【文献】
竹田朋弘、樋口健一,複数アンテナ受信時の上りリンクマルチアクセスにおける直交多元接続とMMSE-SICを用いた非直交多元接続のスループット特性比較,電子情報通信学会技術研究報告. RCS, 無線通信システム,2011年11月 9日,111(289),pp.215-220
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記差分情報生成手段は、予め複数の送信ウェイト変換行列の候補を備え、前記候補及び前記第1送信ウェイト行列の乗算結果と、前記第2送信ウェイト行列との差分が最小となる前記候補を差分情報として選択する、
請求項2に記載の無線通信基地局装置。
前記差分情報生成手段は、予め複数の送信ウェイト変換行列の候補を備え、前記チャネル推定値に前記候補及び前記第1送信ウェイト行列を乗算した結果を疑似チャネル行列とみなし、MMSE−SICに基づいて伝送容量を最大化するように決定された前記候補を差分情報として選択する、
請求項2に記載の無線通信基地局装置。
レイヤ数及び送信アンテナ本数に応じて異なる値となる送信ウェイト変換行列の候補に予め対応付けられたインデックスを備え、前記送信ウェイト変換行列を対応するインデックスに変換する差分情報変換手段を具備し、
前記送信手段は、前記差分情報として前記インデックスを送信する、
請求項2に記載の無線通信基地局装置。
前記差分情報生成手段は、前記チャネル推定値に位相成分を変数とする任意の送信ウェイト変換行列と前記第1送信ウェイト行列とを乗算した結果を擬似チャネル行列とみなし、MMSE−SICに基づいて伝送容量を最大化するように送信ウェイト変換行列を決定し、決定した前記送信ウェイト変換行列の対角成分の位相に、前記第1送信ウェイト行列の第1成分の位相を加えた位相回転量を差分情報として求める、
請求項7に記載の無線通信基地局装置。
前記差分情報生成手段は、予め複数の電力配分行列における干渉成分の補正係数を備え、前記チャネル推定値に前記候補及び前記第1送信ウェイト行列を乗算した結果を疑似チャネル行列とみなし、MMSE−SICに基づいて伝送容量を最大化するように決定された前記候補を差分情報として選択する、
請求項12に記載の無線通信基地局装置。
【背景技術】
【0002】
3GPP LTE(3rd Generation Partnership Project Long Term Evolution)では、双方向に送受信が可能な通信方式(デュプレックス)として、FDD(Frequency Division Duplex)とTDDの両方がサポートされている。FDDが上下リンクで異なるキャリア周波数帯を使用するのに対し、TDDは上下リンク共に同一のキャリア周波数帯を使用する。最近では、TDDを採用したTD−LTE(Time Division Long Term Evolution)の商用化を目指して試験サービスを開始するオペレータが増加してきている。
【0003】
TD−LTEのメリットとして、「上下リンクのトラヒック量に応じた柔軟な帯域幅の決定」、「チャネル推定のための参照信号を利用せずに、上下リンクの伝播チャネルを推定可能」などがある。一方、デメリットとして、「ガードタイム挿入による通信効率の低下」などがある。
【0004】
LTEは、空間分割多重MIMOについてもサポートしている。MIMOは、ユーザの多重方法により、SU(Single User)−MIMOとMU−MIMOに分類できる。SU−MIMOは、複数のアンテナを有する単一の基地局と、複数のアンテナを有する単一の端末とが複数の空間的なチャネルを同時に使用する技術である。一方、MU−MIMOは、複数のアンテナを有する単一の基地局と、複数のアンテナを有する複数の端末とが複数の空間的なチャネルを同時に使用する技術である。
【0005】
