(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
各鏡板にスクロールラップが突出して設けられる、固定スクロールと可動スクロールとが、互いの前記スクロールラップを噛み合わせるように対向配置され、両スクロールの前記鏡板と前記スクロールラップとにより膨張室が形成され、前記膨張室に蒸気が供給されるスクロール形流体機械であって、
前記可動スクロール及び前記固定スクロールの少なくとも一方の前記鏡板に蒸気加熱器を備え、
前記蒸気加熱器に蒸気が供給されて前記膨張室内の蒸気を加熱した後に、前記蒸気加熱器内の蒸気が前記膨張室に供給され、
前記蒸気加熱器は、蒸気が通過する蒸気通路が形成され、前記蒸気通路がオリフィスを介して前記膨張室に連通されるとともに、前記蒸気通路の途中部が凝縮水通路によって前記オリフィスと連通される
スクロール形流体機械。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、作動媒体の液相としての水を膨張室のシール及び潤滑に用いるとともに出力を増加させるスクロール形流体機械の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1においては、各鏡板にスクロールラップが突出して設けられる、固定スクロールと可動スクロールとが、互いの前記スクロールラップを噛み合わせるように対向配置され、両スクロールの前記鏡板と前記スクロールラップとにより膨張室が形成され、前記膨張室に蒸気が供給されるスクロール形流体機械であって、前記可動スクロール及び前記固定スクロールの少なくとも一方の前記鏡板に蒸気加熱器を備え、前記蒸気加熱器に蒸気が供給されて前記膨張室内の蒸気を加熱した後に、前記蒸気加熱器内の蒸気が前記膨張室に供給され
、前記蒸気加熱器は、蒸気が通過する蒸気通路が形成され、前記蒸気通路がオリフィスを介して前記膨張室に連通されるとともに、前記蒸気通路の途中部が凝縮水通路によって前記オリフィスと連通されるものである。
【0008】
請求項2においては、前記蒸気通路は、中心部に前記オリフィスが配置される渦巻き状に形成され、その外周部に蒸気供給口が配置されるものである。
【0009】
請求項3においては、前記蒸気通路は、前記鏡板における平面視で前記蒸気加熱器が設けられた前記鏡板の前記スクロールラップと重複する位置に配置されるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
請求項1に係る発明によれば、膨張室内で膨張することにより温度が低下した蒸気を膨張室に供給される前の高温の蒸気によって再び加熱することができる。これにより、スクロール形流体機械の出力が増大する。
【0012】
また、固定スクロールと可動スクロールとの少なくとも一方に設けられる蒸気加熱器に供給された蒸気をそのまま膨張室に供給することができるので配管が容易になる。
【0013】
また、膨張室内の蒸気と蒸気加熱器内の蒸気との間で熱交換が行われる。そして、蒸気加熱器内で凝縮して生じた水をオリフィスによって吸引して膨張室内へ供給することができる。これにより、蒸気が供給された直後の膨張室内の摺動部分に液膜が生成されて膨張室のシール性及び潤滑性が維持される。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、膨張室内の蒸気温度が最も低下している固定スクロールの外縁部分から高温の蒸気を供給することができる。これにより、膨張室内の蒸気が効率的に加熱されて出力が増加する。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、スクロールラップを重点的に加熱することができる。これにより、スクロールラップが放熱フィンの役目をはたして膨張室内の蒸気が効率的に加熱されて出力が増加する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
【0018】
まず、本発明の一実施形態に係るスクロール形流体機械を備えたランキンサイクル発電システム100の構成について
図1を用いて説明する。
【0019】
ランキンサイクル発電システム100は、作動媒体を水(蒸気)とするスクロール形流体機械を膨張機として用いて発電機3を駆動する。
図1に示すように、ランキンサイクル発電システム100は、スクロール形流体機械1と、発電機3と、蒸気発生器4と、作動媒体供給ポンプ6と、凝縮器8とを具備する。
