(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1腕部及び前記第2腕部のうち、前記ナットが取り付けられる前記第1腕部及び前記第2腕部の一方の端部に、間接活線工具の開閉可能な一対の把持片により把持される延在部をさらに備える請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の腕金用支持金具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2の技術では、間接活線工具を用いて、腕金の上部にあるナット付ボルトを操作する必要がある。そこで、間接活線工具を用いて、特許文献1に記載される支持金具のように腕金の下方で後腕の両腕にわたって締結することで、下から作業しても腕金に隠れない位置でボルトを操作できる簡便な操作ができる腕金用支持金具が望まれている。特許文献1に記載される支持金具のまま、間接活線工具を用いて作業した場合、腕金の下方で後腕の両腕にわたって締結するためには、ボルトを間接活線工具で把持する操作が2回必要であり、ボルトを不安定な状態にする持ち替える作業を抑制する必要がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、間接活線工具を用いて、腕金の側面に取付られた第1腕部及び第2腕部を、腕金の下方側のボルトで固定することが容易な腕金用支持金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、腕金用支持金具は、柱状で一方向に延びる腕金の第1側面に取り付けられる板状の第1腕部と、前記腕金の第1側面に対して反対側の第2側面に取り付けられる板状の第2腕部と、前記第1側面に重なり合わない前記第1腕部の端部に穿設された第1貫通孔と、前記第2側面に重なり合わない前記第2腕部の端部に穿設された第2貫通孔と、を貫通するボルトと、前記ボルトと締結するナットとを備え、前記ボルトは、外周にねじ山を有する雄ねじ部と、前記雄ねじ部よりも直径が大きいネジ頭部と、前記雄ねじ部に対して前記ネジ頭部から反対側に延びる棒状の把持部とを備えることを特徴とすることを特徴とする。
【0009】
第1の作業者は、間接活線工具の把持工具で、ボルトの把持部を把持したまま、腕金用支持金具を腕金に固定できる。このため、第1の作業者は、ボルトの把持部を把持したまま、ボルトの挿入作業に専念できる。また、第2の作業者は、ボルトとナットとの締結作業に専念できる。その結果、第1の作業者及び第2の作業者ともに作業性が向上し、作業時間が短縮できる。また、作業の容易性が高まることから、第1の作業者の経験を問わず、容易に取り付けることができる。ボルトの把持する場所を持ち替える作業が低減するので、ボルトの落下が抑制される。
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、腕金用支持金具は、腕金に取り付けられる、枠状の前腕と、前記腕金の軸方向に沿う添え腕と、前記腕金に上方から跨ぐように取り付けられ、腕金の第1側面に取り付けられる板状の第1腕部と、前記腕金の第1側面に対して反対側の第2側面に取り付けられる板状の第2腕部と、前記第1腕部と前記第2腕部とを繋げる連結部とを備えるU字ストリップと、前記腕金の下方で前記U字ストリップの前記第1腕部及び前記第2腕部を貫通するボルトと、前記ボルトと締結するナットとを備え、前記ボルトは、外周にねじ山を有する雄ねじ部と、前記雄ねじ部よりも直径が大きいネジ頭部と、前記雄ねじ部に対して前記ネジ頭部から反対側に延びる棒状の把持部とを備えることを特徴とする。
【0011】
第1の作業者は、間接活線工具の把持工具で、ボルトの把持部を把持したまま、腕金用支持金具を腕金に固定できる。このため、第1の作業者は、ボルトの把持部を把持したまま、ボルトの挿入作業に専念できる。また、第2の作業者は、ボルトとナットとの締結作業に専念できる。その結果、第1の作業者及び第2の作業者ともに作業性が向上し、作業時間が短縮できる。また、作業の容易性が高まることから、第1の作業者の経験を問わず、容易に取り付けることができる。ボルトの把持する場所を持ち替える作業が低減するので、ボルトの落下が抑制される。
