(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5797785
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】流体を制御する又は調量する弁装置
(51)【国際特許分類】
F16K 1/36 20060101AFI20151001BHJP
F02M 59/46 20060101ALI20151001BHJP
F02M 55/00 20060101ALI20151001BHJP
F02M 55/02 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
F16K1/36 J
F02M59/46 Y
F02M55/00 D
F02M55/02 350P
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-558325(P2013-558325)
(86)(22)【出願日】2012年1月9日
(65)【公表番号】特表2014-514507(P2014-514507A)
(43)【公表日】2014年6月19日
(86)【国際出願番号】EP2012050220
(87)【国際公開番号】WO2012123130
(87)【国際公開日】20120920
【審査請求日】2013年10月16日
(31)【優先権主張番号】102011005485.5
(32)【優先日】2011年3月14日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】レネ デポンテ
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー ゲルント
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス アイヒェンドルフ
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン ハラー
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク ブルナー
【審査官】
柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−146861(JP,A)
【文献】
特開2009−275540(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/073041(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/36
F16K 31/06
F02M 55/00
F02M 55/02
F02M 59/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を制御する又は調量する弁装置(22)であって、ケーシング(30)と、流路(38)と、該流路(38)内に配置された弁体(36)とを備え、該弁体は、前記弁装置(22)の閉鎖時にケーシング側のシール座部(32)に当接するシール区分(34)を有している、流体を制御する又は調量する弁装置(22)において、
前記シール区分(34)は、前記シール座部(32)に面した前記弁体(36)の表面(46)を少なくとも僅かに超えて突出しており、
前記弁体(36)は、ほぼ球冠状の軸方向切欠(39)を有しており、該切欠(39)に弁ニードル(37)が当接することができることを特徴とする、弁装置。
【請求項2】
前記弁体(36)と前記シール区分(34)とは一体的に形成されている、請求項1記載の弁装置。
【請求項3】
前記シール座部(32)は、シール領域(44)の周囲でほぼ偏平に形成されている、請求項1又は2記載の弁装置。
【請求項4】
前記流路(38)はほぼ回転対称的に形成されており、前記シール区分(34)は、環状のリングウェブ(49)の部分である、請求項1から3までのいずれか1項記載の弁装置。
【請求項5】
前記弁体(36)がシール座部(32)から強制的に持ち上げられている状態で流体が逆流する際に、前記弁体(36)を少なくとも部分的に、流体の流れから遮蔽することのできる流体的に作用するシールド(42)が前記流路(38)内に配置されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の弁装置。
【請求項6】
前記シール領域(44)の周囲に、前記流路(38)の制限壁(50)が、丸み部分(52)又は面取部を有している、請求項3記載の弁装置。
【請求項7】
弁体(36)を押出プレス加工によって製作し、該押出プレス加工によって押しのけられた材料を、少なくとも部分的に、環状のリングウェブ(49)を成形するために利用することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の弁装置(22)の弁体(36)を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
本発明は、請求項1の上位概念に記載の形式の弁装置並びに別の独立請求項に記載の方法に関する。
【0002】
弁装置、例えば内燃機関の燃料システムにおける流量制御弁は、市場により公知である。このような弁装置はしばしば、例えば開放位置で弁ニードルによって押圧することができる弁体を有している。弁装置の閉鎖状態で、弁体のシール区分は、ケーシング側のシール座部に当接する。弁体は例えばプレート状に形成されており、これにより弁体は比較的僅かな質量を有することができる。
【0003】
