(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のブレーキ装置を実施するための形態を、図面に示す実施例に基づいて説明する。
なお、以下に説明する実施例は、多くのニーズに適応できるように検討されており、制動時のエネルギ回収効率を高めることは検討されたニーズの1つである、以下の実施例は、さらに、制動効率を高めるニーズ、旋回挙動の安定化を図るニーズ、フェールセーフに対するニーズにも対応している。
【0009】
〔実施例1〕
まず、構成を説明する。
[システム構成]
図1は、実施例1のブレーキ装置を搭載したハイブリッド車両のシステム構成図である。
液圧制御ユニット(HU)101は、ブレーキコントロールユニット(BCU)102から送られる各輪の液圧指令値に基づいて、左前輪FLのホイルシリンダW/C(FL)、右後輪RRのホイルシリンダW/C(RR)、右前輪FRのホイルシリンダW/C(FR)、左前輪RLのホイルシリンダW/C(RL)の各液圧を保持または増減する。
モータジェネレータMG、インバータINVおよびバッテリBATにより、左右後輪RL,RRに対して回生制動力を発生させる回生制動装置が構成される。
モータジェネレータM
Gは、左右後輪RL,RRのリアドライブシャフトRDS(RL),RDS(RR)とディファレンシャルギアDGを介してそれぞれ連結され、モータコントロールユニット(MCU)103からの指令に基づいて、力行または回生運転し、左右後輪RL,RRに駆動力または回生制動力を発生させる。
インバータINVは、モータジェネレータMGが力行運転している場合には、バッテリBATの電力を変換してモータジェネレータMGに供給する。一方、モータジェネレータMGが回生運転している場合には、モータジェネレータMGで発生する電力を変換しバッテリBATを充電する。
【0010】
MCU103は、駆動コントローラ(DCU)104からの指令に基づいて、モータジェネレータMGを力行運転する。また、BCU102からの回生制動力指令値に基づいて、モータジェネレータMGを回生運転する。MCU103は、モータジェネレータMGによる回生制動力、駆動力の出力制御の状況と、発生可能な最大回生制動力を、CAN通信線105を介してBCU102、DCU104へと送る。
ここで、「発生可能な最大回生制動力」は、例えば、バッテリSOC、各輪FL,FR,RL,RRに設けられた各車輪速センサ106(FL,FR,RL,RR)により算出(推定)される車体速(車速)から算出する。また、旋回時には、車両のステア特性も加味する。
バッテリBATが満充電状態またはそれに近い状態である場合には、バッテリ寿命の観点から過充電防止を図る必要がある。また、制動により車速が減少した場合、モータジェネレータMGで発生可能な最大回生制動力は減少する。さらに、高速走行時に回生制動を行うと、インバータINVが高負荷となるため、高速走行時にも最大回生制動力を制限する。
DCU104は、直接またはCAN通信線105を介して、アクセル開度センサ107からのアクセル開度、各車輪速センサ106(FL,FR,RL,RR)により算出される車速(車体速)、バッテリSOC等が入力される。
DCU104は、アクセル開度センサ107等、各種センサからの情報に基づき、エンジンENGの動作制御と、図外の自動変速機の動作制御と、MCU103への指令によるモータジェネレータMGの動作制御とを行う。
【0011】
BCU102は、直接またはCAN通信線105を介して、マスタシリンダ液圧センサ19(
図2参照)からのマスタシリンダ液圧、ブレーキペダルストロークセンサ108からのブレーキペダルBPのストローク量、各車輪速センサ106(FL,FR,RL,RR)からの各車輪速、バッテリSOC、その他車両状態を示す状態量(ハンドルの操舵角、自車両に作用するヨーレート等)が入力される。
BCU102は、ブレーキペダルストロークセンサ108等、各種センサからの情報に基づいて車両に必要な制動力(全ての輪)を算出すると共に、必要な制動力を回生制動力と液圧制動力とに配分し、BCU102への液圧制動力指令によるHU101の動作制御と、MCU103への回生制動力指令によるモータジェネレータMGの動作制御とを行う。
ここで、実施例1では、液圧制動力よりも回生制動力を優先し、必要な制動力を回生分で賄える限りは液圧分を用いることなく、最大限(最大回生制動力)まで回生分の領域を拡大している。これにより、特に加減速を繰り返す走行パターンにおいて、エネルギ回収効率が高く、より低い車速まで回生制動によるエネルギの回収を実現している。なお、BCU102は、回生制動中、車速の低下等に伴い回生制動力が制限される場合には、回生制動力を液圧制動力にすり替えることで必要な制動力を確保する。
【0012】
BCU102は、通常制御時、ドライバのブレーキペダルBPの操作状態に応じて必要な制動力を算出すると共に、自動制動制御時には、ブレーキペダルBPの操作状態および各種センサからの情報に応じて自動制動制御に必要な制動力を算出する。ここで、「自動制動制御」とは、以下のような制御をいう。
(a) 車輪速に基づいて車体速(擬似車体速)を推定し、各輪FL,FR,RL,RRの車輪速が車体速(もしくは車体速から所定値減算した減圧しきい値等)に一致するようにホイルシリンダ液圧を増減または保持するアンチロックブレーキ(ABS)制御
(b) オートクルーズコントロールにより先行車との車間速度を最適化するにあたり、必要に応じて自動的に制動力を発生させる制御
(c) 車両の旋回時に車両のステア特性が過アンダーステア状態または過オーバーステア状態となったとき、所定の輪に自動的に制動力を発生させてニュートラルステア方向に戻すヨーモーメントを発生させる車両挙動安定制御
BCU102は、上記ABS制御、オートクルーズコントロール、車両挙動安定制御を実施するための自動制動制御部(アンチロック制御部)102aを備える。
