(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
  前記少なくとも2つの気体供給源のうちの少なくとも一つは、空間の体積を変化させることにより前記気体を供給する体積変化型の気体供給源であることを特徴とする請求項3記載の電解装置。
  前記第2電路遮断部において前記一対の電導体が離間する動作と、前記体積変化型の気体供給源において前記体積が変化して前記気体を供給する動作とが同期することを特徴とする請求項4記載の電解装置。
  前記第1電路遮断部の前記一対の電導体の離間距離が、空気層における前記電解槽の逆電流電圧に対する絶縁破壊距離以上に達した後に、前記第2電路遮断部が前記電路を遮断することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載の電解装置。
  陽極及び陰極を有する電解セルがイオン交換膜を介して複数直列に接続された電解槽を備え、複数の前記電解槽が直列に接続された電解装置において、前記電解槽間を流れる逆電流の抑制方法であって、
  前記電解装置は、
  複数の前記電解槽の間に少なくとも一つ設けられ、前記電解槽間の電路を遮断する電路遮断装置を備え、
  前記電路遮断装置は、
    前記電解槽間に直列に接続され、互いに対向する一対の電導体を有し、前記一対の電導体を接触させることにより前記電路を導通させると共に、前記一対の電導体を離間させることにより前記電路を遮断する構成を有する第1電路遮断部と、
    前記第1電路遮断部と並列に接続され、互いに対向する一対の電導体を有し、前記一対の電導体を接触させることにより前記電路を導通させると共に、前記一対の電導体を離間させることにより前記電路を遮断する構成を有する第2電路遮断部と、
    前記第2電路遮断部を収容する収容容器と、
    前記収容容器内に気体を供給する気体供給部と、を有し、
  該逆電流の抑制方法は、
  前記電解槽において電解を停止する際に、前記第1電路遮断部において前記電路を遮断した後に、前記第2電路遮断部において前記電路を遮断し、
  前記第2電路遮断部において前記電路を遮断するときに、前記収容容器内に前記気体供給部により前記気体を供給し、前記収容容器内を陽圧とすることを特徴とする逆電流の抑制方法。
  前記第1電路遮断部の前記一対の電導体の離間距離が、空気層における前記電解槽の逆電流電圧に対する絶縁破壊距離以上に達した後に、前記第2電路遮断部において前記電路を遮断することを特徴とする請求項8記載の逆電流の抑制方法。
  前記第2電路遮断部において前記電路を遮断するときに、前記収容容器内の気体に対流が生じるように、前記気体供給部から供給する前記気体を増量することを特徴とする請求項8又は9記載の逆電流の抑制方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
  ところで、電解槽では、運転の停止時に逆電流が発生する。逆電流は、電解が停止されたときに、電解セルと液供給管や液回収管との電位差により、電解液が供給・回収される管(ホース)を介して液供給管や液回収管に流れる電流であり、電解時の電流の向きとは逆の方向に流れる電流である。近年では、電解セルが直列に100〜200対接続されてるなど、電解槽の設備の大型化に伴い、逆電流も大きくなる傾向にある。この逆電流は、陰極の酸化による劣化を引き起こし易くするため、低減する対策が求められている。
【0005】
  この問題について、電解槽において電解を停止する前に、微弱な防食電流を流し、逆電流を抑制する対策が採用されている。しかしながら、防食電流を流す構成では、運転操作が煩雑となると共に、防食電流を供給する設備が必要となるためコストの増大が避けられない。
【0006】
  本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、電解停止時の逆電流を低減し、陰極の劣化を防止できる電解装置及び逆電流の抑制方法を提供することを目的とする。
 