【0012】
本発明の望ましい態様として、前記把持部は、間接活線工具の開閉可能な一対の把持片により把持されることが好ましい。これにより、間接活線工具を用いて、作業者が通電中の送電線に直接触れることなく配電工事を実施できる。
【0013】
本発明の望ましい態様として、前記把持部は、外周の表面に凹凸があることが好ましい。これにより、間接活線工具を用いても滑り難くなり、間接活線工具でも把持しやすくなる。この構造により、ボルトの軸方向周りに回転する周方向の操作が作業しやすく、微調整しやすい。
【0014】
本発明の望ましい態様として、前記把持部は、外周の表面に凹凸があり、前記把持部の凹凸のピッチが、前記間接活線工具の先端の内側表面にある凹凸のピッチと等しいことが好ましい。この構造により、ボルトの軸方向周りに回転する周方向の操作がさらに作業しやすく、微調整しやすい。
【0015】
本発明の望ましい態様として、前記第1腕部及び前記第2腕部のうち、前記ナットが取り付けられる前記第1腕部及び前記第2腕部の一方の端部に、間接活線工具の開閉可能な一対の把持片により把持される延在部をさらに備えることが好ましい。これにより、作業者は、金具の部品を他の部材に衝突させる可能性を低減できる。また、作業者は、金具の部品を腕金の軸方向に移動させる調整が細かくできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、間接活線工具を用いて、腕金の側面に取付られた第1腕部及び第2腕部を、腕金の下方側のボルトで固定することが容易な腕金用支持金具を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0019】
(実施形態1)
図1は、電柱の一例を示す模式図である。
図1に示すように、配電柱51は、腕金52と、配電線53と、変圧器54と、高圧引下線55と、腕金用支持金具56とを備えている。配電柱51は、高圧用の腕金52に架けた高圧の配電線53から変圧器54に高圧引下線55を配線する。柱上作業の安全を図るために、配電柱51は、腕金52の端部付近に腕金用支持金具56を吊り下げて高圧引留碍子を設置し、高圧引下線55を固着している。
【0020】
[腕金用支持金具]
図2は、実施形態1に係る腕金用支持金具の分解斜視を示す模式図である。
図3は、実施形態1に係る腕金用支持金具に用いられるボルトを示す模式図である。
図4は、
図3に示すボルトの把持部を軸方向からみた側面図を示す模式図である。
図5は、実施形態1に係る腕金用支持金具が腕金に取り付けられた一例を示す模式図である。
図2に示すように、腕金用支持金具56は、高圧引下線用の支持金物とも呼ばれ、上述した腕金52に取り付けられる枠状の前腕30と、前腕30から腕金52の軸方向に沿う添え腕34、35と、U字状のU字ストリップ20と、ボルト1と、ナット2とを備えている。腕金52の軸方向とは、
図1及び
図5に示す腕金52の延びる長手方向である。
【0021】
U字ストリップ20は、上述した腕金52に上方から跨ぐように取り付けられ、後腕と呼ばれることがある。U字ストリップ20は、金属製の板状部材であり、U字ストリップ20の連結部21、U字ストリップ20の連結部21の各両端の端部22C、23Cで、U字ストリップ20の連結部21に対して約90度折り曲げられた第1腕部22及び第2腕部23を備えている。第1腕部22は、腕金52に取り付けられた場合、腕金52の第1側面に重なり合わない第1腕部22の端部に穿設された第1貫通孔22Hを備えている。第2腕部23は、腕金52に取り付けられた場合、腕金52の第2側面に重なり合わない第2腕部23の端部に穿設された第2貫通孔23Hを備えている。第1貫通孔22Hと、第2貫通孔23Hとは、直線上に並んでおり、ボルト1で貫くことができる。第1貫通孔22Hと、第2貫通孔23Hとは、平面視で四角の孔が空けられている。第1貫通孔22Hと、第2貫通孔23Hとは、同じ形状の孔が空けられていることで、第1貫通孔22Hと、第2貫通孔23Hとのどちらからでもボルト1を挿入することができる。
