(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ダム湖や溜池などの半閉鎖性水域や閉鎖性水域の水質は、生活排水などの流入や水の循環不良によって悪化する。具体的には、このような水域は、生活排水などに含まれる窒素、リン、栄養塩類などによって富栄養化される。富栄養化の進んだ水域では、大量のアオコなどの植物プランクトンその他の水質汚濁物が増殖し、さらに、死骸が水底に沈むことから、水質が悪化する。水質が悪化すると、その水域だけでなく、下流域や上水道において悪臭が発生するなど、広範囲に亘って悪影響が及ぶ。
【0003】
水質を浄化するための対策として、アオコ採取船によってアオコを回収・除去するという方法がある。しかし、アオコ採取船では、アオコの回収・除去に時間や労力が掛かり、効率的でない。また、薬品などを散布することで水質を浄化するという方法もある。しかし、薬品の散布は、別の環境問題を起こしかねない。また、ポンプによって水を循環させることで水質を浄化するという方法もある。しかし、ポンプを使用するためには、大きな駆動源が必要となるだけでなく、水が循環することで、水底に沈殿しているヘドロを舞い上げ、新たな水質汚濁を起こしてしまう。
【0004】
このため、労力が掛からず、新たな環境問題を起こすことなく、さらに、駆動源などのエネルギを不要として水質を浄化することができるようにした装置や方法が種々提案されている。例えば、特許文献1に記載された浮遊体は、中央開口部を有する環状体と、この環状体に浮力を与えるため、環状体の外周を囲む浮力体と、環状体の中央開口部に垂下した籠状メッシュ材と、この籠状メッシュ材の内部に収容した多数のシジミ貝とを備えている。そして、浮力体の外周に連結具が設けられ、複数の浮遊体が連結具によって連結されることで、浮遊体ユニットが組み立てられる。
【0005】
浮遊体が水面に浮かべられることで、籠状メッシュ材内に収容されたシジミ貝が水面付近で飼育される。シジミ貝は、酸素を摂りつつ植物プランクトンを食することで飼育される。また、シジミ貝は、濾過食性を有していることから、アオコなどの植物プランクトンを除去する。
【0006】
しかし、浮遊体は、水面に浮いているため、ダム湖のように発電取水によって水流が発生する半閉鎖性水域において浮動する。したがって、この浮遊体は、水質汚濁物を十分に除去していない状態で移動することがあるだけでなく、水質汚濁物がない水域に移動することで、効率的に水質浄化することができない。また、この浮遊体は、隣り合っている籠状メッシュ材を離した状態で連結したものであることから、入江内の水質汚濁物が籠状メッシュ材の間を移動し、入江外に拡散してしまうことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、流れのない閉鎖性水域だけでなく、流れのある半閉鎖性水域などにおいても使用することができ、また、水質汚濁物を一定の水域から拡散させないことで、悪化した水質を浄化することができるようにした水質浄化装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る水質浄化装置は、鉛直方向の姿勢で上端部を除いて水中に沈められる多孔筒状体と、該多孔筒状体内に収納された濾過能力を有する
水生生物と、水平方向に
隙間なく多数並べられた多孔筒状体を連結する連結部材とを備え、前記連結された多数本の多孔筒状体
は、大径の多孔筒状体と1本又は複数本の小径の多孔筒状体とを備え、小径の多孔筒状体が大径の多孔筒状体内に挿入されて、一定の水域に係留されている。
【0010】
ここで、本発明に係る水質浄化装置の一態様として、前記多孔筒状体は、樹脂製網状体である構成を採用することができる。
【0011】
また、本発明に係る水質浄化装置の他態様として、前記多孔筒状体は、硬質樹脂製である構成を採用することができる。
【0013】
また、本発明に係る水質浄化装置の他態様として、前記濾過能力を有する
水生生物は、濾過食性の貝類である構成を採用することができる。
【0014】
また、本発明に係る水質浄化装置の他態様として、前記連結部材は、水面から突出している上端部と水中に沈んでいる中間部との境界部で多孔筒状体を連結する上部連結部材である構成を採用することができる。
【0015】
この場合、前記上部連結部材は、水面に浮くフロートである構成を採用することができる。
【0016】
また、この場合、前記連結部材は、水中で多孔筒状体を連結する下部連結部材を備えている構成を採用することができる。
