(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被検体が置かれる空間に静磁場を発生させる静磁場発生部と、前記被検体に高周波磁場を照射する高周波磁場照射部と、前記被検体に傾斜磁場を印加する傾斜磁場印加部と、前記被検体から発生する核磁気共鳴信号を受信する受信部と、前記傾斜磁場印加部と前記高周波磁場照射部と前記受信部との動作を制御して共鳴周波数が異なる2つの物質の核磁気共鳴信号を得る計測部と、前記核磁気共鳴信号に対する演算処理を行う演算部と、前記演算処理後の情報を表示する表示装置と、を備える磁気共鳴撮影装置であって、
前記演算部は、
前記共鳴周波数が異なる2つの物質それぞれの核磁気共鳴信号のスペクトルを各々算出するスペクトル算出部と、
前記算出した各々のスペクトルピークに基づいて前記被検体内の温度情報を算出する温度情報算出部と、
前記算出した各々のスペクトルピークに基づいて前記温度情報の精度を示す温度精度情報を算出する温度精度情報算出部と、
前記温度情報および前記温度精度情報に基づいて前記表示装置に表示する表示情報を生成する表示情報生成部と、を備えること
を特徴とする磁気共鳴撮影装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用する実施形態について説明する。以下、実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0015】
まず、本実施形態の磁気共鳴撮影装置(MRI装置)について説明する。
図1は、本実施形態のMRI装置の外観図である。
図1(a)は、ソレノイドコイルで静磁場を生成するトンネル型磁石を用いた水平磁場方式のMRI装置100である。
図1(b)は、開放感を高めるために磁石を上下に分離したハンバーガー型(オープン型)の垂直磁場方式のMRI装置120である。また、
図1(c)は、
図1(a)と同じトンネル型磁石を用い、磁石の奥行を短くし且つ斜めに傾けることによって、開放感を高めたMRI装置130である。本実施形態では、これらの外観を有するMRI装置のいずれを用いることもできる。なお、これらは一例であり、本実施形態のMRI装置はこれらの形態に限定されるものではない。本実施形態では、装置の形態やタイプを問わず、公知の各種のMRI装置を用いることができる。以下、特に区別する必要がない場合は、MRI装置100で代表する。
【0016】
図2は、本実施形態のMRI装置100の機能構成図である。本図に示すように、本実施形態のMRI装置100は、被検体101が置かれる空間に、静磁場を発生させる静磁場コイル102などで構成される静磁場発生部と、x方向、y方向、z方向にそれぞれ傾斜磁場を発生させ、被検体101に印加する傾斜磁場コイル103(傾斜磁場印加部)と、静磁場分布を調整するシムコイル104と、被検体101の計測領域に対し高周波磁場を照射する高周波磁場照射コイル105(以下、単に送信コイルという;高周波磁場照射部)と、被検体101から発生する核磁気共鳴信号を受信する核磁気共鳴信号受信コイル106(以下、単に受信コイルという;受信部)と、送信機107と、受信機108と、計算機109と、傾斜磁場用電源部112と、シム用電源部113と、シーケンス制御装置114と、を備える。
【0017】
静磁場コイル102は、
図1(a)、
図1(b)、
図1(c)にそれぞれ示した各MRI装置100、120、130の構造に応じて、種々の形態のものが採用される。傾斜磁場コイル103及びシムコイル104は、それぞれ傾斜磁場用電源部112及びシム用電源部113により駆動される。なお、本実施形態では、送信コイル105と受信コイル106とに別個のものを用いる場合を例にあげて説明するが、送信コイル105と受信コイル106との機能を兼用する1のコイルで構成してもよい。送信コイル105が照射する高周波磁場は、送信機107により生成される。受信コイル106が検出した核磁気共鳴信号は、受信機108を通して計算機109に送られる。
【0018】
シーケンス制御装置114は、計算機109からの指示に従って傾斜磁場コイル103の駆動用電源である傾斜磁場用電源部112、シムコイル104の駆動用電源であるシム用電源部113、送信機107及び受信機108の動作を制御し、傾斜磁場、高周波磁場の印加および核磁気共鳴信号の受信のタイミングを制御する。制御のタイムチャートはパルスシーケンスと呼ばれ、計測に応じて予め設定され、後述する計算機109が備える記憶装置等に格納される。
【0019】
計算機109は、受け取った核磁気共鳴信号に対して様々な演算処理を行い、画像情報やスペクトル情報、温度情報、温度精度情報を生成するとともに、シーケンス制御装置114に指示を与え、MRI装置100全体の動作を制御する。計算機109は、CPU、メモリ、記憶装置などを備える情報処理装置であり、計算機109にはディスプレイ等の表示装置110、外部記憶装置111、入力装置115などが接続される。
【0020】
