(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5797822
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】光増幅器の配置
(51)【国際特許分類】
H01S 3/23 20060101AFI20151001BHJP
H01S 3/10 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
H01S3/23
H01S3/10 D
【請求項の数】20
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-155861(P2014-155861)
(22)【出願日】2014年7月31日
(65)【公開番号】特開2015-35602(P2015-35602A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2015年1月28日
(31)【優先権主張番号】1314098.3
(32)【優先日】2013年8月7日
(33)【優先権主張国】GB
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508316069
【氏名又は名称】ロフィン−ジナール ユーケー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Rofin−Sinar UK Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン ロバート リー
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン スチュワート フルフォード
【審査官】
百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】
欧州特許第02475054(EP,B1)
【文献】
欧州特許第00821453(EP,B1)
【文献】
国際公開第88/009578(WO,A1)
【文献】
特開2009−026854(JP,A)
【文献】
特開2008−085292(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/086036(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00−3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光増幅装置であって、
長辺と短辺とを有する矩形の断面を有するとともに、前記断面と直交する方向において互いに反対側に位置する入側及び出側を有し、発振器から放出されるビームが前記入側に入射する増幅媒質と、
2つ以上の高反射ミラーと、を備え、前記増幅媒質は前記2つ以上の高反射ミラーの間に配置されており、
前記断面の前記短辺はx軸に沿っており、前記長辺はy軸に沿っており、z軸は前記断面に垂直であり、x軸、y軸、及びz軸は直交座標系を構成し、
前記発振器から放出される前記ビームが、前記増幅媒質を通過する複数の横断を含むジグザグ状の経路を形成するように前記2つ以上の高反射ミラーの各々において1回以上反射され、前記ジグザグ状の経路は、前置増幅段における第1経路と、出力増幅段における第2経路とを含み、前記ビームは、前記前置増幅段における第1経路を2回通過し、前記出力増幅段における第2経路を1回通過し、前記第1経路と前記第2経路とは互いに別個の経路であり、前記増幅媒質において重なっている、光増幅装置。
【請求項2】
前記第1経路及び前記第2経路は、前記ビームが前記増幅媒質を3回以上横断するように形成される、請求項1に記載の光増幅装置。
【請求項3】
前記第2経路は、前記第1経路よりも横断が1回以上多い、請求項1又は2に記載の光増幅装置。
【請求項4】
前記増幅媒質の前記出側に位置決めされるイメージングミラーをさらに備え、前記ビームは前記第1経路の1回目の通過の後に前記イメージングミラーに入射し、前記イメージングミラーは、前記前置増幅段における前記2回の通過を生じさせるべく、前記第1経路に沿って前記ビームを戻すように配置されている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光増幅装置。
【請求項5】
光増幅器は、前記増幅媒質の前記入側に位置決めされる第1レンズ及び第2レンズを備え、前記第1及び第2レンズは、倍率1の望遠鏡を形成するように配置され、前記ビーム
