(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5797591
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】中継装置
(51)【国際特許分類】
H04L 12/70 20130101AFI20151001BHJP
H04L 12/66 20060101ALI20151001BHJP
H04L 12/46 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
H04L12/70 B
H04L12/66 A
H04L12/46 E
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-58585(P2012-58585)
(22)【出願日】2012年3月15日
(65)【公開番号】特開2013-192156(P2013-192156A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2014年8月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】399041158
【氏名又は名称】西日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【復代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100084858
【弁理士】
【氏名又は名称】東尾 正博
(74)【代理人】
【識別番号】100112575
【弁理士】
【氏名又は名称】田川 孝由
(72)【発明者】
【氏名】明石 健吾
(72)【発明者】
【氏名】川邉 隆伸
【審査官】
宮島 郁美
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−206562(JP,A)
【文献】
特開2004−350133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L12/00−12/28,12/44−12/955
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ端末とウェブサーバとの間に設け、上記ユーザ端末が上記ウェブサーバへアクセスするにあたってFQDNの名前解決のために上記ユーザ端末がDNSサーバとの間で行うDNS要求及び解決されたIPアドレスの通信をIPv4とIPv6の両方のバージョンについて中継するDNS−proxy機能部を有する中継装置であって、
上記DNS−proxy機能部は、上記DNSサーバから受け取ったIPv4及びIPv6のIPアドレスのそれぞれを、上記ユーザ端末に返送する前に、上記中継装置内の応答性計測部に渡し、
上記応答性計測部は、IPv4とIPv6とのそれぞれのバージョンのIPアドレスを用いて、途中にIPv4又はIPv6のいずれかのみに対応するネットワークが介在している上記ウェブサーバへ実際に接続して応答性を計測し、その応答性計測結果を上記DNS−proxy機能部へ渡し、
上記DNS−proxy機能部は、受け取った上記応答性計測結果が応答性を確認できたものであるバージョンのIPアドレスを上記ユーザ端末に返送する中継装置。
【請求項2】
上記応答性計測部は応答性を計測するにあたり、応答性計測パケットを、一定間隔を空けて、予め定めた回数送信して、応答が返ってくるかを試みる再計測手段を実行し、
応答が返ってこないバージョンのIPアドレスでの二度目の送信に対する応答が返ってくると想定される時間を経過したら、上記DNS−proxy機能部へ上記応答性計測結果の返答を行う、請求項1に記載の中継装置。
【請求項3】
上記応答性の計測が、pingの送信、TCPのセッションの確立、又はその両方である請求項1又は2に記載の中継装置。
【請求項4】
ユーザ端末とウェブサーバとの間に設け、上記ユーザ端末が上記ウェブサーバへアクセスするにあたってFQDNの名前解決のために上記ユーザ端末がDNSサーバとの間で行うDNS要求及び解決されたIPアドレスの通信をIPv4とIPv6の両方のバージョンについて中継する上記DNS−proxy機能部を有する中継装置が、上記ユーザ端末に優先的に接続させるバージョンを選択するにあたり、
上記DNS−proxy機能部は、上記DNSサーバから受け取ったIPv4及びIPv6のIPアドレスのそれぞれを、上記ユーザ端末に返送する前に、上記中継装置内の応答性計測部に渡し、