また、MIMOにはプリコーディング(pre-coding)という技術がある。これは、送信側と受信側とにおいて、それぞれ送信ウェイトと受信ウェイトを乗算し、各レイヤの受信SINR(Signal to Interference and Noise Ratio)もしくは合計スループット(伝送容量)が高くなるように、送受信側双方で指向性を形成する方法である。LTEでは、コードブック(codebook)基準のプリコーディングがサポートされている。コードブック基準とは、予め決められたプリコーディングウェイト行列のコードブック(候補)の中から最適なプリコーディングウェイト行列を選択して、そのインデックスであるPMI(Precoding Matrix Index)を受信側から送信側にフィードバックする方法である。
【0006】
TDDを用いたMIMOシステム(TDD−MIMO)では、上下リンクが同一周波数を使用するため、参照信号を利用することなく、チャネルの対称性を利用してチャネル情報を推定し、送受信ウェイトを生成できる。そのため、一般的には、MCS(Modulation and Coding Scheme)のためのチャネル品質指標CQI(Channel Quality Indicator)又はPMIなどの送受信ウェイトをフィードバックする必要がない。ただし、LTEでは、TDDモードの場合においても、CQI及びPMIをフィードバックしている。
【0007】
図1にTDD−MIMOシステムの概念図を示す。この図では、基地局のアンテナ本数がM本、端末のアンテナ本数がN
k本とする。
【0008】
TDD−MIMOシステムでは、上下リンクが同一周波数を使用するため、上下リンクのチャネルが対称の関係(上下リンクのチャネルを行列で表現する場合には、互いに転置の関係)となる。この性質を利用すれば、受信側で参照信号を利用し、その結果を送信側にフィードバックすることなく、送信側でチャネル情報を推定して送信ウェイト行列を生成することができる。
【0009】
LTEにおける上りリンクMIMOでは、伝送容量を増大させるために、SU−MIMO及びMU−MIMOをサポートしている。非特許文献1には、
図2に示すように、上りリンクMIMOにおけるコードブック基準のプリコーディングを用いるMIMOシステムが開示されている。プリコーディングにおける理想的(最適)な送信ウェイト行列は、チャネル行列H
kの共分散行列H
kHH
kの固有ベクトル(もしくは、H
kの特異ベクトル)になる。しかしながら、送信ウェイト行列情報をそのままフィードバックすることは、オーバヘッド量が増大することから現実的ではない。そのため、予め決められたプリコーディング行列のコードブックを用意し、基地局は端末に対して、コードブックの中から伝送容量が最大となるようプリコーディング行列を選択し、そのインデックス(PMI)をフィードバックしている。
【0010】
なお、TDDシステムでは、上下リンクのチャネルが対称になるため、PMIをフィードバックせず、基地局と端末それぞれが送受信ウェイトを推定できる。
【0011】
図3(a)、(b)及び(c)に、上りリンクにおけるPMIとプリコーディング行列の対応関係を示す。
図3(a)は送信アンテナ数2本、
図3(b)は送信アンテナ数4本、レイヤ数1、
図3(c)は送信アンテナ数4本、レイヤ数2の場合を示している。
図3(a)において、レイヤ(ランク)数Lとは、生成できる独立した空間チャネルを表している。一般的に、送信アンテナ本数がN
k、受信アンテナ本数がMの場合、L≦min{M,N
k}の独立した空間チャネル(レイヤ)を生成できることが知られている。レイヤ数は動的に変更できる。使用するプリコーディング行列及びPMIのフィードバックビット数は、レイヤ数及び利用可能な送信アンテナ数によって異なる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。ただし、実施の形態において、同一機能を有する構成には、同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0024】
(実施の形態1)
図4は、本発明の実施の形態1に係る無線通信端末装置(以下、「端末」という)100の構成を示すブロック図である。以下、
図4を用いて端末100の構成について説明する。
【0025】
誤り訂正符号化部101は、入力された情報データ(情報ビット)に誤り訂正符号化処理を施し、符号化ビット(システマチックビット及びパリティビット)を生成する。生成された符号化ビットはデジタル変調部102に出力される。
