【文献】
The Influence of Metal Sulfonates on Synchromesh Durability Performance,Proceedings. '98 International Symposium of Tribology of Vehicle Transmissions,1998年 2月 4日,p.99-102
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
シンクロナイザーは、あらゆるマニュアルギアボックスのより重要な構成成分の1つである。性能の向上、シフト力の低下、およびギア間のエネルギー損失の最小化は、新世代シンクロナイザーシステムの主要目的である。機械システムの容量の改善、ならびに様々な設計および材料からなる様々なシンクロナイザーの導入により、既存のシンクロナイザー設計の経済的リエンジニアリングをもっと効率のよい設計にする。マニュアルトランスミッション用潤滑油のための潤滑剤および添加剤をこれらの設計のために改質して、シンクロナイザーの相互作用をする部品間に適切な摩擦を維持し、かつこれらの部品を摩耗から保護することができるようにする必要がある。
【0003】
従来のギア油またはマニュアルトランスミッション用油は、通常、活性硫黄および表面活性アミン有機ホスフェートなどの化学構成成分を含有している。これらの添加剤は、極圧潤滑を提供するための添加剤として優れているものの、これらの添加剤単独では、通常の量では、一般に滑りすぎる、すなわち、これらの添加剤は、所望のまたは最適な摩擦反応を提供できず、かつ潤滑表面を研削材または腐食摩耗から適切に保護しない。
【0004】
米国特許第6,503,872号(Tomaro、2003年1月7日)は、酸性有機化合物の少なくとも1種の塩基性アルカリ塩または塩基性アルカリ土類金属塩を含有している、ドレインの延びたマニュアルトランスミッション用潤滑剤を開示している。過塩基性材料は、一般に、最大約600、もしくは約500、または約400の全塩基数を有する。実施例1では、マニュアルトランスミッション用潤滑剤は、マニュアルトランスミッションベースストックに、過塩基性マグネシウムスルホネート(42%希釈油、金属比14.7、9.4%マグネシウム、および全塩基数400)の油溶液0.4部を含む実施例A−6(金属ジチオリン酸塩)を1.2部ブレンドして中間物を形成させ、この中間物にジブチルホスファイトを0.5部添加することにより調製されている。他の実施例では、硫化フェネートカルシウム(38%希釈油、全塩基数255)も存在している。
【0005】
PCT公開WO1987/05927(1987年10月8日)は、他の構成成分の中でもとりわけ、選択されたアルカリ土類金属塩を含むマニュアルトランスミッション流体を開示している。実施例IVでは、マニュアルトランスミッション流体は、他の成分とアルキルベンゼンカルシウムスルホネート(過塩基性)(アルキルは、平均約24個の炭素原子を含有している)を3.5部合わせることにより調製されている。過塩基性塩の説明では、通常、過剰のアルカリ土類金属が、当量基準で、陰イオンを中和するのに必要な分を超えて、約10:1〜30:1、好ましくは11:1〜18:1で存在していることを明記している。
【0006】
米国特許第6,617,287号(Gahagan、2003年9月9日)は、改善されたシンクロメッシュ性能を有するマニュアルトランスミッション用潤滑剤を開示している。シンクロナイザー中に焼結金属部品を有するマニュアルトランスミッションに関する、摩耗および小さすぎる摩擦の問題は、リン酸アミンと組み合わせてアルカリ土類スルホネートを高レベルで配合した潤滑油を使用することにより解決されると述べられている。好ましい金属塩は、マグネシウムまたはカルシウムであり、より好ましくはマグネシウムである。過塩基性材料は、一般に、約20〜約700、好ましくは約100〜約600、より好ましくは約250〜約500の全塩基数を有する。実施例では、TBN400を有し、かつ約32%の鉱物油希釈剤を含有している、過塩基性アルキルベンゼンマグネシウムスルホネートが使用されている。
【0007】
米国特許公開第2008/0119378号(Gandonら、2008年5月22日)は、摩擦改質剤としてアルキルトルエンスルホネートを含む機能性流体を開示している。この流体は、トラクター用流体、トランスミッション用流体、または水圧用流体とすることができる。アルキルトルエンスルホネートは、中性塩または過塩基性塩のどちらか一方とすることができ、そしてそれらは、約50〜約400の間、もしくは約280〜約350の間、または約320のTBNを有する、過塩基性の高いものとすることができる。
【0008】
欧州特許出願EP0552863(1993年7月28日)は、高硫黄鉱物油組成物、および高含有量の硫黄化合物を有する鉱物油の銅腐食性の低下を開示している。実施例1は、他の構成成分の中でもとりわけ、254のTBNを有すると告発される過塩基性硫化フェネートカルシウム1.33%、および軽質鉱物油中50%溶液としてのジノニルナフタレンカルシウムスルホネート1.33%を含有している添加剤濃縮物を開示している。この潤滑油組成物は、自動車のクランク室用潤滑油、自動車のトランスミッション流体、ギア油、水圧油、または切削油などの様々な用途に使用することができる。好ましい用途は、動力伝達流体、とりわけ水圧油としてである。
【0009】
米国特許第4,792,410号(Schwindら、1988年12月20日)は、マニュアルトランスミッション流体に適した潤滑剤組成物を開示している。実施例IIは、他の構成成分の中でもとりわけ、アルキルベンゼンカルシウムスルホネート(過塩基性)を3.0部含有しているマニュアルトランスミッション流体を開示している。実施例IIIには、全塩基数200まで過塩基性にした硫黄が結合しているアルキル(C12)フェネートカルシウムが3.5部含まれている。
【0010】
PCT公開WO2000/26328(2000年5月11日)は、過塩基性金属塩および有機ホスファイトを有する潤滑剤を開示している。この潤滑剤は、マニュアルトランスミッションにおいて使用することができる。実施例1は、油53%および41の全塩基数を有するベンゼンカルシウムスルホネート0.7%を(他の構成成分と共に)ブレンドすることにより調製された潤滑剤を開示している。
【0011】
欧州特許出願EP0987311(2000年3月22日)は、トランスミッション流体組成物を開示している。油および(他の構成成分の中でもとりわけ)少なくとも0.1重量パーセントの過塩基性金属塩を含む組成物は、改善された連続可変トランスミッション用流体を提供する。マニュアルトランスミッション流体は(とりわけ)、該発明の構成成分の取り込みにより利点を得ることができると述べられている。実施例5は、0.1部の希釈油(300TBN)を含む、過塩基性カルシウムスルホネートを0.3部含む構成成分の混合物を開示している。適切な過塩基性材料それ自体は、油不含基準で、好ましくは50〜550、より好ましくは100〜450の全塩基数を有する。
【0012】
米国特許第3,652,410号(Hollinghurstら、1972年3月28日)は、とりわけ、トランスミッションに使用することができる多目的潤滑油用の潤滑剤組成物を開示している。表I中の実施例は、全塩基数300の塩基性カルシウムスルホネートを含有している。
【0013】
米国特許第7,238,651号(Kocsisら、2007年7月3日)は、過塩基性清浄剤を調製する方法、および内燃機関エンジンにおけるこのような清浄剤の使用を開示している。実施例は、TBNが500のカルシウムスルホネートの調製を開示している。全塩基数は、加工中に使用される油を含有している最終の過塩基性清浄剤の尺度として記載されている。様々な任意選択の性能用添加剤も存在することができる。