【0017】
また、本発明に係る水質浄化装置の他態様として、前記連結部材は、前記多孔筒状体を直線状に連結する構成を採用することができる。
【0018】
また、本発明に係る水質浄化装置の他態様として、前記連結部材には、複数本の連結部材を接続して延長するための接続具が設けられている構成を採用することができる。
【0019】
また、本発明に係る水質浄化装置の他態様として、前記多孔筒状体又は連結部材と岸のアンカーとに架け渡す係留部材をさらに備えている構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、流れのない閉鎖性水域だけでなく、流れのある半閉鎖性水域などにおいても使用することができ、また、水質汚濁物を一定の水域から拡散させないことで、悪化した水質を浄化することができるようにした水質浄化装置を提供するすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る水質浄化装置の一実施形態について
図1及び
図2を参照しながら説明する。
【0023】
この水質浄化装置は、鉛直方向の姿勢で上端部11を除いて水中に沈められる多孔筒状体10と、この多孔筒状体10内に収納された濾過能力を有する生物20と、水平方向に多数本並べられた多孔筒状体10を連結する連結部材30と、連結された多数本の多孔筒状体10を一定の水域1に係留する係留部材40とを備えている。
【0024】
多孔筒状体10は、ポリエチレンその他の軟質樹脂製とされ、円筒状の本体部12と、この本体部12の底部を閉じる閉鎖部13とを有し、ともに網状に成形されている。本体部12と閉鎖部13とは、一体成形されていてもよい。網目の形状は、正方形、長方形、菱形、亀甲形など限定しない。ただし、網目の大きさは、当然ながら、濾過能力を有する生物20よりも小さく、多孔筒状体10内に収納された濾過能力を有する生物20が多孔筒状体10外に出ないようにされている。
【0025】
また、多孔筒状体10は、塩化ビニルその他の硬質樹脂製として、剛性を高めたものとしてもよい。硬質樹脂製の多孔筒状体10は、撓(しな)りにくいため、水流の変化によって繰返し荷重が加えられても、疲労して破断しない。そして、硬質樹脂製の多孔筒状体10には、濾過能力を有する生物20よりも小さな孔が多数形成され、多孔筒状体10内に水が進入できるようにされている。
【0026】
いずれにしても、多孔筒状体10内には、閉鎖部13から上端部11付近まで濾過能力を有する生物20が収納される。濾過能力を有する生物20としては、シジミ貝などの濾過食性の貝類(以下、「シジミ貝」として説明する。)を採用する。シジミ貝20は、アオコなどの植物プランクトンを水と一緒に吸い込み、濾過して、水を吐き出すという特質を有している。
【0027】
なお、シジミ貝20を収納する多孔筒状体10の長さは、例えば、4m程度とされる。シジミ貝20は、水深4m以上の深い水中1bにおいて棲息しにくいからである。
【0028】
そして、多数本の多孔筒状体10を連結する連結部材30は、上部連結部材31と下部連結部材32を組み合わせたものとされる。上部連結部材31は、多孔筒状体10が水面1aから突出している上端部11と水中1bに沈んでいる中間部14との境界部15で多数本の多孔筒状体10を並べた状態に連結する。
【0029】
また、上部連結部材31は、水面1aに浮くフロートとして作用するような水よりも比重が小さな材質で剛性を有するバーのように成形されている。この上部連結部材31は、多数本の多孔筒状体10を一方の面と他方の面の両面から挟むような2本一組として多数本の多孔筒状体10を連結する。
【0030】
各上部連結部材31の各端部には、複数本の上部連結部材31を接続して延長するための接続具33が設けられている。なお、図示しないが、上部連結部材31が多孔筒状体10と接する面には、多孔筒状体10の外面を嵌め込む縦方向の円弧状溝が多数連続して形成されていてもよい。
【0031】
そして、下部連結部材32は、多数本並べられた多孔筒状体10の下端部16が水中1bで揃えられた状態を維持するように連結する。この下部連結部材32としては、ワイヤーやバンドなどが採用されるが、多数本の多孔筒状体10が直線状に並んだ状態を維持する剛性を有していることが好ましい。また、下部連結部材32は、潜水作業によって多数本の多孔筒状体10を纏(まと)った状態に連結する。
【0032】
