特許第5797690号(P5797690)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5797690フィラーパイプの取付方法及びフィラーパイプの取付構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5797690
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】フィラーパイプの取付方法及びフィラーパイプの取付構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/04 20060101AFI20151001BHJP
【FI】
   B60K15/04 C
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-112650(P2013-112650)
(22)【出願日】2013年5月29日
(65)【公開番号】特開2014-231286(P2014-231286A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2014年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】390023917
【氏名又は名称】八千代工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(72)【発明者】
【氏名】廣原 健
(72)【発明者】
【氏名】塚原 俊祐
【審査官】 田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−092180(JP,A)
【文献】 特開2006−021565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/04
B60K 15/03
F02M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクの開口部に取付部材を介してフィラーパイプを取り付けるフィラーパイプの取付方法であって、
前記フィラーパイプの開口部の内部に筒状の前記取付部材を嵌め合わせる嵌合工程と、
前記取付部材の外周面から径外方向に張り出す第一フランジと前記フィラーパイプの外周面から径外方向に張り出す第二フランジとを前記燃料タンクの開口部周りの表面に当接させる当接工程と、
前記第一フランジ及び前記第二フランジと前記表面とを溶着する溶着工程と、を含むことを特徴とするフィラーパイプの取付方法。
【請求項2】
前記嵌合工程では、前記第一フランジのうち前記表面と対向する第一対向面と、前記第二フランジのうち前記表面と対向する第二対向面とを面一にすることを特徴とする請求項1に記載のフィラーパイプの取付方法。
【請求項3】
燃料タンクの開口部に取付部材を介してフィラーパイプが取り付けられているフィラーパイプの取付構造であって、
前記取付部材は、前記燃料タンクの開口部に挿入される筒状の本体部と、前記本体部に連続し前記燃料タンクの開口部の外側に突出する筒状の突出部と、前記突出部の外周面から径外方向に張り出す第一フランジと、を有し、
前記フィラーパイプは、前記突出部が嵌め合わされる筒状の基体部と、前記基体部の外周面から径外方向に張り出す第二フランジとを有し、
前記第一フランジのうち前記燃料タンクの開口部周りの表面と対向する第一対向面及び第二フランジのうち前記表面と対向する第二対向面が面一となるとともに、前記第一対向面及び前記第二対向面は前記燃料タンクの開口部周りの表面に溶着されていることを特徴とするフィラーパイプの取付構造。
【請求項4】
前記第一フランジは、前記燃料タンクの開口部の軸方向において、前記燃料タンクの開口部から離間する方向に凸となるように湾曲形成されていることを特徴とする請求項3に記載のフィラーパイプの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクに取り付けられるフィラーパイプの取付方法及びフィラーパイプの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料タンクとフィラーパイプとが取り付けられるフィラーパイプの取付構造は、例えば、特許文献1に記載されている。従来のフィラーパイプの取付構造は、燃料タンクの開口部に挿入されたインレットチェックバルブ(以下、「ICV」と言う)と、ICVの端部の外周面に嵌合されたフィラーチューブとで主に構成されている。フィラーチューブは、フィラーパイプとICVとを接続するための筒状の接続部材である。
【0003】
