特許第5797569号(P5797569)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5797569生産システム及び生産システムモデルを更新する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5797569
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】生産システム及び生産システムモデルを更新する方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/00 20060101AFI20151001BHJP
【FI】
   G03G15/00 303
【請求項の数】8
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2012-7552(P2012-7552)
(22)【出願日】2012年1月17日
(65)【公開番号】特開2012-159837(P2012-159837A)
(43)【公開日】2012年8月23日
【審査請求日】2015年1月15日
(31)【優先権主張番号】13/017,485
(32)【優先日】2011年1月31日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エリック・エム・グロス
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・ポール
【審査官】 佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−191566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
G03G 21/00
G03G 21/14
B41J 29/38
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産システムであって、
製品を生産するために少なくとも1つの生産作業を実行する働きをする少なくとも1つのリソースと、
前記少なくとも1つのリソースを用いる製品の生産を促進するために、対応するアクチュエータ制御入力信号または値に応じて個々に動作可能な複数のアクチュエータと、
所望される製品特性と前記アクチュエータの所望の特性に対応する動作関連パラメータである形式上動作点との間の相関性を含むモデルと、
記リソース及び前記アクチュエータと結合され、かつ少なくとも1つの所望される試験製品特性に従って対応する試験製品セットを生産するために複数のランを含む実験を自動的に実行する働きをするコントローラであって、前記コントローラは、少なくとも1つの所望される試験製品特性によって画定されるアクチュエータ形式上動作点によって前記リソースに試験製品を生産させるために、実験の各ランにおいて前記アクチュエータへアクチュエータ制御入力信号または値を提供し、各ランは少なくとも1つのアクチュエータの動作点をアクチュエータ形式上動作点から偏らせる少なくとも1つの予め決められた摂動を含み、前記実験の少なくとも2つの前記ランは予め決められた異なる摂動を有するコントローラと、
前記コントローラと結合され、かつ前記試験製品の前記少なくとも1つの所望される試験製品特性を検知する働きをする少なくとも1つのセンサとを備え、
前記コントローラは、前記試験製品セットの前記検知された特性を前記少なくとも1つの所望される試験製品特性と対照させる分析を実行し、かつ少なくとも部分的に前記分析に従って、所望される製品特性と前記モデルのアクチュエータ形式上動作点との相関性を選択的に更新する働きをし、
前記システムは文書処理システムであって、試験パッチ製品を生産するためにマーキング材料を対応する媒体上へ転写する働きをする少なくとも1つのマーキングデバイスリソースを備え、
前記複数のアクチュエータは、マーキング材料の前記媒体上への転写に関連づけられる動作関連パラメータを調整するために、対応するアクチュエータ制御入力信号または値に応じて個々に動作可能であり、
前記少なくとも1つのセンサは、前記試験パッチ製品に関連づけられるマーキング材料転写状態を検知する働きをし、
前記コントローラは前記マーキングデバイスリソースと機能的に結合されかつ選択的に前記少なくとも1つのマーキングデバイスにマーキング材料を前記媒体上へ転写させる働きをし、前記コントローラは、少なくとも1つの所望される試験パッチ特性に従って前記媒体上へ対応する試験パッチセットを生産するために複数のランを含む実験を自動的に実行する働きをし、前記コントローラは、前記少なくとも1つの所望される試験パッチ特性によって画定されるアクチュエータ形式上動作点に従って前記マーキングデバイスリソースに前記媒体上へ試験パッチを生産させるために、前記実験の各ランにおいて前記アクチュエータへアクチュエータ制御入力信号または値を提供し、各ランは少なくとも1つのアクチュエータの動作点を前記アクチュエータ形式上動作点から偏らせる少なくとも1つの予め決められた摂動を含み、前記実験の少なくとも2つの前記ランは予め決められた異なる摂動を有し、前記コントローラは、前記試験パッチセットの前記検知された特性を前記少なくとも1つの所望される試験パッチ特性と対照させる分析を実行し、かつ少なくとも部分的に前記分析に従って、所望される試験パッチ特性と前記モデルのアクチュエータ形式上動作点との相関性を選択的に更新する働きをし、
前記実験の摂動は、前記試験パッチの前記媒体上の位置に関して前記形式上動作点から偏らせることである、生産システム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記実験の複数の反復を実行し、複数の試験製品セットの分析を実行しかつ少なくとも部分的に前記分析によって、所望される製品特性と前記モデルのアクチュエータ形式上動作点との前記相関性を選択的に更新する働きをする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記実験の異なる反復で前記ランのシーケンスを変更する働きをする、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記コントローラは、前記実験の異なる反復で前記ランのシーケンスをランダム化する働きをする、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記コントローラは少なくとも1つの予め決められた実験を格納する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記コントローラは、前記分析を基礎として前記モデルのパラメータまたはルックアップ表エントリの変化を推定し、かつ前記推定された変化のうちの少なくとも1つがしきい値を超えていれば、より多いラン回数を有するより完全な実験を選択的に実行する働きをする、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記コントローラは、非試験製品の生産を継続しながら前記媒体のパネル内ゾーンまたは他のゾーンに試験パッチを生産するために複数のランを含む実験を自動的に実行する働きをする、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
生産システムモデルを更新する方法であって、
生産システムの少なくとも1つの生産システムリソースを用いて、少なくとも1つの所望される試験製品特性に従った対応する試験製品セットを生産するために複数のランを含む実験を自動的に実行することであって、前記少なくとも1つの所望される試験製品特性によって画定されるアクチュエータの所望の特性に対応する動作関連パラメータである形式上動作点に従って前記リソースに対応する試験製品を生産させるために、前記実験の各ランにおいてアクチュエータ制御入力信号または値を複数のアクチュエータへ提供することを含み、各ランは少なくとも1つの前記アクチュエータの動作点をアクチュエータ形式上動作点から偏らせる少なくとも1つの予め決められた摂動を含み、前記実験の前記ランのうちの少なくとも2つは予め決められた異なる摂動を有することと、
前記実験において生産された前記試験製品の前記少なくとも1つの所望される試験製品特性を検出することと、
前記試験製品セットの前記検出された特性を前記少なくとも1つの所望される試験製品特性と対照させて分析することと、
少なくとも部分的に前記分析に従って、所望される製品特性とシステムモデルのアクチュエータ形式上動作点との相関性を選択的に更新することとを含み、
前記システムは文書処理システムであって、試験パッチ製品を生産するためにマーキング材料を対応する媒体上へ転写する働きをする少なくとも1つのマーキングデバイスリソースを備え、
前記複数のアクチュエータは、マーキング材料の前記媒体上への転写に関連づけられる動作パラメータを調整するために、対応するアクチュエータ制御入力信号または値に応じて個々に動作可能であり、
前記実験を自動的に実行することは、少なくとも1つの所望される試験パッチ特性に従って前記リソースに前記媒体上へ試験パッチセットを生産させるために、前記実験の各ランにおいて前記アクチュエータへアクチュエータ制御入力信号または値を提供することを含み、各ランは少なくとも1つのアクチュエータの動作点を前記アクチュエータ形式上動作点から偏らせる少なくとも1つの予め決められた摂動を含み、前記実験の少なくとも2つの前記ランは予め決められた異なる摂動を有し、