【0020】
スクロール形流体機械1は、作動媒体通路2を介して蒸気発生器4から作動媒体として高温高圧の蒸気が供給される。スクロール形流体機械1は、供給された蒸気を作動媒体として発電機3を駆動して発電を行う。蒸気発生器4は、作動媒体通路5を介して作動媒体供給ポンプ6から水が供給される。作動媒体供給ポンプ6は、作動媒体通路7を介して凝縮器8によって蒸気を凝縮させて生じた水を吸引する。凝縮器8は、作動媒体通路9を介してスクロール形流体機械1の膨張室Cから排出された蒸気が供給される。
【0021】
このような構成のランキンサイクル発電システム100において、スクロール形流体機械1は、蒸気発生器4によって発生された高温高圧の蒸気のエネルギーを回転力に変換して発電機3を駆動する。スクロール形流体機械1から排出された蒸気は、凝縮器8によって水に凝縮された後に蒸気発生器4によって再び高温高圧の蒸気としてスクロール形流体機械1に供給される。
【0022】
以下では、本発明の一実施形態に係るスクロール形流体機械1の構成について、
図2を参照して説明する。なお、
図2中の白矢印は、作動流体である蒸気の流れ方向を示している。
【0023】
スクロール形流体機械1は、高温高圧の蒸気のエネルギーを回転動力に変換して出力する膨張機である。
図2(a)に示すように、スクロール形流体機械1は、主に固定スクロール11と、可動スクロール14と、クランク軸15とを具備する。
【0024】
固定スクロール11は、膨張室Cを構成する部材である。固定スクロール11は、鏡板11aと、鏡板11aの一側板面に形成される鏡板11aの中心から、端部に向かう渦巻き状の仕切り板(以降、固定スクロールラップ11bという)からなる。固定スクロールラップ11bは、いわゆるインボリュート曲線に基づいて形成されている。固定スクロール11は、後述の可動スクロール14と組み合わされて膨張室Cを構成する。固定スクロール11は、クランク軸15を支持しているフレーム16に固定されている。固定スクロール11の外縁部には、蒸気排出口11cが設けられている。蒸気排出口11cは、作動媒体通路9を介して凝縮器8が接続される。
【0025】
蒸気加熱器12は、膨張室C内の蒸気を加熱する。
図2(a)及び
図2(b)に示すように、蒸気加熱器12は、固定スクロール11の鏡板11aの他側板面に設けられる。蒸気加熱器12は、固定スクロール11の鏡板11aと、加熱器仕切り板12aと、加熱器カバー13と、を具備する。加熱器仕切り板12aは、鏡板11aの他側板面に鏡板11aの中心部から外縁部に向かう渦巻き状に形成される。加熱器仕切り板12aの反鏡板側の端面は、加熱器カバー13によって覆われている。これにより、蒸気加熱器12は、加熱器仕切り板12aと加熱器カバー13とから渦巻き状の蒸気通路12bが構成される。加熱器仕切り板12aは、鏡板11aにおける平面視で固定スクロールラップ11bと固定スクロールラップ11bとの間に形成される。すなわち、蒸気通路12bは、鏡板11aにおける平面視で固定スクロールラップ11bと重複する位置に配置される。
【0026】
蒸気加熱器12は、その中心部の鏡板11aに固定スクロール11の鏡板の一側板面(膨張室C側)と他側板面(蒸気加熱器12側)とを連通するようにしてオリフィス12cが形成される。すなわち、蒸気加熱器12は、オリフィス12cを介して膨張室Cと連通される。オリフィス12cは、蒸気加熱器12側から膨張室C側にむけて縮径するように構成される。加えて、オリフィス12cの途中部は、鏡板11aに形成される凝縮水通路11dを介して蒸気通路12bの途中部に連通される。つまり、オリフィス12cに蒸気加熱器12側から膨張室C側に流体(蒸気)が流れるとベンチュリ効果によりオリフィス12c部分の圧力が蒸気加熱器12内の圧力よりも低くなるように構成される。
【0027】
凝縮水通路11dは、蒸気加熱器12(固定スクロール11)の外縁部から蒸気加熱器12の中心部にあるオリフィス12cに向かうようにして形成される。凝縮水通路11dは、近接している蒸気通路12bの少なくとも一箇所以上と連通される。即ち、凝縮水通路11dと蒸気通路12bの間に連通孔が、半径方向で所定間隔をあけて複数開口されている。蒸気加熱器12は、外縁部の蒸気通路12b端部に蒸気供給口12dが形成される。蒸気供給口12dには、作動媒体通路2を介して蒸気発生器4が接続される。
【0028】
