(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のフェイスマスクは、1枚のシート体で構成されていたため、3次元の凹凸形状を呈する顔面の全面に載置すると、部分的に皺や弛みが生じ、顔面の全面に均等に密着させることができない。このため、フェイスマスクから美容液等を顔の全面に均等に供給することができない問題がある。
【0005】
また、フェイスマスクの周囲に切り込みを形成したものもあるが、使用時にフェイスマスクの周囲の切り込みで挟まれた各部を摘んで密着させる煩雑な作業が必要になるだけでなく、顔の中央部分については密着性を改善することができない。
【0006】
さらに、フェイスマスクの下端は、顎の下部から首の上部にかけて載置されるだけであり、顔を左右に動かした際に容易に剥がれてしまう問題がある。
【0007】
この発明の目的は、顔面の左側面及び右側面のそれぞれに対向するシート体を全体として外側に凸となる形状の顔面の正中線に対向する前端部で接合することにより、顔面の3次元の凹凸に沿う立体形状を簡単な構成で実現でき、顎を含めて顔面の全面に容易に密着させることができる立体フェイスマスク及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の立体フェイスマスクは、液体を含浸させて顔面の全面に載置されるシート状のフェイスマスクであって、顔面の左側面及び右側面のそれぞれに対向する平面状の左側シート及び右側シートであって顔面の正中線に対向する前端部が互いに対称形状の左側シート及び右側シートからなり、前記前端部は、全体として外側に凸となる形状を呈し、前記左側シート及び右側シートは
、上端から顎に対向する顎部に引いた線よりも前記前端部側の範囲を含む
所定幅の部分
のみにおける厚さ方向の全部又は少なくとも内側面に接着材料を有し、前記前端部のうちで鼻孔及び口に対向する部分を除く範囲を所定の幅で互いに接着したことを特徴とする。
【0010】
この発明
の立体フェイスマスクの製造方法は、
左側シート及び右側シートよりも広い幅のシート体における厚さ方向の全体又は少なくとも一方の面における
前記所定幅の
部分を含む一部
のみに接着材料を
配置する工程と、シート体を前記所定幅の一部の中央で前記一方の面を内側にして2つ折りにする折り工程と、前記シート体における顔の正中線に対向する前端部が前記所定幅の一部に含まれる状態にして前記前端部と顔の周囲に対向する部分とが連続する切断線で切り抜くとともに、前記前端部のうちで鼻孔及び口に対向する部分を除く範囲を所定の幅で接着する成形工程と、を含む。
【0011】
前記接着材料が熱可塑性を有し、前記成形工程は、前記前端部のうちで鼻孔及び口に対向する部分を除く範囲を前端から所定の幅で加熱して接着させる工程であることが好ましい。
【0012】
また、前記左側シート及び右側シートは不織布を素材とし、前記接着材料は粉体であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、左側シート及び右側シートにおける顔面の正中線に対向する前端部を外側に凸となる形状として互いに接着することで、左側シート及び右側シートの接着されていない部分を互いに離間させて顔面の凹凸に適合した立体形状を作ることができる。立体形状のフェイスマスクを部分的な皺や弛みを生じることなく顔面の全面に均一に密着させることができ、化粧液等の液体を顔面の全面に均一に作用させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示すように、この発明の第1の実施形態に係る立体フェイスマスク10は、一例として不織布を素材とするシート体から打ち抜き加工により、顔面の左側面に対向する右側シート1と顔面の左側面に対向する左側シート2とを互いの内側面が密着する状態で重ね合わせて構成されている。右側シート1と左側シート2とは、互いに左右対称の形状を呈している。
図1は、右側シート1側から見た平面図であり、左側シート2は右側シート1の下側に位置しているため図示されない。
【0016】
右側シート1には、孔部11、凹部12、切り込み13が形成されている。孔部11は、目に対向する。凹部12は、口唇に対向する。切り込み13は、小鼻に対向する。右側シート1は、上端14が上方に突出し、下端15が下方に突出した形状を呈している。右側シート1は、上端14から顎に対向する顎部18に向かって引いた線よりも顔面の正中線に対向する前端部16側の幅Wの部分の内側面に、熱可塑性の接着材料を備えている。接着材料は、例えば熱可塑性樹脂の粉体である。右側シート1の周縁部における前端部16の反対側の後端部18の中間部には、切り欠き17が形成されている。左側シート2は、形状を右側シート1と左右対称にして同様に構成されている。