【0013】
[HUの回路構成]
図2は、実施例1のHU101の回路構成図である。
実施例1のHU101は、互いに独立した前輪系統(一方系統)と後輪系統(他方系統)の2系統の配管構造を有し、前輪系統をドライバのブレーキ操作により発生するブレーキ液圧を第1ポンプ3により増圧してホイルシリンダW/C(FL,FR)へ供給するブレーキシステムとし、他方系統をリザーバRSVのブレーキ液を第2ポンプ22により増圧してホイルシリンダW/C(RL,RR)へ供給するブレーキバイワイヤシステムとしている。実施例1では、第1ポンプ3および第2ポンプ22としてギヤポンプを用いている。
以下、前輪系統と後輪系統の液圧回路について説明する。
(前輪系統)
前輪系統のブースタ回路(第1制動作動部)1は、マスタシリンダM/CからホイルシリンダW/C(FL,FR)へ連通する第1油路2と、第1油路2から分岐し第1ポンプ3の吸入部3aにつながる第1吸入油路4と、第1ポンプ3の吐出部3bと第1油路2とを接続する第1吐出油路5と、自動制動制御部102aの減圧作動に伴ってホイルシリンダW/C(FL,FR)から流出したブレーキ液を貯留し、第1吸入油路4に接続する貯留リザーバ6と、貯留リザーバ6とホイルシリンダW/C(FL,FR)とを接続する第1減圧油路7と、を備える。
第1油路2には、マスタシリンダM/C側から順に、マスタシリンダ液圧センサ19、常開の比例電磁弁であるゲートアウトバルブ8、液圧センサ9、常開の電磁弁であるソレノイドインバルブ10(FL,FR)が設けられている。
ゲートアウトバルブ8は、第1油路2と第1吸入油路4との接続位置よりもホイルシリンダ側に配置されている。
液圧センサ9は、第1油路2と第1吐出油路5との接続位置に配置され、第1ポンプ3の吐出側のブレーキ液圧を検出する。
【0014】
第1油路2には、ゲートアウトバルブ8を迂回する油路11が設けられ、油路11には、マスタシリンダM/CからホイルシリンダW/C(FL,FR)へ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容し、反対方向への流れを禁止するチェックバルブ12が設けられている。また、第1油路2には、ソレノイドインバルブ10(FL,FR)を迂回する油路13(FL,FR)が設けられ、油路13(FL,FR)には、ホイルシリンダW/C(FL,FR)からマスタシリンダM/Cへ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容し、反対方向への流れを禁止するチェックバルブ14(FL,FR)が設けられている。
第1吐出油路5には、第1ポンプ3の吐出部3bから第1油路2へ向かう方向のブレーキ液の流れを許容し、反対方向への流れを禁止するチェックバルブ15が設けられている。
貯留リザーバ6は、チェックバルブ6aを備える。チェックバルブ6aは、貯留リザーバ6に所定量のブレーキ液が貯留された場合、または第1吸入油路4の圧力が所定圧を超える高圧となった場合に閉弁し、貯留リザーバ6内へのブレーキ液の流入を禁止することで、第1ポンプ3の吸入部3aに高圧が印加されるのを防止する。なお、チェックバルブ6aは、第1ポンプ3が作動して第1吸入油路4を構成する油路16の圧力が低くなった場合には、第1吸入油路4を構成する油路17の圧力にかかわらず開弁し、貯留リザーバ6内へのブレーキ液の流入を許容する。
第1減圧油路7には、常閉の電磁弁であるソレノイドアウトバルブ18(FL,FR)が設けられている。
【0015】
(後輪系統)
後輪系統のブレーキバイワイヤ回路(第2制動作動部)20は、リザーバRSVからホイルシリンダW/C(RL,RR)へ連通する第2油路21と、第2油路21から分岐し第2ポンプ22の吸入部22aにつながる第2吸入油路23と、第2ポンプ22の吐出部22bと第2油路21とを接続する第2吐出油路24と、自動制動制御部102aの減圧作動に伴ってホイルシリンダW/C(RL,RR)から流出したブレーキ液を貯留し、第2吸入油路23に接続する貯留リザーバ33と、貯留リザーバ33とホイルシリンダW/C(RL,RR)とを接続する第2減圧油路34と、を備える。
第2油路21には、マスタシリンダM/C側から順に、常開の電磁弁であるゲートアウトバルブ25、液圧センサ26、常開の電磁弁であるソレノイドインバルブ27(RL,RR)が設けられている。
ゲートアウトバルブ25は、第2油路21と第2吐出油路24との接続位置よりもホイルシリンダ側に配置されている。
液圧センサ26は、第2油路21と第2吐出油路24との接続位置に配置され、第2ポンプ22の吐出側のブレーキ液圧を検出する。
【0016】
第2油路21には、ゲートアウトバルブ25を迂回する油路28が設けられ、油路28には、マスタシリンダM/CからホイルシリンダW/C(RL,RR)へ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容し、反対方向への流れを禁止するチェックバルブ29が設けられている。また、第2油路21には、ソレノイドインバルブ27(RL,RR)を迂回する油路30(RL,RR)が設けられ、油路30(RL,RR)には、ホイルシリンダW/C(RL,RR)からマスタシリンダM/Cへ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容し、反対方向への流れを禁止するチェックバルブ31(RL,RR)が設けられている。
第2吐出油路24には、第2ポンプ22の吐出部3bから第2油路21へ向かう方向のブレーキ液の流れを許容し、反対方向への流れを禁止するチェックバルブ32が設けられている。
