特許第5797761号(P5797761)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5797761球面で作用するオリエンテーション装置の調節を分析して改善するために非線形に作用する測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5797761
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】球面で作用するオリエンテーション装置の調節を分析して改善するために非線形に作用する測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/25 20060101AFI20151001BHJP
   G01B 5/00 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   G01B5/25
   G01B5/00 P
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-532198(P2013-532198)
(86)(22)【出願日】2011年10月6日
(65)【公表番号】特表2013-542425(P2013-542425A)
(43)【公表日】2013年11月21日
(86)【国際出願番号】EP2011067482
(87)【国際公開番号】WO2012045825
(87)【国際公開日】20120412
【審査請求日】2014年8月27日
(31)【優先権主張番号】102011082529.0
(32)【優先日】2011年9月12日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102010047716.8
(32)【優先日】2010年10月6日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513086131
【氏名又は名称】マカソ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】MACASO GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】特許業務法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミュクリッツ, イェルグ
(72)【発明者】
【氏名】ワーナー, ラルフ
【審査官】 眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−531238(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00−5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦接合と形状接合の組み合わせで作用する一時的に有効な取外し可能な可動の機械的結合がフレームプレート(9)と旋回可能な工具(16)との間で測定球(18)を用いて成立することによって、フレームプレート(9)に対して旋回運動可能な回転対称の工具(16)の小さな相対運動を迅速かつ簡単に分析するために、コンピュータに適合したインターフェース(22)によってエネルギーの供給を受け、位置可動または定置に機械に設置される、球面で作用するオリエンテーション装置の調節を分析して改善するために非線形に作用する測定装置において、前記測定装置の一部としての測定フィンガ(1)が球座標系の3つの軸で可動であり、ハウジング(6b),(7b),(8b)およびプローブ(6a),(7a),(8a)でそれぞれ構成される線形測定部材(6),(7),(8)が当該球座標系の3つの軸の各々に付属しており、該線形測定部材は球座標系のそのつどの軸位置を一義的にマッピングする電気的な測定信号を提供し、ブーメラン形の伝動装置部材(4)が前記測定装置の内部に配置されており、該伝動装置部材は前記フレームプレート(9)とユニバーサルジョイント式に結合されるとともに、その広がる平面に対して垂直に線形案内部(3)により測定フィンガ(1)と直線運動可能に結合されており、前記線形測定部材の3つすべての前記ハウジング(6b),(7b),(8b)は前記ブーメラン形の伝動装置部材(4)と、および相互に固定的に結合されており、柔軟な防護ベローズ(2)が塵埃に対して密閉された閉止を前記測定フィンガ(1)と前記フレームプレート(9)との間で成立させており、前記柔軟な防護ベローズ(2)と前記フレームプレート(9)の上に防護フード(5)が被せてあり、
