特許第5797715号(P5797715)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5797715
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】間接活線作業用の先端工具
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/02 20060101AFI20151001BHJP
【FI】
   H02G1/02
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-190483(P2013-190483)
(22)【出願日】2013年9月13日
(65)【公開番号】特開2015-57006(P2015-57006A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2014年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】森山 裕之
【審査官】 月野 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−005427(JP,A)
【文献】 特開2008−113513(JP,A)
【文献】 実開平04−043320(JP,U)
【文献】 特開2010−068582(JP,A)
【文献】 特開平9−103009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線を挟持可能な間接活線作業用の先端工具であって、
所定の幅を有すると共に長手方向に延びるヘッド部と、前記ヘッド部から離間して配置される基部と、前記ヘッド部の長手方向の略中央から前記基部に向けて延びると共に前記ヘッド部と前記基部とを接続する支持部と、を有するT字状部と、
前記ヘッド部との間に電線を挟持可能な可動部であって、前記ヘッド部に対応して前記ヘッド部の長手方向に平行に延びると共に、前記ヘッド部と前記基部との間において、前記ヘッド部に向かう方向又は前記ヘッド部から離れる方向に移動可能であり、前記支持部を挟んだ両側において前記ヘッド部との間に電線を挟持可能な可動部と、
前記ヘッド部に向かう方向又は前記ヘッド部から離れる方向に前記可動部を移動させる駆動機構と、を備える間接活線作業用の先端工具。
【請求項2】
前記支持部は、前記ヘッド部の長手方向の略中央から前記ヘッド部の長手方向に直交する方向に延びる
請求項1に記載の間接活線作業用の先端工具。
【請求項3】
前記駆動機構は、前記可動部に接続される駆動軸を有し、前記可動部を前記ヘッド部に向かう方向又は前記ヘッド部から離れる方向に移動するように前記駆動軸を移動させる
請求項1又は2に記載の間接活線作業用の先端工具。
【請求項4】
前記ヘッド部の長手方向の両端部側それぞれは、前記可動部側に向かうように屈曲又は湾曲している
請求項1から3のいずれかに記載の間接活線作業用の先端工具。
【請求項5】
前記支持部は、互いに対向して配置されると共に前記ヘッド部の幅方向の両端部から前記基部側に延びる一対の支持板を有し、
前記可動部は、前記一対の支持板の間に配置される
請求項1から4のいずれかに記載の間接活線作業用の先端工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間接活線作業用の先端工具に関する。特に、本発明は、絶縁操作棒などの間接活線工具の先端部に着脱可能に設けられる先端工具であって、電柱に架設された高圧配電線などを挟持する間接活線作業用の先端工具の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、間接活線作業用の先端工具として、先端部側が鉤爪状に形成される鉤状部と、先端部に対向して形成され鉤状部の先端部から離れる方向又は鉤状部の先端部に向かう方向に移動可能な可動部と、を備える間接活線作業用の先端工具が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の間接活線作業用の先端工具は、鉤状部における鉤爪状の開口部分に電線を導入して、鉤状部の先端部に電線を引っ掛けるように操作される。そして、可動部を鉤状部の先端部に向かう方向に移動させて、電線を挟持させて仮固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−68582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の間接活線作業用の先端工具においては、電線の位置によっては、鉤爪状の開口部分を電線側に向くように回転させて、鉤爪状の開口部分に電線を導入させる。しかし、特許文献1に記載の間接活線作業用の先端工具においては、開口部分側の重量が軽く、鉤状部の先端部側に形成される鉤爪状の部分の重心は先端工具の中心から偏っている。そのため、鉤状部の先端部に電線に引っ掛ける際において、鉤状部の重心が偏っているため、鉤状部が回転してしまい、電線を鉤爪状の開口部分に導入する際に、何度もやり直しを行うことがあった。従って、安定した状態で、電線を容易に導入させて挟持することができる間接活線作業用の先端工具が望まれている。
