(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記プリフォームから光ファイバをさらに別の複数の線引き張力で線引きし、各ファイバの帯域特性を測定し、前記複数の線引き張力で線引きされた前記光ファイバの測定された帯域特性に基づいて前記線引き張力設定値を選択する各工程をさらに含む、請求項6記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで、その例が添付図面に示されている、現在好ましい実施の形態を詳しく参照する。可能ならいつでも、同じまたは同様の部品を指すために、図面に亘り同じ参照番号が使用される。
【0011】
光ファイバ線引き製造システム10および方法100は、所定のガラス源プリフォームから製造されたファイバの最適な帯域特性を達成するために線引き張力設定値を選択する微調整プロセスの使用により、光ファイバを製造する。「線引き張力」および「張力」という用語は、ここでは交換可能に使用される。
図1〜6に関して、光ファイバ線引き製造システム10および方法100の実施の形態がここに記載されており、ここで、同様の参照識別記号が、図面に亘り同じまたは対応する要素を示す。ここに用いた「裸の光ファイバ」という用語は、外面に保護被覆層を施す前(例えば、裸の光ファイバが高分子系材料で被覆される前)の、プリフォームとも称される加熱ガラス源から直接線引きされた光ファイバを意味する。光ファイバ線引き製造システム10および方法100により、ここに開示されたような実施が容易なプロセスにより実現される所望の最適な帯域特性を有する選り抜きの光ファイバを形成することができる。
【0012】
一例によるマルチモード光ファイバに関する、相対屈折率プロファイル曲線が
図6に示されている。コア220は、ゲルマニウムがドープされた放物線形コアである。クラッド層200は、ドープされていないシリカなどの内側クラッド領域230、領域250におけるフッ素がドープされたシリカなどの屈折率低下(depressed)領域250、および外側クラッド領域260を含む。
【0013】
「相対屈折率パーセント」または「相対屈折率デルタ」は、Δ%=100×(n
i2−n
REF2)/2n
i2と定義され、式中、n
iは、別記しない限り、領域iにおける最大屈折率である。相対屈折率パーセントは、別記しない限り、850nmで測定される。別記しない限り、n
REFは、クラッドの外側環状領域260の平均屈折率であり、これは、例えば、クラッドの外側環状領域(いくつかの好ましい実施の形態において、ドープされていないシリカであってよい)において「N」回の屈折率測定を行い(n
C1、n
C2、・・・・n
CN)、
【数1】
【0014】
によって、平均屈折率を計算することによって、計算できる。
【0015】
ここに用いたように、相対屈折率はΔにより表され、その値は、別記しない限り、「%」の単位で与えられる。ある領域の屈折率が基準屈折率n
REFより低い場合、その相対屈折率パーセントはマイナスであり、低下領域または低下屈折率を有すると称され、最小相対屈折率は、別記しない限り、屈折率が最もマイナスである地点で計算される。ある領域の屈折率が基準屈折率n
REFより大きい場合、相対屈折率パーセントはプラスであり、その領域は上昇させられている、またはプラスの屈折率を有すると言うことができる。
【0016】
オーバーフィルド励振を使用してFOTP−204にしたがって、全モード励振伝送帯域(overfilled bandwidth)を測定してもよい。最小の計算有効モード帯域幅(Min EMBc)の帯域幅は、TIA/EIA−455−220により指定されるような、測定された異モード遅延スペクトルから得てもよい。
【0017】
オーバーフィルド励振によりFOTP−204にしたがって、帯域幅は850nm(別記しない限り)で測定した。405、630、670、780、830、915、980、1060、1200、1300、1310、および1550nmなどの他の波長で、帯域幅を測定しても差し支えないことも認識すべきである。
【0018】
「αプロファイル」または「アルファプロファイル」という用語は、式:
【数2】
【0019】
にしたがう、rが半径であり、「%」の単位のΔ(r)で表される相対屈折率プロファイルを称し、式中、r