上記応答性計測部は、IPv4とIPv6とのそれぞれのバージョンのIPアドレスを用いて、途中にIPv4又はIPv6のいずれかのみに対応するネットワークが介在している上記ウェブサーバへ応答性を計測し、その応答性計測結果を上記DNS−proxy機能部へ渡し、
上記DNS−proxy機能部は、上記応答性計測部を受けたバージョンのIPアドレスを上記ユーザ端末に返送することで、
上記ユーザ端末は上記応答性計測結果が応答を確認できたバージョンのIPで上記ウェブサーバとの間のセッションを構築可能となる最適経路の選択方法。
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、IPv4及びIPv6の混在環境で用いるDNS−proxy装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IPv6の普及に伴い、従来のIPv4とIPv6との両方のIPアドレスを保有するサーバが増えてきている。しかし、未だにIPv4にしか対応していないネットワークも多く残っており、IPv6のみでは応答性が保証できない環境が多い。
【0003】
この環境の概念図を
図5に示し、この環境における従来の通信シーケンスを
図6に示す。ユーザ端末12は、インターネットブラウザなどでFQDN(Fully Qualified Domain Name)を用いたアドレスへアクセスする際に、そのFQDNに対応するIPアドレスを取得しなければならない。このため最初にユーザ端末12は、DNS−proxy機能を有する中継装置11へDNS要求を送信する(S11)。実際にはこのDNS要求は一つではなく、IPv4とIPv6のどちらにも対応できるように、IPv4とIPv6の両方についての問い合わせを行う。IPv6とIPv4のどちらが優先されるかは環境によって異なるため、IPv4とIPv6のいずれのDNS要求を先に送信するかは特に決まっていない。
【0004】
DNS−proxy機能を有する中継装置11は、ユーザ端末12からのDNS要求を中継してDNSサーバへ送信する(S12)。DNS要求を受けたDNSサーバ13は、自身が有する情報によるか、又は他のDNSキャッシュサーバへの問い合わせにより、要求されたFQDNに対応するIPアドレスを返答する(S13)。これがIPv4とIpv6との両方について行われる。中継装置11は、DNSサーバ13から返ってきたIPアドレスを順にユーザ端末12へ返送する(S14)。
【0005】
なお、図では同一のDNSサーバ13へのアクセスとなっているが、IPv4とIPv6とでは別々のサーバである場合もある。特に、別々のサーバである場合には、IPv4とIPv6のどちらのDNS要求が先に返ってくるかは一定しないことが多くなる。
【0006】
ここで、IPv6についての名前の解決が先にされたとする。するとユーザ端末12はIPv6のIPアドレスでの接続を開始する(S21)。このとき、中継装置11は、特に調査することなくその接続要求を転送する(S22)。しかし、IPv4とIPv6との両方に対応したネットワーク15aが通過できても、IPv4のみに対応したネットワーク16は、IPv6によるIPアドレスでの通信は通過できずにここで接続が失敗することになる(S23)。接続に成功しない場合、ユーザ端末12は接続要求を何度か繰り返して送信するが、この時間はユーザにとっては接続待機状態に見えることになる(S24)。
【0007】
所定の回数失敗したところで、IPv6での接続は不可能であると判断し、先に遅れて到着したIPv4のIPアドレスを用いての接続要求を改めて行うこととなる(S25)。IPv4による接続要求であれば、上記のIPv4のみのネットワーク16を通過して、次のIPv4とIPv6との両方に対応したネットワーク15bも通過して、ウェブサーバ14との接続が成功する(S26)。
【0008】
しかし、このうちS24のステップでユーザは待たされるため、回線のレスポンスが低下しているように見えることになる。
【0009】
また、IPv6とIPv4とが上記の概念図及びシーケンス図と逆のケースも起こりえる。すなわち、IPv4のアドレスが枯渇した後にはIPv4ではアクセスできずIPv6のみでしかアクセスできないネットワーク領域が増加し始める。この場合には、IPv4でのDNS要求が先に解決されてしまった場合には、IPv4では到達できずに接続失敗となり、IPv6で改めて接続しなければならなくなるケースが生じる。
【0010】
