(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
本体部(1)と、本体部(1)で支持される加熱ヘッド(2)と、加熱ヘッド(2)を加熱する熱源(11)と、熱源(11)に対して駆動電流を供給する電源部(12)と、電源部(12)の給電状態を制御するスイッチ操作具(13)とを有し、
本体部(1)の一端に、加熱ヘッド(2)が本体部(1)から突出する状態で設けてあり、
唇に塗布された化粧料に、所定温度に加熱された加熱ヘッド(2)を密着させて、化粧料を塗り伸ばすことができ、
加熱ヘッド(2)の表面に、化粧料を塗り伸ばす展伸面(32)が周回状に形成してあり、
加熱ヘッド(2)が、断面円形の展伸面(32)と、展伸面(32)の端部に、加熱ヘッド(2)の軸に対して傾斜させて設けたマッサージ面(31)とを含んで丸棒状に形成してあることを特徴とする唇用美容器具。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施例)
図1ないし
図17は、本発明に係る唇用美容器具の実施例を示す。なお、本発明における前後、左右、上下とは、
図2および
図3に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。
図2において、唇用美容器具は、本体部1と、本体部1の上端から上向きに突出する状態で設けた加熱ヘッド2と、本体部1の下端に設けたイオンクレンジング装置3と、加熱ヘッド2およびイオンクレンジング装置3の外面を覆う上キャップ4(
図3参照)、および下キャップ5などで構成してある。
【0017】
(本体部の構造)
図2〜
図6に本体部1の詳細構造を示している。本体部1は、グリップを兼ねる本体ケース6と、本体ケース6に組付けられる保持ケース7と、本体ケース6の下側に配置される底蓋8などで構成してあり、保持ケース7の上端に先の加熱ヘッド2が組付けてある。本体部1の内部には、加熱ヘッド2を加熱するヒーターユニット(熱源)11と、ヒーターユニット11に対して駆動電流を供給する電池(電源部)12が収容してある。この実施例では、本体ケース6の内部に電池12を収容し、保持ケース7の上部にヒーターユニット11を配置するようにした。また、本体ケース6の上端に臨んで、唇用美容器具の運転状態を切換えて、電池12の給電状態を制御するスイッチボタン(スイッチ操作具)13が設けてある。
【0018】
図5に示すように、本体ケース6は、丸筒状の内ケース15と、内ケース15を収容する透明な四角筒状の外ケース16とで二重筒状に形成してあり、両ケース15・16の間の隙間に装飾シート17が収容してある。このように、外ケース16の内部に装飾シート17を配置すると、外ケース16を介して装飾シート17を視認する際に、外ケース16の透明感によって装飾シート17の呈色状態を深みのあるものとすることができ、本体ケース6の外観を高級感に富むものとすることができる。また、模様や呈色状態が異なる複数の装飾シート17を用意しておくことにより、装飾シート17の種類数の分だけ美容器具の外観上のバリエーションを拡大できる。
【0019】
図6に示すように、保持ケース7は、前ケース7aと後ケース7bとを蓋合せ状に接合して構成してあり、その上半部分にヒーターユニット11、スイッチボタン13、および回路基板19などを収容する制御区画20が設けてある。また、前ケース7aの下半部には電池ホルダー21が一体に設けてあり、保持ケース7を本体ケース6から抜外した状態において、電池12を電池ホルダー21に着脱することができる。回路基板19には、スイッチボタン13で切換え操作されるスイッチ素子22が実装してあり、さらに、スイッチ素子22の上下にチップ状のLED23・24が実装してある(
図1参照)。回路基板19には、加熱ヘッド2およびイオンクレンジング装置3に対する給電状態を制御する制御回路が実装してある。回路基板19は、前ケース7aと後ケース7bの接合面の間に挟持固定してある。
