(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の魚釣用リールでは、クラッチの回転中心から釣糸を誘導するためのピラーまでの距離が比較的長く設定されており、操作性の向上や感度の向上を図るために、この距離を短くしたいという要望があった。
また、構成を簡素化するという観点から、ピラーが支持されているパーミングプレート(サムレスト)やフレームに貫通穴等を設けることなく、ピラーを設けたいという要望があった。
【0005】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、操作性の向上や感度の向上を図ることができ、ピラーの支持構造の簡素化を図ることができる魚釣用リールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決する本発明の魚釣用リールは、リール本体の左右側板間に回転自在に支持されたスプールと、前記左右側板間に支持され、ハンドル軸の回転操作に連動して回転する螺軸と、前記螺軸により前記左右側板間に往復動可能に設けられ、前記スプールに釣糸を平行に巻回する釣糸案内体と、前記釣糸案内体へ釣糸を誘導するためのピラーと、を備え、前記釣糸案内体は、左右方向に幅狭に形成され、釣糸巻き取り状態において前記スプールに釣糸を案内する釣糸案内部と、前記釣糸案内部よりも左右方向に幅広に形成され、釣糸放出状態において釣糸の放出抵抗を軽減する開口部とを有しており、前記ピラーは、前記釣糸案内部に釣糸を誘導する釣糸巻き取り位置と、前記開口部に釣糸を誘導する釣糸放出位置と、の間で前記螺軸を中心として揺動可能に軸支されていることを特徴とするものである。
【0007】
この魚釣用リールによれば、釣糸案内体の近傍において螺軸を中心として、ピラーを釣糸巻き取り位置と釣糸放出位置との間で揺動させることができる。そして、釣糸巻き取り時には、ピラーが釣糸巻き取り位置に揺動して釣糸案内部に釣糸が誘導され、釣糸は、釣糸案内部において左右方向の移動が規制された状態で位置決めされる。
また、釣糸放出時には、ピラーが釣糸放出位置に揺動して開口部に釣糸が誘導され、釣糸は、開口部内を左右方向に繰り出し位置を変えながら通過する。
【0008】
また、前記螺軸を覆うように前記左右側板間に架設され、前記釣糸案内体を前記螺軸に沿って往復動可能に案内する案内筒を備え、前記案内筒は、前記螺軸周りに回動可能であり、前記ピラーは、前記案内筒に支持されていることを特徴とする。
【0009】
この魚釣用リールによれば、ピラーは、左右側板間に架設された案内筒に支持され、案内筒の回動により螺軸周りに揺動して、釣糸巻き取り位置と釣糸放出位置とに移動する。
【0010】
また、釣糸巻き取り状態と釣糸放出状態とに切り換え操作可能なクラッチ操作部を備え、前記ピラーは、前記クラッチ操作部の切り換え操作に連動して揺動し、釣糸巻き取り状態で前記釣糸巻き取り位置に移動し、釣糸放出状態で前記釣糸放出位置に移動することを特徴とする。
【0011】
この魚釣用リールによれば、釣糸巻き取り状態へのクラッチ操作部の切り換え操作に連動して、釣糸巻き取り位置にピラーを移動させることができ、また、釣糸放出状態へのクラッチ操作部の切り換え操作に連動して、釣糸放出位置にピラーを移動させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ピラーは、釣糸案内体が設けられる螺軸を中心として揺動するようになっており、釣糸案内体の近傍で釣糸巻き取り位置と釣糸放出位置とに移動することとなるので、回転中心(螺軸の中心)からの距離を短く設定することができる。したがって、その分、操作性の向上や感度の向上を図ることができ、ピラーの支持構造の簡素化を図ることができる魚釣用リールが得られる。
【0013】
また、ピラーは、左右側板間に架設された案内筒に支持され、案内筒の回動により螺軸周りに揺動して、釣糸巻き取り位置と釣糸放出位置とに移動するようになっているので、案内筒を利用して簡単にピラーを設けることができ、支持構造の簡素化を図ることができる。また、案内筒に支持されてピラーが設けられているので、ピラーの剛性を高めることが可能である。このことは、操作性の向上や感度の向上に寄与する。
【0014】