【0005】
本発明は、安定した状態で、電線を容易に導入させて挟持することができる間接活線作業用の先端工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る間接活線作業用の先端工具は、電線を挟持可能な間接活線作業用の先端工具であって、所定の幅を有すると共に長手方向に延びるヘッド部と、前記ヘッド部から離間して配置される基部と、前記ヘッド部の長手方向の略中央から前記基部に向けて延びると共に前記ヘッド部と前記基部とを接続する支持部と、を有するT字状部と、前記ヘッド部との間に電線を挟持可能な可動部であって、前記ヘッド部に対応して前記ヘッド部の長手方向に平行に延びると共に、前記ヘッド部と前記基部との間において、前記ヘッド部に向かう方向又は前記ヘッド部から離れる方向に移動可能であり、前記支持部を挟んだ両側において前記ヘッド部との間に電線を挟持可能な可動部と、前記ヘッド部に向かう方向又は前記ヘッド部から離れる方向に前記可動部を移動させる駆動機構と、を備える。
【0007】
(2)前記支持部は、前記ヘッド部の長手方向の略中央から前記ヘッド部の長手方向に直交する方向に延びることが好ましい。
【0008】
(3)前記駆動機構は、前記可動部に接続される駆動軸を有し、前記可動部を前記ヘッド部に向かう方向又は前記ヘッド部から離れる方向に移動するように前記駆動軸を移動させることが好ましい。
【0009】
(4)前記ヘッド部の長手方向の両端部側それぞれは、前記可動部側に向かうように屈曲又は湾曲していることが好ましい。
【0010】
(5)前記支持部は、互いに対向して配置されると共に前記ヘッド部の幅方向の両端部から前記基部側に延びる一対の支持板を有し、前記可動部は、前記一対の支持板の間に配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、安定した状態で、電線を容易に導入させて挟持することができる間接活線作業用の先端工具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態における間接活線作業用の先端工具1の構成を示す斜視図である。
図2】本実施形態における間接活線作業用の先端工具1の正面図である。
図3】本実施形態における間接活線作業用の先端工具1の側面図である。
図4】本実施形態における間接活線作業用の先端工具1を取り付ける絶縁操作棒7の構成を示す図である。
図5】本実施形態における間接活線作業用の先端工具1を使用して、2本の電線を同時に仮固定する使用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態における間接活線作業用の先端工具1の構成を示す斜視図である。図2は、本実施形態における間接活線作業用の先端工具1の正面図である。図3は、本実施形態における間接活線作業用の先端工具1の側面図である。図4は、本実施形態における間接活線作業用の先端工具1を取り付ける絶縁操作棒7の構成を示す図である。
【0014】
以下に、本発明の一実施形態における間接活線工具用の先端工具1について説明する。先端工具1は、電線を挟持可能な間接活線工具用の先端工具である。先端工具1は、絶縁性を有する絶縁操作棒7(後述)に取り付けられて使用される。
図1図3に示すように、先端工具1は、T字状部2と、可動部3と、可動部3を移動させる駆動機構4と、接続金具5と、ロック機構6と、を備える。
【0015】
T字状部2は、基部21と、ヘッド部22と、支持部23と、を備える。ヘッド部22及び支持部23は、図2に示すように、正面視において、略T字形状に形成される。
【0016】
ヘッド部22は、図1図3に示すように、前後方向に所定の幅を有すると共に、長手方向に延びている。ヘッド部22は、長手方向の略中央に対して左右対称の形状に形成される。ヘッド部22の長手方向の両端部側それぞれは、可動部3側に向かうように下方に向けて屈曲している。ヘッド部22の両端部側の先端部22aそれぞれは、斜め下方の外側を向いている。ヘッド部22の長手方向の略中央の下側には、支持部23の上端部が接続されている。
【0017】
基部21は、ヘッド部22から下方側に離間して配置される。基部21は、ヘッド部22の長手方向の略中央の下側において、支持部23を介して、ヘッド部22に接続されている。基部21の略中央には、図2及び図3に示すように、上下方向に貫通する円柱状の貫通孔211が形成されている。
【0018】
