特許第5797787号(P5797787)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5797787
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】人間の把持補助デバイスのソフト製品
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/70 20060101AFI20151001BHJP
   A41D 19/015 20060101ALI20151001BHJP
   A61F 2/54 20060101ALI20151001BHJP
   B25J 11/00 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   A61F2/70
   A41D19/015 610Z
   A61F2/54
   B25J11/00 Z
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-2109(P2014-2109)
(22)【出願日】2014年1月9日
(62)【分割の表示】特願2012-265162(P2012-265162)の分割
【原出願日】2012年12月4日
(65)【公開番号】特開2014-64953(P2014-64953A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2014年1月9日
(31)【優先権主張番号】13/408,668
(32)【優先日】2012年2月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511095986
【氏名又は名称】ジーエム・グローバル・テクノロジー・オペレーションズ・エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】510149563
【氏名又は名称】ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ・アズ・リプレゼンテッド・バイ・ジ・アドミニストレーター・オブ・ザ・ナショナル・エアロノーティクス・アンド・スペース・アドミニストレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(72)【発明者】
【氏名】クリス・エイ・イールケ
(72)【発明者】
【氏名】ドナルド・アール・デーヴィス
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス・マーティン・リン
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・ジェイ・バージェリン
(72)【発明者】
【氏名】リンドン・ビー・ジェイ・ブリッジウォーター
(72)【発明者】
【氏名】ヘザー・ビビー
(72)【発明者】
【氏名】ジュディ・シュレーダー
(72)【発明者】
【氏名】クレイグ・アークキラ
【審査官】 川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−067609(JP,A)
【文献】 特表2010−502266(JP,A)
【文献】 特開2009−022577(JP,A)
【文献】 特開昭56−156155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/70
A41D 19/015
A61F 2/54
B25J 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持補助システムであって、
前記システムのオペレータの手に装着可能な手袋であって、
近位部分、中央部分、及び遠位部分を各々が有する複数の手指と、
親指と、
前記手袋に対して配置された少なくとも一つの力センサであって、前記手袋を装着したオペレータによって対象に加えられる把持力を測定するように構成される少なくとも一つの力センサと、
複数の指骨リングであって、前記複数の指骨リングの異なる対が前記複数の手指のうちの対応する手指の前記近位部分および前記中央部分に対して配置される複数の指骨リングと、
各々が弓形の溝を画定する複数の弓形のサドルであって、前記複数の弓形のサドルの個々の一つが前記複数の手指のそれぞれの前記中央部分および前記遠位部分のうちの少なくとも一つに対して配置される複数のサドルと、
第1の端部及び第2の端部をそれぞれが有する複数の可撓性腱であって、前記可撓性腱の各々が前記指骨リングの少なくとも一つを通過し、前記第1の端部が前記弓形のサドルの対応する一つに接続され、前記対応する弓形のサドルの前記弓形の溝内に受け入れられて前記弓形のサドルの周囲にループを形成する複数の可撓性腱と、
前記複数の可撓性腱のうちの対応する一つをそれぞれが含む複数のコンジットと、