前記試験製品の前記少なくとも1つの所望される試験製品特性を検出することは、前記試験パッチに関連づけられるマーキング材料転写状態を検知することを含み、
前記試験製品セットの前記検出された特性を分析することは、前記試験パッチセットの前記検出された特性を前記少なくとも1つの所望される試験パッチ特性と対照させて分析することを含み、
前記相関性を選択的に更新することは、少なくとも部分的に前記分析に従って、所望される試験パッチ特性と前記モデルのアクチュエータ形式上動作点との相関性を選択的に更新することを含み、
さらに、非試験製品の生産を継続しながら前記媒体のパネル内ゾーンまたは他のゾーンに試験パッチを生産するために複数のランを含む実験を自動的に実行することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
例示的な本実施形態は、生産システムのモデルを更新するための実験計画法技術を用いるモデルベースの生産システムとその閉ループ制御に関し、プリンタ、コピー機、多機能デバイス、他等の文書処理システムの制御及び操作に使用される場合がある。製品を生産するために用いられる生産システムリソース及び関連の制御可能なアクチュエータは、それらの全てが一貫した製品品質を生み出す能力に影響する体系的工程変化、構造化された外乱及び不規則雑音に曝される。例えば、プリンタ及び他の文書処理システムは、最終的な出力プリントに密度及びカラーシフト等の色の変化を引き起こす時変雑音、筋及び帯等の一次元的均一性変化、及び粒状性及び斑等の二次元的均一性変化によって損なわれることが多い。電子写真の構造化外乱は、周期的バンディング等の準安定雑音を含む。雑音は、相対湿度及び温度の環境的変化、コンポーネント及び材料の使用年数及び摩耗及び印刷ジョブ履歴の変化を含む多くの根本的原因を有する場合がある。他の生産システムの電子写真工程制御及びコントローラは、このような雑音に起因する不確定性に対応し、かつより低い色変化及び正確な出力プリントをもたらすようにプロセスパラメータを調整しなければならない。さらに、多くのシステムにおいて、制御に使用するためのプロセスの測定は、システムの生産性を最大にしかつ材料の浪費を低減するように最小限に抑えられるべきである。
【背景技術】
【0002】
本開示は、ロバストなシステムモデルを開発しかつ更新するためにインループ実験計画法(DOE)が実行される、概して文書処理システム及び他の製造システムの適応制御に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
製品を生産するための生産作業を実行する1つまたは複数のリソース、並びに制御入力信号または制御入力値を介して製品の生産を容易にする働きをするアクチュエータを含む生産システムを開示する。所望される製品特性をアクチュエータの形式上動作点に相関させるモデルが用意され、コントローラはこのモデルを用いてアクチュエータ向けの制御入力を生成する。コントローラは、1つまたは複数の所望される試験製品特性に対応する試験製品の対応セットを生産するために1つまたは複数のランを含む実験を自動的に実行する。この場合、実験は、ある実施形態ではコントローラに記憶されてもよい。実験の各ランにおいて、コントローラは、所望される試験製品特性によって画定される形式上動作点を基礎としてリソースに試験製品を生産させるためにアクチュエータへアクチュエータ制御入力信号または値を提供する。さらに、各ランは、少なくとも1つのアクチュエータの動作点をモデルからのアクチュエータ形式上動作点から偏らせる1つまたは複数の予め決められた摂動を含み、実験の2つ以上のランは異なる既定の摂動を有する。所望される試験製品特性の検知には1つまたは複数のシステムセンサが使用され、コントローラは、検知された特性と所望される特性との相関性を分析し、かつ分析を基礎として、所望される製品特性とアクチュエータ形式上動作点との間の相関性を選択的に更新する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る生産システムは、製品を生産するために少なくとも1つの生産作業を実行する働きをする少なくとも1つのリソースと、前記少なくとも1つのリソースを用いる製品の生産を促進するために、対応するアクチュエータ制御入力信号または値に応じて個々に動作可能な複数のアクチュエータと、所望される製品特性と前記アクチュエータの所望の特性に対応する動作関連パラメータである形式上動作点との間の相関性を含むモデルと、前記リソース及び前記アクチュエータと結合され、かつ少なくとも1つの所望される試験製品特性に従って対応する試験製品セットを生産するために複数のランを含む実験を自動的に実行する働きをするコントローラであって、前記コントローラは、少なくとも1つの所望される試験製品特性によって画定されるアクチュエータ形式上動作点によって前記リソースに試験製品を生産させるために、実験の各ランにおいて前記アクチュエータへアクチュエータ制御入力信号または値を提供し、各ランは少なくとも1つのアクチュエータの動作点をアクチュエータ形式上動作点から偏らせる少なくとも1つの予め決められた摂動を含み、前記実験の少なくとも2つの前記ランは予め決められた異なる摂動を有するコントローラと、前記コントローラと結合され、かつ前記試験製品の前記少なくとも1つの所望される試験製品特性を検知する働きをする少なくとも1つのセンサとを備え、前記コントローラは、前記試験製品セットの前記検知された特性を前記少なくとも1つの所望される試験製品特性と対照させる分析を実行し、かつ少なくとも部分的に前記分析に従って、所望される製品特性と前記モデルのアクチュエータ形式上動作点との相関性を選択的に更新する働きをし、前記システムは文書処理システムであって、試験パッチ製品を生産するためにマーキング材料を対応する媒体上へ転写する働きをする少なくとも1つのマーキングデバイスリソースを備え、前記複数のアクチュエータは、マーキング材料の前記媒体上への転写に関連づけられる動作関連パラメータを調整するために、対応するアクチュエータ制御入力信号または値に応じて個々に動作可能であり、前記少なくとも1つのセンサは、前記試験パッチ製品に関連づけられるマーキング材料転写状態を検知する働きをし、前記コントローラは前記マーキングデバイスリソースと機能的に結合されかつ選択的に前記少なくとも1つのマーキングデバイスにマーキング材料を前記媒体上へ転写させる働きをし、前記コントローラは、少なくとも1つの所望される試験パッチ特性に従って前記媒体上へ対応する試験パッチセットを生産するために複数のランを含む実験を自動的に実行する働きをし、前記コントローラは、前記少なくとも1つの所望される試験パッチ特性によって画定されるアクチュエータ形式上動作点に従って前記マーキングデバイスリソースに前記媒体上へ試験パッチを生産させるために、前記実験の各ランにおいて前記アクチュエータへアクチュエータ制御入力信号または値を提供し、各ランは少なくとも1つのアクチュエータの動作点を前記アクチュエータ形式上動作点から偏らせる少なくとも1つの予め決められた摂動を含み、前記実験の少なくとも2つの前記ランは予め決められた異なる摂動を有し、前記コントローラは、前記試験パッチセットの前記検知された特性を前記少なくとも1つの所望される試験パッチ特性と対照させる分析を実行し、かつ少なくとも部分的に前記分析に従って、所望される試験パッチ特性と前記モデルのアクチュエータ形式上動作点との相関性を選択的に更新する働きをし、前記実験の摂動は、前記試験パッチの前記媒体上の位置に関して前記形式上動作点から偏らせることである、生産システムである。本発明に係る生産システムモデルを更新する方法は、生産システムの少なくとも1つの生産システムリソースを用いて、少なくとも1つの所望される試験製品特性に従った対応する試験製品セットを生産するために複数のランを含む実験を自動的に実行することであって、前記少なくとも1つの所望される試験製品特性によって画定されるアクチュエータの所望の特性に対応する動作関連パラメータである形式上動作点に従って前記リソースに対応する試験製品を生産させるために、前記実験の各ランにおいてアクチュエータ制御入力信号または値を複数のアクチュエータへ提供することを含み、各ランは少なくとも1つの前記アクチュエータの動作点をアクチュエータ形式上動作点から偏らせる少なくとも1つの予め決められた摂動を含み、前記実験の前記ランのうちの少なくとも2つは予め決められた異なる摂動を有することと、前記実験において生産された前記試験製品の前記少なくとも1つの所望される試験製品特性を検出することと、前記試験製品セットの前記検出された特性を前記少なくとも1つの所望される試験製品特性と対照させて分析することと、少なくとも部分的に前記分析に従って、所望される製品特性とシステムモデルのアクチュエータ形式上動作点との相関性を選択的に更新することとを含み、前記システムは文書処理システムであって、試験パッチ製品を生産するためにマーキング材料を対応する媒体上へ転写する働きをする少なくとも1つのマーキングデバイスリソースを備え、前記複数のアクチュエータは、マーキング材料の前記媒体上への転写に関連づけられる動作パラメータを調整するために、対応するアクチュエータ制御入力信号または値に応じて個々に動作可能であり、前記実験を自動的に実行することは、少なくとも1つの所望される試験パッチ特性に従って前記リソースに前記媒体上へ試験パッチセットを生産させるために、前記実験の各ランにおいて前記アクチュエータへアクチュエータ制御入力信号または値を提供することを含み、各ランは少なくとも1つのアクチュエータの動作点を前記アクチュエータ形式上動作点から偏らせる少なくとも1つの予め決められた摂動を含み、前記実験の少なくとも2つの前記ランは予め決められた異なる摂動を有し、前記試験製品の前記少なくとも1つの所望される試験製品特性を検出することは、前記試験パッチに関連づけられるマーキング材料転写状態を検知することを含み、前記試験製品セットの前記検出された特性を分析することは、前記試験パッチセットの前記検出された特性を前記少なくとも1つの所望される試験パッチ特性と対照させて分析することを含み、前記相関性を選択的に更新することは、少なくとも部分的に前記分析に従って、所望される試験パッチ特性と前記モデルのアクチュエータ形式上動作点との相関性を選択的に更新することを含み、さらに、非試験製品の生産を継続しながら前記媒体のパネル内ゾーンまたは他のゾーンに試験パッチを生産するために複数のランを含む実験を自動的に実行することを含む、方法である。