多くの流量制御弁の場合、弁装置は燃料高圧ポンプの吸込段階で開放されている。続くいわゆる逆流段階では、弁装置は例えば、ばね力によって負荷される弁ニードルによって所定の時間、ほぼ強制的に開放状態に保持される。逆流段階に続く、燃料高圧ポンプの圧送段階では、例えば電磁石が通電され、これにより弁ニードルは弁体から持ち上げられ、従って弁装置はしばしば弁ばねによって助成されて閉鎖される。
【0004】
このような分野の特許の開示は例えば、DE102008043237A1号明細書、DE102007034038A1号明細書、DE102007028960A1号明細書、DE102005022661A1号明細書、DE102004061798A1号明細書、DE2004016554A1号明細書、DE10124238A1号明細書、EP1701031A1号明細書、EP1471248A1号明細書、EP1296061A2号明細書にある。
【0005】
発明の開示
本発明の根底にある課題は、請求項1に記載の弁装置並びに別の独立請求項に記載の方法によって解決される。有利な別の構成は従属請求項に記載されている。本発明の重要な特徴はさらに、以下の記載並びに図面に記載されており、これらの特徴は単独でも種々様々な形式で組み合わせた形でも、再度これについて説明はしないが、本発明にとって重要なものとなり得る。
【0006】
本発明による弁装置は、シール区分及び/又はシール座部における製造誤差又は摩耗が、弁装置が開かれている場合の弁体に沿った流れの力を、全く変化させないか、又は問題にならない程度にしか変化させないという利点を有している。さらに、弁装置が開放された場合の弁体の持ち上がりは特に均一かつ規定されたように行うことができる。さらに本発明による弁装置は安価に製造可能である。
【0007】
本発明は、弁装置の流路内において弁体は、弁ニードル及び弁ばねの力以外に、液圧的な流れの力によっても負荷されるという考察を起点としている。特に、内燃機関若しくは自動車の燃料システムで使用されるような流量制御弁では、液圧的な流れの力は比較的大きく、従って、流量制御弁の機能にも作用する。
【0008】
本発明によれば、弁体に配置されたシール区分は、ケーシング固定の対応するシール座部に面した弁体の表面を少なくとも僅かに、例えば、軸方向に延びるリング状のカラーの形式で、超えて突出するように形成されている。これにより、シール区分及びシール座部によって形成されるシール領域の周囲における機械的誤差が、弁体に作用する流れの力を全く又は僅かにしか変化させないための前提が得られる。このことは、流量制御弁によって制御される燃料ポンプの圧送室から流体流ができるだけ妨げられることなく低圧領域へと戻されるように送られるのが望ましい、流量制御弁のいわゆる「逆流段階」で特に重要である。この場合、弁体は、有利には弁ニードルによってのみ、若しくは弁ニードルを負荷するばねによって開放位置に保持される。
【0009】
本発明の一構成では、弁体とシール区分とは一体的に形成されている。これにより、弁体若しくはシール区分は特に精密で耐久性があるように、かつ安価に製造することができる。
【0010】
さらに、シール座部は、シール領域の周囲でほぼ偏平に形成されている。従って、本発明による弁装置は、液圧的に作用する唯1つの「シール輪郭」しか、即ち、弁体のシール区分における「シール輪郭」しか有していない。さらに、シール座部を特に簡単かつ誤差を少なく形成することができる。
【0011】
本発明の別の構成では、弁装置の機能エレメントがほぼ回転対称的に形成されており、前記シール区分は、環状の半径方向リングウェブ若しくはカラーの部分である。このようなジオメトリは、流量制御弁の場合は特に流れ技術的に特に有利である。さらに、シール領域は、弁装置の長手方向軸線に関して場合によっては生じる弁体の半径方向のずれによってほぼ影響を受けない、かつ/又はシール区分の摩耗によってほぼ影響を受けない、ほぼ一定の面を有している。従って、弁装置の開放は均一かつ規定されたように行われ、流体媒体(燃料)の量を特に正確に規定することができる。
【0012】
前記弁体がシール座部から強制的に持ち上げられた状態で流体が逆流する際に、前記弁体を少なくとも部分的に、流体の流れから遮蔽することのできる流体的に作用するシールドが前記流路内に配置されているならば、本発明は特に有利である。これにより、シール座部から持ち上げられた弁体は、シール区分と共に、最も強い流れの領域から隔離されることになる。従って、弁体は、閉鎖方向での液圧的な流れの力によって比較的僅かにしか負荷されない。これにより、弁体又はシール区分の場合によっては生じる機械的誤差により、全く又は僅かにしか、このような流れの力を変化させないようにするための別の前提が得られる。このようにして弁装置は特に精密かつ長期的に安定して作動する。
【0013】
弁装置の別の構成では、シール領域の周囲で、流路の制限壁が丸み部分又は面取部を有している。弁装置が開放されている場合に、シール領域において半径方向内側に向かって若しくは半径方向外側に向かって流れる流体(燃料)は、前記丸み部分又は面取部によって特に僅かな流れ損失で軸方向へと若しくは軸方向から変向される。これにより弁装置の液圧効率をさらに改善することができる。
【0014】
補足的に、前記弁体は、ほぼ球冠状の軸方向の切欠を有しており、該切欠に弁ニードルが当接することができる。これにより、弁装置の作動時に、弁ニードルの当接個所で生じる弁体の凹状の変形は、いわば構造的に解消することができる。弁装置の精密性及び耐久性は従ってさらに向上する。
【0015】
さらに、弁体を押出プレス加工によって製造し、押出プレス加工によって、特に球冠状の切欠の領域から押しのけられる材料を、少なくとも部分的に、環状の半径方向リングウェブを成形するために利用する、弁装置の弁体を製造する方法が提案される。これにより弁体を特に安価に製造することができる。
【0016】