そして、係留部材40は、最も外側の多孔筒状体10の各上端部11と岸のアンカー(図示せず)とに架け渡され、多数本の多孔筒状体10を一定の水域1に係留する。すなわち、係留部材40の一端部41は、最も外側の多孔筒状体10の上端部11に固定され、係留部材40の他端部42は、岸のアンカーに係止される。なお、図示しないが、係留部材40は、上部連結部材31に固定してもよい。そして、係留部材40は、切断されない強度を有している限り、材質を限定するものでなく、また、ロープやチェーンのように形態を特定するものでない。
【0033】
ここで、以上のように構成された水質浄化装置の組立方法について説明する。例えば、アオコなどの植物プランクトンその他の水質汚濁物(以下、「アオコ」として説明する。)2が入江などで増殖している場合は、アオコ2を入江に閉じ込め、拡散しないように水質浄化装置を係留する。
【0034】
水質浄化装置は、多孔筒状体10や連結部材30などが分解された状態で船積みされる。そして、船積みされる前又は船上で、多孔筒状体10内にシジミ貝20を入れる。このシジミ貝20入りの多孔筒状体10は、
図2に示すように、鉛直方向の姿勢で上端部11を除いて水中1bに沈められる。そして、シジミ貝20を収納した多孔筒状体10は、水平方向に隣り合うように次々と並べられる。
【0035】
そして、所定本数並べられた多孔筒状体10は、上部連結部材31と下部連結部材32とによって連結される。上部連結部材31は、フロートとして作用し、水面1aに浮くため、多孔筒状体10内にシジミ貝20が収納されても、上部連結部材31よりも上側の多孔筒状体10の上端部11は、水面1aよりも突出する。また、各多孔筒状体10内には、シジミ貝20が収納されているため、重心が水中1bにあるが、フロートとして作用する上部連結部材31によって沈み込まない。そして、下部連結部材32は、水中1bで所定本数並べられた多孔筒状体10の下端部16を連結する。
【0036】
このようにして連結された多数本の多孔筒状体10の中間部14及び下端部16は、不揃いになることなく、上部連結部材31から鉛直方向の姿勢でフラットなカーテンウォールのような仕切りとなって吊り下げらる。なお、鉛直方向の姿勢とは、厳格な鉛直姿勢だけでなく、水流などによって、傾斜した姿勢となる場合を含む。
【0037】
そして、上部連結部材31及び下部連結部材32の長さには、限界があるため、この限界の長さで連結された多数本の多孔筒状体10を一つのユニットとする。したがって、ユニットを次々と連結することで、多孔筒状体10を例えば100m以上連結することができる。隣り合う上部連結部材31の接続具33を接続することで、複数のユニットを継ぎ足すことができる。
【0038】
そして、最も外側の多孔筒状体10に係留部材40の一端部41を固定し、係留部材40の他端部42を岸のアンカーに係止する。このようにして、この水質浄化装置は、一定の水域1に係留される。
【0039】
この水質浄化装置に備えられた多数本の多孔筒状体10の上端部11は水面1aから隙間なく突出し、また、中間部14及び下端部16が隙間なく水中1bに沈められる。したがって、この水質浄化装置は、アオコ2を入江内に閉じ込め、拡散させない閉鎖領域を作る。
【0040】
したがって、アオコ2は、
図2に示すように、多数本の多孔筒状体10内と岸との間の閉鎖領域内に閉じ込められた状態となる。アオコは、水面から突出している多孔筒状体10の上端部11を乗り越えて、閉鎖水域外へ流出しない。換言すれば、多数本の多孔筒状体10の上端部11は、入江内のアオコ2を水面1a側から流出させない堤防のように機能する。
【0041】
ただし、アオコ2は、多孔筒状体10の中間部14内に進入する。このアオコ2は、多孔筒状体10内のシジミ貝20に接触する。シジミ貝20は、濾過食性により、アオコ2を水と一緒に吸い込み、濾過して水を吐き出す。したがって、多孔筒状体10によって仕切られた入江外には、濾過された水が流出し、また、入江内に濾過された水が戻される。このようにして、シジミ貝20の濾過食性により、低環境負荷で水質浄化を図り、水の透明度を高めることができる。
【0042】
そして、シジミ貝20の排泄物は、多孔筒状体10の閉鎖部13から水底に落下し、多孔筒状体10内に残留しない。したがって、多孔筒状体10内は、シジミ貝20の排泄物によって水質汚濁のない状態が維持される。そのため、多孔筒状体10内で生育したシジミ貝20は、食用としても提供される。
【0043】
