特許第5797783号(P5797783)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5797783
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】多孔質炭素生成物及びそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C01B 31/02 20060101AFI20151001BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20151001BHJP
【FI】
   C01B31/02 101Z
   C01B31/02 101B
   H01M4/587
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-556979(P2013-556979)
(86)(22)【出願日】2011年7月28日
(65)【公表番号】特表2014-518534(P2014-518534A)
(43)【公表日】2014年7月31日
(86)【国際出願番号】EP2011062987
(87)【国際公開番号】WO2012119666
(87)【国際公開日】20120913
【審査請求日】2014年4月24日
(31)【優先権主張番号】102011013075.6
(32)【優先日】2011年3月4日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】61/512,349
(32)【優先日】2011年7月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507332918
【氏名又は名称】ヘレーウス クヴァルツグラース ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Quarzglas GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ノイマン
(72)【発明者】
【氏名】イェルク ベッカー
【審査官】 山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−534713(JP,A)
【文献】 特開2010−208887(JP,A)
【文献】 特表2009−538813(JP,A)
【文献】 特開2009−091211(JP,A)
【文献】 特開2004−244311(JP,A)
【文献】 特表2011−525468(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0304570(US,A1)
【文献】 特表2010−526756(JP,A)
【文献】 特開昭62−096324(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0262993(US,A1)
【文献】 特開平04−130059(JP,A)
【文献】 K. JIAN et al.,Mesoporous carbons with self-assembled surfaces of defined crystal orientation,Microporous and Mesoporous Materials,2008, 108, 143-151.
【文献】 O. KLEPEL et al.,Several ways to produce porous carbon monoliths by template assisted routes,Materials Letters,2007, 61, 2037-2039.
【文献】 X. CUI et al.,PtCo supported on ordered mesoporous carbon as an electrode catalyst for methanol oxidation,Carbon,2009, 47, 186-194.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B31/00−31/36,
33/00−33/193,
33/20−39/54
