(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5797767
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】共振測定システムの動作方法
(51)【国際特許分類】
G01F 1/84 20060101AFI20151001BHJP
G01N 9/00 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
G01F1/84
G01N9/00 C
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-539165(P2013-539165)
(86)(22)【出願日】2011年11月18日
(65)【公表番号】特表2013-544355(P2013-544355A)
(43)【公表日】2013年12月12日
(86)【国際出願番号】EP2011005815
(87)【国際公開番号】WO2012113421
(87)【国際公開日】20120830
【審査請求日】2014年5月29日
(31)【優先権主張番号】102011012498.5
(32)【優先日】2011年2月25日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102010051738.0
(32)【優先日】2010年11月19日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390009494
【氏名又は名称】クローネ メステヒニーク ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Krohne Messtechnik GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】クーロシ コラヒ
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ シュトアム
【審査官】
山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−286052(JP,A)
【文献】
特開2003−177049(JP,A)
【文献】
特開2006−227010(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/134829(WO,A1)
【文献】
特開平10−281846(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/102317(WO,A1)
【文献】
特開平07−306073(JP,A)
【文献】
特開平06−042992(JP,A)
【文献】
特表2008−536111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/74−1/84
G01N 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
とりわけコリオリ質量流量測定機器または密度測定機器の形態の共振測定システム(1)の動作方法であって、
前記共振測定システム(1)は、媒体(2)が流れる少なくとも1つの測定管(3)と、少なくとも1つの振動発生器(4)と、少なくとも1つの振動センサ(5a,5b)と、少なくとも1つの制御評価ユニット(6)とを有し、
前記測定管(3)を前記振動発生器(4)によって、所定の励振周波数と第1の振幅とで励振させ、それにより生じた前記測定管(3)の振動を前記少なくとも1つの振動センサ(5a,5b)によって検出する、共振測定システム(1)の動作方法において、
前記制御評価ユニット(6)は、前記測定管(3)の検出された振動から、前記媒体(2)が混相流である場合に振幅に依存する少なくとも1つの状態パラメータ(x)の少なくとも1つの第1の測定値(xi)を求め、
前記測定管(3)を前記振動発生器(4)により、前記励振周波数と、前記第1の振幅とは異なる第2の振幅とで励振させ、それにより生じた前記測定管(3)の振動を検出し、
前記制御評価ユニット(6)は、検出された前記振動から、前記媒体(2)が混相流である場合に振幅に依存する前記状態パラメータ(x)の少なくとも1つの第2の測定値(xj)を求め、
混相流の有無を表すインジケータとして、前記第1の測定値(xi)のうち少なくとも1つと、対応する前記第2の測定値(xj)のうち少なくとも1つとの測定値差(Δxij)を使用する
ことを特徴とする、共振測定システム(1)の動作方法。
【請求項2】
