特許第5797598号(P5797598)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5797598
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】ウェビング巻取装置及びその組立方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/36 20060101AFI20151001BHJP
【FI】
   B60R22/36
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-87824(P2012-87824)
(22)【出願日】2012年4月6日
(65)【公開番号】特開2013-216192(P2013-216192A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2014年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】梁川 弥
【審査官】 三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−277137(JP,A)
【文献】 特開昭60−191856(JP,A)
【文献】 特開平09−032891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/00 − 22/48
F16H 1/00 − 3/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェビングの長手方向基端側が係止され、巻取方向に回転することで前記ウェビングを巻取って格納するスプールと、
前記スプールと一体的又は前記スプールに連動して回転する太陽ギヤと、
前記太陽ギヤの外側で前記太陽ギヤに対して同軸的に設けられた内歯ギヤと、
底部が歯底よりも径方向内側に設定されて外周部にて開口すると共に軸方向に貫通したガイド孔を有し、前記太陽ギヤ及び前記内歯ギヤの双方に噛み合い、前記太陽ギヤの回転が伝えられて自転しつつ前記太陽ギヤの周囲を公転すると共に、所定長さの前記ウェビングが前記スプールに巻取られた所定の巻取状態から、前記スプールから前記ウェビングが全て引出された全引出状態までに要する前記スプールの回転数に対して前記公転の回転数が1回転未満になるように減速比が設定された遊星ギヤと、
作動することで前記スプールの前記巻取方向への回転を許容しつつ前記巻取方向とは反対の引出方向への前記スプールの回転を規制するロック機構と、
前記太陽ギヤに対して同軸的に相対回転可能で且つ前記遊星ギヤが回転自在に支持され、前記遊星ギヤの公転により前記太陽ギヤに対して相対回転し、前記スプールの前記全引出状態に対応した回転位置に到達することで前記ロック機構を作動させると共に、前記スプールの前記所定の巻取状態に対応した回転位置に到達することで前記ロック機構の作動を解除させる切替手段と、
を備えるウェビング巻取装置。
【請求項2】
前記ガイド孔を前記底部から開口側へ向けて直線状に形成した請求項1に記載のウェビング巻取装置。
【請求項3】
前記遊星ギヤの外周側における前記ガイド孔の開口を、前記遊星ギヤの歯底に設定した請求項1又は請求項2に記載のウェビング巻取装置。
【請求項4】
ウェビングを巻取るスプールの引出方向への回転に一体的又は前記スプールに連動して回転する太陽ギヤの周囲を自転しつつ一定角度公転することによってロック機構を作動させて前記スプールの前記引出方向への回転を規制させる遊星ギヤに、底部が歯底よりも径方向内側に設定されて外周部にて開口すると共に軸方向に貫通したガイド孔を形成し、
前記スプールを所定の回転位置まで回転させて前記太陽ギヤを特定の回転位置にセットし、
ガイド部材を前記ガイド孔の内側に挿し込んで、前記特定の回転位置の前記太陽ギヤ及び前記太陽ギヤの外側で前記太陽ギヤに対して同軸的に設けられた内歯ギヤの双方に噛合可能な回転位置で前記遊星ギヤを前記ガイド部材によって保持し、この保持状態のまま前記ガイド部材によって前記遊星ギヤの軸方向に前記遊星ギヤをガイドさせつつ前記太陽ギヤ及び前記内歯ギヤの双方に前記遊星ギヤを接近させて噛み合わせるウェビング巻取装置の組立方法。
【請求項5】
前記ガイド孔における前記底部から開口側への向きを直線状に設定して、前記ガイド孔に入り込んだ前記ガイド部材を前記底部から前記開口側へ直線的に移動させて前記遊星ギヤから前記ガイド部材を抜き取る請求項4に記載のウェビング巻取装置の組み立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェビングを巻き取って格納するウェビング巻取装置及びその組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のシートベルト装置を構成するウェビング巻取装置は、車両が急減速した場合やウェビングを巻き取って格納するスプールが引出方向へ急回転した場合に作動してスプールの引出方向への回転を規制するエマージェンシ・ロッキング・リトラクタ等と称されるロック機構(以下、この種のロック機構を「ELR機構」と称する)を備えている。また、この「ELR機構」とは異なり、作動状態では常にスプールの巻取方向への回転のみを許容してスプールの引出方向への回転を規制するオートマチック・ロッキング・リトラクタ等と称されるロック機構(以下、この種のロック機構を「ALR機構」と称する)もあり、近年では、例えば、シート上に載置したチャイルドシートを固定する際に「ALR機構」が利用されている。
【0003】
また、ウェビングを一定長さ引き出した状態(例えば、スプールからウェビングを全て引き出した状態)でロック機構を強制的に作動させると共に、ロック機構の作動状態を所定の長さのウェビングがスプールに巻き取られるまで維持するような構成とすることで「ELR機構」及び「ALR機構」の構成部品を共通化している。
【0004】
