(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5797544
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】スナック食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 1/217 20060101AFI20151001BHJP
A23G 3/34 20060101ALN20151001BHJP
【FI】
A23L1/217
!A23G3/00 108
【請求項の数】2
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2011-283262(P2011-283262)
(22)【出願日】2011年12月26日
(65)【公開番号】特開2013-132224(P2013-132224A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000111487
【氏名又は名称】ハウス食品グループ本社株式会社
(72)【発明者】
【氏名】北川 陽一郎
【審査官】
太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−512143(JP,A)
【文献】
特開昭55−138400(JP,A)
【文献】
特表2008−506393(JP,A)
【文献】
特開昭63−091042(JP,A)
【文献】
米国特許第04303452(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 1/217
A23G 3/34
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
DWPI(Thomson Innovation)
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポテト原料を主原料とするスナック原料を混合してスナック生地を調製し、得られたスナック生地を適宜形状に成形し、油揚げすることによりスナック食品を製造する方法において、
ここで、前記ポテト原料には馬鈴薯澱粉は含まれず、
前記ポテト原料のうちの50%以上を燻煙処理した乾燥ポテト原料を用いることを特徴とするスナック食品の製造方法。
【請求項2】
前記スナック原料がサツマイモ原料を含有する請求項1記載のスナック食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スモーク風味が付与されたポテト原料を主原料とするスナック食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からポテト原料を主原料とするスナック食品の製造方法が種々提案されている。例えば、特許文献1には、加熱処理した馬鈴薯とポテトフレークとを主原料として調製した生地を適宜形状に成型した後、油揚げ処理を施すことを特徴とする成形ポテトチップスの製造法が開示されている。
【0003】
一方、鮭やニシン等の魚類、鶏肉、チーズ等の食材を燻煙することで保存性を高めると共に、特有のスモーク風味を付与する燻製が広く知られている。元来、燻製は傷みやすい食材を長期間保存可能な状態に加工するための技術であるが、保存技術の発達した現代ではその意味合いよりもむしろ、普段と違う食感や味わいを楽しむためのものへと変化しつつあり、近頃は種々の食品に燻煙が施されるようになってきている。例えば、特許文献2には、焼き上げたチーズケーキやタルトを燻製器内に入れて燻煙することで、燻製チーズケーキや燻製タルトを得ることが記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開昭62−61540号公報
【特許文献2】特開平11−99号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポテト原料を主原料とするスナック食品にスモーク風味を付与しようとした場合、油揚げしたスナック食品を燻製器内に入れて燻煙処理するとポテト本来の風味が失われてしまうという課題があった。また、油揚げしたスナック食品を燻製器内に入れて燻煙処理しようとした場合、これを工業的に実施しようとすると大掛かりな燻製器等の設備が必要になるという課題があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、ポテト本来の風味を失うことなく、スモーク風味を有するスナック食品の製造方法を提供することにある。
【0007】
また、本発明の目的は、大掛かりな設備を必要とすることなく、スモーク風味を有するスナック食品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、ポテト原料を主原料とするスナック原料を混合してスナック生地を調製し、得られたスナック生地を適宜形状に成形し、油揚げすることによりスナック食品を製造する方法において、前記ポテト原料のうちの50%以上を燻煙処理した乾燥ポテト原料を用いることを特徴とするスナック食品の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