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下、
(a)相互に連結した孔を含む無機テンプレート材料のテンプレートを提供する工程、
(b)炭素のための前駆物質を提供する工程、
(c)テンプレートの孔を前駆物質で浸潤する工程、
(d)前駆物質を炭素化する工程、
(e)テンプレートを取り出して多孔質炭素生成物を形成する工程
を含む、多孔質炭素生成物を製造するための方法であって、可融性材料の前駆物質粒子及びテンプレート粒子を提供し、粉末混合物を該粒子から形成し、かつ粉末混合物を工程(d)による炭素化の前又は炭素化中に加熱して、前駆物質溶融物をテンプレート粒子の孔中に浸透させ、前記テンプレート粒子の提供が、供給原料を加水分解又は熱分解によってテンプレート材料粒子に変換し、該粒子を堆積表面上に堆積してテンプレート材料から煤体を形成し、そして煤体をテンプレート粒子に破砕する煤の堆積方法を含むことを特徴とする、多孔質炭素生成物を製造するための方法。
【請求項2】
前記テンプレート粒子が、球状でない形態を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記テンプレート粒子が、少なくとも5の構造比を有する小片状又はロッド状の形状であることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記テンプレート粒子が、少なくとも10の構造比を有することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記テンプレート粒子が、10μm〜500μmの範囲の平均の厚さを有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記前駆物質粒子が球状に形成され、かつ50μm未満の平均粒径を有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記前駆物質粒子及びテンプレート粒子が、0.05〜1.6の範囲の体積比で混合されることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記前駆物質粒子及びテンプレート粒子が、0.1〜0.8の範囲の体積比で混合されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記テンプレート材料がSiO2であることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ピッチを炭素前駆物質として使用することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
炭水化物を炭素前駆物質として使用することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記炭素生成物を、多孔質粒子の微粉炭素に分けることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質炭素生成物を製造するための方法に関し、該方法は、以下、
(a)相互に連結した孔を含む無機テンプレート材料からなるテンプレートを提供する工程、
(b)炭素の前駆物質を提供する工程、
(c)テンプレートの孔を前駆物質で浸透させる工程、
(d)前駆物質を炭素化する工程、
(e)テンプレートを取り出して多孔質炭素生成物を形成する工程
を含む。
【0002】
さらに、本発明は、炭素生成物の適した使用に関する。
【0003】
炭素のモノリシック成形体は、例えば、燃料電池、スーパーキャパシタ及び電気アキュムレータ(二次電池)のための電極において使用され、かつ液体及びガスのための吸着体として、ガスのための貯蔵媒体として、クロマトグラフィー適用又は触媒加工におけるキャリヤー材料として、及び機械工学又は医用工学における材料として使用される。
【0004】
先行技術
充電式リチウム電池の電極のための使用は、可逆的に挿入することができ、かつ低い電荷の損失でリチウムを脱離することができる電極材料を要求する。同時に、電池のできるだけ短い充電時間及び高い充電容量を目的とする。このために、最大の多孔度(浸透性)が、同時にできるだけ小さい電極材料の表面と共に所望される。大きい表面を有する電極材料は、実質的にリチウムの第一の挿入時に可逆的な損失として現れる比較的高い電荷損失を呈する。