【0022】
前腕30は、金属製の板状部材であり、前腕連結部31、前腕連結部31の各両端の端部32C、33Cで、前腕連結部31に対して約90度折り曲げられた第1前腕部32及び第2前腕部33を備えている。
【0023】
添え腕34、35は、金属製の板状部材であり、添え腕34、35のそれぞれの一端が連結部36で固定されていることが好ましい。添え腕34、35は、連結部36で溶接又は接着されていてもよく、連結部36の両端の端部で連結部36に対して約90度折り曲げられていてもよい。また、添え腕34は、板面に複数の貫通孔34Hが長手方向に並んでいる。また、添え腕35は、板面に複数の貫通孔35Hが長手方向に並んでいる。複数の貫通孔34Hの1つと、複数の貫通孔35Hの1つとは、直線上に並んでおり、ボルト1で貫くことができる。
【0024】
添え腕34の外側表面の一部と、第1前腕部32の先端の内側表面とが重なり合い、溶接又は接着等で固定されている。また、添え腕35の外側表面の一部と、第2前腕部33の先端の内側表面とが重なり合い、溶接又は接着等で固定されている。添え腕34、35は、連結部36とは反対側に、支持部材40を備えている。支持部材40は、断面が矩形の枠状部材であり、上面に開けられた穴に高圧ピン碍子を支持することができる。
【0025】
図3及び
図4に示すように、ボルト1は、雄ねじ部11と、先端部12と、ねじ頭部13と、位置規制部14と、把持部15とを備えている。雄ねじ部11は、外周の面に沿って螺旋状の溝により雄ねじが設けられている。雄ねじ部11の一端には、雄ねじ部11の他端には、位置規制部14を介して、ねじ頭部13がある。ねじ頭部13の直径は、雄ねじ部11の直径D1よりも大きい。
【0026】
また、先端部12は、外周にねじ山がなく円柱状であって、先端部12の直径D3が雄ねじ部の直径D1よりも小さい。この構造により、例えば、添え腕35の貫通孔35Hを通過したボルト1の先端である先端部12は、添え腕34の貫通孔34Hに挿入しやすくなる。このため、先端部12の軸方向の長さL2は、ある程度長い方が添え腕34の貫通孔34Hに挿入しやすくなるが、あまり長すぎると、ナット2の締結する作業時間が長くなる可能性がある。先端部12の軸方向の長さL2は、貫通孔34Hへの挿入作業と、ボルト1とナット2との締結作業時間との兼ね合いで適宜決めればよい。なお、実施形態1に係るボルト1は、先端部12を備えるがこの態様に限られず、先端部12がなくねじ先までネジ山があってもよい。
【0027】
位置規制部14は、ねじ頭部13と雄ねじ部11との間にあり、ボルト1の軸方向からみて、四角形である。位置規制部14の外形は、第1貫通孔22H及び第2貫通孔23Hの平面形状と一致している。位置規制部14が、第1貫通孔22H及び第2貫通孔23Hのうち1つと嵌め合うことにより、ボルト1の軸を中心として回転する方向が規制される。位置規制部14は、ボルト1になくてもよいが、位置規制部14があることで、腕金用支持金具56を腕金52に長期間安定して取り付けることができるようになる。実施形態1に係るボルト1は、ねじ頭部13の根の部分に角のある位置規制部14があることから、根付ボルト又は角根付きボルトとも呼ばれる。
【0028】
ボルト1の呼び長さL3は、腕金52の幅方向の長さによって決まる。実施形態1のボルト1は、雄ねじ部11の軸方向の長さL1を長く取ったが、ボルト2と螺合するのは、先端部12側の一部であるので、ねじ頭部13側の溝加工を省略してもよい。
【0029】
把持部15は、雄ねじ部11に対してねじ頭部13から反対側に延びる円柱棒状である。把持部15は、間接活線工具の開閉可能な先端により把持されるのに十分な軸方向の長さL4を有している。実施形態1に係る把持部15は、直径D2が雄ねじ部の直径D1よりも小さい。把持部15の直径D2は、間接活線工具の開閉可能な先端により把持されるのに十分な直径であればよい。例えば、把持部15の直径D2は、ねじ頭部13の直径と同程度であってもよく、ねじ頭部13と把持部15とが同一の円柱棒状であってもよい。把持部15の外周の表面は、