【0014】
米国特許公開第2010−0152080号(Tiptonら、2010年6月17日)は、良好な動的摩擦性能を示す潤滑剤組成物を開示している。この潤滑剤組成物は、潤滑粘度の油、および少なくとも1つのヒドロカルビル置換基を有する油溶性分岐鎖ヒドロカルビル置換アレーンスルホネートであって、該ヒドロカルビル置換基が約0.180より大きいChi(0)/Shadow XY比を有することにより定義すると高度に分岐状な基である、アレーンスルホネートを含む。
米国公開第2009/0203564号(Seddonら、2009年8月13日)は、中性または過塩基性清浄剤を調製する方法を開示している。ある種の実施形態では、この清浄剤は、100〜1300、または250〜920の範囲のTBNを有することができる。この過塩基性清浄剤は、任意の潤滑剤組成物に適していると述べられており、列挙されている潤滑剤には、とりわけ、トランスミッション流体およびギア油が含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(発明の詳細な説明)
様々な好ましい特徴および実施形態は、非限定的例示によって、以下に説明される。
【0020】
マニュアルトランスミッションのシンクロナイザーの表面を潤滑するのに使用される潤滑剤は、基油とも称される、潤滑粘度の油を含有することになる。この基油は、アメリカ石油協会(API)基油互換可能指針(American Petroleum Institute Base Oil Interchangeability Guidelines)のグループI〜V中の基油のいずれか、すなわち
【化1】
【0021】
グループI、IIおよびIIIは鉱物油のベースストックである。潤滑粘度の油には、天然油または合成油、およびそれらの混合物を挙げることができる。鉱物油および合成油の混合物、例えばポリアルファオレフィン油および/またはポリエステル油を使用することができる。ある種の実施形態では、使用される油は、鉱物油のベースストックであり、1種もしくは複数のグループI、グループII、およびグループIIIの基油、またはそれらの混合物とすることができる。ある種の実施形態では、油は合成油ではない。ある種の実施形態では、油は、グループIもしくはグループII、またはそれらの混合物である。
【0022】
天然油には、動物油および植物油(例えば、植物酸エステル)、ならびに液体石油などの鉱物潤滑油、ならびに溶媒処理または酸処理されている、パラフィン型、ナフテン型、またはパラフィン−ナフテン混合型の鉱物潤滑油が含まれる。水素化処理油または水素化分解油も、潤滑粘度の有用な油である。石炭または頁岩に由来する潤滑粘度の油も有用である。
【0023】
合成油には、炭化水素油およびハロ置換炭化水素油(重合およびインター重合オレフィン、ならびにそれらの混合物など)、アルキルベンゼン、ポリフェニル、アルキル化ジフェニルエーテル、ならびにアルキル化ジフェニルスルフィド、ならびにそれらの誘導体、それらの類縁体および同族体が含まれる。アルキレンオキシドポリマー、およびインターポリマー、ならびにそれらの誘導体、ならびに例えばエステル化またはエーテル化によって末端ヒドロキシル基が修飾されているものが、他の分類の合成潤滑油である。他の適切な合成潤滑油は、ジカルボン酸のエステル、およびC
5〜C
12モノカルボン酸とポリオールまたはポリオールエーテルとから作製されるものを含む。他の合成潤滑油は、リン含有酸の液状エステル、ポリマー状テトラヒドロフラン、ケイ素を基礎とする油(ポリ−アルキル−、ポリアリール−、ポリアルコキシ−、またはポリアリールオキシ−シロキサン油およびシリケート油など)を含む。
【0024】
他の合成油には、フィッシャー−トロプシュ(Fischer−Tropsch)反応により製造されるもの、通常、水素異性化フィッシャー−トロプシュ炭化水素またはワックスが含まれる。一実施形態では、フィッシャー−トロプシュガスツーリキッド合成手順、ならびに他のガスツーリキッド油により調製することができる。
【0025】
本明細書の上記に開示されているタイプの未精製油、精製油、および再精製油(ならびにこれらの混合物)を、天然であろうと合成であろうと用いることができる。未精製油は、天然源または合成源から、さらなる精製処理をすることなく、直接得られるものである。精製油は、1つまたは複数の特性を改善するために1つまたは複数の精製ステップにおいてさらに処理されている以外は、未洗練油と同様である。精製油を得るために用いられる工程と同様の工程を、既に使用中の精製油に適用すると再精製油が得られる。再精製油は、消費済み添加剤および油分解生成物を除去するため、さらに加工されることが多い。
【0026】
存在する潤滑粘度の油の量は、通常、100重量%から、これ以降により詳細に記載する過塩基性炭酸化カルシウムアリールスルホネート清浄剤の合計量と存在し得る他の性能添加剤を差し引いた後に残る余りである。
【0027】
潤滑組成物は、濃縮物および/または完全な配合済み潤滑剤の形態とすることができる。潤滑組成物は、全体または一部が完成潤滑剤を形成する追加の油を組み合わせることができる濃縮物の形態となる場合、これらの添加剤と潤滑粘度の油および/または希釈油の比には、重量基準で1:99〜99:1、または重量基準で80:20〜10:90の範囲が含まれる。
【0028】
開示されている潤滑剤の別の構成成分は、油不含基準で計算すると、少なくとも640の全塩基数(TBN)を有する、過塩基性炭酸化カルシウムアリールスルホネート清浄剤、またはこうした清浄剤の混合物である。清浄剤は、一般に、他には過塩基性または超塩基性塩と称される、過塩基性材料であり、この材料は、一般に、金属および清浄剤の陰イオンの化学量論に従い、中和のために存在している、金属含有量を過剰に有する均一ニュートン系である。過剰金属の量は、一般に、金属比、すなわち金属の全当量と酸性有機化合物の当量の比に関して表される。過塩基性材料は、酸性材料(二酸化炭素など)と酸性有機化合物、不活性反応媒体(例えば、鉱物油)、化学量論過剰量の金属塩基、およびフェノールまたはアルコールなどの促進剤とを反応させることにより調製される。酸性有機材料は、通常、油溶性を実現するよう、十分な炭素原子数を有することになろう。
【0029】
過塩基性清浄剤は、全塩基数(TBN)、試料のグラムあたりのmgKOHとして表される、材料の塩基性のすべてを中和するのに必要な強酸の量により特徴づけることができる。TBNは、ASTM D 4739に記載されている非常に周知のパラメータである。過塩基性清浄剤は一般に、本文書の目的のために、希釈油を含有している形態で提供されるので、TBNは油不含基準に再計算されることになる。様々な清浄剤は、100〜1000、または150〜800または400〜700のTBNを有することができる。本技法に関して特に対象となる清浄剤は、少なくとも640、例えば650〜1000、または680〜800にもなるTBNを有することになろう。各場合において、この単位はmgKOH/gである。
【0030】
