(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5797724
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】排気ガスターボチャージャ
(51)【国際特許分類】
F02B 39/00 20060101AFI20151001BHJP
F01D 25/24 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
F02B39/00 N
F02B39/00 T
F02B39/00 D
F01D25/24 E
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-232547(P2013-232547)
(22)【出願日】2013年11月8日
(65)【公開番号】特開2014-95382(P2014-95382A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2013年11月8日
(31)【優先権主張番号】12191790.0
(32)【優先日】2012年11月8日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501405177
【氏名又は名称】アーベーベー ターボ システムズ アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア・バッカ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・オシュガー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・レヒン
【審査官】
二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−217631(JP,A)
【文献】
特開2003−293783(JP,A)
【文献】
特開平11−117753(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第102005062562(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 33/00−41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側のハウジンングシェルと、該ハウジンングシェルの内部に設けられたロータブロックと、を有する排気ガスターボチャージャであって、前記外側のハウジンングシェルは、タービンハウジング(5)と外側の軸受ハウジング(6)を有し、前記タービンハウジングは、ガス入口ハウジング(51)およびガス出口ハウジング(52)を有し、
前記ロータブロックは、内側の軸受ハウジング(30)と、該内側の軸受ハウジングに回転自在に取り付けられたシャフト(3)と、該シャフトと結合され、かつ、前記内側の軸受ハウジングのコンプレッサ側に設けられたコンプレッサホイール(1)と、同様に前記シャフトと結合されておりかつ前記軸受ハウジングのタービン側に設けられたタービンホイール(2)と、を有し、前記ロータブロックは、ユニットとして、軸方向にコンプレッサ側へと、前記外側のハウジンングシェルから引き出し可能であり、
前記ロータブロックには、前記ロータブロックの周面に沿って径方向外側に開いておりかつ前記タービンホイールから前記ロータブロックの外周面まで延びている流路(82)が設けられており、該流路(82)は、前記シャフトに向いた径方向内側では、前記内側の軸受ハウジング(30)によって、および向かい側では、すなわち、径方向外側では、複数のブレース(31)を介して前記内側の軸受ハウジングと結合されたディフューザ壁部(32)によって区画されており、前記流路(82)は、径方向外側で、前記ガス出口ハウジング(52)に設けられた環状の流路(83)に通じ、前記2つの流路(82,83)の移行領域では、前記内側の軸受ハウジング(30)と、前記ガス出口ハウジング(52)との間に、周面に沿って延びている径方向ギャップ(85)が形成されており、
前記径方向ギャップ(85)を密閉するために、前記ロータブロックの前記内側の軸受ハウジング(30)に、密閉空気用通路(35)が設けられており、該密閉空気用通路は、前記内側の軸受ハウジングのコンプレッサ側で始まり、かつ前記径方向ギャップ(85)に通じている、
排気ガスターボチャージャ。
【請求項2】
前記密閉空気用通路(35)は、前記コンプレッサホイール(1)の後壁と、前記内側の軸受ハウジングとの間に延びている中空空間(34)から始まる、請求項1に記載の排気ガスターボチャージャ。
【請求項3】
前記密閉空気用通路(35)は、前記径方向ギャップ(35)に沿って延びている中空空間(851)に通じている、請求項1または2に記載の排気ガスターボチャージャ。