前記手袋に取り付けられたコンジットアンカであって、前記コンジットアンカが第1の組の開口を介して前記コンジットを受け、かつ、第2の組の開口を介して前記可撓性腱を前記コンジットアンカに貫通させるコンジットアンカと、
を有する手袋と、
前記オペレータの前腕に装着可能な可撓性スリーブであって、
前記可撓性腱の前記第2の端部に接続される少なくとも一つの電動機付アクチュエータアセンブリと、
前記少なくとも一つの力センサと連通しているコントローラであって、前記コントローラは、ユーザインタフェースを含み、前記少なくとも一つの力センサからの前記測定された把持力に応答して張力を計算し、かつ、前記少なくとも一つの電動機付アクチュエータアセンブリを介して前記複数の可撓性腱に対する前記張力の印加を指令するように構成されるコントローラと、
を含む可撓性スリーブと
を備える把持補助システム。
【請求項2】
腱コンセントレータをさらに備え、前記少なくとも一つの電動機付アクチュエータアセンブリが前記腱コンセントレータを介して前記可撓性腱のそれぞれに接続される単一の電動機付アクチュエータアセンブリである、
請求項1に記載の把持補助システム。
【請求項3】
前記少なくとも一つの力センサは複数の力センサを含み、前記複数の力センサの個々の一つが前記手袋の前記手指、前記親指、及び手掌のそれぞれに対して配置される、
請求項1に記載の把持補助システム。
【請求項4】
前記少なくとも一つの電動機付アクチュエータアセンブリが、電動機付ボールねじデバイスとして構成される、請求項1に記載の把持補助システム。
【請求項5】
前記複数のコンジットの対応する一つに対して、前記対応するコンジットと前記コンジットアンカの内表面との間の界面にそれぞれが配置される複数の腱張力センサをさらに備え、前記腱張力センサのそれぞれが前記腱の個々の一つの実際の張力を測定し、且つ前記測定された実際の張力を前記コントローラに通信するように構成される、
請求項1に記載の把持補助システム。
【請求項6】
前記コントローラが、遠隔デバイスと通信するように動作可能な無線インターフェースを含む、
請求項1に記載の把持補助システム。
【請求項7】
前記コンジットアンカが、プラスチック又は金属から形成された板である、
請求項1に記載の把持補助システム。
【請求項8】
前記複数のコンジットのそれぞれが、前記コンジットの圧縮方向に剛直であり、且つ前記コンジットの他の方向に可撓性である、
請求項1に記載の把持補助システム。
【請求項9】
前記複数のコンジットのそれぞれが、鋼コイルである、
請求項8に記載の把持補助システム。
【請求項10】
前記可撓性腱は、編組ポリマである、
請求項1に記載の把持補助システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦支援研究または開発に関する供述
[0001]本発明は、NASA Space Act Agreement number
SAA−AT−07−003の下に、政府の支援によってなされたものである。本明細書において説明されている本発明は、米国政府(つまり非商用)の目的のために、それに対し、またはそのために特許権使用料を支払うことなく米国政府によってまたは米国政府のために製造し、かつ、使用することができる。
【0002】
[0002]本開示は、人間の把持補助デバイスのソフト製品/実装に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]人間工学は、作業環境で使用される設備の様々な一部分、例えばキーボード、ワークステーション、トルクレンチ、制御入力デバイス、等々と人間とのやり取りを理解し改善することを最終的に探求する、発展しつつある科学的分野である。物理的作業環境のあらゆる側面は、そこで作業している人間のオペレータに関わるため、優れた人間工学設計は、これらの物理的作業環境態様の側面を最適化することを求める。しかしながら、特定の作業タスクは、最適な人間工学の作業現場構成によってでも小さくすることができない態様においてオペレータにストレスを与えることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[0004]例えば対象の反復把持または持続把持を必要とする手作業は、オペレータの手、手指および前腕にストレスを与えることがある。その結果、時間の経過とともにオペレータの握力および生産性が次第に低下することになる。また、握力は、物理的な身長の差、傷害および/または筋肉疲労のために、オペレータ間で大きく異なることがある。オペレータの握力の可変的な性質は、特定の把持関連作業タスクの実施を比較的非効率なものにしてしまうことがある。リストストラップおよびブレースなどの従来のデバイスは、オペレータにかかるストレスの一部を軽減するために存在しているが、このようなデバイスは、総合的な握力を改善するためには場合によっては最適とはいえない状態が続いている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0005]本明細書においては、人間のオペレータが握力を増強させるためおよび/またはリハビリテーションのために使用することができる把持補助デバイスが開示される。