(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
重合体組成物の熱安定性を増加させる方法であって、前記重合体が、アミノオルガノ官能性オルガノポリシロキサン液体又はメルカプトアルキル官能性オルガノポリシロキサン液体であり、前記重合体組成物に、効果的に安定化させる量のアミノオルガノ官能性オルガノシリコン化合物の銅含有錯体を加えることを含んでなり、前記銅含有錯体が、銅(II)化合物とアミノオルガノ官能性オルガノシリコン化合物とを、0.01:1を超えるCu:アミンのモル比で反応させることにより製造される、方法。
【背景技術】
【0002】
オルガノシリコン化合物、例えばオルガノシラン、及び特に直鎖状及び架橋したポリオルガノシロキサン、には、多くの用途がある。ポリオルガノシロキサン液体は、例えば離型剤として、熱伝達油として、潤滑剤として、及びゼログラフィックコピーにおけるフューザー油として使用されることが多い。シリコーン樹脂の形態にある高度に架橋したオルガノポリシロキサンは、とりわけ、粉体塗料、ペイント及びラッカーの成分、及び成形樹脂として有用である。シリコーンプラスチック及びエラストマーの形態にある架橋したオルガノポリシロキサンは、たわみ性の型、ゼログラフィックコピー用のトナー及びフューザーロール、コンベヤー等のローラー、及びシーラント、カプセル封入剤、及びガスケット材料を形成するのに有用である。オルガノシランは、オルガノポリシロキサンの製造及び変性、並びに他の多くの重合体の変性に、及び他の基材、例えば充填剤、紙、織物、等のシラン処理に使用されることが多い。上に記載した用途は、オルガノポリシロキサン及びオルガノシランの用途のほんの一部に過ぎない。
【0003】
オルガノシリコン化合物の用途の多くは、長期間にわたる熱的及び酸化安定性を必要とする。これは、例えば熱伝達油、フューザーロール、フューザー液体、等における、400°F(約200℃)以上までの温度が一般的である、高温に対する長期間の露出が必要になる場合に特に当てはまる。
【0004】
例えば、ゼログラフィックプリンター及びコピー機では、融解可能なトナーが画像形成ドラムに静電気的に引き寄せられ、基材、例えば紙、に転写される。トナーを付けた紙が加熱された、不粘着性ローラーを通り、トナーを融解させ、基材上への密着及び基材中への移行を容易にし、望ましい画像を形成する。トナーは、融解ローラーに密着してはならず、さもなければ後に続く画像が、前の画像の残物を受け継ぐことになる。この理由から、不粘着性重合体、例えばポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、及び架橋したシリコーンエラストマー、が、そのような用途に使用されている。
【0005】
シリコンのローラーが非常に一般的であり、それらの不粘着性を促進するために、いわゆる「フューザー油」、ポリジメチルシロキサン液体がしばしば使われる、を含むように加工されることが多い。これらの油は、物理的に配合され、徐々に染み出す。フューザー油は、物理的に配合される代わりに、又はそれに加えて、ローラーに散発的に塗布することもできる。アミノアルキル官能性シリコーン液体は、メルカプトアルキル官能性シリコーン液体と共に、特に有利であることが立証されている。
【0006】
シリコーン、例えばポリジメチルシロキサン及びポリ(メチルフェニル)シロキサン、は最も熱的に安定した重合体であるが、それらを高温で使用し続ける間に、これらの重合体でも、その特性が時間と共に変化する。例えば、ゼログラフィック処理の有用な説明も含む、米国特許第4,777,087号に開示されているように、シリコーンローラーの靭性が、200℃に近い融合温度で8,000〜32,000コピー後には約半分に低下する。ローラーの硬度が増加し、亀裂、窪み、及び最後にはローラーの破壊が起こることがある。従って、ローラーは、決められた仕事サイクルの後には交換しなければならない。他の分野に使用されるシリコーンエラストマー及び他の重合体においても、これらの同じ問題が起こることがある。
【0007】
熱劣化に対してシリコーンローラーを安定化させるための多くの試みがなされている。例えば米国特許第4,777,087号及び第4,925,895号では、少なくとも一個の多座キレート化配位子を有する遷移金属塩の錯体を、固体として、シリコーンフューザー液体も含む2成分硬化性シリコーン組成物の1成分に摩砕し、次いでこれを成形し、ローラー本体を形成している。しかし、このプロセスは、錯体を未硬化組成物に一様に摩砕する必要があり、明らかな改良ではあるが、熱的安定性が望ましいレベルよりもなお低い。
【0008】
ゼログラフィックコピーで直面する別の問題は、主としてフューザー油から分解によるホルムアルデヒドの発生である。そこで、米国特許第5,395,725号は、フューザー油をフューザーロール表面に直接塗布し、フューザー油が、少なくとも一種のメルカプトアルキル官能性のシリコーン及び少なくとも一種のアミノアルキル官能性シリコーンを含む。米国特許第5,493,376号は、シリコーン液体、及びクロロ白金酸と、少なくとも一個の不飽和基を含む環状ポリシロキサン又は直鎖状ポリシロキサンとの反応生成物である熱安定剤を含むフューザー油を使用している。米国特許第5,864,740号は、類似の、ただし、安定剤が白金以外の白金族金属、特にルテニウム化合物、とポリオルガノシロキサンの反応生成物である。高価な白金族金属の使用は、コストを大幅に増加させる。
【0009】
米国特許第5,604,039号では、熱安定性を増加させたフューザー油は、ポリオルガノシロキサン液体とフェノール官能性を付与したポリオルガノシロキサン液体のブレンドから製造され、一方、同じ本発明者への米国特許第5,780,454号は、従来のポリオルガノシロキサン液体、ポリオキシアルキレンエーテル官能性を付与したポリオルガノシロキサン液体、及び酸化防止剤のブレンドの使用を提案している。米国特許第5,625,025号は、フューザー油用途並びに他の用途、例えば高温潤滑剤及び離型剤、向けの耐熱性油を開示している。この組成物は、アミノ官能性及びフェノール官能性の両方のジオルガノポリシロキサン液体を含む。米国特許第6,045,961号では、フューザー油が、ポリオルガノシロキサン、及び金属アセチルアセトネートとそれぞれ不飽和基を含む直鎖状並びに環状シリコーン液体との反応生成物である安定剤を含む。米国特許第6,045,961号の段落1〜9では、熱安定性を得るための先行技術の試みが、長い間必要とされている、さらなる改良の必要性と共に、十分に考察されている。