貯留リザーバ33は、チェックバルブ33aを備える。チェックバルブ33aは、貯留リザーバ33に所定量のブレーキ液が貯留された場合、または第2吸入油路23の圧力が所定圧を超える高圧となった場合に閉弁し、貯留リザーバ33内へのブレーキ液の流入を禁止することで、第2ポンプ22の吸入部22aに高圧が印加されるのを防止する。なお、チェックバルブ33aは、第2ポンプ22が作動して第2吸入油路23を構成する油路35の圧力が低くなった場合には、第2吸入油路23を構成する油路36の圧力にかかわらず開弁し、貯留リザーバ33内へのブレーキ液の流入を許容する。
第2減圧油路34には、常閉の電磁弁であるソレノイドアウトバルブ37(FL,FR)が設けられている。
実施例1では、第1ポンプ3および第2ポンプ22を、1つのポンプモータ40を用いて駆動する。
【0017】
[回生協調制御処理]
図3は、BCU102で実行される回生協調制御処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。
ステップS301では、ドライバのブレーキ操作量、外部指令(外部のコントローラからの指令)から、必要な制動力(目標制動力)を演算する(目標制動力算出部)。ブレーキ操作量は、ブレーキペダルストロークセンサ108からのブレーキペダルストローク量、またはマスタシリンダ液圧センサ19からのマスタシリンダ液圧とする。
ステップS302では、車両挙動または外部指令から、必要なモーメントを演算する。ここで、必要なヨーモーメントとは、例えば、車両運動制御の目標ヨーレートを実現するためのヨーモーメントとする。
ステップS303では、必要な制動力と必要なモーメントから制動力の配分量(前後および左右)を演算する。
図4に配分量の一例を示す。
図4は直進制動時の前後配分量の演算マップであり、横軸は必要な制動力[N]、縦軸は前後配分量[%]である。前後配分量は、0%のとき左右前輪FL,FRに制動力0%、左右後輪RL,RRの制動力100%、100%のとき左右前輪FL,FRに制動力100%、左右後輪RL,RRに制動力0%とする。
図4のマップでは、必要な制動力が大きくなるほど必要な制動力に対する左右前輪FL,FRの制動力の配分量が多くなるように設定している。
【0018】
ステップS304では、制動力の配分量から各輪に必要な制動力を演算する。
ステップS305では、車輪の状態から各輪の制動力を補正する。一例を挙げると、ABS制御が作動している場合は、該当する車輪の制動力を減少させる。
ステップS306では、MCU103から受信した最大回生制動力と各輪の制動力から、回生制動力指令値を演算する。演算した回生制動力指令値は、MCU103へ送信する。回生制動指令値は、発生可能な最大回生制動力に応じて決定する。
ステップS307では、各輪の制動力と回生制動力指令値から、各輪の液圧制動力指令値を演算する。
ステップS308では、各輪の液圧制動力指令値から、各輪の液圧指令値を演算する。
ステップS309では、マスタシリンダ液圧、ホイルシリンダ液圧(液圧センサ9,26により検出)、各輪の液圧指令値から、HU101の各バルブ、ポンプモータ40の駆動を行う。
すなわち、実施例1の回生協調制御では、ドライバの要求に応じて必要な制動力を決定し、決定した各輪の制動力をヨーモーメントや車輪の状態に応じて補正する。続いて、必要な制動力を回生制動力と液圧制動力とに配分し、回生制動力指令値をMCU103に、液圧制動力指令値をHU101に出力する。
【0019】
次に、作用を説明する。
図5は、必要な制動力が
図4の領域a内で変化する場合のHU101の動作を示すタイムチャートである。
時点t501では、ドライバは制動のためにブレーキペダルBPの操作を開始する。
時点t501からt502までの期間では、ドライバはブレーキペダルBPを踏み増し、ブレーキペダルストローク量が増加する。左右前輪FL,FRのホイルシリンダ液圧は、ブレーキペダルストローク量に比例して発生し、左右後輪RL,RRは回生制動力のみで制動力を発生させる。
時点t502では、ドライバはブレーキペダルBPの踏み増しを停止する。
時点t502からt503までの期間では、ブレーキペダルストローク量が一定であるため、各輪のホイルシリンダ液圧は一定に維持される。
時点t503では、車速の低下に伴い回生制動力の制限が開始する。
時点t503からt504までの期間では、ポンプモータ40を駆動し、ゲートアウトバルブ25の電流をコントロールすることで、左右後輪RL,RRのホイルシリンダ液圧を増圧し、回生制動力の低下速度に合わせて液圧制動力を立ち上げる。これにより、左右後輪RL,RRの制動力が回生制動力から液圧制動力へと徐々にすり替えられる。このとき、左右前輪FL,FRのホイルシリンダ液圧を増圧させないように、ゲートアウトバルブ8は駆動せず、第1ポンプ3から吐出されるブレーキ液をマスタシリンダM/C側へ戻す。
時点t504では、回生制動力がゼロとなって回生制動力から液圧制動力へのすり替えが完了し、左右後輪RL,RRは液圧制動力のみで制動力を発生させる。
時点t505では、車両が停止する。
【0020】
図6は、必要な制動力が
図4の領域a→領域bへと変化する場合のHU101の動作を示すタイムチャートである。
時点t601では、ドライバは制動のためにブレーキペダルBPの操作を開始する。
時点t601からt602までの期間では、ドライバはブレーキペダルBPを踏み増し、ブレーキペダルストローク量が増加する。左右前輪FL,FRのホイルシリンダ液圧は、ブレーキペダルストローク量に比例して発生し、左右後輪RL,RRは回生制動力のみで制動力を発生させる。
時点t602では、ブレーキペダルストローク量から演算される必要な制動力が
図4の領域aから領域bへと移行する。