このようなデバイスの快適性および機能性は、本明細書において説明されている実装およびソフト製品を使用して改善することができる。本発明によるデバイスには、オペレータの手に装着される手袋、およびオペレータの前腕に装着されるスリーブが含まれている。デバイスは、対応するアクチュエータアセンブリによって、計算された張力で選択的に張力が加えられる1つまたは複数の可撓性腱を含むことができる。アクチュエータアセンブリは、手袋、ひいてはその手袋に覆われているオペレータの手の1つまたは複数の指を閉じるのを補助するために必要に応じて1つまたは複数の腱を所望の把持状態に引っ張る。一代替実施形態では、把持状態を解放する際にオペレータが手を開くのを補助するように、つまり把持の解放を補助するように1つまたは複数の腱を経路化することができる。手袋に配置された力センサは、スリーブに含まれているコントローラに力フィードバック信号を提供する。コントローラは計算された張力を指令し、それにより複数の腱のうちの1つまたは複数を張力が加えられた状態にする。
【0006】
[0006]詳細には、一実施形態では、把持補助デバイスには、指すなわち手指または親指
を有する手袋、および手袋に対して配置された力センサが含まれている。力センサは、手袋を装着したオペレータによって対象に加えられる把持力を測定する。手袋には、指に対して配置された調整可能指骨リングおよびサドル、一方の端部がサドルに接続された可撓性腱、および腱が入っているコンジットが含まれている。また、手袋には、手袋の上または手袋の中に配置されたコンジットアンカが含まれている。コンジットアンカは、コンジットを受け、腱に張力が加えられた場合の手指に向かうコンジットの望ましくない軸方向の運動を防止する。
【0007】
[0007]また、この実施形態の把持補助デバイスには可撓性スリーブが含まれている。スリーブは、アクチュエータアセンブリおよびコントローラが入っているポケットを有している。アクチュエータアセンブリは、腱のもう一方の端部に接続されている。力センサおよびアクチュエータアセンブリと連通しているコントローラは、測定された把持力に応答して腱に加える張力を計算し、次に計算した張力をアクチュエータアセンブリから指令する。
【0008】
[0008]他の実施形態では、腱を介して親指および/または複数の手指を移動させることができる。力センサは、手袋の手掌、または手指/親指のうちの任意の指に対して配置することも可能である。手袋とスリーブの間を延在しているにせよ、あるいは手掌の近傍の手袋の周りを取り巻いているにせよ、1つまたは複数の非弾性または非伸縮性ストラップを介してコンジットアンカの補強を提供することができる。サドルは弓形にすることができ、また、例えば腱をサドルの周りにループにし、かつ、腱を溝の中に着座させることなどによって腱を受ける弓形の溝を画定することも可能である。腱は、手袋の指が挿入されるループを形成するために、サドルに隣接した腱自身に組継ぎすることができる。任意選択の張力センサをコンジットに配置することができ、例えばコンジットに隣接するコンジットアンカの中に配置することができ、また、例えばリハビリテーションモードでコンジットに作用する実際の張力を測定するように構成することができる。
【0009】
[0009]本発明の上記特徴および利点ならびに他の特徴および利点は、添付の図面に関連して行う、本発明を実施するための最良モードについての以下の詳細な説明から容易に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】[0010]手袋、スリーブおよびコントローラを有する把持補助デバイスの一例を示す略図である。
図2】[0011]図1に示されている把持補助デバイス例を示す略上面図である。
図3】[0012]図1および2に示されている把持補助デバイス例を示す略底面図である。
図4】[0013]図2および3の手袋と共に使用することができるコンジットアンカの一例を示す略平面図である。
図5】[0014]図2および3の手袋と共に使用することができるサドルの一例を示す略斜視図である。
図6】[0015]中に腱が着座している図5のサドル例を示す略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0016]同様の参照番号が同じ構成要素または同様の構成要素を指す図面を参照すると、把持補助システム10の一例が図1に示されている。把持補助デバイス10には手袋12および可撓性スリーブ18が含まれている。オペレータが装着すると、把持補助システム10はオペレータが対象を把持するのを補助する。把持補助デバイス10には、図2および図3を参照して本明細書において説明されている様々なソフト製品、つまり把持補助デバイス10の装着性、快適性および性能を改善する天然材料または合成材料が含まれてい