【0010】
固体安定剤を摩砕する必要なしに、高い熱安定性を示し、安定剤として白金族の非常に高価な金属を使用せずに機能する、オルガノシリコン組成物を提供することが望ましい。コスト的に有利な成分による経済的なプロセスによりそのようなオルガノシリコン化合物を提供できることも、さらに望まれている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の銅(II)錯体は、銅(II)化合物、好ましくは五水和物としての硫酸銅(II)、自体又は水もしくは他の溶剤中に溶解させたものと、Si−C結合したアミノオルガノ官能性付与したオルガノシリコン化合物を反応させることにより、製造される。オルガノシリコン化合物は、シラン、シロキサン、シルカルベン(silcarbene)、等でよく、Si−C結合したアミノオルガノ基を有することを特徴とする。従って、シリル基、シロキシ基、ポリオルガノシロキシ基、等を有し、Si−C結合したアミノオルガノ基も有する有機重合体が、本発明で有用である。アミノ基は、第一級アミノ基、第二級アミノ基、又は第一級と第二級アミノ基の混合物でよい。アミノオルガノ基は、好ましくは式:
【化1】
を有し、式中、Rは、水素、C
1−18アルキル基、好ましくはメチル、エチル、プロピル、ブチル、又はオクタデシル、C
6−20アリール基、好ましくはフェニル又はナフチル、もしくはC
7−21アリールアルキル又はアルカリール基、好ましくはベンジルであり、R’は、直鎖状又は分岐鎖状でよい、炭素鎖が非隣接酸素原子によって任意で中断されている、二価のC
1−20炭化水素ラジカル、好ましくはエチル、プロピル、又はブチルであり、nは、0〜10、好ましくは0から3、最も好ましくは0又は1であり、R”は、SiCに結合した、直鎖状又は分岐鎖状の1〜20個の炭素原子を含む有機基、非隣接O、N、又はS原子によって任意で中断されており、さらに任意で
【化2】
結合を含み、R”は、脂肪族、脂環式、アリール、アリール脂肪族、又は脂肪族アリールでよい。最も好ましいアミノオルガニル基は、RがH又はメチルであり、R’がエチレン又はプロピレンであり、R”がメチレン又はプロピレンであるアミノオルガニル基である。
【0014】
オルガノシリコン化合物は、モノシラン、例えば式:
【化3】
のモノシランでよく、R
1は、C
1−20の任意で置換された炭化水素ラジカルであり、その際、好ましい置換基は、ハロゲン原子、リン含有ラジカル、シアノラジカル、−OR
5、−R
5−、−NR
52、−NR
5−C(O)−NR
52、−C(O)−NR
52、−C(O)−R
5、−C(O)OR
5、−SO
2−Ph及びC
6F
5であり、ここでR
5は上のRに関して定義した通りであり、Phはフェニルラジカルである。
【0015】
R
1ラジカルの例は、アルキルラジカル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチルラジカル、ヘキシルラジカル、例えばn−ヘキシルラジカル、ヘプチルラジカル、例えばn−ヘプチルラジカル、オクチルラジカル、例えばn−オクチルラジカル及びイソオクチルラジカル、例えば2,2,4−トリメチルペンチルラジカル、ノニルラジカル、例えばn−ノニルラジカル、デシルラジカル、例えばn−デシルラジカル、ドデシルラジカル、例えばn−ドデシルラジカル、及びオクタデシルラジカル、例えばn−オクタデシルラジカル、シクロアルキルラジカル、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びメチルシクロヘキシルラジカル、アリールラジカル、例えばフェニル、ナフチル、アントリル及びフェナントリルラジカル、アルカリールラジカル、例えばo−、m−、p−トリルラジカル、キシリルラジカル及びエチルフェニルラジカル、及びアラルキルラジカル、例えばベンジルラジカル、及びα−及びβ−フェニルエチルラジカルである。
【0016】
置換されたR
1ラジカルの例は、ハロアルキルラジカル、例えば3,3,3−トリフルオロ−n−プロピルラジカル、2,2,2,2’,2’,2’−ヘキサフルオロイソプロピルラジカル、ヘプタフルオロイソプロピルラジカル、ハロアリールラジカル、例えばo−、m−、p−クロロフェニルラジカル、−(CH
2)
n−N(R
5)C(O)NR
52、−(CH
2)
n−C(O)NR
52、−(CH
2)
n−C(O)R
5、−(CH
2)
n−C(O)OR
5、−(CH
2)
n−C(O)NR
52、−(CH
2)
n−C(O)−(CH
2)
m−C(O)CH
3、−(CH
2)
n−NR
5−(CH
2)
m−NR
52、−(CH
2)
n−O−CO−R
5、−(CH
2)
n−O−(CH
2)
m−CH(OH)−CH
2OH、−(CH
2)
n−(OCH
2CH
2)
m−OR
5、−(CH
2)
n−SO
2−Ph及び−(CH
2)
n−O−C
6F
5、ここで、R
5は、上に定義した通りであり、n及びmは、同一であるか、又は異なるものであって、0〜10の整数であり、Phは、フェニルラジカルを表す。
【0017】
R
1ラジカルは、好ましくは一価の、SiC結合した、任意で置換された、1〜18個の炭素原子を有する、脂肪族炭素−炭素多重結合が無い炭化水素ラジカルであり、より好ましくは一価の、SiC結合した、1〜6個の炭素原子を有する、脂肪族炭素−炭素多重結合が無い炭化水素ラジカルであり、特にメチル又はフェニルラジカルである。
【0018】
R
2ラジカルは、一価の、任意で置換された、SiC結合した、脂肪族炭素−炭素多重結合を有する炭化水素ラジカル、好ましくはエチレン系不飽和基、又はエチリン系不飽和基である。R
2ラジカルは、SiH官能性化合物による付加反応(ヒドロシリル化)を受け易い全ての基でよい。R
2ラジカルが、SiC結合した、置換された炭化水素ラジカルである場合、好ましい置換基は、ハロゲン原子、シアノラジカル及びR
5が上に定義した−OR
5である。R