このように「ELR機構」と「ALR機構」との切り替えには遊星歯車機構を適用した構成がある(一例として下記特許文献1を参照)。このような構成の場合、スプールと一体的に回転する太陽ギヤを遊星歯車機構における入力ギヤとし、遊星ギヤを支持するキャリアプレートを遊星歯車機構の出力としている。スプールの引出方向への回転は減速されてキャリアプレートに伝わり、ウェビングが一定長さ引き出されるとキャリアプレートが「ELR機構」と「ALR機構」とを切り替える切替手段を操作し、「ELR機構」から「ALR機構」へ切り替える。また、「ALR機構」の状態から所定の長さのウェビングがスプールに巻き取られるまでスプールが巻取方向に回転すると、キャリアプレートが切替手段を操作し、「ALR機構」から「ELR機構」へ切り替える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−277137号の公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、遊星歯車機構では、遊星ギヤが太陽ギヤと、この太陽ギヤに対して同軸の内歯ギヤの双方に適切に噛み合っていなくてはならないが、遊星ギヤは各々の中心軸線周りの回転位置と、太陽ギヤを中心とする回転位置の双方が適切でないと遊星ギヤを太陽ギヤ及び内歯ギヤの双方に適切に噛み合わせることが難しい。
【0007】
本発明は、上記事実を考慮して、遊星ギヤの組み付けが容易なウェビング巻取装置及びその組立方法を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の本発明に係るウェビング巻取装置は、請求項1ウェビングの長手方向基端側が係止され、巻取方向に回転することで前記ウェビングを巻取って格納するスプールと、前記スプールと一体的又は前記スプールに連動して回転する太陽ギヤと、前記太陽ギヤの外側で前記太陽ギヤに対して同軸的に設けられた内歯ギヤと、底部が歯底よりも径方向内側に設定されて外周部にて開口すると共に軸方向に貫通したガイド孔を有し、前記太陽ギヤ及び前記内歯ギヤの双方に噛み合い、前記太陽ギヤの回転が伝えられて自転しつつ前記太陽ギヤの周囲を公転すると共に、所定長さの前記ウェビングが前記スプールに巻取られた所定の巻取状態から、前記スプールから前記ウェビングが全て引出された全引出状態までに要する前記スプールの回転数に対して前記公転の回転数が1回転未満になるように減速比が設定された遊星ギヤと、作動することで前記スプールの前記巻取方向への回転を許容しつつ前記巻取方向とは反対の引出方向への前記スプールの回転を規制するロック機構と、前記太陽ギヤに対して同軸的に相対回転可能で且つ前記遊星ギヤが回転自在に支持され、前記遊星ギヤの公転により前記太陽ギヤに対して相対回転し、前記スプールの前記全引出状態に対応した回転位置に到達することで前記ロック機構を作動させると共に、前記スプールの前記所定の巻取状態に対応した回転位置に到達することで前記ロック機構の作動を解除させる切替手段と、を備えている。
【0009】
請求項1に記載のウェビング巻取装置では、ウェビングを引出すことでスプールが引出方向に回転すると、太陽ギヤが所定の方向へ回転する。太陽ギヤには切替手段に回転自在に支持された遊星ギヤが噛み合っており、太陽ギヤが回転することで遊星ギヤが自転する。また、この遊星ギヤは太陽ギヤに対して同軸的に設けられた内歯ギヤに噛み合っている。このため、太陽ギヤの回転に連動して遊星ギヤが自転すると、太陽ギヤの回転速度(回転数)に対して所定の減速比(すなわち、後述する所定の巻取状態から全引出状態までに要するスプールの回転に対して遊星ギヤの公転が1回転未満になる減速比)で減速されて太陽ギヤの周囲を公転する。
【0010】
上記のように遊星ギヤは太陽ギヤに対して同軸的に回転可能な切替手段をキャリアとして回転自在に支持されている。このため、遊星ギヤが太陽ギヤの周囲を公転すると、切替手段は遊星ギヤに伴われて太陽ギヤの周囲を公転する。このようにスプールの引出方向への回転に連動して切替手段が太陽ギヤの周囲を公転し、これにより、スプールが全引出状態になると、切替手段はロック機構を作動状態とする。このようにしてロック機構が作動すると、スプールは巻取方向に回転することはできるが、引出方向に回転できない。
【0011】
これに対し、この状態から所定長さのウェビングがスプールに巻取られる所定の巻取状態までスプールが巻取方向に回転すると、切替手段はロック機構の作動状態を解除する。これにより、スプールは引出方向に回転可能となる。
【0012】
ところで、本発明に係るウェビング巻取装置において上述した遊星ギヤにはガイド孔が形成されている。このガイド孔は底部が遊星ギヤの歯底よりも遊星ギヤの回転半径方向内側に設定されて遊星ギヤの外周部にて開口している。さらに、このガイド孔は遊星ギヤの軸方向に貫通している。このため、このガイド孔にはガイド孔の幅寸法以下の部材を遊星ギヤの軸方向に貫通配置できると共に、このようにガイド孔に貫通配置された部材をガイド孔の開口側へ移動させることで、このような部材を遊星ギヤから抜き取ることができる。
【0013】
このため、例えば、内歯ギヤ及び太陽ギヤの一方に対する他方の特定の回転位置で遊星ギヤを内歯ギヤ及び太陽ギヤの双方に噛み合わせる場合、この状態において内歯ギヤ及び太陽ギヤの双方に噛合可能な遊星ギヤの回転位置でガイド孔を貫通するガイド部材を用いて、太陽ギヤ及び内歯ギヤの軸方向にガイド部材に沿わせて遊星ギヤを太陽ギヤ及び内歯ギヤへ接近させることによって遊星ギヤを内歯ギヤ及び太陽ギヤの双方に容易に噛み合わせることができる。
【0014】
請求項2に記載の本発明に係るウェビング巻取装置は、請求項1に記載の本発明において、前記ガイド孔を前記底部から開口側へ向けて直線状に形成している。
【0015】
請求項2に記載のウェビング巻取装置では、遊星ギヤに形成されたガイド孔が底部から開口側へ向けて直線状とされている。このため、上述したようなガイド孔を貫通するガイド部材を用いて遊星ギヤを太陽ギヤ及び内歯ギヤの双方に噛み合わせる場合、太陽ギヤ及び内歯ギヤの双方に遊星ギヤを噛み合わせた後にガイド部材をガイド孔における底部側からの開口側へ直線的にスライドさせることでガイド部材を抜き取ることができる。
【0016】
請求項3に記載の本発明に係るウェビング巻取装置は、請求項1又は請求項2に記載の本発明において、前記遊星ギヤの外周側における前記ガイド孔の開口を、前記遊星ギヤの歯底に設定している。
【0017】