【0005】
DE 29 46 688号A1は、多孔質材料の一時的な予備成形物(いわゆるテンプレート)を使用することによって多孔質炭素を製造するための方法を開示している。炭素の前駆物質は、ここで、少なくとも1m2/gの表面を有する無機テンプレート材料のテンプレートの孔において堆積される。SiO2ゲル、多孔質ガラス、アルミナ又は他の多孔質耐熱酸化物は、テンプレートに適したテンプレート材料として挙げられている。テンプレート材料は、少なくとも40%の多孔度及び3nm〜2μmの範囲の平均孔サイズを有する。
【0006】
重合可能な有機材料、例えばフェノールとヘキサアミンとの混合物又はフェノール−ホルムアルデヒドレゾールは、炭素の前駆物質として推奨されている。この混合物は、液体として又はガスとしてテンプレートの孔中に導入され、かつ重合される。重合及び続く炭素化の後に、テンプレートの無機テンプレート材料は、例えばNaOH中での又はフッ化水素酸中での溶解によって取り除かれる。
【0007】
これは、ほぼテンプレートの材料分布に対応する孔構造を有し、かつ主にLi電池のための電極の製造のための出発材料として適している粒子状又はフレーク状の炭素生成物をもたらす。
【0008】
内部表面への容易な接近は、高く急速な電荷容量のために重要である。本記載内容において、いわゆる"階層的多孔度"は、有利であることが判明している。大きい表面は、ナノメーター範囲での孔によって提供されうる。これらの孔への接近容易性を高めるために、それらは、理想的に、連続マクロ孔質輸送系によって連結される。
【0009】
マクロ孔及びメソ孔のかかる階層的孔構造を有するモノリシック炭素生成物は、US 2005/0169829号A1において記載されている。階層的孔構造を製造するために、SiO2テンプレートは、直径800nm〜10μmのシリカビーズ及び重合可能な物質からなる分散液を、重合が、過剰な液体の除去後に乾燥し、完全に重合した多孔質シリカゲルをもたらすように鋳型中で加熱することで製造される。
【0010】
この方法で得られるSiO2テンプレートの孔を、続いて炭素の前駆物質で含浸させ、炭素前駆物質を炭素に炭素化し、そして続いてSiO2テンプレートをHF又はNaOH中での溶解によって取り除く。それによって得られた炭素生成物は、およそテンプレートの材料分布に一致する孔構造も呈する。テトラヒドロフラン(THF)中で溶解したフェノール樹脂が前駆物質として使用される。
【0011】
技術課題
通常の浸透のために黒鉛化した炭素前駆体材料は、高い濃度で可溶性ではなく、かつ不溶性組成物量を含む。例えば、THFにおける中間層ピッチの溶解性は、10体積%未満であり、溶剤の蒸発後に、当初充填した孔体積の90%より多くが充填されていないままである。炭素前駆体材料の残っているコーティングの体積は、さらに、しかしわずかに、続く炭素化によって減少される。
【0012】
反対に、炭水化物の形での代わりの炭素前駆体、例えば糖は、高い可溶性を示すが、しかし溶剤の蒸発後に残っている糖は、炭素化工程におけるその当初質量の約50%が失われており、その結果ここでは大きな孔体積が充填されないままである。
【0013】
したがって、続く炭素化での浸透は、一般に薄い厚さの堆積した炭素層のみをもたらす。多孔質炭素構造の技術的に有用な壁厚を得るために、複数のかかる浸透及び炭素化プロセスは、したがって、概して次々と実施されなければならない。かかる多数プロセスは、しかしながら、製造費用を高め、かつそれらは、例えば浸透チャネルの段階的な目詰まりによって不均一に生じうる。
【0014】
本発明の課題は、厚い壁厚も有する多孔質炭素構造の経済的な製造を可能にする方法を提供することである。
【0015】
さらに、本発明の課題は、本発明による炭素生成物の適した使用を示すことである。
【0016】
発明の一般的な記載
前記方法に関して、前記タイプの方法から出発するこの課題は、可融性材料の前駆物質粒子及びテンプレート粒子を提供し、かつ粉末混合物を該粒子から製造し、該粉末混合物を方法工程(d)による炭素化前又は炭素化中に加熱して、前駆体材料溶融物をテンプレート粒子の孔中に浸透させる、本発明の方法によって達せられる。
【0017】