このようなIPv6/IPv4のデュアルスタック問題に対して、いくつかの方法が検討されている。例えば、中継装置11がTCPリセッタを送出することで、強制的にIPv6通信を遮断して、速やかにIPv4へ移行させる方法や、特許文献1にあるように、中継装置11がそもそもIPv6でのDNSサーバ13へのDNS要求を全て無効にするといった方法が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−130501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、TCPリセッタによるIPv4へのフォールバックは、待ち時間を多少短縮することはできるものの、無くなるわけではないため、根本的な解決にならなかった。また、TCPのプロトコルにしか対応していないため、UDPなどその他のプロトコルへの汎用性が無かった。
【0013】
さらに、特許文献1の方法では全てのIPv6DNSの名前が解決されなくなるため、IPv6アドレスにしか対応していないサーバへは通信できなくなるという問題があった。
【0014】
さらにまた、従来の方法では、仮にIPv4とIPv6との一方で接続が成功したら、もしもう一方のバージョンのIPならより高速で通信できたとしても、そのままのバージョンのIPで通信し続けるため、ネットワークの利用効率が悪く、ユーザに体感できない不便を実質的に与えることがあった。
【0015】
そこでこの発明は、IPv6とIPv4とのどちらが使えないネットワークを経由する場合にも対応でき、かつ、TCP以外のプロトコルにも対応した形式でデュアルスタック問題を解消でき、さらに、IPv4とIPv6とが両立する場合であっても応答品質のよいバージョンでの通信を行えるようにして、利用者の利便性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明は、DNS−proxy機能部21を有する中継装置11がDNS要求を中継してDNSサーバ13からIPアドレスを受け取った際に、それを速やかにユーザ端末12へ返送するのではなく、
IPv4及びIPv6のいずれについても中継装置11が当該IPアドレスのウェブサーバ14へ実際に接続して応答性を計測し、その応答性計測結果が、応答性を確認できたものであるバージョンのIPアドレスを優先してユーザ端末12に返送することによって、上記の課題を解決したのである。
【0017】
すなわち、中継装置11は、DNS−proxy機能部21とともに、ウェブサーバ14に対して応答性を計測、確認するための応答性計測部22を有する。DNS−proxy機能部21は、IPv4とIPv6とのいずれについても、DNSサーバ13からIPアドレスを受け取ったら、それをユーザ端末12に返送せずに、一旦そのIPアドレスを応答性計測部22へ渡す。応答性計測部22は、それぞれのバージョンのIPで当該ウェブサーバ14と実際に通信してその応答性を計測する。計測にあたっては、単純にpingを送る方法や、TCPの3ways−handhakeを実際に行う方法が挙げられる。実際に接続し、応答できたことを応答性計測部22が確認したら、その応答性計測結果をDNS−proxy機能部21へ渡し、応答性計測結果が接続を確認できたものであるバージョンのIPアドレスをユーザ端末12に送る。これにより、ウェブサーバ14との間に、IPv4とIPv6のいずれかにしか対応しないネットワークがあっても、ユーザ端末12は実際に応答性が計測できたバージョンのIPアドレスで接続できるので、IPアドレスを受け取った後に、実際に繋がらないセッション構築の試行を行わずに済み、ユーザが実際に感じる待ち時間をほぼ無くすことができる。
【0018】
ウェブサーバ14との間に、IPv4又はIPv6のいずれかのみに対応するネットワークが介在している場合は、その対応しているバージョンのIPアドレスでの応答のみが返ってくるため、必然的にその返ってきたバージョンのIPアドレスを、より優れた通信品質でセッション構築できるバージョンとして、ユーザ端末12に送る。
【0019】
また、所要時間の比較だけでなく、エラー率が低かった方のバージョンのIPアドレスを、応答品質が優れたものとして、優先的にDNSーproxy機能部へ渡してもよい。
【発明の効果】
【0020】
この発明により、IPv4及びIPv6が混在する環境において、確実に接続できる経路でセッションの構築を実施するため、通信できないバージョンのIPで無駄にセッションの構築を試みてユーザを待機させることがなくなる。また、どちらのバージョンで接続可能な場合でも、その後の接続要求へのレスポンスについて、当該ウェブサーバとの間でより高速で応答できるバージョンを選ぶことができるので、ユーザがネットワークアクセスする際の体感的なレスポンスを、セッションの開始から終了までを通じて向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】この発明の実施形態の例を示す機能ブロック及び構成図