【請求項4】
前記密閉空気用通路には、制御バルブが設けられている、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の排気ガスターボチャージャ。
【請求項5】
前記密閉空気用通路(35)は、外部の密閉空気供給装置に接続されている、請求項1に記載の排気ガスターボチャージャ。
【請求項6】
複数の密閉空気用通路(35)は、周方向に配設されており、これらの密閉空気用通路は、夫々、前記内側の軸受ハウジングのコンプレッサ側を前記径方向ギャップ(85)に接続させる、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の排気ガスターボチャージャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過給された内燃機関の排気ガスターボチャージャの分野に関する。
【0002】
本発明は、ユニットとして外側のハウジンングシェルから引き出し可能なロータブロックを有する排気ガスターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0003】
内燃機関の性能を向上させるために、排気ガスターボチャージャを使用する。この場合、排気ガスターボチャージャの排気ガスタービンに、内燃機関からの排気ガスを当て、かつ排気ガスのエネルギを、内燃機関のための空気を吸引および圧縮するために使用する。
【0004】
軸方向に流体が貫流する排気ガスタービン(このテキストでは、以下、単にアキシャルタービンという)を有する排気ガスターボチャージャでは、タービンディフューザは、機械的に、例えば、固定式のねじ結合手段によって、タービンのガス出口ハウジングと結合されている。タービンディフューザを取り外すためには、この場合、まず、ロータブロックをハウジングから取り外さなければならず、続いて、タービンディフューザをガス出口ハウジングから外さねばならない。このことは、特に、錆びついたまたは別の方法で動かなくなった取付手段の場合、あるいは、軸受ハウジングに形成された開口部を通しての、取り外されるべき取付手段への出し入れ可能性の故に、手間および時間がかかる作業であることがある。排気ガスターボチャージャの、排気ガス流に晒されるすべての部分の取り外しを、保守の際に容易化するために、排気ガスターボチャージャのデザインを、以下のように、すなわち、すべてのロータブロック、すなわちすべての回転部分および関連の軸受領域が、排気ガスタービンの上位流にあるガイドデバイスと共に、ユニットとして外側のハウジングシェルから取り外されるように、最適化する試みがなされる。
【0005】
このような組み立てられた排気ガスターボチャージャにおいて、外側のハウジンングシェルの一部であるガス出口ハウジングと、流路をタービンホイールの下流で区画するハウジング部分、すなわち、径方向外側のディフューザおよび径方向内側のフードとの間には、いかなる作動時点においても、径方向ギャップがある。このことは、ロータブロック内のハウジング部分に作用する力を、ガス出口御ハウジングから分離する故に、必要である。このギャップすなわち径方向ギャップを通って、高温ガスが、外側のハウジングシェルとロータブロックとの間の分離箇所に浸入してしまう。分離箇所におよびこの領域で場合によっては存する中空空間に浸入する高温ガスによって、更に、構成要素の、高温ガスが浸入しない場合よりも高い温度が、発生される。このことによって、ロータブロックの軸受部分における材料温度が増加し、従って、追加の冷却コストが必要である。
【0006】
アキシャルタービンを有する排気ガスターボチャージャでは、タービン側で、しばしば密閉空気を使用する。その目的は、軸受領域を、浸入する高温ガスから保護するためであり、あるいは、タービンホイールのハブを冷却するためである。この密閉空気は、通常、コンプレッサホイールに作用するせん断力の軽減の副産物である。この軽減の際に、コンプレッサホイールの後方チャンバ内の空気圧力を減じるのは、コンプレッサホイールの流路からこの領域すなわち後方チャンバに浸入する空気を排出することによってである。
【発明の概要】
【0007】
本発明の課題は、上記構造の排気ガスターボチャージャにおいてロータブロックと外側のハウジングシェルとの間の移行領域を、浸入する高温ガスに対し密閉することにある。
【0008】
本発明によれば、このことは、ロータブロックと外側のハウジングシェルとの間に延びている径方向ギャップを密閉するために、ロータブロックの内部に、密閉空気用通路が設けられており、該密閉空気用通路は、ロータブロック内に設けられている、内側の軸受ハウジングの、そのコンプレッサ側で始まり、かつ径方向ギャップに通じていることによって、達成される。
【0009】