時点t602からt603までの期間では、ドライバはブレーキペダルBPをさらに踏み増し、左右前輪FL,FRの制動力の増加勾配が時点t601からt602までの期間よりも大きくなるため、ポンプモータ40を駆動し、ゲートアウトバルブ8の電流をコントロールすることで、左右前輪FL,FRのホイルシリンダ液圧を増圧し、必要な制動力を発生させる。このとき、左右後輪RL,RRは回生制動力によって制動力を確保しているため、左右後輪RL,RRのホイルシリンダ液圧を増圧させないように、ゲートアウトバルブ25は駆動せず、第2ポンプ22から吐出されるブレーキ液をリザーバRSV側へ戻す。
【0021】
時点t603では、ドライバはブレーキペダルBPの踏み増しを停止する。
時点t603からt604までの期間では、ゲートアウトバルブ8の電流をコントロールすることで左右前輪FL,FRのホイルシリンダ液圧を保持し、ポンプモータ40を停止する。
時点t604では、車速の低下に伴い回生制動力の制限が開始する。
時点t604からt605までの期間では、ポンプモータ40を駆動し、ゲートアウトバルブ25の電流をコントロールすることで、左右後輪RL,RRのホイルシリンダ液圧を増圧し、回生制動力の低下速度に合わせて液圧制動力を立ち上げる。これにより、左右後輪RL,RRの制動力が回生制動力から液圧制動力へと徐々にすり替えられる。このとき、左右前輪FL,FRのホイルシリンダ液圧を増圧させないように、ゲートアウトバルブ8の電流をコントロールし、第1ポンプ3から吐出される不要なブレーキ液をマスタシリンダM/C側へ戻す。
時点t605では、回生制動力がゼロとなって回生制動力から液圧制動力へのすり替えが完了し、左右後輪RL,RRは液圧制動力のみで制動力を発生させる。
時点t606では、車両が停止する。
【0022】
図7は、必要な制動力が
図4の領域a→領域b→領域cへと変化する場合のHU101の動作を示すタイムチャートである。
時点t701では、ドライバは制動のためにブレーキペダルBPの操作を開始する。
時点t701からt702までの期間では、ドライバはブレーキペダルBPを踏み増し、ブレーキペダルストローク量が増加する。左右前輪FL,FRのホイルシリンダ液圧は、ブレーキペダルストローク量に比例して発生し、左右後輪RL,RRは回生制動力のみで制動力を発生させる。
時点t702では、ブレーキペダルストローク量から演算される必要な制動力が
図4の領域aから領域bへと移行する。
時点t702からt703までの期間では、ドライバはブレーキペダルBPをさらに踏み増し、左右前輪FL,FRの制動力の増加勾配が時点t701からt702までの期間よりも大きくなるため、ポンプモータ40を駆動し、ゲートアウトバルブ8の電流をコントロールすることで、左右前輪FL,FRのホイルシリンダ液圧を増圧し、必要な制動力を発生させる。このとき、左右後輪RL,RRは回生制動力によって制動力を確保しているため、左右後輪RL,RRのホイルシリンダ液圧を増圧させないように、ゲートアウトバルブ25は駆動せず、第2ポンプ22から吐出されるブレーキ液をリザーバRSV側へ戻す。
【0023】
時点t703では、ブレーキペダルストローク量から演算される必要な制動力が
図4の領域bから領域cへと移行する。
時点t703からt704までの期間では、ドライバはブレーキペダルBPをさらに踏み増して必要な制動力が増加するのに対し、回生制動力は最大回生制動力に達しているため、ゲートアウトバルブ25の電流をコントロールして左右後輪RL,RRのホイルシリンダ液圧を増圧し、必要な制動力を発生させる。
時点t704では、ドライバはブレーキペダルBPの踏み増しを停止する。
時点t704からt705までの期間では、ゲートアウトバルブ8,25の電流をコントロールすることで左右前輪FL,FRおよび左右後輪RL,RRのホイルシリンダ液圧を保持し、ポンプモータ40を停止する。
時点t705では、車速の低下に伴い回生制動力の制限が開始する。
時点t705からt706までの期間では、ポンプモータ40を駆動し、ゲートアウトバルブ25の電流をコントロールすることで、左右後輪RL,RRのホイルシリンダ液圧を増圧し、回生制動力の低下速度に合わせて液圧制動力を立ち上げる。これにより、左右後輪RL,RRの制動力が回生制動力から液圧制動力へと徐々にすり替えられる。このとき、左右前輪FL,FRのホイルシリンダ液圧を増圧させないように、ゲートアウトバルブ8の電流をコントロールし、第1ポンプ3から吐出される不要なブレーキ液をマスタシリンダM/C側へ戻す。
時点t706では、回生制動力がゼロとなって回生制動力から液圧制動力へのすり替えが完了し、左右後輪RL,RRは液圧制動力のみで制動力を発生させる。
時点t707では、車両が停止する。
【0024】
[エネルギ回収効率の向上]
従来のブレーキ装置では、前輪系統にドライバのブレーキペダル踏力を増幅するブースタを用いたブレーキシステムを適用し、後輪系統にブレーキバイワイヤシステムを適用している。ここで、ブースタを用いたブレーキシステムでは、ドライバのブレーキ操作量に比例した液圧制動力が発生するため、前輪系統では、液圧制動力をドライバのブレーキ操作量とブースタの倍力比とから決まる液圧制動力未満にすることは不可能である。このため、回生制動装置による回生制動力が発生可能な最大回生制動力に達していない場合であっても、前輪の液圧制動力の制約から、ドライバが要求する制動力に対して回生制動力をより大きくすることができなかった。また、従来のブレーキ装置では、ブースタに負圧等が必要であるため、負圧発生源を持たない車両(電気自動車等)への適合が困難である。
これに対し、実施例1のブレーキ装置では、前輪系統にドライバのブレーキ操作により発生するブレーキ液圧を第1ポンプ3により増圧して左右前輪FL,FRのホイルシリンダW/C(FL,FR)へ供給するブレーキシステムを適用した。よって、ブースタを用いたブレーキシステムに対し、ブレーキ操作量に応じて発生する左右前輪FL,FRの液圧制動力を小さくできるため、左右後輪RL,RRの回生制動力を大きくでき、エネルギ回収効率を高めることができる。さらに、負圧発生源が不要であるため、負圧発生源を持たない車両にも適合できる。