前記測定管(3)を前記振動発生器(4)により、前記励振周波数と、前記第1の振幅および前記第2の振幅とは異なる少なくとも1つの別の振幅とで励振させ、それにより生じた前記測定管(3)の振動を検出し、
前記制御評価ユニット(6)は、検出された前記振動から、前記媒体(2)が混相流である場合に振幅に依存する前記状態パラメータ(x)の少なくとも1つの別の測定値を求め、
別の混相流ないしは媒体相の有無を表すインジケータとして、前記第1の測定値のうち少なくとも1つおよび/または前記第2の測定値の少なくとも1つと、対応する前記別の測定値(xj)のうち少なくとも1つとの測定値差を用いる、
請求項1記載の共振測定システム(1)の動作方法。
【請求項3】
前記混相流ないしは媒体相の数を求めるために、他の混相流ないしは媒体相を識別できなくなるまで振幅を変えながら、前記励振周波数で前記測定管(3)を前記振動発生器(4)によって励振させる、
請求項1または2記載の共振測定システム(1)の動作方法。
【請求項4】
前記媒体(2)が混相流である場合に振幅に依存する前記状態パラメータ(x)として、
前記測定管(3)に流れる前記媒体(2)の密度(ρ)、および/または、該媒体(2)の
および/または、所定の固有波形の場合の該測定管(3)の固有周波数f
0を使用する、
請求項1から3までのいずれか1項記載の共振測定システム(1)の動作方法。
【請求項5】
求められた前記測定値差(Δxij)と所定の閾値とを比較し、
前記閾値を超えた場合、混相流が存在することを指示する、
請求項1から4までのいずれか1項記載の共振測定システム(1)の動作方法。
【請求項6】
振幅に依存する2つの相違する状態パラメータ(x)の少なくとも2つの求められた測定値差(Δxij)がそれぞれ、所定の閾値を同時に超えた場合に初めて、混相流の存在を指示する、
請求項1から5までのいずれか1項記載の共振測定システム(1)の動作方法。
【請求項7】
前記振動発生器(4)によって前記測定管(3)の励振を前記第1の周波数で連続して複数回行い、
連続する前記励振の振幅を毎回変化させ、
少なくとも1つの先行の測定値と少なくとも1つの対応する後続の測定値との複数の連続する測定値差が求められた場合に初めて、混相流の存在を指示する、
請求項1から6までのいずれか1項記載の共振測定システム(1)の動作方法。
【請求項8】
前記励振周波数として、前記測定管(3)の最も低い共振周波数(f0)を選択する、
請求項1から7までのいずれか1項記載の共振測定システム(1)の動作方法。
【請求項9】
先行する第1の振幅から後続の前記第2の振幅への切替を行った後に後続の該第2の振幅を維持する時間は少なくとも、前記振幅の切替に起因して前記共振測定システム内に生じる相殺プロセスが消失する長さである、
請求項1から8までのいずれか1項記載の共振測定システム(1)の動作方法。
【請求項10】
混相流を検出する方法と、本来の流量測定および/または密度測定とを同時に実施する、
請求項1から9までのいずれか1項記載の共振測定システム(1)の動作方法。
【請求項11】
媒体(2)が流れる少なくとも1つの測定管(3)と、少なくとも1つの振動発生器(4)と、少なくとも1つの振動センサ(5a,5b)と、少なくとも1つの制御評価ユニット(6)とを有する、とりわけコリオリ質量流量測定機器または密度測定機器の形態である共振測定システム(1)であって、
前記測定管(3)は前記振動発生器(4)によって所定の励振周波数と第1の振幅とで励振可能であり、それにより生じた該測定管(3)の振動が前記少なくとも1つの振動センサ(5a,5b)によって検出可能であるように構成されている、共振測定システム(1)において、
前記制御評価ユニット(6)は、動作中に前記共振測定システム(1)に請求項1から10までのいずれか1項記載の動作方法を実施させるように構成されている
ことを特徴とする、共振測定システム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は共振測定システムの動作方法に関する。この共振測定システムはとりわけコリオリ質量流量測定機器または密度測定機器として構成されており、媒体が流れる少なくとも1つの測定管と、少なくとも1つの振動発生器と、少なくとも1つの振動センサと、少なくとも1つの制御評価ユニットとを有する。前記測定管は前記振動発生器によって所定の励振周波数および第1の振幅で励振され、それによって生じた該測定管の振動は前記少なくとも1つの振動センサを介して検出される。本発明はさらに、前記動作方法によって動作する共振測定システムにも関し、該共振測定システムはとりわけコリオリ質量流量測定機器または密度測定機器として構成されている。
【0002】