【課題を解決するための手段】
【0007】
  上記課題を解決するために、本発明に係る電解装置は、陽極及び陰極を有する電解セルがイオン交換膜を介して複数直列に接続された電解槽を備え、複数の電解槽が直列に接続された電解装置であって、複数の電解槽の間に少なくとも一つ設けられ、電解槽間の電路を遮断する電路遮断装置を備え、電路遮断装置は、電解槽間に直列に接続される第1電路遮断部と、第1電路遮断部と並列に接続される第2電路遮断部とを有し、第2電路遮断部は、第1電路遮断部が電路を遮断した後に、電路を遮断することを特徴とする。
【0008】
  この電解装置では、電解槽間の電路を遮断する電路遮断装置を備えている。電路遮断装置は、電解槽間に直列に接続される第1電路遮断部と、第1電路遮断部と並列に接続される第2電路遮断部とを有している。このような構成により、電解を停止するときに、電路遮断装置により電解槽間の電路を遮断するため、電解停止時の逆電流を低減できる。したがって、陰極の劣化を防止できる。
【0009】
  また、電路遮断装置では、第2電路遮断部は、第1電路遮断部が電路を遮断した後に、電路を遮断する。電路遮断装置では、電解槽に直列に接続される第1電路遮断部がメインスイッチ、第1電路遮断部に並列に接続される第2電路遮断部がサブスイッチとして機能しており、段階的に電路が遮断される。このような構成により、電路遮断装置が機械的に電路を遮断する構成では、電路の遮断時にサブスイッチである第2電路遮断部のみで火花を発生させることできる。したがって、大電流が流れる第1電路遮断部において火花が発生することが防止できる。
【0010】
  一実施形態においては、第1電路遮断部は、互いに対向する一対の電導体を有し、一対の電導体を接触させることにより電路を導通させると共に、一対の電導体を離間させることにより電路を遮断する構成を有し、第2電路遮断部は、互いに対向する一対の電導体を有し、一対の電導体を接触させることにより電路を導通させると共に、一対の電導体を離間させることにより電路を遮断する構成を有し、第1電路遮断部の一対の電導体が離間する動作と、第2電路遮断部の一対の電導体が離間する動作とが連動するように、第1電路遮断部と第2電路遮断部とを駆動する駆動機構を備える。このような構成よれば、第1電路遮断部が電路を遮断した後に第2電路遮断部が電路を遮断する構成を実現できる。
【0011】
  一実施形態においては、電路遮断装置は、第2電路遮断部を収容する収容容器を備える。これにより、第2電路遮断部において電路を遮断したときに火花が発生した場合であっても、収容容器内で火花を抑えることができる。アルカリ金属塩化物水溶液の電気分解では、電解により水素が発生する。そのため、火花により水素に引火することを防止しなければならない。収容容器を備える構成では、水素への引火を防止できる。
【0012】
  一実施形態においては、電路遮断装置は、収容容器内に気体を供給する気体供給部を備える。収納容器内は、気体が供給されることにより陽圧となる。これにより、例えばアルカリ金属塩化物水溶液の電気分解により発生した水素等が収容容器内に入り込むことを防止できる。したがって、第2電路遮断部において電路の遮断時に発生する火花により水素に引火することをより一層防止できる。
【0013】
  一実施形態においては、気体供給部は、第2電路遮断部が電路を遮断するときに、気体の供給量を増量させる。このように、電路を遮断するときに気体の供給量を増量することにより、収納容器内の気体に対流が生じる。これにより、電路が遮断されるときに発生する火花を引き伸ばし、火花の発生をより一層抑制できる。
【0014】
  一実施形態においては、気体供給部は、少なくとも2つの気体供給源を有している。これにより、例えば一方の気体供給源に不具合が生じた場合であっても、他方の気体供給源により気体を供給できる。
【0015】
  一実施形態においては、少なくとも2つの気体供給源のうちの少なくとも一つは、空間の体積を変化させることにより気体を供給する体積変化型の気体供給源である。このように、機械的に気体を供給する気体供給源を備えることにより、例えば電源が確保できない状況であっても、収容容器内に気体を供給できる。
【0016】
  一実施形態においては、第2電路遮断部と並列に接続される電子部品を備え、電子部品がヒューズ、リレー回路、コンデンサのいずれかである。第2電路遮断部に並列に電子部品を接続することにより、第2電路遮断部において火花が発生することを抑制できる。
【0017】
  一実施形態においては、第1電路遮断部の一対の電導体の離間距離が、空気層における電解槽の逆電流電圧に対する絶縁破壊距離以上に達した後に、第2電路遮断部が電路を遮断する。これにより、第2電路遮断部が電路を遮断した後に、第1電路遮断部において火花が発生することを防止できる。
【0018】
  本発明に係る逆電流の抑制方法は、陽極及び陰極を有する電解セルがイオン交換膜を介して複数直列に接続された電解槽を備え、複数の電解槽が直列に接続された電解装置において、電解槽間を流れる逆電流の抑制方法であって、電解装置は、複数の電解槽の間に少なくとも一つ設けられ、電解槽間の電路を遮断する電路遮断装置を備え、電路遮断装置は、電解槽の間に直列に接続される第1電路遮断部と、第1電路遮断部と並列に接続される第2電路遮断部とを有し、該逆電流の抑制方法は、電解槽において電解を停止する際に、第1電路遮断部において電路を遮断した後に、第2電路遮断部において電路を遮断することを特徴とする。
【0019】
  この逆電流の抑制方法では、電解槽間の電路を遮断する電路遮断装置において、電解を停止するときに、電解槽間の電路を遮断する。これにより、電解停止時の逆電流を低減できる。したがって、陰極の劣化を防止できる。
【0020】
  一実施形態においては、電路遮断装置は、第2電路遮断部を収容する収容容器と、収容容器内に気体を供給する気体供給部を備え、第2電路遮断部において電路を遮断するときに、収容容器内に気体供給部により気体を供給し、収容容器内を陽圧とする。
【0021】
  一実施形態においては、第1電路遮断部の一対の電導体の離間距離が、空気層における電解槽の逆電流電圧に対する絶縁破壊距離以上に達した後に、第2電路遮断部において電路を遮断する。
【0022】
  一実施形態においては、第2電路遮断部において電路を遮断するときに、収容容器内の気体に対流が生じるように、気体供給部から供給する気体を増量する。
 