oはΔ(r)が最大である点であり、r
1は、外側環状クラッド領域260に関してΔ(r)%がゼロである点であり、rは範囲r
i≦r≦r
fの範囲にあり、Δは先のように定義され、r
iはαプロファイルの最初の点であり、r
fはαプロファイルの最後の点であり、αは実数の指数である。中心線(r=0)で始まるプロファイルセグメントについて、αプロファイルは、より単純な形態:
【数3】
【0020】
を有し、式中、Δ(0)は中心線での屈折率デルタである。
【0021】
図1を参照すると、1つの実施の形態による、光ファイバ線引き製造システム10が概して示されている。ファイバ線引き製造システム10は、1つの実施の形態によれば、加熱素子16および約2,000℃の温度まで加熱されるマッフル14を含む線引き炉12を含む。ガラスプリフォーム20が、線引き炉12のマッフル14内に垂直に配置されており、光ファイバが、裸の光ファイバ22の形態で、加熱されたプリフォーム20から線引きされる。加熱素子16は、少なくともプリフォーム20の底部に熱を供給する。
【0022】
プリフォーム20は、どのようなガラス材料から構成されていてもよく、またドープされていても、光ファイバの製造に適したように他の様式で処理されていてもよい。プリフォーム20は、クラッドを備えたコアを有する完全コアプリフォームであっても、または一般にクラッドを有するケインと称される、そのオリジナルのコアプリフォームから製造された光ファイバプリフォームであってもよい。光ファイバを線引きするのに炉12内に使用するために、1つのコアプリフォームから、5つの光ファイバプリフォームなどの、典型的に2以上の光ファイバプリフォームが形成される。各プリフォームは異なる屈折率測定値を有してよく、プリフォームの加工およびプリフォームの線引きにおける変動に基づいて所定のコアプリフォームについて最適なαプロファイルを作成することは一般に難しいことを認識すべきである。所定のプリフォームに関するαプロファイルは、Preform Analyzer屈折率測定システム(オレゴン州、ビーヴァートン所在のPhoton Kinetics Instruments社)などの屈折率測定技法を使用して測定することができ、所望のαプロファイルを達成して、粗調整されたプリフォームを提供することができる。ここに開示された方法は、様々な線引き張力でファイバを線引きし、これらの様々な線引き張力で線引きされたファイバの帯域幅を測定し、微調整プロセスとして所定のファイバから最適な帯域幅を提供するために最適な線引き張力を選択する。
【0023】
光ファイバ22は、牽引機32によってプリフォーム20の根元部18から引っ張られる。マッフル14を出た後、裸の光ファイバ20は直径モニタ(D)24に出合う。この直径モニタ24は、ファイバの直径を一定に維持するために牽引機32の速度を調節するフィードバック制御ループに使用される信号を提供する。次いで、裸の光ファイバ22はファイバ張力測定装置(T)26を通過する。このファイバ張力測定装置26は、光ファイバ22の張力を測定し、高い帯域幅のファイバを提供する所望の線引き張力設定値を維持するためにファイバ22の張力を調節するフィードバック制御ループを提供する。ファイバ張力測定装置26の一例が、ここに引用する欧州特許出願公開第0479120A2号明細書に開示されている。一旦、裸の光ファイバ22がプリフォーム20から線引きされたら、この裸の光ファイバ22は、炉12の出口に連結されていてもそこから離れていてもよい冷却管28または処理装置内で冷却され、その後、ファイバ22は、裸の光ファイバ22の外面に高分子系被覆材料を施すことのできるコーター30により被覆される。被覆されたファイバは、被覆硬化装置(図示せず)も通過してよい。次いで、被覆ファイバ22は、スプールまたはリール34に巻き付けられる。個々のファイバの帯域幅はオフラインで測定される。
【0024】
1つの実施の形態によれば、ファイバ線引き製造システム10は、マイクロプロセッサ42(μP)およびメモリ44を有するコンピュータとして実行されてもよい張力制御装置40を有するものとしても示されている。どのようなデジタルおよび/またはアナログ処理回路構成およびメモリ記憶媒体を利用してもよいことを認識すべきである。制御装置40は、直径モニタ装置24(D)の出力およびファイバ張力測定装置26(T)の出力を受信し、それらの入力を1つ以上のルーチンで処理してもよい。制御装置40は、ユーザが、各リールに巻き付けられた各ファイバからの線引き張力を示す張力値、例えば、T