【0017】
上端14から顎に対向する顎部18に向かって引いた線Lの上下端は、前端部16の上端14及び下端15に一致している。
【0018】
右側シート1の前端部16は、複数の円弧によって全体として外側に凸となる形状を呈している。前端部16は、
図1中の破線で示すように、上端14から下端15に至る間で、所定の幅で鼻孔に対向する部分及び凹部12を除いて左側シート2と接合される。
【0019】
なお、前端部16において眉間に対向する眉間部16Aは、内側に凸となる円弧で構成されており、右側シート1と左側シート2とを互いに離間させるように開くと、立体フェイスマスク10は3次元曲面形状を呈する。このため、立体フェイスマスク10を顔面の正中線を含む中央部分に、確実に密着させることができる。
【0020】
また、右側シート1及び左側シート2における前端部16は下方に突出した下端15まで互いに接着されているため、立体フェイスマスク10を顔面に貼付した際に、顎の下面から首の上部にかけて接触した状態で前端部16の形状が維持される。このため、立体フェイスマスク10は顔面の全面に確実に密着し、頭部を左右に動かした際に立体フェイスマスク10の下部が顎から離脱することを抑制できる。
【0021】
立体フェイスマスク10は、3次元曲面を有するため、周囲に切り込みを形成することなく顔面の全面に密着させることができるが、さらに密着性を向上させるために、右側シート1及び左側シート2の周縁部において前端部16を除く範囲には、切り欠き17に代えて、又は切り欠き17とともに、他の切り込み等を形成してもよい。
【0022】
図2に示すように、立体フェイスマスク10を使用する際には、右側シート1と左側シート2とのそれぞれの周縁部における前端部16を除く範囲を互いに離間する方向に開くと、立体フェイスマスク10は全体として外側に凸となる立体形状を形成する。
【0023】
このため、立体フェイスマスク10は、3次元の凹凸形状の顔面の全面に、皺や弛みを生じることなく均一に密着する。特に、眉間部16Aは、内側に凸となる円弧によって構成されているため、前端部16を顔の正中線に沿って密着させることができる。これによって、立体フェイスマスク10に予め含浸させた美容液等の液体の効果を、顔面の全面に均一に作用させることができる。
【0024】
また、立体フェイスマスク10は、使用前には、右側シート1と左側シート2とを互いの内側面が接触するように重ね合わせることで平面形状となる。このため、立体フェイスマスク10自体を複数枚重ね合わせた場合や立体フェイスマスク10を1枚ずつ収納した包装袋を複数重ね合わせた場合にも嵩張ることがなく、工場出荷時や販売及び購入時の取扱が容易になる。
【0025】
図3(A)〜(D)を参照して、以下に立体フェイスマスクの製造工程の一例を説明する。立体フェイスマスク10を製造する際には、先ず、
図3(A)に示すように、立体フェイスマスク10の素材となるシート101をロールから引き出し、立体フェイスマスク10の内側面となる面の引き出し方向に直交する方向の中央部に所定の幅Sで熱可塑性の接着材料102を塗布する。接着材料を塗布する際の所定の幅Sは、
図1に示す幅Wの2倍よりも僅かに広くされている。
【0026】
この後、シート101を所定時間にわたって加熱することにより、接着材料102を一旦溶融させてシート101に固着させるようにしてもよい。これによって、特に接着材料102が粉体である場合に、搬送時や使用時の立体フェイスマスク10から接着材料102が離脱することを防止できる。
【0027】
次いで、
図3(B)に示すように、シート101を引き出し方向について、立体フェイスマスク10の上下方向の長さよりも長い所定の長さで切断する。
【0028】
さらに、
図3(C)に示すように、切断したシート101を引き出し方向に平行な中心線で2つ折りに折りたたむ。
【0029】
最後に、
図3(D)に示すように、2つ折りにしたシート101を一例として右側シート1の形状に打ち抜く。このとき、鼻孔に対向する鼻孔部16B及び凹部12を除く前端部16を、所定の幅で加熱して接着する。この加熱は、例えば超音波振動子による超音波の発振によって行うことができる。
【0030】
これによって、上側の右側シート1と下側の左側シート2とを鼻孔部16B及び凹部12を除く前端部16で接着材料102によって接着することができ、
図1に示した形状の立体フェイスマスク10が得られる。
【0031】
なお、打ち抜き工程の前に前端部16に対する接着工程を行うこともできる。この場合に、一例として、上端部14から鼻梁の下端に対向する部分までの範囲と、鼻と上唇との間に対向する部分から顎部15の下端部までの範囲と、に分割された加熱部材を用いて加熱した後、右側シート1の形状に打ち抜く。これによって、シート101における加熱部分と打ち抜き部分との位置合わせを容易にできる。