表示装置110は、演算処理で得られた結果等をオペレータに表示するインタフェースである。入力装置115は、本実施形態で行われる演算処理に必要な条件、パラメータ等をオペレータが入力するためのインタフェースである。外部記憶装置111は、記憶装置とともに、計算機109が実行する各種の演算処理に用いられるデータ、演算処理により得られるデータ、入力された条件、パラメータ等を保持する。
【0021】
上述のように、本実施形態のMRI装置100は、1回の計測で温度情報とその精度(信頼度)を示す指標を算出する。これを実現する本実施形態の計算機109の機能について説明する。
図3は、本実施形態の計算機109の機能ブロック図である。
【0022】
本図に示すように、本実施形態の計算機109は、計測部210と、演算部220とを備える。計測部210は、パルスシーケンスに従ってシーケンス制御装置114を動作させるとともに各部を制御して計測を行い、核磁気共鳴信号を得る。演算部220は、計測により得た核磁気共鳴信号に様々な演算処理を施し、画像情報、スペクトル情報、温度情報、および温度精度情報等を生成する。
【0023】
演算部220は、計測により得た核磁気共鳴信号をスペクトルに変換し、温度情報と温度精度情報を算出し、表示装置110に表示する表示情報を生成する。これを実現するため、本実施形態の演算部220は、計測により得た核磁気共鳴信号をスペクトルに変換するスペクトル算出部230と、スペクトルから被検体101内部の温度情報を算出する温度情報算出部240と、算出した温度情報の精度を算出する温度精度情報算出部250と、表示情報生成部260と、を備える。本実施形態では、温度精度情報算出部250も、温度情報算出部240が温度情報を算出するスペクトルを用い、温度精度情報を算出する。
【0024】
なお、計算機109が実現する各種の機能は、記憶装置が保持するプログラムを、CPUがメモリにロードして実行することにより実現される。また、計算機109が実現する各種の機能のうち、少なくとも一つの機能は、MRI装置100とは独立した、情報処理装置であって、MRI装置100とデータの送受信が可能な情報処理装置により実現されていてもよい。
【0025】
以下、本実施形態の計算機109の各機能による、本実施形態の、温度情報および温度精度情報算出計測全体の流れについて簡単に説明する。
図4は、本実施形態の温度情報および温度精度情報算出計測全体の流れの処理フローである。本実施形態では、温度情報および温度精度情報を算出するために、2つの共鳴周波数の異なる物質のスペクトル情報を用いる。以下、本実施形態では、2つの共鳴周波数の異なる物質として水と代謝物(NAA)とを用いる場合を例にあげて説明する。
【0026】
まず、計測部210は、非水抑圧計測を行い(ステップS1101)、水の核磁気共鳴信号を得る。その後、水抑圧計測を行い(ステップS1102)、代謝物の核磁気共鳴信号を得る。非水抑圧計測および水抑圧計測は、ともに、予め定められたパルスシーケンスに従って、シーケンス制御装置114を制御することにより実現する。予め定められたパルスシーケンスの一例は後述する。なお、本実施形態では、水とNAAの核磁気共鳴信号を別個の計測で得ているが、水信号を完全に抑制せずに、ある程度の信号量を残しながら計測するなどして水とNAAの核磁気共鳴信号を同時に得てもよい。
【0027】
その後、スペクトル算出部230は、得られた水およびNAAの核磁気共鳴信号をフーリエ変換し、水とNAAのスペクトルを算出する(ステップS1103)。そして、温度情報算出部240は、水とNAAのスペクトルから被検体内の温度(温度情報)を算出する(ステップS1104)。また、温度精度情報算出部250は、水とNAAのスペクトルから温度精度を表す指標(温度精度情報)を算出する(ステップS1105)。その後、表示情報生成部260は、算出した温度情報と温度精度情報とから表示情報を生成し表示装置110に表示する(ステップS1106)。
【0028】
ここで、上記ステップS1101およびステップS1102で計測部210がそれぞれ実行する非水抑圧計測および水抑圧計測のパルスシーケンスの一例について説明する。ここでは、代謝物を画像化する領域選択型磁気共鳴スペクトロスコピックイメージングのパルスシーケンス(以降、MRSIシーケンスと呼ぶ)を例にあげて説明する。
【0029】
図5は、MRSIシーケンス300の一例である。
図5において、RFは高周波磁場パルスの印加タイミングを示す。Gx、Gy、Gzは、それぞれ、x、y、z方向の傾斜磁場パルスの印加タイミングを示す。A/Dは、信号の計測期間を示す。
図5に示すMRSIシーケンス300は、公知のMRSIシーケンスと同じであり、1つの励起パルスRF1と2つの反転パルスRF2およびRF3とを用いて、所定の関心領域(ボクセル)を選択的に励起し、この関心領域(ボクセル)からFID信号(自由誘導減衰)FID1を得る。
【0030】
このMRSIシーケンス300に従って、励起される領域を
図6に示す。
図6は、本計測に先立って行われる計測により得る位置決め用スカウト画像であって、それぞれ、
図6(a)はトランス像410、
図6(b)はサジタル像420、
図6(c)はコロナル像430である。以下、各部の動作と励起される領域との関係を