R1、T
R2、T
R3などを見るために、ディスプレイまたは他のヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)などに出力58を提供する。光ファイバは、屈折率αプロファイルの異なる値、それゆえ、光ファイバの異なる帯域特性を達成するために異なるファイバ張力で線引きされてもよいことを認識すべきである。ユーザが選択した張力設定値(T
SP)48が、制御装置30(C)に入力として提供されて、ユーザが、製造されている光ファイバの所望の帯域特性を達成するために所望の張力設定値を選択することができる。制御装置46は、ユーザが選択した張力設定値(T
SP)に応答して温度制御(T
C)出力50を生成し、これは、炉12内の加熱素子18の温度を制御するために使用される。温度制御T
Cは、1つの実施の形態によれば、所望のファイバ線引き張力を達成するために炉12の温度を調節してもよい。通常は、炉12の温度が上昇すると、線引きされたファイバの張力が減少するのに対し、炉12の温度が低下すると、線引きされたファイバの張力が増加する。炉の温度は、線引き張力が、ユーザの選択した張力設定値を示すまで、フィードバックループにより調節してもよい。別の実施の形態によれば、線引きされたファイバの張力は、牽引機32により線引きされているファイバの速度を調節することによって調節してもよく、この牽引機は、ユーザの選択した張力設定値に対応して制御装置40により制御してもよい。
【0025】
ファイバ線引き製造システム10および方法100は、炉内にプリフォームを提供し、そのプリフォームから複数の光ファイバを複数の異なる線引き張力で線引きし、異なる線引き張力の各々で光ファイバの各々の帯域特性を測定し、各光ファイバの測定された帯域特性に基づいて、線引き張力設定値を選択し、線引き張力をその線引き張力設定値に調節し、この選択された線引き張力設定値でプリフォームから選り抜きの調整された光ファイバを線引きする。線引き張力設定値は、最高の帯域幅のファイバを生じる張力値であってよい。線引き張力は、1つの実施の形態によれば、炉のプリフォームの温度を調節することによって調節してもよい。線引き張力は、別の実施の形態によれば、線引きされたファイバの張力を調節することによって調節してもよい。1つの実施の形態において、プリフォームは、ドープされたコアおよびクラッドを含んでよく、そのクラッドはフッ素を含んでよい。コアは、GeO
2、P
2O
5、Al
2O
3、TiO
2およびFがドープされたシリカからなっても差し支えない。クラッドは、フッ素ドープトシリカを含む、ドープトシリカの環状リングを含んでもよい。クラッドはドープトシリカを含んでもよい。プリフォームは、多数のファイバを線引きするための1つのプリフォームの形態であってもよく、または同じコアプリフォームから形成された複数の光ファイバプリフォームを含んでもよい。
【0026】
1つの実施の形態による、光ファイバを製造する方法100が
図2に示されている。方法100は、所望のようにプリフォームから光ファイバを線引きするのに十分な温度で炉内に調製済みガラスプリフォームを提供する工程102(D)を含む。この炉は、2,000℃辺りの温度で制御されているであろう。プリフォームは、コアプリフォームを複数のケインに線引きすることによって調製されてよい光ファイバプリフォームを含んでよく、このケインにオーバークラッドを形成して、複数の光ファイバプリフォームを形成してもよく、一度にその内の1つが炉に挿入される。方法100は、速度設定値S
1に設定された線引き速度および温度T
P1に設定された炉の温度T
Pでファイバを線引きする工程104を含む。次に、工程106で、方法100は、線引きされたファイバのファイバ線引き張力T