【0026】
デジタル変調部102は、誤り訂正符号化部101から出力された符号化ビットをデジタル変調し、変調シンボルに変換する。変換された変調シンボルはS/P変換部103に出力される。
【0027】
S/P変換部103は、デジタル変調部102から出力された変調シンボルをレイヤ毎の変調シンボルに並べ替えて、電力制御部104に出力する。
【0028】
電力制御部104は、S/P変換部103から出力されたレイヤ毎の変調シンボルにSU−MIMO基準の固有ベクトル(以下、「第1送信ウェイト行列」という)を乗算することを前提とした、注水定理(Water Filling Principal)に基づく電力配分をレイヤ毎の変調シンボルに対して行って、送信ウェイト乗算部105に出力する。なお、電力制御部104の詳細については後述する。
【0029】
送信ウェイト乗算部105は、電力制御部104から出力された変調シンボルに、第2送信ウェイト生成部109から出力された第2送信ウェイト行列を乗算し、空間多重して無線通信基地局装置(以下、「基地局」という)に送信する。
【0030】
フィードバック情報復調部106は、基地局から送信されたフィードバック情報を復調し、送信ウェイト変換行列インデックス(以下、「TMI:Transform Matrix Index」という)を取得し、取得したTMIに対応する送信ウェイト変換行列を第2送信ウェイト生成部109に出力する。なお、フィードバック情報復調部106の詳細については後述する。
【0031】
チャネル推定部107は、基地局から送信された参照信号からチャネル推定値(チャネル行列)を求め、求めたチャネル推定値を第1送信ウェイト生成部108に出力する。
【0032】
第1送信ウェイト生成部108は、チャネル推定部107から出力されたチャネル推定値から共分散行列を求め、求めた共分散行列を固有値分解して、SU−MIMO基準の固有ベクトル、すなわち、第1送信ウェイト行列を生成する。生成された第1送信ウェイト行列は第2送信ウェイト生成部109に出力される。なお、第1送信ウェイト生成部108の詳細については後述する。
【0033】
第2送信ウェイト生成部109は、第1送信ウェイト生成部108から出力された第1送信ウェイト行列に、フィードバック情報復調部106から出力された送信ウェイト変換行列を乗算し、第2送信ウェイト行列を生成する。生成された第2送信ウェイト行列は送信ウェイト乗算部105に出力される。
【0034】
次に、上述した電力制御部104の詳細について説明する。ここで、変換行列M
k,ij、第1送信ウェイト行列V
k(ms)とした場合、電力配分実施後の送信信号は次式(1)によって表される。
【数1】
【0035】
式(1)において、‖X‖
F={tr(XX
H)}
1/2、P
totalは各レイヤの合計送信電力である。また、電力配分行列P
kは次式(2)によって表される。
【数2】
【0036】
式(2)において、μは各レイヤの合計電力がP
totalになるように決定される値であり、Zは雑音電力と干渉電力の合計値である。また、A
+は、Aが正の数である場合はAとなり、Aが負の数である場合は0となる。
【0037】
次に、上述したフィードバック情報復調部106の詳細について説明する。フィードバック情報復調部106は、
図5に示す最大レイヤ(ランク)数が2の場合のTMIと送信ウェイト変換行列との対応表を有する。この対応表は基地局と共有しているものである。フィードバック情報復調部106では、
図5を参照して、基地局からフィードバックされたTMI
k,jと、別途通知されるRI(Rank Indicator)に含まれるランク数とから送信ウェイト変換行列M
k,ijを選択する。ここで、kは端末番号、iはランク数、jはTMIをそれぞれ表している。なお、
図5では、TMIを任意のランク数に対して0〜4(2bit)で表現している。
【0038】
次に、上述した第1送信ウェイト生成部108の詳細について説明する。
図6にTDD−MIMOにおけるSU−MIMOの概念図を示す。
図6では、基地局のアンテナ本数をM、端末kのアンテナ本数をN
