特許第5797817号(P5797817)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5797817
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】軌道車両の案内装置
(51)【国際特許分類】
   B61B 13/00 20060101AFI20151001BHJP
【FI】
   B61B13/00 M
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-140316(P2014-140316)
(22)【出願日】2014年7月8日
【審査請求日】2014年7月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】391004241
【氏名又は名称】大阪車輌工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100100479
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 三喜夫
(72)【発明者】
【氏名】山本 恵三
【審査官】 志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−205946(JP,A)
【文献】 実公平02−021450(JP,Y2)
【文献】 特開2008−201268(JP,A)
【文献】 特開昭51−068013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 12/02
B61B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の前後に設けられた左右一対のゴムタイヤからなる走行輪を備え、走行面に敷設された単一の軌道に沿って走行する軌道車両の案内装置であって、
前記車体の前後部の底面における車幅方向の中央部に設けられた案内アームと、
前記各案内アームの前後両端部に、上下方向に延びる軸心周りに回転可能に設けられた案内輪とを備え、
前記案内輪は、上下方向に延びる中心線を有する円筒体であり、
前記軌道は、前記各案内輪を挟んで互いに一定間隔を隔てて延びる左右一対のガイドレールを有し、該左右一対のガイドレールの互いに対向する面の断面の外形は円弧であり、
前記ガイドレールの下方で車幅方向に延びる軸心周りに回転可能に設けられ、車体の軌道からの逸脱を防止する、左右一対の軌道逸脱防止ローラをさらに備えたことを特徴とする
軌道車両の案内装置。
【請求項2】
前記ガイドレールは、円形断面を有するパイプ部材であることを特徴とする、
請求項1に記載の軌道車両の案内装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道に沿って走行する軌道車両を案内する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車体を支持する走行輪と、走行面に敷設された軌道に案内される案内輪とを備え、走行輪を駆動することにより軌道に沿って走行する軌道車両が実用化されている。
【0003】
例えば特許文献1には、図8に示すように、車体の前後に設けられた左右一対のゴムタイヤからなる走行輪120と、車体の前後部の底面における車幅方向の中央部に設けられた2つの案内アーム130と、各案内アーム130の前後両端部に取り付けられ、車体の上下方向に延びる軸心周りに回転する2つの案内輪131(132)とを備えた軌道車両が開示されている。この案内アーム130は、中央に揺動中心を有し、車体の底面に平行な面(水平面)内で揺動するようになっている。さらに、案内アーム130と走行輪120との間には、走行輪を操舵する操舵機構125が設けられている。
【0004】
一方、車両の走行面には、U字状のレール部材110からなる軌道が敷設されている。走行輪120が駆動されると、案内アーム130の両端の案内輪131,132が前後に並んでレール部材110内を移動する。このとき、案内輪131(132)がレール部材110の両側の壁面に同時に接触すると、車両は走行不可能となる。それゆえ、両側の壁面間の間隔は案内輪131(132)の直径より大きくされている。車両が軌道のカーブを曲がるときには、カーブの曲率に応じて案内アーム130が回転し、その案内アーム130の動きに操舵機構125が連動して走行輪120が操舵される。
【0005】