また、ピラーは、クラッチ操作部の切り換え操作に連動して揺動し、釣糸巻き取り状態で釣糸巻き取り位置に移動し、釣糸放出状態で前記釣糸放出位置に移動するので、釣糸放出(仕掛けの投入)から釣糸巻き取りまでの一連の操作をスムーズに行うことができ、操作性に優れ、釣果の向上を期待できる魚釣用リールが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る魚釣用リールの実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、「前後」「左右」を言うときは、
図1に示した方向を基準とする。なお、説明において、同一の要素には同一の符号を用い、重複する説明は省略する。
【0017】
図1に示すように、魚釣用リールのリール本体1は、釣糸が巻回されるスプール5を回転可能に支持した左右側板2A,2Bを備え、右側板2Bに設けた駆動機構10と、スプール5の前方において、駆動機構10のハンドル軸7aの回転操作に連動して左右方向に往復動可能に設けられ、スプール5に釣糸を平行に巻回する釣糸案内体22と、この釣糸案内体22の後方に前後方向に揺動可能に配置され、釣糸案内体22に釣糸を誘導するピラー30と、を備えている。
ここで、リール本体1の「側板」は、スプール5の軸方向の両端に位置する部材であり、本実施形態では、各種部材が支持されるフレーム体を構成する左右フレーム2a,2bと、これら左右フレーム2a,2bに所定の空間をもって夫々装着される左右外側板(カバー体)3a,3bとから構成される。左右フレーム2a,2bと左右外側板3a,3bとの間には内部空間が形成され、この内部空間には、駆動機構10、クラッチ機構50(
図3参照)、図示しないバックラッシュ防止機構70(
図1(a)参照)等が設置されるようになっている。なお、左右フレーム2a,2bと外側板3a,3bとの形状については、適宜変形することが可能であり、それらを構成する材料は適宜設定することができる。また、これらの装着方法や装着位置についても、リール本体1の構成等により、種々の方法を用いることが可能である。
【0018】
左右フレーム2a,2bは、図示しない複数の支柱を介して一体化されており、図示しない下部の支柱には、釣竿のリールシート(不図示)に装着される釣竿取付脚1cが設けられている。
また、左右フレーム2a,2b間には、
図1に示すように、軸受5a,5bを介してスプール軸5cが回転可能に支持されており、このスプール軸5cにスプール5が取り付けられている。
スプール5は、ハンドル7を回転操作することによって回転させることができるように構成されており、ハンドル7は、外側板3bから突出したハンドル軸7aの端部に取り付けられ、外側板3bとの間に介在された逆転防止機構7b(転がり式一方向クラッチ)によって、釣糸巻き取り方向にのみ回転可能となっている。
なお、スプール軸5cを回転可能に支持する軸受5a,5bは、左右フレーム2a,2bの部分に配設されていてもよいし、外側板3a,3bの部分に配設されていてもよい。
【0019】
右フレーム2bと外側板3bとの間には、ハンドル7の回転運動をスプール軸5c、および後記するレベルワインド機構20の螺軸21に伝達する駆動機構10、駆動力の伝達を継脱するクラッチ機構50(
図3参照)のほか、魚釣時にスプール5から釣糸が繰り出された際に、スプール5にドラグ力を付与するドラグ機構60等が収容されている。
【0020】
駆動機構10は、公知のように、ハンドル軸7aに回転可能に支持された駆動歯車11と、この駆動歯車11に噛合するピニオン12とを備えている。ピニオン12は、スプール軸5cと同軸上に設置されており、ピニオン軸12cに沿って軸方向に移動可能となっている。また、ピニオン12の外周には、円周溝12aが形成されており、この円周溝12aに、クラッチ機構50のヨーク54(
図3参照)が係合して、ピニオン12を軸方向に移動させるようになっている。すなわち、ピニオン12が軸方向に移動することで、スプール軸5cとの間で継脱がなされ、釣糸巻き取り状態(動力伝達状態、クラッチON状態/釣糸放出状態(動力遮断状態、クラッチOFF状態)に切り換えられるようになっている。
【0021】