は、前記前置増幅段を出ると、前記望遠鏡を通じて前記出力増幅段への入力ビームを形成する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光増幅装置。
【請求項6】
光増幅器は、第1偏光素子と第2偏光素子とを備える、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光増幅装置。
【請求項7】
前記第1偏光素子は、前記増幅媒質の前記出側において前記イメージングミラーに近接して位置決めされる、請求項4を引用する請求項6に記載の光増幅装置。
【請求項8】
前記第1偏光素子は、1/4波長板である、請求項7に記載の光増幅装置。
【請求項9】
前記第2偏光素子は、前記増幅媒質の前記入側に位置決めされる、請求項6乃至8のいずれか一項に記載の光増幅装置。
【請求項10】
前記第2偏光素子は偏光キューブである、請求項9に記載の光増幅装置。
【請求項11】
前記増幅媒質の前記入側に配置される偏光素子をさらに備え、前記偏光素子と前記第1レンズとは、前記発振器によって放出される入力ビームを前記前置増幅段のために前記増幅媒質中に結合させるように配置される、請求項5に記載の光増幅装置。
【請求項12】
前記偏光素子は、偏光キューブであり、該偏光キューブは、前記第1レンズと前記第2レンズとの間に配置される、請求項11に記載の光増幅装置。
【請求項13】
前記出力増幅段のために前記ビームを前記増幅媒質中に戻すように、前記偏光キューブと前記第2レンズとの間にリターンミラーが位置決めされる、請求項12に記載の光増幅装置。
【請求項14】
光増幅装置の前記入側に配置されるパルスピッカを備える、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の光増幅装置。
【請求項15】
前記高反射ミラーは平面ミラーである、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の光増幅装置。
【請求項16】
前記高反射ミラーは、球面ミラー、円筒ミラー、及び2つの直交軸に沿った曲率が異なるミラーからなる群から選択される、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の光増幅装置。
【請求項17】
前記増幅媒質は、矩形の形状及び断面のスラブである、請求項1乃至16のいずれか一項に記載の光増幅装置。
【請求項18】
前記増幅媒質は、光励起される単結晶のスラブである、請求項17に記載の光増幅装置。
【請求項19】
前記スラブは、2つのドープされていない能動媒質の間にドープされた能動媒質が配置されている結晶サンドイッチ構造により形成される、請求項18に記載の光増幅装置。
【請求項20】
前記増幅媒質は、長辺と短辺とを有する矩形の断面を有する、スラブ放電を提供するように矩形電極間において励起させられる気体である、請求項1乃至17のいずれか一項に記載の光増幅装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーが低く、周波数が低減された、超短パルスのシードを増幅する際の使用のための光増幅装置に関し、詳細には、限定的ではないが、単結晶のスラブの活性領域において一体化された前置増幅器及び出力増幅器を有する光増幅装置に関する。
【背景技術】
【0002】
10ps未満のパルス幅を有するレーザによって、マイクロマシニングの工業用途において新たな処理能力が提供される。しかしながら、大量な製造を可能にする処理スピードには、100kHzから10MHzの間のパルス繰り返し周波数(100Wを超える平均パワーとともに最適な周波数に調節可能な)が必要とされる。典型的には、そのような組み合わせは、最大パルスエネルギが非線形効果とレーザ結晶への損傷とによって制限されているので、ほとんどのレーザ設計では達成できない。薄型ディスクレーザ発振器(thin disk laser oscillator)によって、150Wに近接するパワー(必要とされるパワー範囲の下端にある)が達成されてきた。しかし、その薄型ディスクレーザ発振器は、3.50MHzから60MHzの間の固定されたパルス繰り返し周波数(必要な範囲より大きい)で達成されてきたのであり、そのパルス繰り返し周波数は、平均パワーを維持しつつ特定の処理のために最適周波数に容易に調節されることはできない。
【0003】
