(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5797854
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】充填レベル発信器
(51)【国際特許分類】
G01F 23/36 20060101AFI20151001BHJP
【FI】
G01F23/36
【請求項の数】9
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-547923(P2014-547923)
(86)(22)【出願日】2012年12月18日
(65)【公表番号】特表2015-500997(P2015-500997A)
(43)【公表日】2015年1月8日
(86)【国際出願番号】EP2012075937
(87)【国際公開番号】WO2013092577
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2014年8月18日
(31)【優先権主張番号】102011088949.3
(32)【優先日】2011年12月19日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ハンス−ギュンター ベナー
(72)【発明者】
【氏名】ベアント パウアー
【審査官】
羽飼 知佳
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2007/0074568(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0000279(US,A1)
【文献】
特開2005−214844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 23/30−23/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルダと、
該ホルダに回動可能に支持され、レバーアームが取り付けられたブラケットと、
該レバーアームに取り付けられたフロートと、
前記ホルダに配置された充填レベルセンサであって、該充填レベルセンサは、基板と、該基板に配置された抵抗回路網と、コンタクトばね構造と、前記基板に結合されたカバーとを有し、該カバーは、前記抵抗回路網と前記コンタクトばね構造とを覆う、充填レベルセンサと、
磁石であって、該磁石は、前記ブラケットに結合されていて、かつ旋回範囲に応じて充填レベルに対応する電気信号が発生可能であるように、前記コンタクトばね構造に作用する磁石と、
を備える、充填レベル発信器であって、
前記ブラケット(5)は、前記磁石用の取付部(12)を備え、前記磁石の磁界が貫通可能な肉厚さを前記取付部(12)が有することにより、金属粒子が前記磁石の磁界により前記取付部(12)の外側に保持され、
前記ブラケット(5)の、前記基板(4)に向いた側で、前記取付部(12)は、前記基板(4)に対して平行に配置されたディスク状の拡張部(13)を備えることを特徴とする、充填レベル発信器。
【請求項2】
前記取付部(12)の領域で、前記ブラケット(5)は、前記磁石の直径の20%〜50%の厚みの肉厚さを有する、請求項1記載の充填レベル発信器。
【請求項3】
前記ディスク状の拡張部(13)は、0.5mm〜3mmの厚みを有する、請求項1又は2記載の充填レベル発信器。
【請求項4】
前記ディスク状の拡張部(13)は、前記磁石の直径の2倍〜4倍の半径方向延伸長さを有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の充填レベル発信器。
【請求項5】
前記ディスク状の拡張部(13)は、前記基板に対して0.1mm〜1.5mmの間隔を有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の充填レベル発信器。
【請求項6】
前記ディスク状の拡張部(13)は、前記取付部(12)の、前記基板(4)に向いた側と同一平面を成して終端している、請求項1から5までのいずれか1項記載の充填レベル発信器。
【請求項7】
前記ディスク状の拡張部(13)は、前記ブラケット(5)の長手側にだけ形成されており、前記ブラケット(5)は、自由端部で、前記磁石用の前記取付部(12)を越えて延在している、請求項1から6までのいずれか1項記載の充填レベル発信器。
【請求項8】
前記ディスク状の拡張部(13)は、傾斜の形態で半径方向外側から前記ブラケット(5)に向けて増加する厚みを有し、前記ディスク状の拡張部(13)の、前記基板(4)に向いた側は、前記基板(4)に対して平行に方向付けされている、請求項1から7までのいずれか1項記載のレベル発信器。
【請求項9】
前記傾斜は、15°〜60°の角度を有する、請求項8記載の充填レベル発信器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、ホルダと、ホルダに回動可能に支持され、レバーアームが取り付けられたブラケットと、レバーアームに取り付けられたフロートと、ホルダに配置された充填レベルセンサであって、充填レベルセンサは、基板と、該基板に配置された抵抗回路網と、コンタクトばね構造と、基板に結合されたカバーとを有し、カバーは、抵抗回路網とコンタクトばね構造とを覆う、充填レベルセンサと、磁石であって、磁石は、ブラケット又はレバーアームに結合されていて、かつ旋回範囲に応じて充填レベルに対応する電気信号が発生可能であるように、コンタクトばね構造に作用する磁石と、を備える、充填レベル発信器である。