Dをモニタする。工程108(CCW)で、方法100は、ファイバを冷却し、ファイバを被覆し、ファイバを1つ以上のリールに巻き付ける。次いで、方法100は、工程110に進んで、異なるファイバ張力で線引きされた各ファイバの帯域幅(BW)をオフラインで測定する。1つの実施の形態において、異なる張力で線引きされたファイバは、異なるリールに巻きつけられ、公知の線引き張力で製造された各リールのファイバを試験して、対応する線引き張力に関するファイバの帯域幅を決定する。所定の線引き張力でリールに巻き付けられるファイバの量は様々であってよい。例えば、所定の線引き張力で製造された3から5キロメートルのファイバが、リールに巻き付けられ、帯域幅について試験されてもよい。プリフォームは、約800キロメートルのファイバを製造するであろうし、プリフォームからの残りのファイバは、選択された張力設定値で線引きされるであろう。各ファイバの帯域幅は、各リール上の各ファイバに信号を適応し、850ナノメートルなどの所望の信号波長で帯域特性を測定することによって、決定される。次いで、ユーザは、測定された帯域特性に基づいて、線引き張力(T)を最適帯域幅で選択して、最適線引き張力T
Oを設定する。工程114で、ユーザの選択した張力設定値T
OSは、所望の線引き張力設定値T
OSを達成するために炉の温度を調節することによって、最適なファイバ線引き張力を達成するために最適線引き張力T
Oに基づいて調節される。次いで、方法100は、工程116において、ファイバの残りをプリフォームまたは同じコアプリフォームから製造された他の光ファイバプリフォームから、ユーザの選択した張力設定値T
OSで線引きして、最適な帯域特性を有する最適な光ファイバを供給する。
【0027】
方法100は、有利には、特に最適な選り抜きのマルチモードファイバを製造するために、線引き張力の変化を使用して、屈折率αプロファイルを微調整することによって、高い帯域幅のマルチモードファイバを線引きする。1つの実施の形態において、プリフォームの一部分が規定の張力で第1のファイバに線引きされ、あるリールに巻き付けられ、次いで、そのプリフォームの別の部分が異なる張力で第2のファイバに線引きされ、別のリールに巻き付けられるように、ファイバ線引きプロセス中に、プリフォームが様々な線引き張力で線引きされ、このプロセスが、ピーク帯域幅を有するファイバを選択するために十分な数の選り抜きのものを製造するためにプリフォームを最後まで使用し続ける。そうすることで、最適な帯域幅を達成でき、高い帯域幅のファイバの利用できる選り抜きのもの(製造される合計のファイバの百分率)が増加する。別の実施の形態において、同じプリフォームの小さな部分がファイバに線引きされ、ファイバの各リールは、異なる張力で線引きされる。帯域幅は各リールのファイバについて測定され、次いで、プリフォームの残りが、最高の帯域幅を提供したファイバ線引き張力でファイバに線引きされる。さらに、同じ出発プリフォームからの姉妹ケインを、張力マッピングから最高の帯域幅のファイバを製造した張力で線引きすることができる。本発明の方法は、ピーク帯域幅に到達するためにマルチモードファイバの屈折率αプロファイルを微調整することができ、高い帯域幅のファイバの選り抜きのものを増加させるために製造プロセスにおいて実施するのが容易である。
【0028】
ファイバ線引き製造システム10および方法100は、可変の線引き張力でプリフォームからファイバを線引きすることによって、高い帯域幅のマルチモードファイバを製造する。線引き張力はファイバに機械的応力を誘発し、これが屈折率プロファイルを変える。屈折率プロファイルの変化は、屈折率プロファイルのα値の有効変化と同等とみなすことができる。所定の光ファイバのαプロファイルは、屈折率ニア・フィールド法(RNF法)またはマッハ・ツェンダー干渉分光法測定技法を使用して測定できる。所定のファイバに関する屈折率プロファイルは、化学組成とガラス転移半径方向プロファイル(glass transition radial profile)、ファイバの外径、線引き張力および応力光学係数の入力パラメータを使用してモデル化することもできる。
図3を参照すると、一例による、α値への、線引き張力の変化により生じた影響が示されている。この例において、ファイバは、グレーデッド・インデックス型GeO
