(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5797804
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】工具マガジンの回動動作により工具マガジンとマガジン駆動用モータが連結される工具交換装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/157 20060101AFI20151001BHJP
【FI】
B23Q3/157 F
B23Q3/157 A
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-88391(P2014-88391)
(22)【出願日】2014年4月22日
【審査請求日】2015年5月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】五十部 学
(72)【発明者】
【氏名】室田 真弘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 直樹
【審査官】
齊藤 彬
(56)【参考文献】
【文献】
特許第2589476(JP,B2)
【文献】
特開昭60−232845(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0345034(US,A1)
【文献】
特開昭60−155338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/155
3/157
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸を回転自在に支持する主軸頭と、
周上に工具を保持する複数のグリップを備えた工具マガジンと、
該工具マガジンを工具を割り出すために旋回動作させるための旋回軸と、
該工具マガジンを前記主軸頭へ接近及び離反する方向に回動動作させるための回動軸と、
該工具マガジンを旋回動作させるためのマガジン駆動モータと、を備えた工作機械の工具交換装置において、
前記マガジン駆動モータは、工作機械の非可動部に固定されており、
前記工具マガジンは工具マガジン側動力伝達部を備え、
前記マガジン駆動モータはマガジン駆動モータ側動力伝達部を備え、
前記工具マガジンが回動し、前記主軸頭への接近位置に到達した際に、前記工具マガジン側動力伝達部と前記マガジン駆動モータ側動力伝達部が連結することを特徴とする工作機械の工具交換装置。
【請求項2】
前記工具マガジン側動力伝達部は工具マガジン側ギアを備え、前記マガジン駆動モータ側動力伝達部はマガジン駆動モータ側ギアを備えており、前記工具マガジン側ギアと前記マガジン駆動モータ側ギアとによって、前記工具マガジン側動力伝達部と前記マガジン駆動モータ側動力伝達部が連結することを特徴とする請求項1に記載の工作機械の工具交換装置。
【請求項3】
前記工具マガジンおよび前記マガジン駆動モータのいずれか一方にキーを備え、他方にキー溝を備え、前記キーと前記キー溝によって前記工具マガジン側動力伝達部と前記マガジン駆動モータ側動力伝達部が連結することを特徴とする請求項1に記載の工具交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械で使用する工具を自動的に交換することが可能な工具交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の主軸に取り付けられる工具を自動的に交換する工具交換装置が従来から用いられている。この工具交換装置には、作業に必要な複数の工具が予めセットされており、工具マガジンを旋回動作させて工具を割り出して主軸への着脱を行い、工作機械の主軸に取り付ける工具を、加工状態に応じて指定された工具に自動的に交換するように構成されている。
【0003】
図4及び
図5は、従来の工具交換装置を示した図であり、工具マガジンが主軸頭に対して接近・離反する方向に回動動作可能とされている。
このような工具交換装置では、加工時に工具マガジン全体を主軸頭近傍から移動することが可能であるため、加工領域を広く取ることができる。また、工具マガジンが移動不可能な場合に比べて主軸頭を大きくできるため、主軸の剛性を高めることが可能となる。
【0004】
特許文献1には、工具マガジンの旋回駆動を主軸モータを使用して行う方式の工具交換装置において、工具マガジンを主軸頭に対して接近・離反する方向に回動動作可能とすることにより、加工領域を広く確保することを図る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2589476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、工具マガジンを主軸頭に対して接近・離反する方向に回動動作可能とすることにより、加工領域を広く確保したり、主軸の剛性を高めたりすることを可能とするものがあった。
しかし、これらの従来技術及び特許文献1に開示されている技術は、工作機械の軸の移動によってマガジン駆動モータの位置が変化するため、工具マガジンが工具交換位置である主軸頭に接近した位置で、かつ工作機械の軸が所定の位置にある場合しか工具マガジンの旋回動作を行うことはできなかった。
【0007】
