【実施例】
【0021】
実施例1:酵素を用いる亜硫酸パルプの処理、および該パルプの精製
四つの別々のステップにおいて亜硫酸パルプを処理することにより、細胞壁の離層を行った。
【0022】
1.Escher-Wyss精製機(Angle Refiner R1L、Escher-Wyss製)を使用して、33kWh/トンを用で、比縁荷重(specific edge load)2Ws/mで、4w/w%のセルロース懸濁液(ECO Bright、Domsjoe Fabriker AB)を28°SRが得られるまで機械的に精製した。パルプはノルウェー・トウヒおよびスコットランド松の混合物(それぞれ60%/40%)に由来する軟材パルプであった。閉鎖した漂白装置の中でこのパルプのTCF漂白を行った。
【0023】
2.4種の異なる量の一成分エンドグルカナーゼを加えた(ケースA、ケースB、ケースCおよびケースD)(Novozym 476、セルラーゼ調合物、Novozymes A/S製)。ケースB、CおよびDにおいて、100g(乾燥繊維として計算)の精製したパルプを、異なる量の酵素(ケースB=繊維1gあたり0.65ECU、ケースC=繊維1gあたり0.85ECU、ケースD=繊維1gあたり150ECU)を用い、2.5リットルの燐酸塩緩衝液(pH7、パルプの最終濃度4%w/w)中に分散させ、50℃で2時間インキュベートした。30分毎に試料を手で撹拌した。次いで試料を脱イオン水で洗浄し、次に酵素を30分間80℃で変性させた。最後に、パルプ試料を脱イオン水で再び洗浄した。
【0024】
3.前処理したパルプを、90〜95の°SR値(Shopper-Riegler)が得られるまで、Escher-Wyss精製機を用いて、再び精製した(平均の精製エネルギー90kWh/トン、比縁荷重1Ws/m)。
【0025】
4.次に材料を高圧フリューダイザー/ホモジナイザー(Microfluidizer M-110EH、Microfluidics社製)に通した。2%w/w濃度のパルプ繊維スラリーを二つの異なった大きさの対になった室(各対は直列に連結されている)に通した。最初にスラリーを、直径400μmおよび200μmの対になった室(それぞれ第1室および第2室)に3回通し、次に直径200μmおよび100μmの対になった室に5回通した。操作圧力はそれぞれ105MPaおよび170MPaであった。
【0026】
また、異なる室を用いて異なる回数通して材料を製造し、良好な方法で前処理を行った場合、これらのパラメータ(室のタイプおよび通す回数)は実質的に重要でないことが示された。また二つの場合(ケースEおよびケースF)について試験した。これらの両方の場合において、室の選択および通す回数を除いて、ケースCに従い製造法を行った。
【0027】
ケースEにおいては、材料を直径200μmおよび100μmの対になった室に1回通した。操作圧力は170MPaであった。
【0028】
ケースFにおいては、材料を直径400μmおよび200μmの対になった室に1回通した。操作圧力は105MPaであった。
【0029】
【表1】
【0030】
さらに他の測定も行ったが、それによると本発明の第2の態様によるミクロフィブリル化したセルロースは、上記の特許文献1に記載されたものとは異なっていることが示された。本発明の第2の態様によるミクロフィブリル化したセルロースは、下記の文献Journal of Applied Polymer Science(JAPS)(文献1および2参照)に記載された、特許文献1に記載のものと比べて、遥かに大きな比表面積を有するため、より反応性であり、大部分の実際的用途に対していっそう魅力的である。
【0031】
JAPSには、大きさ(=ミクロフィブリルの厚さ)は25〜100nmであることが示されている(文献1および2)。本発明の第2の態様によるミクロフィブリル化したセルロースは、NMRの測定によれば、CP/MAS 13C−NMRを用いた場合、17.3±0.7nmの平均厚さを有する。ミクロフィブリルの厚さの測定法は下記の文献3および文献4に記載されている。本発明の第2の態様によるミクロフィブリル化したセルロースの厚さのCryo−TEM測定(
図1参照)により、この厚さは3.5〜18nmの範囲にあり、これと比較して、特許文献1に記載の方法で製造したミクロフィブリル化したセルロースについては25〜100nmである。電子顕微鏡法では直接比較できるが、NMRでは主として大きな凝集物が検出されるようである。
【0032】