上述の形式の共振測定システムは何年も前から公知となっているが、この共振測定システムの構成としては、コリオリ質量流量測定機器だけでなく密度測定装置等も知られている。これらの共振測定システムには、共振測定システムとの間で相互に影響を与え合うプロセスが伴う。ここでは、共振測定システムという用語は極めて広く、求めるべきプロセス量(測定量)に関する情報が固有周波数に含まれているシステム、および/または、動作点が共振測定システムの固有周波数に基づくシステムを指す。媒体が流れるかまたは流れることができる測定管を備えていれば、上述の定義に当てはまるシステムすべてに、後述する実施形態を適用することができる。以下、コリオリ質量流量測定機器を例として共振測定システムを説明するが、これによって本願発明が限定されることがないことを理解すべきである。
【0003】
コリオリ質量流量測定機器はとりわけ、高い精度で質量流を検出しなければならない工業プロセス測定技術で使用される。コリオリ質量流量測定機器の動作方式の基礎となっているのは、媒体が流れる少なくとも1つの測定管‐振動部材‐が振動発生器によって励振され、2つの相互に直交する速度である流れの速度と測定管の速度とに起因してコリオリ慣性力が発生することにより、質量を有する媒体が該測定管の内壁に対して反動することである。このように媒体が測定管に対して反動することにより、中に流れるものが無い測定管の振動状態に対し、測定管の振動が変化する。中に流れるものがある測定管の振動の特性‐測定管の中に流れる物がない状態では同相で振動する複数の測定領域間の位相差ひいては時間差‐を検出することにより、該測定管内の質量流量を高い精度で求めることができる。媒体が均質である場合、高価なコリオリ質量流量測定機器を用いれば、約0.04%の測定値精度を実現することができるので、コリオリ質量流量測定機器はしばしば、較正が義務化されている取引において使用されることも多い。
【0004】
測定管が振動発生器によって所定の励振周波数および第1の振幅で励振されると表現した場合、この所定の励振周波数とは、通常は、測定管を振動させるときの所定ないしは所望の固有波形の固有周波数を指す。この所定の固有波形に相当する固有周波数が時間的に変化する場合、この励振周波数はフィードバック制御によって常に追従制御され、いわば予め設定されるものである。
【0005】
単相流動作時のコリオリ質量流量測定機器‐すなわち、物理的に均質な媒体が流れる場合のコリオリ質量流量測定機器‐の特徴である高い精度および高い信頼性を、混相流においても維持および実現するのは容易ではなく、その際には、混相流を検出できるようにするためだけに特別な手段を設置しなければならない。コリオリ質量流量測定機器におけるこの混相流検出が、本発明の対象である。
【0006】
一般的に混相流は、物理的特性が異なる少なくとも2つの相が組み合わさった流れである。これらの少なくとも2つの相は、複数の同じ材料から構成されることも、またはそれぞれ異なる材料から構成されることもある。相とは、空間的に分かれたそれぞれ均質な領域を意味し、たとえば、固液混相流、気液混相流、固気混相流、水相と蒸気相との混相流、または、水相と空気相との混相流が挙げられる。
【0007】
混相流を含む使用条件では、質量測定の不確かさが著しく高くなることが知られている。そのため、混相流の有無を高信頼性で検出できるようにすることに大きな関心が寄せられている。
【0008】
よって本発明の課題は、混相流の高信頼性かつ可能な限り簡単な検出を可能にする、コリオリ質量流量測定機器の動作方法と該動作方法に対応するコリオリ質量流量測定機器とを提供することである。
【0009】
上記にて提起した課題を解決する、本発明のコリオリ質量流量測定機器の動作方法の第1の特徴は、前記制御評価ユニットが、前記測定管の励振によって生じ検出された振動から、前記媒体が混相である場合に振幅に依存する少なくとも1つの状態パラメータの少なくとも1つの第1の測定値を求め、前記振動発生器によって前記測定管を前記励振周波数で、かつ前記第1の振幅と異なる第2の振幅で励振させ、それによって生じた該振動管の振動を検出し、検出されたこの生じた振動から、該制御評価ユニットは、該媒体が混相である場合に振幅に依存する前記状態パラメータの少なくとも1つの第2の測定値を求め、該少なくとも1つの第1の測定値のうち少なくとも1つと、これに対応する該少なくとも1つの第2の測定値のうち少なくとも1つとの測定値差が、混相流の有無を表す指標として用いられることである。
【0010】