k、基地局と端末間のチャネルをH
k、送信信号をs
k、基地局における受信信号をrで表している。
【0039】
端末の第1送信ウェイト生成部108で生成した上りリンクのSU−MIMO基準の第1送信ウェイト行列V
k(ms)Hは、端末において下りリンクのチャネル行列H
kTの転置行列H
kを特異値分解(もしくは共分散行列H
kHH
kを固有値分解)することにより求めることができる。
【数3】
【0040】
ここで、U
kは左特異ベクトル(受信ウェイト、)、Σ
kは固有値行列である。
【0041】
なお、基地局では、受信信号rに対して、上りリンクのチャネル行列H
kを固有値分解して得られるU
kを乗算することにより、所望信号が求まる。
【0042】
図7は、本発明の実施の形態1に係る無線通信基地局200の構成を示すブロック図である。以下、
図7を用いて基地局200の構成について説明する。
【0043】
チャネル推定部201は、端末100から送信された参照信号からチャネル推定値(チャネル行列)を求め、求めたチャネル推定値を第1送信ウェイト生成部202及び第2送信ウェイト生成部203に出力する。
【0044】
第1送信ウェイト生成部202は、チャネル推定部201から出力されたチャネル推定値から共分散行列を求め、求めた共分散行列を固有値分解して、SU−MIMO基準の固有ベクトル、すなわち、第1送信ウェイト行列を生成する。生成された第1送信ウェイト行列は送信ウェイト変換行列選択部204に出力される。
【0045】
第2送信ウェイト生成部203は、チャネル推定部201から出力されたチャネル推定値にIWFA(Iterative Water Filling Algorithm)を適用して、伝送容量が最大となる最適な第2送信ウェイト行列を生成し、送信ウェイト変換行列選択部204に出力する。
【0046】
送信ウェイト変換行列選択部204は、第1送信ウェイト生成部202から出力された第1送信ウェイト行列V
k(bs)と送信ウェイト変換行列M
k,ijとの乗算結果と、第2送信ウェイト生成部203から出力された第2送信ウェイト行列V
k(i)との差分を算出する。送信ウェイト変換行列選択部204は、全てのコードブックM
k,ijについて差分を算出し、算出した差分が最小となるM
k,ijを決定(次式(4)よりjを決定)して、TMI選択部205に出力する。なお、送信ウェイト変換行列選択部204は差分情報生成手段として機能する。
【数4】
【0047】
TMI選択部205は、
図5に示す最大レイヤ(ランク)数が2の場合のTMIと送信ウェイト変換行列との対応表を有し、送信ウェイト変換行列選択部204から出力されたM
k,ijに対応するTMI
k,jを選択し、選択したTMI
k,jを端末100に送信する。なお、TMI選択部205は差分情報変換手段として機能する。
【0048】
MIMO復調部206は、端末100から送信された信号にMMSE−SIC(Minimum Mean Square Error Successive Interference Cancellation)基準のMIMO復調を施し、MIMO信号をレイヤ毎の信号(受信変調シンボル)に分離する。分離されたレイヤ毎の受信変調シンボルはP/S変換部207に出力される。
【0049】
P/S変換部207は、MIMO復調部206から出力されたレイヤ毎の受信変調シンボルを直列の受信変調シンボルに並べ替えて、デジタル復調部208に出力する。
【0050】
デジタル復調部208は、P/S変換部207から出力された変調シンボルに対して、IQ平面上での領域判定を行い、軟判定ビットを生成して、誤り訂正復号部209に出力する。
【0051】
誤り訂正復号部209は、デジタル復調部208から出力された軟判定ビットに誤り訂正復号を行い、復号ビット(復調データ)を取得する。
【0052】
次に、基地局から端末へのフィードバック方法について
図8を用いて説明する。
図8において、ステップ(以下、「ST」という)301では、端末から基地局に参照信号S
k(R)を送信し、ST302では、基地局は、端末から送信された参照信号S