過塩基性カルシウムスルホネート清浄剤が存在することが必要とされるが、スルホネート清浄剤(例えば、過塩基性マグネシウムアリールスルホネート清浄剤)または異なる清浄剤基質(例えば、過塩基性フェネートカルシウム清浄剤)のどちらであろうともそれらの中に、他の金属もまた存在してもよい。塩基性金属塩を作製するのに一般に有用な金属化合物は、一般に、1族または2族の任意の金属化合物(元素の周期表のCAS型)である。例には、ナトリウム、カリウム、リチウム、銅、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、およびカドミウムなどのアルカリ金属が含まれる。一実施形態では、金属は、ナトリウム、マグネシウム、またはカルシウムである。塩の陰イオン性部分は、水酸化物イオン、酸化物イオン、炭酸イオン、ホウ酸イオン、または硝酸イオンとすることができる。本技法に特に対象となる清浄剤は、酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムを使用して一般に調製される、カルシウム清浄剤であろう。特に対象となる清浄剤は、炭酸化清浄剤であるので、それらは二酸化炭素により処理された材料となろう。こうした処理により、塩基性金属の組成物への取り込みが一層効率のよいものとなる。二酸化炭素との反応を含む、高いTBN清浄剤の形成は、例えばUS7,238,651(Kocsisら、2007年7月3日)において開示されており、例えば、実施例10〜13および特許請求の範囲を参照されたい。しかし、炭酸化される必要がないか、またはそれほど高度の過塩基性を必要としない(すなわち、TBNがより低い)他の清浄剤もまた場合により存在することができる。しかし、複数の清浄剤が存在する場合、過塩基性カルシウムアリールスルホネート清浄剤が、金属清浄剤の重量基準で主要量として、すなわち、油不含基準で、金属含有清浄剤の少なくとも50重量パーセント、または少なくとも60重量パーセント、もしくは70重量パーセント、もしくは80重量パーセント、もしくは90重量パーセントで存在することが望ましい。
【0031】
本技法において有用な潤滑剤は、過塩基性スルホネート清浄剤を含有することになる。適切なスルホン酸には、単核もしくは多核芳香族、または脂環式化合物を含む、スルホン酸およびチオスルホン酸が含まれる。ある種の油可溶スルホネートは、R
2−T−(SO
3−)
aまたはR
3−(SO
3−)
bにより表すことができ、aおよびbはそれぞれ、少なくとも1であり、Tはベンゼンまたはトルエンなどの環式核であり、R
2はアルキル、アルケニル、アルコキシ、またはアルコキシアルキルなどの脂肪族基であり、(R
2)−Tは通常、少なくとも合計15個の炭素原子を含有しており、そしてR
3は、少なくとも15個の炭素原子を通常含有している脂肪族ヒドロカルビル基である。基T、R
2、およびR
3はまた、他の無機または有機置換基も含有することができる。それらはヒドロカルビル基として記載することもできる。一実施形態では、スルホネート清浄剤は、米国特許出願第2005−065045号の段落[0026]〜[0037]において記載されている、主に直鎖アルキルベンゼンスルホネート清浄剤とすることができる。一部の実施形態では、直鎖アルキル(またはヒドロカルビル)基は、アルキル基の直鎖に沿っていずれかではあるが、多くの場合、該直鎖の2位、3位または4位において、および一部の例では、主に2位において、ベンゼン環に結合していてもよい。他の実施形態では、アルキル(またはヒドロカルビル)基は、分岐であってもよい。すなわち、プロピレンまたは1−ブテンまたはイソブテンなどの分岐オレフィンから形成されていてもよい。直鎖および分岐アルキル基の混合物を有するスルホネート清浄剤も使用することができる。
【0032】
ある種の実施形態では、開示されている技法の炭酸化カルシウムアリールスルホネート清浄剤は、アルキル化およびスルホン化ベンゼンに基づくものとすることができる。別の実施形態では、その清浄剤は、アルキル化およびスルホン化トルエンに基づくものとすることができる。いずれの場合でも、トルエンが出発芳香族化合物として使用される場合、メチル基の他に、芳香族環に結合している、1つ、または2つ、または3つ、そしてある種の実施形態では、1つのアルキル(またはヒドロカルビル)基が存在してもよい。一実施形態では、本清浄剤は、モノアルキルベンゼンモノスルホネートであり、そして別の実施形態では、モノアルキルトルエンモノスルホネートである。アルキル基が1つ存在する場合、清浄剤に油溶性を付与するのに十分な数の炭素原子(少なくとも8個の炭素原子、または10〜100個の炭素原子、または10〜50個の炭素原子、または12〜36個の炭素原子、または14〜24個、もしくは16〜20個、あるいは約18個の炭素原子など)を含有することができる。1つより多くのアルキル基(メチル以外)が存在する場合、アルキル基の各々は、前記の炭素原子数を有することができるか、またはアルキル基はすべて一緒に、前記の炭素原子数を合計して(例えば、アルキル基中の合計24個の炭素原子に関すると、2つのC12アルキル基)有することができる。
【0033】
本発明のある種の実施形態では、さらに存在してもよい別のタイプの過塩基性材料(すなわち、過塩基性カルシウムアリールスルホネート清浄剤に加えて)は、過塩基性フェネート清浄剤である。ある種の商業グレードのカルシウムスルホネート清浄剤は、その加工を補助するため、または他の理由のため、フェネートカルシウム清浄剤を少量含有しており、そして、例えば、4%のフェネート基質含有物および96%のスルホネート基質含有物を含有していることがある。フェネート清浄剤を作製する際に有用なフェノールは、(R
1)
a−Ar−(OH)
bによって表すことができ、R
1は4〜400個、または6〜80個、または6〜30個、または8〜25個、または8〜15個の炭素原子からなる脂肪族ヒドロカルビル基であり、Arはベンゼン、トルエンまたはナフタレンなどの芳香族基であり、aおよびbの各々は、少なくとも1であり、aおよびbの合計は、最大で、Arの芳香族核上に置換可能な水素の数(1〜4個、または1〜2個など)である。通常、各フェノール化合物に対して、平均で少なくとも7個、または8個の脂肪族炭素原子がR
1基により与えられ、一部の場合、約12個の炭素原子が与えられる。フェネート清浄剤も、時として、硫黄架橋種またはメチレン架橋種として供給される。硫黄架橋種は、ヒドロカルビルフェノールと硫黄とを反応させることにより調製することができる。メチレン架橋種は、ヒドロカルビルフェノールとホルムアルデヒド(または、パラホルムアルデヒドなどの反応性等価体)とを反応させることにより調製することができる。例には、硫黄架橋化ドデシルフェノール(過塩基性Ca塩)およびメチレン結合したヘプチルフェノールが含まれる。
【0034】
別の実施形態では、任意選択の追加的な過塩基性材料は、過塩基性サリゲニン清浄剤である。過塩基性サリゲニン清浄剤は、一般に、サリゲニン誘導体に基づく過塩基性マグネシウム塩である。こうしたサリゲニン誘導体の一般例は、式
【化2】
(式中、Xは、−CHOまたは−CH
2OHであり、Yは、−CH
2−または−CH
2OCH
2−であり、そして−CHO基は通常、XおよびY基の少なくとも10モルパーセントを含み、Mは水素、アンモニウム、または金属イオンの原子価であり(すなわち、Mが多価の場合、原子価の1つは、例示されている構造を満足し、そして他の原子価は、陰イオンなどの他の化学種、または同じ構造の別の例を満足する)、R
1は、1〜60個の炭素原子からなるヒドロカルビル基であり、mは0から通常10であり、そしてpの各々は、独立して、0、1、2または3であるが、但し、少なくとも1つの芳香族環は、R
1置換基を含有しており、かつすべてのR
1基中の炭素原子の総数は少なくとも7である)により表すことができる。mが1または1より大きい場合、X基の1つは水素とすることができる。一実施形態では、MはMgイオンの原子価(または当量)、またはMgおよび水素の混合物である。サリゲニン清浄剤は、米国特許第6,310,009号において、それらの合成方法(第8欄および実施例1)、ならびにXおよびYの様々な化学種の好ましい量(第6欄)に関する特別な参照と一緒に、より詳細に開示されている。
【0035】
他の任意選択の清浄剤には、サリキサレート(salixarate)清浄剤が含まれる。サリキサレート清浄剤は、式(I)または式(II)
【化3】
