(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5797737
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】太陽熱集熱システム
(51)【国際特許分類】
F24J 2/18 20060101AFI20151001BHJP
F24J 2/38 20140101ALI20151001BHJP
【FI】
F24J2/18
F24J2/38
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-504107(P2013-504107)
(86)(22)【出願日】2011年4月14日
(65)【公表番号】特表2013-524161(P2013-524161A)
(43)【公表日】2013年6月17日
(86)【国際出願番号】CN2011072764
(87)【国際公開番号】WO2011127826
(87)【国際公開日】20111020
【審査請求日】2014年3月31日
(31)【優先権主張番号】201010153222.9
(32)【優先日】2010年4月14日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512262352
【氏名又は名称】蘇州賽▲ぱ▼太陽能科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】SUZHOU SAIPA SOLAR TECHNOLOGY CO., LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】兪忠良
(72)【発明者】
【氏名】兪▲ち▼
【審査官】
木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−288980(JP,A)
【文献】
特開平06−213514(JP,A)
【文献】
実開昭62−093208(JP,U)
【文献】
特開2002−098415(JP,A)
【文献】
特開2003−240356(JP,A)
【文献】
特開2000−223730(JP,A)
【文献】
特表2007−524055(JP,A)
【文献】
中国実用新案第201081440(CN,Y)
【文献】
中国特許出願公開第101446274(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24J 2/18
F24J 2/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
常に太陽の動きに従って回転する集光鏡と、受熱してエネルギーを貯蔵する受入装置と、集光鏡が太陽の動きに従って動くように制御する電気制御ユニットと、を含むFPR鏡(Focus、Project、Reflect鏡の略称)太陽熱集熱システムにおいて、
前記FPR鏡太陽熱集熱システムには、集光鏡の鏡面に対して同軸一体で、焦点が重なる投射鏡が設けれ、前記集光鏡の中心には、投射鏡の光斑点に干渉しなく且つ集光鏡の鏡面より遥かに小さい貫通穴が形成され、投射鏡のある集光鏡の反対側には、反射鏡が設けられ、反射鏡と投射鏡と集光鏡が鏡面セットを構成し、前記反射鏡の主光軸の延長方向には、位置が変らない受入装置が設けられ、主光軸の上には、全体の鏡面セットが反射鏡の中心の周りを回転するように駆動する第一モータが設けられ、前記第一モータは、電気制御ユニットの制御を受けられるように電気制御ユニットに電気接続されていることと、
集熱する前記鏡面セットは、ジャイロジンバル(gyro gimbal)の上に設けられ、前記FPR鏡太陽熱集熱システムは、軸方向が鏡面セットの回転軸に垂直する集光鏡角度制御モジュールをさらに含み、前記集光鏡角度制御モジュールは、反射鏡の軸線の両側に設けられ、且つトルクが相殺する第二モータ牽引リンクと釣合重りを含み、前記第二モータ牽引リンクは、集光鏡の外側面に繋がっている、
ことを特徴とするFPR鏡太陽熱集熱システム。
【請求項2】
前記反射鏡が平面状反射鏡である、ことを特徴とする請求項1に記載のFPR鏡太陽熱集熱システム。
【請求項3】
前記反射鏡が環状凹部を有する球面状反射鏡である、ことを特徴とする請求項1に記載のFPR鏡太陽熱集熱システム。
【請求項4】
前記受入装置の外側表面に保温材料が設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載のFPR鏡太陽熱集熱システム。