k(R)を用いて、上りリンクのチャネル推定を行い、チャネル推定値H
kを取得する。
【0053】
ST303では、チャネル推定値H
kを用いて第1送信ウェイト行列V
kを求め、ST304では、チャネル推定値を用いて第2送信ウェイト行列V
k(i)を求める。
【0054】
ST305では、第1送信ウェイト行列V
kと送信ウェイト変換行列M
k,ijとの乗算結果と、第2送信ウェイト行列V
k(i)との差分が最小となる送信ウェイト変換行列M
k,ijを選択し、選択した送信ウェイト変換行列M
k,ijに対応するTMI
k,jを選択する。
【0055】
ST306では、選択されたTMI
k,jを端末にフィードバックすると共に、参照信号を端末に送信する。
【0056】
ST307では、下りリンクの参照信号からチャネル推定値H
kTを求め、ST308では、チャネル推定値H
kTから共分散行列を求め、求めた共分散行列を固有値分解して、第1送信ウェイト行列V
k’を生成する。
【0057】
ST309では、第1送信ウェイト行列V
k’に、基地局からフィードバックされたTMI
k,jに対応する送信ウェイト変換行列M
k,ijを乗算し、第2送信ウェイト行列V
k”=M
k,ijV
k’を生成し、ST310では、送信データに第2送信ウェイト行列V
k”を乗算して、基地局に送信する。
【0058】
このように、TDDシステムにおける上下リンクのチャネルの相関性に基づき、相関性の高いSU−MIMO基準の第1送信ウェイト行列が基地局及び端末においてそれぞれ求められるので、MU−MIMO時の伝送容量を最大化するように決定された第2送信ウェイト行列と第1送信ウェイト行列との差分情報として送信ウェイト変換行列をフィードバックすることにより、フィードバック情報のオーバヘッドを低減することができる。また、送信ウェイト変換行列をTMIというインデックスに対応付けておき、TMIをフィードバックすることにより、フィードバック情報のオーバヘッドをさらに低減することができる。
【0059】
このように、実施の形態1によれば、基地局において、SU−MIMO基準の第1送信ウェイト行列に乗算することによって、MU−MIMO時の伝送容量を最大化するように送信ウェイト変換行列を決定し、決定した送信ウェイト変換行列に予め対応付けておいたTMIを端末にフィードバックし、端末において、基地局からフィードバックされたTMIに対応する送信ウェイト変換行列をSU−MIMO基準の第1送信ウェイト行列に乗算して、MU−MIMO時の伝送容量を最大化するように決定された第2送信ウェイト行列を生成し、送信データに第2送信ウェイト行列を乗算する。これにより、MU−MIMO時の伝送容量を最大化または増大化しつつ、送信ウェイトの生成に係るフィードバック情報のオーバヘッドを低減することができる。
【0060】
なお、本実施の形態では、送信ウェイト変換行列選択部204において、第1送信ウェイト行列V
k(bs)と送信ウェイト変換行列M
k,ijとの乗算結果と、第2送信ウェイト行列V
k(i)との差分が最小となるM
k,ijを決定する方法について示したが、本発明はこれに限らない。送信ウェイト変換行列選択部204は、例えば、基地局と端末k間のチャネルH
kに送信ウェイト変換行列M
k,ijと第1送信ウェイト行列V
k(bs)とを乗算した結果を擬似的なチャネル行列と見なして、伝送容量C
totalを計算する。そして、全てのコードブック行列M
k,ijについて伝送容量C
totalを計算し、その中で伝送容量が最大となるM
k,ijを決定してもよい(式(5)及び式(6)参照)。
【数5】
【数6】
【0061】
ここで、V
k(bs)は第1送信ウェイト行列、N
0は雑音の電力スペクトル密度である。
【0062】
また、本実施の形態において、第1送信ウェイト行列と第2送信ウェイト行列との間には相関があるため、変換行列をコードブック形式で表現する場合、無相関の場合と比較して、コードブック(候補)数を削減することができる。
【0063】
また、本実施の形態では、注水定理による電力配分は、チャネル行列H
kの固有値分解結果に基づくものとして説明したが、本発明はこれに限らず、チャネル行列と送信ウェイト変換行列との乗算結果H