請求項3に記載のウェビング巻取装置では、遊星ギヤの外周側におけるガイド孔の開口が遊星ギヤの歯底に設定される。遊星ギヤ等の外歯の平歯ギヤにおいて歯底は回転力の受け渡しに寄与しない。このため、ガイド孔を形成しても遊星ギヤの機能が損なわれることがない。
【0018】
請求項4に記載の本発明に係るウェビング巻取装置の組立方法は、ウェビングを巻取るスプールの引出方向への回転に一体的又は前記スプールに連動して回転する太陽ギヤの周囲を自転しつつ一定角度公転することによってロック機構を作動させて前記スプールの前記引出方向への回転を規制させる遊星ギヤに、底部が歯底よりも径方向内側に設定されて外周部にて開口すると共に軸方向に貫通したガイド孔を形成し、前記スプールを所定の回転位置まで回転させて前記太陽ギヤを特定の回転位置にセットし、ガイド部材を前記ガイド孔の内側に挿し込んで、前記特定の回転位置の前記太陽ギヤ及び前記太陽ギヤの外側で前記太陽ギヤに対して同軸的に設けられた内歯ギヤの双方に噛合可能な回転位置で前記遊星ギヤを前記ガイド部材によって保持し、この保持状態のまま前記ガイド部材によって前記遊星ギヤの軸方向に前記遊星ギヤをガイドさせつつ前記太陽ギヤ及び前記内歯ギヤの双方に前記遊星ギヤを接近させて噛み合わせる。
【0019】
請求項4に記載のウェビング巻取装置の組立方法により組み立てられるウェビング巻取装置では、太陽ギヤと、この太陽ギヤの外側で太陽ギヤに対して同軸的に設けられた内歯ギヤと、これらの太陽ギヤ及び内歯ギヤの双方に噛み合う遊星ギヤとを含む所謂遊星歯車機構を備えている。ウェビングが引き出される際の回転方向である引出方向にスプールが回転すると、太陽ギヤが回転し、太陽ギヤが回転することで遊星ギヤが自転しつつ太陽ギヤの周囲を公転する。スプールの引出方向への回転に連動して遊星ギヤが一定角度公転すると、ロック機構が作動させられ、ロック機構によって引出方向へのスプールの回転が規制される。
【0020】
この遊星歯車機構を構成する遊星ギヤには底部が遊星ギヤの歯底よりも径方向内側に設定されて外周部にて開口すると共に遊星ギヤの軸方向に貫通したガイド孔が形成される。
【0021】
遊星ギヤを太陽ギヤ及び内歯ギヤに遊星ギヤを噛み合わせるに際しては、例えば、スプールを所定の回転位置まで回転させ、これによって太陽ギヤが特定の回転位置でセットされる。また、この太陽ギヤを特定の回転位置にセットする工程に前後して、上記のガイド孔にガイド部材が入り込むようにガイド部材に遊星ギヤがセットされる。この状態では、遊星ギヤが特定の回転位置にセットされた太陽ギヤ及び上記の内歯ギヤの双方に対して噛合可能な回転位置にあり、このようにガイド孔にガイド部材が入り込んでいることによって遊星ギヤは太陽ギヤ及び内歯ギヤの軸方向に移動可能であるが回転は規制された状態になる。
【0022】
この状態で、ガイド部材にガイドさせつつ太陽ギヤ及び内歯ギヤの軸方向に遊星ギヤを太陽ギヤ及び内歯ギヤに接近させることによって太陽ギヤ及び内歯ギヤの双方に遊星ギヤが噛み合う。
【0023】
さらに、遊星ギヤが太陽ギヤ及び内歯ギヤの双方に噛み合った後にはガイド部材をガイド孔の底部側から開口側へ移動させられて、ガイド部材が遊星ギヤから抜き取られる。このようにして、本発明に係るウェビング巻取装置の組立方法では、簡単に遊星ギヤが組み付けられる。
【0024】
請求項5に記載の本発明に係るウェビング巻取装置の組立方法は、請求項4に記載の本発明において、前記ガイド孔における前記底部から開口側への向きを直線状に設定して、前記ガイド孔に入り込んだ前記ガイド部材を前記底部から前記開口側へ直線的に移動させて前記遊星ギヤから前記ガイド部材を抜き取る。
【0025】
請求項5に記載のウェビング巻取装置の組立方法では、遊星ギヤに形成されたガイド孔が底部から開口側へ向けて直線状となるように形成され、遊星ギヤが太陽ギヤ及び内歯ギヤの双方に噛み合った後にはガイド部材をガイド孔の底部側から開口側へ直線的に移動(スライド)させられて、ガイド部材が遊星ギヤから抜き取られる。このため、ガイド部材を移動させるための機構を簡素化できる。
【発明の効果】
【0026】
以上、説明したように、本発明は遊星ギヤの組み付けが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施の形態に係るウェビング巻取装置の構成を示す概略的な分解斜視図である。
図2図1に示される構成に続く本発明の一実施の形態に係るウェビング巻取装置の要部の構成を示す概略的な分解斜視図である。
図3】太陽ギヤ、内歯ギヤ、遊星ギヤ、及び規制手段の組付状態を示す概略的な側面図である。
図4】遊星ギヤの構成を示す図で、(A)は軸方向に沿ってみた平面図、(B)は側面図、(C)は底面図である。
図5】ガイド部材の構成を示す図で、(A)は遊星ギヤの軸方向に見た平面図、(B)は側面図である。
図6】遊星ギヤを組み付けた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<本実施の形態の構成>
図1には本発明の一実施の形態に係るウェビング巻取装置10の構成の概略が分解斜視図により示されており、図2には図1に示された構成に続く本ウェビング巻取装置10の要部の構成の分解斜視図により示されている。
【0029】
図1に示されるように、ウェビング巻取装置10はフレーム12を備えている。フレーム12は、例えば、略車両前後方向に沿って互いに対向する一対の脚板14、16を備えている。この脚板14と脚板16との間にはスプール18が設けられている。スプール18は軸方向が脚板14、16の対向方向に沿った略円筒形状に形成されている。
【0030】
スプール18には長尺帯状のウェビング20の長手方向基端側が係止されており、スプール18の中心軸線周りの一方である巻取方向にスプール18を回転させると、ウェビング20がその長手方向基端側からスプール18の外周部に巻取られて格納され、ウェビング20をその先端側へ引っ張ると、スプール18に巻取られているウェビング20が引出されると共に、巻取方向とは反対の引出方向にスプール18が回転する。なお、以下、スプール18がウェビング20をそれ以上巻取ることができない状態を『所定の巻取状態』と称し、スプール18からウェビング20が全て引出された状態を『全引出状態』と称する。
【0031】