ある実施形態では、コントローラは実験を複数回反復して複数の試験製品セットを分析し、かつモデルへの適合における周期的雑音の効果を打ち消すために異なる反復で実行のシーケンスをランダム化しても、変更してもよい。
【0005】
ある実施形態では、コントローラは、分析を基礎としてモデルのパラメータまたはルックアップ表エントリの変化を推定し、推定された変化のうちの1つまたはそれ以上がしきい値を超えていれば、より多いラン回数を有するより完全な実験を選択的に実行する。
【0006】
ある実施形態において、本システムは、マーキングデバイスリソースと、試験パッチ製品を生産するためにマーキング材料を対応する媒体上へ制御式に転写するための様々なアクチュエータとを備える文書処理システムである。実装によっては、試験パッチは、非試験製品の生産を続けながら媒体のパネル内ゾーンまたは他のゾーン内に生産され、または、専用の試験作業の間に生産されてもよい。コントローラは、1つまたは複数の所望される試験パッチ特性に従って媒体上へ試験パッチを生産するために実験ランを自動的に実行する。各実行において、コントローラは、所望される試験パッチ特性によって画定されるアクチュエータの形式上動作点に従ってマーキングデバイスに媒体上へ試験パッチを生産させるためにアクチュエータへ制御入力を提供する。各実行は、アクチュエータの動作点を形式上動作点から偏らせる1つまたは複数の予め決められた摂動を含み、少なくとも2回の実行は異なる摂動を有する。コントローラは、試験パッチの1つまたは複数の検知された特性と所望される特性との相関性を分析し、かつ選択的にモデルを更新する。ある実装においては、さらに、コントローラは実験の異なる反復のために媒体上の試験パッチ位置を変更し、かつある実施形態では、試験パッチ位置は実験の摂動である。
【0007】
また、ある態様の開示による、生産システムモデルを更新するための方法も提供する。本方法は、1つまたは複数の生産システムリソースを用いて所望される試験製品特性に従った試験製品セットを生産するための複数のランを含む実験を自動的に実行することを含む。制御入力信号または値は、所望される製品特性によって画定されるアクチュエータの形式上動作点に従ってリソースに対応する試験製品を生産させるために、各実験ランにおいてアクチュエータへ提供され、各ランはアクチュエータのうちの1つの動作点をアクチュエータの形式上動作点から偏らせる少なくとも1つの予め決められた摂動を含み、かつ2回またはそれ以上のランは予め決められた異なる摂動を有する。また本方法は、実験で生産される試験製品の特性を検知し、並びに検知された特性と所望される特性との相関性を分析することと、少なくとも部分的に分析を基礎として所望される製品特性とアクチュエータ形式上動作点とのモデル相関性を選択的に更新することも含む。
【0008】
ある実施形態では、実験の複数回の反復が実行されかつ複数の試験製品セットが分析され、この場合、実装の中には実験の異なる反復でランのシーケンスを変更することを含むものがある。またある実施形態は、分析を基礎としてモデルのパラメータまたはルックアップ表エントリの変化を推定することと、推定された変化のうちの少なくとも1つがしきい値を超えていれば、またはモデルの相関推定値が十分な正確さに欠けていれば、より多いラン回数を有するより完全な実験を選択的に実行することも含む。
【0009】
文書処理システムを包含する実施形態によっては、マーキングデバイスに媒体上へ試験パッチセットを生産させるために制御入力が提供され、かつ試験パッチの少なくとも1つのマーキング材料転写状態が検知されかつモデル相関性を選択的に更新するために所望される試験パッチ特性と相関して分析される。ある実装はさらに、実験の異なる反復で試験パッチの媒体上の位置を変更することを含む。実施形態によっては、さらに、試験パッチは、非試験製品の生産を続けながら媒体のパネル内ゾーンまたは他のゾーン内にアクチュエータの形式上設定値で生産される。
【0010】
実施形態によっては、実験は、周期的外乱がバイアスされたパラメータ推定値を生成することを防止するためにコントローラのアクチュエータがアクチュエータへ供給される制御入力信号または値を変更する遮断実験である。
【0011】
本発明対象は、様々なコンポーネント及びコンポーネント配置の形態を取ってもよく、かつ様々なステップ及びステップ配置の形態を取ってもよい。諸図面は、好適な実施形態を単に例示するためのものであって、発明対象を限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】開示の1つまたは複数の態様による、文書処理システムのモデルを更新するための例示的な一方法を示すフロー図である。
図2】開示の様々な態様による、共用される中間転写ベルト(ITB)に沿って複数の電子写真マーキングデバイスが配置されている例示的な多色文書処理システムを示すシステムレベルの簡易略図であり、コントローラは、システムモデルを更新するために実験計画法試験を自動的に実行するように構成されている。
図3】本開示による、図2のシステムの例示的な実施形態を示す詳細な側面図である。
図4図1及び図2のシステムにおける、マーキングデバイスのうちの1つ及び関連の制御可能なアクチュエータのさらなる詳細を示す略図である。
図5】例示的な電子写真マーキングデバイスの様々なアクチュエータ調整入力及びセンサ出力、及び図1及び図2のシステムにおけるコントローラへのその接続を示す略図である。
図6】ある例示的な電子写真画像装置を示す略図である。
図7】複数の電子写真マーキングデバイス及び対応する感光体ベルトを伴うさらに別の例示的な多色文書処理システムを示すシステムレベル図である。
図8図7の文書処理システムの例示的な一部を示す部分システム図である。
図9】プリンタモデルの閉ループ実験計画法の場合の、試験パッチが生成されるパネル内ゾーンによって画像パネルゾーンが分離されている、図7及び図8のシステムにおける例示的な感光体ベルトの一部を示す部分平面図である。
図10】ある例示的なモジュラ印刷システムを示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の異なる態様の幾つかの実施形態または実装を図面に関連して説明する。諸図を通じて、類似の参照数字は類似のエレメントを指して使用されるが、様々な特徴、構造及びグラフィックレンダリングは必ずしも一定の縮尺で描かれていない。しかしながら、本開示による技法及びシステムは、インクを基礎とするプリンタ、他等の材料転写にマーキングデバイス分野が用いられる他の形態の文書処理または印刷システムにおいて実装されてもよい。さらに、本開示の概念は、機械、人間、プロセッサ実行ソフトウェアまたは論理成分、オブジェクト、他に関わらず製品を製造するために複数のリソースが選択的に使用され得る他のタイプまたは形態のシステムとの関連においても有用性を見出し、このような代替的または変形的実装は全て、本開示の範囲に包含されることが予期される。
【0014】
プリンタ及び他の生産システムは、多くの場合、雑音を生じやすい静的システムとしてモデリングされることが可能である。その結果、このようなシステムのプロセスコントローラは、ある程度の不確定さの下で動作する。モデルベースのシステムは、制御調整の決定に際してシステムに関する正確な知識に依存し、かつ好適には、生産される製品に対する熱的及び時間的ドリフトの影響を打ち消すために随時更新される。これらの生産システムの性能は、多くの要素間の得失評価であることが多く、得失評価は、制御モデルの包括的更新を行う能力に影響する。例えば、プリンタの制御技術は、サイクルアップ時の収束時間とランタイムにおける初期過渡との平衡を保つが、長いサイクルアップ時間は顧客に不満を抱かせる可能性がある。多色プリンタの場合、システム制御モデルにおけるアクチュエータ動作点の調整は、例えば10個の読取り値を利用して著しいベルトサイン変動を平均化するベルトサイクル(例えば、ある例では6秒)当たり1つのアクチュエータセット更新で中間転写ベルト上に画像を生成することによる専用の試験を包含する場合が多い。長い試験時間が望ましくないことに加えて、このようなサンプリングは、生産性の観点から高価である可能性がある。例えば、タンデムプリンタのアーキテクチャではサンプリングの間にデバイスが離れる必要があるが、これは生産性を低減しかつ時間もかかる。さらに、プリンタシステムにおける雑音(例えば、センサに起因する雑音、ベルト位置に相関される雑音及び工程雑音)の存在は、システムコントローラに出力プリントへ望ましくない色ずれを生じさせる誤った決定をさせる場合がある。特に、コントローラは、実際の生産工程の変化ではなく雑音に起因して検知された変化に反応する場合がある。
