【課題を解決するための手段】
【0011】
最も広い意味において、一態様において、本発明は、ダイアフラムの中心から実質的に同じ半径方向の距離に配置された少なくとも2つの追加のかたまりを含むダイアフラムを有するスピーカを提供する。これら2つのかたまりは、連続的ではなく、すなわち従来技術のような円形のかたまりを形成するようにはつながっていない。これらのかたまりがお互いから離れており、すなわち連続的でないため、それらの作用は、その半径における定在波の振幅および/または位相がダイアフラムの全周において一様でなくなるような作用である。これが、改善されたやり方で定在波を減衰させ、あるいは低減するように機能する。好ましくは、かたまりが配置される半径が、スピーカのリング共振周波数に対応する。
【0012】
別の態様において、本発明は、いくつかの減衰手段が適用されたダイアフラムを有するスピーカを提供する。これらの減衰手段は、かたまり、剛性が高められた領域、または不要な振動を減衰させる任意の他の手段であってよい。減衰手段は、ダイアフラムの表面を横切ってダイアフラムの中心(ボイスコイル)を実質的に通過する最大減衰の線を生み出すように、ダイアフラムの中心の両側におけるダイアフラムのいくつかの部位に適用される。当然ながら、この最大減衰の線は、通常は円形のダイアフラムの直径に沿って存在するが、他の形状(例えば、楕円形)のダイアフラムの表面を横切ることも同様に可能である。通常であればリング共振が生じるであろう特定の周波数において、減衰手段が、減衰手段が適用された部位の共鳴振動を減衰させ、共鳴振動は、減衰の加えられない領域において続く。このようにして、上述のように、定在波の振幅および/または位相が、ダイアフラムの全体において一様ではなくなる。したがって、定在波が、改善されたやり方で低減される。減衰が加えられていない領域において、通常はやはりダイアフラムの中心を実質的に通過する最大曲げモーメントが生じる。
【0013】
通常は、減衰手段が、ダイアフラムの中心の両側においてダイアフラムの表面を巡って対称に適用され、その場合、最大曲げモーメントが減衰させられた部分の間に生じ、したがって最大減衰および最大曲げモーメントの線が直交する。
【0014】
上述のように、一実施形態によれば、減衰手段が、ダイアフラムの表面に分布したかたまりであってよい。通常は、これらのかたまりが、所与の半径においてダイアフラムの中心の両側に位置する2つのアレイに分布する(ダイアフラムが円形の場合)。かたまりの分布の半径は、特定の周波数においてリング共振が通常生じる半径である。ダイアフラムが円形でない実施形態においては、アレイが、通常は、特定の周波数においてリング共振が生じると考えられる経路に沿って周状に分布する。例えば、楕円形のダイアフラムの場合には、アレイが、各点における半径方向の距離の一定の割合に位置する周状の経路に沿って延びる。
【0015】
各かたまりのアレイが、単純にかたまりのグループであることが理解される。アレイにおいて、かたまりは、周状の経路を辿るように配置され、その理由は、これが、リング共鳴振動が極大となると考えられる経路だからである。当然ながら、かたまりの他の配置も、本発明にしたがって使用可能であり、あるいは各アレイがただ1つのかたまりで構成されてもよい。
【0016】
さらなる実施形態によれば、本発明を、アレイまたは他の減衰手段の間隔に関して定義することもできる。上述のように、減衰手段は、多くの場合、ダイアフラムの中心の両側に位置する。これは、減衰手段がかたまりのアレイである場合、隣り同士のアレイの間の距離が、隣り同士のかたまりの間の距離よりも大幅に大きいことを意味する。いくつかの実施形態においては、隣り合うアレイの間の間隔が、アレイ内のかたまりの間の間隔の2倍になってもよい。
【0017】
ダイアフラム上で2つ以上の周波数において生じる2つ以上のリング共振が存在する可能性があり、これを低減することが望まれる。これらの場合、異なるリング共振をそれぞれ対象とする2組以上の減衰手段を、それぞれの異なる半径においてダイアフラムに適用することができる。これらの場合、最大の減衰の線が2本以上存在でき、結果として2つ以上の曲げモーメントを、或る周波数の範囲にわたってダイアフラムに生じさせることができる。