現在、MOPA(master oscillator power amplifier)は、必要な高い平均パワーを得るのに使用される。そのような装置では、低いパワーのレーザのマスタ発振器は、出力増幅器中に結合される必要な幅のパルスを生成する。入力パルスは増幅器中において放出を誘導し、その放出は、入力パルスに加えられ、より高い出力エネルギのパルスが作り出される。同様の出力を有する発振器内において達成され得るよりも強度及びフルエンスの両方が非常に低いので、その装置は、損傷が生じる前に、より高い出力パワー及びエネルギを達成できる。MOPAは、今、多くの代替レーザ設計において実装されつつある。
【0004】
応用振興のためのフラウンホーファー研究機構(Fraunhofer−Gesellschaft zur Foerderung der angewanten)による特許文献1には、例えばドイツのエッジウェーブ・ゲーエムベーハー(EdgeWave
GmbH)から商業的に入手可能なイノスラブ(INNOSLAB)増幅器において見出される光増幅装置が説明されている。
図1に示されるように、この装置は、矩形の結晶スラブの増幅器の媒質Aを有する。発振器によって放出されるビームBは、ミラーD,E間の経路Cを進行し、その経路Cにおいて、ビームBは、増幅器の媒質Aを複数回横断する。媒質Aの各横断に伴い、ビームBの断面はx方向に増大する。厚さ方向(thin direction)であるy方向においては、ビームサイズは維持される。x軸に沿った広がりは、ビームが増幅されるときにビーム強度がほぼ一定に保持されることを確実にするように選択される。横断の数は、ビームBと、増幅器の媒質Aとの間の重なりを最大にするように選択される。このようにして、増幅器の1回の通過を利用すると、損傷及び非線形効果についての閾値を避けつつ、蓄えられたエネルギは効率的に取り出されることが可能である。そのような装置を使用して、76MHzの周波数で680fsのパルス幅を有する400Wの平均パワーレベルが達成されてきた。
【0005】
この配置の欠点は、増幅器の最初のいくつかの通過において有効な飽和が生じることを確実にするべく、十分な入力パワーが必要とされることである。
そのような発振器−増幅器による装置を次いで第2の矩形スラブの増幅器(ここで、ビ
ームは、1回の通過において1つの横断からなる経路をなす)とカスケードする増幅システムでは、20MHzの周波数で615fsのパルス幅を有する1.1kWに及ぶパワーレベルを達成可能である。このシステムの増幅手法でも、やはり、有効な取り出しを確実にすることは、十分な入力のシードのパワーに依存する。さらに、カスケードされる配置には、相当な空間が必要とされる。
【0006】
十分な入力のシードのパワーを必要とする欠点を克服するべく、再生増幅器又は前置増幅段を使用して比較的低いシードのパワーを増幅することが提案されている。ギガフォトン株式会社(Gigaphoton Inc.)による特許文献2には、代替のレーザ設計における再生増幅器の使用が詳述されている。
図2に示す一実施形態では、1つの増幅媒質のスラブFは、
図1のように配置された増幅器G(能動媒質Fの複数の横断からなる通過を1回伴う)と、再生増幅器H(能動媒質Fの1つの横断からなる通過を複数回伴う)との複数の機能を果たすべく使用される。低いパワーのシードレーザJは、2つのミラーM,Nから形成される共振器中に入射される。この入射信号は、光音響素子Kの切り替えによって導入される。次いで、ビームBは、蓄えられたエネルギの大部分が取り出されるまで、ミラーM,N間の1つの横断において複数回通過する。所望のタイミングにおいて、ポッケルスセルLは切り替えられ、ビームBは、ポラライザPを使用して再生増幅器Hから増幅器G中に出力される。その配置は、増幅器Gと再生増幅器Hとが同じ能動媒質Fを共有するという点で小型であるが、増幅器Gと再生増幅器Hとは、媒質Fにおいて互いに分離しており、概して独立の装置として動作する。
【0007】
この配置の欠点は、能動構成要素を必要とすることにある。そのようなポッケルスセル及び光音響素子は、コストを増加させ、配置に対して複雑さを増加させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6654163号明細書
【特許文献2】米国特許第7903715号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0821453号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第2475054号明細書
【特許文献5】国際公開第88/09578号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、パワーが低く、周波数が低減された、超短シードパルスのための増幅を提供する光増幅器を提供することである。