【請求項5】
前記集光鏡の形状は、集光機能を有している回転放物面状凹面鏡或いは球面状凹面鏡である、ことを特徴とする請求項1に記載のFPR鏡太陽熱集熱システム。
【請求項6】
前記第一モータと第二モータは、少なくともステッピングモータ或いはサーボモータ中の一種である、ことを特徴とする請求項1に記載のFPR鏡太陽熱集熱システム。
【請求項7】
前記集熱システムは、1つ以上の鏡面セットと各自の電気制御ユニットを含み、前記各々の電気制御ユニットは、同期作動するように並列接続或いは直列接続され、各々の鏡面セットの反射鏡の主光軸が位置の変らない受入装置に集まる、ことを特徴とする請求項1に記載のFPR鏡太陽熱集熱システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽熱集熱装置に関し、特にコストが低く、太陽熱を有効に使い、民生用への普及と工業的な大規模熱発電を実現することができる集熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽熱集熱装置は、受けた太陽光を熱エネルギーに変換して熱伝播媒体に伝導する装置である。集熱装置は、太陽熱利用装置での重要な部品である。集熱方式の種類によっていろいろな集熱装置があるが、一般的に集光型集熱装置と非集光型集熱装置に分けられる。非集光型集熱装置は、熱エネルギーを蓄積する効率と蓄積された熱エネルギーの品質が良くない。集光型集熱装置は、大きい面積で受けた太陽エネルギーをずいぶん小さい面積或いは一点に集めるので、集光比が10
4以上に達する高品質、高温の熱エネルギーを形成することができる。中高温の熱エネルギーを使う太陽エネルギーエアコン、太陽エネルギー蒸気タービン或いは太陽エネルギーガスタービンにおいては、太陽光輻射のエネルギーフルエンス率が低く、需要する温度に達しない非集光型集熱装置を使うことができない。従って、太陽光輻射のエネルギーフルエンス率が良く、太陽エネルギーを有効に使える集光型集熱装置を使わなければならない。
【0003】
現在段階では、集光型集熱装置が陽光を集める非常に優れた装置になっている。最高の集熱効果を得るために、太陽の動きに従って集光型集熱装置の集光型反射鏡を動かさなければならない。集光型反射鏡を動かす時に集光型反射鏡の焦点も一緒に動くので、受熱装置のサイズと重さを考えなければならない。受熱装置のサイズを大きくすると、光の遮断により反射鏡の受光面積が少なくなり、受熱装置の重さを増加すると、支持部品とヒンジの負荷が大きくなる。太陽エネルギーの離散性、周期性、不安定性、及び曇りによる太陽光の遮断、吹く風などによって、受熱装置の受熱面の集熱効果に影響を与えることができる。又、受熱装置が動いているので、受け取った太陽エネルギーの輸出にも影響を与えることができる。特に高温で、品質がよい太陽エネルギーにはより大きい影響を与えるだろう。上述した問題を解決するために、焦点の位置が変らなく、ただ集光鏡の追跡移動によって太陽エネルギーを集める集光装置、即ち「ヘリオスタット(Heliostat)」という集光装置を研究して来た。
【0004】
前世紀30年代から、国内外の大勢の学者、専門家たちの弛まない努力によって、有効な「ヘリオスタット」焦点固定式集光システム、即ちタワー式受入装置を発明した。前記タワー式受入装置は、散熱面積が小さいので、光熱変換効率がよい。タワー式太陽熱集熱装置の温度が500〜600℃まで上がることができるので、容易に高温、高圧の火力発電所に組み合わせて使うことができる。従って、太陽熱発電の発電効率を高め、且つ容易に他の設備に組み合わせて使うことができる。
【0005】
しかし、上述した太陽発電装置は、建設費用が非常に高く、初期の建設費用だけで3.4〜4.8万元/KWぐらいになった。ヘリオスタットは、全ての建設費用の52%に達し、土地の占用量も発電装置のパワーの増加によって倍に増加した。ヘリオスタットの制御システムの構造も非常に複雑である。専門家たちは、多年の研究と、パソコンの制御を通して、1つの鏡面に使う制御装置のM×N個制御ユニットをM+N個制御ユニットに減らした。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上述した問題を解決し、集熱効率が高く、受入装置の位置が変わらない「FPR鏡(Focus、Project、Reflect鏡の略称)」太陽熱集熱システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達するため、本発明は、常に太陽の動きに従って回転する集光鏡と、受熱して熱エネルギーを蓄積する受入装置と、集光鏡が太陽の動きに従って動くように制御する電気制御ユニットとを含むFPR鏡太陽熱集熱システムを提供する。