【0020】
スイッチボタン13を支持するために、保持ケース7の制御区画20の下部前面にレンズユニット25を組付け、同ユニット25と前ケース7aとでスイッチボタン13を出没自在に案内し、ばね28で外向きに押出し付勢している。レンズユニット25は透明プラスチック材で形成してあり、その上下に先のLED23・24と正対する導光壁26・27が設けてある。
【0021】
スイッチボタン13をばね28に抗して1回押込み操作すると、スイッチ素子22がオン状態になり、このオン信号を受けた制御回路がイオンクレンジング装置3に電池12の電力を供給する。同時に下側のLED23が点灯して、唇用美容器具の運転状態が、イオンクレンジングのための第1モードになっていることを導光壁26を介して表示する。スイッチボタン13をもう一度押込み操作すると、スイッチ素子22のオン信号を受けた制御回路が、イオンクレンジング装置3への給電を停止し、ヒーターユニット11に電池12の電力を供給する。同時に上側のLED24が点灯して、唇用美容器具の運転状態が、マーサージと化粧料の展伸のための第2モードになっていることを導光壁27を介して表示する。さらに、スイッチボタン13を押込み操作すると、スイッチ素子22のオン信号を受けた制御回路が、全ての給電路を遮断して電力の供給を停止して待機状態になる。
【0022】
(加熱ヘッドの構造)
図1、
図6および
図7に加熱ヘッド2の詳細構造を示している。加熱ヘッド2は、アルミニウム製の丸棒に旋削加工と研削加工とを施して砲弾状に形成してあり、その上端に半球状のマッサージ面31が形成され、マッサージ面31の下側に連続して断面円形の展伸面32が形成してある。また、展伸面32より下側には丸軸状の装着軸33が形成してある。加熱ヘッド2の内部には、後述する温度センサー41を収容するための中空部34が下向きに開口する状態で形成してあり、中空部34の開口縁の周囲に、ヒーターユニット11の熱を受継ぐフランジ状の受熱壁35が張出してある。先の装着軸33を前後ケース7a・7bの対向面に設けた軸受部36で軸支することにより、加熱ヘッド2は保持ケース7で回転自在に支持される。つまり、加熱ヘッド2は本体部1で回転自在に支持されている。前後ケース7a・7bに設けた軸受部36は、上下2段の半円状のフランジ36aで構成してある(
図7参照)。
【0023】
図6に示すように、ヒーターユニット11は、絶縁性のベースフィルム11aの上面にヒーター線11bをつづら折り状に配置し、その上面を絶縁性の保護フィルム11cで覆ったフィルムヒーター(面状発熱体)からなる。ベースフィルム11aの周縁の2個所には電極39が設けてあり、両フィルム11a・11cの中央に装着穴40が形成してある。ヒーター線11bはステンレス製の板材にエッチング加工を施して形成されている。温度センサー41とヒーターユニット11を支持するために、加熱ヘッド2の内部に加熱部ホルダー42が配置してある。
【0024】
図7において、加熱部ホルダー42は、ヒーターユニット11を支持する皿状のベース部43と、ベース部43から上向きに突設される筒壁44とを一体に備えており、ベース部43を前後ケース7a・7bで挟持して保持ケース7に固定されている。ベース部43に装着したヒーターユニット11は、中央の装着穴40が筒壁44の基端部に外嵌して径方向へ移動不能に支持されており、さらに、ヒーターユニット11の上面が加熱ヘッド2の受熱壁35と小さな隙間Eを介して上下に対向している。詳しくは、ヒーターユニット11の全厚寸法が0.5〜0.6mmであるとき、ヒーターユニット11の上面と加熱ヘッド2の受熱壁35との間の隙間Eの寸法が0.12〜0.2mmになるようにした。なお、加熱ヘッド2は本体部1に対して回転不能に固定することができるが、その場合には、ヒーターユニット11を受熱壁35に密着させることにより、熱伝導効率を向上することができる。