図4に示すように複数の凸部16が所定の間隔で等間隔に設けられ、凹凸がある。把持部15の外周の表面は、凹凸があることで、滑り止めとなる。複数の凸部16は、例えばローレット加工により形成され、切削装置又は転造装置で把持部15の外周の表面が加工される。把持部15の外周の表面は、例えばローレット目が平目であるが、あや目であってもよい。なお、把持部15は、円柱棒状に限られず、四角柱、六角柱、又は八角柱などの角柱棒状であってもよい。作業者の作業姿勢が毎回異なるため、位置規制部14の回転位置を間接活線工具の操作で微調整しやすいように、把持部15は角柱棒状よりも円柱棒状の方が好ましい。
【0030】
ナット2は、開口部2Hの内周に、上述した雄ねじ部11のねじ山に対応する雌ねじが切ってあり、上述したボルト1の雄ねじ部11と締結することができる。
【0031】
図5に示すように、上述した腕金用支持金具56は、枠状の前腕30の内側に、腕金30を挿入し、添え腕34、35及び支持部材40を腕金30の下方に吊り下げる。そして、作業者は、腕金52の上面にある碍子57等に注意しながら、U字ストリップ20を腕金52の後ろに跨がせる。第1の作業者は、ボルト1を第2貫通孔23H、貫通孔35H、貫通孔34H及び第1貫通孔22Hの順に、腕金52の下方で通し、第2の作業者がボルト1とナット2とを締結する。その結果、
図5に示すように、腕金用支持金具56は、腕金52に取り付けられることになる。
【0032】
以上説明したように、実施形態1に係る腕金用支持金具56は、柱状で一方向に延びる腕金52の第1側面に取り付けられる板状の第1腕部22と、腕金52の第1側面に対して反対側の第2側面に取り付けられる板状の第2腕部23と、を備える。そして、ボルト1は、上述した腕金52の第1側面に重なり合わない第1腕部22の端部に穿設された第1貫通孔22Hと、上述した第2側面に重なり合わない第2腕部23の端部に穿設された第2貫通孔23Hと、を貫通し、ナット2と締結されている。そして、ボルト1は、雄ねじ部11と、ねじ頭部13と、雄ねじ部11に対してねじ頭部13から反対側に延びる、把持部15とを備える。
【0033】
このような、腕金用支持金具56が腕金52に取り付けられる作業は、いわゆる、間接活線工法で行われることが多い。間接活線工法は、ホットスティック(絶縁操作棒)などの間接活線工具を用いて、作業者が通電中の送電線に直接触れることなく配電工事を実施できる。ホットスティックは、配電工事を実施する工具を先端部に備えており、この工具を手元の操作部で遠隔操作できる。配電工事を実施する作業者は、ホットスティックを用いて、高所での支持する又は把持するといった作業を実施できる。そして、ホットスティックは、先端部に工具を着脱自在に保持でき、工具を交換することで多様な作業に対応している。次に、間接活線工具について、
図6及び
図7を用いて説明する。
【0034】
[間接活線工具]
図6及び
図7は、間接活線工具の一例を示す説明図である。例えば、
図6に示す間接活線工具90は、ホットスティック9と、ラチェットレンチ4とを備えている。ホットスティック9は、着脱部91、操作部92及び柄部93を備えている。操作部92及び柄部93の一部は、少なくとも絶縁材料であり、ラチェットレンチ4などの先端部の工具と、操作部92を遠隔操作する作業者とは絶縁されている。着脱部91は、ラチェットレンチ4を着脱自在であり、ラチェットレンチ4の代わりに別の工具を取付可能である。そして、作業者が操作部92を遠隔操作することで、ラチェットレンチ4を回転させる。ラチェットレンチ4は、内部にラチェット車と戻り止用の爪とを含むラチェット機構(不図示)を備えているので、上述したナット2を一方向に回転させることができる。
【0035】
また、
図7に示す間接活線工具90は、ホットスティック9と、把持工具6とを備えている。把持工具6は、開閉可能な一対の把持片6a及び把持片6bを備えている。