前記測定球(18)は旋回運動可能な回転対称の工具(16)の中心軸に、かつ少なくともその工具中心点(17)の近傍に配置されており、前記測定球(18)の中心点と工具中心点(17)との間の間隔は既知であり、旋回運動可能な回転対称の工具(16)は前記測定球(18)とともに前記測定フィンガ(1)の上面にある球冠状の成形部(24)に入り、前記測定フィンガ(1)によって事実上クリアランスのないボールジョイントが形成され、前記測定球(18)の直径は球冠状の前記成形部(24)の運動領域に比較して小さくなっており、前記線形測定部材(6),(7),(8)から提供される電気的な3つの測定信号が測定アダプタ(11)へ伝送され、該測定アダプタで前記信号がデジタル形式に変換されて距離座標に移され、次いで特異点のない非線形のフォワード変換によって幾何学データへと変換され、該幾何学データは工具中心点(17)の運動をフレーム固定されたデカルト座標系(14)で表しており、該幾何学データが測定アダプタ(11)に保存されて、コンピュータに適合したインターフェース(22)でデータストリームとして以後の任意の処理のために上位のコンピュータシステム(25)へ提供されることを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記ブーメラン形の伝動装置部材(4)と前記フレームプレート(9)とのボールジョイント式の結合はユニバーサルジョイント(12)または物質接合式のジョイント、たとえば金属ベローズ、屈曲バー、または相前後して配置された平坦なプレートジョイント、または摩擦接合式のジョイントであってその保持が真空または磁力により生じるものによって行われることを特徴とする、請求項1に記載の非線形に作用する測定装置。
【請求項3】
前記線形測定部材(6),(7),(8)の前記プローブ(6a),(7a),(8a)と接続可能な前記伝動装置部材との結合は摩擦接合式のボールとプレートの接触部を介して行われることを特徴とする、請求項1に記載の非線形に作用する測定装置。
【請求項4】
旋回運動可能な回転対称の工具(16)と前記測定フィンガ(1)との間でボールジョイント式の結合を成立させるために、球冠形に類似して構成され、前記測定フィンガ(1)とともに取外し不能なボールジョイントを形成する連結接続管(15)が利用され、旋回運動可能な工具(16)は前記連結接続管(15)の中に入れることができ、旋回運動可能な工具(16)の方向で前記測定装置に由来する力作用によって、および旋回運動可能な工具(16)の雌型に相当する前記連結接続管(15)の形状によって、一時的に固定的ではあるがフレーム固定されたデカルト座標系(14)の正のz方向への旋回運動可能な工具(16)の運動によっていつでも解消可能な結合が前記連結接続管(15)と旋回運動可能な回転対称の工具(16)との間に成立し、前記連結接続管(15)は旋回可能な工具(16)が中に入っていないときにはばね力の作用によってその対称軸が前記測定フィンガ(1)の対称軸と一直線上に並ぶことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の非線形に作用する測定装置。
【請求項5】
旋回可能な回転対称の工具(16)の向きをゼロ位置で判定するために当該工具に測定ヘッド(19)を備え付け、該測定ヘッドは旋回可能な回転対称の工具(16)の対称軸の範囲外に定義された間隔で、かつ対称軸に対して位置に関して既知である平面に少なくとも3つの測定球(18)を担持しており、該測定球は旋回可能な回転対称の工具(16)の運動によって前記測定フィンガ(1)の中に順次入り、フレーム固定されたデカルト座標系(14)で測定されたZ座標を利用することによって旋回可能な回転対称の工具(16)の対称軸の位置がフレーム固定されたデカルト座標系(14)で判定されることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の非線形に作用する測定装置。
【請求項6】
前記測定装置は上位のコンピュータシステム(25)と接続されることなくバッテリバッファされて自律的に使用することができ、それは前記測定アダプタ(11)がセルフインテリジェンスにより内部に保存されているデータを適切な形でディスプレイ(20)に表示することができるとともに、前記測定装置に存在している操作部材(21)が操作者とのインタラクションの役目をすることによって行われることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の非線形に作用する測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
オリエンテーション装置は、1つ、2つ、または3つの空間軸を中心として物体を回転させ、それによってその向きを通常は空間固定されて配置された第2の物体に対して規定する役目をする。このようなオリエンテーション装置は、手動式またはモータ式に駆動され、手動制御または数値制御される。
【0002】
産業上の実際のオリエンテーション装置のほとんどすべての用途について、物体が回転するときに中心となる軸の位置を正確に知ることが重要である。このことは特に、オリエンテーション装置が物体を仮想軸を中心として動かし、軸受やシャフトといった機械要素によって軸が位置に関して定義されるのではなく、軸がメカニズムによって具体化されて「仮想化」される場合に重要となる。
【背景技術】