図5および
図6(a)、(b)、(c)を用いて説明する。
【0031】
まず高周波磁場RF1とz方向の傾斜磁場パルスGs1、Gs1’とを印加して、z方向の断面401を励起する。TE/4(ここで、TEはエコー時間)時間後に、高周波磁場RF2とy方向の傾斜磁場パルスGs2とを印加する。その結果、z方向の断面401とy方向の断面402とが交差する領域における核磁化の位相のみがリフェイズする(戻る)。続いて、高周波磁場RF2印加からTE/2後に高周波磁場RF3とx方向の傾斜磁場パルスGs3とを印加する。それによって、z方向の断面401、y方向の断面402、x方向の断面403が交差する関心領域(ボクセル)404における核磁化の位相のみがリフェイズされ、ここから自由誘導減衰信号FID1が生じる。この自由誘導減衰信号FID1を計測する。なお、各方向の傾斜磁場パルスGd1〜Gd3およびGd1’〜Gd3’は、高周波磁場RF1で励起された核磁化の位相をリフェイズし、RF2、RF3で励起された核磁化の位相をディフェイズするための傾斜磁場である。また、高周波磁場RF3の後には、位相エンコード傾斜磁場Gp1、Gp2を印加する。以上により、関心領域(ボクセル)404の核磁気共鳴信号を得る。
【0032】
上述のように、本実施形態のスペクトル算出部230は、上記ステップS1103において、このMRSIシーケンス300で計測した、各関心領域(ボクセル)404の、水とNAAとの核磁気共鳴信号を時間方向にフーリエ変換し、各関心領域(ボクセル)404の水とNAAとのスペクトルを算出する。
【0033】
次に、上記ステップS1104の、温度情報算出部240による温度情報の算出について説明する。本実施形態の温度情報算出部240は、水およびNAAの共鳴周波数を算出し、両者の差(共鳴周波数差)を温度に変換することにより、各関心領域(ボクセル)404の温度情報を得る。水およびNAAの共鳴周波数は、水およびNAAのスペクトルピークを予め定めた関数でフィッティングすることにより得る。
【0034】
本実施形態の温度情報算出部240による温度情報算出処理の流れを説明する。
図7は、本実施形態の温度情報算出処理の処理フローである。
【0035】
まず、温度情報算出部240は、水とNAAの共鳴周波数をそれぞれ算出する(ステップS4101)。本実施形態では、得られた水およびNAAのスペクトルピークを、式(1)に示すローレンツ型関数等を用いてフィッティングし、水の共鳴周波数ν
WとNAAの共鳴周波数ν
NAAとをそれぞれ得る。
【0036】
次に、温度情報算出部240は、水の共鳴周波数ν
WとNAAの共鳴周波数ν
NAAとの差分を取り、共鳴周波数差Δνを算出する(ステップS4102)。
【0037】
次に、温度情報算出部240は、周波数差を温度に換算する温度換算式を用いて周波数差を温度に換算することにより、温度情報を算出する(ステップS4103)。温度換算式は、予め作成し、記憶装置等に保持する。本実施形態で用いる温度換算式の例を式(2)に示す。
T=p×Δν+q (2)
ここで、Tは温度、pは温度/周波数の次元を持つ係数、qは定数項である。式(2)のpおよびqは、文献に記された公知の値や、実験的に求めた値を用いる。
【0038】
次に、上記ステップS1105の、温度精度情報算出部250による温度精度情報の算について説明する。本実施形態の温度精度情報算出部250は、水およびNAAそれぞれのスペクトルピークを表すモデル関数を決定し、そのモデル関数にランダムなノイズを複数回付加することにより複数の仮想的な温度情報を得、それを統計処理することにより、各関心領域(ボクセル)404の温度情報の温度精度情報を得る。モデル関数は、計測で得られたスペクトルから得たノイズと同等の複数の異なるノイズを加え、変化させる。本実施形態では、例えば、スペクトルから得たノイズの標準偏差を算出し、標準偏差が同じとなるノイズ群を乱数的に発生させ、モデル関数に加える。
【0039】
本実施形態の温度精度情報算出部250による温度精度情報算出処理の流れを説明する。
図8は、本実施形態の温度精度情報算出処理の処理フローである。
【0040】
まず、温度精度情報算出部250は、水ピーク情報と水のノイズの標準偏差とを算出する(ステップS5101)。
【0041】
本実施形態の水ピーク情報は、フィッティングに用いる関数の各パラメータである。例えば、フィッティングに式(1)に示すローレンツ型関数を用いる場合、水の共鳴周波数ν
W、スペクトルピークの半値幅a
W、スペクトルピークの高さI
W、位相φ
W、および、定数項c
Wである。ここでは、式(1)に記すローレンツ型関数を用いて計測した水ピークをフィッティングし、用いた関数の各パラメータを決定する。具体的には、水の共鳴周波数ν
W、スペクトルピークの半値幅a
W、スペクトルピークの高さI
W、位相φ
W、定数項c
Wを得る。
【0042】
また、水のノイズの標準偏差σ
Wは、得られた水のスペクトルの、ノイズ領域(水や代謝物の信号のない領域)の、複数の信号値N
Wを用いて算出する。なお、このとき、さらに信号対雑音比(SNR