本発明による方法において、炭素の前駆物質は、テンプレートと接触して加熱され、かつこのプロセスで軟化又は溶融され、その結果テンプレートの孔中に浸透できる。炭素前駆物質のための溶剤は省略できる。
【0018】
しかしながら、テンプレート材料の良好な湿潤性の場合においてでさえ、液化した前駆物質を有するテンプレートのこの"直接浸透"は、テンプレートがモノリスとして存在する場合に所望される結果を生じない。特別な対策なしに、それは、溶融した前駆物質についての極端に小さい浸透の深さ及び孔における不規則な占有を得る。この問題を解決するために、予め多孔質テンプレート材料及び前駆物質の双方から製造された粉末を、本発明によって提供し、該粉末を、互いと均質に混合し、そして均質な粉末混合物を、前駆物質の粒子が溶融する程度まで加熱する。
【0019】
この溶融物は、隣接したテンプレート粒子中に直接浸透できる。均質な粉末混合物は、溶融した前駆物質が、常にテンプレート粒子と密接に接触することを確実にし、その結果均一な分布及び占有を、浸透されるべきテンプレート材料の全体の孔体積にわたって得る。一般的な前駆物質の溶融中の高温は、テンプレートの表面の良好な湿潤性をもたらし、その結果一回の浸透の場合でさえ、孔体積の高い充填の程度が得られる。
【0020】
前駆物質の炭素化は、同時に、又はテンプレート粒子の孔の浸透に続いて実施する。溶剤の使用が省かれるため、前駆物質の収縮は、単に、炭素化中の分解及び蒸発プロセスによる。収縮の程度は、この点で、前駆物質の炭素含有率に依存する。
【0021】
無機テンプレート材料は、炭素前駆物質を堆積及びか焼するために機械的に及び熱的に安定な骨格としてのみ提供する。例えば化学溶解による除去後に、得られた炭素生成物は、実質的にテンプレート材料を有さない。
【0022】
より細かく粉砕されたテンプレート粒子は、より速く、より効率的に、及びより均一であり、他の同一のプロセス条件下で浸透する。テンプレート粒子は、例えば、テンプレート材料から多孔質体を研磨することによって又はテンプレート材料から層を破砕することによって、テンプレート材料から粉末を加圧することによって又はゾルゲル法もしくは顆粒法によって製造される。例えば篩い分けによって得られた小さく、典型的に単分散の粒子サイズ分布は、本発明による方法のために有利である。
【0023】
前駆物質の粉末は、溶融物を研磨もしくは破砕によって、又は噴霧することによっても得られる。
【0024】
2つの粉末を互いに均質に混合した後に、その粉末混合物を、前駆物質が溶融され、テンプレート粉末の孔中に非常に湿って浸透する程度まで加熱する。ここで、前駆物質は、同時に又は後に炭素化されてよい。
【0025】
炭素化後に、炭素化された前駆物質及びテンプレート材料を本質的に互いに混合した塊を得る。テンプレート材料は、前記塊からエッチングによって取り出され、その結果炭素化した前駆物質から炭素骨格が残る。
【0026】
供給原料を加水分解又は熱分解によってテンプレート材料粒子に変換し、該粒子をテンプレート材料から煤体(soot body)の形成で堆積表面上に堆積させ、かつ煤体をテンプレート粒子に破砕する煤の堆積プロセスをテンプレート粒子が含む場合に、特に有利であることが判明している。
【0027】
本発明による方法のこの変法において、テンプレートの形成は煤の堆積プロセスを含む。このプロセスにおいて、液体又はガス状出発物質は、化学反応(加水分解又は熱分解)を受け、かつガス相から堆積表面上に固体成分として堆積される。反応域は、例えばバーナー炎又は電気アーク(プラズマ)である。かかるプラズマ又は例えばOVD、VAD、MCVD、PCVD又はFCVD法の名前で公知であるCVD堆積方法によって、合成石英ガラス、酸化スズ硝酸チタン及び他の合成材料が、工業規模で製造される。
【0028】
テンプレート材料が、多孔質の煤として、例えば容器、心棒、プレート又はフィルターであってよい堆積表面上で存在することは、テンプレートの製造のための堆積したテンプレート材料の条件のために必須である。これは、堆積表面の温度が、堆積したテンプレート材料の稠密な焼結を妨げるように低く保たれる。それによって熱的に固められるが多孔質である"煤体"は、中間生成物として得られる。
【0029】
"ゾル−ゲル法"による製造方法と比較して、煤の堆積プロセスは、工業規模でのテンプレートの経済的な製造を可能にする安価な方法である。