【0025】
上記のように、ヒーターユニット11と受熱壁35とを小さな隙間Eを介して正対させると、ヒーターユニット11から受熱壁35への熱移動を効果的に行ないながら、ヒーターユニット11の熱が周囲に放散されるのを皿状のベース部43で防止できる。また、加熱ヘッド2が本体部1の中心軸の周りに回転するとき、ヒーターユニット11が受熱壁35と擦れ合うのを避けて、加熱ヘッド2の回転動作を円滑化でき、加えて、ヒーターユニット11が受熱壁35で擦られて発熱機能が損なわれるのを避けることができる。さらに、ヒーターユニット11を加熱部ホルダー42に固定するので、ヒーターユニット11の電気的な接点構造を簡素化できる。
【0026】
温度センサー41は、チップ状のNTCサーミスタからなり、加熱部ホルダー42の筒壁44の上端の上面に配置されて、加熱ヘッド2の温度状態を中空部34を介して検知する。温度センサー41のセンサーリード45は、筒壁44の内部空間を利用して制御区画20側へ導出されて回路基板19に接続してある。制御回路は温度センサー41の検知信号を受けてヒーターユニット11の発熱状態を制御し、加熱ヘッド2のマッサージ面31および展伸面32の表面温度を36℃以上45℃以下の温度範囲に保持する。センサーリード45は筒壁44で常に保護されているので、本体部1に大きな衝撃が作用するような場合でも、センサーリード45が断線することはない。なお、温度センサー41は、筒壁44の上端の上面から僅かに浮き離れた状態で支持してあってもよい。
【0027】
(イオンクレンジング装置の構造)
図2、および
図8〜
図11にイオンクレンジング装置3の詳細構造を示している。
図2において、イオンクレンジング装置3は、本体ケース6の側に設けられる2個のグリップ電極51・52と、底蓋8の下面中央に設けられる肌用電極53と、これらの電極51〜53にパルス電流を供給する電流調整回路などで構成してある。電流調整回路は回路基板19に設けた制御回路の一部を構成している。肌用電極53に美容用液が含浸された綿棒(美容液含浸体)54を装着すると、同電極53と綿棒54とが導通した状態になるので、綿棒54の綿球部55を唇の肌面に接触させて払拭することにより、イオン導出作用によって肌面を整えることができる。
図3において符号56は綿棒54の軸部である。
【0028】
本体ケース6の上下端には、それぞれ四角枠状の上エンドキャップ58および下エンドキャップ59が係合装着してあり、これらのエンドキャップ58・59の表面全体に金属めっきを施すことによりグリップ電極51・52が形成してある。上エンドキャップ58は、基本的に下向きに開口する四角箱状に形成するが、その前壁はレンズユニット25を組むために切欠いてある(
図6参照)。下エンドキャップ59は上下両面が開口する四角枠状に形成され、その後面の左右中央に上向きの電極片60が突設してある。上エンドキャップ58は保持ケース7の電池ホルダー21の上側部分に係合装着してあり、下エンドキャップ59は内ケース15の下部に凹凸係合構造61を介して係合装着してある(
図8参照)。
【0029】
下エンドキャップ59の下面中央には、ねじボス62が設けてあり、ねじボス62と、その下面に接合した底蓋8とをビス63で締結することにより、底蓋8が下エンドキャップ59に固定してある。
図8に示すように、下エンドキャップ59を内ケース15の下部に係合装着した状態においては、底蓋8に設けた係合腕91が、電池ホルダー21の下部の係合片92と係合している。
【0030】
肌用電極53は、ステンレス製の電極ホルダー65に装着してあり、電極ホルダー65は、底蓋8と、底蓋8の下面に固定した蓋体66とで挟持固定してある。