ICVには径外方向に張り出すフランジが形成されており、当該フランジと燃料タンクの開口部周りの表面とが溶着されている。しかし、この構造であると、フィラーチューブの内周面とICVの外周面との境界面及びICVのフランジと燃料タンクの間から炭化水素が透過するというおそれがある。特に、フィラーチューブの内周面とICVの外周面との境界面から炭化水素が透過する分、炭化水素透過量が増大するという問題がある。また、フィラーチューブを要するため部品点数が増加するという問題がある。
【0004】
このような課題を解決するものとして、図3に示す従来のフィラーパイプの取付構造100が知られている。図3は、従来のフィラーパイプの取付構造を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は要部拡大断面図である。図3の(a)に示すように、従来のフィラーパイプの取付構造100は、燃料タンクFTの開口部FTaに挿入されるICV101と、ICV101の端部に挿入されるフィラーパイプ110と、で構成されている。
【0005】
図3の(b)に示すように、ICV101は、燃料タンクFTの内部に挿入される挿入部102と、開口部FTaの外部に突出する突出部103と、開口部FTaの縁部に嵌合される凹溝104と、凹溝104の溝壁から突出部103と平行に立ち上がる立上り部105とを有する。一方、フィラーパイプ110の端部には径外方向に張り出すとともにフィラーパイプ110の軸方向に対して垂直なフランジ111が形成されている。
【0006】
フィラーパイプの取付構造100では、開口部FTaにICV101の凹溝104を組み付けた後、燃料タンクFTの表面FTbと、立上り部105と、フランジ111の対向面112とを溶着して取り付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−92180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、フィラーパイプの取付構造100では、溶着する前に、燃料タンクFTの開口部FTaにICV101を組み付けなければならないため、開口部FTa周りの形状やICV101の形状が複雑になるという問題があった。また、燃料タンクFTとICV101との組み付け誤差によってガタが生じると、溶着が困難になるという問題がある。
【0009】
本発明は、前記した事情に鑑みて創作されたものであり、炭化水素の透過量を低減するとともに簡単に取り付けることができるフィラーパイプの取付方法及びフィラーパイプの取付構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は、燃料タンクの開口部に取付部材を介してフィラーパイプを取り付けるフィラーパイプの取付方法であって、前記フィラーパイプの開口部の内部に筒状の前記取付部材を嵌め合わせる嵌合工程と、前記取付部材の外周面から径外方向に張り出す第一フランジと前記フィラーパイプの外周面から径外方向に張り出す第二フランジとを前記燃料タンクの開口部周りの表面に当接させる当接工程と、前記第一フランジ及び前記第二フランジと前記表面とを溶着する溶着工程と、を含むことを特徴とする。
【0011】
かかる方法によれば、フィラーパイプの開口部の内部に筒状の取付部材を嵌合させた状態で、第一フランジ及び第二フランジを燃料タンクの開口部周りの表面に当接させるようにしたため、溶着するまでの準備作業を容易に行うことができる。また、従来のように燃料タンクに対して取付部材(例えば、ICV)を予め組み付ける構成ではないため、組み付け誤差等が発生しにくく、精度よく取り付けることができる。また、燃料タンクに対して取付部材を予め組み付ける構成ではないため、燃料タンクの開口部周りの形状や取付部材の形状を簡素化でき、各部材を容易に製造することができる。また、第一フランジと表面、第二フランジと表面の両方が溶着されるため、炭化水素の透過量を低減できる。
【0012】
また、前記嵌合工程では、前記第一フランジのうち前記表面と対向する第一対向面と、前記第二フランジのうち前記表面と対向する第二対向面とを面一にすることが好ましい。
【0013】
かかる方法によれば、第一対向面及び第二対向面と燃料タンクの表面とを精度よく突き合せることができるため、より容易にかつ精度よく溶着することができる。
【0014】
また、本発明は、燃料タンクの開口部に取付部材を介してフィラーパイプが取り付けられているフィラーパイプの取付構造であって、前記取付部材は、前記燃料タンクの開口部に挿入される筒状の本体部と、前記本体部に連続し前記燃料タンクの開口部の外側に突出する筒状の突出部と、前記突出部の外周面から径外方向に張り出す第一フランジと、を有し、前記フィラーパイプは、前記突出部が嵌め合わされる筒状の基体部と、前記基体部の外周面から径外方向に張り出す第二フランジとを有し、前記第一フランジのうち前記燃料タンクの開口部周りの表面と対向する第一対向面及び第二フランジのうち前記表面と対向する第二対向面が面一となるとともに、前記第一対向面及び前記第二対向面は前記燃料タンクの開口部周りの表面に溶着されていることを特徴とする。