一方、スプール18の内側には、長手方向がスプール18の中心軸線に沿った棒状のトーションシャフト24が配置されている。トーションシャフト24は、スプール18における脚板16側の端部近傍にて、スプール18に対して相対回転不能な状態でスプール18に繋がっている。
【0032】
また、このトーションシャフト24の脚板16側の端部には、脚板16の外側(脚板16の脚板14とは反対側)に設けられた渦巻きばね等の図示しないスプール付勢手段が繋がっており、スプール18と共にトーションシャフト24が引出方向に回転すると、スプール付勢手段にて付勢力が生じ、この付勢力がトーションシャフト24を介してスプール18を巻取方向に回転させる。これにより、スプール18にウェビング20を巻取らせることができる。
【0033】
一方、脚板14の外側(脚板14の脚板16とは反対側)では、ロック機構40のセンサホルダ42が脚板14に取り付けられている。センサホルダ42は部分的に脚板14側へ向けて開口した凹形状に形成されている。センサホルダ42の脚板14とは反対側には図示しないセンサカバーが設けられており、このセンサカバーよってセンサホルダ42が覆われていると共に、センサホルダ42を貫通したトーションシャフト24の他端側からに延びる軸部46が回転自在に軸支されている。
【0034】
さらに、センサホルダ42の脚板14とは反対側(すなわち、センサホルダ42とセンサカバーとの間)にはVギヤ48が設けられている。Vギヤ48は全体的にスプール18の軸方向に沿って脚板14とは反対側へ向けて開口した浅底の有底円筒形状(盆形状)とされており、軸部46に対して同軸的且つ一体的に取り付けられている。Vギヤ48の中心軸線からVギヤ48の半径方向に離間した位置にはWパウル50が設けられている。Wパウル50は、基端側がVギヤ48の中心軸線の向きと同じ向きを軸方向とする軸周りに揺動可能にVギヤ48に支持されており、Wパウル50はこの支持位置を中心に揺動することで先端側がVギヤ48の外縁に対して接離する。
【0035】
また、Vギヤ48にはイナーシャマス52が設けられている。イナーシャマス52はVギヤ48の中心軸線の向きと同じ向きを軸方向とする軸周りに揺動可能にVギヤ48に支持されている。このようにVギヤ48に支持されたイナーシャマス52はVギヤ48に対してイナーシャマス52が巻取方向に相対的に回動(揺動)すると、イナーシャマス52は上記のWパウル50を押圧し、Wパウル50の先端側をVギヤ48の外縁に対して接近させる。さらに、イナーシャマス52の側方には圧縮コイルばね54が設けられている。圧縮コイルばね54は一端がイナーシャマス52に係合しており、イナーシャマス52を引出方向に付勢する。
【0036】
一方、図2に示されるように、Vギヤ48の脚板14とは反対側には回動部材としてのセンサギヤ58が設けられている。センサギヤ58は軸部46が貫通するようにVギヤ48に形成された円筒形状のボス60に回動可能に支持されている。また、センサギヤ58は脚板14側へ向けて開口した浅底の有底円筒形状(盆形状)とされており、その内側に上記のVギヤ48が配置される。このセンサギヤ58の近傍にはリターンスプリング62が設けられている。このリターンスプリング62は、圧縮コイルスプリング等で構成されており、センサギヤ58がボス60周りに引出方向に回動すると付勢力が増加して、センサギヤ58を巻取方向に付勢する。
【0037】
このセンサギヤ58の内側には内歯のラチェット歯が、ボス60に対して同軸的に形成されている。このラチェット歯はVギヤ48の内側に入り込んでいる。Wパウル50の先端側がVギヤ48の外縁に接近するように回動すると、Wパウル50の先端側がセンサギヤ58のラチェット歯に係合する。上記のように、センサギヤ58はVギヤ48のボス60に回動可能に支持されているが、Wパウル50の先端側がセンサギヤ58のラチェット歯に係合した状態でVギヤ48が引出方向に回転すると、Wパウル50の先端側にセンサギヤ58のラチェット歯が押圧されてセンサギヤ58がVギヤ48と共に引出方向に回転する。
【0038】
また、センサギヤ58には連結爪取付部72が形成されている。連結爪取付部72には軸方向がスプール18の軸方向に沿った支持軸74が形成されている。この支持軸74には連結爪76が支持軸74周りに回動可能に支持されている。
【0039】
連結爪76は支持軸74周りに回動することで先端が図1に示されるVギヤ48の外周部に接離する。この連結爪76に対応してVギヤ48の外周部にはラチェット歯78が形成されており、連結爪76がVギヤ48の外周部に接近するように回動すると、連結爪76の先端がラチェット歯78に噛み合う。この状態で、Vギヤ48が引出方向に回転すると、Vギヤ48の回転がラチェット歯78、連結爪76、支持軸74、及び連結爪取付部72を介してセンサギヤ58に伝わり、センサギヤ58を引出方向に回動させる。
【0040】
一方、図1に示されるように、センサホルダ42には加速度センサ80が設けられている。加速度センサ80はセンサフレーム82を備えている。センサフレーム82には載置部84が設けられている。載置部84は略車両上方へ向けて開口するように湾曲又は傾斜した凹状の傾斜面で、この載置部84上には硬球86が載置されている。硬球86の上側には押上片88が設けられている。
【0041】
押上片88は略車両前後方向を軸方向とする軸周りに回動可能にセンサフレーム82から立設された縦壁に支持されており、硬球86が載置部84上を転動して載置部84の傾斜面を昇り上がると硬球86が押上片88を押し上げる。押上片88の上方には上述した連結爪76が設けられており、硬球86に押上片88を押し上げられた押上片88は連結爪76を押し上げる。これにより、連結爪76の先端がラチェット歯78に噛み合う。
【0042】
一方、連結爪取付部72の近傍でセンサギヤ58の脚板14側には回転伝達機構を構成するリンク部材94が設けられている。このリンク部材94に対応してフレーム12の脚板14には支持体96が取り付けられている。支持体96には軸方向がスプール18の中心軸線方向と同じ向きを向く支持シャフト98が設けられている。上記のリンク部材94には支持シャフト98の嵌挿が可能な筒状体100が形成されており、支持シャフト98を筒状体100に嵌挿させることで、支持シャフト98周りにリンク部材94が回転自在に支持される。