W)を算出してもよい。水のスペクトルのノイズの標準偏差をσ
Wとしたとき、水の信号対雑音比SNR
Wは、I
W/σ
Wで算出される。
【0043】
次に、温度精度情報算出部250は、代謝物(NAA)ピーク情報とNAAのノイズの標準偏差とを算出する(ステップS5102)。
【0044】
本実施形態のNAAピーク情報は、上記水ピーク情報と同様である。従って、上述の水ピーク情報の算出手法と同様に、フィッティングに式(1)に記すローレンツ型関数を用いて計測したNAAピークをフィッティングし、用いた関数の各パラメータを決定する。具体的には、NAAピークの共鳴周波数ν
NAA、スペクトルピークの半値幅a
NAA、スペクトルピークの高さI
NAA、位相φ
NAA、定数項c
NAAを算出する。
【0045】
また、NAAのノイズ標準偏差σ
NAAは、得られたNAAのスペクトルの、ノイズ領域の、複数の信号値N
NAAを用いて算出する。なお、このとき、NAAについても、さらに、
信号対雑音比(SNR
NAA)を算出してもよい。NAAのスペクトルのノイズの標準偏差をσ
NAAとしたとき、NAAの信号対雑音比SNR
NAAは、I
NAA/σ
NAAで算出される。
【0046】
次に、温度精度情報算出部250は、水ピーク情報およびNAAピーク情報を用いて、周波数νに関するモデル関数を算出する(ステップS5103)。本実施形態では、モデル関数として、フィッティングに用いた式(1)に示すローレンツ型関数を用いる。水ピーク情報を用い、水のモデル関数L
W(ν)を算出し、NAAピーク情報を用い、NAAのモデル関数L
NAA(ν)を算出する。
【0047】
次に、温度精度情報算出部250は、仮想的なノイズをモデル関数に加えて作成した複数の仮想的なスペクトルからそれぞれ仮想温度を算出する。本実施形態では、M個(Mは自然数)の仮想温度を算出するものとする。従って、まず、温度精度情報算出部250は、カウンタm(mは1以上M以下の整数)を1とする(ステップS5104)。
【0048】
次に、温度精度情報算出部250は、水およびNAAそれぞれについて、ノイズ標準偏差σ
Wおよびσ
NAAと同じ標準偏差を持つ仮想的なノイズN
W(ν)およびN
NAA(ν)を、例えば、乱数を用いてランダムに決定する(ステップS5105)。決定したm番目の仮想的なノイズN
W(ν,m)およびN
NAA(ν,m)は、以下の式(3)および(4)を満たす。
var(N
W(ν,m))=σ
W2・・・(3)
var(N
NAA(ν,m))=σ
NAA2・・・(4)
なお、var()は()内の標準偏差を算出する演算子である。
【0049】
そして、温度精度情報算出部250は、決定したノイズN
W(ν,m)およびN
NAA(ν,m)を、以下の式(5)、(6)に示すように、モデル関数L
W(ν)およびL
NAA(ν)にそれぞれ足し合わせ、m番目の仮想ノイズ付加後のモデル関数(仮想モデル関数)L
W(ν,m)およびL
NAA(ν,m)を生成する(ステップS5106)。
L
W(ν,m)m=L
W(ν)+N
W(ν,m)・・・(5)
L
NAA(ν,m)m=L
NAA(ν)+N
NAA(ν,m)・・・(6)
【0050】
以上の手順により、温度精度情報算出部250は、スペクトル算出部230が算出した水のスペクトルとNAAのスペクトルと、ノイズの標準偏差σ
Wおよびσ
NAAが等しくなる仮想モデル関数L
W(ν,m)およびL
NAA(ν,m)を得る。
【0051】
なお、このとき、水ピークの信号対雑音比(SNR
W)およびNAAピークの信号対雑音比(SNR
NAA)を算出している場合、信号対雑音比が同等となるよう仮想モデル関数を決定してもよい。
【0052】
次に、温度精度情報算出部250は、仮想モデル関数L
W(ν,m)およびL
NAA(ν,m)から、仮想温度を算出する(ステップS5107)。仮想温度の算出は、上記温度情報算出部240による温度情報算出処理と同様である。具体的には、仮想モデル関数L
W(ν,m)およびL
NAA(ν,m)を式(1)のローレンツ型関数でフィッティングし、それぞれの共鳴周波数ν
W(m)とν
NAA(m)を算出する。その後、共鳴周波数差Δν(m)を算出し、予め定めた換算式(例えば、式(2))を用い、m番目の被検体101内の仮想温度を算出する。
【0053】
そして、温度精度情報算出部250は、上記のステップS5104〜ステップS5106をM回数繰り返し(ステップS5108、S5109)、仮想温度をM個算出する。なお、繰り返しに当たり、ステップS5105では、ノイズ標準偏差σ
Wとσ
NAAと同じ標準偏差を持つ仮想的なノイズN
W(ν,m)およびN
NAA(ν,m)は、乱数的に決定される。
【0054】
最後に、温度精度情報算出部250は、温度精度の指標(温度精度情報)として、M個の仮想温度の標準偏差σ
Tを算出する(ステップS5110)。
【0055】
以上の手順により、本実施形態の温度精度情報算出部250は、上記ステップS1101およびステップS1102における計測により得た水およびNAAのスペクトルから算出される温度が持つ温度精度の指標となる温度精度情報(ここでは、標準偏差)を算出する。