図7に示すホットスティック9は、着脱部91、操作部92、柄部93、作動棒6c及び操作レバー6dを備え、把持工具6が着脱部91に取り付けられている。ホットスティック9は、柄部93と沿って作動棒6cを保持している。そして、作動棒6cの一端部が把持片6aに回動可能に連結し、かつ作動棒6cの他端が操作レバー6dに連結している。このような
図7に示す間接活線工具90は、ヤットコとも呼ばれる。把持工具6は、把持片6bの位置が固定され、把持片6aの着脱部91側基部を軸として、把持片6aの先端部が回動可能に連結されている。このため、作業者は、操作レバー6dを操作部92に近づけると、操作レバー6dに連動する作動棒6cが押し上げられ、作動棒6cと連結する把持片6aが作動棒6cの動きに連動し、一対の把持片6a及び把持片6bの先端部6pを閉じることができる。操作レバー6dを操作部92から距離を離すと、操作レバー6dに連動する作動棒6cが押し下げられ、作動棒6cと連結する把持片6aが作動棒6cの動きに連動し、一対の把持片6a及び把持片6bの先端部を開くことができる。このように、間接活線工具90は、作業者が操作レバー6dを操作して、高所に位置する被挟持物を把持できる。
【0036】
[間接活線工法による作業手順]
図8から
図11は、実施形態1に係る腕金用支持金具が腕金に取り付けられる作業手順を説明する説明図である。U字ストリップ20は、腕金52に上方から跨ぐように取り付けられる。板状の第1腕部22は、腕金52の第1側面52L(例えば
図8に示す腕金52の左側側面)に取り付けられる。板状の第2腕部23は、腕金52の第1側面52Lに対して反対側の第2側面52R(例えば
図8に示す腕金52の右側側面)に取り付けられる。U字ストリップ20の連結部21は、第1腕部22と第2腕部23とを繋げ、腕金52の上方に位置している。実施形態1に係るボルト1は、第1の作業者が腕金52の下方で位置を目視できる位置で、U字ストリップ20の第1腕部22及び第2腕部23を視認しつつ、貫通する作業を行うことができる。そこで、先ず、
図8に示すように、第1の作業者は、
図7に示す間接活線工具90の把持工具6で、実施形態1に係るボルト1の把持部15を掴み、第2貫通孔23Hの中に先端部12を挿入できる位置まで搬送する。第2の作業者は、U字ストリップ20の位置を調整し、第2貫通孔23H、貫通孔35H、貫通孔34H及び第1貫通孔22Hが一直線上になるように作業する。
【0037】
次に、
図9に示すように、第1の作業者は、
図7に示す間接活線工具90の把持工具6で、ボルト1の把持部15を掴んだまま、実施形態1に係るボルト1を第2貫通孔23H、貫通孔35H、貫通孔34H及び第1貫通孔22Hの順に、腕金52の下方で挿入していく作業を行う。
【0038】
次に、
図10に示すように、第1の作業者は、ボルト1の位置規制部14を第2貫通孔23Hに嵌め込む場合、ボルト1の軸方向の第2貫通孔23Hの平面形状と、位置規制部14の平面形状とを合わせる必要がある。実施形態1に係る把持部15は、上述したように外周の表面に凹凸があるので、把持片6a及び把持片6bの先端部6pが滑りにくくなっており、ボルト1の軸方向周りに回転する周方向の操作が作業しやすく、微調整しやすい。把持部15の凹凸のピッチが、間接活線工具90の先端6pの内側表面にある凹凸のピッチと等しいと、ボルト1の軸方向周りに回転する周方向の操作がさらに作業しやすく、微調整しやすい。
【0039】
次に、
図11に示すように、第1の作業者は、ボルト1の位置規制部14を第2貫通孔23Hに嵌め込む。そして、実施形態1に係るボルト1は、先端部12及び雄ねじ部11の一部が第1腕部22から突出する。第2の作業者は、
図6に示す間接活線工具90のラチェットレンチ4で、ボルト1とナット2とを締結する作業を行う。その結果、
図5に示すように、腕金用支持金具56は、腕金52に取り付けられることになる。以上説明したように、第1の作業者は、
図7に示す間接活線工具90の把持工具6で、実施形態1に係るボルト1の把持部15を把持したまま、腕金用支持金具56のU字ストリップ20を腕金52に固定できる。
【0040】
上述した特許文献1に記載のボルトでは、第1の作業者は、