本発明の種々の実施態様を上記に説明したが、当業者はさらなる小さな変更を実現することができ、これは本発明の範囲内に入る。本発明の幅および範囲は、上記の例示的な実施態様のいずれによっても限定されるべきではないが、特許請求の範囲およびその同等物によってのみ限定されるべきである。例えば、上記の方法のいずれも、他の既知の方法と組み合わせてよい。本発明の範囲内の他の態様、利点、および変更点は、本発明が関与する当業者には明らかであろう。
本発明の好ましい態様は、以下を包含する。
〔1〕ミクロフィブリル化したセルロースを製造するための化学パルプを処理する方法であって、該方法は
(a)ヘミセルロースを含むパルプを提供するステップ、
(b)該パルプを少なくとも一つのステップにおいて精製し、1種またはそれ以上の木材を分解する酵素を用い比較的低い酵素の投与量において該パルプを処理するステップ、
(c)該パルプを均一化して該ミクロフィブリル化したセルロースを提供するステップ
を含む、方法。
〔2〕該パルプは、好ましくは軟材からのパルプを含む、亜硫酸パルプである、前記〔1〕に記載の方法。
〔3〕該酵素は繊維1gあたり0.1〜500ECU、好ましくは0.5〜150ECU、最も好ましくは0.6〜100ECU、特に好ましくは0.75〜10ECUの濃度で使用される、前記〔1〕に記載の方法。
〔4〕該酵素はヘミセルラーゼまたはセルラーゼ、或いはそれらの混合物、好ましくは培養濾液型の混合物である、前記〔1〕に記載の方法。
〔5〕該酵素はセルラーゼ、好ましくはエンドグルカナーゼ型のセルラーゼ、最も好ましくは一成分エンドグルカナーゼである、前記〔4〕に記載の方法。
〔6〕ステップ(b)は該酵素処理の前および後の両方において該パルプを精製すること含む、前記〔1〕に記載の方法。
〔7〕ステップ(b)は該酵素処理の前において該パルプを精製することを含む、前記〔1〕に記載の方法。
〔8〕ステップ(b)は該酵素処理の後において該パルプを精製することを含む、前記〔1〕に記載の方法。
〔9〕第1の精製により20〜35°SRのドレナージ抵抗性を有するパルプが得られ、第2の精製により70°SR超のドレナージ抵抗性を有するパルプが得られる、前記〔6〕に記載の方法。
〔10〕前記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の方法で得られるミクロフィブリル化したセルロース。
〔11〕前記〔10〕に記載のミクロフィブリル化したセルロースの、食品製品、紙製品、複合材料、コーティングまたは流動性変性剤における使用。
〔12〕前記〔10〕に記載のミクロフィブリル化したセルロースの化粧製品における使用。
〔13〕前記〔10〕に記載のミクロフィブリル化したセルロースの医薬製品における使用。
【0033】
〔上記説明に現れる文献のリスト〕
1.Herrick,F.W.、R.R.Casebierら著(1983)、「Microfibrillated Cellulose:Morphology and Accessibility.(ミクロフィブリル化セルロース:形態およびアクセシビリティ)」、Journal of Applied Polymer Science:Applied Polymer Symposium(37):第797〜813頁。
○・・・フィブリルは、直径25〜100nmを有する部分的に埋め込まれたミクロフィブリルのロープ様の束として現れる・・・・(803頁)
2.Turbak,A.F.、F.W.Snyderら著(1983)、「Microfibrillated Cellulose:A new Cellulose Product:Properties,Uses,and Commercial Potential.(新しいセルロース生成物:特性、使用および工業的可能性)」、Journal of Applied Polymer Science:Applied Polymer Symposium(37):815〜827頁。
○・・・倍率10,000の場合、二酸化炭素の臨界点乾燥後、生成物の主要な網様構造は直径25〜100nmの直径を有するミクロフィブリルを含んでいる・・・・820頁)
○米国特許第4,341,807号明細書、同第4,374,702号明細書および同第4,378,381号明細書参照。
3.Larsson,P.、Wickholm,K.、Iversen,T.著、Carbohydr.Res.、1997、302、19〜25頁。
4.Wickholm,K.、Larsson,P.、Iversen,T.著、Carbohydr.Res.、1998、312、123〜129頁
および、米国特許第4,341,807号明細書。