【
図2】この発明の実施形態の第一の例を示すシーケンス図
【
図3】pingとTCPで応答性を計測する際のフロー図
【
図4】この発明の実施形態の第二の例を示すシーケンス図
【
図5】IPv4にしか対応しないネットワークが介在する環境例の概念図
【
図6】
図5の環境におけるセッション確立時の例を示すシーケンス図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明について具体的な実施形態の例を挙げて詳細に説明する。
図1は、この発明にかかる中継装置11の機能ブロックと、ユーザ端末12、DNSサーバ13、及びウェブサーバ14の通信との概念図である。
【0023】
中継装置11は、ユーザ端末12と、ウェブサーバ14との間にある中継装置であり、例えば家庭用ルータなどのホームゲートウェイのようなゲートウェイとして機能する装置である。具体的には、ユーザ端末12からのHTTP通信と、ウェブサーバ14からのHTTP通信を中継するとともに、DNS−proxyとしての機能も備える装置である。
【0024】
ユーザ端末12は、パソコン、スマートフォン、タブレット端末など、IPによる通信を行う端末であれば特に限定されない。
【0025】
DNSサーバ13は、ユーザ端末12で普段入力されるFQDN(ドメイン名)に対応するIPアドレスを調べて、ユーザ端末12からの問い合わせに対して名前の解決を行い、IPアドレスを返すことができるDNSキャッシュサーバである。サーバ自身が記録しているFQDNとIPアドレスとの組み合わせから検索して応答するだけでなく、他のDNSキャッシュサーバへリクエストを中継して、名前を解決する場合もある。
【0026】
ウェブサーバ14は、ユーザ端末12からのリクエストに応じてコンテンツを送信するサーバ機能を有するサーバである。
図1中では一つであるが、実際には多数のサーバがインターネット上に存在しており、それぞれがFQDN及びそれに対応した、IPv4又はIPv6又はそれらの両方のIPアドレスを有する。
【0027】
これらの間で行われる通信に対して、中継装置11は一般的な中継装置としての機能の他に、DNS−proxy機能部21と、応答性計測部22とを有する。DNS−proxy機能部21は、ユーザ端末12から送られてきたFQDNからIPアドレスを求める、すなわちDNS要求を中継し、DNSサーバ13との間でその名前(FQDN)の解決を行うものである。また、応答性計測部22は、後述するように、受け取ったIPアドレスが示すウェブサーバ14との間で、接続が可能であるか否かをIPv4とIPv6との両方で送信して確認するものである。
【0028】
このうち、中継装置11の各部(21,22)は、独立したチップでもよいし、ソフトウェア上で実現するものでもよい。この各部間でのデータの授受は、実際の通信でもよいし、メモリ空間上での受け渡しでもよい。中継装置11は、これらを実現するための処理部たるプロセッサと、記憶部たる揮発性メモリや不揮発性メモリを有する。
【0029】
この中継装置11が行う処理を、
図2に示すシーケンス図を用いて説明する。
まず、ユーザ端末12のブラウザなどから、FQDNを含んだアドレスへのアクセスが指示されると、ユーザ端末12は当該FQDNで指定されるIPアドレスを得るために、IPv4とIPv6の両方で、当該FQDNを含んだDNS要求を送信する(S111)。上記DNS要求を受け取った中継装置11のDNS−proxy機能部21は、IPv4とIPv6とのそれぞれについて、DNSサーバ13へDNS要求を転送する要求転送手段を実行する(S112)。DNSサーバ13は、DNS要求に含まれるFQDNに対応するIPアドレスを、IPv4、IPv6のそれぞれについて返答する(S113)。
【0030】
ここで、IPアドレスを受け取ったDNS−proxy機能部21は、ユーザ端末12に速やかに返答するのではなく、そのIPアドレスの情報をバッファ(図示せず。)に保持したまま、応答性計測部22へ受け渡す(S114)。応答性計測部22は、受け取ったIPアドレスで指定されるウェブサーバ14へ向けてパケットを送信し、通信が実際にどの程度の品質で返ってくるか否かを確かめる応答性計測手段を実行する(S115)。
【0031】
図2では、ウェブサーバ14までの間に、IPv4/v6の両方に対応したネットワーク15a,15bがあり、それに挟まれてIPv4にのみ対応したネットワーク16が介在している状況を例に取る。IPv4のアドレスを指定して行われる応答性計測のパケットは、ネットワーク15a,16,15bを通過でき、ウェブサーバ14まで到達し、ウェブサーバ14は応答を返す(S116)。