kM
k,ijに基づいてもよい。この場合、固有値分解は次式(7)によって表される。
【数7】
【0064】
また、注水定理に基づく電力配分行列P
kは、次式(8)によって表される。
【数8】
【0065】
式(8)において、μは各レイヤの合計電力(次式(9)参照)がP
totalになるように決定される値である。
【数9】
【0066】
(実施の形態2)
図9は、本発明の実施の形態2に係る端末400の構成を示すブロック図である。以下、
図9を用いて端末400の構成について説明する。
図9が
図4と異なる点は、フィードバック情報復調部106をフィードバック情報復調部401に、第2送信ウェイト生成部109を第2送信ウェイト生成部403に変更し、位相回転行列推定部402を追加した点である。
【0067】
フィードバック情報復調部401は、基地局から送信されたフィードバック情報を復調し、位相回転量p
kを取得し、取得した位相回転量p
kを位相回転行列推定部402に出力する。なお、位相回転量p
kは、基地局と端末間で既知の信号(例えば、参照信号など)に乗算されているため、その既知信号の複素共役を乗算することにより、検出することができる。
【0068】
位相回転行列推定部402は、フィードバック情報復調部401から出力された位相回転量p
kと、第1送信ウェイト行列V
k(ms)の第1ベクトルの第1要素の位相φ
k,11(ms)との位相差φ
kを抽出する(次式(10)参照)。
【数10】
【0069】
ここで、第1送信ウェイト行列V
k(ms)とその第1ベクトルV
k,1(ms)は、以下の式(11)で表現できる。
【数11】
【0070】
位相回転行列推定部402は、位相差φ
kを各要素の位相とする位相回転行列(対角行列)Q
kを生成し(次式(12)参照)、生成した位相回転行列Q
kを第2送信ウェイト生成部403に出力する。
【数12】
【0071】
第2送信ウェイト生成部403は、第1送信ウェイト生成部108から出力された第1送信ウェイト行列V
k(ms)の各要素の位相に、位相回転行列推定部402から出力された位相回転行列Q
kを乗算し、第2送信ウェイト行列V
k(i)(=Q
kV
k(ms))を生成する。生成された第2送信ウェイト行列は送信ウェイト乗算部105に出力される。
【0072】
図10は、本発明の実施の形態2に係る基地局500の構成を示すブロック図である。以下、
図10を用いて基地局500の構成について説明する。
図10が
図7と異なる点は、第2送信ウェイト生成部203を削除し、送信ウェイト変換行列選択部204を送信ウェイト変換行列選択部501に変更し、TMI選択部205をフィードバック情報決定部502に変更した点である。
【0073】
送信ウェイト変換行列選択部501は、基地局500と端末間のチャネルH
kに送信ウェイト変換行列P
k,ijと第1送信ウェイト行列V
k(bs)とを乗算した結果を擬似的なチャネル行列と見なして、伝送容量C
totalを計算する。全てのコードブック行列P
k,ijについて伝送容量C
totalを計算し、その中で伝送容量が最大となるP
k,ijを決定(式(13)及び式(14)参照)して、フィードバック情報決定部502に出力する。なお、送信ウェイト変換行列選択部501は、差分情報生成手段として機能する。
【数13】
【数14】
【0074】
ここで、V
k(bs)は第1送信ウェイト行列、N
0は雑音の電力スペクトル密度である。
【0075】
フィードバック情報決定部502は、第1送信ウェイト生成部202から出力された第1送信ウェイト行列V
k(bs)の第1ベクトルV
k,lの第1要素の位相a
k,11に、送信ウェイト変換行列選択部501から出力された送信ウェイト変換行列P
k,ijの対角成分の位相θ
ijを加算し、位相回転量p
kを取得する(次式(15)参照)。
【数15】
【0076】
ここで、第1送信ウェイト行列V
k(bs)と、その第1ベクトルV
k,1は次式(16)で表される。ただし、式(16)において、Lはレイヤ数を表している。
【数16】
【0077】
位相回転量p