支持部23は、ヘッド部22を支持する。支持部23は、ヘッド部22の長手方向の略中央の下側から、ヘッド部22の長手方向に直交する方向に延びる。支持部23は、ヘッド部22の長手方向の略中央の下側から基部21に向けて延びており、ヘッド部22と基部21とを接続する。支持部23の上端部は、ヘッド部22に接続されている。支持部23の下端部は、基部21に接続されている。
【0019】
支持部23は、一対の支持板231を有する。一対の支持板231は、ヘッド部22の幅方向に離間して互いに対向して配置されると共に、ヘッド部22の幅方向の両端部から基部21側に延びて、基部21に接続される。
【0020】
可動部3は、ヘッド部22との間に電線を挟持可能である。可動部3は、ヘッド部22の下方側に配置されている。可動部3は、ヘッド部22に対向して配置されており、ヘッド部22に対応してヘッド部22の長手方向に平行に延びている。可動部3は、長手方向の略中央に対して左右対称の形状に形成される。可動部3は、外側に向かうにしたがってヘッド部22側に向かうように緩やかに反っている。可動部3の両端部側の先端部3aそれぞれは、斜め上方側を向いている。
【0021】
ヘッド部22の先端部22aと可動部3の先端部3aとの間には、一対の隙間Sが形成されている。一対の隙間Sそれぞれは、支持部23(一対の支持板231)に対して左右それぞれに形成されており、外側に向けて開口している。一対の隙間Sには、どちらの側からも電線を導入可能である。
【0022】
可動部3は、ヘッド部22と基部21との間において、ヘッド部22に向かう方向又はヘッド部22から離れる方向に移動可能である。これにより、可動部3は、隙間Sから導入された電線を、支持部23(一対の支持板231)を挟んだ両側において、ヘッド部22との間に挟持可能である。
また、可動部3は、ヘッド部22の幅方向において、一対の支持板231の間に配置される。可動部3は、一対の支持板231の間において、ヘッド部22に向かう方向又は前記ヘッド部から離れる方向に移動可能である。
【0023】
駆動機構4は、回転ガイド筒41と、駆動軸としての回転軸部42と、を備える。駆動機構4は、可動部3をヘッド部22に向かう方向又はヘッド部22から離れる方向に回転軸部42を移動させる。
【0024】
回転ガイド筒41は、基部21の貫通孔211に挿通して配置される。回転ガイド筒41は、略円筒形の部材である。回転ガイド筒41は、基部21に対して独立に回転可能である。回転ガイド筒41の内周面には、ねじ溝が形成されている。
【0025】
回転ガイド筒41の一端部は、基部21の上面側に配置されている。回転ガイド筒41の一端部の外径は、貫通孔211の径よりも大きく形成されている。回転ガイド筒41の他端部には、貫通孔211の径よりも大きい外径のギア部62(後述)が連結されている。これにより、回転ガイド筒41は、基部21から抜け落ちることなく、T字状部2に対して独立して回転可能に支持される。
【0026】
回転軸部42は、回転ガイド筒41の内周面のねじ溝に噛み合わさるように、外周面にねじ山を切った棒状に形成される。回転軸部42は、外周面のねじが回転ガイド筒41の内周面のねじ溝に噛み合わされた状態で、回転ガイド筒41の内側に取り付けられている。回転軸部42の上端部は、可動部3の長手方向の略中央において、可動部3に接続される。回転軸部42は、可動部3の長手方向に直交する方向に延びる。回転軸部42は、回転ガイド筒41が回転すると、上下方向に移動する。
【0027】
接続金具5は、図1に示すように、回転ガイド筒41の下方側において、ギア部62(後述)を介して、回転ガイド筒41に接続されている。接続金具5は、底面が開口された円筒状に形成される。接続金具5の底面には、工具取り付け部71の軸部711が嵌合する軸穴51が開口されている。接続金具5には、工具取り付け部71の一対のピン712、712を回動することにより係合する一対のT字状の溝52、52が形成されている。
【0028】
ロック機構6は、ヘッド部22と可動部3との間に電線を仮固定した状態で、挟持された電線が容易に緩まないように、可動部3のヘッド部22から離れる側の移動をロックする。ロック機構6は、つまみ部61と、ギア部62と、を備える。
【0029】
ギア部62は、リング状に形成され、接続金具5の上面に固定されている。ギア部62の上面には、周回方向に並ぶ凹凸が形成されている。ギア部62の凹凸は、絶縁操作棒7が左回転するときに進行方向側に位置する緩やかな傾斜面と、絶縁操作棒7が右回転するときに進行方向側に位置する略垂直な垂直面と、を有している。
【0030】
つまみ部61は、基部21の側部に設けられる。つまみ部61は、ギア部62に向かって突出する突起(図示せず)を備える。つまみ部61の突起(図示せず)は、作業員がつまみ部61を操作することにより、ギア部62の凹凸に向かう側又はギア部62の凹凸から離れる側に移動可能である。
【0031】
つまみ部61の突起(図示せず)がギア部62の凹凸に接触したロック状態では、基部21に対する回転ガイド筒41の右回転は、ギア部62の垂直面により、突起(図示せず)がギア部62の凹凸に規制されることでロックされる。一方、基部21に対する回転ガイド筒41の左回転は、ギア部62の傾斜面により、突起(図示せず)がギア部62の凹凸に規制されずに許容される。