また、実施例1では、後輪系統にリザーバRSVのブレーキ液を第2ポンプ22により増圧して左右後輪RL,RRのホイルシリンダW/C(RL,RR)へ供給するブレーキバイワイヤシステムを適用し、モータジェネレータMG、インバータINVおよびバッテリBATから構成される回生制動装置を左右後輪RL,RRに設けた。前輪系統はマスタシリンダM/CとホイルシリンダW/C(FL,FR)とが第1油路2で接続されているため、ドライバのブレーキ操作量に応じてマスタシリンダ液圧が立ち上がるのに対し、ブレーキバイワイヤシステムを適用した後輪系統は、ホイルシリンダW/C(RL,RR)がマスタシリンダM/Cと接続されていないため、ドライバのブレーキ操作量にかかわらず液圧制動力をゼロにできる。よって、左右後輪RL,RRの制動力を全て回生制動力で賄うことができるため、左右前輪FL,FRに回生制動装置を設けた場合よりもエネルギ回収効率を高めることができる。
【0025】
[制動効率の向上]
実施例1では、
図4のマップに示したように、必要な制動力が大きいほど必要な制動力に対する左右前輪FL,FRの制動力の配分量を多くする。通常、前輪の輪荷重は後輪の輪荷重よりも大きく、特に減速時には、車両重心位置が車両前方側へ移動するため、前後輪の輪荷重差は顕著となり、前後輪で同じ制動力を発生させる場合、前輪側のアクチュエータ(例えば、ポンプ)の仕事量は少なくて済む。よって、ドライバの要求する減速度が大きいほど左右前輪FL,FRの制動力の配分量を大きくすることで、制動効率を高めることができる。
[旋回挙動の安定化]
実施例1の車両では、回生制動力を左右後輪RL,RRで発生させているため、制動旋回時に左右前輪FL,FRに対して左右後輪RL,RRの制動力が大きすぎると、車両のステア特性は過オーバーステア状態となり、旋回挙動が乱れてしまう。そして、このオーバーステア傾向は、車両の制動力が大きくなるほど強くなる。よって、オーバーステア傾向が強いほど左右前輪FL,FRの制動力の配分量を大きくすることで、制動力の前後配分を車両の諸元に応じた理想配分(例えば、前:後=6:4または7:3)に近づけることができ、オーバーステア傾向の抑制による旋回挙動の安定化を図ることができる。
[フェールセーフ]
ブレーキバイワイヤシステムは、マスタシリンダで発生したブレーキ液をホイルシリンダへ供給する油路構成を備えていないため、システムのフェール時には制動力を発生させることができない。実施例1では、ブレーキバイワイヤシステムを後輪系統に適用し、左右後輪RL,RRでは液圧制動力と回生制動力とを合わせた制動力を発生させている。制動効率等の観点から後輪は前輪に比べて制動力が小さく設定されるため、ブレーキバイワイヤシステムがフェールした場合であっても、回生制動力により必要な制動力を確保できる。
また、前輪系統はマスタシリンダM/Cで発生したブレーキ液をホイルシリンダW/C(FL,FR)へ供給する油路構成を備えているため、ポンプモータ40の故障等、第1ポンプ3および第2ポンプ22が作動できない状況に陥った場合であっても、ドライバのブレーキ操作に応じた、いわゆるマニュアルブレーキにより左右前輪FL,FRに制動力を発生させることができる。このとき、上記制動効率の観点から、後輪側でマニュアルブレーキを行う場合と比較してより大きな制動力を発生させることができる。
【0026】
次に、効果を説明する。
実施例1のブレーキ装置にあっては、以下に列挙する効果を奏する。
(1) 車輪に電気的な制動力を与える回生制動装置(モータジェネレータMG、インバータINVおよびバッテリBAT)を備えた車両に用いられるブレーキ装置であって、ドライバのブレーキ操作状態に応じて車両に必要な制動力を算出する目標制動力算出部(ステップS301)と、ドライバのブレーキ操作によってブレーキ液圧を発生するマスタシリンダM/Cからブレーキ液を吸入し、前輪系統のホイルシリンダ液圧を増圧し制動力を発生させる第1ポンプ3と、ブレーキ液が貯留されているリザーバRSVからブレーキ液を吸入し、後輪系統のホイルシリンダ液圧を増圧し制動力を発生させる第2ポンプ22と、必要な制動力を発生するために第1ポンプ3と第2ポンプ22と回生制動装置による制動力の配分量を算出するBCU102と、を備えたため、制動時の回生制動装置によるエネルギ回収効率を高めることができる。また、負圧発生源を持たない電気自動車等の車両にも適合できる。
(2) 回生制動装置は、左右後輪RL,RRに対して制動力を与えるため、左右後輪RL,RRの制動力を全て回生制動力で賄うことができ、左右前輪FL,FRに回生制動装置を設けた場合よりもエネルギ回収効率を高めることができる。
【0027】
(3) BCU102は、必要な制動力が大きいほど、前輪系統の制動力の配分量を多くするため、制動効率を高めることができる。また、制動旋回時のオーバーステア傾向を抑制して旋回挙動の安定化を図ることができる。
(4) 前輪系統をドライバのブレーキ操作により発生するブレーキ液圧を第1ポンプ3により増圧してホイルシリンダW/C(FL,FR)へ供給するブレーキシステムとし、後輪系統をリザーバRSVのブレーキ液を第2ポンプ22により増圧してホイルシリンダW/C(RL,RR)へ供給するブレーキバイワイヤシステムとしたため、ブレーキバイワイヤシステムがフェールした場合であっても回生制動力により必要な制動力を確保できる。また、後輪側でマニュアルブレーキを行う場合と比較してより大きな制動力を発生させることができる。
(5) BCU102は、必要な制動力に応じて回生制動装置による回生制動力と第2ポンプ22による液圧制動力によって後輪系統における必要な制動力を発生させるように配分量を決定するため、回生制動力を常に発生可能な最大回生制動力まで高めることができ、高いエネルギ回収効率が得られる。また、ブレーキバイワイヤシステムと回生制動装置の一方がフェールした場合であっても、他方の制動力によって必要な制動力を確保できる。