【0015】
本開示は、所望される製品特性とシステムアクチュエータの形式上動作点との間の相関性を表す更新されたシステム制御モデルを用いて、特にシステム雑音の存在下での適切な制御行動を促進するための実験計画法(DOE)技術を用いる生産システム制御に関する。DOEのシステム識別機能は、適応制御ケイパビリティ及び周期的及び他の形態の雑音に対処する能力を提供するために、システムが動作している間に直接使用される。これらの技法は、カラー印刷製品の製造並びに他の静的システム、具体的には「オフライン」または空循環様モードが利用可能なシステムの制御に有用性を見出している。
【0016】
図1は、DOE技法を用いて文書処理システムモデルを更新するための例示的な一方法10を示し、図2は、ある例示的なタンデム多色文書処理システム100を示す。システム100及びそのシステムコントローラ122及びマーキングデバイス102は、システムモデル122bを更新するために、方法10に従って通常の印刷モード及び専用の較正または他のオフラインモードで運転されてもよい。コントローラ122は、ある実施形態において、モデル122bをオンボードで(例えば、コントローラのメモリに)、ルックアップ表(LUT)及び/または生産製品の1つまたは複数の所望される特性とアクチュエータの形式上動作点との関係性を記述するパラメトリックモデルのパラメータの何れかとして格納する。例えば、ある所定のカラー値について、モデル122bは概して、印刷文書において所望される色に最も近いものを達成すると思われるマーキングデバイス102またはシステム100の1つまたは複数のアクチュエータの対応する形式上動作点を含むことが可能である。
【0017】
システム100は、トナーマーキング材料をこの事例では感光体であってもなくてもよい中間基材104上へ転写するように個々に機能するこの事例では電子写真マーキングデバイスまたは印刷エンジン102である複数の生産リソースと、図中では電子写真マーキングデバイス102を通過して反時計回りの方向へ進む共用の中間転写ベルト(ITB)104とを含む。他の実施形態では、中間転写基材として円筒ドラムが用いられてもよく、マーキングデバイス102は、マーキング材料をドラムへ選択的に転写するためにドラム周縁の周りに位置合わせされる。さらに他の実施形態では、マーキングデバイス102はマーキング材料を最終的な印刷可能媒体108へ直に転写してもよい。
【0018】
図4も参照すると、例示的な各電子写真マーキングデバイス102は、ある色(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックまたはオレンジまたは紫等の1つまたは複数のスポットトナーまたは全域拡張カラー)のトナー画像を感光体上へ現像しかつ中間転写ベルト104の内側へ位置決めされたバイアス転写ローラ(BTR)102aを用いて中間転写ベルト104へ静電的に転写させる、転写前帯電サブシステム101e、現像サブシステム101f、転写前消去サブシステム101g、転写前破壊屑除去サブシステム101h、帯電サブシステム(例えば、後述する図8における帯電システム210)、露光サブシステム(例えば、後述する図8における露光システム220)及びクリーニングサブシステム(例えば、後述する図8におけるシステム260、270)等の様々な制御可能アクチュエータコンポーネントを備える感光体ドラム102bを含む。BTR102aは、デバイス102によってこの事例ではトナーであるマーキング材料を媒体102へ転写するために使用される転写電界を制御するために、フィールド強度制御アクチュエータ101aによって設定された転送フィールド値で動作する。転写前消去デバイス(PED)101gは、少なくとも部分的に感光体102bを放電する転写前露光デバイスであり、ADDコンポーネント101jはトナーの付着を減らすための感光体への添加剤分配デバイスを表し、かつ図4のDRDコンポーネント101hは、転写より前に感光体からキャリアビーズまたは他の大きい汚染物質を取り除くための破壊屑除去デバイスを表す。
【0019】
図3及び図5も参照すると、システム100は、図3に示されているように、6つのマーキングデバイス102等の任意の整数N個のマーキングデバイス102を含んでもよい。図5で分かるように、システム100は、マーキング材料の媒体104上への転写に関連づけられる動作パラメータを個々に調整するための対応する調整入力を有する様々なトナー状態調整アクチュエータを含み、この場合、マーキングデバイス102は個々にトナー状態調整アクチュエータのうちの少なくとも1つを含み、かつトナー状態調整アクチュエータのうちの1つまたはそれ以上はマーキングデバイス102のうちの特有の1つに関連していない。後述する図7及び図8のシステム400では、電子写真マーキングデバイス102内にトナー状態調整アクチュエータは存在せず、システムが作動できるのは例えば全てのマーキングデバイス102より外にある転写前デバイス101cのみであることは留意される。さらに、例示的なマーキングデバイス102は各々、マーキング材料の媒体104への転写に用いられる転写電界を制御する1つまたは複数の転送電界制御アクチュエータ101を含み、個々の転送電界制御アクチュエータはコントローラ122によって対応する信号または制御値で駆動される対応する転写電界制御入力を有する。
【0020】
また、システム100は、媒体供給装置から経路P1に沿って進む最終印刷媒体108(例えば、一実施形態では予め切断された用紙)の上側へITB104からマーキング材料を転写するためにITB経路の下側部分に沿ってマーキングデバイス102の下流に配置される転送コンポーネント106(図2)も含む。図2における転写ステーション106において印刷媒体108へトナーが転写された後、最終印刷媒体108は経路P1上の定着器型付着装置110へ供給され、転写されたマーキング材料はここで印刷媒体108へ定着される。
【0021】
システムコントローラ122は様々な制御機能を実行し、かつシステム100のデジタルフロントエンド(DFE)機能を実装してもよく、この場合、コントローラ122は、単一であれ、複数のコンポーネントにおける分散様式で実装されるものであれハードウェア、プロセッサ実行ソフトウェア、ファームウェア、プログラマブル論理またはこれらの組合せによる任意の適切な形式であってもよく、このような実装は全て、本開示の範囲に包含されることが企図されている。通常の印刷モードでは、コントローラ122は着信する印刷ジョブ118を受信し、かつ印刷ジョブ118に従ってマーキング材料を中間媒体104上へ転写するようにマーキングデバイス102を作動する。この場合、様々なシステムアクチュエータ101の動作点は、着信する印刷ジョブ118において画定される所望される製品特性に従ってシステムモデル112bの相関作用から導出される。
【0022】
システム100は、転送電界制御アクチュエータコンポーネント(例えば、BTR102a及び電界強度制御101a)の転写電界強度に対するトナーの転写または接着の関係性を調整または変えるために、様々なトナー状態調整アクチュエータを選択的に調整するためのコントローラ122へのフィードバックとして、現像システム101f及び/または転写前帯電デバイス101c及び/または露光システム(後述の図8における220)を限定なしに含むトナー状態検知技術及び他の検知技術を使用する。この点に関連して、システム100は、別個の、または個々の1つまたは複数のマーキングデバイスリソース102に関連づけられる1つまたは複数のセンサ160を含む。コントローラ122は、システム100の様々なアクチュエータ101への入力として提供されるアクチュエータ制御信号または値を生成する。後述する図5に示されているように、転写電界制御入力の例は、マーキングデバイス102に関連づけられる図4におけるBTR102a及び電界強度制御101a(例えば、転送ローラバイアス入力101a)に関連づけられる入力、並びに文書処理システムにおいてマーキング材料の媒体への転写に用いられる電界または磁界を制御または修正するために提供される他の任意の入力を含む。アクチュエータ入力の非網羅的なリストは、マーキング材料(例えば、トナー)分配速度調整入力(例えば、101b)、転写前帯電デバイス調整入力(例えば、101cであって、特有のマーキングデバイス102に関連づけられるか否かに関わらない)、トナー添加剤調整入力(例えば、101d)、転写前露光調整入力及び/または破壊屑除去デバイス入力(例えば、101g及び/または101hであって、マーキングデバイス102及び/または汎用システムアクチュエータに固有のアクチュエータに関連する)、トナーパージ入力(例えば、101i)、感光体への添加剤分配を制御する入力(例えば、101j)、1つまたは複数の音響転写アシスト入力(例えば、101k)及び/またはコントローラ122によってシステムアクチュエータ101へ提供される、1つまたは複数のマーキングデバイス102によりマーキング材料が転写される媒体104のマーキング材料転送状態に影響する他の任意の入力を含む。