の少なくとも1つの単位を含む化合物によって表すことができる過塩基性材料である。化合物の各末端は、式(III)または(IV)
【化4】
の末端基を有し、こうした基は、二価の架橋基Aにより連結されており、Aは同一であっても異なっていてもよい。式(I)〜(IV)において、R
3は水素、ヒドロカルビル基、または金属イオンの原子価であり、R
2はヒドロキシルまたはヒドロカルビル基であり、そしてjは0、1、または2であり、R
6は水素、ヒドロカルビル基、またはヘテロ置換ヒドロカルビル基であり、R
4はヒドロキシルであり、かつR
5およびR
7は、独立して、水素、ヒドロカルビル基、またはヘテロ置換ヒドロカルビル基のいずれかであるか、さもなければ、R
5およびR
7は両方ともヒドロキシルであり、かつR
4は水素、ヒドロカルビル基、またはヘテロ置換ヒドロカルビル基であるが、但し、R
4、R
5、R
6およびR
7の少なくとも1つは、少なくとも8個の炭素原子を含有しているヒドロカルビルであり、また、これらの分子は、平均で、単位(I)または(III)の少なくとも1つ、および単位(II)または(IV)の少なくとも1つを含有し、組成物中の単位(I)および(III)の総数と単位(II)および(IV)の総数の比は、0.1:1〜2:1である。二価の架橋基「A」(出現毎に、同一であるかまたは異なっていてもよい)には、−CH
2−および−CH
2OCH
2−が含まれ、これらの一方は、ホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒド等価体(例えば、パラホルム、ホルマリン)から誘導することができる。
【0036】
サリキサレート誘導体、およびその調製法は、米国特許番号第6,200,936号およびPCT公開WO01/56968により詳細に記載されている。サリキサレート誘導体は、マクロ環式構造よりも主に直鎖構造を有すると考えられているが、両方の構造が「サリキサレート」という用語により包含されることを意図する。一実施形態では、サリキサレート清浄剤は、構造
【化5】
(式中、R
8基は、独立して、少なくとも8個の炭素原子を含有している、ヒドロカルビル基である)
により表される(中和前)分子の一部分を含有することができる。
【0037】
グリオキシレート清浄剤も、任意選択の過塩基性材料である。それらは、陰イオン性基に基づいており、一実施形態では、構造
【化6】
(式中、Rの各々は、独立して、少なくとも4個または8個の炭素原子を含有しているアルキル基であるが、但しこうしたR基すべてにおける炭素原子の総数は、少なくとも12または16または24である)を有することができる。あるいは、Rの各々は、オレフィンポリマー置換基とすることができる。過塩基性グリオキシレート清浄剤をそれから調製する際の、酸性材料は、ヒドロキシ芳香族材料(ヒドロカルビル置換フェノールなど)とカルボン酸反応物(グリオキシル酸または別のω−オキソアルカン酸など)との縮合生成物である。過塩基性グリオキシル清浄剤、およびその調製法は、米国特許第6,310,011号、およびその中に引用されている参照文献において、より詳細に開示されている。
【0038】
別の任意選択の過塩基性清浄剤は、過塩基性サリチレート、例えば、置換サリチル酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩である。サリチル酸は、ヒドロカルビル置換されていてもよく、各置換基は、一置換基あたり平均で少なくとも8個の炭素原子を含有しており、また一分子あたり1〜3つの置換基を含有している。置換基はポリアルケン置換基とすることができる。一実施形態では、ヒドロカルビル置換基は7〜300個の炭素原子を含有しており、そして分子量150〜2000を有するアルキル基とすることができる。過塩基性サリチレート清浄剤、およびその調製法は、米国特許第4,719,023号、および同第3,372,116号に開示されている。
【0039】
他の任意選択の過塩基性清浄剤は、米国特許第6,569,818号に開示されている、マンニッヒ(Mannich)塩基構造を有する過塩基性清浄剤を含むことができる。
【0040】
ある種の実施形態では、上記の清浄剤(例えば、フェネート、サリゲニン、サリキサレート、グリオキシレート、またはサリチレート)中のヒドロキシ置換芳香族環上のヒドロカルビル置換基は、C
12の脂肪族ヒドロカルビル基を含まないか、または実質的に含まない(例えば、置換基の1重量%未満、0.1重量%未満、または0.01重量%未満が、C
12脂肪族ヒドロカルビル基である)。一部の実施形態では、そのようなヒドロカルビル置換基は、少なくとも14個または少なくとも18個の炭素原子を含有している。
【0041】
本技法の配合物中の過塩基性炭酸化カルシウムアリールスルホネート清浄剤の量は、通常、少なくとも0.1重量パーセント、例えば0.14〜4重量パーセント、または0.2〜3.5重量パーセント、または0.5〜3重量パーセント、または1〜2重量パーセントである。代替量には、0.5〜4パーセント、0.6〜3.5パーセント、1.0〜3パーセント、または1.5〜2.8%、例えば少なくとも1.0パーセントが含まれる。1種または複数の過塩基性炭酸化カルシウムアリールスルホネート清浄剤が存在してもよく、また1種より多くが存在する場合、こうした材料の総量は、上記のパーセンテージ範囲内とすることができる。こうした材料により潤滑剤に供給されるカルシウムの量は、当然ながら、清浄剤(単数または複数)の過塩基性度に依存することになるが、一部の実施形態では、供給されるカルシウムの量は、0.03〜1.0重量パーセント、または0.1〜0.6重量パーセント、または0.2〜0.5重量パーセントとすることができる。
【0042】
いかなる任意選択の、追加の清浄剤も同様の量で存在することができる。すなわち、ある種の実施形態では、過塩基性フェネート清浄剤が存在することがあり、この清浄剤は、場合により、フェネートカルシウムであってもよく、また場合により炭酸化清浄剤、例えば、過塩基性炭酸化フェネートカルシウムであってもよい。それはまた、硫黄架橋材料であってもよい。そのような材料が存在する場合、その量は、0〜4重量パーセント、または0.05〜4重量パーセント、0.1〜4重量パーセント、または0.5〜4重量パーセント、または1〜3重量パーセント、または1.5〜2.8重量パーセント、あるいは0.05〜0.1パーセントとすることができる。同様に、ある種の実施形態では、過塩基性マグネシウムスルホネート清浄剤が存在してもよい。過塩基性マグネシウムスルホネート清浄剤は、場合により、炭酸化清浄剤、例えば以前に記載されているスルホン酸のいずれかに基づく、過塩基性炭酸化アリールマグネシウムスルホネートとすることができる。こうした材料が存在する場合、その量は、0〜4重量パーセント、または0.5〜4重量パーセント、0.1〜4重量パーセント、または0.5〜4重量パーセント、または1〜3重量パーセント、または1.5〜2.8重量パーセントとすることができる。
【0043】
この文書において使用される場合、「式により表される」などの表現は、示されている式が一般に、問題となっている化学構造の代表例であることを意味する。しかし、位置異性化などの小さな変動が起こり得る。こうした変動は包含されているものと意図される。
【0044】
潤滑粘度の油および過塩基性清浄剤(単数または複数)に加えて、本潤滑剤は、通常、マニュアルトランスミッション流体において使用することができる、様々な他の添加剤を含んでいることになる。こうした材料の1つは、抗摩耗剤として働き得るか、または他の利点をもたらし得るリン含有材料である。
【0045】