本発明の少なくとも1つの実施形態のさらなる目的は、前置増幅器と出力増幅器との部分的な結合とともに能動媒質において前置増幅器と出力増幅器とを一体化する光増幅器を提供することである。
【0010】
本発明の少なくとも1つの実施形態の一層さらなる目的は、完全に受動な構成要素を使用する光増幅器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様によると、光増幅装置であって、長辺と短辺とを有する略矩形の断面を有する増幅媒質と、2つ以上の高反射ミラーと、を備え、増幅媒質は2つ以上の高反射ミラーの間に配置されており、断面の短辺はx軸に沿っており、長辺はy軸に沿っており、z軸は光軸であり、x軸、y軸、及びz軸は直交座標系を構成し、ミラーは、増幅されるビームがミラーの各々において1回以上反射され、増幅媒質のxz平面を通じる複数の横断を含む経路を形成するように設計及び配置されており、ビームは、発振器から放出
され、前置増幅段における第1経路を2回通過し、出力増幅段における第2経路を1回通過し、第1経路と第2経路とは独立しており、増幅媒質において重なっている、光増幅装置が提供される。
【0012】
ビームは、第1前置増幅経路に沿って増幅媒質を通過し、同じ第1経路に沿って戻り、次いで第2パワー増幅経路(幾分かの部分的な結合が生じるように前置増幅経路と特定箇所において重なる(locally overlap))に沿って再び増幅媒質を通過する配置を提供することによって、そのシステムにより増幅器を通じる全ての横断の有効な飽和が確実にされることが可能である。さらに、第1前置増幅経路上においてビームを2回通過させることによって、効率的なパワーの取り出しが達成される。第2経路は第1経路と異なるので、それらの経路と増幅媒質との最大化された重なりが達成でき、これによって、パワーが低い超短パルスの最適なパワーレベルへの増幅が可能になる。
【0013】
好適には、ビームは、各経路上において増幅媒質の3つ以上の横断をなす。これによって、増幅媒質を小型にすることが可能になり、したがって小さな装置が提供される。好適には、第2経路は、第1経路よりも横断が1つ以上多い。随意に、第2経路は、第1経路の少なくとも2倍多く横断する。このようにして、増幅媒質との重なりが最大化される。
【0014】
好適には、光増幅器は増幅媒質の出側に位置決めされるイメージングミラーを備え、ビームは第1経路の1回目の通過の後にイメージングミラーに入射し、イメージングミラーは、前置増幅段における2回の通過を生じさせるべく、第1経路に沿ってビームを戻すように配置されている。このようにして、戻されたビームは、増幅器への入力部におけるビームの像であり、戻されたビームは、増幅器を通じるビームの第1経路に正確に重なり、これによって、同じ経路の2回通過が確実になる。その経路に沿った利得が十分高ければ、第2経路によって、飽和と効率的な取り出しとが確実になる。
【0015】
好適には、光増幅器は、増幅媒質の入側に位置決めされる第1レンズ及び第2レンズを備え、第1及び第2レンズは、倍率1の望遠鏡を形成するように配置される。このようにして、ビームは、前置増幅段を出ると、望遠鏡を通じて出力増幅段への入力ビームを形成できる。
【0016】
好適には、光増幅器は、複数の偏光素子を備える。好適には、第1偏光素子は、増幅媒質の出側においてイメージングミラーに近接して位置決めされる。より好適には、第1偏光素子は、1/4波長板である。このようにして、増幅媒質を出る直線偏光ビームは、円偏光へと変換されることができ、イメージングミラーにおいて反射することができ、再び1/4波長板を通過する時、円偏光は、第1経路の1回目の通過におけるビームの偏光に垂直な方向の直線偏光へと変換される。
【0017】
好適には、第2偏光素子は、増幅媒質の入側に位置決めされる。より好適には、第2偏光素子は偏光キューブである。好適には、偏光キューブは、発振器によって放出される入力ビームがキューブを通過するように配置される。このようにして、入力ビームは、その直線偏光を所望の向きに定められることができる一方、前置増幅段からの戻されたビームは、キューブにおいて反射される。戻されたビームのこの反射によって、出力増幅段のために第1経路とは異なる経路上へビームが増幅媒質中に配向されることが可能になる。
【0018】
有利には、第2偏光素子と第1レンズとは、発振器によって放出される入力ビームを前置増幅段のために増幅媒質中に結合させるように配置される。より好適には、偏光キューブは、第1レンズと第2レンズとの間に配置される。これによって、小型な配置が提供される。さらに好適には、リターンミラーは、第2偏光素子と第2レンズとの間に位置決めされる。リターンミラーは、出力増幅段のためにビームを増幅媒質中に戻す。第1レンズ