2ラジカルは、好ましくは2〜16個の炭素原子を有するアルケニル及びアルキニル基、例えばビニル、アリル、メタリル、1−プロペニル、5−ヘキセニル、エチニル、ブタジエニル、ヘキサジエニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、ビニルシクロヘキシルエチル、ジビニルシクロヘキシルエチル、ノルボルネニル、ビニルフェニル及びスチリルラジカル、特に好ましくはビニル、アリル、プロペニル、メチルビニル、5−ヘキセニル又はシクロヘキセニルであるか、又は(メタ)アクリレート基を含む有機基である。ビニル基が好ましい。
【0019】
R
3は、1〜20個の炭素原子を含む加水分解可能な基、好ましくはアルコキシ又はアシルオキシ基であり、その際、アルコキシ又はアシルオキシ基のアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状でよく、任意で置換されており、上記Rの定義を有することができ、好ましくはメチル、エチル、プロピル、又はブチルである。R
3は、好ましくはメトキシ基又はエトキシ基である。R
3は、別の加水分解可能な基、特にアセトキシ基でよい。
【0020】
x、a、b、及びcの値は、それぞれ0〜3でよいが、ただし、x、a、b、及びcの合計は3を超えない。ケイ素に結合した水素及び加水分解可能な基の両方を有するオルガノシランは好ましくない。好ましいアミノオルガノ官能性シランは、アミノオルガノ基に結合したシリル基SiCが、トリメトキシシリル、トリエトキシシリル、ジメトキシメチルシリル、ジメトキシエチルシリル、ジエトキシメチルシリル、ジエトキシエチルシリル、メトキシジメチルシリル、エトキシジメチルシリル、ビニルジメトキシシリル、ビニルジエトキシシリル、ビニルメチルメトキシシリル、及び好ましいメトキシ、エトキシ、アセトキシ、メチル、エチル、及びビニル基を有する他のシリル基から選択されたシランである。
【0021】
特定のアミノオルガノ官能性シランは、その意図する用途に応じて選択する。例えば、そのシランが、湿分硬化性のオルガノシリコン組成物における架橋剤である場合、シランは、2又は3個のケイ素結合したアルコキシ基を有するように選択する。そのような組成物と反応するが、架橋はしないことを意図する場合、そのシランは、ただ1個のアルコキシ基を有することができる。同様に、付加硬化性オルガノシリコン組成物又はエチレン系不飽和を含む、又は不飽和モノマーから製造された重合体を変性又は架橋させることを意図する場合、そのシランは、少なくとも一個の不飽和基、好ましくはビニル基を有するように選択することができる。そのような選択により、シランの銅錯体を様々な重合体中に配合し、重合体の熱安定性を高めることができる。
【0022】
モノシランに加えて、ジシラン
【化4】
も使用できるが、好ましくはない、というのは、これらのジシランと類似しているが、Si−Si結合が、二価の炭化水素ラジカルにより中断されているためである。好適な二価の炭化水素ラジカルは、一価の炭化水素ラジカルR
1と対応するラジカル、好ましくはメチレン、エチレン、及びプロピレンである。これらの化合物では、dは0又は1であり、少なくとも一個のdは1である。全ての場合、ケイ素は四価である。
【0023】
アミノオルガノ官能性オルガノポリシロキサン及びそれらのSi−Si及びSi−B−Siのような基を含む変形はよく知られており、ここで、Bは、アミノ官能性オルガノシランに関して前に考察した二価の炭化水素基である。これらのオルガノシリコン化合物は、ここでは全て「オルガノポリシロキサン」と呼ばれ、環状、直鎖状、分岐鎖状、又は樹脂状(「シリコーン樹脂」)でよく、この分野ではよく知られている。本発明のオルガノポリシロキサンは、それらの製造において不可避でない限り、好ましくはSi−Si又はSi−B−Si結合を含まない。
【0024】
オルガノポリシロキサンは、好ましくは、式:
【化5】
(Q単位)、
【化6】
(T単位)、
【化7】
(D単位)、及び
【化8】
(M単位)
の単位を含んでなる。これらの四−、三−、二−、及び単官能性単位では、R
4は、アミノオルガノ基、水素、任意でO、N、又はS異原子を含むC
1−20炭化水素基、ヒドロキシル基、又は加水分解可能な基、好ましくはアルコキシ又はアセトキシ基でよいが、ただし、オルガノポリシロキサンは、少なくとも一個の、好ましくは二個以上のアミノオルガノ基を含む。
【0025】
C
1−20炭化水素基R
4は、置換されていても、又は置換されていなくてもよい。例としては、置換された、及び置換されていない炭化水素アルキル基、例えばR
1に関して定義したアルキル基が挙げられる。R
4は、エチレン系又はエチリン系不飽和を含む炭化水素基、例えばビニル基又はプロパルギル基、又はエチレン系不飽和基、例えばビニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、等でよく、R
2に関して上に定義したものを含む。
【0026】
炭化水素基R
4は、例えばハロゲンにより、例えばペルフルオロプロピル基のように、置換されており、散在する、非隣接のO、N、又はS原子、又は尿素、ウレタン、カーボネート又は他の基を含むことができる。R
4不飽和基のさらなる例は、(メタ)アクリラート基を含む基である。さらなるR
4は、エポキシ基、例えばグリシドオキシプロピル基を含むことができる。
【0027】
R
4は、加水分解し得る基、好ましくはアルコキシ基でもよい。加水分解し得る基は、前にR
3により定義した基を包含することができる。好ましい加水分解し得る基は、メトキシ及びエトキシ、最も好ましくはメトキシである。
【0028】
直鎖状又は非常に軽く分岐したオルガノポリシロキサン、すなわち5モル%以下のQ又はT基を含むオルガノシリコンが好ましい。これらのオルガノポリシロキサンは、ここでは「実質的に直鎖状」という。主なR
4基は、オルガノシリコン化学で一般的な基、例えばR
4がアルキル基である場合、メチル、エチル及びプロピル基、好ましくはメチル基、及びR
4が不飽和炭化水素である場合、ビニル、アリル、及びヘキセニル基である。幾つかの目的には、R
