(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5797585
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】二重容器
(51)【国際特許分類】
B65D 47/40 20060101AFI20151001BHJP
【FI】
B65D47/40 Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-43921(P2012-43921)
(22)【出願日】2012年2月29日
(65)【公開番号】特開2013-180775(P2013-180775A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2014年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】古澤 光夫
【審査官】
佐野 健治
(56)【参考文献】
【文献】
実開平04−132051(JP,U)
【文献】
米国特許第02017938(US,A)
【文献】
特開2000−016469(JP,A)
【文献】
特開2011−073770(JP,A)
【文献】
実公昭39−008593(JP,Y1)
【文献】
実開昭50−011956(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収納する充填空間を有する内層体と、該内層体を内側に収納するとともに該内層体との間に外気を導入する開口を有する外層体とを備え、内容物の注出口を有する注出キャップを該外層体の口部に装着した二重容器であって、
前記注出キャップは、前記注出口の周囲で前記口部の上部を覆う天壁と、前記天壁に一体連結され、前記口部を取り囲む周壁と、を備え、前記開口は、前記口部に形成された貫通孔であり、
前記注出キャップの内側に、前記注出口から前記充填空間に向けて延びる筒体を備えるホルダーを設け、
該ホルダーは、該筒体の内側に設けられる球面体と、該筒体の内周面に周方向に間隔をあけて配置され、該球面体を該筒体に沿って案内するとともにそれらの相互間に該球面体及び該筒体との間で内容物の流路を形成する複数本の縦リブとを備えることを特徴とする二重容器。
【請求項2】
前記ホルダーは、前記筒体の充填空間側の端部に、充填空間に向かうにつれて縮径し前記球面体と全周に亘って当接する傾斜壁を有する請求項1に記載の二重容器。
【請求項3】
前記縦リブは、前記球面体の前記注出口側の抜け止めとなる突起を有する請求項1又は2に記載の二重容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物の充填空間を有する内層体と、この内層体を内側に収納する外層体とを備え、内容物の注出口を有する注出キャップを外層体の口部に装着した二重容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化粧水などの化粧料やシャンプーやリンスあるいは液体石鹸、また食品調味料などを収納する容器としては、内容物の充填空間を有する内層体と、この内層体を剥離可能に収納するとともにその口部に内容物の注出口を有する注出キャップを備える外層体とからなり、例えば、外層体の胴部を押圧することで内容物を注出する一方、押圧解除後は胴部が復元し、内層体と外層体との間に外気を導入して内層体を減容できるようにした二重容器(デラミ容器とも言う)が知られている(例えば特許文献1参照)。この種の容器は、充填空間内の内容物と外気との置換を行うことなく内容物を注出することができるので、特に、外気との接触によって品質が低下するおそれのある内容物を収納する容器として好適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平7−22951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載された二重容器は、注出キャップ体の内側に内容物吐出弁を設けて、注出キャップ体の先端に設けられた注出口付近に、常時、内容物を存在させることで、容器本体の押圧によって内容物を素早く注出させることができ、併せて、押圧を停止するとその注出を直ぐに停止できるとするものであり、その結果、注出後の内容物の液だれを防止することもできる。しかしながら、注出口付近の内容物は、キャップ体の先端にかぶせたカバーキャップを取り外した状態では、外気に曝されたままとなってしまうため、カバーキャップの閉め忘れ等によっては、内容物の品質が低下するおそれがある。このため、内容物の注出後の液だれを抑制できるとともに、カバーキャップを取り外した状態でも、内容物が外気に曝されるおそれを極力低減することができる二重容器が求められていた。
【0005】
本発明の課題は、内容物と外気との接触を極力抑えることができ、また、内容物を注出した後の液だれを防止できる新規な二重容器を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、内容物を収納する充填空間を有する内層体と、該内層体を内側に収納するとともに該内層体との間に外気を導入する開口を有する外層体とを備え、内容物の注出口を有する注出キャップを該外層体の口部に装着した二重容器であって、