図7に示す間接活線工具90の把持工具6で作業した場合、ボルトの把持位置を変える必要性があることを、
図12及び
図13を用いて説明する。
図12及び
図13は、比較例に係る腕金用支持金具が腕金に取り付けられる作業手順を説明する説明図である。
図12及び
図13に示すように、上述した特許文献1に記載の、比較例に係るボルトは、実施形態1に係る把持部15を備えていない。
【0041】
図12に示すように、第1の作業者は、
図7に示す間接活線工具90の把持工具6で、比較例に係るボルトの雄ねじ部11を掴んだまま、ボルト1を第2貫通孔23H、貫通孔35H、貫通孔34H及び第1貫通孔22Hの順に、腕金52の下方で挿入していく作業を行う。しかしながら、第2腕部23とねじ頭部13との間は、挿入作業に応じて間隔がなくなるため、
図13に示すように、添え腕34、35の間の雄ねじ部11を別の把持工具6で、第2の作業者が比較例に係るボルトを把持して、ボルトの把持する場所を持ち替える作業が必要になる。このため、ボルトの把持する場所を持ち替える作業は、第1の作業者及び第2の作業者の連携が必要であるため、作業が繁雑となり、作業者の負担が大きくなる可能性がある。2人の作業者が、ボルトを把持するには、密接した狭いスペースで作業する必要があり、作業者の心理的な負担が大きくなる可能性がある。また、持ち替え作業は、ボルトが落下する可能性があり、出来るだけ作業回数を低減したい要望がある。
【0042】
これに対して、実施形態1において、第1の作業者は、
図7に示す間接活線工具90の把持工具6で、実施形態1に係るボルト1の把持部15を把持したまま、腕金用支持金具56のU字ストリップ20を腕金52に固定できる。このため、第1の作業者は、ボルト1の把持部15を把持したまま、ボルト1の挿入作業に専念できる。また、第2の作業者は、ボルト1とナット2との締結作業に専念できる。その結果、第1の作業者及び第2の作業者ともに作業性が向上し、作業時間が短縮できる。また、作業の容易性が高まることから、第1の作業者の経験を問わず、容易に取り付けることができる。ボルト1の把持する場所を持ち替える作業が低減するので、ボルト1の落下が抑制される。ボルト1以外の腕金用支持金具56の部材は、特許文献1に記載の部品と同じであり、実施が容易である。
【0043】
(実施形態2)
図14は、実施形態2に係る腕金用支持金具の分解斜視を示す模式図である。
図15は、実施形態2に係る腕金用支持金具が腕金に取り付けられる作業手順を説明図である。なお、上述したものと同じ部材、構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0044】
図14に示すように、実施形態2に係る腕金用支持金具56は、U字ストリップ20の第1腕部22の端部が第2腕部23よりも長い延在部25がある。延在部25は、
図7に示す間接活線工具90の把持工具6で持ちやすいように、第1貫通孔22Hと、延在部25の先端との間の折り曲げ位置25Cで第1腕部22の板面に対して外側に折り曲げられていることがより好ましい。
【0045】
図15に示すように、第1の作業者は、
図7に示す間接活線工具90の把持工具6と同じ把持工具6Aで、実施形態2に係るボルト1の把持部15を掴み、第2貫通孔23Hの中に先端部12を挿入できる位置まで搬送する。第2の作業者は、
図7に示す間接活線工具90の把持工具6と同じ把持工具6Bで延在部25を把持しながら、U字ストリップ20の位置を調整し、第2貫通孔23H、貫通孔35H、貫通孔34H及び第1貫通孔22Hが一直線上になるように作業する。これにより、第2の作業者は、腕金52の上面にある碍子57等に注意しながら、U字ストリップ20を腕金52の軸方向に移動させることが容易になる。その結果、第2の作業者は、U字ストリップ20の連結部21を碍子57に衝突させる可能性を低減できる。また、第2の作業者は、U字ストリップ20を腕金52の軸方向に移動させる調整が細かくできるので、早く第2貫通孔23H、貫通孔35H、貫通孔34H及び第1貫通孔22Hが一直線上になるように作業することができる。