【発明の効果】
【0023】
  本発明によれば、電解停止時の逆電流を抑制し、陰極の劣化を防止できる。
 
 
【発明を実施するための形態】
【0025】
  以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
 
【0026】
  図1は、一実施形態に係る電解装置の電解槽を構成する電解セルの断面構成を示す図である。
図2は、電解装置を模式的に示す図である。
 
【0027】
  図1に示すように、電解セル1は、陽極2と、陰極3とを有している。電解セル1は、陽極2が設けられる陽極室4と、陰極3が設けられる陰極室5とを有し、陽極室4と陰極室5とが隔壁6により隔てられている。陽極室4及び陰極室5のそれぞれの上部には、生成される気体と液体とを分離する気液分離室7,8が設けられている。陽極室4の枠体には、ガスケット9が設けられており、陰極室5の枠体には、ガスケット10が設けられている。
 
【0028】
  図2に示すように、電解槽11は、複数(例えば、300個)の電解セル1がイオン交換膜12(
図1参照)を介して直列に接続されて構成されている複極式イオン交換膜法電解槽である。電解槽11は、複数(ここでは2槽)直列に接続されている。電解槽11では、両端に位置する電解セル1の一方に陽極端子14が接続されており、他方に陰極端子15が接続されている。
 
【0029】
  電解槽11における電解は、電解セル1の陽極室4と、隣接する電解セル1の陰極室5との間のイオン交換膜12においてイオンが分離されることで行われる。例えばナトリウムイオンは、電解セル1の陽極室4から、イオン交換膜12を透過して、隣接する電解セル1の陰極室5へ移動し、塩化物イオンは、イオン交換膜12を透過しない。電解中の電流は、直列に連結した電解セル1の方向に沿って流れる。
 
【0030】
  電解槽11では、電流は、陽極端子14から電解セル1の陽極2及び陰極3を通過し、次いで直列に接続された電解槽11を通過して、陰極端子15に流れる。また、電解時には、電解液は、電解液供給管16から電解液供給ホース17を介して各電解セル1に供給される。また、電気液及び電解により生成される生成物(例えば塩素ガス、水素ガス)は、電解液回収管18により回収される。
 