と第2レンズとの間のリターンミラーの使用によって、望遠鏡は効果的に折り曲げられ、これによって、配置がより小型になる。
【0019】
一実施形態では、光増幅器は、該光増幅器への入力部に配置されるパルスピッカを備える。このようにして、パルスは、発振器の入力ビームから捨てられることができて周波数が低下させられ、これによって、平均入力パワーが低下させられる。したがって、周波数の最適化が、特定の平均パワーに関して達成されることが可能である。
【0020】
好適には、高反射ミラーは平面ミラーである。このようにして、ビームは、経路の各横断上においてy方向にミラーを横切るように調整されることが可能である。したがって、ミラー間においてジグザグ経路が形成される。あるいは、高反射ミラーは、球面ミラー、円筒ミラー、及び2つの直交軸に沿った曲率が異なるミラーからなる群から選択されてもよい。好適には、高反射ミラーは、非平行に配置される。
【0021】
好適には、増幅媒質は、矩形の形状及び断面のスラブである。好適には、増幅媒質は、光励起される単結晶のスラブである。スラブは、2つのドープされていない能動媒質の間にドープされた能動媒質が配置されている結晶サンドイッチ構造により形成されてもよい。
【0022】
あるいは、増幅媒質は、長辺と短辺とを有する矩形の断面を有する、スラブ放電を提供するように矩形電極間において励起させられる気体であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】別の光増幅器の先行技術の配置を示す概略図。
【
図3】本発明の実施形態による光増幅器を示す概略図。
【
図6】本発明のさらなる実施形態による光増幅器を示す概略図。
【
図7】本発明の一実施形態による光増幅器において、前置増幅段と、一体化された前置増幅段及び出力増幅段とからの出力パワーに関する入力のシードのパワーのプロットを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態は、例としてのみ、ここで説明される。
最初に図面の
図3を参照する。
図3には、一般に参照符号10によって示される光増幅器を示す。ここで、本発明の一実施形態では、パワーが低く、連続波(CW)又はパルスの発振器(図示せず)から放出されるビーム12は、第1経路16(増幅媒質14を2回通過する)により増幅媒質14を通過することによって増幅され、第2経路18(増幅媒質14を1回通過する)により増幅媒質14を通過することによって増幅される。各経路上において、ビーム12は、ミラー20,22(各々、増幅媒質14のエントリ側24及び対向する出側26に対して配置される)における反射によって増幅媒質14を複数回横断する。
【0025】
増幅媒質14は、単結晶のスラブ(断面において矩形であり短辺及び長辺を有する)である。断面の短辺はx軸に沿っており、長辺はy軸に沿っており、z軸は光軸であり、x軸、y軸、及びz軸は、直交座標系を構成する。
図1において、長辺が示されている。一実施形態では、増幅媒質は、2つのドープされていない矩形断面に挟まれたドープした能動媒質を有する結晶の構造物である。本技術分野において既知であるが、増幅媒質14は、光学的にポンピングされ、能動利得領域を与える。このポンピングは、レーザダイオー
ドのアレイによる場合がある。代替の実施形態では、増幅媒質は、スラブのガス放電によって作り出される。これは、典型的には、2つの矩形平面であり平行に配置された電極間において励起させられるCO
2等のガスである。
【0026】
ミラー20,22は、パワーの最大量が光増幅器10を通じて伝達されるように高反射である。ミラー20,22は、ビーム12をy方向に面を横切らせる(‘walk’ across)のに十分な直径を有する平面である。ミラーは、増幅媒質14の第1端部28及び第2端部30に面するように配置されており、ミラー20,22のいずれかについての端を切り取ることなくビームが各端部28,30を入ったり出たりできるようにずらされている。ミラー20,22は、端部28,30に対して平行に配置される場合がある一方、シードビームに関連しないミラー間のレーザ発振の可能性を低減するべく、傾斜角が導入されてもよい。この発振によって、シードビームのために利用可能な蓄えられたエネルギが低減させられるであろうし、また、得ることのできる出力パワーが低減させられるであろう。代替の実施形態では、ミラー20,22は、球面状であったり、円筒状であったり、又は2つの直交軸(典型的にはx及びy)に沿った曲率が異なる。好適には、高反射ミラーは、非平行に配置される。
【0027】