る。
【0012】
[0017]図1に示されている把持補助デバイス10の電気機械動作コンポーネントつまりハード製品は、一組のアクチュエータ、例えば一可能実施形態では腱駆動システム(TDS)16を含むことができる。TDS16は、スリーブ18の中に完全に囲むことも、または少なくとも部分的にスリーブ18の中に入れることも可能である。TDS16は、増大張力(矢印22)が加えられる1つまたは複数の可撓性腱20、例えば編組ポリマを介して、手袋12にリンクさせることができる。張力(矢印22)は、手袋12例えば手袋12の手指15および/または親指14に配置され、または図3に示されているように手袋12の手掌58に配置された、1つまたは複数の力センサ28からの力フィードバック信号24に応答して、コントローラ38によって計算される。計算された張力(矢印22)は、次に、TDS16によって一部またはすべての腱20に加えられる。
【0013】
[0018]手袋12は、1つまたは複数の指、例えば親指14および1つまたは複数の手指15を含むことができる。図に示されているように4本の完全な手指/1本の親指の手袋を使用することができ、または他の実施形態ではより少ない手指15を有し、または親指14がない手袋12を想定することも可能である。意図された把持状態は、手袋12の特定のデザインを決定することになる。例えばオペレータが小さい対象をつまむ把持状態には、場合によっては親指14と1本の手指15、例えば人差し指のみを有する手袋12が必要であり、一方、対象を手全体で把持する場合は、親指14を備えた4本の手指の手袋が場合によっては必要になる可能性がある。
【0014】
[0019]オペレータは、従来の手袋の方法で手袋12を装着することができる。図1の指骨リング26は概略的に示されている。図2および3に関連して以下で説明するように、これらの指骨リング26のうちのいくつかは、可撓性で、かつ、調整可能にすることができる。他の指骨リング26は、図5および6を参照して以下で説明するように非調整可能サドル126を形成することができる。
【0015】
[0020]図1の手袋12がオペレータの手に装着されると、指骨リング26の各々は、手袋12の親指14および手指15の個々の指、ひいてはオペレータ自身の親指および手指に少なくとも部分的に外接することができ、あるいは実施形態に応じて、親指14/手指15を画定している素材部17の中にリング26を配置することも可能である。したがって手袋12の指骨リング26を通して経路化された腱20の一部またはすべてに加えられるあらゆる張力(矢印22)は、指骨リング26に対する反力を介してオペレータの手指/親指に間接的に作用することができる。
【0016】
[0021]一般に、オペレータの把持によって保持された対象にオペレータによって加えられる閾値把持力によって、その対象と接触している1つまたは複数の力センサ28のうちのいずれかが起動する。指骨リング26は、指骨リング26を通じている腱20に接続されるか、または腱20と接触し、したがってこれらの指骨リング26のうちの少なくとも一部は、腱20のためのガイドとして作用する。指骨リング26は、遠位(矢印D)、つまり手指15または親指14の遠位端に配置することも、中間(矢印M)、つまり手指15または親指14の中間関節に配置することも、あるいは近位(矢印P)、つまり手指15または親指14の近位関節に配置することも可能である。腱20の各々は、例えば図1に示す遠位(矢印D)指骨リング26、または図2および図3に示す中央指骨リング26のような指骨リング26で終端している。腱20が終端している部分では、サドル126(図2、5および6参照)を使用することができ、それにより以下で説明するように腱20をループにして腱20自体の組継ぎまたは他の接続のための位置に戻すことも可能である。
【0017】
[0022]図1のTDS16は、複数の腱20のうちの対応する腱20の一方の端部に接続されている。個々の腱20はコンジット30の中に配置されており、その中を自由に動くことができる。コンジット30は、圧縮方向に実質的に剛直であり、また、他の方向に可撓性である例えばステンレス鋼コイルであってもよい。一実施形態では、複数の腱20の各々は、編組ポリマとして構成することができ、この編組ポリマは、個々の腱の摩耗寿命を長くする適切なフッ化炭化水素を含むことができる。しかしながら、本発明の意図されている範囲を逸脱することなく、他の材料を使用することも可能である。
【0018】