4は、好ましくはSi−C基によりシロキサン鎖に結合したポリオキシアルキレン基でよい。ポリオキシアルキレン基の末端基は、好ましくはヒドロキシル又はアルコキシ基である。そのような基は、ケイ素に結合した水素を有するオルガノポリシロキサンに、アリル官能性ポリエーテル、例えばアリル末端を有するポリエチレングリコール又はアリル末端を有するポリエチレングリコールモノエーテル、のヒドロシリル化により、付加することができる。
【0029】
オルガノポリシロキサンでは、少なくとも一個のR
4が、以前に説明したアミノオルガノ基Aである。
【0030】
R
4基の大多数がメチル又はフェニル基、より好ましくはメチル基であるのが好ましい。官能性R
4基の選択は、オルガノポリシロキサンの用途によって異なる。例えば、オルガノポリシロキサンをフューザー油として使用する場合、錯体形成されたアミノオルガノ基以外の、非錯体アミノアルキル基がR
4基として存在する、又は非官能性基、例えばメチル又はフェニル基、だけが存在するのが望ましい。一部のR
4基は、メルカプト炭化水素基、特にメルカプトアルキル基、であるのも有利であり、そこでは、メルカプト炭化水素基の炭化水素基が、炭化水素基R
1に関して以前に記載したものに対応する。
【0031】
しかし、オルガノポリシロキサンを縮合−硬化性(すなわち湿分硬化性)組成物の成分として使用する場合、ケイ素結合したヒドロキシル基又は加水分解可能な基、例えばアルコキシ又はアセトキシ基、が存在するのが望ましい。
【0032】
オルガノポリシロキサンを、フリーラジカル的に硬化する付加重合性組成物における反応性成分として使用する場合、R
4の一部、特に末端にあるR
4基は、不飽和基、エチレン系又はエチリン系不飽和基を含む必要がある。例えば、末端にある、又はペンダント(鎖上の)R
4はビニル又はアリル基でよい。
【0033】
オルガノポリシロキサンを、ヒドロシリル化により硬化する付加−硬化性組成物に使用する場合、一成分は、一部のR
4が水素であるオルガノポリシロキサンでよい、及び/又は第二成分が、一部のR
4が炭素−炭素不飽和を含む基を有するオルガノポリシロキサンでよい。あまり好ましくない実施態様では、一部のR
4が水素でよく、一部のR
4が不飽和炭化水素ラジカルでよく、両方共同じオルガノポリシロキサン中にある。
【0034】
ここでは単に「銅錯体」と呼ぶ、本発明のオルガノシリコン化合物銅錯体を含む硬化性組成物は、通常、従来のシラン及び/又はオルガノポリシロキサン成分も同様に包含する。非反応性成分、例えば非官能性シリコーン油、又は官能化されているが、硬化条件下では実質的に非反応性である官能基で官能化されているシリコーン油、に加えて、反応性ベース重合体、架橋剤、連鎖延長剤、触媒、等を含むそのような成分も存在することができ、場合により存在するのが好ましい。付加硬化性及び縮合硬化性オルガノシリコン組成物の両方の様々な成分は、よく知られており、例えばNoll, Chemistry and Technology of Silicones, Academic Press,(c)1968、及び多くの出版物及び特許に記載されており、とりわけここに参考として含める米国特許第7,153,914号、第7,396,894号、第7,511,110号、第7,786,198号、第7,842,771号、第7,151,150号、第7,015,297号、第6,284,860号、第6,254,811号、第6,218,495号、及び第6,218,498号を包含する。
【0035】
よく知られているように、硬化及び架橋は、上に引用する参考文献に反映されているように、一般的に触媒を必要とする。縮合硬化系は、しばしばアミン共触媒と共に、スズ触媒を使用することが多いが、他の多くの触媒も有用である。α−シリル基及び/又はα−シラン架橋剤を含む反応性ベース重合体を使用することにより、触媒は省略できることがある。付加硬化性(非ヒドロシリル化硬化性)系は、一般的にアゾ化合物、ヒドロペルオキシド、過酸化物、又は他のフリーラジカル開始材、例えばジクミルペルオキシド、を触媒として使用するのに対し、ヒドロシリル化により硬化する付加硬化性組成物は、一般的に白金族の触媒、例えば白金、ロジウム、又はイリジウム、を使用する。一般的な白金触媒には、例えばヘキサクロロ白金酸及びKarstedt’s触媒が挙げられる。全ての触媒は、縮合硬化であれ、二種類の付加−硬化系のどちらかであれ、よく知られており、市販されている。
【0036】
反応性基、例えばアルコキシ及び不飽和基、例えばビニル基、は、本発明の銅錯体の製造で存続するので、これらの錯体は、シランの場合、多くの系でモノマー、官能化剤、連鎖延長剤、及び架橋剤として、及びオルガノポリシロキサン錯体として、その他におけるベース重合体又は反応性マクロマーとして、使用できる。これは、多くの重合体系における安定剤として、銅オルガノシリコン錯体を配合する広範囲な可能性を開く。
【0037】
湿分硬化系、例えばトリアルコキシシラン、例えばメチルトリメトキシシラン、は、架橋剤として使用されることが多い。これらの伝統的な、広く使用されている架橋剤の全部又は一部を、本発明の銅錯体形成されたシランで置き換えることにより、硬化したエラストマーの熱安定性を増加させることができる。これに関して、例えばここに参考として含める、ベース重合体が、末端アルコキシシリル基を有するポリウレタン尿素重合体である米国特許第7,153,924号、第7,737,242号、第7,319,128号、及び第7,345,131号を参照。
【0038】
その上、シラン、例えばビニルジメトキシアミノプロピルシラン又はビニルジメチルアミノプロピルシラン、の銅錯体、は、ビニル末端を有するオルガノポリシロキサン又はエチレン系不飽和を含む他の重合体を硬化させる際に共重合し、それによって銅錯体をその分子レベルで取り入れることができる。
【0039】
銅錯体は、シラン、シロキサン、ポリシロキサン、等であれ、アミノオルガノシリコン化合物と、銅(II)化合物、それ自体、すなわち固体粒子状形態、又は溶剤中に溶解させた形態、の反応により製造する。
【0040】