【0032】
また、全面について厚さ方向の全体に接着材料102を含有したシートを用いることで、接着材料102の塗布工程やシート101全体の加熱処理を省略することもできる。接着材料102は粉体である必要はなく、フィルム状の接着材料102をシート101の上面に貼付してもよい。また、
図3(B)の切断工程を省略してもよい。
【0033】
具体的には、接着材料である熱可塑性繊維を含有した天然繊維からなる不織布若しくは織布、又は接着材料である熱可塑性繊維のみからなる不織布若しくは織布をシート101として用いる。また、天然繊維からなる不織布若しくは織布の一方の面に接着材料である熱可塑性の粉体を塗布した後に加熱処理したもの、又は天然繊維からなる不織布若しくは織布の一方の面に接着材料である熱可塑性のフィルムを貼付した後に加熱処理したものをシート101として用いる。
【0034】
これらによって、接着材料の塗布又は貼付工程を省略することができ、作業工程の簡略化によるコストダウンを実現できる。
【0035】
さらに、
図1に示すように、右側シート1と左側シート2とにおいて接着される前端部16の上下の端部を結ぶ線の外側のみに接着材料102を塗布することで、シート101における接着材料102の塗布範囲を小さくすることができる。また、塗布部材の形状を接合部分の形状に一致させることで、塗布部材が接触する接着範囲のみに接着材料102を塗布するようにし、接着材料102の塗布範囲を最小にすることもできる。
【0036】
加えて、接着材料102は、熱可塑性を有するものに限るものではなく、加圧によって右側シート1と左側シート2との端部を接着できるものや光硬化性材料を用いることもできる。
【0037】
また、
図4に示すように、右側シート1用のシート121及び左側シート2用のシート122のそれぞれを別のロール1から引き出して重ね合わせることもできる。シート121の表面121A及びシート122の表面122Aは、全面をシート状の接着材料123で覆われている。
図4(A)に示すように、シート121及びシート122を、互いの表面121Aと表面122Aとが対向する状態で重ね合わせる。この後、
図4(B)に示すように、例えば超音波振動子を用いて鼻孔部16B及び凹部12を除く前端部16を所定の幅で加熱しつつ、一例として左側シート2の形状に打ち抜く。
【0038】
図5に示すように、この発明の第2の実施形態に係る立体フェイスマスク110は、右側シート21及び左側シート22(左側シート22は図に表れない。)の額に対向する部分の上端にタブ211及び221が突出して形成されている。その他の構成は立体フェイスマスク10と同様である。
【0039】
立体フェイスマスク20では、右側シート21及び左側シート22の互いの内側面を接触させて重ね合わせた状態で、タブ211の基部(左側シート21における延出位置)とタブ221の基部(右側シート22における延出位置)とは重なるが、タブ211の中間部よりも上方とタブ221の中間部よりも上方とは重ならない。したがって、タブ211及びタブ221は、正中線に対向する前端部16について対称とならない。
【0040】
立体フェイスマスク20を前端部16で2つ折りにした際に、タブ211とタブ221とが区別できる状態になるため、タブ211とタブ221とを左右の手指のそれぞれで摘んで立体フェイスマスク20の左側シート21と右側シート22とを左右に拡げることができる。立体フェイスマスク20の使用時に、左側シート21と右側シート22とを重ねた状態、さらに折り畳んだ状態、又は巻回した状態の立体フェイスマスク20に美容液等を含浸させた場合に、左側シート21と右側シート22とを左右に拡げる作業を容易に行うことができる。
【0041】
図6(A)〜(C)を参照して、以下に、第2の実施形態に係る立体フェイスマスクの製造方法を説明する。この製造方法では、熱可塑性の接着材料を少なくとも上面の全面に予め含有したシート111を使用する。
【0042】
先ず、
図6(A)に示すように、シート111をロールから引き出し、タブ211及びタブ221を切り抜く。タブ211及びタブ221の形状は左右対称とならないため、シート111を2つ折りにする前にタブ211及びタブ221の切り抜きを行う。
図6(A)では、立体フェイスマスク20を構成する右側シート21と左側シート22との上下方向を、シート111の引き出し方向に直交する方向にして形成する場合を示している。
【0043】
次いで、
図6(B)に示すように、シート111を引き出し方向に平行な中心線で2つ折りに折りたたむ。
【0044】
この後、