【0003】
このような種類の解決法では、オリエンテーション装置の座標系で固定されている点を中心として物体を回転させることが目標となる。この点のことを、工具中心点またはツールセンタポイント(TCP)と呼ぶ。すべての回転軸が互いに交わり、この点を通って延びなくてはならない。このことは、当然ながら具体化するのが難しい。TCPは目で見ることができず、オリエンテーション装置の座標系における位置に関して、製品の耐用寿命にわたって変化することがあるからである。その原因は摩耗、誤操作、衝突などであり得る。
【0004】
オリエンテーション装置を産業上で利用している間に、一方では定期的な間隔で、また他方では通常外の事象が起きた後に(工具交換、衝突...)、TCPの位置を判定し、場合により修正することが必要である。このことは2通りの仕方で行うことができる。
【0005】
ジョイントアーム産業用ロボットでは、手の座標系におけるTCPの位置を記述する幾何学パラメータ(長さ、角度)を判定しなくてはならない。これがロボット制御部に記録されなくてはならず、ロボット制御内部の変換チェーンのパラメータを規定する。そしてTCPを中心とする旋回は、ジョイントアームロボットに属する通常6つすべての駆動装置の秩序正しい連動によって行われる。それに対して、独立したモジュールとして通常はポータルロボットと組み合わされる特別な手首関節モジュールでは、適切なギヤ列、ホイールギヤ、円弧状ガイド等の形態のメカニズムが利用されて、TCPの軸を中心とする旋回をただ1つの駆動装置で可能にする。このようなモジュールでは、物理的に存在している工具先端部を(仮想的な)TCPと一致させるために、調節部材を用いて、機械的なパラメータ(長さ、間隔、角度)を比較小さい寸法で適合化しなくてはならない。
【0006】
TCPの大まかな位置は通常既知であるが、ミリメートルないし度のオーダーでこれと相違する厳密な位置はそうではない。TCPのパラメータすなわち手の座標系または工具の座標系におけるその位置を、できる限り迅速、簡単、かつ正確に判定することが必要である。行われるテクノロジー操作(溶接、切断、接着、案内...)の品質は、これに決定的な程度に左右されるからである。
【0007】
当然ながら手首間接は、状況によっては、利用者や定期検査技術者が全体を見通すことのできない複雑な機械装置である。そのうえ、そのパラメータは通常は別々に切り離されておらず、すなわち1つの「入力パラメータ」が変われば、たとえば調整ねじを回せば、数多くの出力パラメータが変化し、すなわち工具座標系における回転軸の位置や、それらの相互位置が変化する。このように、調節行為の作用を明らかにし、もしくは予測できるようにするためには、できる限り知識の豊富な定期検査技術者または利用者へのサポートが必要である。
【0008】
以下において、従来技術の公知の解決法について詳しく説明する。
【0009】
ジョイントアーム産業用ロボットは、通常、物体座標でプログラミングされる。ここで物体座標が意味しているのは、加工されるべきコンポーネントにデカルト座標系が設定され、運動プログラミングは、この座標系で3つの変位としての位置運動が、および座標軸を中心とする回転としてのオリエンテーション装置運動が、数値またはティーチ点の形態でプログラミングされるように行われることである。そして運動は産業用ロボットにより、通常存在している6つすべての関節運動(ロボット軸)の非線形の連動によって実行される。
【0010】
特に物体座標の向きが変わるときには、大きな関節運動が必要であり、工具または取扱物体の点(いわゆる工具中心点またはTCP)が空間固定されてとどまっていなければならない。これが正確に行われるほど、ロボットの制御内部の計算モデルが現実とより良く一致し、ロボットがより良くキャリブレーションされる。このことは、初回の使用開始のとき、新規プログラミングのとき、保守整備周期の枠内で、および衝突後に、ロボットおよびロボット類似の機械で測定されて記録されなければならない。
【0011】
TCPでの運動を測定するために、さまざまな技術的解決法が知られており、これらは無接触式の方法と接触式の方法に区別される。
【0012】
無接触式の方法が特許文献1に記載されている。直列型のロボット・リンクチェーンの端部に、工具の代わりに球が取り付けられ、ロボットの向きが変わる間に、定置の装置に対して相対的なその位置が無接触式に判定され、これは、装置における位置が既知であるcvセンサにより球との間隔が判定され、方程式を明示的または反復的に解くことで、球の空間位置を判定できることによって行われる。無接触式の測定は、測定プロセスからいかなる力もロボットに働かないという利点がある。センサが1つの方向に沿って間隔だけを測定すればよいことによって、このようなセンサは比較的簡素で低コストである。しかしながら、測定結果を得るために、一方では著しい装置コストが必要であり、他方では、計算コストとデータ伝送コストが必要である。そのうえ、測定球をロボットに取り付けなくてはならない。
【0013】