[0023]腱20は、図1に概略的に示されているように任意選択の腱コンセントレータ21を貫通することができる。腱コンセントレータ21は、オペレータの手掌の付け根または手首領域の上に配置することができ、またはその近傍に配置することができる。仮想線で示されているように、複数のアクチュエータアセンブリ32、例えば腱20が取り付けられる電動機付ボールねじデバイスまたは線形アクチュエータは、TDS16の中にアレイ状に構成することができる。個々のアクチュエータアセンブリ32は、対応する腱20に対して作用している。1つのTDS16のみが使用される場合、腱コンセントレータ21を使用して、親指14および個々の手指15から出ている腱20を単一のアクチュエータ腱、つまり図1に実線で示されている腱20に接続することができる。この場合、腱コンセントレータ21は、単一の腱20につながる複数の腱20のための領域を提供する。
【0019】
[0024]さらに図1を参照すると、特定の実施形態によるアクチュエータアセンブリ32は、一実施形態によれば、サーボモータ34および駆動アセンブリ36、例えばボールおよびねじタイプのデバイスを含むことができる。他の実施形態、例えば線形アクチュエータ、電動機付スプール、等々も可能である。TDS16の動作制御はコントローラ38を介して提供される。コントローラ38は、必要なすべての電力をエネルギー源40から引き出すことができる。エネルギー源40は、図2に示されている、また、以下で説明する統合電子機器パッケージ60の一部であっても、あるいはスリーブ18の外部の、例えば任意に選択されるベルトパック39に装着される、より大きいユニットであってもよい。ベルトパック39を使用することにより、より大きいエネルギー源40を使用することができる。エネルギー源40は、電池パック、例えば1つまたは複数のリチウムイオン電池、または任意の他の比較的軽い、つまり低質量エネルギー蓄積デバイスとして構成することができる。
【0020】
[0025]ユーザインタフェース42は、コントローラ38と信号通信でスリーブ18に接続することができ、またはコントローラ38と一体にすることができる。ユーザインタフェース42は、所望の動作モードの選択を容易にするために使用することができ、したがってコントローラ38とのインタフェースをオペレータに許容するオペレータアクセス可能制御パネル、タッチパッドまたはタッチスクリーンとして構成することができる。図1のコントローラ38は、一組のフィードバック信号(矢印24)を処理している。コンピュータ実行可能コード100は、コントローラ38の有形で、非一時的なメモリ43に記録し、かつ、これにより実行することができ、フィードバック信号(矢印24)を介して中継される値およびユーザが選択した動作モードに応答して、最適な増大張力(矢印22)を計算し、かつ、選択し、さらに、図3を参照して以下で説明する他の制御アクションを提供することができる。次に、把持補助デバイス10を装着したオペレータの把持を補助するために、駆動アセンブリ36を使用して一部またはすべての腱20にこの増大張力(矢印22)が加えられる。
【0021】
[0026]図1のコントローラ38は、1つまたは複数の集積回路を含むことができ、この集積回路は、電圧調整器、コンデンサ、ドライバ、タイミング水晶、通信ポート、等々などの様々な電子デバイスによって改良することができる。コントローラ38は、限られた電力および限られたリードオンリメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)
および/または電気的プログラム可能リードオンリメモリ(EPROM)、および任意の必要な入力/出力(I/O)回路デバイス、ならびに信号調整およびバッファ電子機器を使用したマイクロコントローラであってもよい。中央処理装置は、必要な処理能力を提供するために使用される。コントローラ38の中に常駐している、またはコントローラ38が容易にアクセスすることができる個々の制御アルゴリズムは、例えばROMに記憶し、かつ、1つまたは複数の異なる制御レベルで自動的に実行することができ、それにより個々の制御機能を提供することができる。
【0022】
[0027]図2および3を参照すると、図1の把持補助デバイス10の上部表面のソフト製品部分(図2)および下部表面のソフト製品部分(図3)がさらに詳細に示されている。以下で説明されている構造エレメントは、図1のコントローラ38、TDS16および1つまたは複数の力センサ28、つまり把持補助デバイス10のハード製品すなわち電気機械動作コンポーネントを快適な方法で実装し、かつ、支持するように構成されている。把持補助デバイス10は、長い時間にわたってオペレータが装着することができるため、熱および湿気の処理は設計の重要な問題であり、また、軽量であること、感触が快適であること、および装着し易いことも設計の重要な問題である。
【0023】
[0028]使用中、人間のオペレータに直接接触する把持補助10のすべての部分は、伸縮性のある、あるいは多孔性のLycra(登録商標)などの適切な合成通気性繊維で構築することができる。図2を参照すると、このような表面は、手袋12の背面51およびスリーブ18の内部表面53を含むことができる。また、スリーブ18は、可能実施形態では少なくとも部分的にネオプレン(登録商標)またはナイロンメッシュで構築することができるポケット55を含むことも可能である。