可動スクロール14は、膨張室Cを構成する部材である。可動スクロール14は、鏡板14aと鏡板の一側板面に形成される渦巻き状の仕切り板(以降、可動スクロールラップ14bという)からなる。可動スクロールラップ14bは、いわゆるインボリュート曲線に基づいて形成される。可動スクロール14は、固定スクロール11と対向するように配置されている。より詳細に説明すると、可動スクロール14は、固定スクロールラップ11bの隙間に対向する可動スクロールラップ14bが挿入され、互いに組み合わされた状態で配置されている。固定スクロール11は、可動スクロール14の鏡板14aの一側板面と、これに対向する固定スクロールラップ11bの端面との間に微小隙間が生じるように配置される。同様に、可動スクロール14は、固定スクロール11の鏡板11aの一側板面と、これに対向する可動スクロールラップ14bの端面との間に微小隙間が生じるように配置される。
【0029】
クランク軸15は、端部に偏心軸(以降、ピン部15aという)が形成された部材である。ピン部15aは、クランク軸15対して偏心しているため、クランク軸15の外周を公転するように構成される。クランク軸15は、フレーム16によって回転自在に支持される。ピン部15aは、可動スクロール14の鏡板14aを軸受部17介して支持している。従って、ピン部15aは、可動スクロール14の旋回運動に伴ってクランク軸15の外周を公転する。すなわち、可動スクロール14の旋回運動によってクランク軸15が回転される。
【0030】
次に、
図3を用いて、ランキンサイクル発電システム100における作動媒体(水)の相変化について説明する。
【0031】
図3は、本実施形態におけるT−S線図(温度−エントロピ線図)である。図中における矢印は、作動媒体である水又は蒸気のランキンサイクルを示している。
【0032】
図3に示すように、温度T1は、凝縮器8の入口温度、温度T2は、蒸気温度である。点A1は蒸気発生器4の入口(凝縮器8の出口)における作動媒体の状態である。点A2は蒸気発生器4内での蒸気発生開始点である。点A3は蒸気発生器4の出口(スクロール形流体機械1の供給口)における作動媒体の状態である。点A4はスクロール形流体機械1の蒸気排出口11c(凝縮器8の入口)における作動媒体の状態である。
【0033】
点A1から点A2の間において、作動媒体は、液相である水として存在し、蒸気発生器4によって加熱及び加圧される。そして、点A2の状態において作動媒体は、水から気相である蒸気への相変化を開始する。
【0034】
点A2から点A3の間において、作動媒体は、蒸気発生器4によってさらに加熱及び加圧される。この間において、作動媒体は、液相である水と気相である蒸気とが混在している。作動媒体は、点A3の状態において蒸気への相変化が完了される。点A3から点A4の間において、作動媒体は、スクロール形流体機械1の膨張室C内において膨張しながら仕事(可動スクロール14の旋回)をする。膨張室C内における作動媒体の膨張は、近似的な断熱膨張であることから作動媒体の温度が低下する。この間において、作動媒体の一部は、凝縮して気相である蒸気から液相である水への相変化を開始する。
【0035】
点A4から点A1の間において、作動媒体は、凝縮器8によって冷却され、一定圧力の状態で凝縮する。この間において、作動媒体は、気相である蒸気から液相である水への相変化を開始する。この結果、作動媒体は、点A1の状態において液相である水への相変化が完了される。
【0036】
次に、
図4を用いて、可動スクロール14の動作態様を説明する。具体的には、供給された蒸気によって可動スクロール14が旋回運動を行なう態様について説明する。なお、図中の矢印は、可動スクロール14の旋回方向を示している。また、図中の斜線部は、供給された蒸気を示している。
【0037】
図4(A)は、固定スクロール11と可動スクロール14で構成される膨張室Cに蒸気が供給された状態を示している。ここで、膨張室Cとは、固定スクロール11と可動スクロール14の鏡板11a・14aの板面、及び固定スクロールラップ11bの側面と可動スクロールラップ14bの側面とが接触して構成される空間(蒸気が閉じ込められている空間)である。膨張室Cには、蒸気加熱器12からオリフィス12cを介して蒸気が供給される。
【0038】
図4(B)は、固定スクロール11に対して可動スクロール14が