アミノオルガノ化合物と反応し得るどのような好適な銅(II)化合物でも使用できる。例には、制限なく、銅(II)ハロゲン化物、例えばフッ化銅(II)、塩化銅(II)、臭化銅(II)、及びヨウ化銅(II)、銅(II)カルボキシレート、例えば銅(II)アセテート、銅(II)プロピオネート及び銅(II)ブチレート、銅(II)キレート化物、例えば銅(II)アセチルアセトネート、及び他の銅(II)塩、例えば硫酸銅(II)及び硝酸銅(II)が挙げられる。又、あまり好ましくはないが、対応する銅(I)化合物、を使用することもでき、これらの化合物は、例えば酸素、空気、又は酸化剤により、その場で酸化されて銅(II)になる。
【0041】
反応は、反応混合物が液体のままである、どのような望ましい温度でも、例えば−10℃〜200℃、好ましくは0℃〜150℃、最も好ましくは20〜25℃(実質的に室温)から約120℃、行うことができる。銅化合物をオルガノポリシロキサンに加えるか、又はオルガノポリシロキサンを銅化合物に加えることができる。一般的に、反応物を混合する時、僅かな発熱が観察され、この発熱が、例えば10分間〜10時間、好ましくは1〜5時間かかる反応時間の大部分を通して続く。混合物を加熱し、反応を完了させることができ、先に述べた反応温度に加熱するのが好ましい。反応の進行は、目視で評価することができるが、この必要はないことが多く、例えば30分間から2時間の反応時間で通常は十分である。
【0042】
銅化合物を溶剤中に溶解させる場合、プロトン性及び非プロトン性溶剤の両方が使用できる。銅化合物の水和物には、水が好適な溶剤であり、好ましくはできるだけ少量で使用する。アルコール、特に低級アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、及びイソプロパノール、ケトン、例えばメチルエチルケトン、ジエチルケトン、及び低級エステル、例えば酢酸エチル及びt−ブチルアセテート、を使用できる。低級グリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、等、並びに、それらのモノ−及びジ−エーテル、例えば2−メトキシエタノール及びジメトキシエタンも有用である。非プロトン性溶剤、例えばジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン及びジメチルスルホキシド、並びにエーテル、例えばジエチルエーテル、を使用できる。
【0043】
水以外の溶剤を使用する場合、蒸留又は窒素でストリッピング、等で容易に除去できるように、低分子量及び/又は低沸点の溶剤が好ましい。炭化水素溶剤も使用できるが、ほとんどの銅化合物は、炭化水素にあまり溶解しないので、原則的に低粘度に限る。使用する場合、溶剤は、その生成物中に存在することができるか、又は従来方法、例えば蒸留、好ましくはワイプド−フィルム又は流下液膜蒸発、もしくはストリッピングにより除去することができる。溶剤の存在が重要ではない用途では、生成物中に残っているどのような溶剤でも、特に良性の溶剤、例えばエタノール及び低VOCに等しい溶剤、例えばt−ブチルアセテート、は、生成物中に残しておくことができる。水を溶剤として使用する場合、水はオルガノポリシロキサン、特に低アミン価及び/又は高分子量のオルガノポリシロキサンと非相溶性であることが多いので、製品の僅かな曇りが予想される。
【0044】
生成物は、一般的にろ過して、反応混合物中に残る固体を全て除去するが、最終用途では、浮遊する固体の存在が問題とならない場合もある。
【0045】
硫酸銅(II)をアミノオルガノ官能性シラン及びシロキサンの製造に使用する場合、硫酸銅(II)は、好ましくは五水和物、すなわちCuSO
4・5H
2O、の、純粋な、又は好適な溶剤に溶解させた形態で使用する。好ましい溶剤は、水及び低級アルコール、例えばメタノールもしくはエタノール、である。水とアルコールの混合物も使用できる。非プロトン性極性溶剤、例えばジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、等、も好適である。
【0046】
銅化合物を、溶解した形態ではなく、純粋な形態で使用する場合、銅化合物は細かく粉砕するのが好ましい。平均粒子径は5nm〜100μmが好ましく、より好ましくは20nm〜50μmである。小さな粒子径は、反応が急速で、より完全になるという利点がある。銅化合物は、従来の粉砕及び摩砕技術、例えばサンドミル、ボールミル、及びガス−ジェットミル、により小粒子径にすることができる。小粒子径の場合、サイズ低下は、実質的に不活性な雰囲気、例えば窒素ガス、中で行うのが好ましい。
【0047】
銅化合物を溶液で使用し、水が存在する場合、水の量はできるだけ少ないのが好ましい。反応後、残留水は、一般的に生成物から、例えば真空中でストリッピングにより、又は減圧蒸留により除去する。アミノオルガノ官能性シランが加水分解可能な基(Clを包含する)を含み、完全に、又は部分的に加水分解することを意図する場合、溶剤として存在する水は、加水分解の際に化学反応により除去することができる。他のシラン又は加水分解可能なシロキサン及びポリシロキサンも、この加水分解の際に存在することができる。こうして、広範囲な銅含有オルガノシリコン化合物を製造することができる。
【0048】
銅(金属銅)とアミン基のモル比は、広い範囲、例えば0.01:1〜約10:1、にわたることができる。1:4の比が非常に好ましいことが立証されている。化学量論より高い量の銅を使用することができるが、未反応銅化合物が生成物中に、溶解した、又は固体の形態で、残ることが予想される。固体形態である場合、固体銅化合物はろ過により除去することができる。銅対アミンの比が低い場合、事実上、全ての銅が反応し、銅錯体を形成すると期待される。そのような低い比は、オルガノシリコン化合物中にあるアミノオルガノ基の数が高い場合、特に有用である。アミノオルガノ基の数が比較的低いオルガノシリコン化合物には、より高いCu/アミン比、例えば0.5:1〜1:1以上を使用するのが望ましい。
【0049】
銅化合物とアミノオルガノ官能性オルガノシリコン化合物の反応は、触媒作用させることができる。触媒は、錯体を形成するのに必要な温度を下げる、及び/又は錯体中に配合する銅の量を増加することができる。好適な触媒は、弱塩基性塩、特に有機カルボン酸、好ましくは酢酸又はプロピオン酸、のアルカリ金属塩である。好ましい触媒は、酢酸カリウムである。触媒は、別に加えるか、又はアミノオルガノ官能性オルガノシリコン化合物の合成に使用する方法に基づいて含めることができる。