【0023】
例示的なこのマーキングデバイス102は、コントローラ122へ入力信号または値を提供する、ドラム102bからITB104へ転写されていないマーキング材料(例えば、トナー)151の単位面積当たりの残留質量(RMA)を検知するためのBTR102a(図4)の下流側における光(例えば反射)センサ160a等の1つまたは複数のセンサ160と、単位面積当たりの現像されたトナー質量(DMA)を検知するためのBTR102aの上流にある任意選択のセンサ160bまたは媒体104上の単位面積当たりの転写質量を検知するためのBTR102aの下流にある任意選択のセンサ(例えば、光反射率センサ)160cとを含む。さらに、どのマーキングデバイス102からも分離されている、媒体104のマーキング材料転写状態を測定するための1つまたは複数のセンサ160が設けられてもよい。1つまたは複数のセンサ160は、マーキングデバイス102のトナー転写状態を導出できるトナー状態特性を測定または検知する任意のタイプが用いられてもよい。適切なタイプのセンサ160a、160b及び160cは、本開示の譲受人により所有される2005年3月31日に提出された米国特許第7,190,913号に記載されている。前記特許は、その全体が、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0024】
マーキングデバイス102の動作において、マーキング材料(例えば、図4における第1のデバイス102の場合のトナー151)はドラム102bへ供給される。中間媒体104の表面はドラム102bに隣接し及び/または接触していて、トナー151はバイアスされた転写ローラ102aに補助されて媒体104へ転写される。この場合、BTR102aは、ITB104がドラム102bと帯電された転写ローラ102aとの間に生成されるニップ103を通過するにつれてドラム102bからの反対に帯電されたトナー151をITB表面へ引きつけるためのBTR及びITB表面への帯電を含み、転写帯電はシステムコントローラ122によって作動されるバイアス制御101aによって制御される。トナー151は、理想的には、ニップ103を通過後も、これに続く図2及び図3における二次的な転写デバイス106及び定着器110を介する最終印刷媒体108への転送及び定着のためにITB104の表面上に留まる。
【0025】
マーキングデバイス102は、不完全な転写によって悪影響を受けることがあり、この場合、特に転写電界レベルが低いとBTR102aの下流側でドラム102b上に少量のトナー151が残る。例示的なセンサ106aはコントローラ122と機能的に接続され、かつドラム102b上に残る転写されていないトナー151の量を検知するためにドラム102bの下流側に近接して位置決めされる。但し、図示されている例は、センサ160aを、ドラム102bがニップ103を通過した後も残っているドラム表面上の所定の面積当たりの残留トナー151の質量を測定または検知する単位面積当たりの残留質量(RMA)センサとして提供している。デバイス102(または総じてシステム100)は、場合により、中間媒体104へ転写されるトナー151の量を検知するための転写質量/面積(TMA)センサ160c等の追加センサ160と、ニップ103の上流にあるドラム102b上へ供給されるトナー151の量を検知する現像質量/面積(DMA)センサ160bとを含むことが可能である。
【0026】
図2において最も良く分かるように、電子写真マーキングデバイス102は各々、コントローラ122の制御下で対応する色のトナー151〜154(例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K))を転写ベルト104へ転写する働きをし、この場合、ITB104によって遭遇される第1のデバイス102はイエロートナー151を提供し、次のデバイスはマゼンタトナー152を提供し、次はシアントナー153を提供しかつ最後のデバイス102はブラックトナー154を提供するが、2つ以上のマーキングデバイス102が設けられる他の編成及び構成も可能である。
【0027】
図3は、共用される、または共通の中間転写ベルト104に沿って構成される6つのマーキングデバイス102を有するシステム100を描いている。図3は、6つのマーキングデバイス102を先の図2に記されているような転写ステーション106、最終印刷媒体の供給装置108及び定着器110と共に有する上述の文書処理システム100の一実施形態を含む例示的なシステム100を示す。通常の動作では、印刷ジョブ118はコントローラ122において、スキャナ(不図示)等の内部ソースを介して及び/または1つまたは複数のネットワーク121及び関連のケーブリング120を介してシステム100へ接続される1つまたは複数のコンピュータ116等の外部ソースから、または無線ソースから受信される。印刷ジョブの実行は、選択されたテキスト、ライングラフィクス、画像、磁気インク文字認識(MICR)表記法、他を1枚または複数枚の用紙または他の印刷可能媒体108の表及び/または裏側面またはページへ印刷することを含んでもよい。この点に関連して、用紙の中には、特別な印刷ジョブ118に従って完全な白紙として残されるものがあってもよく、混合色及び白黒印刷を有するものがあってもよい。印刷ジョブ118の実行はさらに、仕上がった用紙をある順序に並べること、並びに用紙を指定通りに折り畳む、ホッチキスでとめる、穴を開ける、またはその他物理的に扱う、または束ねることを含んでもよい。ある実施形態では、システム100はスタンドアロンプリンタであっても、ネットワークで結ばれた、または論理的に相互接続されたプリンタのクラスタであってもよく、各プリンタはその固有の関連する印刷媒体ソースを有し、かつ最終コンポーネントは複数の最終媒体目的地、印刷消耗品供給システム及び他の適切なコンポーネントを含む。或いは、システムは、図10に示されているように、直列または並列(給紙と仕上げとの間の用紙経路が分離して平行している)の何れかで構成される共通の媒体供給装置108及び共通の仕上げ装置を有する複数のマーキングエンジン102から成ってもよい。並列配置には、マーキングエンジンのうちの1つまたはそれ以上が動作不可能であっても、残りの動作可能なマーキングエンジンで印刷を継続できるという優位点がある。
【0028】
図2図4及び図5において最も良く示されているように、個々のマーキングデバイス102は、マーキング材料151、152、153、154を中間基材104上へ転写するために用いられる転写電界レベルを設定するための転写電界制御入力101a、並びにマーキングデバイス102に関連づけられるRMA、TMA、DMA、他等のマーキング材料転写状態を検知する働きをする1つまたは複数のセンサ160を含む。1つまたは複数の調整入力101b−101kは、後述するように、印刷ジョブの実装または実験ランの設計の実行においてコントローラ122により選択的に作動される。図4及び図5の例において、コントローラ122により変更されることが可能なデバイス固有の調整入力は、マーキングデバイス102内のトナーとキャリアとの混合体の質量比に合わせて帯電を調整するためのトナー分配速度制御入力101bと、マーキングデバイス102内のトナー帯電状態を調整するための転写前帯電デバイス調整制御入力101cと、マーキングデバイス102のニップ領域103内の感光体転写電界を調整するための転写前消去デバイス制御入力101gと、転写ニップ領域103より前に大きい粒子を取り除くための転写前破壊屑除去デバイス調整制御入力101hと、かつ/またはマーキングデバイス102におけるトナー添加剤状態を調整するためのトナー添加剤状態調整制御入力101dとを含む。
【0029】
トナーパージストライプは、露光及び現像サブシステム101fを用いるものが使用されることが可能である。露光システムは、隣接するページに関連づけられる印刷パネル間の文書間ゾーンにおけるクロスプロセス方向にトナーパージストライプを生成するために、現像サブシステム101fと共に使用される。パージストライプは媒体104へ転写され、かつ最終的に媒体上のクリーナによって清浄化される。これらのストライプは、文書間ゾーンに印刷されることから用紙108へは転写されない。またマーキングデバイス102は、トナー帯電を増大させる現像サンプ内のトナー濃度(トナー対キャリア比)を下げるべくトナーをパージすることによってマーキングデバイス102のトナー使用年数及び/または濃度を調整するためのトナーパージ制御入力101i(図5)も提供する。ある代替実施形態において、トナーパージストライプは、カスタマ画像の印刷が一時的に中断されている、スキップされたピッチとして知られる専用サイクルの間に現像されてもよい。トナーのパージは、現像サンプ内へ新しいトナーを分配することによってトナー使用年数を減らす。古いトナーにおける表面スペーサ添加剤の締固めは、トナーの接着を増大させかつトナーの接着状態に悪影響を与える可能性がある。
【0030】