【0032】
また、つまみ部61の突起(図示せず)がギア部62の凹凸から離間したロック解除状態では、突起(図示せず)がギア部62の凹凸に規制されずに、回転ガイド筒41は、基部21に対して回転自在である。
【0033】
次に、絶縁操作棒7について説明する。絶縁操作棒7は、用途の異なる先端工具を接続できる。絶縁操作棒を「共用操作棒」ともいう。
絶縁操作棒7は、図4に示すように、工具取り付け部71と、柄部72と、把持部73と、を備えている。工具取り付け部71は、先端工具1の接続金具5(図1図3参照)に着脱可能である。把持部73には、作業員が把持し易いように滑り止めが施されている。柄部72は、長尺の管体からなっており、工具取り付け部71と把持部73とを連結する。柄部72は、ヘッド部22の長手方向の略中央及び可動部3の長手方向の略中央において、上下方向に延びている。これにより、絶縁操作棒7は、先端工具1を重心の位置で支えている。
【0034】
図4に示すように、柄部72の中間部には、降雨時の対策として、円錐体状の水切り鍔74が設けられている。水切り鍔74は、工具取り付け部71から伝達される雨水を堰き止めることができる。柄部72と把持部73との接続部には、円錐体状の安全限界鍔75が設けられている。安全限界鍔75は、作業者が握っても感電しない部分とそれ以外の部分とにおいて、握ると感電する可能性がある部分と感電しない部分との境界を明確にするために備えられたものである。安全限界鍔75の取付け位置は、絶縁操作棒7における安全に作業できる把持部73の位置の限界を示している。
【0035】
図4に示すように、工具取り付け部71は、軸部711と、一対のピン712、712と、突起713と、を有している。軸部711は、柄部72の軸方向に突出している。一対のピン712、712は、相反する向きに軸部711の外周から軸方向に直交する方向に突出している。突起713は、軸部711の先端面から突出するように、工具取り付け部71に内蔵された圧縮コイルばね(不図示)によって付勢されている。
【0036】
先端工具1を絶縁操作棒7に装着させる場合には、図1に示すように、工具取り付け部71の軸部711を接続金具5の軸穴51に挿入して、所定角度、回動する。これにより、突起713に付勢されて、一対のピン712、712を、接続金具5のT字状の溝52、52に嵌合することができる。
【0037】
次に、先端工具1の使用方法について説明する。先端工具1は、絶縁操作棒7に装着した状態で使用される。
1本の電線を仮固定する場合の先端工具1使用方法について、図1図4を参照して説明する。
【0038】
まず、T字状部2のヘッド部22の先端部22aと可動部3の先端部3aとの間の隙間Sを、電線を挿入できる程度に調整する。そして、絶縁操作棒7を操作して、先端工具1を電線に近づけて、T字状部2のヘッド部22の先端部22aと可動部3の先端部3aとの間の隙間Sに電線を通すことで、電線をヘッド部22に引っ掛ける。
【0039】
ここで、ヘッド部22の先端部22aと可動部3の先端部3aとの間の隙間Sは、支持部23に対して、先端工具1の左右の両方側に形成されている。そのため、電線がどの位置にあっても先端工具1の向きを微調整するだけで、安定した状態で、先端工具1の左右どちらからでも安定して電線を導入することができる。また、ヘッド部22の重心は、先端工具1の中心にある。そのため、安定した状態で、ヘッド部22の先端部22aと可動部3の先端部3aとの間の隙間Sに電線を導入することができる。
【0040】
ヘッド部22の先端部22aと可動部3の先端部3aとの間の隙間Sに電線を導入した状態で、絶縁操作棒7を左回転させると、T字状部2が電線により回り止めされ、可動部3がT字状部2により回り止めされているため、回転ガイド筒41が左回転する。回転ガイド筒41が左回転すると、回転ガイド筒41のねじ溝と回転軸部42とが噛み合っているため、回転軸部42は、ヘッド部22に向かって移動し、可動部3も回転軸部42とともにヘッド部22に向かって移動する。これにより、隙間Sが狭くなっていき、ヘッド部22に引っ掛けた電線を、ヘッド部22と可動部3とにより挟持することができる。これにより、ヘッド部22と可動部3との間に電線が挟持されて仮固定される。
【0041】
ここで、先端工具1は、挟持された電線が容易に緩まないように、ヘッド部22から離れる側への可動部3の移動をロックするロック機構6を備えている。つまみ部61を下方側に移動させたロック状態において、絶縁操作棒7を右回転すると、つまみ部61の突起(図示せず)がギア部62の凹凸の略垂直な面と接触し、絶縁操作棒7の右回転が制限される。これにより、可動部3がヘッド部22から離れる側の移動が制限される。
【0042】