【0030】
この方法において得られた煤体に関しては、製造プロセスによる階層的な孔構造を有する異方性の質量分布を呈することが特に有利であることが判明している。その理由は、ガス相堆積は、反応域において、堆積表面にこの方法で凝集するナノメートル範囲での粒子サイズを有するテンプレート材料の一次粒子をもたらし、かつ堆積表面上で多少の球状アグロメレート又はアグリゲートの形成が存在する(これらは以下で"二次粒子"とも言われる)ことである。一次粒子内に及び二次粒子内に、すなわち一次粒子の間に、ナノメートル範囲の特に小さい空洞及び孔、すなわちメソ孔があるのに対し、大きい空洞又は孔は、個々の二次粒子間で形成される。
【0031】
破砕又は研磨によってそれらから得られたテンプレート粒子は、テンプレート材料において予め決められたオリゴマー状の孔サイズ分布を有する階層的な構造も呈する。
【0032】
煤の堆積プロセスにおいて、テンプレート材料は、テンプレート粒子中に顆粒、加圧、スラリー又は焼結プロセスにおいてさらに加工された煤粉末の形で製造されてもよい。顆粒又はフレークは、中間生成物として挙げられる。
【0033】
煤の堆積によって製造されたテンプレート材料の層は、少ない努力で破砕されることができ、小片状又はフレーク状の形態を有するテンプレート粒子をもたらす。
【0034】
球状でない形態によって特徴付けられるかかるテンプレート粒子は、本発明による方法における使用に特に有利である。
【0035】
この理由は、球状の形態を有する粒子、すなわちボール状又はほぼボール状の形態を有する粒子が、それらの体積に関して少ない表面を有することである。対照的に、球状でない形態を有する粒子は、前駆物質での浸透を単純及び一様にする、表面と体積との大きな割合を示す。
【0036】
少なくとも5、有利には少なくとも10の構造比を有する小片状又はロッド状であるテンプレート粒子は、この点で特に有利であることが判明している。
【0037】
"構造比"は、ここで、粒子の最大構造幅とその厚さの比と解される。少なくとも5の構造比は、粒子の最大構造幅が、その厚さよりも少なくとも5倍大きいことを意味する。かかる粒子は、実質的に小片状又はロッド状の形を有し、かつ2つの実質的に平行に伸長した大きい表面によって特徴付けられ、溶融した前駆物質の浸透は、充填されるべき体積の緻密さが比較的小さいため、比較的急速に実施することができる。
【0038】
テンプレート粒子の厚さが小さくなれば、溶融した前駆物質での浸透はより単純でより均質になる。この点で、テンプレート粒子が、10〜500μmの範囲、有利には20〜100μmの範囲、特に50μm未満の平均の厚さを有する場合に有利であることが判明している。
【0039】
10μm未満の厚さを有するテンプレート粒子は、弱い機械強度を有し、明白な階層的な孔構造の形成を悪化させる。500μmより大きい厚さでは、溶融した前駆物質での均質な浸透を確実にすることがより難しくなる。
【0040】
テンプレート材料及び前駆材料からの粒子の均質な混合は、前駆物質粒子が球形であり、50μm未満、有利には20μm未満の平均粒径を有する場合に容易である。
【0041】
粒子の球形成のために、テンプレート材料からの球状でない粒子との混合が改良される。前駆物質からの粒子がわずかに前駆物質の粒子よりも小さい場合にこれも支持される。しかしながら1μm未満の粒径はほこりっぽくなる傾向があり、かつ好ましくない。
【0042】
孔の充填の程度は、前駆物質とテンプレート材料との混合比によって設定される。有利には、前駆物質粒子及びテンプレート粒子は、0.05〜1.6の範囲の体積比で、有利には0.1〜0.8の範囲の体積比で混合される。
【0043】
0.05の混合比で、テンプレート材料の内部表面は、一層の薄い厚さでのみ覆われており、スポンジ状の炭素だけが得られる。従って、さらに小さい混合比は好ましくない。反対に、1.6の混合比で、テンプレート材料の本来の孔体積に依存して、実質的に充填された孔構造を得る。
【0044】
有利には、テンプレート材料はSiO2である。
【0045】