【0046】
(実施形態3)
図16は、実施形態3に係る腕金用支持金具が腕金に取り付けられた一例を示す模式図である。なお、上述したものと同じ部材、構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0047】
実施形態3に係る腕金用支持金具56は、添え腕34、35が、連結部36とは反対側に延長されたアーム部34A、35Aでバインドレス碍子58を支えている。このように、実施形態3に係る腕金用支持金具56は、電柱又は鉄塔など固定される柱状の腕金52に取り付けられるものであれば、設置するものは、支持部材又は各種機器等限定されるものではない。
【0048】
(実施形態4)
図17は、実施形態4に係る腕金用支持金具が腕金に取り付けられた一例を示す模式図である。なお、上述したものと同じ部材、構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0049】
実施形態4に係る腕金用支持金具56Aは、第1腕部22Aは、第2腕部23Aと別部材である。例えば、第1L字金具26は、第1腕部22Aと、上面取付部21Aとを少なくとも備える。第1腕部22Aと、上面取付部21Aとは、端部22Cで約90度折れ曲がっている。実施形態4において、第1L字金具26は、さらに、ボルト43で各種機器44を取り付ける機器支持腕41と機器取付板42とを備え、板状部材を3回屈曲して加工された2段L字状または階段状の形状をしている。機器支持腕41と機器取付板42とは、端部42Cで約90度折れ曲がっている。第2L字金具27は、第2腕部23Aと、上面取付部28とがL字状に折れ曲がっている。第1腕部22Aは、上述した第1腕部22と同様に第1貫通孔22Hを備えている。第2腕部23Aは、上述した第2腕部23と同様に第1貫通孔23Hを備えている。
【0050】
腕金用支持金具56Aは、第1L字金具26と第2L字金具27とが締結ボルト29Bとナット29Nで一体となった締結構造29で固定されている。例えば、上面取付部21Aと、上面取付部28とが重なる位置で貫通孔(不図示)が開けられており、この貫通孔を貫通する締結ボルト29Bをナット29Nで固定している。
【0051】
そして、作業者は、第1腕部22Aと第2腕部23Aとの間に腕金52が位置するように腕金用支持金具56Aを腕金52の上から跨がせる。第1の作業者は、ボルト1を第2貫通孔23H、貫通孔35H、貫通孔34H及び第1貫通孔22Hの順に、腕金52の下方で通し、第2の作業者がボルト1とナット2とを締結する。その結果、
図17に示すように、腕金用支持金具56Aは、腕金52に取り付けられることになる。
【0052】
以上説明したように、実施形態4に係る腕金用支持金具56Aは、柱状で一方向に延びる腕金52の第1側面52Lに取り付けられる板状の第1腕部22Aと、腕金52の第1側面52Lに対して反対側の第2側面52Rに取り付けられる板状の第2腕部23Aと、を備える。そして、ボルト1は、上述した腕金52の第1側面52Lに重なり合わない第1腕部22Aの端部に穿設された第1貫通孔22Hと、上述した第2側面52Rに重なり合わない第2腕部23Aの端部に穿設された第2貫通孔23Hと、を貫通し、ナット2と締結されている。そして、ボルト1は、雄ねじ部11と、ねじ頭部13と、雄ねじ部11に対してねじ頭部13から反対側に延びる、把持部15とを備える。
【0053】
これにより、第1の作業者は、
図7に示す間接活線工具90の把持工具6で、実施形態4に係るボルト1の把持部15を把持したまま、腕金用支持金具56Aを腕金52に固定できる。このため、第1の作業者は、ボルト1の把持部15を把持したまま、ボルト1の挿入作業に専念できる。また、第2の作業者は、ボルト1とナット2との締結作業に専念できる。その結果、第1の作業者及び第2の作業者ともに作業性が向上し、作業時間が短縮できる。また、作業の容易性が高まることから、第1の作業者の経験を問わず、容易に取り付けることができる。ボルト1の把持する場所を持ち替える作業が低減するので、ボルト1の落下が抑制される。