【0056】
なお、本実施形態では、温度精度情報としてM個の仮想温度の標準偏差σ
Tを算出したが、これに限られない。得られたM個の仮想温度を統計処理し、温度精度の指標となる各種の値を温度精度情報として算出することができる。温度精度情報として、例えば、分散や標準誤差などであってもよい。
【0057】
次に、上記ステップS1106の表示情報生成部260が算出する本実施形態の表示情報について説明する。
図9は、本実施形態の表示装置110の表示画面116に表示される表示情報を説明するための説明図である。
【0058】
本実施形態の表示情報生成部260が生成する表示情報は、例えば、温度情報算出部240が算出した各関心領域(ボクセル)404の温度情報を、MRSIシーケンス300で計測したマトリクスに対応させた温度テーブル501、温度テーブル501の各値を画素値とした温度画像502、温度精度情報算出部250が算出した各関心領域(ボクセル)404の温度精度情報を、MRSIシーケンス300で計測したマトリクスに対応させた温度精度テーブル511、温度精度テーブル511の各値を画素値とした温度精度画像512、である。
【0059】
また、温度画像502の代わりに、温度差画像を表示情報として算出してもよい。温度差画像は、任意のボクセルを基準として、基準ボクセル以外のボクセルの温度から基準ボクセルの温度を引くことにより得る。
【0060】
なお、表示装置110に表示する表示情報は、上記に限られない。表示情報には、温度情報および温度精度情報を算出する途中で得た水ピーク情報、NAAピーク情報など様々な演算結果が含まれてもよい。また、MRSIシーケンス300で計測したマトリクスのボクセルごとに、温度情報や温度精度情報、水ピーク情報およびNAAピーク情報を表示してもよい。また、温度画像や温度差画像は、MR画像、CT画像、PET画像、SPECT画像など様々な画像と重ね合わせて表示してもよい。
【0061】
以上説明したように、本実施形態のMRI装置100は、被検体が置かれる空間に静磁場を発生させる静磁場発生部(静磁場コイル102)と、前記被検体に高周波磁場を照射する高周波磁場照射部(送信コイル105)と、前記被検体に傾斜磁場を印加する傾斜磁場印加部(傾斜磁場コイル103)と、前記被検体から発生する核磁気共鳴信号を受信する受信部(受信コイル106)と、前記傾斜磁場印加部と前記高周波磁場照射部と前記受信部との動作を制御して共鳴周波数が異なる2つの物質の核磁気共鳴信号を得る計測部210と、前記核磁気共鳴信号に対して演算処理する演算部220と、前記演算処理後の情報を表示する表示装置110と、を備える磁気共鳴撮影装置であって、前記演算部220は、前記共鳴周波数が異なる2つの物質それぞれの核磁気共鳴信号のスペクトルを各々算出するスペクトル算出部230と、前記算出した各々のスペクトルピークに基づいて前記被検体内の温度情報を算出する温度情報算出部240と、前記算出した各々のスペクトルピークに基づいて前記温度情報の精度を示す温度精度情報を算出する温度精度情報算出部250と、前記温度情報および前記温度精度情報に基づいて前記表示装置110に表示する表示情報を生成する表示情報生成部260と、を備える。
【0062】
前記温度情報算出部240は、前記算出した各々のスペクトルピークを表す関数を決定し、当該関数に基づき、前記2つの物質それぞれの共鳴周波数を算出する共鳴周波数算出部と、前記決定した2つの共鳴周波数の差を温度情報に換算する換算部と、を備える。また、前記温度精度情報算出部240は、前記算出した各々のスペクトルピークを表すモデル関数を算出するモデル関数算出部と、前記決定したモデル関数各々に複数の仮想的なノイズを付加し、前記2つの物質毎に複数の仮想モデル関数を生成する仮想モデル関数生成部と、前記仮想モデル関数各々から仮想温度を算出する仮想温度算出部と、を備え、前記複数の仮想温度を統計処理し、前記温度精度情報を得る。
【0063】
このように、本実施形態によれば、共鳴周波数の異なる複数の物質各々をMRS/MRSIによりそれぞれ1回計測することにより、被検体内の温度と、その温度の精度情報とを算出し、オペレータに提示できる。すなわち、生体内の温度情報とその精度情報とを
複数の物質各々1回の計測で得ることができる。従って、短時間に、被検体への負担も少ない手法で、温度およびその精度情報を得ることができる。
【0064】
なお、本実施形態では、温度精度情報算出部250は、複数の仮想温度を得、温度精度情報を算出しているが、温度精度情報の算出手順はこれに限られない。温度精度情報は、例えば、モデル関数に基づく誤差伝搬法を用い、数値解析的に求めてもよい。誤差伝播法を用いた温度算出手法を以下に説明する。
図10は、本実施形態の、誤差伝搬法を用いた温度精度情報算出処理の処理フローである。
【0065】
まず、温度精度情報算出部250は、水ピーク情報を算出する(ステップS5201)。これは、上記ステップS5101と同様である。また、代謝物(NAA)ピーク情報を算出する(ステップS5202)。これも、上記ステップS5102と同様である。すなわち、各スペクトルピークを予め定めたモデル関数でフィッティングし、モデル関数の係数を決定することにより、各ピーク情報を得る。