そこで本発明は、工作機械の軸の位置に影響されることなく、工具マガジンが主軸頭に接近した位置にあるときに工具マガジンの旋回を可能とする工具交換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の請求項1に係る発明では、主軸を回転自在に支持する主軸頭と、周上に工具を保持する複数のグリップを備えた工具マガジンと、該工具マガジンを工具を割り出すために旋回動作させるための旋回軸と、該工具マガジンを前記主軸頭へ接近及び離反する方向に回動動作させるための回動軸と、該工具マガジンを旋回動作させるためのマガジン駆動モータと、を備えた工作機械の工具交換装置において、前記マガジン駆動モータは、工作機械の非可動部に固定されており、前記工具マガジンは工具マガジン側動力伝達部を備え、前記マガジン駆動モータはマガジン駆動モータ側動力伝達部を備え、前記工具マガジンが回動し、前記主軸頭への接近位置に到達した際に、前記工具マガジン側動力伝達部と前記マガジン駆動モータ側動力伝達部が連結することを特徴とする工作機械の工具交換装置が提供される。
【0009】
請求項1に係る発明では、マガジン駆動モータを工作機械の非可動部に固定しているため、工作機械の軸の位置に影響されることなく、工具マガジンが主軸頭に接近した位置に回動させることにより、工具マガジン側動力伝達部とマガジン駆動モータ側動力伝達部とが連結し、工具マガジンの旋回動作を行うことができる。
【0010】
本願の請求項2に係る発明では、前記工具マガジン側動力伝達部は工具マガジン側ギアを備え、前記マガジン駆動モータ側動力伝達部はマガジン駆動モータ側ギアを備えており、前記工具マガジン側ギアと前記マガジン駆動モータ側ギアとによって、前記工具マガジン側動力伝達部と前記マガジン駆動モータ側動力伝達部が連結することを特徴とする請求項1に記載の工作機械の工具交換装置が提供される。
【0011】
請求項2に係る発明では、工作機械の軸の位置に影響されることなく、工具マガジンが主軸頭に接近した位置に回動させることにより、工具マガジンとマガジン駆動モータがギア連結されるため、工具マガジンの旋回動作を行うことができる。
【0012】
本願の請求項3に係る発明では、前記工具マガジンおよび前記マガジン駆動モータのいずれか一方にキーを備え、他方にキー溝を備え、前記キーと前記キー溝によって前記工具マガジン側動力伝達部と前記マガジン駆動モータ側動力伝達部が連結することを特徴とする請求項1に記載の工具交換装置が提供される。
【0013】
請求項3に係る発明では、工作機械の軸の位置に影響されることなく、工具マガジンが主軸頭に接近した位置に回動させることにより、工具マガジンとマガジン駆動モータがキーの結合により連結されるため、工具マガジンの旋回動作を行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、工作機械の軸の位置に影響されることなく、工具マガジンが主軸頭に接近した位置にあるときに工具マガジンの旋回を可能とする工具交換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態の工具交換装置を側面から見た概略図である。
【
図2】本発明の実施形態の工具交換装置を斜め方向から見た概略図である。
【
図4】従来の工具交換装置を備えた工作機械を正面から見た概略図である。
【
図5】従来の工具交換装置を備えた工作機械を側面から見た概略図である。
【
図6】従来の工具交換装置において、工具マガジンが主軸頭に対して接近・離反する方向に回動した状態を側面から見た概略図である。
【0016】
以下、まずは従来技術について説明する。
図4は、従来の工具交換装置を備えた工作機械を正面から見たときの概略図である。1は工具マガジンであり、その周上に複数のグリップ3を備えている。グリップ3はそれぞれ工具2を把持可能とされている。また、工具マガジン1は旋回動作が可能とされており、図中の4の位置である工具交換位置4に割り出して工具交換を行っている。
【0017】
また、
図5は従来の工具交換装置を備えた工作機械を側面から見た概略図である。5はマガジン支持部であり、このマガジン支持部5に主軸頭8と主軸7が取り付けられ、主軸頭8にマガジン駆動モータ9が備えられている。また、主軸7を取り囲むようにして、マガジン駆動モータ側ギア11が設けられている。
【0018】
次に、1は工具マガジンであり、マガジン支持部5に支点6で軸支されている。工具マガジン1は、工具マガジン側ギア10、マガジンシャフト12を備えている。また、工具マガジン1の先端部にはグリップ3が設けられており、グリップ3が工具2を把持可能とされている。工具マガジン側ギア10はマガジンシャフト12に対して、旋回軸13を軸に回転可能とされており、マガジン駆動モータ側ギア11と工具マガジン側ギア10が噛み合っているときには、マガジン駆動モータ9からの動力がマガジン駆動モータ側ギア11、工具マガジン側ギア10を通じて伝達されて工具マガジン1が旋回動作される。
【0019】
図6は、従来の工具交換装置において、工具マガジンが主軸頭8に対して接近・離反する方向に回動した状態を側面から見た概略図であり、
図6(a)が離反位置、
図6(b)及び
図6(c)が接近位置を示している。
工具交換時には、工具マガジン1が支点6を中心に回動して主軸頭8へ接近する方向へ回動動作を行う。これにより、主軸7に装着されている工具2をグリップ3が把持する。その後、工作機械が軸移動を行い、工具マガジン側ギア10とマガジン駆動モータ側ギア11とを連結する。これにより、工具マガジン1の旋回動作が可能となる。
【0020】