同様に、特許文献2には、図9に示すように、走行輪220と、案内アーム230と、案内輪231,232とを備えた軌道車両が開示されている。特にこの軌道車両では、案内輪231,232がそれぞれ異なる高さ位置に取り付けられており、一方、軌道を構成する案内溝210は、案内輪231(232)が案内溝210の左右いずれか一方の壁面に常時転接するように形成されている。
この構成によれば、車両の走行中に、案内輪231,232と案内溝210の一方の壁面との間に隙間が生じることがないため、案内輪がスムーズに回転することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開第2006−347426号公報
【特許文献2】特開昭51−60313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1,2に開示された軌道車両は、水平面内で回転する案内輪331(332)の周面が左右いずれか一方の壁面に転接しながら走行する。また、軌道車両がカーブを曲がるときには、遠心力を受けてゴムタイヤがたわみ、図10に示すように、案内輪331(332)の軸心Yが左右方向へ傾く。
このとき、案内輪331(332)が扁平な形状の場合(図10(a))には、その端部が壁面(図では壁面362)に押し付けられて偏摩耗し、一方、案内輪331(332)が上下方向に長い形状を有する場合(図10(b))には、その一部が壁面の角に押し付けられて傷付いてしまう。
【0008】
また、降坂路から平坦路へ移行するとき(図11を参照)や平坦路から登坂路へ移行するときなど、車体の前部と後部で勾配が異なるような走行面を車両が走行するときには、案内輪331の軸心Yと車両の進行方向Tとが直交しない。これら軸心Yと進行方向Tの間の角度は、車両の進行と共に時々刻々と変化することになる。これにより、案内輪331(332)と軌道の壁面361(362)との間にこすれが生じて、車両に強いブレーキが作用してしまう。
なお、図11では、案内アームの前部の案内輪331のみを図示しており、案内アームの前部の案内輪332を省略している。
【0009】
以上のように、従来の軌道車両には、案内輪が偏摩耗したり傷付いたりするという耐久性の問題や、車両に強いブレーキが作用して安定した走行が妨げられるといった問題があった。
【0010】
そこで本発明は、軌道車両の案内装置において、案内輪の耐久性を向上させ、かつ、高い走行安定性を維持することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明に係る軌道車両の案内装置は、次のように構成したことを特徴とする。
【0012】
本願の請求項1に記載の発明は、車体の前後に設けられた左右一対のゴムタイヤからなる走行輪を備え、走行面に敷設された単一の軌道に沿って走行する軌道車両の案内装置であって、
前記車体の前後部の底面における車幅方向の中央部に設けられた案内アームと、
前記各案内アームの前後両端部に、上下方向に延びる軸心周りに回転可能に設けられた案内輪とを備え、
前記案内輪は、上下方向に延びる中心線を有する円筒体であり、
前記軌道は、前記各案内輪を挟んで互いに一定間隔を隔てて延びる左右一対のガイドレールを有し、該左右一対のガイドレールの互いに対向する面の断面の外形は円弧であり、
前記ガイドレールの下方で車幅方向に延びる軸心周りに回転可能に設けられ、車体の軌道からの逸脱を防止する、左右一対の軌道逸脱防止ローラをさらに備えた
ことを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記ガイドレールは、円形断面を有するパイプ部材である
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本願の請求項1に記載の発明によれば、車両がカーブを曲がるときに案内輪の軸心が左右方向に傾いたとしても、案内輪が円筒体であり、かつ、左右一対のガイドレールの互いに対向する面の断面の外形が円弧であることにより、案内輪とガイドレールとが点接触することになる。これにより、案内輪の偏摩耗、傷付きが充分に抑制される。
【0016】
また、車体の前部と後部で勾配が異なるような走行面を車両が走行するときにも、案内輪とガイドレールとが点接触することにより、これらの間にこすれが生じない。これにより、車両に強いブレーキが作用しない。
【0017】
特に、本発明によれば、例えば車両が降坂路から平坦路へ移行したときなどに車体が浮き上がったとしても、軌道逸脱防止ローラがガイドレールに当接することにより、車体の軌道からの逸脱が防止されることになる。
【0018】