すなわち、本発明によれば、ポテト本来の風味を失うことなく、スモーク風味を有するスナック食品を大掛かりな設備を必要とせずに製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明においては、スナック食品の主原料とするポテト原料のうちの50重量%以上、より好ましくは60〜90重量%、更に好ましくは70〜90重量%を燻煙処理された乾燥ポテト原料を用いる。これにより、ポテト本来の風味を失うことなく、スモーク風味を有するスナック食品を得ることができる。乾燥ポテト原料としては、ポテトフレーク、ポテトグラニュール等を用いることができ、これらは単独で用いてもよいし、或いは併用してもよい。尚、本発明においては、乾燥ポテト原料と共に生のポテト原料を用いることもできる。生のポテト原料としては、ポテトグリッツ等を用いることができる。
【0011】
燻煙処理した乾燥ポテト原料は、例えば、回転ドラム内に上記乾燥ポテト原料を入れると共に、木片を加熱して燻煙を発生させ、乾燥ポテト原料を入れた回転ドラムを回転させて攪拌しつつ、上記で発生させた燻煙を回転ドラム内に通過させて乾燥ポテト原料と接触させることにより好適に得ることができる。燻煙を発生させる木片としては、ヒッコリー、サクラ、ナラ、オニグルミ、ブナ、リンゴ、メスキート等が挙げられる。燻煙処理における煙の温度、処理時間としては、乾燥ポテト原料にポテトの風味を残しつつスモーク風味を好適に付与する上で、30〜60℃、60〜120分間であるのが好ましい。
【0012】
本発明において、ポテト原料はスナック原料中に30〜50重量%、より好ましくは35〜45重量%の割合で含ませるのがよい。これによりスナック食品にポテトの風味を好適に付与することができる。また、ポテト原料以外の原料としては、サツマイモ原料、澱粉、デキストリン、食塩、調味料、エキス類、香辛料、糖類、油脂、乳化剤、水等が挙げられる。
【0013】
より具体的には、サツマイモ原料としては、サツマイモパウダー等が挙げられる。澱粉としては、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、米澱粉、タピオカ澱粉等が挙げられる。尚、本発明でいうポテト原料には馬鈴薯澱粉は含まれない。調味料としては、食塩、塩化カリウム、アミノ酸、核酸、有機酸、アスパラギン酸等が挙げられる。
【0014】
本発明においては、これらの原料の中でも特にサツマイモ原料をスナック原料に含ませるのが好ましい。この場合、スナック食品にサツマイモ原料の甘味を加えることにより、スナック食品のポテト風味を強めることでき、スモーク風味と共にポテト風味を一層感じることができるスナック食品を得ることができる。サツマイモ原料は、スナック食品に好ましい甘味を付与する上で、スナック原料中に0.1〜1重量%、より好ましくは、0.3〜0.5重量%の割合で含ませるのがよい。
【0015】
本発明においては、上述のスナック原料を混合してスナック生地を調製し、得られたスナック生地を適宜形状に成形する。具体的には、例えば、スナック生地を2本のロールが設置された装置(ロール機)のロールの間に通してシート状のスナック生地を調製し、その後、得られたシート状のスナック生地をカッターで適宜形状にカットして成形すればよい。
【0016】
このようにして適宜形状に成形したスナック生地を油揚げする。油揚げするスナック生地の水分は30〜60重量%に調整されているのが好ましい。したがって、必要によりスナック生地にオーブン等を用いて乾燥処理を行って水分量を調整するのが好ましい。乾燥処理はスナック生地の成形前に行ってもよいが、スナック生地の成形が容易であるという点から、スナック生地の成形後に行うのが好ましい。油揚げは従来一般的に使用されている油揚げ装置等を利用すればよい。油揚げして得られたスナック食品には、更に調味料や香辛料等を振り掛けて風味付けをしてもよい。
【実施例】
【0017】
(燻煙処理した乾燥ポテト原料の調製)
回転ドラム内にポテトフレークを入れると共に、ヒッコリーチップを加熱して燻煙を発生させ、回転ドラムを回転させてポテトフレークを攪拌しつつ、上記で発生させた50℃の燻煙を回転ドラム内に通過させて乾燥ポテト原料と90分間接触させて燻煙処理ポテトフレークを得た。また、これと同様にして燻煙処理ポテトグリッツを得た。
【0018】
(実施例1〜3、比較例1〜2)
以下の表1に示す配合によりスナック原料を混合してスナック生地を調製し、得られたスナック生地を2本のロールが設置された装置(ロール機)のロールの間に通して0.65mmのシート状のスナック生地を調製した。次に、このシート状のスナック生地をカッターロール機でカットして楕円形に成形した。次に、この楕円形に成形したスナック生地をオーブンで加熱乾燥してスナック生地の水分を40重量%に調整した。次に、このスナック生地を油揚げしてスナック食品を得た。
【0019】
【表1】
【0020】
このようにして得られた実施例1〜3及び比較例1〜2のスナック食品を食した結果、その評価は次の通りであった。
すなわち、実施例1のスナック食品は、スモーク風味が良好に感じられ、しかもポテトの風味も感じられるものであった。実施例2のスナック食品は、実施例1のスナック食品に比べると若干弱いがスモーク風味が感じられるものであった。実施例3のスナック食品は、実施例1のスナック食品よりも甘味が強くポテト風味が一層引き立てられていた。他方、比較例1のスナック食品は、ポテトの風味は感じられるが、スモーク風味がほとんど感じられないものであった。また、比較例2については、スナック生地から成形することができずスナック食品を得ることができなかった。