これに類似する作業原理が特許文献2に記載されており、この場合、球が定置になっており、ロボットの手首関節に特別な装置で距離センサが取り付けられることによって、作用形態が逆転している。組付け技術のコストや計算技術のコストは、最初に挙げた解決法に匹敵している。
【0014】
特許文献3の解決法は、カメラまたは詳しくは説明されていない「位置検出センサ」を用いて作業が行われる。そのために「基準物体」がロボットの手に設置され、ロボットが動いたときにその位置に関して分析がなされる。ここでは「...ホストコンピュータ...」と呼ばれている評価ユニットでの比較的高いコストのかかる計算により、これに基づいて制御部内部のロボットの運動モデルが改善される。装置工学上のコストは上に挙げた2つの解決法よりさらに高くなるが、測定構造の作業範囲はほぼ制約されることがなく、したがって、ロボットの作業空間における極位置も調べることができると記載されている。
【0015】
機械式に作用する接触式の測定工具が特許文献4に記載されている。2つのユニバーサルジョイントと、案内部で回転可能かつスライド運動可能な測定アームとを用いて、フレームとロボットの手首関節との間で、測定記録部を装備していることでロボットの運動を分析ことができる直列型の部分リンクチェーンが構築される。そのために必要な多数のジョイントは、一方では比較的高いコストのかかる高い質量の設計形態を必要とする。質量の力がロボットに作用し、測定結果を狂わせることがある。そのうえ、装置全体をクリアランスなしに製作して正確に調節することが難しい。
【0016】
特許文献5には、異なる3つの方向を向く測定プローブに押圧される球を支持する測定ヘッドを用いて、工作機械で修正パラメータを得るための装置が記載されている。当然ながら、比較的大きい球直径が必要である。この装置は、工具中心点がそのクランプ個所から比較的遠く離れている、工具交換システムを備える工作機械で適用するのに良く適していると思われる。この原理は、工具中心点が工具そのものの非常に近くにある工具の場合には役に立たない。そのうえ、プローブの直進方向の位置が非常に正確に既知でなければならない。場合により存在するその交差間隔が、修正パラメータの計算に影響を及ぼすからである。
【0017】
特許文献6は、ロボットおよびロボット類似の機械手首関節の測定をするために自律的に作用する装置を含んでいる。互いに直交する直線軸が、運動範囲の比較的小さい直列型の3軸の構造を形成し、測定検出器の「...事実上クリアランスと力のない...」運動を可能にする。この回転測定システムは、小型化されたピニオン・ラック伝動装置と結合されている。ちょうどTCPの点で工具に取り付けられた球を用いて、これが球冠状の検出器に係合し、測定サイクル中に装置と部分的に摩擦接合式かつ部分的に形状接合式の結合をする。少なくとも直進ジョイントが形状接合式に施工されているケースについては、上述したように装置を全面的にクリアランスなく、さほどの弾性変形もなしに利用できるかどうか疑問が残る。
【0018】
各組のピニオン・ラックについても同様のことが当てはまる。むしろ、各組のジョイントのクリアランスの少ない調整には、時間と費用のコストがかかるものと推測される。このことは、出願書類に言及されている材料の組み合わせのジョイントの利用によって改善できるとされている。それを設計的にどのように施工することができるのかは、記載されていない。
【0019】
この解決法における運動軸の直列型の配置は、ロボット工学から知られているとおり(非特許文献1)、剛性や精密さの点で、測定システムのハイブリッド型または並列型の配置よりも劣っている。そのうえ、直列型の構造は複雑な設計的構造を含意しており、実施例はそのような印象を抱かせる。測定値の取得は相対的に行われ、内部の基準点は存在していない。そのため、測定されたデータから装置の絶対的な位置を推定することはできず、このことは、少なくとも完全自動式の測定サイクルにとっては欠点である。
【0020】
特許文献6の装置は、「...コンピュータで読み取り可能な標準化された信号...」を、評価ユニットとしてのコンピュータに供給する。測定されたデータはコンピュータによって、「...座標変換を必要とすることなく...」、「...コンピュータグラフィックのスクリーン表示...」へと変えられる。このことは、産業上の実務で広く普及している手法であり、特許文献7にも記載されている。
【0021】
したがって、上に説明したような欠点をもつ従来技術をさらに改良する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】ドイツ特許第10153049B4号明細書
【特許文献2】ドイツ特許出願公開第19501094A1号明細書
【特許文献3】ドイツ特許出願公開第19826395A1号明細書
【特許文献4】東独特許出願公開第257484A1号明細書
【特許文献5】ドイツ特許第19944429C2号明細書
【特許文献6】ドイツ特許第102007023585B4号明細書
【特許文献7】ドイツ特許第102004044342B4号明細書