図9に示すように、肌用電極53は、導電性のゴムを素材にしてキャップ状に形成してあり、電極ホルダー65に外嵌する筒状の周回壁67と、中央に綿棒54用の装着穴68が形成してある端壁69とを一体に備えている。周回壁67の内面には、電極ホルダー65に設けた係合溝76に係合する係合リブ70が形成してある。また、装着穴68の下開口には、綿球部55の基端部分を受止めるすり鉢状の受座71が形成してある。電極ホルダー65は、軸部73とフランジ部74とを一体に備えており、軸部73の中央に綿棒54の軸部56を受入れる逃穴75が有底穴状に形成してあり、軸部73の周面に係合リブ69と係合する係合溝76が周回状に形成してある。
【0031】
電極ホルダー65に設けた逃穴75が有底穴で形成してあるので、綿棒54から軸部56を伝って流れ落ちる美容用液の全てを逃穴75で受止めて穴内に貯留できる。従って余分な美容用液が本体部1の内部に入り込んで、内部回路がショートするのを確実に防止できる。
図8に示すように、逃穴75の直径D1は、装着穴68の直径D2より大きく設定してある。また、装着穴68の直径D2は綿棒54の軸部56の直径より小さく設定してあり、従って
図13に示すように、軸部56は装着穴68に対して圧入気味に装着される。
【0032】
上下のグリップ電極51・52、および肌用電極53のそれぞれにパルス電流を供給する給電構造を
図10に示している。給電構造は、上エンドキャップ58の内面のめっき層に接触する第1接触端子79と、電池ホルダー21の外面の左右に配置される第2接触端子80、および第3接触端子81を備えている。さらに給電構造は、下エンドキャップ59のねじボス62にビス63で共締め固定される第4接触端子82と、底蓋8で上下スライド自在に案内されるピン状の第5接触端子83と、同端子83を押上げ付勢する金属製のばね84などで構成してある。ばね84の下端は電極ホルダー65で受止められている。
【0033】
図1に示すように、第1接触端子79は後ケース7bに装着されて、回路基板19に対してリード線を介して接続してある。また、第2接触端子80と第3接触端子81は、
図11に示すように電池ホルダー21の左右壁に固定されて、回路基板19に対してリード線を介して接続してある。同様に、電池12用の正極端子85と負極端子86は、電池ホルダー21の定位位置に固定されて、リード線を介して回路基板19に接続してある。
【0034】
図12に示すように、下エンドキャップ59を内ケース15に係合し、さらに保持ケース7を内ケース15に差込み係合すると、
図13に示すように、グリップ電極52と導通する第4接触端子82が第2接触端子80に密着し、さらに電極ホルダー65を介して肌用電極53と導通する第5接触端子83が、第3接触端子81に密着する。従って、回路基板19に実装した制御回路から供給されるパルス電流を、上下のグリップ電極51・52、および肌用電極53にそれぞれ供給することができる。また、保持ケース7の下端に第2接触端子80および第3接触端子81を設け、底蓋8の上端に第4接触端子82および第5接触端子83を設けるので、保持ケース7を内ケース15に単に差込み係合するだけで、対応する各端子どうしを確実に密着させることができる。
【0035】
後述するように、イオンクレンジング作業を行うときには、綿棒54に美容用液を含浸させた状態で唇のケアを行う。そのため、美容用液の含浸量が多いと、綿球部55から滴り落ちた美容用液が肌用電極53の表面を伝って蓋体66へと流動する。このように、過剰な美容用液が蓋体66を介して本体部1の内部に入り込むのを防ぐために、肌用電極53の蓋体66との隣接端に溝部88を形成し、さらに溝部88に臨む蓋体66の表面に液受凹部89を周回状に形成している(
図13参照)。溝部88は、肌用電極53を電極ホルダー65から取外すときの、指先を引っ掛けるための指掛部としても機能している。
【0036】
(唇用美容器具の使用法)
使用時には、