【0018】
本発明を、特定の領域の不要な振動の減衰に関して考えることもできる。この意味において、ダイアフラムの或る領域が、例えばかたまりのアレイによって減衰させられ、或る領域には減衰が加えられない。減衰を必要とするダイアフラムの個別の領域が存在する可能性があり、これらが対象とされる領域である。最大の減衰を有するダイアフラムの地点が存在し、それらをつなぐ実質的に真っ直ぐな線が、最大減衰の線である。
【0019】
同様に、最大曲げモーメントの線が、図に図式的に示されている直線に沿っては生じず、むしろ共振が最大の振動を生じさせる領域に生じる。これらの最大曲げの領域をつなぐ実質的に真っ直ぐな線を、最大曲げモーメントと定義することができる。疑義を避けるために、最大曲げモーメントおよび最大減衰の線は、多くの場合に直交し、アレイがダイアフラムの中心の両側に配置されるため、最大減衰の線が、通常はダイアフラムの中心を通過すると言うことができる。
【0020】
本発明の一態様によれば、スピーカ用のダイアフラムであって、複数のかたまりであって、各かたまりがダイアフラムの中心から実質的に同じ半径方向の距離に位置しており、複数のかたまりは、2つのアレイへと分割されており、各アレイが、1つ以上の個別のかたまりを含む複数のかたまりを含み、使用時に、所定の周波数において、アレイの組が支配的な曲げモーメントを生じさせるように機能し、ダイアフラムの中心が前記支配的な曲げモーメントの軸上に実質的に位置し、前記支配的な曲げモーメントは、2つ以上の曲げモーメントが生成される場合には、かたまりの組み合わせによって生成される最大の大きさを有する曲げモーメントである、ダイアフラムが提供される。
【0021】
好ましくは、各アレイが、所定の線状の経路のまわりに配置されたかたまりのグループであり、リング共振が一般にはダイアフラムの中心を中心とする周方向のリングに存在するため、さらにより好ましくは、この経路がダイアフラムを巡って周方向に延在する。
【0022】
随意により、各アレイにおける各かたまりの間隔が一定であると、有益であることが明らかになっている。
【0023】
いくつかの状況においては、かたまりの各アレイまたは任意のアレイが、かたまりを1つだけ含むことができ、あるいは正確に2つのかたまりを含むことができる。随意により、アレイは、ダイアフラムの直径を中心にして実質的に対称である。
【0024】
いくつかの場合には、2つ以上のリング共振を対象とすることができる。第2のリング共振を対象とできる場合には、すでに述べたとおりのダイアフラムが、2つのさらなるアレイへと分割された第2の複数のかたまりであって、各アレイが、1つ以上の個別のかたまりを含む複数のかたまりをさらに含み、使用時に、所定の周波数において、さらなるアレイの組が第2の支配的な曲げモーメントを生じさせるように機能し、ダイアフラムの中心が前記支配的な曲げモーメントの軸上に実質的に位置し、第2の複数のかたまりの各かたまりが、ダイアフラムの中心から実質的に同じ半径方向の距離に位置しており、該距離が、前記第1の複数のかたまりの前記距離とは異なっている。
【0025】
かたまりが内部減衰を有する材料から形成されると有益であることが実験から明らかになっているため、有益には、かたまりを弾性材料または内部減衰を有する材料から製作することができる。
【0026】
好ましくは、この弾性材料または内部減衰を有する材料が、ゴム、シリコーン、発泡ゴム、または1GPa未満の弾性係数を有する他の製品から形成される。
【0027】
多くの場合、スピーカ用のダイアフラムは、ダイアフラムをダイアフラムのマウントからばねの様相で吊る環状のロールサスペンションを使用して取り付けられる。したがって、有益には、製造効率のために、複数のかたまりのうちの少なくとも1つを、環状のロールサスペンションに一体化させることができる。
【0028】
多くの場合、かたまりは、接着剤を使用してダイアフラムに取り付けられる。有利には、製造効率のために、かたまりを接着剤の滴またはじゅず玉から形成することもできる。
【0029】
接着剤がかたまりとして使用され、あるいはかたまりを取り付けるために使用されている場合、接着剤が弾性的であり、あるいは内部減衰を有することが、優れた(滑らかな)SPL(音圧レベル)曲線をもたらすことが実験によって示されているために好ましい。理想的には、接着剤の弾性係数が1GPa未満である。