【0066】
次に誤差伝播法を用いて、ピーク周波数の精度の指標として周波数精度情報を算出する(ステップS5203)ここでは、周波数精度情報として、ピーク周波数の標準偏差を算出する。本変形例の誤差伝播法では、計測したスペクトルデータを、例えば、式(1)に記すローレンツ型関数でフィッティングしたときに、フィッティング関数の各パラメータ(以下、フィッティングパラメータと呼ぶ。)に生じる誤差の量を見積もり、上記標準偏差を算出する。
【0067】
以下、ローレンツ型関数に限定せず、フィッティング関数を一般化し、上記標準偏差の算出手法を説明する。以下の計算では、計測したスペクトルデータの各点f
kに混入しているノイズ成分N(f
k)は、同一の分布に従い、かつ、平均が0、分散σ
2は十分小さいと仮定する。
【0068】
フィッティング関数として用いる関数の、フィッティングパラメータをベクトルB={b
i}と表す。また、信号強度L(f
k)の計測データに含まれる偏差をΔLとする。ここで、ΔLと、各フィッティングパラメータのベクトルB={b
i}に含まれる偏差ΔBとの関係は次の近似式(7)で与えられる。
【数7】
ここで、F1、F2はフィッティングに用いる周波数領域の端点、f
kは周波数点、L(B,f)はフィッティングに用いるモデル関数にBの各要素b
iを代入したものを表す。例えば、水ピークに関して、ローレンツ型関数を用いる場合は、各要素b
iは、ステップS5201で算出した水ピーク情報、すなわち、b
1=ν
w、b
2=I
w、b
3=a
w、b
4=φ
w、b
5=c
wであり、L(B,f)は、式(1)に各要素b
iを代入したものである。
【0069】
仮定より、式(7)のΔL(f
k)は、ノイズ成分N(f
k)とみなせるため、ΔBは次の式(8)で与えられる分布に従う。
【数8】
ここで、Fはスペクトルデータの各点fの組{f
k}k=F1,・・・,F2を表し、D(B,F,k)
iは式(8)で定義されるノイズ成分N(f
k)の係数を表す。仮定よりΔBの各要素をΔb
iとすると分散var(Δb
i)は次の式(9)で与えられる。
【数9】
従って、本実施形態の水ピークの共鳴周波数(水ピーク周波数)ν
wの標準偏差σ
w1は、i=1として、var(Δb
1)の平方根をとることで算出できる。
【0070】
同様に、NAAピークの共鳴周波数(NAAピーク周波数)ν
NAAの標準偏差σ
NAA1は、D(B,F,k)
iにb
1=ν
NAA、b
2=I
NAA、b
3=a
NAA、b
4=φ
NAA、b
5=c
NAAを代入し、式(8)を用いて、var(Δb
1)の平方根をとって算出する。
【0071】
以上の方法により、水ピーク周波数ν
wの標準偏差σ
w1およびNAAピーク周波数ν
NAAの標準偏差σ
NAA1を算出できる。
【0072】
次に、水ピーク周波数ν
wの標準偏差σ
w1とNAAピーク周波数ν
NAAの標準偏差σ
NAA1のとから、伝播する誤差として、ピーク周波数差の精度の指標として周波数差精度情報(標準偏差)を算出する(ステップS5204)。水ピークとNAAピークとのピーク周波数差の標準偏差σ
dfは、水ピークの共鳴周波数ν
wの標準偏差σ
w1とNAAピークの共鳴周波数ν
NAAの標準偏差σ
NAA1とから、式(10)により算出できる。
【数10】
【0073】
次に、算出したピーク周波数差の標準偏差σ
dfから温度精度情報(標準偏差)を算出する(ステップS5205)。算出温度の標準偏差σ
Tは、例えば、非特許文献2に記載の温度換算式を用いて、σ
dfを温度に換算することで算出できる。具体的には、上記式(2)における係数pの絶対値|p|にピーク周波数差の標準偏差σ
dfを乗算し、算出温度の標準偏差σ
Tを得る。
【0074】
以上の手順により、計測により得た水のスペクトル情報およびNAAのスペクトル情報から算出される温度が持つ温度精度情報(ここでは、標準偏差)を、解析的に算出できる。
【0075】
このように、前記温度精度情報算出部250が、前記算出した2つのスペクトルピークを表すモデル関数を算出するモデル関数算出部と、前記モデル関数に基づき、前記2つの物質それぞれの共鳴周波数の精度情報を算出する周波数精度算出部と、前記2つの共鳴周波数の精度情報から2つの物質の共鳴周波数差の精度情報を算出する周波数差精度算出部と、を備え、前記共鳴周波数差の精度情報から温度精度情報を算出するものであってもよい。
【0076】
なお、本変形例においても、算出する温度精度情報は、分散や標準誤差などのその他の統計値であってもよい。
【0077】
また、本実施形態では、表示情報生成部260は、温度テーブル、温度画像、温度差画像を表示情報として生成しているが、生成する表示情報は、これらに限られない。例えば、補間等により任意の空間分解能の温度画像または温度差画像を表示情報として生成してもよい。
【0078】
すなわち、表示情報生成部260は、各ボクセルの温度情報を補間することにより、高分解能の温度画像を前記表示情報として生成してもよい。例えば、元の温度画像より高分解能の温度画像は、隣接する対象ボクセルの温度情報を補間することにより、新規の中間のボクセルの温度情報を得ることにより作成する。