スプール5の前方において、リール本体1の左右側板2A,2B間には、レベルワインド機構20が配置されている。レベルワインド機構20は、駆動機構10を介して回転駆動される螺軸21と、螺軸21に装着されて左右方向に往復動可能に設けられた釣糸案内体22と、螺軸21を覆う案内筒としての筒状体215とを備えている。筒状体215には、ピラー30を支持する支持部材31a,31b(
図1(b)参照)が取り付けられている。
【0022】
螺軸21は、左右側板2A,2B間に回転可能に支持されており、駆動機構10を介して回転駆動されるようになっている。
螺軸21の左端部は、
図6に示すように、円筒状の回転支持部材211を介して左フレーム2aに回転可能に支持され、ワッシャー212および抜け止めリング213aにより保持されている。回転支持部材211は、左フレーム2aの内側に挿入される円筒状の挿入部214を有しており、この挿入部214の外周面214aと筒状体215の左端部の内周面215aとの間に支持部材31aの基端部31a1が挟み込まれてこれらが一体に回り止め保持されている。
なお、回転支持部材211は、左フレーム2aに固定された抜け止め部材2a1により、左フレーム2aの側方へ抜けが防止された状態で保持されている。
【0023】
螺軸21の右端部は、
図6に示すように、ベアリング25および回動プレート26を介して右フレーム2bに回転可能に支持されている。螺軸21の右端部には、連動歯車21aが抜け止めリング213bを介して取り付けられている。この連動歯車21aには、
図1に示すように、ハンドル軸7aの駆動歯車11に隣接して設けられた歯車11aが噛合している。これにより、ハンドル7を巻き取り回転操作すると、ハンドル軸7aの回転が、歯車11aおよび連動歯車21aを通じて螺軸21に伝わり、螺軸21が回転駆動される。
【0024】
図6に示すように、回動プレート26は、右フレーム2bに支持される円筒状の基部26aと、基部26aから後方へ向けて延出する延出部26bとを備えている。基部26aは、右フレーム2bの内側に挿入される円筒状の挿入部216を有しており、この挿入部216の外周面216bと筒状体215の右端部の内周面215bとの間に支持部材31bの基端部31b1が挟み込まれてこれらが一体に回り止め保持されている。
回り止め保持の構造は、例えば、
図3に示すように、基端部31b1の周部に突部31b2を設け、この突部31b2が係合する凹部215bを筒状体215の対向部に設けるものが挙げられる。なお、支持部材31aの基端部31a1側の構造も同様とすることができる。
延出部26bは、延出部26bの長手方向に沿う長孔26cを有している(
図3参照)。この長孔26cには、
図3に示すように、クラッチ機構50の腕部51aに設けられたピン51bが係合している。したがって、クラッチ機構50の腕部51aが後記するように回動すると、その動きがピン51bを介して延出部26bに伝わり、腕部51aの回動方向に延出部26bが回動する。これにより回動プレート26が回動し、この回動に連動して筒状体215および支持部材31a,31bが一体的に揺動する(
図1(b)参照)。
【0025】
螺軸21の外周面には、
図1(a)に示すように、螺旋溝21bが形成されており、この螺旋溝21bには、釣糸案内体22に設けられたナット27で抜け止めされた係合部27c(
図2参照、以下同じ)が係合している。
【0026】
筒状体215は、
図2に示すように、断面C字形状を呈して軸方向に延出する開口25bを有している。この開口25bを通じて螺旋溝21bが部分的に前方に露出し、この露出した螺旋溝21bに係合部27cが係合している。なお、開口25bは、筒状体215が回動した際に係合部27cに干渉することのない大きさ(開口)を有して形成されている。
【0027】
釣糸案内体22は、樹脂で形成され、左右側板2A,2B間において、螺軸21と平行に設けられたガイド軸22a(
図2参照)に回り止め支持されている。釣糸案内体22の下部は、筒状体215を囲繞するようにしてこれに保持されている。そして、釣糸案内体22の下部には、螺軸21の螺旋溝21bと係合する係合部27cが配置されている。なお、係合部27cは、ナット27によって釣糸案内体22に抜け止め支持されている。
これにより、釣糸案内体22は、螺軸21が連動歯車21a(
図1(a)参照)によって回転駆動されることで、螺旋溝21bに係合する係合部27cを介してガイド軸22aに沿って左右往復動するようになっている。
【0028】