図13に示すように、綿棒54の軸部56を肌用電極53の装着穴68に圧入して、綿球部55側の軸部56を装着穴68で保持し、綿球部55を受座71で受止めた状態で綿棒54の全体を支持する。この装着状態において、美容用液が含浸された綿球部55は受座71に密着して肌用電極53と電気的に導通している。綿棒54が傾いた状態で装着穴68に差込み装着された場合には、軸部56の下端を逃穴75の内周面で支持することができるので、綿棒54が大きく傾いた状態装着されるのを防いで、安定した状態で支持できる。使用途中に軸部56が折れた場合でも、肌用電極53を電極ホルダー65から取外すだけで、折れた軸部56を簡単に排出することができる。
【0037】
綿棒54を肌用電極53に装着した後、綿球部55に化粧水などの美容用液を含浸させ、スイッチボタン13をオン操作して、美容器具をイオンクレンジングを行うための第1モードに切換える。この状態で、
図14に示すように本体部1を手で握って、人指し指を下側のグリップ電極52の電極片60に接触させた状態で、鏡を見ながら綿球部55を唇に接触させ、肌面の縦皺に沿って綿球部55を上下に滑らせる。また、唇の長手方向に沿って綿球部55を滑らせて肌面の全体を整える。
【0038】
このとき、綿球部55が装着された肌用電極53はプラスの極性に、グリップ電極51・52はマイナスの極性になっており、人体を介して両電極間に導通する微弱な電流によってイオン導出作用を発揮できる。このとき、唇の肌面には綿棒54を介して電流が供給されるので、肌面に作用する電流を弱めることができ、従って角質層が薄い唇の負担を軽減できる。以上のようにしてクレンジングを行うことにより、肌面の皺や襞部などに入込んでいた汚れを綿球部55に吸着させて、肌面を清潔な状態に保持できる。また、唇の肌面に化粧水をしみ込ませて、肌面を湿潤で弾力のある状態に保持できる。充分に払拭しきれていない口紅が残っていた場合でも、残留する口紅を確実に除去して、口紅による色素の沈着を防止できる。綿棒54を使用してクレンジングを行うので、唇の縦皺や肌面のめくれなどの肌荒れが激しい部分に対して集中的にマッサージ刺激を与え、あるいは綿棒54に含浸させた美容用液を縦皺に対してピンポイント状にしみ込ませるなど、微妙な操作を行なって唇の肌面の状態をさらに好適な状態にできる。
【0039】
イオンクレンジングを終了した後に、スイッチボタン13を再度オン操作して、マーサージと化粧料の展伸に適した第2モードに切換えて、加熱ヘッド2が適温になるまでの時間(約30秒)を利用して、唇にリップクリームをたっぷりと塗布する。次に、加熱ヘッド2が唇と正対するように本体部1を持った状態で、加熱ヘッド2の展伸面32を唇の表面に接触させて、唇の中央から側端へ向かって加熱ヘッド2を繰返し転動させてリップクリームを塗り伸ばす。このとき、加熱ヘッド2から伝動される熱によって、リップクリームに含まれるパラフィンなどの油脂類やワックス類が軟化して液状化するため、
図15に示すように、唇に縦皺が形成されていたとしても、皺の内部にまでリップクリームを染込ませることができる。また、加熱ヘッド2を転動させながらリップクリームを展伸面32で塗り伸ばすので、常に新規な展伸面32で唇の肌面を加熱でき、従ってリップクリームを効果的に展伸することができる。このとき、展伸面32に接触する唇に、摺擦作用による動的な刺激と温熱を与えられるため、血行の促進効果を発揮することができる。
【0040】
上記のように、リップクリームを唇の肌面に沿って均等に塗り伸ばした後に、マッサージ面31を唇の表面にあてがって円を描くようにして、温熱を加えながら唇全体のマッサージを行う。さらに、唇の輪郭線に沿って円を描くようにマッサージ面31を動かして、唇の輪郭部分のマッサージを行う。最後に、唇の周辺、あるいは唇の肌面に付着したリップクリームを、軽くティシュオフして唇のケアを終了する。唇のケアを行ったのちに口紅を塗布することにより、口紅の塗布状態を滑らかで潤いに富んだ状態に仕上げることができる。なお、ユーザーによっては、リップクリームを塗り伸ばすためにマッサージ面31を使用することが想定され、従ってマッサージ面31と展伸面32の機能の使い分けはユーザーの好みに委ねることとなる。