【0024】
[0029]ポケット55には、コントローラ38、ユーザインタフェース42および関連する統合電子工学パッケージ60、例えば把持補助デバイス10に安全で、かつ、信頼性の高い電力を供給するための、配線、電力調整コンポーネントおよびドライバを入れることができる。タブレットコンピュータ、人間機械インタフェースまたは他の適切な入力デバイスなどの遠隔ユーザインタフェース42が使用される場合、図2に示されているユーザインタフェース42は、遠隔デバイスを介して選択される特定の制御オプションを示す表示画面を含むことができる。
【0025】
[0030]コントローラ38、ユーザインタフェース42および統合電子機器パッケージ60は、ポケット55を介して所定の位置に縫い付けるか、あるいは固着することができる。コントローラ38の一部として無線接続が含まれている場合、コントローラ38のための無線インタフェース50は、図に示されているようにスリーブ18の頂部から延在させることができる。無線インタフェース50を使用して、デバイス10の使用および性能を追跡するためのデータベース管理システムなどの遠隔デバイスと通信することができる。バックル66を使用してスリーブ18をオペレータの前腕に固着することができ、したがって複数の異なるオペレータに装着するために、必要に応じて把持補助デバイス10を調整することができる。
【0026】
[0031]また、図2の手袋12は、調整可能なリストストラップ52、例えばナイロンおよびVelcro(登録商標)または他の適切な材料を含むことも可能である。リストストラップ52は2つの主要な機能を有している。第1の機能は、手袋12をオペレータの手に固着することである。リストストラップ52の第2の機能は、図3のコンジットアンカ62を補強し、かつ、図1図3および図4に示されている、以下で説明するコンジット30の望ましくない軸方向の運動をさらに抑制することである。
【0027】
[0032] 同様に図2には指骨リング26が示されている。これらの指骨リング26のう
ちのいくつかは調整可能にすることができる。調整可能な任意の指骨リング26、例えば図2および図3に示されている実施形態例では近位(矢印P)指骨リング26および中間(矢印M)指骨リング26は、ナイロンまたは他の適切な丈夫で、かつ、可撓性の材料で構築することができる。指骨リング26は、手袋12内のオペレータの手指/親指の近傍に経路化された腱20を保持し、かつ、張力(図1の矢印22)を手袋12の近位(矢印P)指骨および中央(矢印M)指骨の背面に伝達する。指骨リング26の調整は、オペレータの手指/親指に対する装着具合をオペレータが変更することができるよう、図に示されているようにタブおよびループまたはベルトバックルの様な構成などの調整特徴57を介して提供することができる。
【0028】
[0033]中央指骨(矢印M)を使用して、サドル126を介して腱20を固着することができ、このサドル126の上に複数の腱20のうちの1つの端部がサドル126に対して接続され、あるいは経路化される。以下、図5および6を参照してサドル126の一例を説明する。他の実施形態では遠位指骨(図1の矢印D)を使用して腱20を終端させることも可能である。
【0029】
[0034]所与の腱20を終端させるために使用されるサドル126は、図5に示されているように完全なリングを形成することができ、あるいは図6に示されているように不完全な円形または弓形であってもよい。サドル126は、適切な剛直材料、例えばアルミニウムまたは硬質プラスチックから構築することができる。他の実施形態では、サドル126は、強度を犠牲にすることなく快適性を増すことができるエラストマーまたはアルミニウムとエラストマーの組合せなどのより軟らかい材料で構築することができる。サドル126は、手袋12の外側の、皮または任意の他の適切な材料のリングまたはパッドの上に着座させることができる。
【0030】
[0035]図3を参照すると、下方即ち手掌側から見た把持補助デバイス10の図が示されている。手袋12の手掌58は、皮またはスエードなどの適度に丈夫で、かつ、耐摩耗性の材料から形成することができる。把持補助が使用される場合、手袋12、例えば手掌58の内側に整形硬質プラスチックまたは金属板などのコンジットアンカ62を縫い付けることができ、あるいは接続することができる。把持を解放する場合にのみ補助が提供される場合、手袋12の背面にアンカ62を配置することができる。コンジットアンカ62は、腱20(図1参照)に張力が加えられた場合に、その軸に対して軸方向/圧縮方向に剛直でなければならないコンジット30が、コンジットアンカ62を介して、手指15の端部に向かって押すのを防止するだけの十分な強度を有していなければならない。言い換えると、コンジットアンカ62は、コンジット30の軸方向には十分に剛直にすることができるが、他の方向には必ずしも剛直である必要はない。例えばコンジットアンカ62をオペレータの手掌のカッピングの方向に若干湾曲させることにより、オペレータの快適性を改善し、かつ、所与の把持状態における実行に対してより自然な感覚をオペレータに与えることができる。