以上のようにして、案内輪の耐久性を向上させ、かつ、軌道車両の高い走行安定性を維持できる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、ガイドレールとして円形断面を有するパイプ部材を用いることにより、請求項1の効果が具体的に達成される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態に係る軌道車両の案内装置を示す平面図である。
図2図1のA−A線断面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る軌道車両の案内装置を示す側面図である。
図4】カーブを曲がるときの軌道車両を示す、図1に対応する平面図である。
図5】カーブを曲がるときの軌道車両を示す、図2に対応する断面図である。
図6】カーブを曲がるときの軌道車両(比較例)を示す、図2に対応する断面図である。
図7図11に対応する、本発明の実施の形態に係る軌道車両の案内装置を示す側面図の部分拡大図であり、(a)は車両前部を、(b)は車両後部を示す。
図8】特許文献1に開示された軌道車両を示す断面図である。
図9】特許文献2に開示された軌道車両を示す断面図である。
図10】従来の軌道車両の課題を説明するための図である。
図11】従来の軌道車両の課題を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書中、「前、後、左、右」などの方向を示す用語は、車両の進行方向を「前」とした場合の方向を指す。
【0022】
最初に、図1から図3を参照して、車両1とその案内装置の構造について説明する。
【0023】
車両1は、走行面に敷設された単一の軌道10に沿って走行する軌道車両である。車両1は、車体の前後に設けられた左右一対の走行輪20、車体の前後部の底面における車幅方向の中央部に設けられた案内アーム30、走行輪20を駆動するモータ40を備える。案内装置は車両1を案内する装置であり、走行面の軌道10、車両1の案内アーム30などを備えるものとする。
【0024】
走行輪20はゴムタイヤからなる。走行輪20は、駆動軸21により、軸受部22と自在継手23を介して差動装置(図示せず)に連結されている。軸受部22にはナックルアーム24が固定されている。ナックルアーム24には、走行輪20を操舵する操舵機構としてのタイロッド25が連結されている。
【0025】
案内アーム30は、その中央部に設けられた揺動軸33を有し、この揺動軸33を支点として水平面内で揺動する。また、案内アーム30の左右には、タイロッド25に連結されるブラケット部材34が取り付けられている。
【0026】
案内アーム30の揺動軸33は、図2図3に示すように、上側で取付板35に接合されている。車両前後部の各案内アーム30は、図3に示すように、この取付板35を介して車体の底面に取り付けられている。
【0027】
案内アーム30の前後両端部には、軌道10に案内される案内輪31,32が設けられている。案内輪31,32は、上下方向に延びる中心線を有する円筒体である。案内輪31,32の材料は例えば樹脂である。図2に示すように、案内アーム30には、上下方向に延びる回転軸36が挿通されている。案内輪31,32は、この回転軸36にベアリングを介して取り付けられており、回転軸36(軸心)周りに自由に回転できるようになっている。
【0028】
回転軸36は、下側で、車体の前後方向に延びる連結部材37に接合されている。連結部材37の前部には、車幅方向に延びるローラ軸38が挿通されている。このローラ軸38には、左右一対の軌道逸脱防止ローラ39が取り付けられており、ローラ39はガイドレール11,12の下方でローラ軸38(軸心)周りに自由に回転できるようになっている。例えば車両1が降坂路から平坦路へ移行したときなどに車体が浮き上がると、この軌道逸脱防止ローラ39がガイドレール11,12に当接する。これにより、車体の軌道からの逸脱が防止される。
【0029】
モータ40は、図3に示すように、車体の前部に設けられている。モータ40からの駆動力は、後部の差動装置を介して後部の走行輪20に伝達される。すなわち、車両1は後輪駆動型である。ただし、本発明はこれに限定されず、前輪駆動型であってもよいし四輪駆動型であってもよい。
【0030】
軌道10は、図2に示すように、左右一対のガイドレール11,12、車両1の走行面を規定する板部材13、板部材13を支持する溝型鋼14などにより形成される。ガイドレール11,12は、各案内輪31,32を挟んで互いに一定間隔を隔てて延びる、円形断面を有するパイプ部材である。ガイドレール11,12は、板部材13と接合補助部材15に接合されている。接合補助部材15は、溝型鋼14に接合されている。
【0031】