2ドープトシリカコア(シリカの外側クラッドに対して1%のデルタ屈折率、約2.1のαおよび25マイクロメートルのコア径を有する)、およびシリカの外側クラッドを有し、ファイバ全体の直径は125マイクロメートルである。測定された有効α値が、線引き張力の変化の関数として変化するのが分かる。この例において、線引き張力の100グラムの変化毎に、有効α値は、グラフの線60の点62により示されるように、約0.043変化する。線引き張力を変化させることにより、最大の帯域幅のファイバを達成するために選り抜きのファイバを微調整するように、αプロファイル値を変えることができる。半径方向に異なる化学組成を有する光ファイバは、線引き張力の変化により、アルファの勾配の変化が異なるであろう。例えば、ファイバは、グレーデッド・インデックス型GeO
2ドープトシリカコア、およびフッ素ドープト低屈折率環を含有する純粋なシリカのクラッドを有してよい。この例において、コアの相対屈折率デルタは、約2.1のアルファ(α)を有するシリカクラッドに対して約0.94パーセントであった。前記環は、コアに対して約1マイクロメートルずれており、約−0.45パーセントの屈折率変化および約5マイクロメートルの幅、およびシリカの外側クラッドを有した。この例において、線引き張力の100グラムの変化毎に、有効α値は約0.026変化する。
【0029】
図4を参照すると、最適な帯域幅の選り抜きのものを有する光ファイバを製造する方法の一例が示されている。この実施の形態において、5つの光ファイバが5つの別個のリールに線引きされ、各ファイバは、第1の光ファイバプリフォーム(P)から異なる張力(T)で線引きされている。5つのファイバの各々の線引き張力が、線70A〜70Eにより示されている。次いで、各ファイバは、1つ以上の帯域特性について測定され、各ファイバからの帯域特性が分析されて、最適なファイバ、それゆえ、最適な線引き張力が決定される。次いで、第1の光ファイバプリフォームおよび出発コアプリフォームから製造された他の光ファイバプリフォームの全てを含むプリフォームの残りが、最高の帯域幅のファイバを製造した選択された張力設定値で線引きされる。
【0030】
1つの実施の形態による、線引き張力の関数としての測定された帯域幅の一例が
図5に示されている。この例において、コアにαプロファイル値を有するマルチモードプリフォームが、コアにGeO
2をドープすることによって製造された。物理的なコア直径は50マイクロメートルであった。クラッドは、フッ素ドープト低屈折率環を含有する純粋なシリカであった。コアの中心における屈折率変化は、純粋なシリカに対して約0.94パーセントであった。この環は、コアに対して約1マイクロメートルずれており、約−0.45パーセントの屈折率変化および約5マイクロメートルの幅を有した。外側クラッドを含むファイバ直径は125マイクロメートルであった。プリフォームにおいて測定されたαプロファイル値は、Preform Analyzer屈折率測定システムで測定して、2.10であり、予測された帯域幅は、850ナノメートルの波長で3.33GHz・kmであった。プリフォームは、30から195グラムに及ぶ張力(T)で線引きされた。850ナノメートルの波長で測定された帯域幅が、データ点80A〜80Iにより、線引き張力の関数として示されている。90グラムと130グラムの間の線引き張力で、3.5GHz・kmの最大帯域幅が達成され、最適帯域幅は、データ点80Eにより示された約110グラムの張力での4.75GHzであった。それゆえ、この例において、ユーザは、最適性能のファイバを製造するために、約110グラムの線引き張力設定値を選択してもよい。プリフォームの残りから最適かつ最高の帯域幅のファイバを製造するために、追加のファイバをこのプリフォームから同様の張力で、例えば、約110gの張力で線引きすることができる。同様に、追加のファイバを、この張力の試験された光ファイバプリフォームと同じコアプリフォームから製造された他のプリフォームから同様の張力(例えば、約110gの張力)で線引きすることができる。
【0031】
別の実施の形態によれば、コアにαプロファイルを有するマルチモードプリフォームを、コアにGeO