釣糸案内体22の上部には、釣糸を案内するためのラインガイド23が一体的に設けられている。ラインガイド23は、
図1(b)に示すように、螺軸21に沿うようにして左右方向に横長形状とされており、釣糸案内体22の左右方向に二又に延びる延設部23a,23aと、この延設部23a,23aの左右端部から上方へ向けて立ち上げられた左側部23b,右側部23cと、左側部23bと右側部23cとをつなぐ上部23dとを備えている。つまり、ラインガイド23は、その内側に、左右方向に横長とされた釣糸放出空間(開口部24)を有している。
【0029】
延設部23a,23aの上面(釣糸案内面24c)は、左右方向の中央部24c’に向けて緩やかに直線状に下る傾斜面(凹凸のない面)とされている。
ここで、延設部23a,23aの釣糸案内面24cの傾斜角度は、水平面に対して1〜30度の範囲に設定されるのが好ましく、より好ましくは、5〜15度の範囲に設定されるのがよい。
また、釣糸案内面24cは、前後方向にも直線状(凹凸のない面)に形成されている。
左側部23b,右側部23cは、上方へ向けて鉛直に立ち上げられている。
なお、延設部23a,23aと左側部23b,右側部23cとの角部、および左側部23b,右側部23cと上部23dとの角部は、いずれもアール状とされている。
なお、釣糸案内面24cは、左右方向に直線状とされたものに限られることはなく、左右方向に湾曲状(湾曲凸条、湾曲凹状)、左右方向に複数の直線を組み合わせた形状、さらに、左右方向に直線と曲線とを組み合わせた形状等、種々採用することができる。
また、釣糸案内面24cは、必ずしも前後方向に直線状を有しなくてもよいが、本実施形態のように、直線状として前後方向に奥行きをもたせることで、よりスムーズに釣糸Lを中央部24c’に導くことが可能となる。
【0030】
図1(b)に示すように、延設部23a,23aの中央部24c’には、釣糸巻き取り時に釣糸Lを位置決め保持する釣糸案内部としての釣糸案内溝24dが形成されている。釣糸案内溝24dは、中央部24c’から下方へ向けて湾曲凹状に切り欠かれた溝であり、中央部24c’の前後方向に亘って延設されている。釣糸案内溝24d内には、釣糸放出状態(
図4,
図5参照)から釣糸巻き取り状態(
図2,
図3参照)にされた際に、ピラー30に押し下げられて中央部24c’に向けて誘導される釣糸Lが挿入されるようになっている(
図2参照)。
【0031】
ピラー30は、円柱状の棒状部材である。ピラー30は、
図1(a)(b)、
図2,
図3に示すように、両端部を支持部材31a,31bによって支持されており、螺軸21を中心として上下方向の移動を伴いつつ前後方向に揺動可能に設けられている(
図2〜
図4参照)。ピラー30は、スプール5とラインガイド23との間に配置されており、ラインガイド23との間で釣糸Lを保持する。
なお、ピラー30は、円柱状の棒状部材とされたものに限られることはなく、釣糸Lを押し下げ可能な板状としてもよい。また、釣糸案内部31としては、左右方向に直線状とされたものに限られることはなく、左右方向に傾斜する直線状、湾曲状(湾曲凸条、湾曲凹状)、左右方向に複数の角度の直線を例えば連続して組み合わせた形状、左右方向に直線と曲線とを組み合わせた形状等としてもよい。
【0032】
このようなピラー30は、クラッチ機構50(
図3参照)により、スプール5に対する釣糸Lの巻き取りを可能にするクラッチON状態(釣糸巻き取り状態)で後下方向に移動する(ラインガイド23と相対的に離れる方向に移動する)ようになっており、その際に、ラインガイド23の内側に挿通された釣糸Lを中央部24c’に誘導し、当該中央部24c’(釣糸案内溝24d、釣糸巻き取り位置)に釣糸Lを巻き取り可能に位置決め保持する。
また、ピラー30は、スプール5から釣糸Lの繰り出しを可能にするクラッチOFF状態(釣糸放出状態)で、前上方向に移動する(ラインガイド23と相対的に近付く方向に移動する)ようになっており、その際に釣糸巻き取り位置から退避して、釣糸Lの位置決め保持を解除する釣糸放出位置に移動する。
【0033】
なお、ピラー30は、支持部材31a,31bに対して軸回りに回転可能に構成してもよい。このように構成することによって、釣糸巻き取り状態における巻き取り抵抗および釣糸放出状態における放出抵抗が低減される。
【0034】
クラッチ機構50は、