リン含有材料は、少なくとも1つのホスファイトを含むことができる。一実施形態では、ホスファイトは、ジまたはトリヒドロカルビルホスファイトであり、一実施形態では、ジアルキルホスファイトとすることができる。ホスファイトは、0.05〜3重量パーセント、または0.2〜2重量パーセント、または0.2〜1.5重量パーセント、または0.05〜1.5重量パーセント、または0.2〜1重量パーセント、または0.2〜0.7重量パーセントの量で存在することができる。ヒドロカルビル基またはアルキル基は、1〜24個、または1〜18個、または2〜8個の炭素原子を有することができる。各ヒドロカルビル基は、独立して、アルキル、アルケニル、アリール、またはそれらの混合物とすることができる。ヒドロカルビル基がアリール基である場合、少なくとも6個の炭素原子、例えば、6〜18個の炭素原子を含有することになろう。アルキル基またはアルケニル基の例には、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル オクチル、オレイル、リノレイル、およびステアリル基が含まれる。アリール基の例には、フェニル基およびナフチル基、ならびにヘプチルフェニル基などの置換アリール基が含まれる。ホスファイトおよびその調製は公知であり、多くのホスファイトが市販されている。特に有用なホスファイトには、亜リン酸水素ジブチル、亜リン酸ジオレイル、亜リン酸ジ(C
14〜18)、および亜リン酸トリフェニルが含まれる。一実施形態では、リン構成成分はジアルキルホスファイトである。
【0046】
別のリン含有材料は、リン酸の金属塩を含むことができる。式
[(R
8O)(R
9O)P(=S)−S]
n−M
(式中、R
8およびR
9は、独立して、3〜30個の炭素原子を含有しているヒドロカルビル基である)の金属塩は、五硫化二リン(P
2S
5)とアルコールまたはフェノールとを加熱し、O,O−ジヒドロカルビルホスホロジチオ酸を形成させることにより、容易に得ることができる。反応してR
8およびR
9基をもたらすアルコールは、アルコールの混合物、例えばイソプロパノールと4−メチル−2−ペンタノールとの混合物とすることができ、そして一部の実施形態では、二級アルコールおよび一級アルコールの混合物(イソプロパノールと2−エチルヘキサノールなど)とすることができる。得られた酸は、塩基性金属化合物と反応し、塩を形成することができる。原子価nを有する金属Mは、一般に、アルミニウム、スズ、マンガン、コバルト、ニッケル、亜鉛、または銅であり、多くの場合、亜鉛でありジアルキルジチオリン酸亜鉛を形成する。こうした材料は周知であり、潤滑剤配合の当業者には容易に入手可能である。低リン揮発性をもたらす適切な変化体は、例えば、米国公開出願第2008−0015129号に開示されており、例えば、請求項を参照されたい。
【0047】
さらに別のタイプのリン抗摩耗剤に、リン酸エステルのアミン塩を挙げることができる。この材料は、1種または複数の極圧剤および摩耗防止剤として働くことができる。リン酸エステルのアミン塩には、リン酸エステルおよびその塩、ジアルキルジチオリン酸エステルおよびその塩、ホスファイト、ならびにリン含有カルボン酸エステル、エーテル、およびアミド、ならびにそれらの混合物を挙げることができる。リン酸エステルのアミン塩は、様々な化学構造のいかなるものも含むことができる。特に、リン酸エステル化合物が、1個または複数の硫黄原子を含有する場合、すなわち、リン含有酸が、モノまたはジチオリン酸エステルを含む、チオリン酸エステルである場合、様々な構造が可能である。リン酸エステルは、五酸化リンなどのリン化合物とアルコールとを反応させることにより調製することができる。適切なアルコールには、一級または二級アルコール(イソプロピル、ブチル、アミル、sec−アミル、2−エチルヘキシル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、デシルおよびオレイルアルコールなど)を含む、最大30個、または最大24個、または最大12個の炭素原子を含有するもの、およびそれらの異性体混合物、ならびに、例えば8〜10個、12〜18個、または18〜28個の炭素原子を有する様々な市販のアルコール混合物の任意のものが含まれる。ジオールなどのポリオールも使用することができる。アミン塩として使用するのに適し得るアミンには、少なくとも1つのヒドロカルビル基、またはある種の実施形態では、例えば2〜30個、もしくは8〜26個、もしくは10〜20個、もしくは13〜19個の炭素原子を有する、2つもしくは3つのヒドロカルビル基を有するアミンを含めた、一級アミン、二級アミン、三級アミン、およびそれらの混合物が含まれる。
【0048】
ある種の実施形態では、リン抗摩耗剤は、潤滑剤に対して、0.01〜0.2パーセント、または0.015〜0.15パーセント、または0.02〜0.1パーセント、または0.025〜0.08パーセントのリンをもたらす量で存在することができる。
【0049】
潤滑剤配合物は、通常、少なくとも1種の分散剤も含有することになろう。分散剤は、潤滑剤の分野では周知であり、無灰分散剤およびポリマー分散剤として主に公知のものが含まれる。無灰分散剤は、供給されるままの、金属を含有せず、したがって、潤滑剤に添加しても、通常、硫酸塩灰分の一因とはならないので、そのように呼ばれる。しかし、当然ながら、それらは、金属含有種を含む潤滑剤に一旦添加されると、周囲金属と相互作用をする恐れがある。無灰分散剤は、比較的高分子量の炭化水素鎖に結合している極性基を特徴としている。典型的な無灰分散剤には、通常、
【化7】
(式中、R
1の各々は、独立して、アルキル基、多くの場合、ポリイソブチレン前駆体に基づく500〜5000の分子量(M
n)を有するポリイソブチレン基であり、R
2は、アルキレン基、一般には、エチレン(C
2H
4)基である)を含む、様々な化学構造を有する、N−置換長鎖アルケニルスクシンイミドが含まれる。こうした分子は、一般にポリアミンとのアルケニルアシル化剤の反応から誘導され、また様々なアミドおよび四級アンモニウム塩を含む、上に示される単純なイミド構造の他に、2つの部位間の幅広い連結が可能である。上記の構造では、アミン部分はアルキレンポリアミンとして示されているが、他の脂肪族および芳香族モノおよびポリアミンも使用することができる。また、様々な環式連結を含めて、イミド構造上のR
1基の様々な連結様式も可能である。アシル化剤のカルボニル基とアミンの窒素原子との比は、1:0.5〜1:3、および別の例では、1:1〜1:2.75、または1:1.5〜1:2.5とすることができる。スクシンイミド分散剤は、米国特許第4,234,435号および同第3,172,892号、ならびにEP0355895においてより完全に記載されている。
【0050】
別の分類の無灰分散剤は、高分子量エステルである。このエステルが、ヒドロカルビルアシル化剤と多価脂肪族アルコール(グリセロール、ペンタエリスリトール、またはソルビトールなど)との反応によって調製されたものとして見なされ得る場合を除いて、これらの材料は、上記のスクシンイミドと同様である。こうした材料は、米国特許第3,381,022号において、より詳細に記載されている。
【0051】
別の分類の無灰分散剤は、マンニッヒ塩基である。これらは、もっと高い分子量のアルキル置換フェノール、アルキレンポリアミンとホルムアルデヒドなどのアルデヒドとの縮合により形成される材料である。そのような材料には、一般構造
【化8】
(様々な異性体などを含む)を有することができ、米国特許第3,634,515号においてより詳細に記載されている。
【0052】
他の分散剤には、ポリマー分散剤の添加剤が含まれ、この添加剤は、一般に、ポリマーに分散能特性を付与するための極性官能基を含有している炭化水素を基礎とするポリマーである。
【0053】