【0050】
いずれの場合も、生成物は、オルガノシリコン化合物、又はオルガノシリコン化合物を配合した組成物における熱安定性を高めるために、十分な錯体形成したCuを含まなければならない。一般的に、粗くろ過して大きな沈殿物を除去した後、生成物は、20〜20,000ppm、より好ましくは50〜2000ppm、最も好ましくは約100ppm〜約1000ppmのCuを含む。生成物は、一般的に着色しており、明るい「薄緑がかった青色」から比較的暗い青色が最も多い。多くの場合、生成物は不透明又は半透明である。多くの用途で、そのような生成物を微細にろ過し、中に含まれる非常に細かい粒子状物質を除去する必要はない。
【0051】
オルガノポリシロキサンの銅錯体は、それ自体、熱伝達液体、フューザー油、等として有用であるが、そのような組成物に安定剤成分として添加されることが多い。例えば、熱伝達液体では、ベース液体は、トリメチルシリル末端を有するポリジメチルシロキサン又はポリ(メチルフェニル)シロキサン、又は他のベース液体である。フューザー油の場合、本発明の銅錯体は、従来のオルガノポリシロキサン液体、特にメルカプトアルキル又はアミノアルキル基を含むオルガノポリシロキサン液体に加えることができる。
【0052】
熱安定剤として他の重合体と共に使用する場合、使用される銅錯体の量は、効果的に安定化させる量であり、これは、安定剤を含まない同じ組成物と比較して、観察可能な、すなわち測定可能な熱安定性の増加を与える量として定義される。工業界で一般的な試験を使用することができる。そのような試験は、一般的に試料を高温に維持し、酸素の存在下又は非存在下で、物理的又は化学的特性、特に物理的特性の変化を観察することが関与する。例えば、固体のプラスチック、ゴム、及びエラストマーでは、硬度、引張強度、弾性率、伸長、引裂き強度、等を監視することができる。全ての特性が改良される必要はない。しかし、少なくとも製品の最終用途に関連する特性は改良されるのが好ましい。
【0053】
特定の組成物に加えられる熱安定剤の量は、安定剤の性質が異なり、他の構成成分も、特に組成物の重合体成分の構成及び官能性が異なるので、異なる。0.1重量%〜100重量%(すなわち、錯体が組成物の全て又は実質的に全てを構成する)、好ましくは0.2〜10重量%、最も好ましくは0.5〜4重量%の量が有用である。典型的な結果及び評価の方法を例としてここに示すが、これらは、本発明の範囲を制限するものできない。
【0054】
これらの用途並びに以下に記載する用途において、他の一般的な添加剤、例えば殺生物剤、酸化防止剤、等に加えて、追加の安定剤を加えるのが有利である。
【0055】
本発明の錯体を製造するためのアミノオルガノ官能性ポリシロキサンの代わりに、アミノオルガノシリル基又はアミノオルガノ官能性オルガノポリシロキサン基を含む重合体を銅化合物と、前に記載した様式で反応させ、そのような重合体の熱安定性を増加させた。本発明の課題の銅錯体は、そのような重合体の製造において、モノマー、マクロマー、又は連鎖延長もしくは停止剤として作用する。アミノオルガノ官能性シリル基又はアミノオルガノ官能性シロキサン又はポリシロキサン基を含む好ましい重合体は、ブロックシロキサン−尿素−ウレタン共重合体であり、その際、アミノアルキル官能性重合体は、化学量論より低い量のイソシアナート、脱離する未反応アミノ基と反応するか、又はヒドロキシル基を有する重合体が、ここに参考として含める米国特許第7,153,924号に記載されているような環状シラザンと反応する。
【実施例】
【0056】
本発明を一般的に説明したが、ここに例示目的でのみ記載し、他に指示が無い限り、本発明を制限しない特定の例を参照することにより、さらに理解される。
なお、実施例1、実施例2、実施例3、実施例8、実施例9、実施例16、実施例17、実施例18、および実施例19は、参考例である。
【0057】
実施例1
重合度250〜300で、平均1個のペンダントアミノプロピル基を含み、アミン濃度が0.049meq/gのアミノプロピル官能性ポリジメチルシロキサン5gに、硫酸銅(II)五水和物0.06gを脱イオン (「DI」) 水5gに入れた溶液を加えた。CuSO
4対アミンの比は、約1:1であった。混合物は、曇った、わずかに青みがかった色になり、加熱炉中に117℃で5日間置いた。明るい青色の沈殿物を含む白色の液体が得られた。
【0058】
こうして形成された0.3g量の銅錯体を、135〜140反復ジメチルシロキシ基及び平均で7〜9個のメチル(2−ペルフルオロヘキシルエチル)シロキシ単位を有し、粘度(25℃)が180〜260mm
2/sであるトリメチルシリル末端を有するフルオロシリコン共重合体6gとブレンドした。このブレンドは、僅かな曇りを示し、銅錯体を含まないフルオロシリコン共重合体(比較例C1)の試料と共に、260℃に6時間加熱した。熱処理から得られた副生物は、GC/MSヘッドスペースクロマトグラフィーにより測定した。結果を、GC/MS面積計数で、下記の表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
表1の結果は、副生物形成の著しい、驚くべきことで、予期せぬ減少を示し、アミノオルガノポリシロキサンの銅錯体により与えられる、はるかに高い熱安定性を示唆している。
【0061】
実施例2
重合度が100〜500であるジメチルシラノール末端を有するポリ(メチル)(アミノプロピル)シロキサンからなるアミノプロピル水解物93.6gを500mlの三つ口丸底フラスコに入れ、硫酸銅(II)五水和物50gをDI水151gに入れた溶液を徐々に少量ずつ、高速で撹拌しながら加え、室温に1時間保持した。硫酸銅溶液を加える度に僅かな発熱が検出された。真空を作用させ、約60トルの圧力に達した。フラスコを徐々に加熱し、真空を調節して発泡を抑えた。約5時間後、その時点で温度は78℃に達し、窒素で真空を解除し、ヘキサメチルジシロキサン8.1gを加え、粘度を下げ、ゲル化を阻止した。フラスコをさらに90℃に加熱し、5分〜10分後に83〜85℃に下げた。温度プローブの近く及び液体より上のフラスコ区域全体に暗褐色の残留物が形成された。内容物を窒素下で冷却させた。数日間以内に、錯体は、褐色の縞があるワックス状の深い青色の固体が観察された。