2をドープすることによって製造した。この例におけるクラッドは純粋なシリカであった。コアの中心の屈折率変化は、純粋なシリカに対して約1パーセントであった。プリフォームにおける測定されたαプロファイル値は、Preform Analyzer屈折率測定システム(オレゴン州、ビーヴァートン所在のPhoton Kinetics Instruments社)により測定して、2.13であり、予測された帯域幅は、850ナノメートルの波長で2.75GHz・kmであった。このプリフォームを、20グラムずつ増加させながら、50グラムから170グラムの張力で4kmのセグメントに線引きした。得られたファイバは、約50マイクロメートルのコア直径を有した。ファイバの直径は125マイクロメートルであった。帯域幅は、それぞれ、90、110、130、150、170グラムの線引き張力で、2.0、3.7、5.4、6.4、および4.3GHz・kmであった。5GHz・km超の最大帯域幅が、130グラムと150グラムの線引き張力で達成された。それゆえ、この例において、ユーザは、最適性能のファイバを製造するために、約130〜150グラムの線引き張力設定値を選択してもよい。プリフォームの残りから最適かつ最高の帯域幅のファイバを製造するために、追加のファイバをこのプリフォームから約130〜150gの張力で線引きすることができる。追加の光ファイバのプリフォームから最適かつ最高の帯域幅のファイバを製造するために、追加のファイバを、同じコアプリフォームから形成された光ファイバプリフォームから、すなわち、約130〜150gの張力で線引きすることもできる。製造された光ファイバのαプロファイルは、その光ファイバが850nmでの動作に最適化されている場合、2.0〜2.2の範囲、いくつかの実施の形態においては、2.05〜2.15の範囲にあってよい。光ファイバは、1つの実施の形態によれば、60〜200マイクロメートルの範囲、より好ましくは80〜125マイクロメートルの範囲にある物理的直径を有してよい。
【0032】
線引き張力を選択するために使用される帯域特性では、1つの実施の形態によれば、約850ナノメートルの波長について、2.0GHz・km超、より好ましくは4.0GHz・km超、いくつかの実施の形態において、5.0GHz・km超の帯域幅閾値を使用してよい。
【0033】
さらに別の実施の形態によれば、炉内にプリフォームを提供し、そのプリフォームから第1の光ファイバを第1の線引き張力で線引きし、第1の光ファイバの帯域特性を測定する各工程を含む光ファイバを製造する方法が提供される。この方法は、そのプリフォームから第2の光ファイバを第2の線引き張力で線引きし、第2の光ファイバの帯域特性を測定する各工程も含む。この方法はさらに、第1と第2の光ファイバの測定された帯域特性に基づいて第1と第2の光ファイバの内の一方を選択する工程を含む。この方法は、さらに、そのプリフォームからさらに別の光ファイバをさらに異なる線引き張力で線引きし、そのさらの別の光ファイバの帯域特性を測定し、測定された帯域特性に基づいてさらに別の光ファイバから使用するものを選択して、光ファイバのどれを使用するかを選択し続けてもよい。したがって、この実施の形態は、帯域特性に応じて様々な用途のためにユーザが1つ以上のファイバを選択することを可能にする。
【0034】
可変の線引き張力により、ファイバにおける応力光学効果のために、αプロファイルの変化がもたらされる。線引きプロセス中にファイバに含まれる残留応力は、熱応力と機械的応力との組合せであろう。熱応力は、熱膨張係数(CTE)の不一致により生じるであろうし、機械的応力は、ファイバにおける異なる半径方向位置の間の粘度の不一致により生じるであろう。約2のαプロファイル値を有する出発プリフォームにおける最適αプロファイルについて、応力光学係数プロファイルにより屈折率に影響を与えることのできるファイバにおける軸方向、半径方向および方位角の応力が存在する。ファイバの屈折率プロファイル、したがって、帯域幅は、最初のプリフォームと対応するファイバ中のドーパントレベルおよび線引きプロセス中のファイバの設定における応力により制御される。
【0035】
本発明のシステムおよび方法は、所定のファイバに関する屈折率プロファイル帯域幅を微調整する、したがって、最適化するために、プリフォームにおける所定のドーパントプロファイルに関して線引き張力を選択することができる。これにより、最適なピーク帯域幅が可能なファイバの製造および異なる帯域幅のファイバの選択が可能になる。ここに開示された方法を利用して、通信用途に使用するための選択的に入手できるシングルモードまたはマルチモードの光ファイバを製造することができる。
【0036】
特許請求の範囲の精神または範囲から逸脱せずに、様々な改変および変更を行えることが当業者には明白であろう。