【0031】
  上記構成を有する電解槽11,11の間には、電路遮断装置20が備えられている。電路遮断装置20は、電解槽間の電路EC(
図10参照)を遮断する装置であり、電解装置100において電解槽11,11間に少なくとも一つ設けられている。以下、電路遮断装置20について詳細に説明する。
 
【0032】
  図3は、電路遮断装置を示す斜視図である。
図4は、電路遮断装置を示す斜視図である。
図5は、電路遮断装置を示す側面図である。
図6は、電路遮断装置を示す側面図である。
図7は、電路遮断装置を後ろから見た図である。
図8は、電路遮断装置を示す上面図であり、一部の構成を省略して示している。
図9(a)は、第1電路遮断部の接触部の構成を示す図であり、
図9(b)は、第2電路遮断部の接触部の構成を示す図である。
図10は、電路遮断装置の回路図である。
図11は、電解装置を模式的に示す図である。以下では、
図6における「左」「右」を電路遮断装置20の「前」「後」、
図7における「左」「右」を電路遮断装置20の「左」「右」として説明する。
 
【0033】
  各図に示すように、電路遮断装置20は、スイッチ部22と、駆動機構24と、収容容器26と、気体供給部28とを備えている。電路遮断装置20は、電解槽11の上部に配設されている。
図10に示すように、スイッチ部22は、第1電路遮断部30と、第2電路遮断部32と、ヒューズ34を有している。
 
【0034】
  第1電路遮断部30は、電解槽11,11の間に直列に接続されている。第1電路遮断部30は、
図9(a)に示すように、互いに対向する一対の接触部(電導体)30a,30bを有している。接触部30a,30bは、例えば金属等の導電体である。本実施形態では、接触部30a,30bは、それぞれ3つ設けられており、左右方向に沿って並設されている。
 
【0035】
  第1電路遮断部30では、一対の接触部30a,30bを物理的に接触させることにより電路ECを導通させると共に、一対の接触部30a,30bを物理的に離間させることにより電路ECを遮断する。第1電路遮断部30の接触部30a,30bのそれぞれは、駆動機構24により同時に接触、離間が制御される。
 
【0036】
  接触部30aは、導体部35を介して接続部36と電気的に接続されている。導体部35は、導電性を有する例えば銅からなる。導体部35と接続部36とは、例えばボルト締結により接合されている。接続部36は、例えば銅からなる板状の部材であり、略L字形状を成している。接続部36は、一方の電解槽11の端子に例えばボルトで接合される。接触部30bは、導体部37を介して接続部38と電気的に接続されている。導体部37及び接続部38は、導電性を有する例えば銅からなる。導体部37と接続部38とは、一体に形成されている。接続部38は、他方の電解槽11の端子に例えばボルトで接合される。
 
【0037】
  図10に示すように、第2電路遮断部32は、第1電路遮断部30に並列に接続されている。
図3及び
図4に示すように、第2電路遮断部32は、第1電路遮断部30の上方に位置している。第2電路遮断部32は、
図9(b)に示すように、互いに対向する一対の接触部(電導体)32a,32bを有している。接触部32a,32bは、例えば金属等の導電体である。第2電路遮断部32では、一対の接触部32a,32bを物理的に接触させることにより電路ECを導通させると共に、一対の接触部32a,32bを物理的に離間させることにより電路ECを遮断する。第2電路遮断部32の接触部32a,32bは、駆動機構24により接触、離間が制御される。
 
【0038】
  接触部32aは、導体部39を介して導体部35及び接続部36と電気的に接続されている。導体部39は、導電性を有する例えば銅からなる。接触部32bは、導体部37を介して接続部38と電気的に接続されている。導体部37は、3つの導体部37のうち中央に位置する部分が他の導体部37よりも上方に伸びて構成されている。
 