以下に、本発明の実施例を図面につき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】自動車の内燃機関の燃料システムを概略的に示した図である。
【
図2】
図1の弁装置の第1の構成を開放状態で概略的に示した断面図である。
【
図3】弁装置の第2の構成を閉鎖状態で概略的に示した断面図である。
【
図4】弁装置の第3の構成を閉鎖状態で概略的に示した断面図である。
【0018】
異なる構成であっても機能的に等価のエレメント及びサイズに関しては全図において同じ符号を使用している。
【0019】
図1には、内燃機関の燃料システム10が極めて簡略化されて示されている。燃料タンク12からは燃料が、吸込管路14を介して、フィードポンプ16によって、低圧管路18を介して、そして、電磁石20によって操作可能な弁装置22、この場合、流量制御弁を介して、高圧ポンプ24(ここではこれ以上説明しない)に供給される。高圧ポンプ24は下流側で高圧管路26を介して高圧アキュムレータ28に接続されている。例えば高圧ポンプ24の流出弁のようなその他の部材は
図1には示されていない。弁装置22若しくは流量制御弁は高圧ポンプ24と一緒に構成ユニットとして形成することができる。例えば、流量制御弁は、高圧ポンプ24の流入弁であって良い。さらに、流量制御弁は、電磁石20とは異なる操作装置、例えばピエゾアクチュエータ又は液圧的な操作装置を有していても良い。
【0020】
燃料システム10の作動時には、フィードポンプ16が燃料を燃料タンク12から低圧管路18へと圧送する。この場合、流量制御弁は、高圧ポンプ24の圧送室に供給される燃料量を規定している。
【0021】
図2には、
図1の弁装置22の第1の構成が概略的な断面図で示されている。弁装置22の図示された部材は、長手方向軸線29を中心としてほぼ回転対称的に構成されていて、ほぼ偏平に形成されたシール座部32を備えたケーシング30を有しており、シール座部32には、弁装置22の閉鎖状態で、ほぼプレート状の弁体36のシール区分34が当接することができる。しかしながら
図2では弁装置22は開放されていて、即ち、弁体36はシール座部32から軸方向で持ち上げられている。弁ニードル37は、弁体36を図面の右の方向に押圧している。この場合、弁ニードル37の端部区分は、弁体36の球冠状の切欠39内に支持されている。弁装置22内には流路38が形成されていて、この流路38を通って図示の開放位置で、流体、この場合、燃料が、矢印40に沿って流れる。流体的に作用するシールド42は、流路38内で弁体36の上流に配置されていて、これによりシールド42は、流体が逆流する際にシール座部32から強制的に持ち上げられている弁体36を少なくとも部分的に、流体の流れから遮蔽することができる。
【0022】
シール座部32とシール区分34とは、面状に互いに平行に構成されていて、一緒にシール領域44を形成している。シール区分34は、シール座部32に面した弁体36の表面46を所定の量48だけ超えている。従って、弁体36は半径方向外側の区分で、環状の半径方向リングウェブ49若しくは軸方向に延びるカラーを有している。弁体36若しくはリングウェブ49とシールド42との間には半径方向のギャップ(符号なし)が形成されているので、弁体36はシールド42によって妨げられることなく軸方向で運動することができる。図面で見て弁体36の右側に配置される、弁体36をガイドする弁ばねは、
図2には示されていない。
【0023】
矢印40の方向で、燃料は、
図2に示された弁装置22の逆流段階において、ほぼ右から左に(即ち、高圧ポンプ24から低圧管路18に戻る方向で)流れることがわかる。この場合、流れはまずほぼ水平方向で延び、その後、弁体36若しくはシールド42の手前で半径方向内側に向かって変向される。次いで流れは、図面の左下方の領域で再び軸方向に変向される。
【0024】
さらに、弁体36とシール区分34とは、流体的に作用するシールド42に基づき、極めて強い流れの領域から隔離されていることがわかる。相応に、特にシール区分34の周りにおける弁体36の機械的な誤差は、弁体36に作用する流れの力に影響しない又は比較的僅かにしか影響しない。量48の誤差も比較的僅かである。
【0025】
シール区分34は全体として環状の輪郭を有している。さらに、長手方向軸線29に関して生じ得る半径方向の弁体36の遊びは、弁装置22の閉鎖状態でシール座部32とシール区分34との間に形成される接触面を変化させないことが明らかである。従って、その後行われるシール座部32からの弁体36の持ち上がりは、生じ得る半径方向の遊びに関係なく均一かつ正確に行われる。しかしながら弁装置22のこのような状態は
図2には示されていない。
【0026】
図3には、弁装置22の
図2と類似の別の構成が示されている。この場合、弁装置22は閉鎖状態にあり、即ち、弁体36のシール区分34は、ケーシングに不動に設けられているシール座部32に軸方向で当接している。流路38の制限壁50は図面ではシール領域44の下側で丸み部分52を有している。
【0027】
丸み部分52は弁装置22の開放時に、流路38を流れる液圧流が特に損失少なく、半径方向から軸方向へ、又は軸方向から半径方向へ変向できるように作用している。選択的に丸み部分52を、面取部又は前置された縁部として形成することもできる。しかしこれは
図3には示されていない。
【0028】
本発明では、弁体36は押出プレス加工によって製造されていて、押出プレス加工によって、特に球冠状の切欠39の領域から押しのけられた材料は、部分的に、リングウェブ49を成形するために利用されるようになっている。
【0029】
図4には、弁装置22の
図3と類似の別の構成が示されている。
図3とは異なり、
図4の構成は、丸み部分52の個所で前置された縁部54を有している。