ミラー20,22は、エントリ側において増幅媒質14に入るビーム12がミラーの各々において少なくとも1回反射して、xy平面において増幅媒質14を通じる複数の横断32からなる経路を形成するように配置される。各横断は異なる位置に存在し、これによって、ビーム12が増幅媒質14を通じて進行するときに各反射について異なる位置において各ミラー20,22に入射する。複数の横断32からなる経路は、媒質14を通じるジグザグ型として現れる。ビームサイズと増幅器10の幾何学的配置とは、ビーム12の経路が媒質14の大部分と重なるように選択されることが可能であることが認められる。
【0028】
イメージングミラー34は、増幅媒質14の出側26において位置決めされており、ビーム12は、第1経路16の1回目の通過の後、イメージングミラー34に入射する。イメージングミラーは、ビーム12を正確にそれ自身の上に戻すように選択された曲率半径を有する球面ミラーである。このようにして、ビーム12は、2回目の通過として増幅媒質14を通じて戻される。その戻されたビームは、増幅器10に対する入力部24におけるビームの像であり、増幅器10を通じてビームの第1経路16と正確に重なり、同じ経路16の2回の通過を確実にする。
【0029】
イメージングミラー34に近接して位置決めされるのは、1/4波長板40である。1/4波長板40は、直線偏光の光を円偏光の光に変換したり、円偏光の光を直線偏光の光に変換したりする標準的な偏光素子である。増幅媒質14を出る直線偏光ビーム12は、円偏光へと変換され、イメージングミラー34において反射し、再び1/4波長板40を通過する時に変換されて直線偏光へと戻される。しかし、その直線偏光は、ビーム12が増幅媒質14を出た時のビーム12の偏光に垂直の方向である。
【0030】
増幅媒質14のエントリ側24において、発振器又は他のレーザシードから放出された偏光したビーム12は、増幅器10へと入力される。エントリ側に配置されているのは、偏光キューブ42及びリターンミラー44とともに第1レンズ36及び第2レンズ38である。偏光キューブ42は、入力ビーム12が偏光キューブ42を通過するときに入力ビーム12の偏光に影響を与えず、経路16に配置されているレンズ36は、ビーム12を増幅媒質14中に結合させるのに使用されることが可能である。偏光キューブ42は、増幅媒質14の2回通過を完了した戻されたビーム12が完全に反射されるように配置される。反射したビームはリターンミラー44に向かって配向され、そのリターンミラー44は、第1経路16とは異なっており独立した第2経路18上へと増幅媒質14中にビーム12を送り返すように配置されている。リターンミラー44と増幅媒質14との間には、
第2レンズ38が配置されている。第1レンズ36及び第2レンズ38は、倍率1の望遠鏡を形成するように配置される。このようにして、ビームは、増幅媒質14中に戻される。
【0031】
使用の際、直線偏光のシードの入力ビーム12が提供される。これは、パワーが低く、連続波又はパルスの発振器(図示せず)等のソースによって提供され、その発振器は、増幅媒質14中への光結合のための適した光学系(図示せず)を使用するような状態にされていてもよい。増幅器10へ入ると、ビーム12は、前置増幅段46を進行する。これは、前置増幅段46に関連する
図3の部分である
図4において最もよく示されている。類似の部分は、明確さの役に立つように同じ参照符号が与えられている。
【0032】
増幅材料14の薄い結晶スラブは、薄い利得シートを作り出すべく、レーザダイオードを用いてポンピングされている。結晶増幅材料14内では、ビーム12は、熱により生成されたレンズによってx方向(厚さ軸としても知られる)に閉じ込められている一方、ビーム12は、y方向において自由に発散する(幅の軸としても知られる)。ビーム12は、ビーム12が複数回の跳ね返りをするミラー22に入射するまで、一般に、z方向に進行し続ける。ミラー22の傾斜角によって、ビーム12は第2の方向に沿って配向され、ビーム12がミラー20に入射するまで結晶14を通じて横断する。次に、ミラー20によって、ビーム12はさらなる方向に沿って結晶14を通じて再配向され、ミラー22の上方における結晶14の端部30を通過することによってビーム12が増幅媒質14を出るまで、再び結晶14を横断する。ビーム12は、増幅媒質14の3つの横断32をなす1回の通過により、増幅媒質14を通じる第1経路16を進行する。
【0033】