【0031】
[0036]一可能実施形態では、オペレータの手掌の折目、つまり近位(P)指骨の関節が曲がる部分までコンジット30を延在させることができる。このような実施形態のコンジットアンカ62は、図3の実施形態例に示されている位置と同じ位置に配置したほうがよい。コンジットアンカ62を手袋12に対して所定の位置で固着するために、実質的に非弾性つまり非伸縮性材料、例えばナイロンまたはカンバスで構築されるストラップ70を使用することができる。ストラップ70は、スリーブ18からコンジットアンカ62まで延在させることができ、また、コンジット30に接続することができる。調整可能なリストストラップ52は、調整可能なリストストラップ52が張られるとストラップ70に外接してストラップ70を補強することができる。
【0032】
[0037]ストラップ70は、腱20に張力が加えられた場合に、手指15へ向かうコンジット30の運動をストラップ70が阻止するよう、手袋12の素材部17(図1参照)に縫い綴ることができ、リベットで固定することができ、あるいは堅固に固着することができる。また、コンジットアンカ62は、手袋12の内側で手袋12の周りを少なくとも部分的に取り巻いている他のストラップ75を使用して、手袋に対して横方向に固着することも可能である。この追加非ストラップ75は、ストラップ70と同様、非弾性であってもよく、また、縫合、リベットまたは他の適切な手段を介して手袋12に確実に取り付けることができる。
【0033】
[0038]図3のスリーブ18は、1つまたは複数の前腕ストラップ64を含むことができる。この前腕ストラップ64は、張ることができ、また、バックル66を介して、および/またはVelcroクロージャを使用してバックル締めすることができ、それによりスリーブ18をオペレータの前腕に固着することができる。同様に、手袋12も、図2を参照して上で言及したリストストラップ52を含むことができる。このリストストラップ52を張ることによってストラップ70をオペレータの手首に対して堅固に固着することができる。この方法によれば、コンジット30の運動に応答したコンジットアンカ62の移動が防止される。
【0034】
[0039]また、スリーブ18は保護フラップ68を含むことも可能である。スリーブ18のアクチュエータアセンブリ32を保護するために、保護フラップ68を矢印65の方向にアクチュエータアセンブリ32の上に折り畳み、かつ、ファスナ59、例えばスナップ、Velcro(登録商標)、ジッパー、等々を介して固着することができる。コンジット30の運動に応答したアクチュエータアセンブリ32の運動は、アクチュエータアセンブリ32を矢印92の方向に手袋12から遠ざけて移動させることになる。この運動を制限するために、フラップ68の下方のスリーブ18の中に補強されたポケット78を提供することができる。アクチュエータアセンブリ32は、補強されたポケット78内に着座させることができる。したがって補強されたポケット78によってアクチュエータアセンブリ32の矢印92の方向のあらゆる運動を制限することができる。
【0035】
[0040]1つまたは複数の力センサ28は、図に示されているように手袋12の手掌側に配置することができ、例えば図3に示されているように親指14の遠位端、中間部分または手掌58に配置することができ、あるいは別法として複数の手指15のうちの1つまたは複数の指に配置することも可能である。したがって手袋12を装着したオペレータの手の中に、1つまたは複数の力センサ28に加えられた十分な圧力で対象が把持されると、コントローラ38は、図1を参照して上で説明したように手袋12を作動させることができる。
【0036】
[0041]図4を参照すると、4つのコンジット30のためのコンジットアンカ62の実施形態の一例が示されている。意図されている本発明の範囲を逸脱することなく、より少ないコンジット30を使用することも可能である。コンジットアンカ62は、それぞれ第1の開口74および第2の開口76を有する穴すなわち貫通通路を画定することができる。第1の開口74は、コンジット30に衝突することなく装着を許容するためには、コンジット30の外径よりわずかに大きくしたほうがよい。同様に、第2の開口76も腱20の外径よりわずかに大きい。アンカ62は、例えば第1の開口74を画定している穴がアンカ62の一方の端部から形成され、かつ、第2の開口76を画定している穴がアンカ62のもう一方の端部から第1の穴と同軸で形成された固体プラスチック片であってもよい。
【0037】
[0042]上で言及したように圧縮方向または軸方向に剛直であるコンジット30は、コンジットアンカ62の内部表面72と接触し、それにより表面72で安定している。したがって図3のストラップ70、75に関連して上で説明したようにコンジットアンカ62を