【0015】
かかる構成によれば、第一対向面及び第二対向面と燃料タンクの表面とを容易に当接させることができるため、容易にかつ精度よく溶着することができる。また、第一フランジと表面、第二フランジと表面の両方が溶着されるため、炭化水素の透過量を低減できる。
【0016】
また、前記第一フランジは、前記燃料タンクの開口部の軸方向において、前記燃料タンクの開口部から離間する方向に凸となるように湾曲形成されていることが好ましい。
【0017】
かかる構成によれば、燃料タンクの表面と第一フランジとの当接部位に応力を集中させることができるため、溶着の精度をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のフィラーパイプの取付方法及びフィラーパイプの取付構造によれば、炭化水素の透過量を低減するとともに簡単に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係るフィラーパイプの取付構造を示す分解斜視図である。
図2】本実施形態に係るフィラーパイプの取付構造の要部拡大断面図である。
図3】従来のフィラーパイプの取付構造を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係るフィラーパイプの取付構造について図面を参照して詳細に説明する。図1に示すように、フィラーパイプの取付構造1は、燃料タンクFTと、取付部材10と、フィラーパイプ20とで主に構成されている。
【0021】
燃料タンクFTは、樹脂製の中空容器であって内部に燃料を貯留する。燃料タンクFTは、例えば、熱可塑性樹脂層や、EVOH(エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂)で構成されたバリア層等を含んだ多層構造になっている。
【0022】
燃料タンクFTの側壁には開口部FTaが形成されている。開口部FTaは、本実施形態では円形状になっている。開口部FTaの外周にはリング状を呈しかつ平坦な表面FTbが形成されている。
【0023】
取付部材10は、燃料タンクFTとフィラーパイプ20との間に取り付けられる部材である。取付部材10は、燃料の注入時にはフィラーパイプ20から流下する燃料を燃料タンクFTの内部に導入するとともに、注入が終了すると燃料タンクFT内の燃料がフィラーパイプ20側に逆流しないようになっている。取付部材10は、本実施形態では、インレットチェックバルブ(ICV)を用いている。取付部材10は、本実施形態では熱可塑性樹脂で形成されている。
【0024】
図1及び図2に示すように、取付部材10は、本体部11と、突出部12と、第一フランジ13とで主に構成されている。本体部11は、円筒状を呈する部位であって、燃料タンクFTの内部に挿入される。本体部11の外径は、開口部FTaの開口径よりもやや小さくなっている。
【0025】
突出部12は、円筒状を呈する部位であって、本体部11に連続し開口部FTaの外側に突出する。突出部12の先端側はフィラーパイプ20に嵌め合わされる。突出部12の先端側の外径は、フィラーパイプ20の端部の内径と同等になっており、フィラーパイプ20に容易に嵌め合わせられる。また、突出部12は、搬送時等においても容易に外れない程度の嵌合力でフィラーパイプ20嵌め合わされる。
【0026】
第一フランジ13は、突出部12の外周面から径外方向に張り出している。第一フランジ13は、突出部12の外周面の全周に亘って連続して形成されている。第一フランジ13は、本実施形態では開口部FTaの軸方向において、開口部FTaから離間する方向に凸となるように湾曲形成されている。また、第一フランジ13は、基端側が肉厚になっており、先端側が肉薄になっている。第一フランジ13のうち燃料タンクFTの表面FTbに対向する部位には、第一対向面13aが形成されている。第一対向面13aは、表面FTbに溶着される部位である。
【0027】
なお、第一フランジ13は、本実施形態では、開口部FTaの軸方向において、開口部FTaから離間する方向に凸となるように湾曲形成させたが、突出部12に対して垂直に形成されていてもよい。
【0028】
図1に示すように、フィラーパイプ20は、熱可塑性樹脂製の円筒状部材であって、燃料を燃料タンクFTに導入する部材である。フィラーパイプ20の一端側には給油ガンが挿入される給油口部21が形成されており、他端側には基体部23と、傾斜部24と、第二フランジ25とが形成されている。
【0029】