前記FPR鏡太陽熱集熱システムには、集光鏡の鏡面に対して同軸一体で焦点が重なる投射鏡が設けられ、前記集光鏡の中心には、投射鏡の光斑点に干渉せず且つ集光鏡の鏡面より遥かに小さい貫通穴が形成されている。投射鏡のある集光鏡の反対側には、反射鏡が設けられ、反射鏡と投射鏡と集光鏡が鏡面セットを構成する。前記反射鏡の主光軸の延長方向には、位置が変らない受入装置が設けられ、且つ主光軸の上には、全体の鏡面セットが反射鏡の中心の周りを回転するように駆動する第一モータが設けられている。前記第一モータは、電気制御ユニットの制御を受けられるように電気制御ユニットに電気接続されている。
【0008】
前記FPR鏡太陽熱集熱システムにおいて、集熱する前記鏡面セットは、ジャイロジンバル(gyro gimbal)の上に設けられている。前記FPR鏡太陽熱集熱システムは、軸方向が鏡面セットの回転軸に垂直する集光鏡角度制御モジュールをさらに含む。前記集光鏡角度制御モジュールは、トルクが相殺するように反射鏡の軸線の両側に設けられている第二モータ牽引リンクと釣合重りを含む。前記第二モータ牽引リンクは、集光鏡の外側面に繋がっている。
【0009】
前記FPR鏡太陽熱集熱システムにおいて、前記反射鏡が平面状反射鏡或いは環状凹部を有する球面状反射鏡である。
【0010】
前記FPR鏡太陽熱集熱システムにおいて、前記受入装置の外側表面に保温材料が設けられている。
【0011】
前記FPR鏡太陽熱集熱システムにおいて、前記集光鏡の形状は、集光機能を有している回転放物面状凹面鏡或いは球面状凹面鏡である。
【0012】
前記FPR鏡太陽熱集熱システムにおいて、前記第一モータと第二モータは、少なくともステッピングモータ或いはサーボモータ中の一種である。
【0013】
前記FPR鏡太陽熱集熱システムにおいて、前記集熱システムは、1つ以上の鏡面セットと各自の電気制御ユニットを含む。前記各々の電気制御ユニットは、同期作動するように並列接続或いは直列接続されている。各々の鏡面セットの反射鏡の主光軸が位置の変らない受入装置に集まる。
【発明の効果】
【0014】
上述したFPR鏡太陽熱集熱システムは、集光鏡と投射鏡及び反射鏡のセットによる集光、投射、反射などの光学原理を利用して、太陽或いは天体の輻射が位置不変の受入装置或いは目鏡に集まるようにする。従って、太陽集光比率が10倍以上になり、人々が高温の太陽エネルギーを使うことができるようにする。又、本発明のシステムの構造が簡単で、容易に建物などに組み合わせて使い、費用が低い利点がある。需要する費用も原子力発電所より低く、危険性もない。又、太陽の全ての光線を吸収することができるので、熱変換率が高い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係るFPR鏡太陽熱集熱システムの構造を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すFPR鏡太陽熱集熱システムの作動状態を示す概略図である。
【
図3】
図3は、本発明のFPR鏡太陽熱集熱システムの光路原理を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の他の実施例に係るFPR鏡太陽熱集熱システムの構造を示す図である(投射鏡を省略)。
【
図5a】
図5aは、本発明に係る集光鏡の好ましい構造を示す図である。
【
図5b】
図5bは、本発明に係る集光鏡の好ましい構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、きれいで使い切れない太陽エネルギーの変換効率を高め、エネルギーの消耗が多い領域で適用することができる太陽熱集熱システムを提供する。即ち、従来技術観点、即ちタワー式ヘリオスタット集熱の考え方を覆すために、集光、投射、反射などの光学原理を利用し、太陽光が位置不変の受入装置に集まるようにする新しい発明を提供する。集光機能のある鏡面がどのように回転しても、主光軸が変換しないので、本発明の集熱システムを「FPR鏡(Focus、Project、Reflect鏡の略称)」と言う。
【0017】
図1〜