密閉空気用通路が、コンプレッサホイールの後方チャンバに形成された中空空間から始まることは有利である。従って、取り出された密閉空気が、コンプレッサホイールに作用するせん断力の軽減を補助するのは、コンプレッサホイールの後方チャンバにおける圧力を低下させ、従って、コンプレッサ側の方向に作用する力を減じることによってである。
【0010】
ロータブロックの周面に沿って延びている中空空間が、後方ギャップに沿って設けられているとき、環状ギャップすなわち径方向ギャップに沿っての密閉空気の分配が改善される。
【0011】
同様に、周方向に配設された複数の密閉空気用通路が、密閉空気を、従来の技術より良好に、均等に分配するために役立つ。
【0012】
径方向ギャップに導かれる密閉空気を制御するためのバルブが、密閉空気用通路に設けられていてもよいことは任意である。
【0013】
更なる利点は、従属 請求項から生じる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】外側のハウジングシェルに用いられたロータブロックを有する排気ガスターボチャージャの断面略図を示す。
【
図2】外側のハウジングシェルから部分的に引き出されたロータブロックを有する、
図1に示した排気ガスターボチャージャを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
続いて、図面を参照して、本発明により形成された排気ガスターボチャージャを説明する。
図1は、外側のハウジンングシェルの中に使用されたロータブロックを有する排気ガスターボチャージャの断面略図を示す。排気ガスターボチャージャは、タービンホイール2を有する排気ガスタービンと、シャフト3を介してタービンホイールと結合したコンプレッサホイール1とを具備する。図示した排気ガスタービンは、アキシャルタービンのタイプである。このタイプでは、高温排気ガスは、軸方向に向けられた流路81の中で、タービンホイールに当たる。タービンホイール2は、多数の回転ブレード22を有する。該回転ブレードは、ハブ21の、径方向外側の縁部に設けられている。シャフト3は、形状により、力によりまたは素材により、タービンホイールのハブ21と結合されている。シャフト3を取り付けるために、
図1に略示した軸受39が設けられている。典型的には、シャフトは、2つのラジアル軸受および少なくとも1つアキシャル軸受によって、軸受ハウジングに回転自在に取り付けられている。シャフト3の他端には、コンプレッサホイールが設けられている。コンプレッサホイールは、典型的には、シャフトの自由端に螺着されている。タービンホイールと同様に、コンプレッサホイール1も多数の回転ブレード12を有する。これらの回転ブレードは、周面に沿って、ハブ11に配設されている。図示したコンプレッサは、ラジアルコンプレッサのタイプである。このタイプでは、圧縮される空気を、軸方向に吸引し、かつコンプレッサホイールの領域で、径方向に転向する。
【0016】
図示した排気ガスターボチャージャでは、内側のロータブロックは、ユニットとして、外側のハウジングシェルから、軸方向に(排気ガスターボチャージャのシャフトの軸線に関して)、コンプレッサ側、すなわち左側へ、引き出し可能である。
図2は、取り出されたコンプレッサハウジング4と、ハウジンングシェルから部分的に引き出されたロータブロックとを有する排気ガスターボチャージャを示す。略図には、個々のハウジング部分をまとめるために用いる取付手段は示されていない。
【0017】
ロータブロックは、回転式の構成要素、すなわちタービンホイール2と、コンプレッサホイールと、両者の間にあるシャフト3とのほかに、複数の軸受部分39および内側の軸受ハウジング30を有する。
図2には、内側の軸受ハウジング30の内部領域、例えば、軸受のための潤滑油供給管は、詳細に示されていない。ロータブロックは、タービン領域で、更に、ディフューザ壁部32と、軸受側から見てタービンホイール2の後方に設けられたガイドデバイス(ノズルリング)33とを有する。ガイドデバイスは、流れを、タービンホイールの回転ブレード22に整列させるために使用する。ディフューザ壁部32は、複数のブレース31を介して、内側の軸受ハウジングと結合されている。これらのブレースは、流路82の中を延びている。流路82は、タービンのディフューザ領域で、高温の排気ガスをタービンホイールから、ロータブロックの、径方向外側の周面まで送り、かつ、シャフトに向いた径方向内側において、内側の軸受ハウジング30のハウジング壁部(フード)によって区画されている。向かい側では、すなわち、径方向外側では、流路82は、ディフューザ壁部32によって区画されている。ディフューザ壁部は、タービン側で、タービンホイール2の回転ブレード22を越える位置まで、延長されており、かつ、タービンホイール2の回転ブレードの上流に設けられたガイドデバイス33を有する。この構造は、排気ガスタービンのすべての構成要素を同時に取り外すことを可能にする。すべての構成要素は、流れに晒されており、かつ、点検の場合に整備され、あるいは、必要な場合には交換されなければならない。ロータブロックは、上述のように、ユニットとして、外側のハウジングシェルから引き出される。