前記注出キャップは、前記注出口の周囲で前記口部の上部を覆う天壁と、前記天壁に一体連結され、前記口部を取り囲む周壁と、を備え、前記開口は、前記口部に形成された貫通孔であり、
前記注出キャップの内側に、前記注出口から前記充填空間に向けて延びる筒体を備えるホルダーを設け、
該ホルダーは、該筒体の内側に設けられる球面体と、該筒体の内周面に周方向に間隔をあけて配置され、該球面体を該筒体に沿って案内するとともにそれらの相互間に該球面体及び該筒体との間で内容物の流路を形成する複数本の縦リブとを備えることを特徴とする二重容器である。
【0007】
前記ホルダーは、前記筒体の充填空間側の端部に、充填空間に向かうにつれて縮径し前記球面体と全周に亘って当接する傾斜壁を有することが好ましい。
【0008】
前記縦リブは、前記球面体の前記注出口側の抜け止めとなる突起を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
注出キャップの内側に、注出口から充填空間に向けて延びる筒体を備えるホルダーを設け、ホルダーに、筒体の内側に設けられる球面体と、筒体の内周面に周方向に間隔をあけて複数本形成され、球面体を該筒体に沿って案内するとともにそれらの相互間に内容物の流路を有するリブを設けたので、内容物の注出に当たり容器を傾斜姿勢に変移させることによって注出口へ向けて変位した球面体が、注出後、元の位置に戻ることによって、注出口付近の内容物も一緒に充填空間内に引き戻すことができ、これにより液だれを防止することが可能となる。
【0010】
筒体の充填空間側の端部に、充填空間に向かうにつれて縮径し球面体と全周に亘って当接する傾斜壁を設ける場合は、充填空間内が外気に曝されないので、外気との接触に伴い内容物の品質が低下するおそれを極力抑えることができる。
【0011】
注出時に球面体が抜け落ちる不具合を防止するべく、縦リブの注出口側に突起を設けることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に従う二重容器の実施の形態を示す、起立姿勢の容器であって、容器の軸線を境として左側は断面図であり、右側は側面図である。
【
図3】
図1に示す容器を傾斜姿勢に変移させて内容物を注出する状態を示す図である。
【
図4】球面体50の変形例であって、(a)は2つの半球部分を、これらと同径となる円柱部分でつなげた球面体であり、(b)は2つの半球部分を、これらよりも小径となる円柱部分でつなげた球面体である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に説明する。
図1は、本発明に従う二重容器の実施の形態を示す、起立姿勢の容器であって、容器の軸線を境として左側は断面図であり、右側は側面図であって、
図2は、
図1に示すA−Aに沿う断面図であって、
図3は、
図1に示す容器を傾斜姿勢に変移させて内容物を注出する状態を示す図である。
【0014】
図1において、符号10は内容物を収納する充填空間Mを有する内層体である。内層体10は、薄肉の合成樹脂にて形成されていて、その胴部が押し潰されることで充填空間Mの減容が可能となっている。また、その上端部には、充填空間Mにつながる上部開口11を備えている。
【0015】
符号20は、本発明の二重容器の外殻を形成する外層体である。外層体20は、その内側の空間に内層体10を剥離可能に設けている。また、外層体20の口部21の外周面には、図示の例ではねじ部22を設けている。外層体20は、図示は省略するが、例えば外層体20の底部に設けられる、内層体10と外層体20とを接合したピンチオフ部に形成される底割れ状のスリットや、
図1に二点鎖線で示すように、口部21を貫通する貫通孔(以下、これらのスリットや貫通孔を開口23という)を備えていて、この開口23を通して外気を内層体10と外層体20との相互間に導入することができる。
【0016】
符号30は、外層体20に装着されて充填空間M内の内容物を注出する注出キャップである。注出キャップ30は、その上部に内容物の注出口31を形成する注出筒32を有し、この注出筒32と一体連結するとともに外層体20の口部21を覆う天壁33を備えている。なお、注出口31は、天壁33を直接貫通させて設けた貫通孔であってもよい。また、天壁33の外周縁には、口部21を取り囲む周壁34を一体連結していて、周壁34の内周面には、ねじ部22に対応する被ねじ部35を設けている。これにより注出キャップ30は、外層体20に対して着脱可能に保持されている。なお、ねじ部22及び被ねじ部35に代えて、注出キャップ30をアンダーカットで保持するようにしてもよい。また、天壁33の裏面には、注出筒32の内周面に連続する環状体36を設けている。
【0017】
