【実施例】
【0041】
以下の実施例により本発明をさらに説明する。これらは本発明を何ら制約するものではない。
【0042】
実施例および比較例において行われたフィルムの試験は、以下の通りである。
(1)耐熱性
東京都家庭用品の品質表示法にしたがって、耐熱温度を測定した。
(2)粘着性
ガラス容器へのくっつき性を、10人のパネラーによるアンケートで評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:9人以上が、粘着性が良いと判断した
○:7〜8人が、粘着性が良いと判断した
△:4〜6人が、粘着性が良いと判断した
×:7人以上が、粘着性が悪いと判断した。
(3)カット性
フィルムを小巻にしたものを、金属製鋸刃を有する化粧箱に入れ、フィルムのカット性を、10人のパネラーによるアンケートで評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:9人以上が、カット性が良いと判断した
○:7〜8人が、カット性が良いと判断した
△:4〜6人が、カット性が良いと判断した
×:7人以上が、カット性が悪いと判断した。
(4)透明性
JIS K7105に準拠し、ヘーズ値を測定した。
(5)高温溶出試験
表面積100cm
2の円形状の試験片(直径11.3cm)を切り出し、その片面全体を温度175℃のオリーブ油200mlに2時間接触させた後、オリーブ油に抽出された試験片からの溶出物の量を求めた。抽出量は、(オリーブ油で抽出前の試験片の質量)−(オリーブ油で抽出後の試験片の質量)+(試験片に浸み込んだオリーブ油の質量)により求めた。抽出量をオリーブ油1mlあたりの濃度に換算した数値を溶出量とした。単位はμg/mlである。なお、試験片に浸み込んだオリーブ油の質量は、抽出後の試験片からn−ヘプタンでオリーブ油を抽出し、定量した。
(6)曲げ弾性率
JIS K7171:2008に準拠して、試験速度2mm/分、圧子R3で測定をした。試験片のサイズは長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmである。なお、試験片は、JIS K6921−2、JIS K6922−2、JIS K6925−2に準拠して、射出成形または圧縮成形にて成形した。
【0043】
実施例1
層(A)を構成するオレフィン系樹脂(a)として日本ポリプロ(株)製のNAC4(プロピレン系ブロック共重合体;MFR(測定温度:230℃、荷重:2.16kg):6.0g/10分;密度:0.9g/cm3;曲げ弾性率:760MPa)を使用し、その両面に積層される層(B)を構成するメチル−1−ペンテン系重合体(b)として、三井化学(株)製のMX−004(ポリ(4−メチル−1−ペンテン);MFR(測定温度:260℃、荷重:5.00kg):23g/10分;密度:0.833g/cm3)を各々、押出機(池貝鉄工(株)製、スクリュー径:40mm、L/D:28)に供給した。三層フィルム(B/A/B)の各層の厚み(μm)が2/8/2(厚み比:0.25/1/0.25)となるように共押出多層Tダイにて積層して、全厚12μmのフィルムを作成した。このフィルムの試験結果を表1に示す。
【0044】
実施例2
各層の厚み(μm)を3/6/3(厚み比:0.5/1/0.5)とした以外は、実施例1と同様にして、全厚12μmの三層フィルム(B/A/B)を作成した。このフィルムの試験結果を表1に示す。
【0045】
実施例3
各層の厚み(μm)を4/4/4(厚み比:1/1/1)とした以外は、実施例1と同様にして、全厚12μmの三層フィルム(B/A/B)を作成した。このフィルムの試験結果を表1に示す。
【0046】
実施例4
各層の厚み(μm)を5/2/5(厚み比:2.5/1/2.5)とした以外は、実施例1と同様にして、全厚12μmの三層フィルム(B/A/B)を作成した。このフィルムの試験結果を表1に示す。
【0047】
実施例5
層(A)を構成するオレフィン系樹脂(a)として、TOTAL PETROCHEMICAL社製の1471(シンジオタクチック・エチレン・プロピレン;MFR(測定温度:190℃、荷重:2.16kg):4.0g/10分;密度:0.88g/cm
3;曲げ弾性率:340MPa)を使用した以外は、実施例2と同様にして、全厚が12μmで、各層の厚み(μm)が3/6/3(厚み比:0.5/1/0.5)である三層フィルム(B/A/B)を作成した。このフィルムの試験結果を表1に示す。
【0048】
実施例6
層(A)を構成するオレフィン系樹脂(a)として、日本ポリプロ(株)製のWFX4T(メタロセン触媒プロピレン系共重合体;MFR(測定温度:190℃、荷重:2.16kg):7.0g/10分;密度:0.90g/cm
3;曲げ弾性率:700MPa)を使用した以外は、実施例2と同様にして、全厚が12μmで、各層の厚み(μm)が3/6/3(厚み比:0.5/1/0.5)である三層フィルム(B/A/B)を作成した。このフィルムの試験結果を表1に示す。
【0049】
実施例7
層(A)を構成するオレフィン系樹脂(a)として、日本ポリプロ(株)製のFW4BT(プロピレン系ランダム共重合体;MFR(測定温度:190℃、荷重:2.16kg):6.5g/10分;密度:0.90g/cm
3;曲げ弾性率:850MPa)を使用した以外は、実施例2と同様にして、全厚が12μmで、各層の厚み(μm)が3/6/3(厚み比:0.5/1/0.5)である三層フィルム(B/A/B)を作成した。このフィルムの試験結果を表1に示す。
【0050】
実施例8