【0018】
外側のハウジンングシェルは、タービンハウジング5および外側の軸受ハウジング6を有する。これらの2つのハウジング部分は、典型的には、排気ガスターボチャージを、モータコンソールへ、または一般的には、排気ガスターボチャージャが取り付けられている床と結合させる部分である。タービンハウジング5は、ガス入口ハウジング51およびガス出口ハウジング52に区分される。ガス入口ハウジング51は、通常、径方向外側の領域に、フード状の半球状部材53を有する。半球状部材は、円形の横断面を有する管状の流入領域を、環状の横断面を有する流れ領域に移行する。半球状部材53は、タービンハウジングの部分として、ブレース54を介してガス入口ハウジング51に取り付けられており、あるいは、
図2に参照符号53´を付して示すように、ロータブロックの部分として、支持するようにノズルリング33と結合されていてもよい。後者の場合には、ブレース54は、ガス入口ハウジングの流れ領域に設けられていない。コンプレッサ側には、ターボチャージャハウジングは、コンプレッサハウジング4を有する。
【0019】
外側のハウジングシェルとロータブロックとの間の移行領域には、分離箇所がある。この分離箇所に沿って、ロータブロックは、外側のハウジンングシェルから引き出し可能である。図示のように、分離箇所は、理想的には、少なくとも1つの軸方向ストッパを有する。この軸方向ストッパの領域では、ロータブロックは、外側の軸受ハウジング6に形状結合で(schluessig)接触している。このことによって、所定の気密度を保証することができる。
【0020】
分離箇所には、ガス出口ハウジング52と、タービンホイールの下流で流路を区画するハウジング部分、すなわち、径方向外側のディフューザ壁部32および径方向内側のフードとの間には、いずれの作動時点でも、かつ作動温度に係わりなく径方向ギャップが存する。このことは、ロータブロックのハウジング部分に作用する力をハウジング出口ハウジングから分離するために、必要である。しかし、高温ガスが、径方向ギャップを通って、外側のハウジンングシェルとロータブロックの間の移行領域にある分離箇所に浸入するのを阻止するために、本発明によれば、密閉空気を、この径方向ギャップの領域に吹き入れられる。この場合、密閉空気は、コンプレッサ側で、排気ガスターボチャージャのコンプレッサから取り出され、かつ、内側の軸受ハウジング30を通って、分離箇所に送られる。この目的のために、密閉空気用通路35が、図示した実施の形態では、コンプレッサホイール1の後部に形成された中空空間34から、分離箇所に設けられた、周囲を取り巻く、環状の中空空間851へ延びている。中空空間851は、ガス出口ハウジング52と、内側の軸受ハウジングのフードの領域との間の環状のギャップ85に直に接し、かつ、径方向ギャップに比較して大きな横断面によって、周面に沿って密閉空気をより良く分配する。内側の軸受ハウジングの中で周方向に配設されている複数の密閉空気用通路があって、かくて、分離箇所に沿って密閉空気を均等に分配することは任意である。
【0021】
中空空間851に導入される密閉空気の故に、高温ガスが、分離箇所へ、およびこの分離箇所で場合によっては存在する他の中空空間へ浸入することを、阻止することができる。このことによって、汚染した排気ガスによる沈積物を阻止することができ、同時に、浸入する排気ガスによる加熱から軸受部分を保護することができる。
【0022】
少なくとも1つの密閉空気用通路には、径方向ギャップへ導かれる密閉空気を制御するためのバルブが設けられていてもよいことは任意である。バルブによって、コンプレッサの後方チャンバから排出された密閉空気の量に動的に影響を与えることができる。
【0023】
密閉空気を、外部の供給源(圧縮空気源)から密閉空気用通路へ導入してもよいことは任意である。
【符号の説明】
【0024】
1 コンプレッサホイール
11 コンプレッサホイールのハブ
12 コンプレッサホイールの回転ブレード
2 タービンホイール
21 タービンホイールのハブ
22 タービンホイールの回転ブレード
3 シャフト
30 内側の軸受ハウジング
31 ブレース
32 ディフューザ壁部
33 ガイドデバイス(ノズルリング)
34 コンプレッサホイールの後方側に形成された中空空間
35 密閉空気用通路
39 シャフト用の軸受
4 コンプレッサハウジング
5 タービンハウジング
51 ガス入口ハウジング
52 ガス出口ハウジング
53,53´ 半球状部材
54 ブレース
6 外側の軸受ハウジング
7 ガス供給管
81 タービンのガス入口における流路
82 タービンのディフューザにおける流路
83 ガス出口ハウジングに形成された流路
85 内側のロータブロックとガス出口ハウジングの間の径方向ギャップ
851 中空空間