図6(C)に示すように、2つ折りにしたシート111を一例として左側シート22の形状に打ち抜く。このとき、左側シート22の形状におけるタブ221の延出位置をシート111におけるタブ221の切り抜き線の両端に一致させる。これと同時に、右側シート21の前端部16において鼻孔部16B及び凹部12を除く部分を、所定の幅で加熱して接着する。この加熱は、例えば超音波振動子による超音波の発振によって行うことができる。
【0045】
これによって、上側の左側シート22と下側の右側シート21とを鼻孔部16B及び凹部12を除く前端部16でシート111が含有する接着材料によって接着され、立体フェイスマスク20を得ることができる。右側シート21は
図6(C)に表れない。
【0046】
なお、接着材料は、熱可塑性を有するものに限るものではなく、立体フェイスマスク10と同様に、加圧によって右側シート21と左側シート22との端部を接着できるものや光硬化性材料を用いることもできる。
【0047】
立体フェイスマスク20は、立体フェイスマスク10と同様に、右側シート21用のシートと左側シート22用のシートとを別のロールから引き出して重ね合わせることもできる。この場合には、右側シート21用のシート及び左側シート22用のシートを重ね合わせる前に、それぞれにタブ211及び221を形成する。
【0048】
また、立体フェイスマスク10及び立体フェイスマスク20は、何れも全面を均一の厚さで構成したが、例えば、目の周囲に対向する部分等の一部についてシート101又はシート111に別のシートを貼付することで厚さを増して美容液等の含有量を増加させるようにしてもよい。この場合に、例えば、
図6(A)〜(C)に示す工程中、
図6(A)の工程におけるタブ211及び221の打ち抜き前、又はタブ211及び221の打ち抜き後で
図6(B)の工程の前に、シート111における例えば目に対向する位置に、所定の幅の別のシートをシート111の引き出し方向に沿って貼付する。この貼付は、熱可塑性の接着材料の加熱や接着材料の塗布によって行うことができる。
【0049】
図7に示すように、この発明の第3の実施形態に係る立体フェイスマスク30は、右側シート31及び左側シート32(左側シート32は
図7に表れない。)に耳の下方から喉の中間までの顎の下面及び首に対向する首部41を形成している。したがって、前端部46は、顎に対向する顎部42の下端部43から下方に向けて、首の中間部分までの間に対向する首部41が延出している。その他の形状は第1の実施形態に係る立体フェイスマスク10と同様である。
【0050】
右側シート31の前端部46は、複数の円弧によって全体として外側に凸となる形状を呈している。前端部46は、
図7中の破線で示すように、上端44から下端45に至る間で、所定の幅で鼻孔に対向する部分及び凹部46Aを除いて左側シート42と接合される。
【0051】
右側シート41及び左側シート42における前端部46は下方に突出した下端45まで互いに接着されている。立体フェイスマスク30を顔面に貼付した際に、
図8に示すように、上端44から下端45までが額から顎の下面を経由して首の中間部分までにかけて接触した状態で端部46の形状が維持される。このため、立体フェイスマスク30は顔面の全面により確実に密着し、頭部を左右に動かした際に立体フェイスマスク30の下部が顎から離脱することをより確実に防止できる。
【0052】
図9に示すように、この発明の第4の実施形態に係る立体フェイスマスク50は、右側シート51及び左側シート52(左側シート52は
図9に表れない。)に、顎に対向する顎部62の下端部63から下方に向けて延出するとともに前端部66の反対側の後端部68の下部から外側に延出した引き上げ部61と、引き上げ部61と頬に対向する頬部67との間に後端部68から前端部66に向かう切り込み64と、を形成している。したがって、その他の形状は第1の実施形態に係る立体フェイスマスク10と同様である。
【0053】
右側シート51の前端部66は、複数の円弧によって全体として外側に凸となる形状を呈している。前端部66は、
図9中の破線で示すように、上端64から下端65に至る間で、所定の幅で鼻孔に対向する部分及び凹部66Aを除いて左側シート52と接合される。
【0054】
右側シート51及び左側シート52における前端部66は下方に突出した下端65まで互いに接着されている。立体フェイスマスク50を顔面に貼付した際に、
図10に示すように、引き上げ部61を知に引き上げて頬部67の表面に張り付ける。これによって、顎から頬にかけて皮膚が引き上げられ、リフトアップ効果を期待できる。
【0055】
上記の実施形態はいずれも一例であり、この発明はこれらに限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々の変更を加えることが可能である。