【0079】
また、元の温度差画像より、高分解能の温度差画像(高分解能温度差画像)は、以下の手順により作成する。以下、表示情報生成部260が、補間により、元の分解能より高い分解能の温度差画像(高分解能温度差画像)を生成する処理の流れを
図11のフローチャートに従って説明する。
【0080】
まず、上述の手法で、MRSIシーケンス300で計測した結果から得た温度画像(以後、低分解能の温度画像と呼ぶ。)マトリクス(各ボクセル)の中から、基準となるボクセルの選択を受け付けて設定する(ステップS6101)。なお、選択されるボクセルは2つ以上でもよい。
【0081】
次に、基準ボクセルの温度を算出する(ステップS6102)。1のボクセルが基準ボクセルとして選択された場合は、そのボクセルの温度を、基準ボクセルの温度とする。複数のボクセルが基準ボクセルとして選択された場合は、選択したボクセルの温度の平均値を
基準ボクセルの温度として算出する。なお、複数のボクセルを基準ボクセルとして選択したときは、基準ボクセルの水ピークの和とNAAピークの和をとってから、フィッティングにより水とNAAとの共鳴周波数を算出し、上記式(2)等の換算式により、温度を算出してもよい。
【0082】
次に、温度差画像を算出するボクセル(ここでは対象ボクセルと呼ぶ)の選択を受け付け、設定する(ステップS6103)。対象ボクセルは少なくとも1つ以上であればよく、計測領域全体でもよい。
【0083】
次に、対象ボクセルに含まれる各ボクセルの温度と基準ボクセルの温度との差分をそれぞれとり、温度差画像を算出する(ステップS6104)。
【0084】
そして、温度差画像から補間により高分解能温度差画像を生成する(ステップS6105)。この時用いる補間処理は、線形補間の他、キュービック補間やスプライン補間など公知の方法を用いてもよい。
【0085】
最後に、ステップS6105で算出した高分解能温度差画像を表示装置110に表示する(ステップS6106)。
【0086】
すなわち、前記表示情報生成部260は、前記各ボクセルの中から基準とする基準ボクセルの選択を受け付ける基準ボクセル受付部と、前記各ボクセルの温度情報と前記基準ボクセルの温度情報との差分を温度差情報として算出する温度差情報算出部と、を備え、前記各ボクセルの温度差情報を補間することにより所望の分解能の温度差画像を前記表示情報として生成する。
【0087】
なお、高分解能温度差画像の生成方法は、これに限られない。表示情報生成部260による、他の手順による高分解能温度差画像を生成する処理の流れを
図12のフローチャートに従って説明する。
【0088】
まず、MRSIシーケンス300で計測した結果から得た低分解能の温度画像を補間して高分解能の温度画像を生成する(ステップS6201)。この時用いる補間処理は、線形補間の他、キュービック補間やスプライン補間など公知の方法を用いてもよい。
【0089】
次に、補間処理した高分解能温度画像上で基準となる関心領域(ROI:Region Of Interest)の選択を受け付け、設定する(ステップS6202)。なお、選択された基準ROI内に含まれるボクセル数は2つ以上でもよい。また、基準ROIの形状は円や楕円、矩形の他、任意の形状であってよい。
【0090】
次に、基準ROI内の温度(基準温度)を算出する(ステップS6203)。ここでは、基準ROIとして選択した領域に含まれる各ボクセルの温度情報を、基準温度とする。なお、複数のボクセルを基準ボクセルとして選択したときは、選択したボクセルの温度の平均値を基準温度として算出する。
【0091】
次に、高分解能温度画像上で温度差画像を算出するROI(ここでは対象ROIと呼ぶ)の選択を受け付け、設定する(ステップS6204)。対象ROIは少なくとも1つ以上であればよい。また、計測領域全体でもよい。
【0092】
次に、対象ROI内に含まれる各ボクセルの温度と基準温度との差分をそれぞれとり、その結果を画素値とする高分解能温度差画像を算出する(ステップS6205)。
【0093】
最後に、ステップS6205で算出した高分解能温度差画像を表示装置110に表示する(ステップS6206)。
【0094】
すなわち、前記表示情報生成部260は、前記各ボクセルの温度情報を補間することにより所望の分解能の温度画像を生成する補間部と、前記所望の分解能の温度画像上で、基準となる関心領域の選択を受け付ける基準関心領域受付部と、前記基準となる関心領域内の前記ボクセルの温度情報を基準温度情報として算出する基準温度情報算出部と、前記所望の分解能の温度画像の各ボクセルの温度情報と前記基準温度情報との差分を温度差情報として算出する温度差情報算出部と、を備え、前記各ボクセルの温度差情報を画素値とする温度差画像を、前記表示情報として生成する。
【0095】
以上の手順とはさらに異なる他の手順による高分解能温度差画像を算出する処理の流れを
図13のフローチャートを使って説明する。
【0096】