このような本発明の基礎となる思想は、媒体が混相である場合には振幅に依存する、共振測定システムの状態パラメータまたはパラメータを、混相流ないしは該媒体の相の検出に利用することにより、前記測定管を同じ周波数かつ異なる振幅で複数回励振させて異なる振動を生じさせることによって、‐媒体が混相流であることを前提条件として‐前記振幅に依存する状態パラメータまたはパラメータの複数の異なる測定値が得られ、これらの測定値の検出された差を介して混相流を検出するのを可能にできることである。このことはもちろん、前記媒体が単相流である場合には前記状態パラメータないしはパラメータが上述のような振幅依存性を示さないこと、または、媒体が混相流である場合の該状態パラメータまたはパラメータの振幅依存性と、該媒体が単相流である場合の該状態パラメータまたはパラメータの振幅依存性とが異なることを識別できることを前提とする。
【0011】
本発明の動作方法の大きな利点は、該動作方法を実施できるようにするために、実用的に、たとえばコリオリ質量流量測定機器または密度測定機器等として構成される公知の共振測定システムの構造的な変更、たとえばセンサの追加を行わなくてもよく、公知の共振測定システムの駆動制御方法を変更し、前記制御評価ユニットに本発明の評価方法を実装するだけでよいことであり、しかも、この駆動制御方法の変更や本発明の評価方法の実装は簡単に行うことができるということである。というのもその際には、適切な測定値検出と評価とを実施するだけで良いからである。
【0012】
コリオリ質量流量測定機器の測定管を励振させることは、コリオリ質量流量測定機器の動作上不可欠な基本的要件であり、この測定管の振動が所定の振幅になるように制御する手法は自明であり、この制御部は様々な理由から、通常のコリオリ質量流量測定機器にすでに組み込まれている。よって本発明の動作方法により、追加される手間を非常に小さくして混相流を検出することができ、またこの検出された混相流により、コリオリ質量流量測定機器のユーザは常に、質量流量値または密度測定値が変化したのは、均質な状態の媒体の質量流量または密度が本当に変化したからなのか、または、測定値の変化が混相流の存在に起因するのかを、確実に判定することができる。本発明の動作方法はコリオリ質量流量測定機器の種類に全く依存せず、とりわけ、コリオリ質量流量測定機器が直管型であるかまたは曲管型であるかに依存したり、コリオリ質量流量測定機器の測定管が1つであるかまたは2つであるかまたはそれ以上であるか否かに依存したりすることはない。また、コリオリ質量流量測定機器には、振幅に依存する内部パラメータもあり、その例として、異なって励振されるかまたは異なって現れる複数の振動モード間の結合係数が挙げられる。その点で、本発明を実施する上で特に適しているのは、等しい位相位置で作用する複数の距離‐加速度結合である。この複数の距離‐加速度結合はしばしば、結合係数k
sbにまとめられる。
【0013】
本発明の有利な一実施形態は、前記振動発生器によって前記測定管を前記励振周波数で、かつ、前記第1の振幅および前記第2の振幅と異なる少なくとも1つの別の振幅で励振させ、このようにして生じた該振動管の振動を検出し、前記制御評価ユニットが、生じて検出された該振動から、媒体が混相流である場合に振幅に依存する状態パラメータ(x)の少なくとも1つの別の測定値を求め、前記第1の測定値のうち少なくとも1つおよび/または前記第2の測定値のうち少なくとも1つと、これに対応する前記別の測定値のうち少なくとも1つとの測定値差を、さらなる別の混相流ないしは媒体相の有無を表すインジケータとして使用することを特徴とする。この実施形態により、混相流が存在すること、ないしは、媒体に複数の相が存在することを識別できるだけでなく、上述の方法によって、混相流ないしは媒体に含まれる相の数を識別することもできる。本発明の一改良形態では、前記識別結果を使用し、前記振動発生器によって前記測定管を前記励振周波数で、かつ、識別可能な他の混相流ないしは他の媒体相が無くなるまでの数の、相違する振幅で励振させることにより、混相流の数ないしは媒体相の数が求められるようにする。
【0014】
本発明の方法の有利な一実施形態では、前記媒体が混相流である場合に振幅に依存する前記状態パラメータとして、当該媒体の密度、測定管に流れる当該媒体の質量流量、または、所定の固有波形の場合の測定管の固有周波数が使用される。流れが混相流である場合、これら3つの状態パラメータはそれぞれ、測定管の振動の振幅に対して依存性を示し、流れが単相流である場合には、3つの各状態パラメータは測定管の振動の振幅に対して実質的に依存性を示さない。これらの状態パラメータのうちいずれか1つのみを使用して混相流の検出を行うこともでき、もちろん、これらの状態パラメータのうち2つまたは3つすべてを検出して評価することにより、混相流の検出を行うことも可能である。コリオリ質量流量測定機器の数学的な記述では、測定管に流れる媒体の密度および当該媒体の質量流量は、どちらかというとパラメータとして現れるのであって、システム理論の観点でのシステムの状態パラメータとして現れることはないが、媒体の密度および質量流量は共振測定システムの状態に影響を与える。本発明のコリオリ質量流量測定機器では、「状態パラメータ」との用語はそのような意味で解釈すべきである。