その他、図示していないが、溝型鋼14には送電レールが取り付けられ、その送電レールには絶縁トロリー線が固定されている。また、連結部材37には、絶縁トロリー線の導体に接触して摺動する集電子が取り付けられている。集電子は、モータ40に電気的に接続されている。
【0032】
次に、図4から図7を参照して、車両1とその案内装置の動作について簡単に説明する。
【0033】
走行中には、集電子を介して絶縁トロリー線から供給される電力によりモータ40が駆動されて、走行輪20が駆動される。走行輪20が駆動されると、案内アーム30の両端の案内輪31,32が前後に並んで軌道10を移動する。
【0034】
車両1がカーブを曲がるときには、図4に示すように、そのカーブの曲率に応じて案内アーム30が回転し、その案内アーム30の動きにタイロッド25が連動して走行輪20が操舵される。このとき、図5に示すように、遠心力を受けて走行輪20のゴムタイヤがたわみ、案内輪32(31)の軸心Yが左右方向へ傾く。なお、図5図6中の符号Xは、案内輪の軸心Yに垂直な方向を示しており、軸心Yが傾かないときには車幅方向に一致する。また、同図中の符号CPは、案内輪32(31)とガイドレール12(11)とが接触する点を示す。
【0035】
図6(比較例)に示すように、ガイドレールが壁面61,62である場合、案内輪31,32の一部が一方の壁面61(または62)の角に押し付けられて傷付く可能性がある上に、案内輪31,32が両側の壁面61,62に同時に接触し、車両1が走行不可能となる可能性がある。
【0036】
一方、本実施形態によれば、車両1がカーブを曲がるときに案内輪31,32の軸心Yが左右方向に傾いたとしても、案内輪31,32とガイドレール11,12とは点接触するので、案内輪31,32の傷付きが充分に抑制される。
また、図5から判るように、ガイドレール11,12が円形断面を有することにより、車体がよほど大きく傾かない限り、案内輪31,32が両側のガイドレール11,12に同時に接触することはない。
【0037】
また、降坂路から平坦路へ移行するときなど、車体の前部と後部で勾配が異なるような走行面を車両1が走行するときにも、案内輪31(32)とガイドレール11(12)とが点接触することにより、これらの間にこすれが生じることがなく、したがって車両に強いブレーキが作用することがない。
【0038】
なお、車両1を意図的に停止させるためのブレーキ機構については詳しく説明しなかったが、例えば回生ブレーキを利用してもよいし、機械的ブレーキを設けてもよい。
【0039】
以上、上記実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は実施形態に限定されず、さらに上記実施形態には、種々の変形、改良が加えられてよい。
【0040】
例えば、ガイドレール11,12の互いに対向する面の断面の外形が円弧であれば、車両1がカーブを曲がるときなどに案内輪31,32とガイドレール11,12とが点接触するのであるから、ガイドレール11,12は、円形断面を有するパイプ部材でなく、例えば半円形断面を有するパイプ部材や扇形断面を有するパイプ部材であってもよい。
【0041】
また、軌道逸脱防止ローラ39が取り付けられるローラ軸38は、必ずしも案内アーム30の前部に設けられる必要は無く、上記集電子などのレイアウトに応じて、案内アーム30の後部など、連結部材37の長さに沿った任意の位置に設けられてよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上のように、本発明によれば、案内輪の耐久性を向上させ、かつ、軌道車両の高い走行安定性を維持できるので、軌道車両に関連する分野、例えばその製造分野において本発明が好適に利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0043】
1 車両、 10 軌道、 11,12 ガイドローラ、 20 走行輪、 25 タイロッド、 30 案内アーム、 31,32 案内輪、 39 軌道逸脱防止ローラ、 40 モータ
【要約】
【課題】軌道車両の案内装置において、案内輪の耐久性を向上させ、かつ、高い走行安定性を維持する。
【解決手段】軌道車両1は、ゴムタイヤからなる4つの走行輪を備え、走行面に敷設された単一の軌道10に沿って走行する。車両1の案内装置は、車体の底面に設けられた案内アーム30と、案内アーム30の前後両端部に設けられた案内輪31,32とを備える。軌道10は、各案内輪31,32を挟んで互いに一定間隔を隔てて延びる左右一対のガイドレール11,12を有する。左右一対のガイドレール11,12の互いに対向する面の断面の外形は円弧である。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11