層(A)を構成するオレフィン系樹脂(a)として、三井化学(株)製のBL3110(エチレン・ブテン−1共重合体;MFR(測定温度:190℃、荷重:2.16kg):1.0g/10分;密度:0.91g/cm
3;曲げ弾性率:250MPa)を使用した以外は、実施例2と同様にして、全厚が12μmで、各層の厚み(μm)が3/6/3(厚み比:0.5/1/0.5)である三層フィルム(B/A/B)を作成した。このフィルムの試験結果を表1に示す。
【0051】
比較例1
層(A)としてメチル−1−ペンテン系重合体(三井化学(株)製、MX−004)を使用し、層(B)として、オレフィン系樹脂である日本ポリエチレン(株)製のKF260(エチレン・ヘキセン−1共重合体;MFR(測定温度190℃、荷重:2.16kg):2.0g/10分;密度:0.903g/cm
3;曲げ弾性率:82MPa)を使用した以外は、実施例3と同様にして、全厚が12μmで、各層の厚み(μm)が4/4/4(厚み比:1/1/1)である三層フィルム(B/A/B)を作成した。このフィルムの試験結果を表1に示す。
【0052】
比較例2
実施例1において層(B)として使用したメチル−1−ペンテン系重合体(三井化学(株)製、MX−004)のみを用い、単層押出し機にて厚さ12μmの単層フィルムを作成した。このフィルムの試験結果を表1に示す。
【0053】
比較例3
比較例1において層(B)として使用したオレフィン系樹脂(日本ポリエチレン(株)製、KF260)のみを用い、単層押出し機にて厚さ12μmの単層フィルムを作成した。このフィルムの試験結果を表1に示す。
【0054】
比較例4
実施例1において層(B)として使用したメチル−1−ペンテン系重合体(三井化学(株)製、MX−004)および層(A)として使用したオレフィン系樹脂(日本ポリプロ(株)製、NAC4)を70:30の重量比で混合し、得られた樹脂組成物を用いて、単層押出し機にて厚さ12μmの単層フィルムを作成した。このフィルムの試験結果を表1に示す。
【0055】
参考例1
層(A)を構成するオレフィン系樹脂(a)として、日本ポリエチレン(株)製のKF260を使用した以外は、実施例2と同様にして、全厚が12μmで、各層の厚み(μm)が3/6/3(厚み比:0.5/1/0.5)である三層フィルム(B/A/B)を作成した。このフィルムの試験結果を表1に示す。
【0056】
参考例2
層(A)を構成するオレフィン系樹脂(a)として(株)プライムポリマー製の232J(高密度ポリエチレン;MFR(測定温度190℃、荷重:2.16kg):5.0g/10分;密度:0.958g/cm3;曲げ弾性率:1100MPa)を使用した以外は、実施例2と同様にして、全厚が12μmで、各層の厚み(μm)が3/6/3(厚み比:0.5/1/0.5)である三層フィルム(B/A/B)を作成した。このフィルムの試験結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
表1から明らかなように、本発明のフィルムは、耐熱性、粘着性およびカット性に優れ、高温での溶出量も少ない。また、実施例3のフィルムについては、その表面にマヨネーズ0.5gを載せ、出力700Wの電子レンジにて60秒加熱するという加熱試験を行い、加熱試験の前後でのフィルム表面の変化を調べた。
図1は、加熱試験前のフィルム表面の電子顕微鏡写真(倍率:500倍)であり、
図2は加熱試験後のフィルム表面の電子顕微鏡写真(倍率:500倍)である。
図1および
図2から、本発明のフィルムは高温にさらされても融けないことが分かる。したがって、本発明のフィルムは、包装された食品にフィルムからの溶出物が移行することや、表面のフィルムが融けて食品と混ざるという心配がない。
【0059】
一方、表1に示されるように、層(A)としてメチル−1−ペンテン系重合体(b)を使用し、層(B)としてオレフィン系樹脂(a)を使用した比較例1のフィルムは、高温での溶出量が多かった。また、このフィルムについても、実施例3の場合と同様の加熱試験を行った。
図3は、加熱試験前のフィルム表面の電子顕微鏡写真(倍率:500倍)であり、
図4は加熱試験後のフィルム表面の電子顕微鏡写真(倍率:500倍)である。
図3および
図4から、加熱試験後のフィルムは融けているのが分かる。
【0060】
また、表1から明らかなように、メチル−1−ペンテン系重合体のみを使用した比較例2のフィルムは粘着性に劣り、オレフィン系樹脂のみを使用した比較例3のフィルムは耐熱性およびカット性に劣るとともに、高温での溶出量が多かった。比較例4のフィルムは、メチル−1−ペンテン系重合体とオレフィン系樹脂との混合物からなる単層フィルムであり、粘着性に劣ると共に、高温での溶出量が多かった。層(A)として曲げ弾性率が100MPa未満であるオレフィン系樹脂を使用した参考例1のフィルムはカット性に劣り、曲げ弾性率が950MPaより大きいオレフィン系樹脂を使用した参考例2のフィルムは粘着性に劣る。
【0061】
実施例9
実施例2において層(B)として使用したメチル−1−ペンテン系重合体(三井化学(株)製、MX−004)に代えて、上記メチル−1−ペンテン系重合体(三井化学(株)製、MX−004)と流動パラフィン((株)松村石油研究所製のP−350P;動粘度(測定温度37.8℃):75.9cSt;密度:0.868g/cm3)とを97:3(重量比)で混合して得られた樹脂組成物を使用した以外は実施例2と同様にして、全厚が12μmで、各層の厚み(μm)が3/6/3(厚み比:0.5/1/0.5)である三層フィルム(B/A/B)を作成した。得られたフィルムの透明性はヘーズ値で0.9%であり、実施例2のフィルム(ヘーズ値:6.2%)よりも優れていた。