次に、ビーム12は、両軸に沿って自由に発散した後、ビームの最初の直線偏光を円偏光へと変換する1/4波長板40を通過する。次に、ビーム12はイメージングミラー34に衝突した後、再び1/4波長板40を通過し、その1/4波長板40は、ビーム12が増幅器10に入力された時の偏光に対して垂直な方向に沿って向けられた直線偏光へとビームの円偏光を変換する。イメージングミラー34は、増幅器10への入力部におけるビーム12の像としてビーム12が反射されることを確実にするように選択される。このようにして、反射されたビーム12は、増幅材料14を通じて反対に第1経路16に正確に続くことが可能であり、経路16の2回通過を確実にする。1回目の通過に沿った利得は、十分に高く、これによって、2回目の通過により、飽和と効率的な取り出しとが確実になる。次にビーム12は、ビーム12が入力された時と同じ位置において、端部24を通じて増幅材料14を出る。増幅システム10の経路16に沿った最初の2回通過は、前置増幅段46を構成する。
【0034】
図3に戻って、ビーム12は、増幅材料14から出て進行し続け、第1レンズ36を通過した後、偏光キューブ42に衝突する。1/4波長板40においてビームに生じた偏光の回転によって、ビーム12は偏光キューブ42において内部で反射される。偏光キューブ42によって、ビーム12はリターンミラー44へと再配向され、リターンミラー44は、ビーム12を別の方向に反射し、ビーム12を第2レンズ38に通過させる。第1レンズと第2レンズとは倍率1の望遠鏡を形成し、それによって前置増幅段46からの出力の像を、増幅材料14中に、また出力増幅段48中に戻す。
【0035】
出力増幅段48では(この段48に関連する
図3の部分である
図5において示されている)、第1に、ビーム12は、z方向に沿って増幅材料14において伝搬し、この場合、増幅材料14の側部50に平行である。x方向、すなわち厚さ方向では、ビーム12は、また、熱により生成されたレンズによって封じ込められている一方、幅方向(wide direction)、すなわちy方向では、ビーム12は自由に発散する。端部30において1つ目の横断32の後に増幅媒質14を出ると、ビーム12は、ミラー22に衝突
し、増幅材料14を通じて再配向された後、ミラー20に衝突しさらなる再配向される。複数の跳ね返り(この場合、6回の跳ね返り)は、ミラー20とミラー22との間で生じ、ビーム12は、増幅材料14を通じた7つの横断ができ、第2経路18をたどる。増幅媒質14を通じたこの1回通過は、ビーム12が増幅媒質14の遠端52において結合を外れるときに終了する(ミラー22の端54の上方を通過する)。典型的には、増幅材料14の7つ(示されているように)及び9つのいずれかの横断によって、ビーム12が進み続けてミラー54の頂端54を切り取ることなく、ビーム12の増幅材料14との重なりを最大にするように選択された横断32の数を有する経路18が作り出される。増幅システム10を通じる第2経路18は、出力増幅段48と称され、前置増幅段46において含まれてない区域からのエネルギの取り出しが最大化されることを確実にするように設計される。
【0036】
第2経路18は、第1経路16と同じ増幅媒質の空間体積を横断することが注意される。経路16,18は、増幅媒質14において重なると考えられ得るが、増幅媒質14に入る異なる角度によって、互いに独立しており別個である。
図3に示されるように、ビーム12の増幅媒質14中への光結合は、前置増幅段46及び出力増幅段48の両方において同じ入る地点で媒質14に入るビームを用いて達成できる。
【0037】
ここで図面の
図6を参照すると、パルスのシードレーザ(図示せず)と偏光キューブ42との間の入力部においてパルスピッカ56を含む増幅器10が示されている。超短パルスにおいて高いパルスエネルギを得るためには、パルス繰り返し率を低減させることが頻繁に必要であることが知られている。これは、シードレーザと増幅器10との間にパルスピッカ56を置くことによって、達成可能である。次に、増幅器10は、求められるパルスにのみ作用する。シードレーザの平均パワーは、増幅器10の平均出力パワーと比較して小さいので、遮られたパルスは、必ずしも激しい損失を構成せず、また、残部の平均パワーは、増幅器10を飽和させるのに十分である。この実施形態では、唯一の能動構成要素はパルスピッカであり、他の構成要素の全ては完全に受動である。
【0038】
一体化された前置増幅器46と出力増幅器48とを有する光増幅器10の例では、入力のシードのパワーは、0から35mWの間から変化しており、ビームは、各々が90Wを放出する4つのダイオードバー(図示せず)を用いてポンピングされた薄いスラブの出力増幅器14中に結合していた。幾何学的配置は、3つの横断32からなる第1経路16(ビーム12は、前置増幅段46において2回通過する)と、出力増幅段48についての1回通過における7つの横断32からなる第2経路とを提供するように配置されていた。連続波のファイバ結合型レーザを用いた以前の1回通過の測定によって、同様の条件下で約1.5cm