図3に示すように、右フレーム2bに対して回動可能に支持されたクラッチプレート51を備えている。クラッチプレート51は、振り分けバネ52によって、
図3に示す動力伝達状態(クラッチON状態)と、
図5に示す動力遮断状態(クラッチOFF状態)に振り分け保持されるようになっている。クラッチプレート51は、右フレーム2bに上下方向に形成された連結孔2dを介してクラッチレバー53と連結されており、クラッチプレート51に形成された長孔51eに、右フレーム2bに突出するように設けられたピン2eが挿入されて、その回動駆動が案内されるようになっている。
【0035】
クラッチプレート51の表面には、ピニオン12の円周溝12a(
図1参照)に係合したヨーク54と係合可能な一対のカム面54a,54a形成されている。ヨーク54の先端側は、右フレーム2bに突設された支持ピン55,55によって保持されており、ヨーク54は、各支持ピン55,55に配設されたバネ部材(図示せず)によって常時、クラッチプレート51側に付勢された状態となっている。なお、
図3では、ヨーク54がバネ部材によってクラッチプレート51側に付勢された状態を示しており、このとき、ピニオン12はスプール軸5c(
図1参照)の端部に形成されている係合部に嵌合してクラッチON状態となっている。
【0036】
図3に示すように、クラッチプレート51の前部には、前方へ向けて延設された腕部51aが一体的に設けられており、この腕部51aの先端部に、ピン51bが設けられている。ピン51bは、回動プレート26の延出部26bに設けられた長孔26cに係合している。
【0037】
クラッチプレート51は、クラッチレバー53が、
図4,
図5に示すように押し下げ操作されると反時計回り方向に回動され、カム面54aおよびヨーク54を介して、ピニオン12をスプール軸5cの端部に形成されている係合部から離脱させ、クラッチOFF状態に切り換える。なお、この状態は、振り分けバネ52によって保持される。
また、このようなクラッチレバー53の押し下げ操作によって、クラッチプレート51が図中反時計回り方向に回動されると、
図5に示すように、腕部51aの先端部が上方向に移動し、これによって、ピラー30が前上方向に移動して釣糸放出位置に配置される。
【0038】
このように、釣糸巻き取り位置から釣糸放出位置にピラー30が移動して退避される過程で、釣糸案内溝24d内における釣糸Lの位置決め保持が解除され、ラインガイド23内の上部の横長のスペースに釣糸Lが移動することとなる。したがって、釣糸が挿通される開口部24の左右開口の範囲内で釣糸Lが放出可能となり、スムーズな釣糸Lの放出を行うことができる。また、放出時に釣糸Lが暴れてもこれを好適に抑えることができ、糸絡み等のトラブルの発生率を好適に低減することができる。
【0039】
また、クラッチプレート51には、クラッチの状態をOFF状態からON状態にする自動復帰機構56が設けられている。この自動復帰機構56は、クラッチプレート51に一体的に設けられるキック部材56aと、ハンドル軸7aに回り止め固定されるラチェット57とを備えている。キック部材56aは、クラッチON状態からクラッチOFF状態に切り換えられると、
図5に示すように、ラチェット57の回動軌跡内に侵入するように配置、構成されている。このため、クラッチOFF状態において、ハンドル8(
図1参照)を巻き取り操作すると、ラチェット57の回転により、キック部材56aがキックされ、自動的にクラッチプレート51をクラッチON状態の位置に復帰させて、振り分けバネ52のバネ力で保持される。
【0040】
このような復帰によって、クラッチプレート51が図中時計回り方向に回動されると、
図3に示すように、腕部51aの先端部が下方向に移動し、これによって、ピラー30が後下方向に移動して釣糸巻き取り位置に配置される。
このようにピラー30が移動する過程で、
図2に示すように、釣糸Lがピラー30により押し下げられ、その際に、釣糸Lは、ラインガイド23の延設部23a,23aの釣糸案内面24cに沿って中央部24c’ (いずれも
図1(b)参照)に向けて移動する。そして、ピラー30が釣糸巻き取り位置まで移動されることで、釣糸案内溝24d内に釣糸Lが誘導される。これによって、ラインガイド23とピラー30とに保持されるようにして、釣糸Lは釣糸案内溝24d内に好適に位置決め保持(巻き取り可能に保持)される。