【0043】
リンク部材94には係合ピン102が形成されている。係合ピン102はリンク部材94の回転中心である筒状体100の中心軸線に対してリンク部材94の回転半径方向に離間した位置からスプール18の軸方向と同方向にセンサギヤ58の側へ向けて突出形成されている。この係合ピン102に対応してセンサホルダ42には透孔104が形成されている。上述した係合ピン102は透孔104を通過している。透孔104は支持シャフト98及び筒状体100の中心軸線を中心に湾曲した円弧状に形成されている。このため、透孔104を係合ピン102が通過していても支持シャフト98周りにリンク部材94が所定角度回転できる。
【0044】
透孔104を通過した係合ピン102に対応して図2に示されるセンサギヤ58の所定部位にはガイド孔114が形成されている。このガイド孔114は内幅寸法が係合ピン102の外径寸法よりも僅かに大きな長孔とされており、この内側を係合ピン102が貫通している。センサギヤ58がスプール18の中心軸心周りに回動すると、ガイド孔114の内周部が係合ピン102を押圧し、これにより、リンク部材94が支持シャフト98周りに回動する。
【0045】
一方、図1に示されるように、上記の支持体96には取付ピン120によってロック部材としてのロックパウル122が支持シャフト98の軸方向と同じ向きを軸方向とする軸周りに回動自在に支持されている。このロックパウル122に対応してスプール18にはロックベース124が設けられている。ロックベース124は一部がスプール18の脚板14側の開口端からスプール18に対して同軸的に相対回転可能に嵌挿されている。但し、ロックベース124には、トーションシャフト24が相対回転不能な状態で貫通している。このため、ロックベース124は、トーションシャフト24を介してスプール18に対して相対回転不能な状態で繋がっている。
【0046】
また、ロックベース124の外周部にはラチェット歯128が設けられている。上記のロックパウル122の先端側には、ラチェット歯128に噛み合い可能なラチェット歯(ロック歯)が形成されており、ロックパウル122の先端側がラチェット歯128の外周部に接近する向きへロックパウル122が回動すると、ロックパウル122のラチェット歯がラチェット歯128(ロックベース124)に噛み合う。このように、ロックパウル122のラチェット歯がラチェット歯128(ロックベース124)に噛み合った状態では、ロックベース124の引出方向への回転が規制される。
【0047】
このロックパウル122の回動中心からその半径方向に変位した位置では、ロックパウル122に回転伝達機構を構成する係合ピン132が形成されている。係合ピン132はロックパウル122におけるリンク部材94側の端面からスプール18の軸方向と同方向に突出形成されている。この係合ピン132に対応してリンク部材94にはガイド孔(図示省略)が形成されている。係合ピン132はこのリンク部材94のガイド孔に入り込んでおり、センサギヤ58が引出方向に回転してガイド孔114の内周部に係合ピン102が押圧されることでリンク部材94が支持シャフト98周りに巻取方向に回動すると、リンク部材94のガイド孔の内周部が係合ピン132を押圧する。これによって、ロックパウル122が回動するとロックパウル122のラチェット歯がロックベース124のラチェット歯128に接近して噛み合う。
【0048】
一方、図2に示されるように、センサギヤ58の脚板14とは反対側には切替手段としてのキャリアプレート142が設けられている。キャリアプレート142には透孔144が形成されている。この透孔144に対応してセンサギヤ58には支持部146が形成されており、透孔144を支持部146が貫通している。キャリアプレート142はスプール18に対して同軸的にセンサギヤ58に対して相対回転可能に支持部146に支持される。このキャリアプレート142には押圧片148が形成されていると共に、この押圧片148とは別に押圧部150が設定されている。
【0049】
これらの押圧片148及び押圧部150に対応してセンサギヤ58には切替レバー152が設けられている。切替レバー152は筒状部154を備えている。筒状部154に対応してセンサギヤ58には支持軸156が形成されている。支持軸156は軸方向がスプール18の軸方向に沿っており、筒状部154に嵌挿されている。これによって切替レバー152は支持軸156周りに回動可能に支持軸156に支持されている。支持軸156の外周部からはレバー状の当接部158が延出されている。
【0050】
当接部158はキャリアプレート142の回転周方向に押圧片148及び押圧部150と対向しており、キャリアプレート142が引出方向に回転すると押圧片148が当接部158に当接して当接部158を押圧し、切替レバー152は支持軸156周りの一方の側へ回動させる。これに対して、キャリアプレート142が巻取方向に回転すると押圧部150が当接部158に当接して当接部158を押圧し、切替レバー152は支持軸156周りの他方の側へ回動させる。
【0051】
また、切替レバー152は係合爪160を備えている。係合爪160に対応してセンサギヤ58には切欠162が形成されており、支持軸156周りの一方の側へ切替レバー152が回動すると係合爪160の先端側は切欠162を通過してセンサギヤ58の内側に入り込む。このようにして係合爪160がセンサギヤ58の内側に入り込むと、係合爪160の先端が上述したVギヤ48のラチェット歯78に係合する。これによってもセンサギヤ58はVギヤ48に連結され、センサギヤ58はVギヤ48と共に引出方向に回転する。
【0052】
さらに、切替レバー152はばね係止部164を備えている。ばね係止部164はコイルばね166の一端からコイルばね166の内側に入り込んでいる。このコイルばね166の他端からはセンサギヤ58に形成されたばね係止突起168が入り込んでいる。支持軸156周りの切替レバー152の回動中間位置を境として、この境よりも支持軸156周りの一方の側に切替レバー152が位置すると、コイルばね166は支持軸156周りの一方の側へ切替レバー152を付勢し、上記の境よりも支持軸156周りの他方の側に切替レバー152が位置すると、コイルばね166は支持軸156周りの他方の側へ切替レバー152を付勢する。