【0039】
  図10に示すように、ヒューズ34は、第2電路遮断部32に並列に接続されている。ヒューズ34は、図示しないヒューズボックスに収容され、電解装置100において作業者が作業し易い位置に配置される。ヒューズ34の容量及び設置数は、第2電路遮断部32が電路を遮断し、第2電路遮断部32の接触部32a,32bの離間距離が絶縁破壊距離以上に達した後に、ヒューズ34が溶断するよう設定することが望ましい。このように設定することで、接触部32a,32bの離間距離が絶縁破壊距離以上に達するまでの間、ヒューズ34を介して電路を形成することができるため、第2電路遮断部32での火花発生を防止することができる。
 
【0040】
  駆動機構24は、第1電路遮断部30及び第2電路遮断部32でのオン・オフ、すなわち、接触部30a,30b及び接触部32a,32bの接触、離間を制御する機構である。駆動機構24は、枠体40と、駆動部42と、アクチュエータ44とを含んで構成されている。枠体40には、アクチュエータ44及びターミナルボックス45が取り付けられている。
 
【0041】
  駆動部42は、シャフト46と、カム48と、第1連結部材50と、第2連結部材52と、第3連結部材54と、可動部56とを含んで構成されている。シャフト46は、枠体40の後部側において左右方向に延在して設けられ、枠体40に回転自在に軸支されている。シャフト46の一端部(右端部)は、枠体40に設けられたアクチュエータ44に接続されている。すなわち、シャフト46は、アクチュエータ44により回転が制御される。シャフト46には、その略中央部に、カム48が設けられている。
 
【0042】
  カム48には、第1連結部材50の下端部が連結されている。第1連結部材50は、カム48から上方に伸びている。第1連結部材50には、第2連結部材52と第3連結部材54とが連結されている。第2連結部材52は、その後端部が第1連結部材50の下端部寄りに搖動自在に連結されている。第2連結部材52の前端部は、可動部56に接合されている。第3連結部材54は、その後端部が第1連結部材50の上端部に搖動自在に連結されている。第3連結部材54の前端部は、第2電路遮断部32の接触部32bを固定する固定部(図示しない)に接合されている。
 
【0043】
  可動部56は、枠体40の左右方向に延在しており、枠体40において前後方向に移動可能に設けられている。可動部56は、第2連結部材52により前方に移動されることにより、導体部35を押圧し、この導体部35に取り付けられた接触部30aと、接触部30bとを接触させる。また、可動部56は、第2連結部材52により後方に移動されることより、導体部35から離間し、接触部30aと接触部30bとを離間させる。
 
【0044】
  駆動部42では、シャフト46が回転すると、これに同期してカム48が回転する。これにより、駆動部42では、カム48に連結された第1連結部材50が動作し、この第1連結部材50の動きに連動して、第2連結部材52及び第3連結部材54が動作する。そして、駆動部42では、第2連結部材52が可動部56を移動させると共に、第3連結部材54が図示しない固定部を移動させる。
 
【0045】
  駆動部42では、第1電路遮断部30及び第2電路遮断部32がオン状態、つまり接触部30a,30b及び接触部32a,32bが接触して電路ECが導通している状態において、シャフト46を回転させてカム48を回転させると、カム48の構造により、第2連結部材52が第3連結部材54よりも先に可動部56を移動させる。すなわち、電路遮断装置20では、第2電路遮断部32は、第1電路遮断部30が電路ECを遮断した後に、電路ECを遮断する。具体的には、駆動部42では、第1電路遮断部30の接触部30a,30bの離間距離Dが、空気層における電解槽11の逆電流電圧に対する絶縁破壊距離以上に達した後に、第2電路遮断部32が電路ECを遮断する(接触部32aと接触部32bとが離間する)ように、カム48が設計されている。
 