(6) BCU102は、ブレーキ操作が開始されると回生制動装置による回生制動力が得られるように第1ポンプ3と第2ポンプ22と回生制動装置による制動力の配分量を算出するため、制動初期から回生制動によるエネルギの回収を実現できる。
【0028】
〔実施例2〕
図8は、実施例2のHU201の回路構成図である。
図8において、
図2に示した実施例1のHU101と同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
実施例2では、第1ポンプ3と第2ポンプ22とをそれぞれ独立に第1ポンプモータ(第1モータ)40aと第2ポンプモータ(第2モータ)40bで駆動する点、および後輪系統の第2吸入油路23に貯留リザーバが設けられておらず、第2吸入油路23と第2減圧油路34が直接接続されている点で実施例1と相違する。
実施例2のHU201では、前輪系統のホイルシリンダ液圧の増圧が必要な場合には第1ポンプモータ40aのみ駆動して第2ポンプモータ40bは駆動せず、後輪系統のホイルシリンダ液圧の増圧が必要な場合には第2ポンプモータ40bのみ駆動して第1ポンプモータ40aは駆動しない。このため、一方系統のホイルシリンダ液圧を増圧する際、他方系統の回路でブレーキ液を増圧されるのを防止できる。
また、ブレーキバイワイヤ回路20には貯留リザーバが無いため、ブレーキバイワイヤ回路20にも貯留リザーバを設けた場合と比較して、部品点数を削減できる。
【0029】
次に、効果を説明する。
実施例2のブレーキ装置にあっては、実施例1の効果(1)〜(6)に加え、以下に列挙する効果を奏する。
(7) 第1ポンプ3を駆動するための第1ポンプモータ40aと、第2ポンプ22を駆動するための第2ポンプモータ40bを備えたため、一方系統のホイルシリンダ液圧を増圧する際、他方系統の回路でブレーキ液が増圧されるのを防止できる。
(8) BCU102は自動制動制御部102aを備え、ブースタ回路1は、マスタシリンダM/CからホイルシリンダW/C(FL,FR)へ連通する第1油路2と、第1油路2から分岐し第1ポンプ3の吸入部3aにつながる第1吸入油路4と、第1ポンプ3の吐出部3bと第1油路2とを接続する第1吐出油路5と、自動制動制御部102aの減圧作動に伴ってホイルシリンダW/C(FL,FR)から流出したブレーキ液を貯留し、第1吸入油路4に接続する貯留リザーバ6と、貯留リザーバ6とホイルシリンダW/C(FL,FR)とを接続する第1減圧油路7と、を備え、ブレーキバイワイヤ回路20は、リザーバRSVからホイルシリンダW/C(RL,RR)へ連通する第2油路21と、第2油路21から分岐し第2ポンプ22の吸入部22aにつながる第2吸入油路23と、第2ポンプ22の吐出部22bと第2油路21とを接続する第2吐出油路24と、を備えた。よって、ブレーキバイワイヤ回路20にも貯留リザーバを設けた場合と比較して、部品点数の削減によるコストダウンを図ることができる。
【0030】
〔実施例3〕
図9は、実施例3のHU301の回路構成図である。
図9において、
図2に示した実施例1のHU101と同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
実施例3のHU301では、第1ポンプ41および第2ポンプ42としてプランジャポンプを用いている。2つのポンプ41,42は1つのポンプモータ43により駆動される。
ブースタ回路1において、マスタシリンダM/Cと第1ポンプ41の吸入部41aとの間は、貯留リザーバ44を介さず第1吸入油路45により接続されている。第1吸入油路45には、常閉の電磁弁であるゲートインバルブ46が設けられている。第1吸入油路45と貯留リザーバ44との間には、貯留リザーバ44から第1ポンプ41の吸入部41aへ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容し、反対方向への流れを禁止するチェックバルブ54が設けられている。
ブレーキバイワイヤ回路20において、リザーバRSVと第2ポンプ42の吸入部42aとの間には、貯留リザーバ47を介さず第2吸入油路48により接続されている。第2吸入油路48には、常閉の電磁弁であるゲートインバルブ49が設けられている。第2吸入油路48と貯留リザーバ47との間には、貯留リザーバ47から第2ポンプ42の吸入部42aへ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容し、反対方向への流れを禁止するチェックバルブ50が設けられている。
【0031】
実施例3のHU301では、前輪系統のホイルシリンダ液圧の増圧が必要な場合には、ポンプモータ43を駆動し、ゲートインバルブ46の電流をコントロールして第1ポンプ41にブレーキ液を供給する。このとき、ゲートインバルブ49は駆動させないことで第2ポンプ42によるブレーキ液の増圧を防止できる。
後輪系統のホイルシリンダ液圧の増圧が必要な場合には、ポンプモータ43を駆動し、ゲートインバルブ49の電流をコントロールして第2ポンプ42にブレーキ液を供給する。このとき、ゲートインバルブ46は駆動させないことで第1ポンプ41によるブレーキ液の増圧を防止できる。
次に、効果を説明する。
実施例3のブレーキ装置にあっては、実施例1の効果(1)〜(6)に加え、以下の効果を奏する。
(9) 第1吸入油路45および第2吸入油路48に常閉の電磁弁であるゲートインバルブ46,49を設けたため、一方系統のホイルシリンダ液圧を増圧する際、他方系統の回路でブレーキ液が増圧されるのを防止できる。
【0032】
〔実施例4〕
図10は、実施例4のHU401の回路構成図である。
図10において、