【0041】
以上のように、本実施例に係る唇用美容器具によれば、リップクリームを唇の肌面に沿って塗り伸ばした後に、加熱ヘッド2を唇の表面にあてがって、温熱を加えながら唇全体のマッサージを行うことにより、唇の状態を良好な状態に整えることができる。具体的には、唇の肌面がマッサージによって動的に刺激される効果と、温熱が加えられることによる皮膚細胞の活性化を促す効果とが得られるので、動的な刺激効果と活性効果との相乗効果で唇の血行を促進できる。これに伴い、唇の肌面の色合いを自然な状態に回復し、唇の表面状態を艶やかでふっくらとした状態に整えることができる。さらに、唇のケアを行ったのちに口紅を塗布することにより、口紅の塗布状態を滑らかで潤いに富んだ状態に仕上げることができる。短時間で唇のケアを行えるので、昼食後や退社前などの化粧直しなどの際にでも手軽に唇のケア行うことができる。
【0042】
第1モードと第2モードを行うのには、少なからず時間を要するので、入浴後にスキンケアを行う場合など、時間的に余裕がある状態で行うとよい。食後や退社前などの化粧直しなどの際には、口紅をティシュペーパーで拭取った後、リップクリームを塗布して第2モードでリップクリームを塗り伸ばし、あるいは唇のマッサージを行った後、口紅を塗布すればよいので、一連のメイク作業を短時間で行なうことができ、従って唇の肌面のケアをどこでも手軽に行える。さらに、出勤前のメイク時には、就寝前に塗布したリップクリームを軽くティシュオフした後、再度リップクリームを塗布して第2モードでリップクリームを塗り伸ばし、あるいは唇のマッサージを行って口紅を塗布すればよい。
【0043】
(綿棒の切断構造)
以上の説明から理解できるように、綿棒54はその軸部56を所定の長さに切断した状態で使用するが、軸部56の切断をユーザー自身で簡便に行えるようにするために、下キャップ5に綿棒を切断するための構造を設けている。
図16および
図17において、綿棒の切断構造は、下キャップ5の底壁の隅部寄りに設けた綿棒装填穴95と、この装填穴95に臨んで下キャップ5の周囲壁から連出した1対の棒受壁96とで構成する。綿棒装填穴95は、綿球部55を差込むための不完全円状の丸穴97と、丸穴97に連続して隅部へ延びる角穴98とで鍵穴形に形成してある。棒受壁96は角穴98の対向縁に沿って形成してあり、その上端から装填穴95の下開口までの長さが、肌用電極53の受座71から逃穴75の内奥端までの長さに一致させてある。また、1対の棒受壁96の対向間隔は、装填穴68の直径と同じか、これより僅かに大きく設定してある。
【0044】
綿棒54を切断する場合には、
図17(a)に示すように、綿球部55を下キャップ5の下面側から綿棒装填穴95の丸穴97に差込み、綿棒54の全体を角穴98側へ移動させて綿球部55を下キャップ5の隅壁に接当させる。この状態で、綿棒54から指先を離すと、
図17(b)に示すように、綿球部55の基端部が棒受壁96で受止められて綿棒54が宙吊り状態となる。次に、
図17(a)に示すように、綿球部55を下キャップ5の隅部に押えつけて固定したのち、
図17(b)に示すように、軸部56を棒受壁96の厚み方向へ折り曲げて余分な軸部56を切断することにより、適正な長さに切断された綿棒54を得ることができる。従って、ユーザーは、衛生的な状態で保管しておいた綿棒54を、イオンクレンジング作業を行う直前に切断して、清潔な状態で使用することができる。
【0045】
イオンクレンジング作業を行ったのちの綿棒54は、肌用電極53から取外して廃棄する。しかし、綿棒54を肌用電極53に装着した状態のままで、下キャップ5が底蓋8に装着されてしまうと、雑菌が繁殖し、あるいは皮脂が腐敗するなど、非衛生的な状態になってしまう。こうした事態を確実に防止し、肌用電極53を常に衛生的な状態に保持するために、