シジミ貝20は、多孔筒状体10を引き上げることで取り出される。すなわち、引き上げる多孔筒状体10と隣り合っている多孔筒状体10は、連結部材30に連結されたままとし、その両側の多孔筒状体10に挟まれた中間の多孔筒状体10を引き上げることで、生育したシジミ貝20を取り出す。そして、新たなシジミ貝20を収納した多孔筒状体10を水中1bに沈める。これにより、シジミ貝20の新陳代謝を促進することができる。なお、死滅したシジミ貝20は、廃棄される。
【0044】
あるいは、多孔筒状体10は、
図3に示すように、大径の多孔筒状体(以下、主として「大径筒状体」という。)10aと複数本の小径の多孔筒状体(以下、主として「小径筒状体」という。)10bとを備えたものとしてもよい。なお、図示しないが、小径筒状体10bは、大径筒状体10よりも一回り小さいなサイズのものを1本のみ備えてもよい。
【0045】
いずれにしても、小径筒状体10bが大径筒状体10a内に挿入される。そして、小径筒状体10b内にシジミ貝20が収納される。なお、
図3には示していないが、大径筒状体10aの上端部と中間部との境界部が上部連結部材31によって連結され、大径筒状体10aの下端部が下部連結部材32によって連結される。
【0046】
そして、この小径筒状体10bは、大径筒状体10aから容易に抜き挿しすることができる。したがって、この水質浄化装置は、シジミ貝20を容易に交換することができる。なお、この場合は、例えば、大径筒状体10aを硬質樹脂製とし、小径筒状体10bを軟質樹脂製として組み合わせるなど、適宜、材質を変更してもよい。
【0047】
以上、本実施形態に係る水質浄化装置は、鉛直方向の姿勢で上端部を除いて水中1bに沈められる多孔筒状体10と、該多孔筒状体10内に収納された濾過能力を有する生物20と、水平方向に多数並べられた多孔筒状体10を連結する連結部材30とを備え、前記連結された多数本の多孔筒状体10が一定の水域に係留されている。
【0048】
そのため、この水質浄化装置は、閉鎖性水域や半閉鎖性水域などの水域1の水質がアオコ2のような植物プランクトンその他の水質汚濁物によって悪化したとしても、濾過能力を有する生物20を収納した多孔筒状体10が水中1bに沈められた状態で係留されることで水質を浄化することができる。多数本の多孔筒状体10は、鉛直方向の姿勢で隙間なく並べられ、連結部材30に連結されている。したがって、多数本並べられた多孔筒状体10は、植物プランクトンなどの水質汚濁物を入江内などに閉じ込め、拡散させない。そして、濾過能力を有する生物20が植物プランクトンなどの水質汚濁物を濾過することによって、水質が浄化される。
【0049】
また、本実施形態に係る水質浄化装置によれば、前記多孔筒状体10は、樹脂製網状体である。これにより、植物プランクトンなどの水質汚濁物が多孔筒状体10の内部に進入しやすくなる。したがって、多孔筒状体10内の濾過能力を有する生物20は、多孔筒状体10の内部に侵入した水質汚濁物と接触しやすくなる。これにより、この水質浄化装置は、水質を効率的に浄化することができる。
【0050】
また、本実施形態に係る水質浄化装置によれば、前記多孔筒状体10は、硬質樹脂製としてもよい。これにより、多孔筒状体10は、撓(しな)りにくくなり、水流の変化によって、繰返し荷重が加えられても、疲労して破断することがない。
【0051】
また、本実施形態に係る水質浄化装置によれば、前記多孔筒状体10は、大径の多孔筒状体10aと1本又は複数本の小径の多孔筒状体10bとを備え、小径の多孔筒状体10bが大径の多孔筒状体10a内に挿入されている。これにより、小径の多孔筒状体10b内に濾過能力を有する生物20を収納し、この小径の多孔筒状体10bを大径の多孔筒状体10a内から容易に抜き挿しすることができる。したがって、小径の多孔筒状体10b内で成長した濾過能力を有する生物20を水中1bに沈められた大径の多孔筒状体10a内から容易に取り出し、新たな濾過能力を有する生物20を収納した小径の多孔筒状体10bを大径の多孔筒状体10a内に容易に挿入することができる。
【0052】
また、本実施形態に係る水質浄化装置によれば、前記濾過能力を有する生物20は、濾過食性の貝類である。濾過食性の貝類は、植物プランクトンなどの懸濁物を水と一緒に吸い込み、濾過して水を吐き出すという特質を有している。そして、成長した貝類は、食用として利用することができる。
【0053】