−1の小信号利得係数が実証されていた一方、発信器における結晶増幅媒質14の使用によって、145Wが生成されていた。
【0039】
図7を参照すると、0から5Wの範囲の前置増幅器の出力パワー62と、0から50Wの範囲の出力増幅器の出力パワー64とに関して、0から35mWの範囲の入力のシードのパワー60についてのプロットが示されている。前置増幅器からの出力パワーは、出力増幅器の開始の前のものである。出力増幅器の出力パワーは、7つの横断の出力増幅器に関する増幅器からのものである。全ての点は、出力増幅器からの出力パワーにおいて前置増幅器を超える増大を示している一方、入力のシードが33mWから5mWに低減させられた場合、出力増幅器の出力における低減(〜30%)と比べて、前置増幅器の出力における非常に大きな低減(〜65%)が存在する。このことによって、その設計における前置増幅器の重要性が実証されている。前置増幅器によってシードに加えられる追加のパワーは、出力増幅器を有効に飽和させるのに十分であり、これによって、シードに関して影響の受けにくさ(degree of insensitivity)がもたらされる。例えば、シードのパワーにおける50%の低減は、増幅器の出力においては10%の低減
にしかならない。
【0040】
さらなる実証では、50Wのパワー出力は、7つの横断の出力増幅器を使用して30mWの連続波のシードのパワーを用いて達成された。これは、前置増幅を有さないシステムにおいて30mWのシードのパワーを用いて達成される17Wの出力よりも約3倍高い。出力ビームは、M
2<1.3の値を有し、ガウシアン様と観測された。増幅器が9つの横断の出力増幅器を用いて動作させられた場合、パワー出力は70Wであった一方、ガウシアン様の出力ビーム及びM
2<1.3のビームの品質はなおも維持された。
【0041】
以上の例から見ることができるが、前置増幅段46を増幅媒質14内に含めることは、有効な飽和に必要なパワーを非常に下回るシードの入力は前置増幅段46を使用して増幅されることを意味する。前置増幅段46からの出力パワーは、15mWの低さまでのシードのパワーについて、出力増幅器48の有効な飽和を確実にするのに十分高い。次に、出力増幅器48からの出力パワーは、シードパワーにおける増大によってほとんど影響を受けない。
【0042】
この動作の性能の効果(ramification)は、超短パルスを使用して行われる処理のためのパルスパラメータを最適化する場合、特に重要である。シードが固定された周波数であり5Wまでの大きくない平均パワーの従来のシステムでは、パルスピッカは、必要とされる値に周波数を低減するべく、多くの近接するパルスを捨てるのに使用され、したがって、従来のシステムでは、平均出力パワーも非常に低減させられ得る。同様の入力基準が
図6に示されている増幅器に対して適用された場合、典型的には、パルスピッカの後の増幅器10からの出力パワーは、シードから放出される出力パワーの0.1%から10%の領域における量に低減させられ得る。したがって、本発明の増幅器によって、必要とされるスピードで工業上の処理を可能にする十分に高い平均パワーへの増幅を確実にできる。
【0043】
本発明の本質的な利点は、効率的な大量製造過程のために必要なレベルの出力パワーを生成する、パワーが低く、周波数が低減された、超短シードパルスを増幅するための光増幅器が本発明によって提供されることである。
【0044】
本発明のさらなる利点は、前置増幅器と出力増幅器とを部分的に結合させることにより能動媒質において前置増幅器と出力増幅器とを一体化させる光増幅器(比較的低いコストで小型の装置を提供する)が本発明によって提供されることである。
【0045】
本発明の一実施形態のなおもさらなる利点は、完全に受動の構成要素を使用する光増幅器が本発明の一実施形態によって提供されることである。
本発明の範囲から逸脱することなく本明細書に記載の発明に対して様々な修正がなされ得ることが当業者によって認められる。例えば、安定又は不安定のビームは、適切な光学系を選択したり、増幅媒質内においてビームを操作したりすることによって作り出されることができる。ビームを操作するべく、薄い増幅媒質の使用によって、十分な加熱を用いて、熱レンズが生成されることが可能である。ガイドが全内部反射よってなされ熱レンズが避けられるように、加熱の低減を可能にする屈折率導波構造(index waveguide structure)が使用される場合がある。