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】Beyer, L.他著:「産業用ロボットと工作機械の間のハイブリッド運動万能装置」、大学研究、ハンブルク連邦国防軍大学の研究誌、ハンブルク、2002年、18−23ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
そこで本発明の課題は、小さい直方体作業空間の内部で、高い絶対的な精度と反復精度とをもって、機械要素の点の絶対的な空間座標の判定を可能にする装置を提供することにある。
【0025】
この装置は、厳しい環境条件のもとでも、すなわち機械要素の悪いアクセス性、高い塵埃負荷、悪い照明状況のもとでも、作動することができるのがよい。
【0026】
さらにこの装置は、移動性、自律性、自動性のある器具として作動するばかりでなく、加工機械の一体的な構成要素としても機能するのに適しているのがよい。ジョイントのクリアランスおよび弾性的な変形を最低限に抑えるために、できる限り部品数の少ない、非直列型の運動構造が用いられるのがよい。測定装置の結合は、初期応力によって常に力作用が測定装置のジョイントに生じており、そのようにして、ジョイントのクリアランスを全面的に除去できるように行えるのがよい。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明の課題は下記のようにして解決され、基本となる本発明の思想に関しては請求項1を参照されたい。本発明のその他の実施形態は、請求項2から6に記載されている。
【0028】
この測定装置は、フレームプレートの上にユニバーサルジョイント式に配置されたブーメラン形の伝動装置部材を有している。ユニバーサルジョイントは形状接合式、物質接合式、または摩擦接合式に構成されていてよく、もしくは2つのジョイントの組み合わせとして、たとえばボールジョイントとボールとプレートの接触部の組み合わせとして構成されていてよい。
【0029】
ブーメラン形の伝動装置部材は、その両端部にこれと固定的に結合された、ばねで付勢されるプローブを備える2つの線形測定部材を有している。両方のプローブは、ブーメラン形の伝動装置部材を通って広がる平面に対して垂直に、同じ方向で作用する。両方の線形測定部材から供給されるセンサ信号を用いて、ブーメラン形の伝動装置部材の(位置を)フレームプレートに対する相対的な位置判定することができる。
【0030】
両方の線形測定部材の直進方向に対して平行に作用する線形案内部を介して、測定フィンガがブーメラン形の伝動装置部材と結合されている。
【0031】
同じ形状の第3の線形測定部材が、同じくブーメラン形の伝動装置部材に取り付けられており、同じくこれを通って広がる平面に対して垂直方向に、ただし反対向きの方向に作用し、ブーメラン形の伝動装置部材からの測定フィンガの距離に比例する信号を供給する。
【0032】
測定フィンガは、ブーメラン形の伝動装置部材と反対を向いている側に球冠を有しており、取外し可能なボールジョイント式の結合の意味において、測定球がクリアランスなくこの球冠に係合する。この測定球は、数値制御式に動いてオリエンテーションに関して変更することができる工具の構成要素である。測定フィンガの球冠への測定球の係合により、および3つの線形測定部材のばね付勢されるプローブにより、静的に規定されたジョイントチェーンが成立する。
【0033】
測定アダプタが、3つの線形測定部材から供給される信号を距離情報に変換し、標準化されたインターフェースを介してこれをコンピュータに送る。非線形のフォワード変換
により、これがフレームプレート固定されたデカルト座標系に変換されて、以後の任意の処理のために、たとえばコンピュータグラフィック表示、アーカイビング、インターネットへの提供等のために利用することができる。
【0034】
測定装置は、防護フードやベローズのような部材によって、塵埃、熱等の外部影響要因に対して防護されている。
【0035】
次に、実施例を参照しながら本発明について詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】防護フードを取り外した測定装置を示す三次元の図である。
図2】防護フードを装着した測定装置を示す三次元の図である。
図3】連結接続管を装着した測定装置を示す断面図である。
図4】測定ヘッドを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明によると測定装置は、フレームプレート9とユニバーサルジョイント式に結合されたブーメラン形の伝動装置部材4で構成されている。ブーメラン形の伝動装置部材4は、基本位置のとき、フレームプレート9の広がる平面に対して平行になっており、3つの線形測定部材6,7および8を担持している。線形測定部材6および7はブーメラン形の伝動装置部材4の両方の端部に取り付けられており、そのプローブ6a,7aでフレームプレート9に達しており、これとともにボールとプレートの接触部を形成する。そのためにプローブ6a,7aはそれぞれの端部のところで球形に成形されており、フレームプレート9に対して摩擦接合式に押圧される。ブーメラン形の伝動装置部材4は、線形測定部材8と線形案内部3も担持している。線形測定部材6,7および8はいずれも1つの方向に沿って、すなわちブーメラン形の伝動装置部材4の垂線方向に沿って作用する。
