(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、光通過時間原理により、より高い時間精度で距離を測定する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を、請求項1に記載の光電センサ及び請求項12に記載の距離又は距離変化を測定する方法により解決する。
【0010】
本発明による解決手段は、離散的な時間区分を細分化するのではなく、実際の時間区分にかかわらずその時間的な分解能を実際の分解能以上に向上する、というアイデアを前提にしている。そのとき時間区分が可能な限り細かいほど、特に良好な出力状態が形成される。発光された光信号の時間位置は、個別のショットについては時間区分より改善されることはないが、個別ショットのグループに対しては非常に良好である。得ようとする発光時点、つまりは個別ショットグループの位相が、ビンのカウント数、従って実際には統計的な振幅情報を介して設定された重心を介して得られる。更に重心位置に対する自由度は繰り返しの数、即ち多数の測定周期にのみ依存しているので、原理的に無制限である。以上により時間精度が応答時間で補償されるが、大抵の用途では問題ではない。なぜなら、十分な数の繰り返しが非常に短い時間で行われるので、監視範囲又は目標をなおも準統計的なものとして仮定できるからである。それにより、各個別光信号の実際の発光時点を調整するための技術的な限界を克服している。
【0011】
それと結びつく利点は、効果的な発光時点を実際上任意の精度で選択できるということである。最高の測定精度を有しコスト的に有利なシステムができる。
【0012】
ここで強調すべきことは、発光時点それぞれが絶対的ではなく、受光時点に対して相対的であると解釈することである。従って、別の観点から状況を考察し、それぞれシフトされた受光時点と呼んだり、受光時点微調整と呼んだりすることが十分に可能である。以下の説明及び請求項においてはこれを用語上区別しない。特に、測定結果に影響を与えることなく、発光時点と受光時点の間のインターバルを一体のものとしてそれぞれ時間的にシフトすることができる。従って、このように発光時点と受光時点を共通してシフトすることは、発光時間遅延を意味するものではなく、遅延は常にオプションで追加的に発生させることができる。同様に、オフセット又は発光時間遅延のような概念には、時間軸上の正負両方向のシフトが含まれている。
【0013】
解析ユニットが、ある検知周期を有する検知区分で受光した光信号をデジタル化して、発光時点を離散的な時点に対してのみ選択でき、得ようとする発光時点が、検知区分の外で前記離散的な時点とは別の時点に選択できるように構成されていると好ましい。即ち、得ようとする発光時点がデジタル化の時間区分又はデジタル素子の作動サイクルに依存せず、発光時点に対する最小のシフトにも依存しないようにするのである。
【0014】
得ようとする発光時点が、高い時間精度、特に10ピコ秒以下、あるいは1ピコ秒以下の精度でさえ選ぶことができると好ましい。検知自体でこのような精度を達成するのは不可能であるか、非常に多数の工程を経てのみ達成可能である。本発明が結果として、デジタル素子の巧みなプログラミングを使って、即ち非常にコスト的に有利な手段で、この種の高価なハードウエアを廃止し、ないしはそのようなハードウエアの限界を克服することを可能にする。
【0015】
オフセットの分布が単峰で、特に三角形、放物線、又はガウスの関数により予め決定されていると好ましい。この種の分布は特に明確な重心を持ち、従って高い時間精度を有している。そのとき分布は、実際の発光時点に相当する幾つかのサンプリング点及び、付属するカウント数、即ちこのオフセットに対する繰り返し数、それにより結果として振幅情報で形成される。そこででき上がる関数はビンをカバーする包絡線である。サンプリング点の数については、できるだけ分布を狭くしつつ、重心と包絡線を十分正確に形成できるような数を選ぶという妥協が必要となり、例えば3〜11個、好ましくは5〜7個である。そのとき基本的に重心の明確化が包絡線の真の再現より重要であるので、分布を規定する際には重心ではなく形状が犠牲となるように離散化誤差を考慮すると好ましい。
【0016】
特にガウス形状の分布が好ましく、それは良好に決められた重心を有するだけでなく、ジッタに対しても強いからである。逆に、周囲光の変動やエレクトロニクス装置の誤差を考慮すると、ジッタは望ましくさえある。ジッタにより分布における離散的なサンプリング点が塗り潰され、発光された多数の光パルスが、非連続でガウス分布に近似するだけでなく、ほとんど連続したガウス分布を形成するからである。ジッタが白色ノイズに相当すると仮定した場合、ガウス分布は場合により幾分歪むが、その本質的な特性を維持している。
【0017】
発光時間微調整ユニット用の表を保存したメモリーを設けていると利点がある。この表は、多数の時間インクリメント毎に、対応するオフセット分布を保持しており、特に検知周期及び/又は二つの離散的な時点間の時間インターバルにわたって均等に配分された時間インクリメント毎にそれぞれ一つのオフセット分布を保持している。その表は正確に言えば複数の表から成る表である。つまり、分布により設定できる各時間インクリメント毎に、各サンプリング点におけるカウント数を記録した独自の表がそれぞれ保存されており、この表が分布を規定する。この分布のそれぞれに対して、時間インクリメントに対応して重心を上手く決めることが包絡線の真の形成と比べて重要であるという、上述のことが当てはまる。なぜなら、そもそも重心をシフトすれば測定誤差の混入が原理上避けられないからである。表を使うことにより発光時点を任意に、時間インクリメント分だけシフトすることができる。そのとき表には次の大まかな周期まで、即ち設定可能な実際の発光時点までの情報が入力されていれば十分であるが、基本的に更に多くの情報を入力しておいてもよい。