図3は、別々に本発明の最適な実施例に係る太陽熱集熱システムの構造を示す図と、作動状態を示す図と、光学原理を示す図である。図面に示したように、集光鏡1の焦点の一側には、投射面が相対し且つ焦点が重なる投射鏡2が設けられている。集光鏡1と投射鏡2は、ジャイロジンバル(gyro gimbal)4によって一体になっている。集光鏡1の底部の光線が照射される位置には貫通穴11が形成され、前記貫通穴11の下側に設けられている反射鏡5は、ジャイロジンバル4と貫通穴の外縁部に繋がっている。反射鏡5は、ジャイロジンバル4の上で回転することができる。反射鏡と、集光鏡と、投射鏡とによって鏡面セットが構成される。前記反射鏡の主光軸の延長方向には、位置が変わらない1つの受入装置3が設置され、主光軸には、鏡面セット全体が主光軸の周りを回転するように駆動する第一モータが設置されている。前記第一モータは、電気制御ユニットに繋がって電気制御ユニットの制御を受ける。
【0018】
上述した技術方案の改善方案として、前記FPR鏡太陽熱集熱システムが、軸方向が鏡面セットの回転軸に垂直する集光鏡角度制御モジュールをさらに含むことが好ましい。前記集光鏡角度制御モジュールは、トルクが相殺するように反射鏡の軸線の両側に設けられている第二モータ牽引リンク61と釣合重り62を含む。前記第二モータ牽引リンク61は、集光鏡の外側面に繋がっている。前記第一モータと第二モータとして、ステッピングモータ、サーボモータ或いは他の同類の精密制御モータを使うことができる。
【0019】
前記反射鏡は、平面状反射鏡或いは環状凹部を有する球帯状反射鏡である。前記集光鏡の形状は、回転放物面状凹面鏡或いは球面状凹面鏡である。前記受入装置は、外側表面に保温材料をさらに設置するか、或いは真空保温技術を使うことによって保温を実現する。
【0020】
前記反射鏡の中心を通過する反射光を主光軸という。主光軸に設けられている第一モータは、集熱システムの鏡面セットが主光軸の周りを回転するように制御して、集熱システムの鏡面セットが毎日東から昇って西に沈む太陽の動きに従い、太陽の動きと連動するようにする。即ち、南方向と北方向の仰角を制御して、太陽の光線がずっと集光鏡に垂直に照射するようにする。全体の集光鏡システムがS点を原点として主光軸の周りを回転し、反射鏡への入射光線と主光軸との間の夾角が変らないので、入射光線(投射光線)がずっと主光軸の方向に沿って受入装置へ照射される。
【0021】
太陽は、東から昇って西に沈むだけではなく、毎年北回帰線と南回帰線との間でも動いている。北回帰線と南回帰線との間の動く角度が47度であるので、毎日の変化量は0.257534度である。毎日の変化量が少ないが、太陽光線がずっと集熱システムに垂直に照射し、有効な集熱効果を得るために、本発明では紙面に垂直するS点の軸位置に第二モータを設ける。前記第二モータは、全体の集光鏡システムがS軸の周りを回転するように駆動し、且つ集光鏡の傾斜角度を制御して、入射光線が集光鏡に垂直するようにする。即ち、前記反射光が主光軸に沿って照射するように、反射鏡と水平方向との間の仰角を制御して、入射角と反射角が同じになるようにする。
【0022】
モータによって集光鏡の傾斜角を制御すると共に、反射鏡の仰角を制御することによって、受熱物体(目標或いは目鏡)を動かさなくても、有効に太陽光線を受けるようにすることができる。従って、「FPR鏡」の役割を実現することができる。
【0023】
反射光が集熱装置或いはFPR鏡で点光になるようにするために、反射鏡をタイヤのような球帯環状凹面鏡を使うことができる。即ち、二回の集光によって投射光を一点に集光させることである。1つの鏡面セットタイプの前記FPR鏡システムは、太陽エアコン、太陽給湯器などのような日常用品に幅広く使うことができる。前記FPR鏡システムの集光鏡の直径を非常に大きくせず、屋根に設置した際に常に光線を照射させなくても、低い発電パワーの自己消耗比率(0.1%より小さい)で生活の要求を満たすことができる。
【0024】
又、本発明のFPR鏡太陽集熱システムは、今注目を集めている太陽熱発電の領域にも適用することができる。この場合、前記集熱システムは、1つ以上の鏡面セットと各自の電気制御ユニットを含み、前記各自の電気制御ユニットは、同期作動するように並列接続或いは直列接続されている。前記鏡面セットの反射鏡の主光軸線は、位置が変わらない受入装置(蒸気タービン或いはガスタービン)に集合される。現在広く使われている「ヘリオスタット」と比較すると、本発明のFPR鏡太陽集熱システムは、単位パワーに当たるコストが非常に低く、占用するスペースが少なく、太陽エネルギーの変換利用率と自己消耗率がよい利点がある。