分散剤は、様々な作用剤のいずれかとの反応により後処理することができ、また多くの場合そうされる。これらの中には、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換無水コハク酸、ニトリル、エポキシド、ホウ素化合物、およびリン化合物がある。ある種の実施形態では、分散剤が使用され、その分散剤はホウ素化スクシンイミド分散剤などのホウ素化分散剤である。ある種の実施形態では、分散剤はテレフタル酸などの酸により後処理され、したがって、例えば、テレフタル酸処理スクシンイミド分散剤である。ある種の実施形態では、分散剤はホウ素化合物およびテレフタル酸の少なくとも1種により処理される。このタイプ(場合により、ジメルカプトチアジアゾールなどの他の材料によりさらなる処理も行われ得る)の分散剤は、米国特許第7,902,130号(Baumanisら、2011年3月8日)においてより詳細に開示されている。例えば、その実施例1を参照されたい。
【0054】
本技法の完全配合されている潤滑剤中の分散剤の量は、潤滑剤組成物の少なくとも0.1重量%、または少なくとも0.3重量%、または0.5重量%、または1重量%とすることができ、ある種の実施形態では、最大でも5重量%、または4重量%、または3重量%、または2重量%とすることができる。
【0055】
存在し得る別の構成成分は、抗酸化剤である。抗酸化剤は、フェノール性抗酸化剤を包含し、この抗酸化剤は、2つまたは3つのt−ブチル基を含有しているブチル置換フェノールを含むことができる。パラ位がまた、ヒドロカルビル基、エステル含有基、または2つの芳香族環を架橋する基により占有されてもよい。抗酸化剤には、ノニル化ジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン(「PANA」)、またはアルキル化フェニルナフチルアミンなどの芳香族アミンも含まれる。他の抗酸化剤には、硫化オレフィン、チタン化合物、およびモリブデン化合物が含まれる。米国特許番号第4,285,822号は、例えば、モリブデンおよび硫黄含有組成物を含有している潤滑油組成物を開示している。米国特許出願公開第2006−0217271号は、チタンアルコキシドおよびチタン化分散剤を含む、様々なチタン化合物を開示しており、これらの材料は、デポジット制御およびろ過性の改善も付与することができる。他のチタン化合物には、ネオデカン酸塩などのカルボン酸チタンが含まれる。抗酸化剤の典型的な量は、当然ながら、特定の抗酸化剤、およびその個々の有効性に依存することになろうが、例示的な総量は、0.01〜5重量パーセント、または0.15〜4.5パーセント、または0.2〜4パーセントとすることができる。さらに、1種より多くの抗酸化剤が存在してもよく、これらのある種の組合せは、それらを組み合わせた総合的な作用において相乗的なものになり得る。
【0056】
増粘剤(時として、粘度指数向上剤または粘度改質剤とも呼ばれる)が、本技法の組成物に含まれ得る。増粘剤は、通常、ポリイソブテン、ポリメタクリル酸エステル、ジエンポリマー、ポリアルキルスチレン、エステル化スチレン−マレイン酸無水物コポリマー、アルケニルアレーン共役ジエンコポリマー、およびポリオレフィンを含むポリマーである。分散性および/または抗酸化特性も有する、多機能性増粘剤が公知であり、場合により使用することができる。
【0057】
別の添加剤は、上に記載されたものに加えて、抗摩耗剤である。抗摩耗剤の例には、チオリン酸金属、リン酸エステルおよびその塩、リン含有カルボン酸、エステル、エーテル、およびアミド、ならびにホスファイトなどのリン含有抗摩耗剤/極圧剤が含まれる。非リン含有抗摩耗剤には、ホウ酸エステル(ホウ素化エポキシドを含む)、ジチオカルバメート化合物、モリブデン含有化合物、および硫化オレフィンが含まれる。
【0058】
抗摩耗剤として使用することができる他の材料には、酒石酸エステル、酒石酸アミド(tartramide)、および酒石酸イミド(tartrimide)が含まれる。例には、オレイル酒石酸イミド(オレイルアミンおよび酒石酸から形成されるイミド)、およびオレイルまたは他のアルキルジエステル(例えば、C12〜C16アルコールの混合物から)が含まれる。有用となり得る他の関連材料には、他のヒドロキシ−カルボン酸(一般に、ヒドロキシ−ポリカルボン酸、例えば、酒石酸、クエン酸、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ−プロピオン酸、ヒドロキシグルタル酸、およびそれらの混合物などの酸を含む)のエステル、アミド、およびイミドが含まれる。これらの材料も、リン化合物、例えば低リン油を含有している配合物中で使用することができる。これらの材料はまた、抗摩耗性能を超える、追加的な機能性を潤滑剤に付与することもできる。それらは、米国公開第2006−0079413号およびPCT公開WO2010/077630に、より詳細に記載されている。ヒドロキシ−カルボン酸が存在する場合、このこうした誘導体(またはそれに由来する化合物)は、通常、0.1重量%〜5重量%、または0.2重量%〜3重量%、または0.2重量%超〜3重量%の量で、潤滑組成物中に存在することができる。
【0059】
場合により潤滑油において使用され得る、他の添加剤には、流動点降下剤、極圧剤、抗摩耗剤、着色安定化剤、および抗発泡形成剤が含まれる。
【0060】
本明細書に記載されている潤滑剤配合物は、広範囲の金属を基礎とする材料から作製される構成成分を備えた、したがって、こうした材料から作製される少なくとも1つの表面、またある種の実施形態では、2つの相互作用する(嵌合する(mating)、摩擦により係合するかまたは係合可能な)表面を有するシンクロナイザーを有する、マニュアルトランスミッションを潤滑するのに有効である。金属を基礎とする材料は、焼結真鍮などのこうした材料と区別するために、非焼結として記載される。焼結とは、粉末から金属部品などの物体を作製するために使用される方法である。焼結法では、粉末材料が所望の形状の鋳型中に保持されて該物質の融点未満の温度まで加熱することができる。この処理によって、個々の粒子が一緒に融合し、粒状構造をある程度維持しながら、固体片が形成される。非焼結金属を基礎とする材料は、対照的に、金属の溶融が関与する他の処置によって形成することができる。一実施形態では、相互作用するシンクロナイザーの表面の1つは、鋼などの第1の金属から作製されており、第2の表面は、本明細書に記載されている異なる金属を基礎とする物質から作製されている。用語「金属を基礎とする物質」とは、それらがその中に含有されている金属粒子を含有し得る場合でさえ、樹脂、セルロース、または他の非金属の物質を含まないことを意図しているが、非金属性材料の存在を必ずしも除外するものではない。ある種の実施形態では、表面の1つは鋼であり、第2の表面は別の金属を基礎とする物質である。使用することができる材料の中では、中実の真鍮を含む真鍮、中実の青銅を含む青銅、モリブデン、およびアルミニウムである。一実施形態では、構成成分は中実の真鍮である。シンクロナイザーでは、嵌合の一構成成分(通常、ギアコーン)は、鋼から作製されており、他の構成成分または表面(通常、シンクロナイザーリング)は、前記の材料の1つから作製されているか、または該材料の表面を有している。場合により、やはり存在してもよい、別の表面は、炭素繊維またはフェノール樹脂などの非金属性材料を含むことができる。
【0061】
用語「金属を基礎とする表面」とはまた、表面コーティング、または金属酸化物もしくは他のこのような物質の表面処理を有し得る金属性物質も含むことが意図される。コーティングは、例えば、金属部品に所望の性能を付与するよう、MoO
