され、第1および第2の経路角(θ1,θ2)の差分角度(|θ1−θ2|)が所定の角度未満(|θ1−θ2|<φ2)である場合には、調整経路角(θ9として第2の経路角信号(θ2)が選択される(θ=θ2)。
【0029】
そして、1および第2の経路角(θ1,θ2)の差分角度(|θ1−θ2|)が所定の角度以上(|θ1−θ3|≧φ2)である場合には、調整経路角(θ)として第1の経路角信号(θ1)が選択される(θ=θ1)。
【0030】
次に、回避信号出力手段18により、経路選択手段17で第1から第3の経路角信号(θ1,θ2,θ3)より選択されたいずれか一つの経路角信号(θ1 or θ2 or
θ3)に基づき回避信号が出力される。ここで、回避信号は、経路角信号(θ1,θ2,θ3)に比例ゲイン(K)を乗じた値であり、第1および第2の電動モータ(4,5)に供給されるそれぞれの電流値を調整する値である(δi=Kθ)。
【0031】
そして、第1および第2の調整手段(21,22)において、回避信号(δi)により目標電流信号(i0)が加減して調整され、第1および第2の調整電流信号(i1,i2)が第1および第2の調整手段(21,22)から出力される。ここで、第1の調整手段21は加算器であり、第1の調整電流信号(i1)として、目標電流信号(i0)に回避信号(δi)が加算された信号が出力される(i1=i0+δi)。また、第2の調整手段22は減算器であり、第2の調整電流信号(i2)として、目標電流信号(i0)から回避信号(δi)が減算された信号が出力される(i2=i0−δi)。
【0032】
最後に、それぞれ第1および第2の電流出力手段(23,24)により、第1および第2の調整手段(21,22)からの第1および第2の調整電流信号(i1,i2)に対応(比例)し、第1および第2の電動モータ(4,5)にそれぞれ第1および第2の制御電流(I1,I2)が供給される。
【0033】
(フローチャート)
次に、
図3に示すフローチャートに基づき制御装置10にて処理される障害物の画像情報の処理方法について説明する。
【0034】
電動ハンディカート1が起動すると(S1)、ステレオカメラ40により検出された障害物の画像信号は、画像情報取得手段13において障害物の輪郭が複数の回転座標系の点位置信号に変換され(S2)、この回転座標系の点位置信号は、障害物画像変換手段14によりXY座標系の点位置信号に変換される(S3)。
【0035】
そして、障害物画像膨張手段15により、複数の点位置信号を中心位置とする第1、第2および第3の径(L1,L2,L3)の複数の第1、第2および第3の膨張円に対応する複数の第1、第2および第3の膨張円信号が形成される(S4,S5,S6)。
【0036】
また、経路取得手段16では、複数の第1の膨張円信号に基づき、カメラ40から放射状に伸びる線において複数の第1の膨張円のうちいずれか一つの第1の膨張円のみに接するとともに「正面方向線」に最も近接した第1の経路方向線を演算し、第1の経路方向線と正面方向線との角度である第1の経路角度信号(θ1)が演算される(S7)。
【0037】
同様に、経路取得手段16では複数の第2およびの膨張円信号に基づき、カメラ40から放射状に伸びる線において複数の第2の膨張円のうちいずれか一つの第2の膨張円のみに接するとともに「正面方向線」に最も近接した第2の経路方向線を演算し、第2の経路方向線と正面方向線との角度である第2の経路角度信号(θ2)が演算される(S8)。
【0038】
また、同様に、経路取得手段16では複数の第3およびの膨張円信号に基づき、カメラ40から放射状に伸びる線において複数の第3の膨張円のうちいずれか一つの第3の膨張円のみに接するとともに「正面方向線」に最も近接した第3の経路方向線を演算し、第3の経路方向線と正面方向線との角度である第3の経路角度信号(θ3)が演算される(S9)。
【0039】