【0032】
一方、IPv6のIPアドレスを指定して行われる応答性計測のパケットは、ネットワーク15aを通過することができても、ネットワーク16を通過することができず、その先のネットワーク15bにあるウェブサーバ14まで到達することができない。このため、送信したパケットに対する応答が返ってこないので、応答性計測部22はIPv6での応答性計測パケットを、一定間隔を空けて、予め定めた回数送信して、応答が返ってくるかを試みる再計測手段を実行する(S121)。この間に、IPv4による上記の確認が進行することとなる。
【0033】
ウェブサーバ14からの応答をIPv4で受け取った応答性計測部22は、IPv6と比べて速やかに返ってきたIPv4で応答性を計測確認できた旨の応答性計測結果をDNS−proxy機能部21へ送信する応答確認通知手段を実行する(S117)。ここで、応答性計測部22は、応答性を計測確認できた旨の通知を受け取って速やかにDNS−proxy機能部21へ返送してもよいし、一定時間に亘ってIPv6での応答が返ってくるか否かを待ってもよい。ただし、待ちすぎるとユーザの体感レスポンスが低下するので、応答が返ってこないバージョンのIPアドレスでの二度目の送信に対する応答が返ってくると想定される時間を経過したら、DNS−proxy機能部21へIPv4の応答性計測結果の返答を行うことが望ましい。
【0034】
上記応答性計測結果の返答を受信したDNS−proxy機能部21は、保持しておいたそのIPv4のIPアドレスをユーザ端末12へ返す確認アドレス返答手段を実行する(S118)。この時点でユーザ端末12は、ウェブサーバ14と接続できる環境がもう整っているので、IPv6についての応答を待たずに、IPv4のIPアドレスを用いて、中継装置11が通常有するパケット転送機能などの中継機能を利用してTCPセッションの構築を行う(S119)。
【0035】
一方、IPv6で所定の回数の応答性計測パケットを送信したものの応答が返ってこなかったことを確認した応答性計測部22は、応答性の計測がNGであった旨の応答性計測結果をDNS−proxy機能部21への応答として返す計測失敗通知手段を実行する(S122)。この返答を受けたDNS−proxy機能部21は、ユーザ端末12にエラーか、又はDNSサーバ13から受け取ったIPv6のIPアドレスを通知する要求応答手段を実行する(S123)。ただしこの時点では既にIPv4でセッションが確立しているため、このエラーやIPv6アドレスの通知は、ユーザ端末12にとって何らかの変更を行わせるものではない。すなわち、先に応答性計測結果を受け取ったバージョンのIPで通信を確立させたまま、通信が続行される。
【0036】
上記の応答性計測部22が送信する応答性計測のパケットとしては、ウェブサーバ14からIPベースでの返答を受けることができるコマンドやプロトコルであれば特に限定されるものではなく、pingを送信してもよいし、TCPセッションの構築を試みてもよい。pingを用いる方がTCP以外のプロトコルにも対応するため汎用性が高い。一方で、サーバによってはセキュリティ対策としてPingに応答しないサーバもあるため、TCPを用いないと反応しない場合もある。このため、応答性の計測にあたって、pingとTCPセッション構築との両方を並行して行うと、より確実に応答性を確認することが出来る。
【0037】
応答性計測部22が行う、pingとTCPとのそれぞれについてのフローをまとめて
図3に示す。これらは選択的に行っても良いし、図のように並行して行ってもよい。
【0038】
まず、応答性計測にpingを使用する場合(S211)、DNS−proxy機能部21から受信したIPアドレスへ向けて、Echo−Requestを送信する(S212)。当該IPアドレスのウェブサーバ14からEcho−Replyが返ってきたら(S213)、DNS−proxy機能部21へ当該バージョンのIPアドレスでの応答性計測がOKである旨を送信する(S214)。所定の時間を経過してもEcho−Replyが返ってこなければ(S213→S215)、所定の再送回数となるまでEcho−Requestを送信する(S215→S212)。一般的には3,4回程度繰り返して応答が無ければ、DNS−proxy機能部21に応答性計測がNGであった旨を送信する(S216)。
【0039】