一方、絶縁操作棒7を左回転すると、ギア部62の凹凸の滑らかな傾斜と接触するが、傾斜に沿って容易に乗り越えることができるため、絶縁操作棒7の左回転は制限しない。つまり、つまみ部61を下側に移動させたロック状態においては、絶縁操作棒7の左回転が許容され、絶縁操作棒7の右回転は規制される。これにより、可動部3がヘッド部22から離れる側への移動ができない状態で、可動部3がヘッド部22側に向かう側の移動は可能となる。
【0043】
なお、つまみ部61を上方側に移動させたロック解除状態においては、つまみ部61の突起(図示せず)がギア部62の凹凸と接触しないため、左右いずれの回転も許容される。
【0044】
また、ヘッド部22に引っ掛けた電線をヘッド部22と可動部3とにより挟持された状態から電線を取り外す場合には、つまみ部61を上方側に移動させたロック解除状態において、絶縁操作棒7を右回転させる。こえにより、T字状部2が電線により回り止めされ、可動部3がT字状部2により回り止めされているため、回転ガイド筒41が右回転する。回転ガイド筒41が右回転すると、回転ガイド筒41のねじ溝と回転軸部42とが噛み合っているため、回転軸部42は、絶縁操作棒7に向かって移動し、可動部3も回転軸部42とともに絶縁操作棒7に向かって移動する。これにより、T字状部2のヘッド部22の先端部22aと可動部3の先端部3aとの間の隙間Sが広くなる。このため、先端工具1から電線を取り外すことができる。
【0045】
次に、2本の電線がヘッド部22の長手方向の長さ程度の間隔で離間して並んで配置されている場合において、図5を参照して、2本の電線を同時に仮固定する場合の使用方法について説明する。図5は、本実施形態における間接活線作業用の先端工具1を使用して、2本の電線を同時に仮固定する使用例を示す図である。
【0046】
ヘッド部22の長手方向の長さ程度の間隔で離間して並んで配置された2本の電線を同時に仮固定したい場合には、絶縁操作棒7を操作して、2本の電線のうちの一方の電線を、T字状部2の一方側の隙間Sから先端工具1に導入させる。その後、一方側に電線を引っ掛けた状態で、絶縁操作棒7を操作して、2本の電線のうちの他方の電線を、T字状部2の他方側の隙間Sから先端工具1に導入させる。これにより、図5に示すように、T字状部2の支持部23を挟んで一方側及び他方側の両側において、2本の電線をT字状部2に導入させることができる。この状態で、前述の1本の電線を仮固定する場合と同様に、絶縁操作棒7を回転させる。これにより、可動部3をヘッド部22側に移動させことで、2本の電線を、支持部23を挟んだ両側において、ヘッド部22と可動部3との間に同時に挟持させて仮固定することができる。
【0047】
本発明における間接活線作業用の先端工具1によれば、次のような効果が奏される。
(1)ヘッド部22の重心が先端工具1の中心にあるため、安定した状態で、ヘッド部22の先端部22aと可動部3の先端部3aとの間の隙間Sに電線を導入させて挟持することができる。
(2)可動部3は、支持部23(一対の支持板231)を挟んだ両側において、ヘッド部22との間に電線を挟持可能である。そのため、先端工具1の左右どちらの側に電線があったとしても、安定した状態で、ヘッド部22の先端部22aと可動部3の先端部3aとの間の隙間Sに、先端工具1の左右どちらからでも、電線を導入させることができる。
(3)先端工具1の左右どちらからでも電線を導入できるため、並んで配置される2本の電線を同時に挟持させて仮固定することができる。
(4)先端工具1を絶縁操作棒7に取り付けて操作することができる。そのため、先端工具1を使用する際に、他の先端工具で使用した絶縁操作棒を利用すればよく、本発明に係る先端工具1のみを準備すればよいため、絶縁操作棒に要するコストを低減することができる。
(5)ヘッド部22が所定の幅を有するため、電線に対して斜めになることが抑制され、電線を確実に仮固定することができる。
(6)支持部23は、ヘッド部22の長手方向の略中央からヘッド部22の長手方向に直交する方向に延びる。そのため、先端工具1の重心をより先端工具1の中心側にすることができ、先端工具1をより安定させて操作することができる。
(7)ヘッド部22の長手方向の両端部側それぞれは、可動部3側に向かうように屈曲している。そのため、電線を引っ掛けてT字状部2に容易に導入することができる。また、T字状部2に導入された電線を、引っ掛けた状態で容易に挟持させることができる。
【0048】
以上、好適な実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されることなく種々の形態で実施することができる。
例えば、前記実施形態においては、ヘッド部22の両端部側を屈曲させているが、これに制限されず、ヘッド部22の両端部側を湾曲させてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 先端工具
2 T字状部
3 可動部
4 駆動機構
21 基部
22 ヘッド部
23 支持部
42 回転軸部(駆動軸)
231 支持板
図1
図2
図3
図4
図5