図2に示した実施例1のHU101と同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
実施例4のHU401では、第1油路2の第1吸入油路4との接続点よりもマスタシリンダM/C側の位置に、常開の比例電磁弁である脈圧低減用バルブ(脈動低減手段)51を設けた点で実施例1と異なる。第1油路2には、脈圧低減用バルブ51を迂回する油路52が設けられている。油路52には、マスタシリンダM/CからホイルシリンダW/C(RL,RR)へ向かうブレーキ液の流れを許容し、反対方向への流れを禁止するチェックバルブ53が設けられている。
実施例4のHU401では、後輪系統のみホイルシリンダ液圧の増圧が必要な場合、脈圧低減用バルブ51の電流をコントロールし、マスタシリンダM/Cと第1ポンプ3の吸入部3aとを接続する経路を閉じることで、脈圧低減用バルブ51よりも第1ポンプ3側の第1油路2と第1吸入油路4とで第1ポンプ3の吐出部3aから吐出されたブレーキ液を再び第1ポンプ3の吸入部3bへと還流させる還流回路が構成される。よって、第1ポンプ3の作動による液圧脈動がマスタシリンダM/C側へ伝播するのを抑制でき、ペダルフィールの悪化を軽減できる。
次に、効果を説明する。
実施例4のブレーキ装置にあっては、実施例1の効果(1)〜(6)に加え、以下の効果を奏する。
(10) 第1油路2上であって、第1吸入油路4との分岐点とマスタシリンダM/Cとの間に第1ポンプ3による液圧脈動を吸収する脈圧低減用バルブ51を備えたため、第1ポンプ3の作動による液圧脈動がマスタシリンダM/C側へ伝播するのを抑制でき、ペダルフィールの悪化を軽減できる。
【0033】
〔実施例5〕
図11は、実施例5のHU501の回路構成図である。
図11において、
図2に示した実施例1のHU101と同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
実施例5のHU501では、後輪系統に電動キャリパ装置ECを用いた点で他の実施例と異なる。電動キャリパ装置ECは、モータ55RL,55RRを使ってピストンを動かし、パッドをブレーキロータに押しつけることにより、制動力を発生させる。
これにより、前輪系統は油圧系、後輪系統は電気系を用いた回路構成が得られ、前輪系統、後輪系統においてそれぞれの特性に合わせた制御が可能になり、制御性が向上する。
〔他の実施例〕
以上、本発明を実施するための形態を実施例に基づいて説明したが、本発明の具体的な構成は実施例に示した構成に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
実施例では、前輪系統にブースタ回路1、後輪系統にブレーキバイワイヤ回路20を設け、後輪に回生制動装置を設けた例を示したが、前輪系統にブレーキバイワイヤ回路20、後輪系統にブースタ回路1を設け、前輪に回生制動装置を設けてもよい。
【0034】
以下に、実施例から把握される特許請求の範囲に記載した発明以外の技術的思想について説明する。
(a) 請求項5に記載のブレーキ装置において、
前記コントロールユニットは、前記ブレーキ操作が開始されると前記回生制動装置による制動力が得られるように前記配分量を決定することを特徴とするブレーキ装置。
よって、制動初期から回生制動によるエネルギの回収を実現できる。
(b) 車輪に電気的な制動力を与える回生制動装置を備えた車両に用いられるブレーキ装置であって、
ドライバのブレーキ操作状態に応じて目標制動力を算出する目標制動力算出部と、
ドライバのブレーキ操作によってブレーキ液圧を発生するマスタシリンダからブレーキ液を吸入し、互いに独立した車両の第1系統または第2系統の一方系統のホイルシリンダ液圧を増圧し制動力を発生させる第1ポンプを備えた第1制動作動部と、
ブレーキ液が貯留されているリザーバからブレーキ液を吸入し、前記第1系統または第2系統の他方系統のホイルシリンダ液圧を増圧し制動力を発生させる第2ポンプを備えた第2制動作動部と、
前記算出された目標制動力を発生するために前記第1制動作動部と前記第2制動作動部と前記回生制動装置による制動力の配分量を決定し、決定した配分量となるように前記第1制動作動部および第2制動作動部を制御するコントロールユニットと、
を備えたことを特徴とするブレーキ装置。
よって、制動時の回生制動装置によるエネルギ回収効率を高めることができる。また、負圧発生源を持たない電気自動車等の車両にも適合できる。
【0035】
(c) (b)に記載のブレーキ装置において、
前記回生制動装置は、前記他方系統に付属する車輪に対して制動力を与えることを特徴とするブレーキ装置。
よって、他方系統に付属する車輪の制動力を全て回生制動力で賄うことができ、一方系統に回生制動装置を設けた場合よりもエネルギ回収効率を高めることができる。
(d) (c)に記載のブレーキ装置において、
前記一方系統は前記車両の左右前輪系統であって、前記他方系統は前記車両の左右後輪系統であることを特徴とするブレーキ装置。
よって、第2制動作動部がフェールした場合であっても回生制動力により必要な制動力を確保できる。また、他方系統側でマニュアルブレーキを行う場合と比較してより大きな制動力を発生させることができる。
(e) (d)に記載のブレーキ装置において、
前記第1ポンプを駆動するための第1モータと、前記第2ポンプを駆動するための第2モータを備えたことを特徴とするブレーキ装置。
よって、一方系統のホイルシリンダ液圧を増圧する際、他方系統の回路でブレーキ液が増圧されるのを防止できる。
(f) (e)に記載のブレーキ装置において、
前記コントロールユニットはアンチロック制御部を備え、
前記第1制動作動部は、
前記マスタシリンダから前記ホイルシリンダへ連通する第1油路と、
前記第1油路から分岐し前記第1ポンプの吸入部につながる第1吸入油路と、
前記第1ポンプの吐出部と前記第1油路とを接続する第1吐出油路と、