基体部23は、円筒状を呈する部位である。基体部23の内部には、突出部12が嵌め合わされる。傾斜部24は、基体部23から第二フランジ25まで延設される部位であって、開口部FTaに近づくにつれて拡径するように形成されている。傾斜部24と表面FTbとで形成されたスペースに第一フランジ13が入り込むようになっている。
【0030】
第二フランジ25は、傾斜部24に連続して形成されており、径外方向に張り出す部位である。第二フランジ25は、基体部23に対して垂直方向に張り出している。第二フランジ25は、フィラーパイプ20の開口端の全周に亘って連続して形成されている。第二フランジ25のうち燃料タンクFTの表面FTbに対向する部位には、第二対向面25aが形成されている。第二対向面25aは、表面FTbに溶着される部位である。第一対向面13aと第二対向面25aとは面一になっている。
【0031】
次に、本実施形態に係るフィラーパイプの取付方法について説明する。フィラーパイプの取付方法では、嵌合工程と、当接工程と、溶着工程とを行う。
【0032】
嵌合工程では、フィラーパイプ20に取付部材10を嵌め合わせる。具体的には、嵌合工程では、基体部23の内部に突出部12を押し込み、第一フランジ13を傾斜部24に当接させるとともに、第一対向面13aと第二対向面25aとを面一にさせる。取付部材10は、フィラーパイプ20に対してガタつくことなく固定される。
【0033】
当接工程では、フィラーパイプ20に取付部材10を取り付けた状態で、本体部11を開口部FTaに挿入し、第一フランジ13及び第二フランジ25を表面FTbに当接させる。これにより、第一対向面13a及び第二対向面25aと表面FTbとが面接触する。
【0034】
溶着工程では、第一対向面13a及び第二対向面25aと表面FTbとを同時に溶着する。以上によりフィラーパイプ20が燃料タンクFTに取り付けられる。
【0035】
以上説明したように本実施形態に係るフィラーパイプの取付方法によれば、フィラーパイプ20の開口部の内部に筒状の取付部材10を嵌合させた状態で、第一フランジ13及び第二フランジ25を燃料タンクFTの開口部FTa周りの表面FTbに当接させるようにしたため、溶着するまでの準備作業を容易に行うことができる。また、従来のように燃料タンクに取付部材(ICV)を予め組み付ける構成ではないため、組み付け誤差等が発生しにくく、精度よく取り付けることができる。
【0036】
また、燃料タンクFTに取付部材10を予め組み付ける構成ではないため、燃料タンクFTの開口部FTa周りや取付部材10の構成を簡素化でき、各部材を容易に製造することができる。また、第一フランジ13と表面FTb、第二フランジ25と表面FTbの両方が溶着されるため、炭化水素の透過量を低減できる。突出部12とフィラーパイプ20との間にシール部材を介設させてもよいが、本実施形態によれば炭化水素の透過量を軽減できるため、シール部材を省略することができる。
【0037】
また、嵌合工程では、第一対向面13aと第二対向面25aとを面一にすることにより、第一対向面13a及び第二対向面25aと燃料タンクFTの表面FTbとを精度よく突き合せることができるため、より容易にかつ精度よく溶着することができる。また、本実施形態によれば、嵌合工程において、基体部23の内部に突出部12を押し込むと、傾斜部24によって第一フランジ13が位置規制されるとともに、第一対向面13aと第二対向面25aとが面一になる。これにより、各部材の位置決めを容易に行うことができる。また、第一フランジ13と第二フランジ25とが隣接しているため、これらの部材と燃料タンクFTとを同時に溶着することができる。
【0038】
また、第一フランジ13は、開口部FTaの軸方向において、開口部FTaから離間する方向に凸となるように湾曲形成されているため、燃料タンクFTの表面FTbと第一フランジ13との当接部位に応力を集中させることができる。これにより、第一対向面13aと表面FTbとを確実に面接触できるため、溶着の精度をより向上させることができる。また、第一フランジ13の基端側は肉厚に形成されるとともに先端側は肉薄に形成されている。これにより、第一フランジ13の先端側に応力をより集中させることができるとともに、基端側の強度を向上させることができる。
【0039】
以上本発明の実施形態について説明したが本発明の趣旨に反しない範囲において適宜設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 フィラーパイプの取付構造
10 取付部材(ICV)
11 挿入部
12 突出部
13 第一フランジ
13a 第一対向面
20 フィラーパイプ
21 給油口部
23 基体部
24 傾斜部
25 第二フランジ
25a 第二対向面
FT 燃料タンク
FTa 開口部
FTb 表面
図1
図2
図3