図6は、文書処理システム100内の複数のマーキングデバイスのうちの1つであることが可能な別の例示的なマーキングデバイス102を示す。図6のデバイス102は、感光体200(OPCとも称される)と、帯電ステーションまたはサブシステム210と、ラスタライズ出力スキャナ(ROS)等のレーザ走査デバイスまたはサブシステム220と、トナー蒸着/現像ステーションまたはサブシステム101fと、転写前ステーションまたはサブシステム240と、転写ステーションまたはサブシステム250と、プレクリーニングステーションまたはサブシステム260と、クリーニング/消去ステーション270とを含む。この実施形態では、感光体200はドラムであるが、ことによると他の形式の感光体が使用される可能性もある。感光体ドラム200は、上に静電荷が形成されることが可能な光伝導層204の表面202を含み、この層204は、暗闇では誘電体のように、かつ光に暴露されると導体のように行動する。光伝導層204は、シャフト208上で矢印209の方向へ回転するように取り付けられる円筒206上へ取り付けられ、または形成される。帯電ステーション210は、DCバイアスされたAC電圧を用いて感光体200を帯電させるバイアスされた帯電ローラ212を含む。バイアスされた帯電ローラ212は、シャフト218の軸を中心として回転するように取り付けられる鋼円筒または他の適切な物質等の内部円筒216上へ形成または取り付けられる1つまたは複数のエラストマ層215の表面を含む。
【0031】
レーザ走査デバイス220は、DOEモデル更新のための単一のアクチュエータとして、または包含されるアクチュエータのグループとして実装されることが可能である。デバイス220は、ダイオードレーザ等のレーザ224の出力を変調するコントローラ222を含み、コントローラ222の変調されたビームは、モータ228により回転される回転ミラーまたはプリズム226上を光らせる。ミラーまたはプリズム226は、変調されたレーザビームを帯電されたOPC表面202上へ反射し、変調されたビームがOPC表面202上へプリントされるべき画像の線221を形成できるOPC表面202をその幅に渡ってパンする。このようにして、トナー画像を受け入れるべきエリアを選択的に放電することにより、潜像が生成される。プリントされるべき画像の露光(描画)された部分はトナー蒸着ステーション101fへと進み、ここで画像の描画/放電された部分へトナー232が付着する。露光されて付着性トナーの付いた画像部分は、次に転写前ステーション240へ、かつ転写ステーション250へ進む。転写前ステーション240は、転送パフォーマンスを最適化するようにトナー及び感光体の帯電状態を調整するために使用される。転写ステーション250は、OPC200と共に中間転写ベルト媒体104上へ、方向116に進む媒体104上へトナー画像231を転写するためのニップ253を形成するように配置されるバイアスされた転写ローラ252を含む。バイアスされた転写ローラ252は、内部円筒256上へ形成または取り付けられる1つまたは複数のエラストマ層254を含み、ローラ252の長手軸に沿って延びるシャフト258上にローラ252が取り付けられる。バイアスされた転写ローラ252は高電圧電源によって供給されるDC電位を帯び、ローラ252へ印加される電圧は感光体表面202から媒体104へトナー画像231を引きつける。転写の後、OPC表面202はプレクリーニングサブシステム260へ、かつこの後クリーニング/消去サブステーション270まで回転し、ここでブレード272がOPC表面202から余分なトナーを掻き取り、かつ消去ランプ274がOPC表面上の静電荷を低減させる。
【0032】
本開示によれば、コントローラ122は、複数のラン124を含む実験123を自動的に実行して1つまたは複数の所望される試験製品特性に従った対応する試験製品107のセットを生産し、かつ試験製品の分析を用いてモデル122bを更新する。更新モードは、システム100がカスタマ向けの所望される製品も生産しながら試験製品(例えば、試験画像)を生成し得ることにおいて、通常の生産モードと同時的であることが可能である。この点に関連して、後述する図9に示されているように、コントローラ122は、非試験製品の生産を継続しながら媒体104、108のパネル内ゾーン(IPZ)または他のゾーン内に試験画像またはパッチ107を生成させることができる。代替として、もしくは組合せによって、DOEモデル更新オペレーションは通常の生産から分離して、例えば起動時、運転停止時、非/低生産期間中に実行されることも可能であり、かつ/またはコントローラ122は、オペレータによる要求時、周期的またはネットワーク接続を介する外部デバイスによる開始等の他の時点で調整モードに入って実験を実行してもよい。
【0033】
コントローラ122は、ある実施形態では、概して閉ループDOEモデル更新のための図1の方法10に従って動作する。図1の12において、コントローラ122は、(例えば、図2に示されているように、システム100の内部DOEデータストア122aから)実験123を取得する。実験は、2つ以上のラン124(例えば、図1の実験例1231におけるラン1からランnまで。但し、「n」は2以上の整数)に関する定義または仕様を含み、かつコントローラ122は予め決められた整数個の実験1231〜123iを記憶してもよく、iは正の整数である。ある実施形態において、ある実験123のラン124は、少なくとも1つのアクチュエータ101の動作点をアクチュエータ形式上動作点から偏らせる少なくとも1つの予め決められた摂動を画定し、各実験123の少なくとも2つのラン124は異なる既定の摂動を有する。このようにして、選択的な摂動は、生産された試験製品107における特定の1つまたは複数の特性に対する組み合わされた、または個々の影響を確定するようにシステムアクチュエータ101をエクササイズする。
【0034】
14(図1)において、コントローラ122はモデル122bから、所定の試験製品、この事例では所望される試験パッチ、の所望される特性に対応する形式上動作点を取得する。ある実施形態におけるこのような試験パッチの所望される特性は、純色量、明るさ/暗さ、ITB104上の位置、サイズ(工程方向に対する幅及び高さ)、他を含む。モデル122bは、2つ以上のシステムアクチュエータ101の各々について所望される試験パッチ特性に対応する1つまたは複数の形式上動作パラメータ(例えば、電圧、位置、方向、速度、他)を導出する、または取得するためのルックアップ表またはパラメトリック方程式及びパラメータを含み、ここで、パラメトリックモデルの実装は、アクチュエータ101へ提供されるこのような制御信号または値の各々について動作点の公式または方程式を解くことによって使用されることが可能であり、LUTの実装は、補間または外挿演算を用いて、または用いずに対応する動作点を見分けるためにコントローラがLUT122bをインデックスすることを含む。
【0035】
16(図1)において、コントローラ122は、モデルから取得された形式上動作点を用いて少なくとも1つの所望される試験製品特性に従った対応する試験製品107のセットを生産するために、対応するラン124を順次実行することによって実験123を自動的に実行する。但し、ある動作点はラン124において画定される摂動値によってオフセットされている。各ラン124において、コントローラ122は、少なくとも1つの所望される試験製品特性によって画定されるアクチュエータ形式上動作点に従ってマーキングデバイスリソース102に媒体(例えば、図2の中間媒体104または最終印刷物品108)上へ試験パッチ製品107を生産させるために、アクチュエータ101へアクチュエータ制御入力信号または値を提供し、各ラン124は1つまたは複数の対応する試験パッチ製品107を生産する。先に述べた通り、DOE実験123は、各ラン124が少なくとも1つのアクチュエータ101の動作点をアクチュエータ形式上動作点から偏らせる少なくとも1つの予め決められた摂動を有するように画定されるラン124を含み、かつ実験123の少なくとも2つのラン124は異なる既定の摂動を有する。
【0036】
18において、コントローラ122は、所望される試験製品特性のセンサ160からラン124において生産された試験製品107の測定値を取得する。
【0037】
20では、実験123の追加の反復が実行されるべきかどうかが決定される。さらなる反復は、例えば、後続の分析に、システム100における周期的または他のタイプの雑音を要素として組み入れさせるために、またはシステム100における空間的非一様性、他を考慮させるために行われることが可能である。(例えば、実験123のパラメータに記憶されている予めプログラムされた反復回数によって、またはセンサ160からのフィードバックを基礎とする検知された状態によって)さらなる反復が実行されるべきであれば、コントローラ122は、場合により、22において実験123のラン124の順序を変えても(シーケンスを変更しても)よく、プロセスは16へ戻って、先に述べたようにラン124を実行しかつ18において対応する新しい試験パッチ107のセットを測定する。ある実施形態では、コントローラ122は、実験123の異なる反復毎にラン124のシーケンスをランダム化してもよい。ある実施形態では、さらに、コントローラ122は、実験123の異なる反復毎に媒体104、108上の試験パッチ107の位置を、単独で、またはラン124のシーケンスの順序づけの変更と組み合せて変更する。ある実装においては、媒体104、108上の1つまたは複数の試験パッチ107のロケーションは実験123の摂動である。
【0038】