前記アンチロック制御部の減圧作動に伴って前記ホイルシリンダから流出したブレーキ液を貯留し、前記第1吸入油路に接続する貯留リザーバと、
前記貯留リザーバと前記ホイルシリンダとを接続する第1減圧油路と、
を備え、
前記第2制動作動部は、
前記リザーバから前記ホイルシリンダへ連通する第2油路と、
前記第2油路から分岐し前記第2ポンプの吸入部につながる第2吸入油路と、
前記第2ポンプの吐出部と前記第2油路とを接続する第2吐出油路と、
を備えたことを特徴とするブレーキ装置。
よって、第2制動作動部にも貯留リザーバを設けた場合と比較して、部品点数の削減によるコストダウン図ることができる。
【0036】
(g) (f)に記載のブレーキ装置において、
前記第1油路上であって、前記第1吸入油路との分岐点と前記マスタシリンダとの間に前記第1ポンプによる液圧脈動を吸収する脈圧低減手段を備えたことを特徴とするブレーキ装置。
第1ポンプの作動による液圧脈動がマスタシリンダ側へ伝播するのを抑制でき、ペダルフィールの悪化を軽減できる。
(h) (c)に記載のブレーキ装置において、
前記コントロールユニットはアンチロック制御部を備え、
前記第1制動作動部は、
前記マスタシリンダから前記ホイルシリンダへ連通する第1油路と、
前記第1油路から分岐し前記第1ポンプの吸入部につながる第1吸入油路と、
前記第1ポンプの吐出部と前記第1油路とを接続する第1吐出油路と、
前記アンチロック制御部の減圧作動に伴って前記ホイルシリンダから流出したブレーキ液を貯留し、前記第1吸入油路に接続する貯留リザーバと、
前記貯留リザーバと前記ホイルシリンダとを接続する第1減圧油路と、
を備え、
前記第2制動作動部は、
前記リザーバから前記ホイルシリンダへ連通する第2油路と、
前記第2油路から分岐し前記第2ポンプの吸入部につながる第2吸入油路と、
前記第2ポンプの吐出部と前記第2油路とを接続する第2吐出油路と、
を備えたことを特徴とするブレーキ装置。
よって、第2制動作動部にも貯留リザーバを設けた場合と比較して、部品点数の削減によるコストダウン図ることができる。
(i) (c)に記載のブレーキ装置において、
前記第1ポンプを駆動するための第1モータと、前記第2ポンプを駆動するための第2モータを備えたことを特徴とするブレーキ装置。
よって、前輪系統と後輪系統の一方系統のみ増圧が必要な場合は、対応するモータのみを駆動させ、他方系統が不要に増圧されるのを防止できる。
【0037】
(j) 車輪に電気的な制動力を与える回生制動装置を備えた車両に用いられるブレーキ装置であって、
ドライバのブレーキ操作を増幅することなくブレーキ操作力相当のブレーキ液圧を発生するマスタシリンダからブレーキ液を吸入し、互いに独立した車両の第1系統または第2系統の一方系統のホイルシリンダ液圧を増圧し制動力を発生させる第1ポンプを備えたブースタ回路と、
ブレーキ液が貯留されているリザーバからブレーキ液を吸入し、前記第1系統または第2系統の他方系統のホイルシリンダ液圧を増圧し制動力を発生させる第2ポンプを備えたブレーキバイワイヤ回路と、
を備えたことを特徴とするブレーキ装置。
よって、制動時の回生制動装置によるエネルギ回収効率を高めることができる。また、負圧発生源を持たない電気自動車等の車両にも適合できる。
(k) (j)に記載のブレーキ装置において、
ドライバのブレーキ操作状態に応じて目標制動力を算出する目標制動力算出部と、
前記算出された目標制動力を発生するために前記ブースタ回路と前記ブレーキバイワイヤ回路と前記回生制動装置による制動力の配分量を算出するコントロールユニットと、
を備えたことを特徴とするブレーキ装置。
よって、制動時の回生制動装置によるエネルギ回収効率を高めることができる。
(l) (k)に記載のブレーキ装置において、
前記回生制動装置は、前記他方系統に付属する車輪に対して制動力を与えることを特徴とするブレーキ装置。
よって、他方系統に付属する車輪の制動力を全て回生制動力で賄うことができ、一方系統に回生制動装置を設けた場合よりもエネルギ回収効率を高めることができる。
【0038】
(m) (j)に記載のブレーキ装置において、
前記一方系統は前記車両の左右前輪系統であって、前記他方系統は前記車両の左右後輪系統であることを特徴とするブレーキ装置。
よって、ステアバイワイヤ回路がフェールした場合であっても回生制動力により必要な制動力を確保できる。また、他方系統側でマニュアルブレーキを行う場合と比較してより大きな制動力を発生させることができる。
(n) (j)に記載のブレーキ装置において、
前記第1ポンプを駆動するための第1モータと、前記第2ポンプを駆動するための第2モータを備えたことを特徴とするブレーキ装置。
よって、一方系統のホイルシリンダ液圧を増圧する際、他方系統の回路でブレーキ液が増圧されるのを防止できる。
(o) (j)に記載のブレーキ装置において、
前記コントロールユニットはアンチロック制御部を備え、
前記ブースタ回路は、
前記マスタシリンダから前記ホイルシリンダへ連通する第1油路と、
前記第1油路から分岐し前記第1ポンプの吸入部につながる第1吸入油路と、
前記第1ポンプの吐出部と前記第1油路とを接続する第1吐出油路と、
前記アンチロック制御部の減圧作動に伴って前記ホイルシリンダから流出したブレーキ液を貯留し、前記第1吸入油路に接続する貯留リザーバと、
前記貯留リザーバと前記ホイルシリンダとを接続する第1減圧油路と、
を備え、
前記ブレーキバイワイヤ回路は、
前記リザーバから前記ホイルシリンダへ連通する第2油路と、
前記第2油路から分岐し前記第2ポンプの吸入部につながる第2吸入油路と、
前記第2ポンプの吐出部と前記第2油路とを接続する第2吐出油路と、
を備えたことを特徴とするブレーキ装置。
よって、ブレーキバイワイヤ回路にも貯留リザーバを設けた場合と比較して、部品点数の削減によるコストダウンを図ることができる。