【0046】
  空気の絶縁破壊電界は、3550[V/mm]である。そのため、第1電路遮断部30の接触部30aと接触部30bとが1.0mm以上離間したときに、第2電路遮断部32が電路ECを遮断する必要がある。接触部30aと接触部30bとの離間距離Dが1.0mm以下のときに第2電路遮断部32が電路ECを遮断すると、第1電路遮断部30において絶縁破壊が生じ、空気放電により通電する。本実施形態では、電解槽11の電解停止時に、陽極側で+400V、陰極側で−400Vの電位が生じるため、計800Vの電位差が生じる。そのため、本実施形態では、安全率等を鑑み、第1電路遮断部30の接触部30aと接触部30bとが例えば3.0mm以上離間したときに、第2電路遮断部32で電路ECを遮断する。
 
【0047】
  一方、駆動部42では、第1電路遮断部30及び第2電路遮断部32がオフ状態、つまり接触部30a,30b及び接触部32a,32bが離間して電路ECを遮断している状態において、シャフト46を回転させてカム48を回転させると、カム48の構造により、第3連結部材54が第2連結部材52よりも先に固定部を移動させる。すなわち、電路遮断装置20では、電路ECを導通させる場合には、第2電路遮断部32の接触部32aと接触部32bとが接触した後に、第1電路遮断部30の接触部30aと接触部30bとが接触する。
 
【0048】
  収容容器26は、第2電路遮断部32を収容する容器である。収容容器26は、箱状を成しており、第2電路遮断部32の接触部32a,32bを収容する。収容容器26は、耐熱性を有する例えばポリカーボネートから形成されている。
 
【0049】
  気体供給部28は、収容容器26内に気体(空気)を供給する。気体供給部28は、エアコンプレッサー60と、鞴62とを有している。エアコンプレッサー60及び鞴62は、気体供給源である。本実施形態では、エアコンプレッサー60は、チューブT1を介して鞴62に気体を定常的に供給する。なお、エアコンプレッサー60は、収容容器26に直接に気体を供給する構成であってもよい。
 
【0050】
  鞴62は、空間の体積を変化させることにより気体を供給する体積変化型の気体供給源である。鞴62は、気密で体積が可変な蛇腹構造を有しており、内部空間の体積が小さくされる(縮められる)ことにより、気体を供給する。鞴62は、導体部37に取り付けられており、チューブT2を介して収容容器26に気体を供給する。エアコンプレッサー60は、鞴62及びチューブT2を介して気体を収容容器26に供給する。
 
【0051】
  鞴62には、空間の体積を変化させるための体積変動機構64が設けられている。体積変動機構64は、鞴62を伸縮される伸縮部66と、第4連結部材68とを有している。伸縮部66は、鞴62に取り付けられており、前後方向に移動可能に設けられている。
 
【0052】
  第4連結部材68の前端部は、伸縮部66に連結されており、第4連結部材68の後端部は、第2連結部材52の上端部に連結されている。このような構成により、鞴62は、第2連結部材52が接触部32aと接触部32bとを離間させる動作(第2電路遮断部32が電路ECを遮断する動作)に連動して第4連結部材68が伸縮部66を後方に引っ張り、これにより、伸縮部66により縮められて空間の体積が小さくなり気体を供給する。
 
【0053】
  鞴62は、体積変動機構64により、第2電路遮断部32が電路ECを遮断するときに、収容容器26内に気体を供給する。このような構成により、電路遮断装置20では、第2電路遮断部32が電路ECを遮断するときに、収容容器26内に供給される気体の供給量が増量される。これにより、第2電路遮断部32が電路ECを遮断するときには、収容容器26内の気体に対流が生じる。
 
【0054】
  図11に示すように、電解装置100は、制御部70を有している。制御部70は、電解槽11における電解処理を統括してコントロールすると共に、電路遮断装置20を制御する。制御部70は、電解槽11において電解を停止するときに、駆動部42のアクチュエータ44を動作させる。これにより、電路遮断装置20は、電路ECを遮断する。また、制御部70は、エアコンプレッサー60から供給される気体の供給量を制御する。具体的には、制御部70は、アクチュエータ44を駆動させて第2電路遮断部32において電路ECを遮断するときに、エアコンプレッサー60から供給される気体の供給量を増量する。
 