3などの物質により鋼製基材をスプレーコーティングすることにより、意図的に施用することができる。このようなモリブデン処理基材は、モリブデン量が比較的薄い表面層によってのみ設けることができる場合でさえも、この産業界においては、モリブデン部品と通常称される。これらのモリブデンまたは他のコーティングが、例えば金属性Mo、もしくはMo酸化物、またはある他の状態としてかどうかにかかわりなく、どのような化学的状態で存在しているかは、やはり正確には分かり得ない。それでもなお、こうした材料は、金属を基礎とするものであると見なし得る。この方法で作製された部品は、樹脂製、セルロース製、またはセラミック製物質とは対照的に、金属の外観および一般的な性能を有する。もちろん、意図的に処理されていない金属表面でさえも、通常、金属と空気酸素との自発的な反応による金属酸化物の薄層を有することになろう。こうした材料も同様に、金属を基礎とする材料、または金属を基礎とする表面、または金属を基礎とする物質と称される。
【0062】
本明細書に記載されている各化学的構成成分の量は、任意の溶媒または希釈油を除いて提示されており、溶媒および希釈油は、特に示さない限り、市販原料中に慣用的に、すなわち活性化学品基準で、存在していることがある。しかし、特に示さない限り、本明細書で言及される各化学品または組成物は、商業グレードの原料であるものとして理解すべきであり、この原料は、異性体、副産物、誘導体、および商業グレード中に存在しているものと通常理解されているこうした他の材料を含有し得る。
【0063】
本明細書で使用する場合、用語「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」は、通常の意味で使用されており、これは当業者に周知である。具体的には、上記の用語は、分子の残部に直接結合している炭素原子を有しており、かつ主に炭化水素性質を有する基を指す。ヒドロカルビル基の例には、
【0064】
炭化水素置換基、すなわち、脂肪族(例えば、アルキルまたはアルケニル)、脂環式(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、ならびに芳香族、脂肪族、および脂環式置換芳香族置換基、ならびに環式置換基(環は、分子の別の部分を介して完成している(例えば、2つの置換基が一緒になって、環を形成する));
【0065】
置換されている炭化水素置換基、すなわち、非炭化水素基を含有している置換基のことであり、この非炭化水素基(例えば、ハロ(とりわけ、クロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、およびスルホキシ)が、本発明の文脈において、該置換基の主たる炭化水素特質を変えない、上記置換基;
【0066】
ヘテロ置換基、すなわち、主に炭化水素性質を有しながらも、本発明の文脈において、炭素原子から構成される環、またはそうでなければ鎖中に炭素以外のものを含有し、かつピリジル、フリル、チエニルおよびイミダゾリルとしての置換基を包含する置換基、が含まれる。ヘテロ原子には、硫黄、酸素、および窒素が含まれる。一般に、2つ以下、または1つ以下の非炭化水素置換基が、ヒドロカルビル基中、10個の炭素原子毎に存在することになるか、あるいはヒドロカルビル基中に非炭化水素置換基は存在しないこともある。
【0067】
上記の材料の一部は、最終配合物中で相互作用をすることができ、その結果、最終配合物の構成成分が、最初に加えたものとは異なることがある。例えば、(例えば、清浄剤の)金属イオンは、他の分子の他の酸性部位、または陰イオン性部位に移動することができる。こうして形成した生成物は、その所期の使用において本発明の組成物を使用する際に形成された生成物を含め、簡単に説明しにくいことがある。それでも、こうした改変および反応生成物はすべて、本発明の範囲内に含まれている。本発明は、上に記載されている構成成分を混合することにより調製される組成物を包含する。
【実施例】
【0068】
配合物を調製し、「耐久性試験」におけるシンクロナイザー試験リグ中で試験する。これは、摩耗、摩擦、クラッチシンクロナイザーの耐久特性を評価するため、慣用的に使用されるスクリーニング試験である。この試験リグは、通常、シンクロナイザー構成成分の十分なかみ合いを模擬するものではないが、シンクロナイザーリングとギアコーンとの間の摩擦を測定する。このリグは、構成成分がその中で組み立てられる試験リグ浴を含む。
【0069】
Automax(登録商標)リグは、速度および負荷の関数として、シンクロナイザーと補助コーン(complementary cone)との間の摩擦を測定する。このリグは、構成成分がその中で組み立てられる試験リグ浴を含む。シンクロナイザーをチャンバーの一方の側面上にある試験リグキーに取りつけ、そしてコーンを他方の側面上の試験リグジグ上に組み立てる。使用した試験条件は、以下の表に示されている。流体は、シンクロナイザーを通常1000rpmで回転させながら、80℃に維持する。試験のためのオンタイム(接触時間)は、981Nの負荷で0.2秒とし、オフタイム(非接触時間)は5秒とする。
【表1】
【0070】
試験手順は、以下の通り、5つの段階に分けられる:
ならし相(100サイクル)。
初期性能相(これにより、規定速度(1000〜25rpmの間)において、いくつかの摩擦測定を行う)。
耐久相(これにより、動的摩擦を記録する(10,000サイクル))。
耐久後性能相(これにより、規定速度(1000〜25rpmの間)において、いくつかの摩擦測定を行う)。
最後に、静止摩擦測定を行う。
【0071】
試験からのデータにより、候補品の摩擦および摩耗性能の比較を可能にする、いくつかの鍵となるパラメータが提供される。異なる候補品の相対的耐久性および品質変化の比較は、以下のパラメータに基づいて行う。耐久性試験の間の摩擦値によって評価される動的摩擦レベル;耐久相の間の平均摩擦値の安定性および傾向により評価される摩擦耐久性
【0072】
この作業では、2つの重要なシンクロナイザータイプを試験に使用する。これらのシンクロナイザーの重要な特徴は、以下の表にまとめられている。部品は両方とも、標準車両において使用されているOEM生産部品である。
【表2】
【0073】
品質変化は、性能試験プロファイルを調べることにより評価し、このプロファイルは、回転速度に伴う摩擦の変動を示すものである。低速時で、摩擦のあるレベルまたは僅かな低下を伴う水平な摩擦プロファイルを有し、シンクロナイザーの係合の改善および品質変化の改善をもたらすことが望ましい。
【0074】
動的摩擦係数は、サイクル数の関数として示すことができる。性能の定量的表現は、安定までのサイクル数の計算により得ることができる。理想的には、流体は、試験期間全体を通して、安定した摩擦を示すべきである。一部の流体は、いくつかのサイクル後の最終値に安定する前には、試験開始時における摩擦が変動することがある。他の流体は、全く安定することができず、摩擦は10,000サイクル後でも依然として増加するか、または低下することがある。耐久段階の動的摩擦の計算用データ(The data for the durability stage calculation is the dynamic friction)は、1、200、500、1000サイクル後、および1000サイクル毎、その後は最大10,000まで蓄積する。「安定までのサイクル」というサマリーは、摩擦がそのサイクル数の後に一定となり、かつ小さな変動しか示さない、サイクル数に関する数値を与える。具体的には、
以下の式
安定までのサイクル=標準偏差({μ
d,i:i≧c})が≦0.0015となる最小値c
(式中、μ
d,iは、iサイクル後の動的摩擦であり、i=1、200、500、1000、…、10000である)により定義される。0.0015という値は、試験結果間で良好な区別を与え、かつ摩擦の痕跡の目視検査として同様の結論を与えるよう、選択したものである。こうした設定すべてに関する標準偏差が>0.0015である場合、安定までのサイクルは、>10,000として報告される。
【0075】