kは、既知信号(例えば、参照信号)に乗算されて、端末400にフィードバックされる。なお、フィードバック情報決定部502は、差分情報変換手段として機能する。
【0078】
次に、基地局から端末へのフィードバック方法について
図11を用いて説明する。
図11において、ST601では、端末から基地局に参照信号S
k(R)を送信し、ST602では、基地局は、端末から送信された参照信号S
k(R)を用いて、上りリンクのチャネル推定を行い、チャネル推定値H
kを取得する。
【0079】
ST603では、チャネル推定値H
kに全てのコードブック行列P
k,ijを乗算し、伝送容量が最大となる送信ウェイト変換行列P
k,ijを決定する。
【0080】
ST604では、第1送信ウェイト行列V
k(bs)と送信ウェイト変換行列P
k,ijとに基づいて、端末にフィードバックする位相回転量r
kを決定し、ST605では、位相回転量r
kを既知信号(例えば、参照信号など)に乗算して、端末にフィードバックする。
【0081】
ST606では、フィードバック情報を復調し、位相回転量r
kを取得する。
【0082】
ST607では、下りリンクの参照信号からチャネル推定値H
kTを求め、ST608では、チャネル推定値H
kTから共分散行列を求め、求めた共分散行列を固有値分解して、第1送信ウェイト行列V
k’を生成する。
【0083】
ST609では、第1送信ウェイト行列V
k’に位相回転量p
kを乗算し、位相回転行列Q
kを生成する。ST610では、第1送信ウェイト行列V
k’に位相回転行列Q
kを乗算し、第2送信ウェイト行列V
k”=Q
kV
k’を生成し、ST611では、送信データに第2送信ウェイト行列V
k”を乗算して、基地局に送信する。
【0084】
このように、実施の形態2によれば、基地局において、SU−MIMO基準の第1送信ウェイト行列に乗算することによって、MU−MIMO時の伝送容量を最大化するように送信ウェイト変換行列を決定し、決定した送信ウェイト変換行列の対角成分の位相にSU−MIMO基準の第1送信ウェイト行列の第1ベクトル第1要素の位相を加えた位相を端末にフィードバックし、端末において、基地局からフィードバックされた位相に基づいて、送信ウェイト変換行列を推定し、推定した送信ウェイト変換行列をSU−MIMO基準の第1送信ウェイト行列に乗算して、MU−MIMO時の伝送容量を最大化するように決定された第2送信ウェイト行列を生成し、送信データに第2送信ウェイト行列を乗算する。これにより、MU−MIMO時の伝送容量を最大化または増大化しつつ、送信ウェイトの生成に係るフィードバック情報のオーバヘッドを低減することができる。
【0085】
なお、本実施の形態では、基地局から端末へフィードバックする情報を位相回転量r
kとして説明したが、本発明はこれに限らず、
図12に示すように、位相回転量r
kを例えばπ/4毎に範囲分けして、各範囲に対応付けたインデックス(PRI:Phase Rotation Index)をフィードバックしてもよい。これにより、フィードバック情報のオーバヘッドをさらに低減することができる。
【0086】
また、本実施の形態では、位相回転行列の対角成分の位相及び振幅を全て同じ値に設定する。これにより、同一ユーザ内のユニタリ性を担保することができる。また、ユーザ間では、対角成分の位相を異なる値に設定する。これにより、マルチユーザダイバーシチ効果を改善し、伝送容量を向上させることができる。
【0087】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3では、送信ウェイト変換行列Mが対角行列であり、各成分の振幅が異なるものとする。ただし、各レイヤの合計電力がP
totalになるように設定されている。なお、本発明の実施の形態3に係る端末の構成は、実施の形態1の
図4に示した端末100の構成と同様であり、その詳細な説明は省略する。
【0088】
図13は、本発明の実施の形態3に係る基地局700の構成を示すブロック図である。
図13が
図7と異なる点は、第2送信ウェイト生成部203を削除し、送信ウェイト変換行列選択部204を送信ウェイト変換行列選択及びMMSE−SIC復調順序決定701に変更した点である。