経路選択手段17では、まず、第1の経路角信号(θ1)と第3の経路角信号(θ3)が比較され、第1および第3の経路角(θ1,θ3)の差分角度(|θ1−θ3|)が所定の角度未満(|θ1−θ3|<φ1)である場合には、調整経路角(θ)として第3の経路角信号(θ3)が選択される(θ=θ3)(S10,S12)。
【0040】
そして、第1および第3の経路角(θ1,θ3)の差分角度(|θ1−θ3|)が所定の角度以上(|θ1−θ3|≧φ1)である場合には、さらに、第1の経路角信号(θ1)と第2の経路角信号(θ2)が比較され、第1および第2の経路角(θ1,θ2)の差分角度(|θ1−θ2|)が所定の角度未満(|θ1−θ2|<φ2)である場合には、調整経路角(θ9として第2の経路角信号(θ2)が選択される(θ=θ2)(S11,S13)。
【0041】
そして、1および第2の経路角(θ1,θ2)の差分角度(|θ1−θ2|)が所定の角度以上(|θ1−θ3|≧φ2)である場合には、調整経路角(θ)として第1の経路角信号(θ1)が選択される(θ=θ1)(S11,S14)。
【0042】
次に、回避信号出力手段18により、経路選択手段17で第1から第3の経路角信号(θ1,θ2,θ3)より選択されたいずれか一つの経路角信号(θ1 or θ2 or
θ3)に基づき回避信号が出力される(S15)。ここで、回避信号は、経路角信号(θ1,θ2,θ3)に比例ゲイン(K)を乗じた値であり、第1および第2の電動モータ(4,5)に供給されるそれぞれの電流値を調整する値である(δi=Kθ)。
【0043】
(経路角の検出方法の具体例)
最後に、
図4に基づき本実施形態の電動式ハンディカート1の制御装置10が第1から第3の経路角(θ1,θ2,θ3)を検出する具体例について説明する。
【0044】
同図においては、3つの障害物(X,Y,X)が参照半径(R0)内に散乱して配置されており、これらの障害物の画像信号がステレオカメラ40により制御装置10に送られる。
【0045】
ステレオカメラ40により検出されたこれらの画像信号は、画像情報取得手段13において障害物の輪郭が複数の回転座標系の点位置信号に変換され、この回転座標系の点位置信号は、障害物画像変換手段14によりXY座標系の点位置信号に変換される(X1,X2,Y1,Y2,Z1,Z2)。このようにして、障害物の外表面の輪郭が複数の点位置信号として検出される。なお、実際上、点位置信号は、ステレオカメラ40を中心とする放射方向に角度「0.25度」おきに等ピッチに検出されるが、説明の便宜上、
図4においては障害物の角部の2点ずつにおいて(X1,X2,Y1,Y2,Z1,Z2)、点位置信号が検出されたものとする。
【0046】
そして、障害物画像膨張手段15により、複数の点位置信号(X1,X2,Y1,Y2,Z1,Z2)を中心位置とする第1、第2および第3の径(L1,L2,L3)の複数の第1、第2および第3の膨張円に対応する複数の第1、第2および第3の膨張円信号が形成される。
図4においては、計6つの点位置信号に対して、それぞれ3つの膨張円信号が形成される。
【0047】
次に、経路取得手段16により、複数の第1から第3の膨張円信号に基づき、障害物を回避してハンディカート1を進めるべき方向である角度に対応する「経路角信号」が演算される。
【0048】
図4において、「第1の経路角θ1」は、障害物Xの点位置信号X2における第1の膨張円に対して、第1の経路接線M1が設定され、第1の経路接線M1により第1の経路角θ1が演算され、「第2の経路角θ2」は、障害物Yの点位置信号Y2における第2の膨張円に対して、第2の経路接線M2が設定され、第2の経路接線M2により第2の経路角θ2が演算される。そして、「第3の経路角θ3」は、障害物Xの点位置信号X1における第3の膨張円に対して、第3の経路接線M3が設定され、第3の経路接線M3により第3の経路角θ3が演算される。