なお、クラッチの復帰は、クラッチレバー53を押し上げ操作しても行うことが可能である。
【0041】
なお、釣糸案内溝24d内に釣糸Lが位置決め保持された状態で、釣糸Lには、ピラー30による押圧でテンションが付与される。したがって、釣糸巻き取り時には、ピラー30で押さえられて釣糸Lが暴れ難くなり、これによって、釣糸案内溝24d内から釣糸Lが外れ難くなる。
そして、釣糸巻き取り時には、ハンドル7の巻き取り回転操作により、ラインガイド23が左右方向に往復移動し、ラインガイド23の釣糸案内溝24dに位置決め保持(巻き取り可能に保持)された釣糸Lが、ピラー30を介してスプール5に略平行に巻回される。
【0042】
以上説明した本実施形態の魚釣用リールによれば、ピラー30は、釣糸案内体22が設けられる螺軸21を中心として揺動するようになっており、釣糸案内体22の近傍で釣糸巻き取り位置と釣糸放出位置とに移動することとなるので、回転中心(螺軸21の中心)からの距離を短く設定することができる。したがって、その分、操作性の向上や感度の向上を図ることができるとともに、ピラー30の支持構造の簡素化を図ることができる。
また、ピラー30は、回転中心(螺軸21の中心)からの距離を短く設定することができるので、例えば、釣糸巻き取り時の釣糸Lのテンションを受けた場合にも偏倚し難く(撓み難く)なり、釣糸案内溝24d内にから釣糸Lが抜ける等の不具合を生じ難くなる。したがって、釣糸Lの巻き取り精度が向上し、スプール5への糸巻き状態が良好となる。
【0043】
また、ピラー30は、左右側板2A,2B間に架設された筒状体215に支持され、筒状体215の回動により螺軸21周りに揺動して、釣糸巻き取り位置と釣糸放出位置とに移動するようになっているので、筒状体215を利用して簡単にピラー30を設けることができ、支持構造の簡素化を図ることができる。また、筒状体215に支持されてピラー30が設けられているので、ピラー30の剛性を高めることが可能である。このことは、操作性の向上や感度の向上に寄与する。釣糸案内溝24d内にから釣糸Lが抜ける等の不具合防止に寄与する。
【0044】
また、ピラー30は、クラッチレバー53の切り換え操作に連動して揺動し、釣糸巻き取り状態において釣糸巻き取り位置に移動し、釣糸放出状態において釣糸放出位置に移動するので、釣糸放出(仕掛けの投入)から釣糸巻き取りまでの一連の操作をスムーズに行うことができ、操作性に優れ、釣果の向上を期待できる魚釣用リールが得られる。
【0045】
また、左右側板2A,2Bに、ピラー30の移動をガイドするための貫通窓孔等を設ける必要がないので、海水が貫通窓孔を通過して浸入するリスクもなくなる。
【0046】
図7は変形例のラインガイドとピラーとを示す拡大斜視図である。この変形例では、ピラー30の支持部材31a,31bが筒状体215を介さずに、螺軸21の両端部分に回転可能に支持された構成となっている。支持部材31bは、回動プレート26(
図6参照)に連結されており、回動プレート26の回動により支持部材31bを介してピラー30が揺動するように構成されている。
【0047】
このような構成とすることにより、前記実施形態に比べて、支持部材31a,31bの支持構造をより簡素化することができ、組付工数の低減、生産性の向上を図ることができる。
なお、支持部材31a,31bの支持構造は、回動プレート26の回動が支持部材31bに対して伝わる構造のものであればよく、種々の構造を採用することができる。
【0048】
なお、前記実施形態では、釣糸が挿通される開口部24の中央部24c’に釣糸案内溝24dを設けたが、釣糸案内溝24dは必ずしも設けなくてもよく、中央部24c’の谷部によって釣糸Lが位置決め保持されるようにしてもよい。
【0049】
また、支持部材31a,31bの形状や長さ、さらにはピラー30の位置は、リール本体1の大きさ、スプール5および釣糸案内体22の配置関係を考慮して適宜設定される。
【0050】
また、ピラー30は棒状としたが、枠状として、その枠内に釣糸Lが挿通されるものであってもよい。
【0051】
また、各実施形態において、釣糸放出時にラインガイド23は、左右方向に静止状態であるが、スプール5の回転と連動させて、左右往復動させてもよく、この場合にも、釣糸放出時の抵抗を減少させることができる。