【0089】
送信ウェイト変換行列選択及びMMSE−SIC復調順序決定部701は、MMSE−SIC基準の伝送容量(式(5)のC
totalに相当)が最大になるように復調順序と送信ウェイト変換行列を決定する。具体的には、送信ウェイト変換行列選択及びMMSE−SIC復調順序決定部701は、
図14に示すようなTMIと送信ウェイト変換行列の対応表を備えており、端末kの復調順序が早いほど、各レイヤに電力配分をより均等(M
24)に割り当てる送信ウェイト変換行列を選択し、端末kの復調順序が遅いほど、電力配分をより第1レイヤに割り当てる(M
11)送信ウェイト変換行列を選択する。選択された送信ウェイト変換行列はTMI選択部205に出力される。
【0090】
このように、実施の形態3によれば、実施の形態1における最適な送信ウェイト行列の選択による伝送容量の改善に加えて、異なる振幅の対角成分の送信ウェイト行列を用いるため、MMSE−SICによるMU−MIMOの復調順序の自由度を高めることができ、さらに伝送容量を高めることができる。
【0091】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4では、電力配分行列P
kにおける干渉成分の補正係数αをフィードバックする。ただし、各レイヤの合計電力がP
totalになるように設定されている。
【0092】
図15は、本発明の実施の形態4に係る端末800の構成を示すブロック図である。
図15が
図4と異なる点は、第2送信ウェイト生成部109を削除し、フィードバック情報復調部106をフィードバック情報復調部801に変更し、電力制御部104を電力制御部802に変更した点である。
【0093】
フィードバック情報復調部801は、基地局から送信されたフィードバック情報を復調し、電力配分行列の補正係数α
kを取得し、取得した補正係数α
kを電力制御部802に出力する。なお、補正係数α
kは、基地局と端末800間で既知の信号(例えば、参照信号など)に乗算されているため、その既知信号の複素共役を乗算することにより、検出することができる。
【0094】
電力制御部802は、S/P変換部103から出力されたレイヤ毎の変調シンボルに第1送信ウェイト行列を乗算することを前提とした、注水定理に基づく電力配分をレイヤ毎の変調シンボルに対して行って、送信ウェイト乗算部105に出力する。
【0095】
基地局における注水定理に基づく干渉成分を考慮した電力配分行列P
kは次式(17)によって表される。
【数17】
【0096】
電力制御部802は、フィードバック情報復調部801から電力配分行列補正係数α
kを受け取り、電力配分行列P
kを生成する。これをレイヤ毎の変調シンボルに乗算することにより、電力配分を実施する。
【0097】
図16は、本発明の実施の形態4に係る基地局900の構成を示すブロック図である。
図16が
図7と異なる点は、第2送信ウェイト生成部203及びTMI選択部205を削除し、送信ウェイト変換行列選択部204を電力配分行列補正係数決定部901に変更した点である。
【0098】
電力配分行列補正係数決定部901は、次式(18)により電力配分行列P
kにおける干渉成分の補正係数α
kを求める。
【数18】
【0099】
ここで、qはコードブックサイズ、βはMMSE−SICによるMIMO復調における干渉抑圧度を調整するパラメータである。SNR(Signal to Noise Ratio)は各端末の平均SNRである。例えば、コードブックサイズq=5、β=1の場合、α
kは次式(19)によって表される。
【数19】
【0100】
α
kの決定方法については、上記実施の形態と同様にMMSE−SICに基づく伝送容量を最大化するようα
kを選択する。
【0101】
なお、上記各実施の形態では、端末の総アンテナ本数が基地局のアンテナ本数Mよりも多くなる場合においても適用可能である。
【0102】
また、上記各実施の形態では、送信ウェイト変換行列を第1送信ウェイト行列に乗算するものとして説明したが、本発明はこれに限らず、送信ウェイト変換行列を第1送信ウェイト行列に加算してもよい。