図4(A)の状態から旋回した状態を示している。可動スクロール14は、蒸気の膨張により、可動スクロールラップ14bが接触している固定スクロールラップ11b上の位置が固定スクロールラップ11bにそって固定スクロール11の外縁部に向かうように移動される。つまり、可動スクロール14は、膨張室Cに供給された蒸気が膨張し、該膨張室Cを押し広げようとする力によって旋回される。これにより、可動スクロール14は、回転軸Lを中心として旋回される。この際、蒸気は膨張に伴って温度が低下する。可動スクロール14の移動に伴い、膨張室Cに連通している蒸気加熱器12のオリフィス12cは、可動スクロールラップ14bの端面によって閉塞される。すなわち、膨張室Cは密閉される。
【0039】
図4(C)は、固定スクロール11に対して可動スクロール14が
図4(B)の状態から更に旋回した状態を示している。可動スクロール14は、膨張室Cに供給された蒸気がさらに膨張し、該膨張室Cを押し広げようとする力によって旋回される。膨張室Cは、可動スクロールラップ14bが接触している固定スクロールラップ11b上の位置の移動により、その体積を増加させながら外縁部に向かって連続的に移動される。これにより、可動スクロール14は、回転軸Lを中心としてさらに旋回される。この際、蒸気はその膨張に伴って更に温度が低下する。可動スクロール14の移動に伴い、固定スクロール11の中心部に、別途の膨張室Cが構成される。別途の膨張室Cは、オリフィス12cを介して蒸気加熱器12と連通されるとともに蒸気が供給される。
【0040】
図4(D)は、固定スクロール11に対して可動スクロール14が
図4(C)の状態から更に旋回した状態を示している。可動スクロール14は、膨張室C及び別途の膨張室Cに供給された蒸気の膨張によってさらに旋回される。これにより、可動スクロール14は、回転軸Lを中心としてさらに旋回される。この際、蒸気はその膨張に伴って更に温度が低下する。膨張室Cは、さらに外縁部に向かって移動され、固定スクロール11の蒸気排出口11cと連通される。この結果、膨張室Cに供給された蒸気は、スクロール形流体機械1の外部に排出される。
【0041】
このように、可動スクロール14は、膨張室Cに供給された蒸気が膨張し、膨張室Cを押し広げようとする力によって360°旋回される。また、クランク軸15は、可動スクロール14の旋回運動によって360°回転される。なお、可動スクロール14が所定の旋回角度付近に近づくと、中央部分に現れた別途の膨張室Cにオリフィス12cが連通され、該膨張室Cに蒸気が供給される。こうして、こうして、可動スクロール14の連続した旋回運動によってクランク軸15が回転される。換言すると、本スクロール形流体機械1は、このような動作を繰り返すことによって連続的に回転動力を得ているのである。
【0042】
次に、蒸気加熱器12の動作態様を
図2及び
図5を用いて説明する。
【0043】
図2に示すように、蒸気加熱器12は、蒸気発生器4によって生成された蒸気が作動媒体通路2を介して蒸気供給口12dから蒸気通路12bに供給される(
図1参照)。この際、蒸気加熱器12は、蒸気通路12b内を通過する蒸気の熱によって固定スクロールラップ11bを加熱する。固定スクロールラップ11bは、膨張室Cの一部を構成しているため、膨張室C内の蒸気との間で熱交換が行われる。つまり、蒸気加熱器12は、膨張によって温度が低下した膨張室C内の蒸気に固定スクロールラップ11bを介して熱を供給する。この結果、膨張室C内の蒸気は、再び温度が上昇し、これに伴って膨張室C内の圧力が上昇する。すなわち、蒸気の可動スクロール14を旋回する力が増大する。
【0044】
加えて、蒸気加熱器12は、蒸気供給口12dが形成される外縁部の温度が最も高い。一方、固定スクロール11は、蒸気排出口11cが形成される外縁部の温度が最も低い。つまり、蒸気加熱器12は、膨張によって最も温度が低下した蒸気が満ちている外縁部の膨張室Cの近傍から蒸気発生器4から蒸気が供給される(
図2(b)白矢印参照)。この結果、外縁部の膨張室C内の蒸気は、高温の蒸気によって加熱され、これに伴って膨張室C内の圧力が上昇する。すなわち、蒸気加熱器12は、効率よく膨張室C内の蒸気と熱交換をすることができる。
【0045】
一方、蒸気通路12b内の蒸気は、膨張室C内の蒸気との熱交換により温度が低下する。この結果、
図5(a)に示すように、蒸気通路12b内の蒸気は、蒸気通路12bを通過する過程においてその一部が凝縮して水Wが生じる。すなわち、蒸気加熱器12は、凝縮器8と同等の作用を奏し、一部の蒸気を気相から液相へ相変化させる(
図3における点A4から点A1参照)。
【0046】