合成SiO2は、比較的安い費用で、安価な出発物質を使用する煤の堆積プロセスによって工業規模で製造されうる。SiO2テンプレートは、か焼中に高温に耐える。温度の上限は、SiO2と炭素とのSiCへの反応(約1000℃で)の開始によって予め決められる。方法工程(e)による合成SiO2の形でのテンプレート材料の除去は、化学溶解によって実施する。
【0046】
ピッチが、有利には炭素前駆物質として適している。
【0047】
ピッチ、特に"中間相ピッチ"は、規則正しい液晶構造を有する炭素質材料である。炭素化後に、炭素構造の孔中に浸透したピッチ溶融物は、コア/シェル複合材のシェルを形成する炭素のグラファイト状の堆積を導き、それによって、層のスタック間の空洞の目詰まりなしに、炭素構造のミクロ孔を閉じる。
【0048】
代わりに、炭水化物が、炭素前駆物質として使用される。
【0049】
炭水化物、特に糖、特にサッカロース、フルクトース又はグルコースは、グラファイトではない炭素前駆物質である。
【0050】
有利には、炭素生成物は、多孔質粒子の微粉炭素に分けられる。
【0051】
本発明による方法において、炭素生成物は、通常、モノリスとして、又は小片状もしくはフレーク状の形態で通常得られ、かつより小さい粒子に容易に分けられる。分配後に得られる粒子は、テンプレートの構造によって階層的な孔構造を有し、かつ例えばさらに標準のペースト又はスラリー法によって成形体又は層に加工される。
【0052】
炭素生成物の使用に関して、前記課題は、本発明によって達せられ、本発明による多孔質炭素生成物は、充電式リチウム電池のための電極を製造するために使用される。
【0053】
充電式リチウム電池の電極は、1つの材料からの炭素層から構成される電極と、多数の材料から構成される複合電極との双方を含む。
【0054】
好ましい実施態様
本発明を実施形態及び図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】SiO2煤体を製造するためのデバイスを図示する図。
図2】階層的な孔構造を有する本発明の方法によって得られる多孔質炭素生成物の第一の実施態様のSEM図を示す図。
図3】階層的な孔構造を有する本発明の方法によって得られる多孔質炭素生成物の第二の実施態様のSEM図を示す図。
図4】酸素含有雰囲気中でピッチを浸透させたテンプレートの加熱中の熱重量分析の線図を示す図。
【0056】
図1において示されるデバイスは、SiO2煤体を製造するために提供する。一列に配置された多数の火炎加水分解バーナー2を、酸化アルミニウムのキャリヤー管1に沿って配列する。火炎加水分解バーナー2を、軸線4に関して動かない2つの転換点の間のキャリヤー管1の軸線4と平行に往復し、かつ矢印方向5及び6によって描かれるような、それらに垂直な方向で可動するジョイントバーナーブロック3に取り付ける。バーナー2は、石英ガラスからなる。それらの互いの距離は15cmである。
【0057】
火炎加水分解バーナー2は、バーナー炎7に、キャリヤー管1の軸線4に垂直な主な成長方向を割り当てる。火炎加水分解バーナー2を使用して、SiO2粒子を、およそ軸線4を中心に回転するキャリヤー管1のシリンダージャケット表面上で堆積させ、多孔質SiO2ブランク8を、外径400mmを有する層によって層を形成する。個々のSiO2煤層は、平均で約50μmの厚さを有する。
【0058】
火炎加水分解バーナー2に、SiO2粒子の形成のために、バーナーガスとしてそれぞれ酸素及び水素を、及び供給原料としてSiCl4を供給する。ここで、バーナーブロック3を、2つのバーナー距離(すなわち30cm)の幅で往復させる。堆積プロセス中に、約1200℃の平均温度を、ブランク表面9に対して設定する。
【0059】
堆積プロセスの完了後に、多孔質SiO2煤の管(煤管)を、長さ3m、外径400mm及び内径50mmで得る。煤体の形成中の温度は比較的低く保たれ、その結果、SiO2煤材料は、(石英ガラス2.21g/cm3の密度に対して)22%の低い平均比重を有する。
【0060】
予備試験
(1)第一の試験において、中間層ピッチを、窒素の容器中で300℃まで加熱し、種々のピッチ浴をもたらした。SiO2煤体のモノリス試料を、ピッチ浴中に含浸し、そしてさらに30分後に取り出した。溶融したピッチが1mm未満の厚さにわたって煤体中にのみ浸透したことを見出した。