任意数のこのような反復は、20、22において、結果として得られる複数セットの試験パッチ製品107の測定を分析できるように各々が同じ所望される試験製品特性を用いて実行されることが可能である。指定数の反復が実行されると、プロセスは図1における24へ進む。
【0039】
24において、コントローラ122は、試験製品107のセット(または複数のセット)の検知された特性の分析を少なくとも1つの試験製品特性に対照させて実行する。この分析は、生産された試験パッチ特性の理想または所望される特性からの推定されるずれの大きさを決定する任意の適切な比較アルゴリズムまたは技法によって実行されることが可能である。
【0040】
26では、コントローラは分析を基礎としてモデル122bのパラメータまたはルックアップ表エントリの変化を推定し、かつ28において、推定された変化を予め決められたしきい値と比較する。推定及び分析に基づいて、1つまたは複数の推定されたモデルの変化が大きければ(例えば、対応するしきい値を超えていれば)(28における「はい」)、コントローラ122は30へ進んでより多い数のラン124を有するより完全な実験123を選択的に実行する。この実施形態では、コントローラ122は、迅速な初期DOE実験123(反復あり、または反復なし)を実行することができ、かつ必要とされれば、30において、例えばより多いアクチュエータ101の摂動による制御相関性を試験する、またはアクチュエータ101をより高い粒度でエクササイズする、等のために初回実験の結果を基礎としてより厳密な実験123を実行することができる。
【0041】
32では、実験が実行されると、コントローラ122は、完全に、または部分的に分析を基礎として、所望される製品特性と、アクチュエータ形式上動作点との間のモデル122bの相関性を選択的に更新する。
【0042】
図7及び図8は、上述のインループDOEモデル更新アプローチが、その幾つかはマーキングデバイス102に関連づけられかつ他は関連づけられない様々なアクチュエータのエクササイズを介して実装されることが可能である、別の例示的な多色文書処理システム400を示す。システム400は、複数の電子写真マーキングデバイス102と、ITB104としても動作する対応する感光体ベルト102bとを含み、用紙経路P1は左から右へ流れ、かつITB104は反時計方向へ進む。図8において最も良く示されているように、各デバイス102は、転写前消去とも称される転写前露光(PTE)101gを含む。システム400はさらに、転写前帯電101cと、破壊屑を除去するための破壊屑除去デバイス101h(例えば、図8において最もよく分かるハイブリッドエアナイフ)とを含む。転写前消去101gは、ある実施形態では、ベルト104が半透明である感光体の裏側にあってもよい。タンデムITBアーキテクチャでは、転写前消去101gは、好適には感光体ドラムの前面(透明ではない)にある。102aは、BTRではなく、媒体104の裏側に電荷を溶着することによって転写電界を生成するジコロトロンである。BTRの場合と同様に、電界は、ジコロトロン102a上の制御バイアスを調整することによって変えられることが可能である。感光体ベルトは、ジコロトロン102aによって転写電界が印加されるにつれてトナーを機械的に弛緩させるために、超音波周波数で振動される。システム400はさらに、音響転写アシストアクチュエータ101kを含む。音響転写アシストアクチュエータ101kは、ジコロトロン102aによって転写電界が印加されるにつれてトナーを機械的に弛緩させるために感光体ベルト104を超音波周波数で選択的に振動する働きをする。システム400は、タンデム配置帯電及び再帯電コンポーネント210、露光コンポーネント220及び現像装置101fを含むマーキングデバイス102を介して感光体ベルト104上にまず画像が構築されるイメージオンイメージ(IOI)型印刷システム400である。システム400は、構築された画像をベルト104から最終印刷媒体108へ転写するための各々転写前及び転写コンポーネント404(転写前消去、他)及び405、並びに印刷ジョブ118を受信するシステムコントローラ122も設けている。システム400は、定着器型付着装置110並びに各々クリーニング及び消去アクチュエータコンポーネント260及び270を含む。
【0043】
図9も参照すると、ある実施形態における実験123の実行は、試験パッチ107が非試験製品の生産を続けながら、または非製品の試験の間に媒体104、108のパネル内ゾーン(IPZ)または他のゾーン内に生産される類のものである。図9は、プリンタモデルの閉ループ実験計画法の場合の、画像パネルゾーン105が、試験パッチ107がマーキングされるパネル内ゾーンによって分離されている、図2及び図3のシステム(及び図7及び図8のシステム)における例示的な感光体ベルト104の一部を示す平面図である。例示的なこの感光体ベルト104は、ベルト104がマーキングステーション102を通過して工程方向104p沿いに移動するにつれてマーキングステーション102が潜像を生成する複数の画像パネルゾーン105を含み、図9の部分図には、3つの例示的なパネルゾーン105a、105b及び105cが示されている。パネル105は、感光体104の遠回りの長さに沿って任意数で画定されてもよく、その数は転写機構106(図2)へ供給される印刷基材108のサイズを基礎として動的に変わってもよいが、図示されているベルト104は、レターサイズの用紙基材108の場合で約11のこのようなゾーン105を含む。パネルゾーン105は、パネル内ゾーンIPZによって互いから分離される。図9には、2つの例示的なパネル内ゾーンIPZ1及びIPZ2が示されていて、IPZ1は、ベルトシーム104sを含むベルト104の一部内に画定されている。先に述べたように、DOEモデル更新オペレーションは通常の生産から分離して、例えば起動時、運転停止時、非/低生産期間中に実行されることも可能であり、及び/またはコントローラ122は、オペレータによる要求時、周期的またはネットワーク接続を介する外部デバイスによる開始等の他の時点で調整モードに入って実験を実行してもよい。
【0044】
図10は、生産ジョブ118を受信しかつ1つまたは複数の製品107を生産するためにコントローラ122からの信号に従って作動または動作され得る複数のリソース102、108、523〜525を用いて生産を実行するコントローラ122においてインループDOEモデル更新技法が使用され得る、別の例示的な生産システム100を示している。この点に関連して、「製品を生産すること」は、製品、オブジェクト、他の修正及び/または移動を含むことが可能である。システム100はさらに、システム100及びそのリソースを特徴づけるモデル122bを含む。例示的な生産システム100は、2つの供給ソース108a及び108bのうちの一方から印刷可能シート基材を供給する材料供給コンポーネント108と、複数の印刷またはマーキングエンジン102と、出力仕上げ装置ステーション523と、複数の双方向基材輸送/ルータアクチュエータコンポーネント524(図10において点線の円内に描かれている)を含むモジュラ基材輸送システムと、輸送システム524と仕上げ装置523との間に配置される1つまたは複数の出力センサ160とを含むモジュラ印刷システムであり、コントローラ122は様々なアクチュエータリソースを動作させるための制御信号を供給する。図示されているシステム100は4つの印刷エンジン102、102、102及び102を含んでいるが、任意数のこのようなマーキングエンジンが含まれてもよく、システム100はさらに、3つの双方向基材輸送経路525a、525b及び525cを有する多経路輸送ハイウェイを提供している。輸送アクチュエータコンポーネント524は、コントローラ122からの適切なルーティング信号によって、供給装置108からの個々の基材シートを(両面印刷のための反転の有無に関わらず)1つまたは複数のマーキングエンジン102を介して最終的にある印刷ジョブが出力製品107として提供される出力仕上げステーション523へ輸送する働きをする。さらに、印刷エンジン102の各々は、個々に局所的な二重ルーティング及び媒体反転に備えてもよく、かつコントローラ122からの信号を介して動作可能な単色または多色印刷エンジンであってもよい。
【0045】
記述しているインループDOE技法は、ひいては向上されたアクチュエータの意志決定に繋がる向上された誤差推定及び向上されたモデル感受性推定に起因して、様々な生産システムにおいて間違った制御行動を最小限に抑える、または緩和するために効果的に使用されることが可能である。印刷システムにおいて、これは、全体的な色の安定性を向上させることができる。ベルト現像質量サイン誘導(または相関)外乱の色制御に関連して、かつ例示を目的として印刷製品107の色特性が2つのアクチュエータU1及びU2によって調整され得ることを想定すれば、yは何らかの中間パッチレベル及び固体(よってyはベクトルである)または何らかの画質測度のレスポンスを表す。さらに、各レスポンスyは次の方程式に示されている多項式関数形式を有することを想定し、かつ例えば中間パッチトーンレベルは測定されているものとすれば、
【0046】
【数1】
である。
【0047】
但し、kはベルト104上の位置を示し、jはサンプル番号であり、A、B及びCは推定されるべき感度係数であり、ηjk及びεjkは各々ベルト現像質量サイン(非ランダム)及び不規則雑音である。次の方程式は、固体パッチの形式を表している(他のパッチは類似したものとなる)。