【0015】
したがって、媒体が混相流である場合に状態パラメータが振幅に依存するとの表現を用いた場合には、これは、上記状態パラメータが測定管の最大変位に直接依存することを意味するだけでなく、測定管振動の振幅の変化に起因するすべての依存性も意味する。もちろん、振動周波数を一定にして振動の振幅を変化させると、この振動の変位自体だけが変化するのではなく、振動の速度(振動の変位の1階時間微分)、および、該振動時に達する加速度(振動の変位の2階時間微分)も変化する。振動している測定管の速度および加速度こそが、混相流の場合に発生しかつ本発明における混相流の検出を可能にする物理的現象に直接関連している。混相流の場合に流れ特性が阻害される原因となるのは、各流動相が密度差に起因して相互間で相対的な運動を示し、この相対的運動により、密度測定および流量測定に必要な半径方向の速度の形成が予め定められたように行われなくなってしまうことである。それによって、密度測定および質量流量測定の双方において発散が生じる。このような作用はたとえば、流れ(たとえば水)に空気泡が含まれる場合にコリオリ質量流量測定器が示す密度測定値が1000kg/m
3を超えるという結果をもたらしてしまう。
【0016】
本発明の方法の別の有利な実施形態では、求められた測定値差、すなわち、‐測定管を第1の振幅で振動させた場合に測定された‐第1の測定値と、‐当該測定管を第2の振幅で振動させた場合に測定された‐第2の測定値との差を、所定の閾値と比較し、この閾値を超えた場合、混相流の有無の通常の指示手法(オペレータが知覚できる信号の出力、および/または、内部電気信号のみ(フラグのセット)、および/または、接続されたプロセス制御システムへの適切なフィールドバスメッセージの伝送等)と同様の手法で、混相流が存在することを指示する。
【0017】
有利には、振幅に依存する2つの相違する状態パラメータの評価結果が混相流を示唆する場合に初めて、混相流が存在することを指示する。すなわち、たとえば密度と質量流量と固有周波数とである上述の状態パラメータのうち2つの状態パラメータの評価結果が、混相流の存在を示唆するように変化した場合に初めて、混相流が存在することを示唆する。このことにより、質量流量または密度が本当に変化したのにその変化が振幅変化と偶然一致して誤って混相流として識別されるということが無くなるので、混相流検出の信頼性を向上させることができる。すなわち、振幅に依存する少なくとも2つの相違する状態パラメータの少なくとも2つの求められた測定値差がそれぞれ、所定の閾値を同時に超えた場合に初めて、混相流が存在することを指示する。
【0018】
上述の実施形態を補足する構成として、または上述の実施形態の代わりに、有利には、前記振動発生器によって前記測定管を順次異なる振幅で、かつ前記励振周波数で複数回励振させ、少なくとも1つの先行の測定値と少なくとも1つの対応する後続の測定値との測定値差が複数連続して求められた場合に初めて、混相流が存在することを指示する。その際に留意すべき点は、連続する振動の振幅が毎回変化することであるが、全体的にすべての振幅がそれぞれ異なっている必要はなく、たとえば、2つの相違する振幅値を交互に入れ替えながら動作させることができる。本発明の方法のこの実施形態でも、混相流を高い確実性で検出することができる。というのも、前記状態パラメータのうちいずれかの実際の急激な変化のみが検出される確率が無視できる程度であると考えられるため、その可能性が排除され、また、1つの状態パラメータだけが、本発明の方法によって測定管の振幅を変化させる時間的パターンで正確に変化するという可能性も排除されるからである。
【0019】
有利には、前記励振周波数として、測定管の最も低い共振周波数を選択する。測定管を共振状態で動作させることにより、最低限の消費エネルギーで所望の振動を実現することができるからである。測定管の振動すべてにおいて、最も低い共振周波数を使用すると、全体的に必要なパワーが最小になる。ここで、前記測定管の共振周波数とはもちろん、振動可能であるシステム全体を指すが、この振動可能なシステムの主要構成要素は測定管である。
【0020】