図12に示すように、下キャップ5の内法上下寸法を、下エンドキャップ59の下端面から肌用電極53の下端面までの上下寸法より僅かに大きくなるように設定している。こうした下キャップ5によれば、肌用電極53の綿棒54を差込んだ状態のままでは、綿棒54が邪魔になって下キャップ5を底蓋8に係合することができなくなる。従って、ユーザーの注意を喚起して、使用後の綿棒54は廃棄する必要があることを物理的に明確に知らせて、唇用美容器具の適正な使用を促すことができる。
【0046】
図18は唇用美容器具の別の実施例を示す。そこでは、保持ケース7の上端に斜めの装着壁100を設け、この装着壁100に加熱ヘッド2を同壁100と直交する状態で取付けるようにした。この取付け形態以外の部分は、先の実施例と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。以下の実施例においても同じ扱いとする。
【0047】
図19(a)〜(f)は、それぞれ加熱ヘッド2の別の実施例を示す。
図19(a)の加熱ヘッド2は、展伸面32を断面六角形状に形成し、その端部に部分球面状のマッサージ面31を形成した。
図19(b)の加熱ヘッド2では、断面円形の展伸面32の端部に、平坦面からなるマッサージ面31を形成した。
【0048】
図19(c)の加熱ヘッド2では、展伸面32を断面四角形状に形成し、その端部に平坦面からなるマッサージ面31を形成した。
図19(d)の加熱ヘッド2では、展伸面32およびマッサージ面31を1個の球面で形成して、展伸面32とマッサージ面31とが境目のない状態で連続するようにした。以上のように、展伸面32は、加熱ヘッド2の表面に周回状に連続する状態で形成してあればよい。
【0049】
図19(e)の加熱ヘッド2では、
図19(b)の加熱ヘッド2と同様に、断面円形の展伸面32の端部に平坦面からなるマッサージ面31を形成するが、マッサージ面31を加熱ヘッド2の上下方向の中心軸に対して傾斜させるようにした。
図19(c)におけるマッサージ面31も同様に斜めに傾斜させることができる。
図19(f)の加熱ヘッド2では、展伸面32およびマッサージ面31をダイヤカット状の多面体で形成するようにした。このように多面体状に形成した加熱ヘッド2では、展伸面32が多数個の平面で形成されるので、加熱ヘッド2が転動しすぎるのを抑制してリップクリームの塗り伸ばしを的確に行える。なお、化粧料を塗り伸ばす展伸面32と、唇をマッサージするマッサージ面31とを含んで球状に形成してある加熱ヘッド2とは、
図19(d)・(f)に示す加熱ヘッド2の形状を意味している。また、化粧料を塗り伸ばす展伸面32と、唇をマッサージするマッサージ面31とを含んで丸棒状に形成してある加熱ヘッド2とは、
図19(b)・(e)に示す加熱ヘッド2の形状を意味している。
【0050】
上記の実施例以外に、ヒーターユニット(熱源)11は本体部1に配置する必要はなく、加熱ヘッド2の内部に配置することができる。例えば、加熱ヘッド2の中空部34にヒーターユニット11を配置することができる。熱源11はニクロム線ヒーターなどで構成することができる。電源部12は電池である必要はなく、商用電源を電源部12とし、あるいは2次電池を電源部12とすることができる。スイッチ操作具13は、押しボタン構造である必要はなく、スライドノブ構造であってもよい。
【0051】
上記の実施例では、本体部1の一端に加熱ヘッド2を設け、他端にイオンクレンジング装置3を設けたが、本発明の美容器具は、少なくとも本体部1の一部に加熱ヘッド2が設けてあれば足りる。加熱ヘッド2は、ステンレス、銅合金を素材にして形成することができる。また、使用時における加熱ヘッド2の加熱温度が充分に低いので、必要があればプラスチック成形品、あるいはガラス成形品などで加熱ヘッド2を構成することができる。