蒸気通路12bを通過した蒸気は、中心部のオリフィス12cを介して膨張室C内に排出される(
図5(a)白矢印参照)。この際、オリフィス12c部分の圧力は、ベンチュリ効果により蒸気加熱器12内の圧力よりも低くなる。従って、オリフィス12cの途中部に連通されている凝縮水通路11d内には、圧力の低いオリフィス12cに向かって流れが生じる。これにより、蒸気通路12b内に生じた水Wが、凝縮水通路11dを介してオリフィス12c内に吸引される(
図5(a)矢印参照)。つまり、蒸気加熱器12は、オリフィス12c内で気相である蒸気と液相である水Wとを膨張室Cに排出する。
【0047】
蒸気加熱器12から排出された水Wは、膨張室C内に蒸気とともに供給される。これにより、
図5(b)に示すように、膨張室Cは、固定スクロール11及び可動スクロール14の鏡板11a・14aの板面と、これに対向する固定スクロールラップ11b及び可動スクロールラップ14bの端面との間に構成される微小隙間に液膜Fが生成される。これにより、膨張室Cは、微小隙間が閉塞される。同様に、膨張室Cは、固定スクロールラップ11bの側面と可動スクロールラップ14bの側面との接触面に液膜Fが生成される。これにより、膨張室Cは、接触面の微小隙間が閉塞されるとともに接触面の摩擦が抑制される。この結果、膨張室Cは、蒸気の漏出及び接触面の磨耗が低減される。すなわち、膨張室Cは、微小隙間及び接触面に液膜Fが介在することよってシール性と潤滑性とを確保することができる。
【0048】
以上が本実施形態に係るスクロール形流体機械1の構成と可動スクロール14の動作態様についての説明である。スクロール形流体機械1は、可動スクロール14の旋回運動によって一本のクランク軸15が回転するように構成されているが、このような構成に限定するものではない。また、本発明の技術的思想は、上述したスクロール形流体機械1への適用に限るものではなく、その他の構成のスクロール形流体機械1に適用することが可能である。
【0049】
以上の如く、各鏡板11a・14aにそれぞれスクロールラップ11b・14bが突出して設けられる固定スクロール11と可動スクロール14とが、互いのスクロールラップ11b・14bを噛み合わせるように対向配置され、両スクロールの鏡板11a・14aと各スクロールラップ11b・14bとにより膨張室Cが形成され、膨張室Cに蒸気が供給されるスクロール形流体機械1であって、可動スクロール14及び固定スクロール11の少なくとも一方の鏡板に蒸気加熱器12を備え、蒸気加熱器12に蒸気が供給されて膨張室C内の蒸気を加熱した後に、蒸気加熱器12内の蒸気が膨張室Cに供給されるものである。このように構成することで、膨張室C内で膨張することにより温度が低下した蒸気を膨張室Cに供給される前の高温の蒸気によって再び加熱することができる。これにより、スクロール形流体機械1の出力が増大する。また、固定スクロール11と可動スクロール14との少なくとも一方に設けられる蒸気加熱器12に供給された蒸気をそのまま膨張室Cに供給することができるので配管が容易になる。
【0050】
また、蒸気加熱器12は、蒸気が通過する蒸気通路12bが形成され、蒸気通路12bがオリフィス12cを介して膨張室Cに連通されるとともに、蒸気通路12bの途中部が凝縮水通路11dによってオリフィス12cと連通されるものである。このように構成することで、膨張室C内の蒸気と蒸気加熱器12内の蒸気との間で熱交換が行われる。そして、蒸気加熱器12内に凝縮して生じた水Wをオリフィス12cによって吸引して膨張室C内へ供給することができる。これにより、蒸気が供給された直後の膨張室C内の摺動部分に液膜Fが生成されて膨張室Cのシール性及び潤滑性が維持される。
【0051】
また、蒸気通路12bは、中心部にオリフィス12cが配置される渦巻き状に形成され、その外周部に蒸気供給口12dが配置されるものである。このように構成することで、膨張室C内の蒸気温度が最も低下している固定スクロール11の外縁部分から高温の蒸気を供給することができる。これにより、膨張室C内の蒸気が効率的に加熱されて出力が増加する。
【0052】
また、蒸気通路12bは、鏡板11aにおける平面視で蒸気加熱器12が設けられたスクロールラップ11bと重複する位置に配置されるものである。このように構成することで、スクロールラップを重点的に加熱することができる。これにより、スクロールラップ11が放熱フィンの役目をはたして膨張室C内の蒸気が効率的に加熱されて出力が増加する。