全体的に、先行の第1の振幅から後続の第2の振幅に切り替えた後にこの後続の第2の振幅を持続させる時間が少なくとも、この振幅切り替えに起因してコリオリ質量流量測定機器内部にて生じる相殺プロセスが消失する長さにして、本発明の方法を実施すると、有利であることが判明した。その場合、過渡的現象は複数の種々の原因を有することがあり、また、複数の種々の場所に現れることもある。過渡的プロセスは、たとえば振幅制御や、使用される特定の電子部品における過渡プロセスに起因する場合がある。それゆえ、測定管の振動の所定の振幅を少なくとも数秒持続させ、この時間の終了近くになって初めて測定を開始させるか、または、システムの過渡振動後の状態で検出されたサンプリング値のみを使用すると有利である。
【0021】
したがって、本発明の方法は本来の流量測定と並列して問題なく実施することができるので、本発明の方法は特に有利である。というのも、混相流を検出するための本発明の方法は、通常の流量測定モードと異なる検出モードを用いる必要がなく、流量測定自体に当然必要とされる測定管振動の振幅切替を実現させるだけでよいからである。
【0022】
別の実施形態では、混相流を検出する本発明の方法を、常に本来の流量測定と同時に実施するのではなく、より大きな時間間隔で、規則的な診断が保証されるように流量測定を切り替える。
【0023】
本発明はさらに共振測定システムに関し、とりわけコリオリ質量流量測定機器に関する。本発明の共振測定システムは、当該共振測定システムが動作時に混相流を検出するための本発明の上述の方法を実施できるように前記制御評価ユニットが具体的に構成された上述の装置技術的な構成を有する。その際には、前記共振測定システムが本発明の検出方法を実施し、かつ、前記制御評価ユニットのプログラム変更がなくても本発明の検出方法を実施できる状態にできるように、該制御評価ユニットはプログラミングされる。
【0024】
以下、共振測定システムの本発明の動作方法および本発明の共振測定システムの種々の実施形態および発展形態を説明する。これらの実施形態および発展形態に関しては、請求項1により後の従属請求項と、有利な実施例の説明とを参照されたい。この有利な実施例の説明は、図面を参照して行っている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】自明であるコリオリ質量流量測定機器として構成されておりかつ本発明の構成の制御評価ユニットが接続された、共振測定システムの概略図である。
【
図2】水が充填された測定管の一部における空気泡を概略的に示す図である。
【
図3】混相流が異なって現れた場合に異なる振動振幅で検出された複数の測定値の差を示すグラフである。
【0026】
図1に、基本構造が公知の構造となっているコリオリ質量流量測定機器1の形態の共振測定システムを非常に概略的に示している。このコリオリ質量流量測定機器1は、媒体2を流すことができる測定管3と、振動発生器4と、複数の振動センサ5a,5bと、制御評価ユニット6とを有する。もちろん、測定管の両側に前記振動センサ5a,5bを設けなくてもよい。
【0027】
測定管3は振動発生器4により、所定の励振周波数と第1の振幅とで励振されるように構成されている。コリオリ質量流量測定機器においてこのことを実現することは、流量測定の基本的な実施のために機能上不可欠である。この励振によって生じた、測定管3の振動は、振動センサ5a,5bによって検出され、測定管3の左側の振動と右側の振動との位相差ひいては時間差から、該測定管3内の質量流量が求められる。
【0028】
前記制御評価ユニット6によって生成された信号が前記振動発生器4を駆動制御し、かつ、振動センサ5a,5bによって検出された測定信号が該制御評価ユニットへ伝送されるように、該制御評価ユニット6とコリオリ質量流量測定機器1の機械的部材とが接続されている。前記制御評価ユニット6がどのように実現されるかについての詳細は重要ではなく、これ以上詳細には図示しない。制御評価ユニット6は、1つの電気的ユニットとすることができ、また、複数のコンポーネントから構成される分散システムとすることもでき、これらはいずれも、本発明では重要でない。
【0029】
コリオリ質量流量測定機器1は、フランジ7を介して、プロセスと外部の配管網とに接続可能であるように構成されている。振動センサ5a,5bによって検出された振動信号から、‐測定管3を適切に駆動制御することを前提とした上で‐、興味対象である、全体システムの複数の異なる状態パラメータxを求めることができ、
の本来の測定対象である値の他に、たとえば、測定管内に存在する媒体の密度ρと、振動可能なシステムの固有周波数f
0とを求めることもできる。これらの量を振動信号からどのように求めることができるかについての詳細は、従来技術から十分に知られている。
【0030】
制御評価ユニット6は、発生し検出された振動‐第1の振幅を有する振動‐から、媒体が混相流である場合に振幅に依存する少なくとも1つの状態パラメータxの第1の測定値ないしは導出された測定値x