また、本実施形態に係る水質浄化装置によれば、前記連結部材30は、水面1aから突出している上端部11と水中1bに沈んでいる中間部14との境界部15で多孔筒状体10を連結する上部連結部材31である。多孔筒状体10は、濾過能力を有する生物20が収納されることによって重心が水中1bにあるため、上部連結部材31が多孔筒状体10の上端部11と中間部14との境界部15を連結することで、多孔筒状体10の中間部14及び下端部16が上部連結部材31から吊り下げられた状態で水中1bに沈められる。
【0054】
また、本実施形態に係る水質浄化装置によれば、前記上部連結部材31は、水面1aに浮くフロートである。これにより、上部連結部材31がフロートによって水面1aに浮くため、濾過能力を有する生物20を収納した多孔筒状体10は、浮力が与えられ、水中1bに沈み込まないようにすることができる。
【0055】
また、本実施形態に係る水質浄化装置によれば、前記連結部材30は、水中1bで多孔筒状体10を連結する下部連結部材32を備えている。これにより、多孔筒状体10の中間部14及び下端部16が下部連結部材32によって真っ直ぐに並んだ状態に揃えられ、フラットなカーテンウォールのような仕切りとなる。
【0056】
また、本実施形態に係る水質浄化装置によれば、前記連結部材30は、前記多孔筒状体10を直線状に連結する。これにより、水質浄化装置は、水質汚濁物を入江内に閉じ込めた状態にすることができる。
【0057】
また、本実施形態に係る水質浄化装置によれば、前記連結部材30には、複数本の連結部材30を接続して延長するための接続具33が設けられている。接続具33を備えていることにより、多数本の多孔筒状体10を連結したユニットを継ぎ足すことが可能となり、多孔筒状体10を並べる長さを連結部材30の長さと無関係に長くし、また、多孔筒状体10や連結部材30などを所定の水域1まで搬送しやすく、また、組み立てやすくすることができる。
【0058】
また、本実施形態に係る水質浄化装置によれば、前記多孔筒状体又は連結部材と岸のアンカーとに架け渡す係留部材をさらに備えている。係留部材により、連結された多数本の多孔筒状体を一定の水域に係留することができる。
【0059】
なお、本発明に係る水質浄化装置は、上記実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、多孔筒状体10の本体部12は、円筒状に限らず、角筒状であってもよい。
【0060】
また、多孔筒状体10が十分な浮力を有している場合は、上部連結部材31は、フロートでなく、ベルトやワイヤーとしてもよい。また、下部連結部材32は、ベルトやワイヤーでなく、隣り合っている多孔筒状体10の閉鎖部13や下端部16をそれぞれ連結するクリップなどで構成してもよい。
【0061】
また、連結部材30は、上部連結部材31と下部連結部材32の上下の組み合わせに限定することなく、多孔筒状体10の中間部14でも連結してもよいし、逆に、下部連結部材32を省略し、上部連結部材31のみとしてもよい。
【0062】
また、多数本の多孔筒状体10は、フラットなカーテンウォールのように並べられず、アオコ2の発生状況に合わせて、アーチ状や環状のカーテンウォールのように並べられてもよい。この場合の連結部材30は、可撓性を有するものを使用する。
【0063】
また、多孔筒状体10は、本体部12の底部を閉鎖部13によって閉じるのではなく、本体部12の中間部14を閉鎖部13によって閉じてもよい。この閉鎖部13は、本体部12の中間部14を突き刺す複数の軸によって構成してもよい。
【0064】
この場合は、多孔筒状体10を4m以上の長さとし、下端部16を水底に突き刺すようにしてもよい。この多孔筒状体10は、水中1bに浮いた状態とならない。したがって、この水質浄化装置における上部連結部材31は、フロートとして作用しなくてもよい。また、多孔筒状体10が安定した状態で水底に突き刺さる場合は、係留部材40が不要となる。
【0065】
また、濾過食性の生物20として、シジミ貝20以外に種々の水生生物を採用することができる。例えば、水生植物としては、ホテイアオイ、ヨシ、スギナモ、タヌキモ、バイカモ、マツモなどを採用してもよい。また、水生動物としては、クルミ貝、シワロウバイ、フネ貝、イ貝、ウグイス貝、マルスダレ貝、オオノ貝、ウミタケ貝モドキ、ツノ貝、イケチョウ貝、カワニナ、イシ貝、ドブ貝、カラス貝、タニシなどの貝類、ミミズ、ゴカイ、ヒルなどの軟体動物を採用することができる。これらの水生植物と水生動物を多孔筒状体10内に混在させてもよい。