【0053】
一方、キャリアプレート142において透孔144の側方には複数(本実施の形態では2つ)の透孔170が形成されている。これらの透孔170には遊星ギヤ172が取り付けられている。図4に示されるように、遊星ギヤ172は小径ギヤ部174を備えている。小径ギヤ部174は図2に示される透孔170を通過して透孔170を中心に回転自在にキャリアプレート142に支持されている。小径ギヤ部174はキャリアプレート142のセンサギヤ58側に突出している。図2に示されるように、この小径ギヤ部174に対応してセンサギヤ58には内歯ギヤ176が設けられている。内歯ギヤ176はセンサギヤ58におけるキャリアプレート142と対向する側の面にスプール18に対して同軸的に形成されている。図3に示されるように、遊星ギヤ172の小径ギヤ部174は、このセンサギヤ58の内歯ギヤ176に噛み合っている。
【0054】
一方、図4に示されるように、遊星ギヤ172は小径ギヤ部174よりも大きな大径ギヤ部178を備えている。大径ギヤ部178は小径ギヤ部174のセンサギヤ58とは反対側で小径ギヤ部174に対して同軸的に一体形成されている。図2に示されるように、この大径ギヤ部178に対応して上記のVギヤ48には太陽ギヤ180が形成されている。太陽ギヤ180はボス60におけるVギヤ48の本体部分とは反対側の端部でボス60に対して同軸的に一体形成されている。太陽ギヤ180は、遊星ギヤ172の小径ギヤ部174が内歯ギヤ176に噛み合った状態でキャリアプレート142よりもセンサギヤ58とは反対側へ突出する。この状態では、図3に示されるように、太陽ギヤ180は大径ギヤ部178に噛み合うことができる。
【0055】
すなわち、本実施の形態では、太陽ギヤ180、内歯ギヤ176、及び遊星ギヤ172が、内歯ギヤ176を固定して太陽ギヤ180から出力された回転力を遊星ギヤ172に伝える遊星歯車機構を構成している。したがって、本実施の形態では、太陽ギヤ180の回転が減速されて遊星ギヤ172に伝わり、遊星ギヤ172が透孔170を中心に自転しつつ、遊星ギヤ172が太陽ギヤ180の周囲を太陽ギヤ180の回転方向と同じ向きに回転し、これによって、キャリアプレート142が遊星ギヤ172の公転方向に回転する。
【0056】
ここで、本実施の形態において、太陽ギヤ180の回転速度に対する遊星ギヤ172の公転速度の比率(減速比)は『所定の巻取状態』から『全引出状態』までに要するスプール18の回転数(すなわち、太陽ギヤ180の回転数)で、遊星ギヤ172の公転回数が1回転未満になるように設定されている。
【0057】
また、キャリアプレート142における押圧片148や押圧部150の形成位置は、『全引出状態』で支持軸156周りの切替レバー152の回動中間位置を境として、この境よりも支持軸156周りの一方の側まで押圧片148が切替レバー152の当接部158を押圧でき、『所定の巻取状態』で上記の境よりも支持軸156周りの他方の側まで押圧部150が切替レバー152の当接部158を押圧できるように設定されている。
【0058】
また、図4に示されるように、上記の遊星ギヤ172には複数(本実施の形態では3つ)の透孔202が形成されている。これらの透孔202は小径ギヤ部174よりも遊星ギヤ172の回転半径方向外側で遊星ギヤ172の中心軸線周りに等間隔に形成されており、遊星ギヤ172の中心軸線方向に大径ギヤ部178を貫通している。
【0059】
さらに、上記の遊星ギヤ172にはガイド孔204を構成する溝部206が形成されている。この溝部206は遊星ギヤ172の回転半径方向に長手のスリット状に形成されていると共に、長手直交方向の開口幅は上記の透孔202の直径寸法や、遊星ギヤ172の歯底の幅寸法(すなわち、遊星ギヤ172の歯底における周方向寸法)よりも短く設定されている。この溝部206は小径ギヤ部174よりも遊星ギヤ172の回転半径方向外側に形成されており、遊星ギヤ172の中心軸線方向に大径ギヤ部178を貫通している。また、溝部206の長手方向一端は上述した複数の透孔202のうちの1つに繋がっている(すなわち、上記の複数の透孔202のうち、溝部206が繋がった透孔202は溝部206と共にガイド孔204を構成する)。また、溝部206の長手方向他端は大径ギヤ部178における1つの歯底の幅方向略中央にて開口している。
【0060】
このような溝部206と、この溝部206の一端が繋がった透孔202とにより構成されたガイド孔204には、遊星ギヤ172を太陽ギヤ180及び内歯ギヤ176に噛み合わせる際に、図5に示されるガイド部材としてのガイドプレート222が嵌まり込む。
【0061】
図5に示されるようにガイドプレート222は基部224を備えている。本実施の形態において基部224は長手方向が遊星ギヤ172の中心軸線に沿い、厚さ方向が上述した溝部206の長手直交方向に沿った矩形の平板状に形成されている。この基部224の幅方向一端側は図示しないアクチュエータの可動部に保持されている。このアクチュエータは可動部が基部224の幅方向にスライドできるようになっており、ガイドプレート222はアクチュエータを作動させることで基部224の幅方向に直線的に往復移動する。
【0062】
この基部224の幅方向他端にはテーパ部226が形成されている。このテーパ部226は遊星ギヤ172における大径ギヤ部178の歯溝の形状に設定されており、基部224の幅方向を遊星ギヤ172の回転半径方向に沿わせた状態でアクチュエータを作動させてガイドプレート222を遊星ギヤ172に接近させると、基部224のテーパ部226が大径ギヤ部178の歯溝に嵌まり込む。
【0063】
このテーパ部226の先端からは連続してプレート部228が形成されている。プレート部228における基部224の幅方向に沿った寸法は溝部206の長手方向寸法に略等しく、プレート部228の厚さ寸法は溝部206の長手直交方向に沿った溝部206の開口寸法に略等しく(厳密には僅かに大きく)設定されている。上記のテーパ部226が大径ギヤ部178の歯溝に入り込み、更に、テーパ部226の先端が歯底に当接した状態ではプレート部228が溝部206の内側に入り込む。
【0064】