【0030】
本発明の態様を定めるもう1つのやり方は、かたまりの間隔に関し、その場合には、本発明は、スピーカ用のダイアフラムであって、複数のかたまりであって、各かたまりがダイアフラムの中心から実質的に同じ半径方向の距離に位置しており、複数のかたまりは2つのアレイへと分割されており、各アレイが1つ以上の個別のかたまりを含む複数のかたまりを含み、アレイ内の隣接する各かたまりの間の周方向の距離が、隣り合うアレイの間の周方向の距離よりも小さいダイアフラムを提供する。
【0031】
随意により、アレイ内の隣接する各かたまりの間の周方向の距離が、隣り合うアレイの間の周方向の距離の50%以下であってもよい。
【0032】
さらに、本発明の一態様は、スピーカ用のダイアフラムであって、ダイアフラムの表面が、その表面上に所与の半径で2つの中断のない周方向のスペースであって、前記周方向のスペースは、中断用のかたまりの2つのアレイによって隔てられており、各アレイが1つ以上の個別のかたまりを含んでおり、各かたまりがダイアフラムの中心から同じ半径方向の距離に位置するスペースを含んでおり、各ギャップの周方向の長さが、アレイ内の隣り合うかたまりの間の周方向の間隔よりも大きいダイアフラムを提供することができる。
【0033】
さらなる態様によれば、本発明は、スピーカ用のダイアフラムであって、複数のかたまりであって、各かたまりがダイアフラムの中心から実質的に同じ半径方向の距離に位置しており、複数のかたまりは、2つのアレイへと分割されており、各々のアレイが、1つ以上の個別のかたまりを含む複数のかたまりを含み、使用時に、所定の周波数において、アレイの組が、該アレイの組が取り付けられたダイアフラムの領域の共振を減衰させて前記半径方向の距離におけるダイアフラムの表面のリング共振を低減するように機能するダイアフラムを提供することができる。
【0034】
さらなる態様によれば、本発明は、スピーカ用のダイアフラムであって、複数のかたまりであって、各かたまりが、ダイアフラムの中心から実質的に同じ半径方向の距離に位置しており、複数のかたまりは、2つのアレイへと分割されており、各アレイが、1つ以上の個別のかたまりを含む複数のかたまりを含み、ダイアフラムの中心から、隣り合うかたまりのアレイの間に少なくとも90°の角度が存在するダイアフラムを提供することができる。
【0035】
またさらなる態様によれば、スピーカ用のダイアフラムであって、複数のかたまりであって、複数のかたまりは、2つのアレイへと分割されており、各アレイが、1つ以上の個別のかたまりを含んでおり、各アレイが、ダイアフラムを巡る楕円形の経路に延在している複数のかたまりを含み、使用時に、所定の周波数において、アレイの組が支配的な曲げモーメントを生じさせるように機能し、ダイアフラムの中心が前記支配的な曲げモーメントの実質的に軸上に位置し、前記支配的な曲げモーメントは、2つ以上の曲げモーメントが生成される場合には、かたまりの組み合わせによって生成される最大の大きさを有する曲げモーメントであるダイアフラムを提供することができる。
【0036】
さらに本発明は、ダイアフラムに支配的な曲げモーメントを生じさせる方法であって、複数のかたまりをダイアフラムに取り付けるステップを含んでおり、各かたまりが、ダイアフラムの中心から同じ半径方向の距離に位置しており、複数のかたまりは、2つのアレイへと分割されており、各アレイが、1つ以上の個別のかたまりを含んでおり、使用時に、所定の周波数において、アレイの組が支配的な曲げモーメントを生じさせるように機能し、ダイアフラムの中心が前記支配的な曲げモーメントの軸上に実質的に位置する方法を提供することができる。
【0037】
さらなる態様によれば、さらに本発明は、ダイアフラムに支配的な曲げモーメントを生じさせる方法であって、減衰手段をダイアフラムに取り付けるステップを含み、使用時に、所定の周波数において、減衰手段が支配的な曲げモーメントを生じさせるように機能し、ダイアフラムの中心が前記支配的な曲げモーメントの軸上に実質的に位置する方法を提供する。
【0038】