適切に抑制することにより、コンジット30の望ましくない運動をコンジットアンカ62で阻止することができる。
【0038】
[0043]特定の実施形態では、図1〜3の手袋12は、オペレータが傷害を抱えており、そのためにオペレータの握力が低下している場合などのリハビリテーションのために使用することができる。上で説明したように握力の増強を提供することができる。しかしながら、場合によっては治療中のオペレータの握力を監視し、かつ、握力の変化を追跡することが望ましいことがある。コンジットアンカ62の構造は、それができるようになっている。
【0039】
[0044]当分野で知られているタイプの腱張力センサ90をコンジット30に対して、コンジット30と表面72の間の界面に配置することができる。センサ90は、図4に概略的に示されており、コンジット30と外接する構造を含むことができる。センサ90は、例えば、腱20に張力が加えられると必ずセンサ90に作用するコンジット圧縮力を測定するひずみゲージを含むことができる。センサ90は、次に、例えば図2および3に示されている無線インタフェース50を介した無線によって、測定したひずみをコントローラ38に通信することができる。
【0040】
[0045]センサ90によって取得された測定値は、コントローラ38によって実際の張力測定値に変換することができる。引き続いて、アクチュエータアセンブリ32を介した増強がある場合、または増強がない場合で、オペレータの握力の変化の経過を評価するために、コントローラ38によってこれらの張力測定値を記録し、かつ、追跡することができる。オペレータの手指15および親指14の各々に対するオペレータの握力の進歩を正確に追跡するために、コンジット30毎に異なるセンサ90を使用することができる。
【0041】
[0046]実例による一例として、傷害を抱えているオペレータは、図2および3の把持補助デバイス10を装着している間、対象を把持することができる。最初は、1つまたは複数の力センサ28を起動していない状態にしてもよい。図2および3の構成は把持補助を可能にしている。しかしながら、アクチュエータアセンブリ32/腱20の位置を単純に逆にすることにより、把持自体を補助するのではなく、把持からの解放を補助することができることは当業者には理解されよう。つまり、把持を解放するために、把持を形成するための手指15の手掌側ではなく、図3の手指15の背面に作用するように腱20を経路化することができる。このような実施形態では、把持を形成しているオペレータの張力は、図4のセンサ90によって測定することができる。実施形態に応じてオペレータの把持強度または解放強度を常に測定し、かつ、追跡し、それによりリハビリテーションの進歩を決定することができる。
【0042】
[0047]図5および6を参照すると、腱20を手袋12の手指15または親指14の所望の部分に固着するためのサドル126の一例は、腱20を受けるようなサイズにされ、かつ、形状化される弓形の溝80を画定することができる。例えば腱20は、図5の位置81で手袋12の指から出て、図2図5および図6に示されているようにサドル126の周りを取り巻いている。サドル126は手袋12から取り外すことができ、その場合、サドル126は手袋12の上に置かれることになり、あるいはサドル126は、縫合または他の手段を介して手袋12に取り付けることができる。図6に最も良好に示されているように、腱20は、腱20が溝80の中に受けられ/着座するよう、サドル126の周囲にループ82を形成している。
【0043】
[0048]腱20は、サドル126の周りを取り巻いて戻った後、腱20自体に取り付け、それにより組継ぎ84を形成する。組継ぎ84を形成するための様々なロープ組継ぎ技法が存在している。例えば腱20は、組継ぎ84の位置で腱20自体に織り込むことができ
る。腱20に対する張力は、常に作用してこの織込みを締め付け、したがって当分野で理解されているように常に組継ぎ84を強くする。意図されている本発明の範囲を逸脱することなく、他の組継ぎまたは結び技法を使用して腱20をサドル126に固着することも可能である。さらに、サドル126は、図6の弓形の形状ではなく、完全なリングの形を形成することができる(図1のリング26参照)。このような実施形態では、依然として図5および図6の溝80を使用することができ、あるいは図6に示されているようにサドル126の周りにループさせる代わりに、腱20を結び、組継ぎし、あるいはサドル126に接続することができる。
【0044】
[0049]以上、本発明を実施するための最良のモードについて詳細に説明したが、本発明に関連する当業者には、特許請求の範囲内で本発明を実践するための様々な代替設計および実施形態が認識されよう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6