【0055】
  続いて、電解装置100の動作について説明する。電解装置100では、電解槽11にて電解が停止される信号を制御部70が受け取ると、制御部70により電路遮断装置20の駆動部42のアクチュエータ44が制御され、シャフト46が回転される。これにより、電解装置100では、駆動部42が動作し、第1電路遮断部30、第2電路遮断部32がこの順で電路ECを遮断する。
 
【0056】
  続いて、電解装置100の作用効果について説明する。電解装置100では、電解の停止時に、電解セル1と電解液供給管16や電解液回収管18との電位差により、電解液供給管16や電解液回収管18に逆電流が流れる。逆電流は、電解時の電流の向きとは逆方向に流れる電流である。この逆電流の電流値は、電解セル1の設置個数の2乗に比例することが理論計算から推測される。したがって、逆電流は、大型の電解槽11において電解セル1の設置数が多くなると、その値も大きくなる。
 
【0057】
  逆電流は、電解の停止時に、塩素を反応種として電池が形成される状態となることにより発生する。電解時には、陽極室4内で発生した塩素は、陽極室4内の電解液(例えば、食塩水等)に溶存している。陽極室4内で電解液に溶存している塩素は、反応性が高いため、陽極2で分解される反応が起きる。これにより、電解の停止時に、電解セル1と接地されている電解液供給管16や電解液回収管18との間に電位差が生じて、逆電流が流れる。
 
【0058】
  また、電解時には、陰極室5では水素ガス、陽極室4では塩素ガスが発生しており、陽極室4内の溶存塩素量は、陰極室5内の溶存水素量に比べて非常に多い。そのため、電解槽11では、水素発生反応の逆反応だけでは逆電流(酸化電流)を消費しきれず、陰極3において逆電流を消費することになる。これにより、電解槽11では、陰極室5内に溶存塩素が多量に含まれた状態で電解が停止した場合、逆電流により陰極3が酸化され、陰極3の触媒の溶解や酸化による劣化が生じる。
 
【0059】
  例えば、陰極3にRuやSu等の逆電流により溶解するような触媒材料を用いた場合には、電解停止時の逆電流により、陰極触媒が溶解し、陰極3の触媒量が減少して、陰極3の寿命が極端に短くなる。一方、陰極3にNiやPt等の逆電流により溶解し難い触媒材料を用いた場合には、電解停止時の逆電流により、陰極3側で酸素発生反応が生じ、逆電流が大きい場合には陰極室5内において水素と酸素との混合気体が生じる。更に、電解槽11では、電解の停止による酸化、再通電による還元により、陰極触媒が脱落し易くなり、陰極3の寿命が短くなり得る。
 
【0060】
  そのため、従来では、電解の停止時に電解電流の1/100程度の防食電流を流し、防食電流を流している間に、陽極室に塩素が含まれていない塩水を供給し、陽極室内の塩素量を少なくすることにより逆電流を低減している。しかしながら、防食電流を流す従来の方法では、電解装置の運転方法が煩雑となり、また、何らかの不具合により防食電流が流れなかった場合には、陰極触媒が溶解することが避けられない。
 
【0061】
  これに対して、本実施形態では、電解槽11,11間の電路ECを遮断する電路遮断装置20を備えている。電路遮断装置20は、電解槽11,11間に直列に接続される第1電路遮断部30と、第1電路遮断部30と並列に接続される第2電路遮断部32とを有している。このような構成により、電解槽11において電解を停止するときに、電路遮断装置20により電解槽11,11間の電路ECを遮断するため、電解停止時の逆電流を低減できる。したがって、陰極の劣化を防止できる。
 
【0062】
  また、電路遮断装置20では、第2電路遮断部32は、第1電路遮断部30が電路ECを遮断した後に、電路ECを遮断する。電路遮断装置20では、第1電路遮断部30がメインスイッチ(ベーススイッチ)、第2電路遮断部32がサブスイッチ(プレコンタクト)として機能し、段階的に電路ECが遮断される。これにより、電路遮断装置20では、サブスイッチである第2電路遮断部32においてのみ火花(スパーク)を発生させることができる。メインスイッチである第1電路遮断部30で火花が発生すると、第1電路遮断部30の接触部30a、30bの離間距離Dが小さい場合、逆電流が火花を介して継続して流れる恐れがある。そのため、第1電路遮断部30での火花の発生を防止し、第2電路遮断部32で火花を発生させることが好ましい。
 