またさらなる態様によれば、本発明は、スピーカ用のダイアフラム上の所定の周波数のリング状共振を妨げる方法であって、1つ以上のかたまりからなる2つのアレイであって、各かたまりがダイアフラムの中心から実質的に同じ半径方向の距離に位置するアレイをダイアフラムの表面上に配置するステップを含み、最大の共振の減衰が、アレイ同士を結ぶダイアフラムの直径に沿って生じることで、リング状共振が低減される方法を提供する。
【0039】
本発明のさらなる態様においては、スピーカ用のダイアフラムであって、複数のかたまりであって、各かたまりが、ダイアフラムの中心から実質的に同じ半径方向の距離に位置しており、複数のかたまりは、2つのアレイへと分割されており、各アレイが、1つ以上の個別のかたまりを含む複数のかたまりを含み、使用時に、所定の周波数において、アレイの組が、ダイアフラムの所与の直径を横切る共振を減衰させることによって、ダイアフラムの該直径を横切る剛性を高めるように機能するダイアフラムが提供される。
【0040】
本発明の態様を、ダイアフラムの所定の領域に共鳴振動を生じさせる方法であって、ダイアフラム上に複数のかたまりを配置するステップであって、各かたまりが、ダイアフラムの中心から実質的に同じ半径方向の距離に位置しており、複数のかたまりは、2つのアレイへと分割されており、各アレイが、1つ以上の個別のかたまりを含むステップを含み、前記かたまりのアレイが、該かたまりのアレイが適用された領域における共鳴振動を減衰させることで、ダイアフラムの残りの減衰させられていない領域に共鳴振動を生じさせる方法と考えることもできる。
【0041】
他の態様によれば、本発明は、ダイアフラムの製造の方法であって、ダイアフラム上に複数のかたまりを配置するステップであって、各かたまりが、ダイアフラムの中心から実質的に同じ距離に位置するステップを含み、かたまりは、2つ以上のアレイに分割され、各アレイが、1つ以上のかたまりを含んでおり、各アレイ内の隣り同士のかたまりの間の間隔が、隣り同士のアレイの間の間隔よりも小さい方法を提供する。
【0042】
他の態様において、本発明は、スピーカ用のダイアフラムであって、複数のかたまりであって、複数のかたまりは、2つのアレイへと分割され、各アレイが、1つ以上の個別のかたまりを含んでおり、各アレイが、ダイアフラムを巡って周方向に延在する複数のかたまりを含み、使用時に、所定の周波数において、アレイの組が支配的な曲げモーメントを生じさせるように機能し、ダイアフラムの中心が前記支配的な曲げモーメントの実質的に軸上に位置し、前記支配的な曲げモーメントは、2つ以上の曲げモーメントが生成される場合には、かたまりの組み合わせによって生成される最大の大きさを有する曲げモーメントであるダイアフラムを提供する。
【0043】
さらなる態様において、本発明は、スピーカ用のダイアフラムであって、複数のかたまりであって、リング共振の振動の振幅が特定の周波数において極大となると考えられる所与の半径において、ダイアフラムの中心を中心に分布され、かたまりは、支配的な曲げモーメントを生じさせるように配置され、ダイアフラムの中心が前記支配的な曲げモーメントの実質的に軸上に位置する複数のかたまりを有し、前記支配的な曲げモーメントは、2つ以上の曲げモーメントが生成される場合には、かたまりの組み合わせによって生成される最大の大きさを有する曲げモーメントであるダイアフラムを提供することができる。
【0044】
別の態様において、本発明は、スピーカ用のダイアフラムであって、複数のかたまりであって、リング共振の振動の振幅が特定の周波数において極大となると考えられる経路に沿って、ダイアフラムの中心を中心にして分布され、かたまりは、支配的な曲げモーメントを生じさせるように配置され、ダイアフラムの中心が前記支配的な曲げモーメントの実質的に軸上に位置する複数のかたまりを有し、前記支配的な曲げモーメントは、2つ以上の曲げモーメントが生成される場合には、かたまりの組み合わせによって生成される最大の大きさを有する曲げモーメントであるダイアフラムを提供する。
【0045】
本発明は、上述の態様および好ましい特徴のあらゆる組み合わせを、そのような組み合わせが明らかに許されない場合または明示的に回避される場合を除いて包含する。
我々の提案の実施形態が、添付の図面を参照して後述される。