【0062】
実施例3
実施例1で使用したアミノオルガノポリジメチルシロキサン(200g)を、500mlの三つ口丸底フラスコに入れた。次いで、このフラスコに、撹拌しながら、硫酸銅(II)五水和物0.58gをDI水2.02gに入れた溶液を加えた。僅かな発熱(10℃)が認められた。内容物を自発温度で30分間十分に撹拌し、十分な真空(約100トル)で発泡が止まるまで保持した。次いで、フラスコを徐々に86℃に約1時間かけて加熱し、次いで窒素下で冷却した。CuSO
4:NH
2比は約1:4であった。試料を、ろ過して存在する全ての固体を除去した後、原子吸光分析により銅含有量に関して分析し、238ppmの銅を含むことが分かった。
【0063】
こうして得られた銅錯体の様々な量をフルオロシリコーン油に加えた。1%以上の量が、僅かな曇り又は濁りを示す液体を得た。これらの組成物を、260℃で6時間貯蔵した後、副生物の発泡を比較することにより、熱安定性を試験した。結果を下記の表2に示す。
【0064】
【表2】
【0065】
表2の結果は、ドデカフルオロオクテナールを除いて、全ての副生物の大幅な低下を示しており、ドデカフルオロオクテナールは、僅かな増加を示し、錯体濃度と実質的に無関係であった。1重量%以上の安定剤量を使用した場合、副生物形成が全体的に減少している。
【0066】
実施例4
錯体を、アミノシリコーン油の265℃における、ゲル化が起こるまでの粘度測定により、試験した。組成物は、重合度が約175であるポリジメチルシロキサン約76重量%、及び重合度が250であり、平均1個の3−アミノプロピルメチルシロキシ基を含むアミノアルキル官能性ポリジメチルシロキサン24重量%からなる。1.0%銅錯体及び0.01%ステアリン酸亜鉛による結果を、アミノシリコーン液体単独及びステアリン酸亜鉛0.01%を含むアミノシリコーン液体と経時的に比較した。
【0067】
【表3】
【0068】
表3は、本発明の銅錯体が、ステアリン酸亜鉛のみを熱安定剤として含む組成物に対して、約1.7のファクターで硬化が遅延していることを示す。同じ組成物のさらなる試験により、それぞれ4日、7日、及び14日で硬化を示す。
【0069】
実施例5−フューザー油安定性試験
各種のゼログラフィックフューザー油の、安定剤を含む、及び含まない場合の安定性に関して、230℃における粘度と時間の関係を測定することにより、試験した。結果を
図1に示す。フューザー油1〜10としてラベルを付けた供試組成物は、下記の表4に示す組成を有していた。全ての安定剤は、1.5重量%であった。PDMSはポリジメチルシロキサンである。
【0070】
【表4】
1 91%200cStPDMS+ペンダントアミノアルキル基を含む9%PDMS
2 65%300cStPDMS+ペンダントアミノアルキル基を含む35%PDMS
【0071】
図1の結果は、全ての液体で、最初の遅い速度の粘度増加に続いて、非常に急激な粘度上昇を示し、この点で熱安定性が崩れたことを示している。PDMS液体は、鉄オクトエートにより適度に安定化されていただけであるが、本発明の銅錯体により著しく安定化された。本発明の銅錯体安定剤は、安定性が大きく改良されている。変性したPDMSである専売の安定剤は、最良の安定性を示す。しかし、アミン官能性フューザー油では、専売安定剤は、鉄オクトエートに対してはるかに優れているが、実施例3の銅錯体よりは、はるかに効果が少ない。専売安定剤の粘度における「キックオフ」点は、約5週間で達したのに対し、実施例3の安定剤を含むフューザー油の「キックオフ」点は、16週間を超え、非常に高いレベルの熱安定性を示す。
【0072】
実施例6−エラストマーにおける熱安定性の改良
2,000cStのOH末端を有するPDMS、エチルシリケート架橋剤、及び酸化鉄を包含する縮合硬化型シリコーンエラストマー組成物に、ろ過して粒子状物質を除去した実施例3の銅錯体1.5重量%、及び縮合触媒としてジブチルスズブトキシクロライド0.3重量%を加え、十分に混合した。組成物を型の中に流し込み、一晩かけて硬化させた。試験小板を室温及び400°F(204℃)で、どちらも7日間、保存し、それらの物理的特性を測定した。結果を下記の表5に示す
。
【0073】
【表5】
【0074】
これらの結果は、本発明の安定剤を使用した場合に、物理的特性、特に引張強度及び伸長、が維持されることにより、著しい全体的な安定性の増加を示している。
【0075】
実施例7−液体ゴムの安定性改良
Wacker Chemical Corp., Adrian, MIから、ELASTOSIL LR(登録商標)3003/40(A及びB成分)として市販の、ヒドロシリル化により硬化する液体ゴム組成物を、実施例3のろ過した銅錯体安定剤1.5重量%を含む、及び含まない、状態で使用する。A及びB側の等量を均質に混合し、安定剤を加え、続いてさらに混合し、脱気した。小板を、プレスで従来通り330℃で5分間加熱してプレス成形した。物理的特性は、室温(「RT」)で7日間貯蔵及び400°F(204℃)で7日間貯蔵した後で測定した。結果を下記の表6に示す。
【0076】
【表6】
【0077】
表6は、LSR処方物で、本発明の銅錯体が、引張強度及び伸長に関して熱安定性の著しい改良を示すが、引裂き強度及び硬度は維持していることを示している。
【0078】
実施例8
α−ビニルジメチル−ω−トリメチルシリルキャップを付けた、平均1個のメチル(3−アミノプロピル)シロキシ単位を含む、平均重合度が150〜200のポリジメチルシロキサン1500gに、反応フラスコ中、窒素下で、CuSO
4・5H
2O13.5gを撹拌しながら35℃で加えた。CuSO
4:アミン比は1:2であった。発熱により温度は55℃に上昇し、一様なサイズの小さな気泡が形成され、色が強い青色になった。温度は約73℃で安定し、熱を再度加え、セットポイントは75℃であった。この時点で約1時間半が経過した。温度は84℃に上昇し、小さな気泡がなお形成され、液体は粘度がやや増加したようであり、幾つかの淡青色又は白色の粒子が浮遊しているようであった。約1時間の期間にわたって、温度は徐々に最高112℃に増加し、112℃〜110℃にさらに半時間保持された。活発な発泡が観察された。熱供給を取り止め、窒素下で冷却させた。青色の液体生成物が25μmろ紙を通して濾過され、粘度が25℃で911mPa・sであった。NMRにより、生成物はビニル官能性を保持し、0.54重量%のビニル単位を有することが確認された。