【0063】
  また、本実施形態では、第2電路遮断部32の接触部32,32bが収容容器26に収容されている。これにより、第2電路遮断部32において接触部32a,32bを離間するときに発生する火花を、収容容器26内で抑えることができる。これにより、接触部32a,32bの離間時に発生する火花が、電解セル1で生成される水素ガスに引火することを防止できる。
 
【0064】
  ここで、電路ECを遮断する際に発生する火花が水素に引火すること防止するために、気液分離室7,8が設けられた電解槽11の上部(防爆エリア)とは反対側の下部に電路遮断装置20を設置することができる。しかしながら、電路遮断装置20を電解槽11の下部に設置すると、電解槽11,11間を接続する導電体を電解槽11の上部側から下部側に配設する必要がある。このような構成では、導電体の電路が長くなるため、導電体のコストが増大するため好ましくない。本実施形態では、電路遮断装置20を電解槽11の上部に配置できるため、コストの増大を防止できる。
 
【0065】
  更に、本実施形態は、気体供給部28により収容容器26内に気体が供給されている。収容容器26内に気体を供給することにより、収容容器26内が陽圧となる。これにより、収容容器26内に外部から気体が入り込むことが防止される。そのため、アルカリ金属塩化物水溶液の電解により発生した水素が収容容器26内に入り込むことが防止され、第2電路遮断部32が電路ECを遮断する際に発生する火花が水素に引火することを防止できる。
 
【0066】
  また、本実施形態では、第2電路遮断部32が電路ECを遮断する動作に同期して、鞴62から気体が供給される。すなわち、第2電路遮断部32が電路ECを遮断するときには、収容容器26内に供給される気体の供給量が増量される。これにより、収容容器26内の気体に対流が生じる。そのため、接触部32aと接触部32bとが離間するときに発生する火花を低減することができる。もちろん、第2電路遮断部32が電路ECを遮断するときに、エアコンプレッサー60からの気体の供給量を増量してもよい。
 
【0067】
  また、本実施形態では、気体供給部28がエアコンプレッサー60と鞴62との2つの気体供給源を有している。そのため、例えばエアコンプレッサー60に不具合が生じた場合であっても、第2電路遮断部32が電路ECを遮断するときに、この遮断の動作に同期して機械的に体積が変動されて気体を供給する鞴62により収容容器26内に気体を供給でき、火花の発生を低減できる。
 
【0068】
  本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、スイッチ部22において、第2電路遮断部32と並列にヒューズ34を接続しているが、第2電路遮断部32と並列に接続される電子部品は、他のものであってもよい。
図12は、他の実施形態に係る電解装置の電路遮断部のスイッチ部を示す図である。
図12(a)に示すように、スイッチ部22Aは、第2電路遮断部32にリレー回路Rが並列に接続されていてもよい。また、
図12(b)に示すように、スイッチ部22Bは、第2電路遮断部32にコンデンサCが並列に接続されていてもよい。
 
【0069】
  また、上記実施形態に加えて、アクチュエータ44には、シャフト46を手動で回転可能とするハンドルが設けられていてもよい。これにより、作業者が手動で電路ECを遮断できる。
 
【0070】
  また、電解槽11の構成は、上記の構成に限定されず、様々な態様とすることができる。
 
【0071】
  また、第1電路遮断部と第2電路遮断部は、上記構成のように各連結部材によって、必ずしも連動して動作する必要はなく、第1電路遮断部が電路を遮断した後に第2電路遮断部が電路を遮断する構成となっていれば足りる。例えば、第1電路遮断部が電路遮断している状態でなければ、第2電路遮断装置は電路を遮断できない構成としてもよい。