まず、MRSIシーケンス300で計測した結果から得た水とNAAのスペクトルデータをそれぞれ空間的に補間して高分解能の水とNAAのスペクトルデータを算出する(ステップS6301)。この時用いる補間処理は、線形補間の他、キュービック補間やスプライン補間など公知の方法を用いてもよい。
【0097】
次に高分解能の水とNAAとスペクトルデータから、上記本実施形態の手法により温度情報を算出し、高分解能の温度画像(高分解能温度画像)を生成する(ステップS6302)。なお、温度情報算出処理は、表示情報生成部260が温度情報算出部240に算出させるよう構成してもよい。
【0098】
次に、高分解能温度画像上で基準となる関心領域ROI(基準ROI)の選択を受け付け、設定する(ステップS6303)。なお、基準ROI内に含まれるボクセル数は2つ以上でもよい。また、基準ROIの形状は円や楕円、矩形の他、任意の形状でよい。
【0099】
次に、基準ROI内の温度(基準温度)を算出する(ステップS6304)。ここでは、基準ROIとして選択した領域に含まれる各ボクセルの温度情報を、基準温度とする。なお、複数のボクセルを基準ボクセルとして選択したときは、選択したボクセルの温度の平均値を基準温度として算出する。
【0100】
次に、高分解能温度画像上で温度差画像を算出するROI(ここでは対象ROIと呼ぶ)の選択を受け付け、設定する(ステップS6305)。対象ROIは少なくとも1つ以上であればよい。また、計測領域全体でもよい。
【0101】
次に、対象ROI内に含まれる各ボクセルの温度と基準温度との差分をそれぞれとり、その結果を画素値とする高分解能温度差画像を算出する(ステップS6306)。
【0102】
最後に、ステップS6306で算出した高分解能温度差画像を表示装置110に表示する(ステップS6307)。
【0103】
すなわち、前記表示情報生成部260は、前記シーケンスで計測したボクセル毎のスペクトルを空間的に補間して所望の分解能のスペクトルデータを得る補間部と、前記補間後のスペクトルデータからそれぞれ補間後のボクセルの温度情報を算出し、算出した各温度情報を画素値とする前記分解能の温度画像を生成する温度画像生成部と、前記分解能の温度画像上で基準となる関心領域の選択を受け付ける基準関心領域受付部と、前記基準となる関心領域内の各補間後のボクセルの前記温度情報を基準温度情報として算出する基準温度情報算出部と、前記所望の分解能の温度画像内の各補間後のボクセルの温度情報と前記基準温度情報との差分を温度差情報として算出する温度差情報算出部と、を備え、前記各補間後のボクセルの温度差情報を画素値とする温度差画像を前記表示情報として生成する。
【0104】
なお、本手順により高分解能の温度画像を算出する場合は、上記ステップS6302で生成した高分解能温度画像上で、温度画像を算出するROI(対象ROI)を選択し、対象ROI内に含まれる各ボクセルの温度を、高分解能温度画像の各画素の画素値とする。
【0105】
すなわち、前記表示情報生成部260は、前記シーケンスで計測したボクセル毎のスペクトルを空間的に補間して所望の分解能のスペクトルデータを得る補間部を備え、前記補間後のスペクトルデータからそれぞれ補間後のボクセルの温度情報を算出し、算出した各温度情報を画素値とする前記分解能の温度画像を、前記表示情報として生成する。
【0106】
なお、表示情報生成部260が、補間処理を行う場合、表示装置110に表示される表示情報には、補間処理の実行/非実行を切り替えるスイッチ520を設けてもよい。本スイッチ520の押下を受け、表示情報生成部260は、補間処理を実行する。
【0107】
本実施形態の手法による温度精度情報は、計測パラメータの決定に用いてもよい。例えば、予め、1の被検体101に関して計測パラメータを変化させて複数のMR画像を取得する。そして、取得した複数のMR画像を用いて、上記手法により複数の温度精度情報を得る。このとき、得られた温度精度情報を、計測パラメータに対応づけて記憶装置に保持する。そして、計測時に、計測時間等の制約条件下で、最良の温度精度を得られる計測パラメータを採用する。
【0108】
このとき、例えば、1のMR画像において、様々な位置の、様々なサイズのVOI毎に温度精度情報を算出し、さらに、位置にも対応付けて温度精度情報を保持するよう構成してもよい。さらに、計測パラメータ、計測位置ではなく、温度精度情報を算出したVOIを構成する各ボクセルの画素値のヒストグラムと、温度精度情報とを対応づけて保持するよう構成しもよい。
【0109】
なお、本実施形態では、非水抑圧計測および水抑圧計測で用いるパルスシーケンスとして、MRSIシーケンスを用いる場合を例にあげて説明したが、非水抑圧計測および水抑圧計測で用いるパルスシーケンスはこれに限られない。各ボクセルの、計測対象物質のスペクトルが得られるパルスシーケンスであればよい。例えば、磁気共鳴スペクトルスコピーのパルスシーケンス(MRSシーケンス)と呼ばれる単一の領域を計測対象とするシーケンス、エコープラナースペクトロスコピックイメージシーケンス(EPSIシーケンス)とよばれる振動傾斜磁場を用いた高速MRSIシーケンス等であってもよい。