【0079】
実施例9
3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン51.57gに、CuSO
4・5H
2O0.25gを加えた。この混合物を70℃に加熱したところ、硫酸銅結晶が徐々に溶解し、溶液が明るい青色になった。
【0080】
実施例10
重合度170〜180で、分子1個あたり平均1個の3−アミノプロピルメチルシロキシ基を含むポリジメチルシロキサン液体65重量%、及び重合度約250のポリジメチルシロキサン35重量%からなるアミン含有フューザー油の熱安定性を評価した。この油に、実施例3のろ過した銅錯体1.5重量%を加えた。銅錯体で安定化させた液体及び安定化させていない液体に関して初期粘度を測定し、次いで、液体を250℃の強制空気加熱炉中に入れ、ホイルでキャップした。粘度を定期的に測定した。2日後、安定化させていない液体は金色がかった褐色であり、安定化させた液体は深い褐色であった。安定化させていない液体は2週間後にゲル化したのに対し、安定化させた液体は8.5週間後にゲル化した。
【0081】
実施例11
300cStPDMS液体約90重量%、及び平均1個の式HS(CH
2)
3SiO
3/2の単位を含む分岐トリメチルシリル末端を有するポリジメチルシロキサン液体10重量%を含むメルカプトアルキル液体で、実施例10の手順を繰り返した。安定化させていない液体は、9日後に粘度が急速に増加し、その後短時間でゲル化を示したのに対し、1.5重量%の銅錯体安定剤を含む同じ液体は、約2週間まで急速な粘度増加を示さず、3週間後にゲル化した。
【0082】
実施例12
実施例8により製造したビニル官能性シリコーンにおける銅錯体の効果を、50ショアA、過酸化物硬化させたシリコーンゴムで評価した。Wacker Chemicalから市販のヒュームドシリカ約27重量%を含むシリコーンゴムベースELASTOSIL(登録商標)R401/50S 100部に、実施例
8で得た残留ビニル官能性を有する銅錯体1〜4部、及び過酸化物フリーラジカル触媒として2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、50%アッセイ、0.8gを加えた。混合物を十分に均質化し、脱気し、171℃(340°F)で10分間、試験小板に成形した。初期物理的特性、並びに225℃(437°F)及び260℃(500°F)で70時間エージングした後の物理的特性を測定した。結果を下記の表7に示す。
【0083】
【表7】
【0084】
実施例13
ショアA60を与えるゴムELASTOSIL(登録商標)401/60S及びヒュームドシリカ27重量%も含む異なったゴムベースで、実施例12を繰り返した。本発明の安定化したゴムは、実施例
8の銅錯体安定剤3部を含み、これを、安定剤を含まない比較試料、及び一般的な安定剤である90%酸化セリウム水和物0.75部を含む比較用ゴムと比較した。小板を271℃で10分間硬化させた。結果を下記の表8に示す。
【0085】
【表8】
【0086】
実施例14
ヒュームドシリカ18重量%及び石英粉末18重量%を含む過酸化物硬化させたシリコーンベースゴムB1576で実施例12を繰り返した。安定剤を含まない比較用に加えて、シリコーンガム中に分散させたヒュームド二酸化チタン35%からなる安定剤を含む比較ゴムも試験した。結果を下記の表9に示す。
【0087】
【表9】
【0088】
実施例15
ショアA50ゴムを製造する液体シリコーンゴム(「LSR」)ベースで実施例12を繰り返した。実施例
8のビニル含有銅錯体を、ELASTOSIL(登録商標)LR3003/50(A/B)100部あたり0(比較用)、1、2、3、及び4部の量で使用した。小板を330°F(166℃)で5分間硬化させた。結果を下記の表10に示す。
【0089】
【表10】
【0090】
実施例16
実施例8を繰り返したが、出発ビニル官能性オルガノポリシロキサンを先ずろ過し、存在する塩をその調製品から除去した。硫酸銅(II)との反応により、生成物は、淡青色の透明な液体で、Cu20ppmを含んでいた。
【0091】
実施例17
実施例16を繰り返したが、酢酸カリウムを0.05重量%の量で、硫酸銅(II)と共に加えた。生成物は、深い青色の透明であり、Cu含有量が>780ppmであった。生成物は、実施例16の生成物よりも粘度が高かった。
【0092】
実施例18
平均1個の3−アミノプロピルメチルシロキシ基及び約250個の反復ジメチルシロキシ単位を含むアミノプロピル末端を有するポリジメチルシロキサン200gに、三つ口丸底フラスコ中で、酢酸カリウム0.1g、次いで無水塩化銅(II)0.31gを室温で加え、撹拌を開始した。僅かな発熱により温度を約49℃に、約25分間で上昇させた。温度が低下し始めた時(44℃)、フラスコを取り囲む加熱マントルを50℃に設定した。液体は、青味がかった灰色であり、粒子がなお存在したが、温度が徐々に最高73℃に上昇すると共に、色は急速に青味を増し、強い青色になった。1時間半後、加熱マントルの電気を切り、混合物を窒素下に一晩放置した。生成物をWhatman #1ろ紙を通してろ過し、透明な強い青色の炉液を得た。液体を分析し、粘度880mPa・s、アミン当量0.0472meq/g、及びCu106ppmであった。
【0093】
実施例19
実施例18を、塩化銅(II)0.31gではなく、無水酢酸銅(II)0.42gで繰り返した。反応の進行は、実施例
18のそれと類似しているが、色は、最初は淡青色で、時間と共に増々濃くなっていった。反応は、合計約2.5時間かかった。生成物は、窒素下で一晩放置し、実施例
18と同様にろ過した。生成物は、透明な強い青色の液体であった。生成物を分析し、粘度817mPa・s、アミン当量0.0549meq/g、及びCu177ppmであった。
【0094】
本発明の実施態様を例示し、説明して来たが、これらの実施態様は、本発明の全ての可能な形態を例示し、説明することは意図していない。明細書に使用して言葉は、説明の言葉であり、制限するものではなく、本発明の精神及び範囲から離れることなく、各種の変形を行うことができる。