【0002】
この種の充填レベル発信器は、公知であり、従って背景技術(独国特許出願公開第102005047544号明細書)を成している。この種の充填レベル発信器において、磁石は、基板の、厚層回路網とは反対側に配置されており、この場合、磁石は、基板の上方で僅かな間隔を置いて運動させられる。磁石は、レバーアーム又はレバーアームに結合されたブラケットに保持されている。ブラケットに磁石を配置する場合、ブラケットは、磁石が挿入される取付部を備える。基板に対して平行のブラケットの支障のない旋回を保証するために、磁石は、基板に対して所定の間隔を置いて、ブラケットに設けられた取付部に配置されている。燃料中に存在する金属粒子が、燃料の運動により又はブラケットの運動により、磁石の領域に、特に基板と取付部との間の隙間に達し、次いで磁力により、磁石もしくは磁石の領域に存在する取付部に付着することが判った。これにより、堆積する金属粒子の数が増加するにつれコンタクトばね構造に作用する磁力が低下する。極端にひどい場合、磁力は、抵抗回路網にコンタクトするためのコンタクトばねの振れを生じさせるのにもはや十分ではない。
【0003】
本発明の根底を成す課題は、前述の欠点が回避される充填レベル発信器を提供することである。
【0004】
この課題は、ブラケットが磁石用の取付部を備え、磁石の磁界が貫通可能な肉厚さを取付部が有することにより、金属粒子が磁石の磁界により取付部の外側に保持されるようにしたことにより、解決される。
【0005】
この低減された肉厚さにより、取付部の外側に極めて強い磁界が存在するようになり、こうして強い磁界が金属粒子の保持を可能にする。これにより基板と取付部との間の隙間に堆積する金属粒子の数は大幅に低減される。こうするとコンタクトばね構造と抵抗回路網との間のコンタクトの中断は確実に回避される。
【0006】
好適な態様によれば、取付部の領域で、ブラケットは、磁石の直径の20%〜50%の厚みの肉厚さを有する。
【0007】
磁石と基板との間の隙間に達する金属粒子の数の更なる減少は、好適な態様では、磁石用の取付部の領域において、ブラケットの、基板に向いた側で、基板に対して平行に、ディスク状の拡張部が配置されていることにより達成される。このディスク状の拡張部の配置により、磁石の取付部と基板との間の隙間の水平方向延伸長さがディスク状の拡張部の半径方向の延在長だけ拡大される。
【0008】
好適には、ディスク状の拡張部は、0.5mm〜3mmの厚みを有する。この僅かな厚みにより、粒子が燃料運動により又はブラケットの運動によりディスク状の拡張部ひいては磁界の領域に達することが保証されている。
【0009】
この場合、ディスク状の拡張部の半径方向の延伸長さは、拡張部の半径方向の周りにおいて磁界が僅かであり、磁界が燃料により動かされた金属粒子に対してもはや僅かな影響から無視できる程度の影響しか有しないような大きさに選択することができる。これにより、磁石が隙間への金属粒子の侵入を助力することが回避される。好適な態様では、ディスク状の拡張部は、磁石の直径の2倍〜4倍の半径方向の延伸長さを有する。
【0010】
隙間への金属粒子の侵入は、更に、ディスク状の拡張部が基板に対して好適には0.1mm〜1.5mmの僅かな間隔を有することにより、阻止することができる。これにより、十分に小さな隙間だけでなく、ブラケットの支障のない旋回も達成される。
【0011】
取付部とディスク状の拡張部とを備えるブラケットは、ディスク状の拡張部が取付部の、基板に向いた側と同一平面を成して終端している場合に特に簡単に製作することができる。
【0012】
充填レベル変動につながる燃料容器内の燃料運動は、常に、レバーアームひいてはブラケットの旋回を伴うので、ブラケットの運動は、この運動により燃料内の粒子が磁石と基板との間の隙間に達し得る優先的な運動である。このような理由から、別の態様によれば、ディスク状の拡張部がブラケットの両長手側にだけ形成されると十分である。ブラケットの、ブラケットの支持部とは反対側の自由端部は、単に磁石用の取付部により形成される。
【0013】
拡張部が半径方向外側からブラケットに向けて増加する厚みを有し、ディスク状の拡張部の、基板に向いた側は、基板に対して平行に方向付けされていると、ディスク状の拡張部の半径方向外側縁部から磁石に向かう金属粒子の案内が簡単になる。このような態様により、ディスク状の拡張部はある種の傾斜を成し、傾斜に沿って、金属粒子は、燃料運動により、取付部の外側に向けて、ひいてはブラケットの外側における磁界の領域に導かれる。
【0014】
好適な態様では、傾斜は、15°〜60°、好適には20°〜45°の角度を有する。傾斜は、半径方向外側から半径方向内側にブラケットまで形成してよく、又は、半径方向外側から出発してブラケットの手前で終端してよく、これにより傾斜は、面取部の構成を有する。真っ直ぐで簡単に製作できる傾斜の代わりに、傾斜は、別の態様では、非線形、特に凹状の経過を有してよい。このような構成は、取付部の外側ひいては磁界への金属粒子のより簡単な移行を可能にする。