一方、応答性計測にTCPを使用する場合(S221)、DNS−proxy機能部21から受信したIPアドレスへ向けて、TCPセッションを開始する「SYN」フラグの立ったパケットを送信する(S222)。これをウェブサーバ14が受信できた場合には、「SYN/ACK」のフラグが立ったパケットを返すので、そのパケットを受信できれば(S223)、応答性計測部22は「FIN」又は「RST」のフラグが立ったパケットを送信して、当該セッションを削除させる(S224)。あくまで応答性計測のためのセッションであり、実際のHTTP要求などはユーザ端末12から送られるので、ここでは一旦セッションを終了してサーバリソースを開放することが望ましいためである。その上で、DNS−proxy機能部21へ当該バージョンのIPアドレスでの応答性計測がOKである旨を送信する(S225)。所定の時間を経過しても「SYN/ACK」が返ってこなければ(S223→S226)、所定の再送回数となるまで「SYN」パケットを送信する(S226→S222)。一般的には3,4回程度繰り返して応答が無ければ、DNS−proxy機能部21に応答性計測がNGであった旨を送信する(S227)。
【0040】
上記応答性計測部22、及び中継装置11は、この応答性計測結果についてキャッシュを残さない方が望ましい。ネットワークの通信品質は刻々と変化するため、先の応答性計測結果が後で再利用できるとは限らないからである。
【0041】
上記の
図2のシーケンス図では、途中にIPv4のみのネットワーク16が介在した場合について説明したが、逆にIPv6のみのネットワークが介在した場合でも、IPv4とIPv6が逆になった形で、同様に応答性が計測されたIPv6についての接続が行われることとなる。
【0042】
次に、IPv4とIPv6とのいずれでも到達できるウェブサーバ14に対して接続を行う際に、応答品質がよりよかったバージョンのIPアドレスを優先的にユーザ端末12に返送する場合について、
図4に示す例を用いて説明する。中継装置11とウェブサーバ14との間のネットワーク15aとネットワーク15bは、IPv4とIPv6とのいずれでも通信可能であるが、ネットワーク15aはIPv4での通過に時間がかかるものとする。
【0043】
まず、ユーザ端末12からDNSサーバ13へのFQDNの解決を求めるDNS要求を、DNS−proxy機能部21が転送し、得られたIPv4とIPv6とのIPアドレスを応答性計測部22に渡すまで(S211〜S214)は上記の
図2の形態におけるS111〜S114と同じである。
【0044】
それぞれのバージョンのIPアドレスを受けた応答性計測部22は、それぞれのIPアドレスを用いてウェブサーバ14に対して応答性の計測を行う(S215)。この計測は上記のようにpingやTCPのセッションでよい。このうち、IPv4の方が先に応答性計測を始めているが、IPv4はネットワーク15aにおける遅延が起こるため、ウェブサーバ14に応答性計測が到達し(S216)、その反応が返ってくる(S217)際には、IPv6との到達時間は逆転している。
【0045】
ここで応答性計測部22は、先にレスポンスが到着したIPv6の方が応答品質に優れていると判断し、IPv6でのIPアドレスを優先してDNS−proxy機能部21へ渡す(S218)。DNS−proxy機能部21はこのIPv6のIPアドレスをユーザ端末12に返送する(S219)。ユーザ端末12はIPv6のIPアドレスを取得したので、IPv6でウェブサーバ14へセッションを構築する(S220)。
【0046】
一方、ネットワーク15a、15bでの応答品質に劣ると判断されたIPv4については、応答性計測結果として、よくなかった(NG)旨をDNS−proxy機能部21へ返送する(S221)。DNS−proxy機能部21は、IPv4についてユーザ端末12から受けたDNS要求への返答として、エラー又はIPv4のIPアドレスを返送する(S222)。ただしIPv4のIPアドレスを返送する場合は、より応答品質に優れているとの判断がされたIPv6のIPアドレスよりも後に送信して、ユーザ端末12が応答品質の劣るIPv4でのセッション構築を行わないようにする。
【0047】
当然にして、上記とは逆に、IPv6の方が応答品質の悪いネットワークでは、応答性計測部22はIPv4の方をより優れた選択肢として判断し、DNS−proxy機能部21に対して、ユーザ端末12に優先的にIPv4のIPアドレスを送信するように、IPv4についての応答性計測結果を優先的に渡す。
【符号の説明】
【0048】
11 中継装置
12 ユーザ端末
13 DNSサーバ
14 ウェブサーバ
15a,15b ネットワーク(両方対応)
16 ネットワーク(IPv4のみ対応)
21 DNS−proxy機能部
22 応答性計測部