このように工具マガジン1と接近位置と離反位置との間で回動可能な状態とすることによって、加工領域を広く取ることができる。また、主軸頭8を大きくすることができて、剛性の高い構造とすることができる。
しかし、この方式の工具交換装置においては、主軸7の位置が
図6(c)の位置にあるときにしか工具マガジン1を旋回動作させることができなかった。そのため、主軸7の位置が
図6(b)の位置においてグリップ3が工具2を把持した後に、主軸7の位置を
図6(c)の位置になるまで移動させて、工具マガジン1を旋回動作させるようにしていた。
【0021】
本発明は、これらの課題を踏まえてなされたものである。以下、図面に基づいて本発明の実施形態について説明する。
図1及び
図2は、本発明の実施形態の工具交換装置を示したものであり、
図1は側面から見たときの概略図であり、
図2は斜め方向から見たときの概略図であり、それぞれ
図1(a)及び
図2(a)は離反位置、
図1(b)及び
図2(b)は接近位置を示している。本実施形態の工具マガジン1は、従来技術と同様に、支点6を軸に回動可能とするようにマガジン支持部5に軸支されている。マガジン駆動モータ9以外の部分については、従来技術と同様であるため同じ符号として説明を省略する。
【0022】
本実施形態においては、マガジン駆動モータ9を工作機械の非可動部に固定し、マガジン駆動モータ側ギア11の延びる方向が、主軸7の延びる方向と略平行になるように構成されている。このような構成により、工具マガジン1が主軸頭8に接近する方向に回動動作を行うと、工具マガジン側ギア10が傾き、マガジン駆動モータ側ギア11と噛み合い、工具マガジン1の旋回動作が可能となる。
【0023】
本実施形態においては、マガジン駆動モータ9及びマガジン駆動モータ側ギア11が主軸7ではなく工作機械の非可動部に設けられているため、主軸7及び主軸頭8の位置にかかわらず、工具マガジン側ギア10とマガジン駆動モータ側ギア11が噛み合う構成とされている。これにより、工作機械の軸を所定の位置としなくとも、工具マガジン側ギア10とマガジン駆動モータ側ギア11が噛み合い、主軸7及び主軸頭8が任意の位置において、工具マガジン1を旋回動作させることが可能となる。主軸7及び主軸頭8が任意の位置で工具マガジン1の旋回動作が可能となることにより、工作機械の軸移動の停止を待つことなく、工具マガジン1の旋回動作を開始することができ、工具交換時間を短縮することができる。
【0024】
なお、本実施形態においては、マガジン駆動モータ9を工作機械の非可動部の一つであるマガジン支持部5に設けているが、マガジン駆動モータ9の設置箇所としてはこの箇所に限定されるものではなく、工作機械の非可動部であって、軸の位置に影響されない位置であれば、他の位置に設けることも可能である。
【0025】
図3は、本発明の別の実施形態を示した図である。本実施形態においては、マガジン駆動モータ9は工作機械の非可動部に固定されている。工具マガジン1が主軸頭8に接近する方向に回動動作を行うと、工具マガジン側ギア10が傾いて、マガジン駆動モータ側ギア11と連結する。ここで、工具マガジン側ギア10にはキー溝14が設けられており、マガジン駆動モータ側ギア11にはキー15が設けられている。工具マガジン側ギア10とマガジン駆動モータ側ギア11の連結時には、キー15とキー溝14とが嵌め合わされる。これにより、工具マガジン1の旋回動作が可能となる。
【0026】
なお、本実施形態においては、マガジン駆動モータ側ギア11にキー15が設けられ、工具マガジン側ギア10にキー溝14が設けられるものとしたが、これに限られたものではない。逆に工具マガジン側ギア10にキー15を設け、マガジン駆動モータ側ギア11にキー溝14を設ける構成とすることもできる。
【0027】
本発明の実施形態においては、工具マガジン1が主軸7へ接近する方向に回動動作を行った場合に、工具マガジン1とマガジン駆動モータ9とがギアや、キーとキー溝によって連結される例で説明したが、本発明はこれらに限ったものではない。工具マガジン1の回動動作による主軸7や主軸頭8への接近に連動して、工具マガジン1とマガジン駆動モータ9が連結するような構成であれば、本発明の範囲に含まれる。
また、本発明の実施形態においては、工具マガジンとマガジン駆動モータとの間の動力伝達機構としてギアを用いた例で説明したが、その他の一般的に用いられている動力伝達のための機構を用いて両者の動力伝達を行うようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 工具マガジン
2 工具
3 グリップ
4 工具交換位置
5 マガジン支持部
6 支点
7 主軸
8 主軸頭
9 マガジン駆動モータ
10 工具マガジン側ギア
11 マガジン駆動モータ側ギア
12 マガジンシャフト
13 旋回軸
14 キー溝
15 キー
【要約】
【課題】工作機械の軸の位置に影響されることなく、工具マガジンが主軸頭に接近した位置にあるときに工具マガジンの旋回を可能とする工具交換装置を提供する。
【解決手段】工具マガジンを旋回動作させるためのマガジン駆動モータを備えた工作機械の工具交換装置において、マガジン駆動モータは工作機械の非可動部に固定されており、工具マガジンが回動して主軸頭への接近位置に到達した際に、工具マガジン側動力伝達部とマガジン駆動モータ側動力伝達部とが連結して工具マガジンの旋回動作を行うことができる。これにより、工作機械の軸の位置に影響されることなく、工具マガジンの旋回動作を行うことができる。
【選択図】
図1