【0038】
線形案内部3は測定フィンガ1と結合されており、さらに、この測定フィンガとともに線形測定部材8のプローブ8aがボールとプレートの接触部を形成しており、それは、プローブ8aがその端部で球形に成形されるとともに、ばねで初期応力をかけられて測定フィンガ1に押圧されることによって行われる。測定フィンガ1は、フレームプレート9に対して、球座標系の3つすべての軸で運動性を有しており、その軸座標が線形測定部材6,7および8により容量式、電気式、光光学式、または干渉式の測定原理で得られ、測定アダプタ11に転送される。ブーメラン形の伝動装置部材4の運動可能性は、リミットストッパ23によって制限されている。
【0039】
測定アダプタ11は、この軸座標を非線形のフォワード変換により、フレーム固定されたデカルト座標系14における物体座標に変換し、この物体座標を次の評価のために提供する。そのために測定装置の防護フード5の中には、ディスプレイ20と操作部材21とが配置されている。ディスプレイ20と操作部材21は、測定装置との間に取外し可能な電気接続部を有している。
【0040】
ディスプレイ20には物体座標を表示することができ、そのようにして、測定装置を自律的に作動させることができる。
【0041】
それと同時に測定アダプタ11は、コンピュータに適合したインターフェース22を介して、次の処理のために物体座標を上位のコンピュータシステム25へ提供することができる。コンピュータに適合したインターフェース22を介して、測定装置はエネルギーの供給も受ける。
【0042】
測定装置全体が防護フード5で取り囲まれて防護されている。測定フィンガ1と防護フード5の間の結合は、柔軟な防護ベローズ2が成立させる。好ましくは永久磁石の力作用をもつスタンド脚部10が、測定装置の確実な立脚をもたらす。
【0043】
測定フィンガ1には、測定球18により、通常は回転対称の旋回運動可能な工具16が係合する。測定球18の中心点は、旋回運動可能な工具16の対称軸にある。この中心点は、必ずしも旋回運動可能な工具16の工具中心点(TCP)17にはなく、これに対して小さな、ただし定義された間隔を有することができる。
【0044】
測定フィンガ1はその上面で球冠状に成形されており、ばねで初期応力をかけられて測定球18に向かって押圧される。そして旋回運動可能な工具16が旋回すると、測定装置は測定球18の動きを記録して、この動きをフレーム固定されたデカルト座標系14における物体座標へと点ごとに変換することができる。
【0045】
測定球18をまず旋回可能な工具16に取り付けなければならないことを回避するために、図3に示すように、測定球ではなく連結接続管15を測定フィンガ1とボールジョイント式に結合することが提案される。連結接続管15は、球形を有するとともに、旋回可能な工具16の雌型を有するように成形されており、旋回可能な工具16がその中に入り、摩擦接合および/または形状接合の組み合わせによって、旋回可能な工具16が連結接続管15と一時的に結合される。フレーム固定されたデカルト座標系の正のz方向への旋回可能な工具の後退運動により、この結合をいつでも外すことができる。
【0046】
旋回可能な工具16の向きを判定するために、図4に示すように、特別に構成された測定ヘッド19が旋回可能な工具16と結合される。測定ヘッド19は、旋回可能な工具16の対称軸にあるのではない少なくとも3つの測定球18を担持しており、これらの測定球は、旋回可能な工具16の対称軸に対して既知の、好ましくは鉛直の位置にある。測定球18の中心点の間隔は既知である。旋回可能な工具16を相応に動かすことで、測定球18が測定フィンガ1と順次係合させられ、各々の測定球18について得られた測定値を相殺することで、旋回可能な工具16の対称軸の位置を判定することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 測定フィンガ
2 柔軟な防護ベローズ
3 線形案愛部
4 ブーメラン形の伝動装置部材
5 防護フード
6 線形測定部材1
6a プローブ1
6b ハウジング1
7 線形測定部材2
7a プローブ2
7b ハウジング2
8 線形測定部材3
8a プローブ3
8b ハウジング3
9 フレームプレート
10 スタンド脚部
11 測定アダプタ
12 ユニバーサルジョイント
14 フレーム固定されたデカルト座標系
15 連結接続管
16 旋回可能な工具
17 工具中心点(TCP)
18 測定球
19 測定ヘッド
20 ディスプレイ
21 操作部材
22 コンピュータに適合したインターフェース
23 リミットストッパ
24 球冠状の成形部
25 上位のコンピュータシステム
図1
図2
図3
図4