このプレート部228のテーパ部226とは反対側の端部にはロッド部230が形成されている。ロッド部230は外径寸法が上述した透孔202の内径寸法に略等しい(厳密には僅かに小さい)断面円形の棒形状に形成されている。上記のテーパ部226が大径ギヤ部178の歯溝に入り込み、更に、テーパ部226の先端が歯底に当接した状態ではロッド部230が透孔202の内側に入り込む。また、このロッド部230の外径寸法はプレート部228の厚さ寸法、すなわち、溝部206の長手直交方向の開口幅寸法よりも大きい。
【0065】
このため、ロッド部230が円孔の内側に入り込んだ状態でガイドプレート222を遊星ギヤ172の半径方向外方へスライドさせてプレート部228を溝部206から引き抜こうとすると、透孔202の内周部がロッド部230の外周部に干渉する。これにより基部224の幅方向に沿ったガイドプレート222に対する遊星ギヤ172の相対変位を規制できる。
【0066】
但し、基部224の長手方向に沿った一端側では、この向きに沿ったプレート部228の端部までロッド部230が到達しておらず、基部224の長手方向に沿った一端側におけるプレート部228の端部とロッド部230の端部との段差は、遊星ギヤ172の中心軸線方向に沿った大径ギヤ部178の厚さ寸法以上に設定されている。このため、大径ギヤ部178の小径ギヤ部174側の端面が、基部224の長手方向に沿った一端側におけるプレート部228の端部まで到達すると、ロッド部230が透孔202から抜け出るようになっている。
【0067】
また、基部224の長手方向他端側におけるロッド部230の端部は、この向きに沿ったプレート部228よりも突出していると共に漸次先細のテーパ状に形成されている。
【0068】
<本実施の形態の作用、効果>
(ウェビング巻取装置10の動作に関する説明)
次に、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
【0069】
本ウェビング巻取装置10では、スプール18から引出されたウェビング20を乗員が装着した状態で、車両が急減速状態になると、硬球86が慣性で車両前方側へ転動し、これにより、硬球86が載置部84の傾斜面を昇り上がる。このように硬球86が載置部84の傾斜面を昇り上がると硬球86が押上片88を押し上げる。押し上げられた押上片88は、センサギヤ58の連結爪76に係合して連結爪76を押し上げて回動させる。これにより、Vギヤ48のラチェット歯78に連結爪76が噛み合う。
【0070】
一方、車両が減速した際の慣性で、乗員の身体が略車両前方側へ移動すると、乗員の身体によりウェビング20が引っ張られる。このように、ウェビング20が引っ張られるとスプール18は引出方向に回転する。スプール18が引出方向に回転すると、トーションシャフト24がスプール18と共に引出方向に回転し、ひいては、Vギヤ48が引出方向に回転する。このようにしてVギヤ48が引出方向に回転すると、基本的にはWパウル50及びイナーシャマス52がVギヤ48と共に引出方向に回転する。
【0071】
しかしながら、Vギヤ48が所定の大きさ以上の加速度で引出方向に回転した場合には、イナーシャマス52が慣性によって回転せずにその位置で留まろうとする(すなわち、イナーシャマス52がVギヤ48の回転に追従できない)。この結果、引出方向に回転するVギヤ48と、これに追従できないイナーシャマス52との間に圧縮コイルばね54の付勢力に抗した相対的な回転が生じ、イナーシャマス52はVギヤ48に対して巻取方向へ相対回転する。
【0072】
このような相対回転がイナーシャマス52に生じると、イナーシャマス52がWパウル50を押圧し、その基端側を軸にWパウル50の先端側をVギヤ48の外周縁へ接近させる向きにWパウル50を回動させる。このように回動したWパウル50は先端側がセンサギヤ58のラチェット歯に接近して噛み合う。
【0073】
以上のように、Vギヤ48のラチェット歯78に連結爪76が噛み合った状態や、センサギヤ58のラチェット歯にWパウル50の先端側が噛み合った状態でVギヤ48が引出方向に回転すると、このVギヤ48の回転がセンサギヤ58に伝わり、センサギヤ58がリターンスプリング62の付勢力に抗してVギヤ48と共に引出方向に回動する。
【0074】
このようにセンサギヤ58が引出方向に回動すると、センサギヤ58に形成されたガイド孔114の内周部が係合ピン102の外周部を押圧して、リンク部材94を巻取方向に回動させる。リンク部材94が巻取方向に回動すると、リンク部材94に形成されたガイド孔の内周部が係合ピン132の外周部を押圧して、ロックパウル122を巻取方向に回動させる。このようにロックパウル122がロックベース124に接近し、ロックパウル122のラチェット歯がロックベース124のラチェット歯128に噛み合い、ロックベース124の引出方向への回転が規制される。
【0075】
ロックベース124はトーションシャフト24を介してスプール18に対して相対回転不能な状態で繋がっているので、ロックベース124の引出方向への回転が規制されることで、スプール18の引出方向への回転が規制される。これにより、スプール18からのウェビング20の引出しが規制されるので、例えば、車両急減速状態で車両前方側へ慣性移動しようとする乗員の身体をウェビング20によって強く拘束できる。
【0076】
一方、ウェビング20が引っ張られてスプール18からウェビング20が引出されると、スプール18が引出方向に回転する。このようにスプール18が引出方向に回転すると、Vギヤ48がスプール18と共に引出方向に回転し、ひいては、Vギヤ48の一部である太陽ギヤ180が引出方向に回転する。太陽ギヤ180の引出方向の回転は減速されて遊星ギヤ172に伝わり、これにより、遊星ギヤ172が太陽ギヤ180の周囲を引出方向に公転(回転)する。
【0077】
遊星ギヤ172が引出方向に公転すると遊星ギヤ172と共にキャリアプレート142が引出方向に回転する。これにより、キャリアプレート142の押圧片148が切替レバー152の当接部158に接近する。『全引出状態』までスプール18が引出方向に回転すると、キャリアプレート142の押圧片148が切替レバー152の当接部158に当接して、支持軸156周りの切替レバー152の回動中間位置を境として、この境よりも支持軸156周りの一方の側まで押圧片148が当接部158を押圧する。