符号40は、注出キャップ30の内側に設けられるホルダーである。ホルダー40は、注出口31から注出筒32を介して充填空間Mに向けて延びる筒体41を備えている。筒体41は、上部開口11を覆う頂壁42に一体連結されていて、外層体20の口部21と注出キャップ30の天壁33との間で挟持される。また、頂壁42の裏面には、内層体10に当接して内容物の漏れ出しを阻止する環状のシール壁43を備えている。ここで、筒体41の上部には、環状体36が挿入されていて、これによりホルダー40は、注出キャップ30に位置決めされている。
【0018】
筒体41の内周面には、周方向に間隔をあけて配置され、この筒体41の軸線に沿って延びる複数本の縦リブ44が設けられている。本実施の形態においては、
図2に示すように、4本の縦リブ44を周方向に均等な角度で配置していて、これらの縦リブ44の相互間には、隙間45が形成されている。さらに、
図1に示すように、縦リブ44は、注出口31側に、半径方向内側に向けて突出する突起46を備えている。
【0019】
また、筒体41は、充填空間M側の端部に、充填空間に向かうにつれて縮径する円錐状の傾斜壁47を備えている。そして、傾斜壁47の充填空間M側の端部は開口して、注出口31につながる注入口48を形成している。
【0020】
符号50は、金属製又は合成樹脂製であって、筒体41の内側に設けられる球面体である。本明細書において球面体50とは、
図1〜
図3に示すように球形状のものに限られず、
図4(a)に示すように、2つの半球部分51をこれらと同径となる円柱部分52でつなげた形状となるものや、
図4(b)に示すように、2つの半球部分51を、これらよりも小径となる円柱部分53でつなげた形状となるものも含み、筒体41の内側に設けられた際、この筒体41の軸線方向の両端部が球面形状となるものを意味する。球面体50は、
図1に示すように、外層体20の起立姿勢では、それ自身の自重によって傾斜壁47に全周に亘って当接している。
【0021】
符号60は、注出キャップ30の周壁34にヒンジhを介して連結する蓋体である。蓋体60の外周面には、ヒンジhと反対側に摘みTを備えている。また、蓋体60の内側には、注出口31を封止する環状の蓋体シール壁61を設けている。なお、蓋体60は、注出キャップ30にねじ止めされるスクリュータイプの蓋体や、アンダーカットで係止される蓋体であってもよい。
【0022】
上記のように構成される二重容器は、上述したように、外層体20の起立姿勢において、球面体50が全周に亘って傾斜壁47に当接しているので、充填空間M内の内容物が筒体41内の外気に接触する不具合を有効に防止することができる。
【0023】
また、内容物を注出するに当たっては、
図3に示すように容器を傾斜姿勢に変位させる。この時、球面体50は、縦リブ44によって部分的に支持されることになるので、注出口31側へ移動する際の抵抗が少なくなり、途中で止まることなく突起46に当たるまで案内させることができる。そして、注入口48を通過した充填空間M内の内容物は、隣り合う縦リブ44の相互間に形成される隙間45、球面体50、及び筒体41で形成される流路を通して、注出口31から外界へ注出される。なお、内容物の注出は、内容物の粘度によっては、外層体20の胴部を押圧、復元させることなく、傾斜姿勢に変位させるだけで注出することができる。そして、内層体10は、外層体20に剥離可能に設けられている上、内層体10と外層体20との相互間には、開口23を通して外気が導入されるので、内容物の注出に伴い内層体10を減容させることができる。
【0024】
そして注出後は、
図3に示す容器を、
図1に示す起立姿勢に変位させる。そして縦リブ44によって移動時の抵抗が減らされた球面体50は、それ自身の自重によって元の充填空間M側に変位するので、注出口31付近の内容物を充填空間M内に引き込むことができ、注出口31からの液だれを防止することが可能となる。
【0025】
なお、球面体50として、
図1に示す球形状のものを合成樹脂で形成するに当たっては、金型構成上、その中央にパーティングラインが形成されて段差が生じ、傾斜壁47と接触した際、球面体50と傾斜壁47との間に隙間が生じるおそれがある。そして、このような場合は、例えば研磨等によって、この段差を取り除くことが可能であるところ、球面体50として、
図4(a)、(b)に示すような形状にして、それらの両端部の半球部分51は、球面体50の軸線に沿って上下に移動する金型で形成し、円柱部分52、53は、球面体50の軸線に直交する向きに移動する金型で形成することで、上記のような研磨作業を行うことなく、隙間が生じるおそれを回避することができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明によれば、充填空間内の内容物と外気との接触を抑制することが可能であり、さらに、内容物を注出した後はバックサクション機能を発揮させて内容物を充填空間内に引き戻すことができるので、注出口からの液だれも防止することができる、使い勝手のよい二重容器を提供できる。
【符号の説明】
【0027】
10 内層体
20 外層体
23 開口
30 注出キャップ
31 注出口
40 ホルダー
41 筒体
44 縦リブ
46 突起
47 傾斜壁
50、50A、50B 球面体
M 充填空間