【0015】
複数の態様につき本発明を詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】背景技術による充填レベル発信器を示す図である。
【
図2】本発明による充填レベル発信器を示す図である。
【
図2a】充填レベル発信器の別の態様を示す図である。
【
図3】充填レベル発信器の別の態様を示す図である。
【
図3a】充填レベル発信器の別の態様を示す図である。
【
図4】充填レベル発信器の別の態様を示す図である。
【
図4a】充填レベル発信器の別の態様を示す図である。
【0017】
図1の充填レベル発信器は、ホルダ1を備える。ホルダ1には、係止フック3により充填レベルセンサ2がクリップ留めされている。充填レベルセンサ2は、基板4と、基板4に結合されたカバーとから成っている。カバーは、図面の表示ではホルダ1に面していて、従って看取されない。ブラケット5が、第1のアーム7と第2のアーム8とを備え、第1及び第2のアーム7,8は、中央の軸受6を囲んでいて、中央の軸受6を介して、ブラケット5は、ホルダ1に回動可能に取り付けられている。ブラケット5は、均一の幅を有し、この場合、ブラケット5の幅は、支持ピン6aと軸受6の軸受部分6bとにより決定される。ブラケット5の第1のアーム7は、ブラケットの回動時に基板4上に突出している。ブラケット5の第2のアーム8は、取付部9を備え、取付部9には、図示していないレバーアームが差し込まれて、ブラケット5の係止フック10により保持される。レバーアームの自由端部にはフロートが配置されているので、レバーアームの旋回によりブラケットが動かされる。第1のアーム7はその端部11に取付部12を備え、取付部12には、図示していない磁石が配置されている。レバーアーム及びブラケット5の旋回時に、磁石は、基板4の上方でカーブした軌道を描いて動かされる。この場合に抵抗回路網に接触させられるコンタクトばねにより、充填レベルに対応する電気信号が形成される。ブラケットの自由な旋回を保証するために、ブラケット5及び磁石は、基板4に対して僅かな間隔を置いて配置されているので、ブラケット5と基板4との間に隙間が形成されている。
【0018】
図2には、充填レベルセンサ2とブラケット5とを備えるホルダ1が示されている。ブラケット5は、同じく取付部12を備え、取付部12には磁石11が配置されている。但し、
図1に対して、ブラケット5は、取付部12の領域で減少された肉厚さを有するように、構成されている。肉厚さは、この領域で、磁石の直径の約30%である。これにより、肉厚さは、磁石の磁界が貫通するように十分に薄くなっている。燃料によりこの領域に運び込まれる金属粒子は、この磁界により、取付部12の外側に保持され、これにより、ブラケット5と基板4との間の隙間に侵入し得る粒子の数は、著しく低減される。取付部12の領域において低減された肉厚さによる結果として生じるブラケット5の小さな幅は、取付部の領域に制限しなくてよい。このような構成では、第1のアーム7全体が、第2のアーム8よりも小さな幅を有する。
【0019】
図2aは、ホルダを省いて、ブラケット5が基板4と共に正面からみて示されている。第1のアーム7は、支持ピン6aを備える軸受6よりも小さな幅を有する。ブラケット5及び基板4は、アーム7に設けられた取付部12と基板4との間に隙間Sが形成されるようにホルダに配置されている。ブラケット5におけるレバーアームの支持は、取付部9の係止フック10により行われる。看取されない磁石は、基板4に向いて取付部12の下面と同一平面を成して終端するように、取付部12に配置されている。
【0020】
図3のブラケット5は、
図2のブラケットとは異なり、第1のアーム7は、取付部12の領域にディスク状の拡張部13を備える。ディスク状の拡張部13は、ブラケット5の、基板4に向いた側で、基板4に対して平行に配置されている。ディスク状の拡張部13は、3mmの厚みを有する。ディスク状の拡張部13は、図示の態様では、アーム7の下面で取付部12を包囲するように形成されている。図示の矩形の形状の他に、ディスク状の拡張部13は、丸く形成されていてもよい。
図3aに示されているように、ディスク状の拡張部13に基づいて、隙間Sは、アーム7の幅よりも大きな水平方向長さを有する。これにより、水平方向に延在する隙間Sへの金属粒子の侵入は、更に困難になる。
【0021】
図4及び
図4aには、ブラケット5の別の態様が示されている。この図示の態様では、ディスク状の拡張部13は、取付部12の領域でブラケット5の第1のアーム7の長手側にだけ形成されている。従って、ディスク状の拡張部13は、第1のアーム7の自由端部11と同一平面を成している。ディスク状の拡張部13は、基板4とは反対側に面取部14を有する。面取部は、燃料により運び込まれた金属粒子が取付部12の外側に導かれ、ひいては磁界の作用領域に導かれるように働く。これにより、ディスク状の拡張部13の半径方向外側縁部において隙間Sの侵入領域からの金属粒子の更に良好な導出が可能になる。面取部は、40°の角度を有する。