iを求めるように構成されている。その後、前記測定管3を振動発生器4によって、前記第1の振幅と異なる第2の振幅で励振させ、生じた該測定管3の振動を再度検出し、その後に制御評価ユニット6は、発生し検出されたこの振動から、前記媒体が混相流である場合に振幅に依存する前記状態パラメータxの少なくとも1つの第2の測定値ないしは導出された測定値x
jを求める。
【0031】
前記状態パラメータxの振幅依存性により、流れが混相流である場合には、第1の測定値x
iと第2の測定値x
jとの間に差が生じ、この測定値の差が、混相流が存在することを表すインジケータとして使用される。
【0032】
図1から分かるように、制御評価ユニット6によって本発明の方法の駆動制御および評価が実施されるのであれば、どの従来のコリオリ質量流量測定機器を用いても、本発明の方法を実施することができ、本発明の方法を実施するためにコリオリ質量流量測定機器1の構造を変更する必要はない。
【0033】
図1に示されたコリオリ質量流量測定機器1では、振幅に依存する前記状態パラメータとして、測定管3に流れる媒体2の密度ρと、該媒体2の
が使用される。別の実施例では、上述の外部パラメータ(のみ)を使用するのではなく、その代わりに択一的に、または付加的に、コリオリ質量流量測定機器の内部パラメータも使用する。この内部パラメータはたとえば、測定管の半分ともう片方の半分との時間差、振動周波数、測定管の両半分の面積密度の非対称性等である。
【0034】
冒頭でもすでに述べたように、混相流の場合に測定が不確かになる基本的な原因となるのは、測定管3内において混相流の個々の流れの密度が異なることに起因して生じる2次流である。この関係について、
図2を参照して説明する。
図2には、水が充填された測定管3の中央に球形の空気泡8があるのが示されている。この空気泡8は直径d
Lを有し、所与の温度条件および圧力条件における該空気泡8の密度をρ
Lとし、これに対応する水の密度をρ
Wとする。
図2に示されていない振動発生器によって測定管3が加速されて横方向に第1の固有波形で振動するようになると、空気泡8には種々の異なる力が作用する。ここでは簡略化するために、重力と空気泡の圧縮率とを無視すると、空気泡の力の均衡は以下の通りになる:
【数1】
上記数式において、
は、測定管の加速度であり、
は、空気泡の相対速度であり、
は、空気泡の相対加速度であり、
ρ
Lは、空気泡の密度であり、ρ
Wは、水の密度であり、
V
Lは、空気泡の体積であり、
d
Lは、空気泡の直径であり、
A
Lは、空気泡の断面積であり、
C
Dは、抵抗係数であり、
C
aは、「仮想質量」係数である。
【0035】
上述の数式では、空気泡8に伝わる力(上記数式の右辺の項4)が、該空気泡8に作用する内部の反力、すなわち該空気泡質量の慣性力(項1)、媒体2中における該空気泡の運動に起因する抵抗力(項2)、および、いわゆる「仮想質量」の慣性力(項3)と均衡状態にあることが分かる。この仮想質量は、空気泡によって押しのけられた媒体質量も加速されるはずであることを考慮している。ここでは、水中における空気泡の相対運動(Z
L,ref)に基づいて力を定式化していることに留意すべきである。
【0036】
上記数式から、空気泡8が水2に対して相対運動を行うことが分かり、測定管3の励振によって加えられる加速度を重力加速度として捉えると、この相対運動を直観的に説明することができる。そうすると、空気泡の慣性加速度は重力加速度に相当することになる。ちょうど、空気泡が地球の重力場において重力に抗して上方へ移動するように、測定管が加速されると、空気泡は慣性加速度に抗して運動する。このような振舞いとなる原因は、空気泡8と周辺の媒体2との間の密度差である。空気泡8の振動は媒体2の振動より速いので、空気泡8は、目の前にある水を押しのけ、この押しのけられた水は、該空気泡8の
で逆方向に運動して戻ってくる。その結果として、どのような場合でも、混相流の場合には測定管3の強制振動により、流れの中に、強制変位の振幅に依存する、所定の方向での半径方向の相対運動が生じ(この相対運動はすなわち、この強制変位の振幅から生じた、測定管運動の速度および加速度に依存する)、この相対運動により、本発明の方法によって検出される検出対象の、振幅に依存する測定値が得られることを確認することができる。
【0037】
図3に、測定結果、すなわち、水流に含まれる空気成分(気体%)における密度測定値ρ
iおよびρ
jの測定値差Δρ
ijが示されている。ここでは、測定管3の第1の振動の振幅と第2の振動の振幅との差が約33%となっている。単相流(気体成分は0%)の場合には、複数の異なる振幅に測定値の差が無いが、混相流の場合には測定値の差が顕著に現れるので、混相流の検出に適した指示パラメータとなることが明確に分かる。