良好な摩擦性能、良好な耐久性能、および比較的少ない「安定までのサイクル」をもたらす、流体性能の一例を
図1にグラフで示している。約2000サイクルという比較的短期のならし事象の後には、流体は、残りの試験について、安定した動的摩擦を示している。この試料は、2000という「安定までのサイクル」値を有する。
図2は、対照的に、貧弱な耐久性能をもたらす流体の性能の一例を示している。最初のならし期間の後に、試験の進行過程で摩擦の段階的低下が存在し、7000サイクル後にはより顕著になっている。その「安定までのサイクル」は>10,000である。この摩擦の低下は望ましいものではない。
【0076】
基本配合物1。最初の一連の試験は、以下の通り、ベースライン配合物で実施する。示されている量は油不含であり、重量パーセンテージである。
清浄剤−以下に記載されている量および名称(identity)
ホウ素化されているスクシンイミド分散剤−1.12%
芳香族アミン抗酸化剤−0.5%
ビス(ヒドロカルビルジチオ)チアジアゾール−0.2%
ジブチルホスファイト−0.2%
ポリアルファオレフィン、100cSt−8%
ポリアルファオレフィン合成基油、4cSt−=100%となるバランス
【0077】
最初の一連の試験において、3種の清浄剤を検討し、これらはおよそ同量の陰イオン性基質をもたらすことになる量で存在している(すなわち、希釈油および塩基(CaCO
3または、他の化学種)の量は変化するにもかかわらず、スルホネート部位はほぼ同じ重量パーセントである)。実施例1の一連のものに関しては、清浄剤は高いTBNのカルシウムスルホネート清浄剤で、690TBN(油不含)であり、2.42パーセント(油不含)の量である。実施例2の一連のもの(比較例または参照例)に関しては、清浄剤は低いTBN(実質的に中性)のカルシウムスルホネート清浄剤で、30TBN(油不含)であり、0.86パーセントの量である。実施例3の一連のもの(比較例または参照例)に関しては、清浄剤は高いTBNのマグネシウムスルホネート清浄剤で、590TBN(油不含)であり、2.38パーセントの量である。試験結果を以下の表に示している。
【表3】
【0078】
基本配合物2。2番目の一連の試験は、以下の通り、ベースライン配合物で実施する。示されている量は油不含であり、重量パーセンテージである。
清浄剤−1%(希釈油を含む)−以下に記載されている名称
ホウ素化されているスクシンイミド分散剤−1.97%
芳香族アミン抗酸化剤−0.5%
ビス(ヒドロカルビルジチオ)チアジアゾール−0.3%
ジブチルホスファイト−0.3%
ポリアルファオレフィン、100cSt−8%
ポリアルファオレフィン合成基油、4cSt−=100%となるバランス
【0079】
2番目の一連の試験では、3種の清浄剤を検討し、これらは提供されるままの、名目上同じ量となる1.0%の量で存在している(スルホネート部位、塩基、および油を含む)。実施例4の一連のものに関しては、清浄剤は高いTBNのカルシウムスルホネート清浄剤で、690TBN(油不含)であり、1.0パーセントの量であり、希釈油または0.58%の活性化学品(すなわち、油不含基準)を含んでいる。実施例5の一連のもの(比較例または参照例)に関しては、清浄剤は中〜高いTBNのカルシウムスルホネート清浄剤で、600TBN(油不含)であり、1.0パーセントの量であり、希釈油または0.50%の活性化学品を含んでいる。実施例6の一連のもの(比較例または参照例)に関しては、清浄剤は高いTBNのマグネシウムスルホネート清浄剤で、590TBN(油不含)であり、1.0パーセントの量であり、希釈油または0.68%の活性化学物質を含んでいる。試験の結果を以下の表に示している。
【表4】
【0080】
これらの結果は、開示されている技法の材料は、安定までのサイクルに関して、良好なμ
s/μ
d測定値をやはり実現しつつ、良好な摩擦性能および耐久性を実現することを示している。
【0081】
上に引用されている文献の各々は、参照により本明細書に組み込まれている。いかなる文献の記載も、こうした文献が従来技術と見なされること、またはいかなる権限においても当業者の一般的知識を構成するということを是認するものではない。実施例中、またはその他に明確に示されている場合を除き、材料の量、反応条件、分子量、炭素原子数などを明記している本記載におけるすべての数量は、「約」という語により修飾されているものとして理解されたい。本明細書で説明されている上限量および下限量、範囲、ならびに比の境界は、独立して組み合わせることができることを理解されたい。同様に、本発明の各要素の範囲および量は、他の要素のいずれかに関する範囲または量と一緒に使用することができる。本明細書で使用する場合、「から本質的になる」という表現は、考慮の対象となる組成物の基本的および新規な特性に実質的に影響を及ぼさない物質を含むことも認めるものとする。
【0082】
(項目1)
マニュアルトランスミッションのシンクロナイザーにおける非焼結金属を基礎とする表面を潤滑する方法であって、
(a)潤滑粘度の油;および
(b)油不含基準で計算すると、少なくとも約640の全塩基数(TBN)を有する、過塩基性炭酸化カルシウムアリールスルホネート清浄剤
を含む潤滑剤を前記表面に供給する工程を含む方法。
(項目2)
前記シンクロナイザーが、真鍮、青銅、またはモリブデン材料の少なくとも1つの表面を有する、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記シンクロナイザーが、中実の真鍮または中実の青銅の少なくとも1つの表面を有する、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
前記シンクロナイザーにおいて、非焼結金属を基礎とする少なくとも1つの潤滑表面が真鍮である、項目1から3のいずれかに記載の方法。
(項目5)
前記炭酸化カルシウムアリールスルホネート清浄剤が、約650〜約1000のTBNを有する、項目1から4のいずれかに記載の方法。
(項目6)
前記アリールスルホネート清浄剤が、アルキル基が直鎖状であるアルキルアリールスルホネート陰イオンを含む、項目1から5のいずれかに記載の方法。
(項目7)
前記アリールスルホネート清浄剤が、アルキル基が分岐状であるアルキルアリールスルホネート陰イオンを含む、項目1から5のいずれかに記載の方法。
(項目8)
前記アリールスルホネート清浄剤が、アルキル基が約12〜約36個の炭素原子を含有しているアルキルアリールスルホネート陰イオンを含む、項目1から7のいずれかに記載の方法。
(項目9)
前記アリールスルホネートが、アルキル置換ベンゼンスルホネートまたはアルキル置換トルエンスルホネートである、項目1から8のいずれかに記載の方法。
(項目10)
前記潤滑剤中のカルシウムの量が、約0.03〜約1.0重量パーセントである、項目1から9のいずれかに記載の方法。
(項目11)
前記潤滑剤中の前記過塩基性炭酸化カルシウムアリールスルホネート清浄剤の量が、約0.14重量パーセント〜約4重量パーセントである、項目1から10のいずれかに記載の方法。
(項目12)
前記潤滑剤中の前記過塩基性炭酸化カルシウムアリールスルホネート清浄剤の量が、約0.14〜約3重量パーセントである、項目1から11のいずれかに記載の方法。
(項目13)
前記潤滑剤が、過塩基性フェネート清浄剤をさらに含む、項目1から12のいずれかに記載の方法。
(項目14)
前記潤滑剤が、過塩基性マグネシウムスルホネートをさらに含む、項目1から13のいずれかに記載の方法。
(項目15)
前記潤滑剤が、ジアルキルホスファイトをさらに含む、項目1から14のいずれかに記載の方法。
(項目16)
前記潤滑剤が、ホウ素化剤およびテレフタル酸の少なくとも1種により処理されている、スクシンイミド分散剤をさらに含む、項目1から15のいずれかに記載の方法。