【0078】
このように当接部158が押圧片148に押圧されて回動すると、切替レバー152がコイルばね166の付勢力により支持軸156周りの一方の側へ更に回動する。これによって切替レバー152の係合爪160の先端側がセンサギヤ58に形成された切欠162を通過してセンサギヤ58の内側に入り込む。このようにして係合爪160がセンサギヤ58の内側に入り込むと、係合爪160の先端が上述したVギヤ48のラチェット歯78に係合する。
【0079】
この状態ではVギヤ48が引出方向に回転すると、このVギヤ48の回転がセンサギヤ58に伝わり、センサギヤ58がリターンスプリング62の付勢力に抗してVギヤ48と共に引出方向に回動する。すなわち、この状態はVギヤ48のラチェット歯78に連結爪76が噛み合った状態や、センサギヤ58のラチェット歯にWパウル50の先端側が噛み合った状態と同じである。したがって、この状態でスプール18が引出方向に回転するとロックパウル122のラチェット歯がロックベース124のラチェット歯128に噛み合い、ロックベース124の引出方向への回転、ひいては、スプール18の引出方向への回転が規制される。
【0080】
すなわち、この状態では、車両の状態(車両が急減速したか否か)等とは無関係にスプール18からウェビング20を引出すことができない。
【0081】
一方、この状態でスプール18が巻取方向に回転してウェビング20を巻取るとスプール18、ひいては、太陽ギヤ180が巻取方向に回転する。太陽ギヤ180が巻取方向に回転するとキャリアプレート142が巻取方向に回転し、キャリアプレート142の押圧部150が切替レバー152の当接部158に接近する。『所定の巻取状態』までスプール18が巻取方向に回転すると、キャリアプレート142の押圧部150が切替レバー152の当接部158に当接して、支持軸156周りの切替レバー152の回動中間位置を境として、この境よりも支持軸156周りの他方の側まで押圧部150が当接部158を押圧する。
【0082】
このように当接部158が押圧部150に押圧されて回動すると、切替レバー152がコイルばね166の付勢力により支持軸156周りの他方の側へ更に回動する。これによって切替レバー152の係合爪160とVギヤ48のラチェット歯78との係合が解消される。これにより、スプール18の引出方向への回転が可能になる。
【0083】
(遊星ギヤ172の組み付けに関する説明)
次に、本ウェビング巻取装置10の組み立て工程における遊星ギヤ172の組み付けに関して説明する。
【0084】
本ウェビング巻取装置10では、遊星ギヤ172を組み付けるに際して上述した全引出状態までスプール18が回転させられ、この全引出状態に対応する回転位置まで太陽ギヤ180が回転させられる。
【0085】
この状態で、アクチュエータが作動するとキャリアプレート142における回転軸方向側方(図6の上方)にガイドプレート222が移動する。この状態でガイドプレート222におけるロッド部230のテーパ部側(図6の上方)からロッド部230が遊星ギヤ172の透孔202を貫通して、ガイドプレート222のプレート部228が遊星ギヤ172の溝部206を通過するようにガイドプレート222に遊星ギヤ172が嵌め込まれる。この状態で、遊星ギヤ172は、大径ギヤ部178の外歯が太陽ギヤ180に噛み合い、小径ギヤ部174が内歯ギヤ176の内歯に噛み合うように、ガイドプレート222の位置が予め設定されている。
【0086】
この状態で、ガイドプレート222のロッド部230及びプレート部228に遊星ギヤ172を案内させつつ、遊星ギヤ172、太陽ギヤ180、及び内歯ギヤ176の軸方向に遊星ギヤ172を太陽ギヤ180及び内歯ギヤ176に接近させる(すなわち、図6における下方へ遊星ギヤ172をスライドさせる)。これにより、遊星ギヤ172の大径ギヤ部178は太陽ギヤ180に噛み合い、小径ギヤ部174が内歯ギヤ176に噛み合う。
【0087】
次いで、この状態では、溝部206にプレート部228が入り込んでいるものの、ロッド部230は透孔202から抜け出ている。したがって、この状態で、ガイドプレート222における基部224の幅方向、すなわち、図6の矢印F方向にプレート部228を溝部206の他端側へガイドプレート222をスライドさせると、ガイドプレート222のプレート部228が溝部206から抜き取られる。
【0088】
このように、本実施の形態に係るウェビング巻取装置10では、ガイドプレート222に遊星ギヤ172を嵌め込み、ガイドプレート222に案内させつつ太陽ギヤ180及び内歯ギヤ176側へ遊星ギヤ172をスライドさせるだけで簡単に太陽ギヤ180及び内歯ギヤ176に遊星ギヤ172を噛み合わせることができる。
【0089】
しかも、溝部206は遊星ギヤ172の回転半径方向に沿った直線状である。このため、太陽ギヤ180及び内歯ギヤ176に遊星ギヤ172を噛み合わせた後には、基部224の幅方向にガイドプレート222をスライドさせるだけで遊星ギヤ172からガイドプレート222を抜き取ることができる。このため、ガイドプレート222を移動させるためのアクチュエータを比較的簡素な構成にすることができる。
【0090】
さらに、ガイドプレート222のプレート部228が挿し込まれる溝部206は、その他端が大径ギヤ部178の歯底にて開口している。大径ギヤ部178は太陽ギヤ180に噛み合い、太陽ギヤ180の回転力が大径ギヤ部178の外歯に伝えられることで遊星ギヤ172が回転する構成である。しかし、太陽ギヤ180からの回転力は大径ギヤ部178の外歯の側面が受け、大径ギヤ部178の歯底には太陽ギヤ180の外歯が接していない。すなわち、大径ギヤ部178の歯底は太陽ギヤ180の回転力を受けることに関して何ら寄与していない。このため、溝部206を形成しても、大径ギヤ部178としての機能は影響を受けず、大径ギヤ部178は太陽ギヤ180からの回転力を受けることができる。
【符号の説明】
【0091】
10 ウェビング巻取装置
18 スプール
20 ウェビング
40 ロック機構
152 切替レバー(切替手段)
172 遊星ギヤ
180 太陽ギヤ
204 ガイド孔
222 ガイドプレート(ガイド部材)
図1
図3
図4
図2
図5
図6