【0048】
【数2】
【0049】
下表1は、表示されている様々なアクチュエータ設定においてベルト回転当たりで取得された6つの測定値を示す(−及び+で示される2つのレベルの存在が想定されている)。この事例及び下表2の事例では、コントローラによって遮断実験が実装され、この場合、アクチュエータへ提供される制御入力信号または値は、周期的外乱がバイアスされたパラメータ推定を生成しないように防止すべく変更される。
【0050】
表1−モデル推定に与えるベルトサイン効果の推定に用いられるDOE設計マトリクス
【0051】
【表1】
【0052】
実際には、アクチュエータレベルはカレント形式上動作点を中心とする比較的小さい変動または摂動として考慮されることが可能である。摂動が十分に小さいものであれば、交差項(技術上一般に相互作用と称される)のない線形モデルが用いられてもよい。インループDOEは、通常の生産に使用するためのアクチュエータ設定点を決定できる適切なモデル122bを取得または更新するために、システム100をアクティブに探る。図示されているDOEは、ベルトサイン要素が適切な差分法によって排除され得るように配列されている。但し、「位置」は、ベルト104上の試験パッチ107の絶対位置を指す。

【0053】
まず、外部センサからのプライミング、カスタマの使用パターン及び/または一定の拍子の何れかによって測定サイクルが示される。反復データを基礎として部分的DOE(技術上、一般に一部実施要因法と称される)が実行されてもよく、システム応答がドリフトしているかどうか、及びシステムモデルのカレントパラメータがドリフトしているかどうかに関する決定が下される。パラメータがドリフトしていれば、DOEが完了されてもよく、かつ新しいアクチュエータ値がモデル122bを更新するために計算される。また、さらなるデータが繰り返し集められることから、システムに新しいアクチュエータ値が印加されるべきかどうかを決定するために統計的重要性に関する別の試験が実行される。このようにして、誤った制御行動が最小限に抑えられ、同時に制御システムによる真のシステムドリフトへの反応の良好な追跡が保持される。2回のベルト回転のみが用いられるとすれば、Aの不偏推定量に関して12測定値が存在し、Bの不偏推定量に関して12測定値、Cの不偏推定量に関して12測定値及びDの不偏推定量に関して12測定値が存在する。さらに、必要に応じて、純誤差推定量が実験ラン124の設計に組み込まれることが可能である。例えば、ベルト回転当たり僅か2つの読取りを追加するだけで、3自由度(DOF)を有するεjkの推定量を生じさせることができる。εjkの推定量は、精度を高めるために先行する推定量と一纏めにされることが可能である。この実験123を用いれば、ηjkの直接的推定も可能である。
【0054】
例えば、係数Aを推定するために、コントローラ122は、ラン1、2、5、9、10及び12のレスポンスを合計し、次にラン3、4、6、7、8及び11からのレスポンスを合計し、次に2つの合計の差を求めて12で除すことができる。DOE実験123の対称設計に起因して、ベルトサイン関連雑音の効果はモデル係数の推定から除去される。係数を知ることによって、コントローラ122は、パフォーマンスを向上させ、適切なアクチュエータ設定点を求めて直に(デッドビート)設定点、その設定点への開ループスルーまたはその設定点への閉ループ統合へと至りかつセットアップまたは診断ルーチンを開始するために、コントローラモデル122b(例えば、利得、構造)を更新することができる。
【0055】
アクチュエータ設定点の値を求めるに当たって、コントローラ122は、例えば測定値の数よりも少ないアクチュエータ101が存在する場合に使用されていれば、費用関数を最適化することもできる。測定は、単離、オーバーレイ及びTRCに沿った複数の点を含んでもよい。
【0056】
コントローラ122が複数の制御アクチュエータ101を用いて複数のレスポンスを同時に最適化することを求められる、より一般的な事例では、より一般的なモデルが次式によって表される。
【0057】
【数3】
【0058】
但し、下付き数字j及びkは明瞭さのために削除され、i=1,2,...,N、及びm=1,2,...,Mであり、Nはレスポンスの数であり、Mはアクチュエータ101の数である。yがレスポンスyの所望される標的値を指すものとすれば、これらは、コントローラ122がシステム100を起動する出力値である。アクチュエータuに所望される標的値があるとして、uがそれを指すものとすれば、次式は二次費用関数を示す。
【0059】
【数4】
【0060】
但し、ω及びωは各々、最適化において特定のレスポンスまたは入力を強調する、またはあまり強調しないために用いられる非負の加重値である。上述の2式を組み合わせると、次式になる。
【0061】
【数5】
【0062】
これは、アクチュエータ値が費用関数にどれだけ影響するかを明示するものである。次に、二次計画法からの技法を用いて費用関数が最適化され、最適アクチュエータ値がもたらされる。次式は、これを描いたものである。
【0063】
【数6】
【0064】
但し、=[u1,u2,...,um]はアクチュエータ値のベクトルであり、optは最適アクチュエータ値のベクトルである。これは、次式に描かれるように、アクチュエータ値に対する低位及び上位の制約を受ける。
【0065】
【数7】
【0066】
但し、L及びUは各々下限及び上限である。これは、アクチュエータ値に課される必要があるアクチュエータの飽和及び任意の許容限界を考慮している。
【0067】
先験的知識に依存して他の設計も可能であり、かつ係数は完全に再計算される必要はない。カレント推定には、過去の推定が加重を減らして包含されることが可能である。コントローラ122は、遅いアクチュエータ上で「%TC設定点」をブロックし、かつその効果を識別することができる。係数の値を求めた後は、コントローラ122はアクチュエータ設定点を直に計算することができる。しかしながら、新しい領域では、モデル122bが不正確であることがあり、よってさらなる反復が役立つ場合もある。
【0068】
別の例において、ベルトの1回転で8つの読取り値を得ることができれば、ベルト2回転の場合、コントローラ122は、次表2に示されているDOE実験123を、Aの不偏推定量に16測定値を与え、Bの不偏推定量に16測定値、Cの不偏推定量に16測定値及びDの不偏推定量に16測定値を与えるように構築することができる。この場合もやはり、DOE実験123における対称設計は、固定ベルトサインとは独立したモデルパラメータの推定を有効化する。さらに、上述の式に類似する方程式を用いて、レスポンス及びモデル変化の統計的重要性を決定し、推定量を計算しかつ必要であれば所望される出力を達成するために必要とされる制御行動を計算することができる。
【0069】
表2−2ベルト回転のみを用いてより良い推定サポートをもたらすDOE設計マトリクス
【0070】
【表2】
【0071】
本明細書に記述されるインループDOE技法は、効果的には、更新されたモデル122bを介する制御の時変生産工程への適応を促進し、この場合、DOE要素レベルはアクチュエータ101のカレント動作値に対する摂動として定義され、結果として得られるDOE回帰モデルは、システムを所望される出力へと駆動するためのアクチュエータ設定値の変化を画定するために使用されることが可能である。さらに、その要素レベルが感光体ベルトサイン等の周期的雑音ソースを中心にして対称であって、ベルト位置とは独立したモデルパラメータをもたらす特有のDOE実験設計123も使用されることが可能である。従って、インループDOE技法は、システムパラメータ変化及び外乱行動変化に適応することができ、かつ雑音処理特性も提供する。
【0072】
電子写真制御用に実装される場合、技法は現像サインを明確に考慮することができ、かつCUC(サイクルアップ収束)しきい値をオンザフライで決定するために使用されることが可能な残留誤差を推定することができ、この場合、このようなCUCしきい値はシステム100内部の固有雑音に適応してもよく、またはその関数であってもよい。さらに、本開示によるインループDOE技法は時間効率が良く、かつデータを最大限に利用して、摂動が生じた場合にサイクルアップの間またはランタイムの間にモデルパラメータの統計的に有効な推定量及び速い収束速度を提供する(デッドビート様行動が可能であり、またはアクチュエータは突然の色ずれを防止するようにスルーすることができる)。
【0073】
またインループDOE技法は、方形システム(出力がアクチュエータと同数)及び非方形システム(出力数がアクチュエータ数と異なる)の双方の多入力及び多出力システムに容易に対応する。さらに、技法は、入力及び/または出力(測定値、他)に対する制約及び重みペナルティを受けた最適作動を決定できることにおいて、特性及び性質をモデル予測制御(MPC)及び応答曲面最適化法(RSM)と共有する。さらに、インループDOEは、多くのアルゴリズムが可能である(例えば、全/一部実施要因法、中心複合計画、プラケットバーマン計画、他)ことから、ある状況に適しかつパフォーマンスと費用とのバランスに達するように設計されることが可能な多くの配置に対応する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10