(2)そしてピッチ浴の温度を400℃まで上昇させた。中間層ピッチは、この温度で未だ粘性である。煤体中の浸透の程度5における著しい増加は達せられなかった。約500℃の温度で、ピッチは、コークスになり始め、かつ顕著に蒸発する。
【0061】
第一の実施例
煤体の試料を研磨した。煤体を層ごとに積み重ねるため、他の上方に置かれた層は、高い機械的力の存在で削摩の傾向を示し、その結果、20μm〜50μmの範囲での厚さを有する球状でない粒子、小片状粒子又はフレーク状粒子が得られた。500μm〜1000μmの外側の長さを有する粒径群を、他の加工の目的のために篩い分けによって分けた。最大構造幅(平均値)及び平均の厚さの割合は約20である。
【0062】
実質的に粒径5μm〜20μmを有する球状粒子からなるピッチ粉末を、中間層ピッチを研磨することによって、及び篩い分けすることによって製造した。
【0063】
ピッチ粉末及び煤体粒子を、1.6:1の体積比で均質に混合し、そして粒子混合物を、300℃の温度まで加熱した。粘性のピッチは、小さいSiO2煤体粒子を覆い、そして孔中に浸透する。ピッチ及び煤体粒子の体積の比は、ピッチが孔を充填するように選択され、その結果有意な自由な孔体積はそれ以上残らず、かつここでほとんど完全に消費される。
【0064】
30分の浸透時間後に、温度を、200℃まで上げ、それによってピッチを炭素化する。多孔質の複合材の塊を、黒鉛化できる炭素の層で、外側及び内側(すなわち孔の内壁)を満たした、球状でない多孔質SiO2粒子から形成する。
【0065】
続いてSiO2煤体粒子を、複合材の塊をフッ素酸浴中に導入する。SiO2粒子をエッチングした後に、多孔質炭素の前生成物を、実質的に本来のSiO2煤体粒子のネガコピーを示す構造で得られる。多数の比較的大きい孔チャネル(マクロ孔)が他の細かく裂けた表面構造によって拡大した逆テンプレートを、階層的孔構造によって区別する。
【0066】
逆テンプレートを、取り出し、乾燥し、そして破砕し、それによって炭素フレークに分解する。図2によるSEM図は、多数の干渉性の孔及び種々のサイズの空洞を有する炭素構造を示す。大きいサイズの空洞は、チャネルによって微細に裂けた表面によって拡大する。BET法に従った特定の内部表面積の測定は、約25m2/gの測定値をもたらす。
【0067】
第二の実施例
SiO2煤体粒子及び中間層ピッチの粒子を、実施例1に関して記載されたように製造した。ピッチ粉末及び煤体粒子を、0.4:1の体積比で互いに均質に混合し、そして粒子混合物を、300℃の温度まで加熱した。粘性のピッチは、小さいSiO2煤体粒子を覆い、そして孔中に浸透する。ピッチ及び煤体粒子の割合は、ピッチが完全に孔を充填するように選択される。
【0068】
実施例1に関して説明されているように浸透及び炭素化した後に、球状でない多孔質のSiO2煤体粒子が、黒炭化できる炭素の層で外側及び部分的に内側を満たしている、多孔質の複合材の塊を得た。そしてSiO2煤体粒子をフッ化水素酸中でのエッチングによって取り出し、本来の煤体粒子に由来し、かつ多数の比較的大きい孔チャネルが他の微細に裂けた表面構造によって拡大する薄い壁を有する微細な網として形成される構造の多孔質炭素の前生成物をもたらす。
【0069】
炭素生成物は、容易に炭素フレークに分解する。図3によるSEM画像はそれらの構造を示す。多数の干渉性孔及び種々のサイズの空洞は、微細に裂けた表面構造によってチャネルによって拡大する。BET法に従った特定の内部表面積の測定は、約50m2/gの測定値をもたらす。
【0070】
図4は、炭素化前の実施例1によるピッチを含浸した煤体粒子の塊の試料の処理中の熱重量分析(DIN 51005及びDIN 51006による)の結果を示す。その試料を、純粋なアルゴン中で加熱し、そしてここで質量損失を測定する。初期質量に対する質量損失ΔG(%)を、y軸にプロットし、そしてx軸に処理温度T(℃)をプロットする。
【0071】
そして、約300℃の温度から出発して、活性炭素中心の燃焼及び続く炭素化による最初の質量の減少を観察する。約600℃の温度までで、質量の減少は4.4%であり、そして純粋な炭素層の質量に相応する飽和状態で終了する。
【0072】
本発明の方法によって得られた炭素フレークは、階層的な構造を有する多孔質炭素からなる。該フレークは、特に充電式リチウム電池の電極層を製造するために、特に複合電極によく適している。
図1
図2
図3
図4