【0018】
別の有利な構成ではレベル特定ユニットを設けており、前もって各ビンから雑音レベルを差し引いた後に特にビンについての数値合計を求めることにより、ヒストグラムで蓄積され記録された受光信号の面積をレベルの基準として利用するように、そのレベル特定ユニットが構成されている。雑音レベルは、例えば全てのビンにわたる平均値として特定できる。受光信号の数値合計は、必ずしも全体のヒストグラムについて求める必要はなく、受光信号のある時間範囲についてのみである。これはより良好な基準である。というのも、そうでなければ雑音に起因する変動がレベル測定に算入されるからである。逆に、全てのビンにわたって雑音レベルを形成するのではなく、受光信号の範囲を除いたビンにわたって、好ましくは光学的に見えない範囲で形成すると好ましい。
【0019】
解析ユニットが距離補正用に構成されており、それが拡散反射に関係するずれをレベル測定に基づいて補償すると好ましい。そのために必要な拡散反射に関係する補正又は白黒の補正、即ち各レベルに光通過時間用の補正係数を規定する関係をまず記憶させ、表又は補正関数として保存することができる。光学素子の状態、例えば調整具合、汚れ、又は発光強度を調べるために、レベル測定値を解析することもできる。
【0020】
更に解析ユニットが時間的なコーディングのために構成されていると好ましく、そこでは発光時点に追加のコーディングオフセットを合わせ、これを解析のために、特にランダムな又は決まった分布を混合したり、もしくは追加の重心シフトを行ったりすることにより、再び取り除く。この種のコーディングは、発光された光信号を妨害光と区別するために使用する。この妨害光は、自分が発光する光パルス又は同構造センサでの遅れた反射の場合がある。意図的に行われる、演算で補償可能な時間軸上でのジャンプ又は“ピンボケ”により、そのような妨害要因が塗り潰され、それが雑音レベルから突出しなくなるか、少なくとも弱くなる。代替又は追加として、受光時に自分の光信号を再認識できるようにするために、信号形態自体、即ち各個別光信号の形態をコーディングすることも可能である。
【0021】
別の有利な構成では、離散的な時点を検知区分より細分化するように構成された時間ベースユニットを設けており、そこで時間ベースユニットが、特にDDSを有しているか、又は第一周波数の第一時間サイクル及び第一周波数とは等しくない第二周波数の第二時間サイクルから離散的な時点を導き出し、それにより第一及び第二の周波数に合った差分周期により与えられる時間分解能を有する離散的な時点を提供するように構成されている。従って、両方の周波数がその都度どの周期にあるかを記録することにより、差分周期により精度が決まる時間インターバルを作り出すことができる。差分周期は周波数の差をわずかにすることにより非常に小さくできる。特に注意すべきことは、分解能が必ずしも差分周期に等しくないことである。二つの周波数の割合がn/(n+1)の時にこれが当てはまり、そのような割合も同じく好ましい。例えば3/8のような除数が異なる別の数字の例を見ると、確かに差分周波数5が精度を決めるがそれと同一ではない。なぜなら、そのようなシステムにおいても最小のオフセットが1であるからである。ここでオフセットが時間と共に単調に増加するのではないが、それを整理すると、一目瞭然のケースn/(n+1)と同様に、必要な全てのオフセットが存在する。以上の考察では単位を省略したが、各数に例えば10MHzの共通した基本周波数を乗じても、検討内容は変わらない。時間ベースユニットが、簡単な回路又はソフトウエアの解決手段を使ったコスト的に有利な方法を用いて、デジタル素子又は検知区分により最初に得られるより細かい時間区分で実際の発光時点を求めることを可能にする。得ようとする発光時点、即ちオフセット分布の重心がこの時間区分を更に細かくする。特にそれは倍数の分解能になる。
【0022】
時間ベースユニットが、基準時点をも決定するマスターサイクルから第一周波数及び第二周波数を導き出し、第一周波数及び第二周波数を周期的にマスターサイクルに同期させるように構成されていると好ましい。それにより必要となるのは安定したサイクル発生部のみであり、両方の周波数が同期範囲を最大限にカバーして別々に進行する。そのとき、周期が理論的に一致しているはずだとすると、400MHz及び410MHzの例では即ち100ns毎、又は各n番目、即ち100nsの倍数で、毎回同期させることができる。
【0023】
時間ベースユニットが、マスターサイクルの第一の除数を備えた第一周波数用の第一PLL、及びマスターサイクルの第二の除数を備えた第二周波数用の第二PLLを有しており、特に第一の除数及び第二の除数を、数百、数十、又は数ピコ秒の範囲でできるだけ小さい差分周波数ができるように選んでいると好ましい。数値例は、10MHzのマスターサイクル、及び除数ペア40/41である。PLLの安定性及び使用するデジタル素子の基準によっては、除数を更に大きくすることにより、もっと短い時間を設定することができる。両方の除数は互いで割れない数であり、好ましくはnとn+1の関係を満たすべきである。割り切れない数以外を選択すると、例えば5及び10の場合のように全く改善されないか、あるいは42及び40の場合のように十分に最適な改善に至らない。
【0024】
解析ユニット及び/又は時間ベースユニットが、デジタル論理素子、特にFPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)、PLD(プログラマブル・ロジック・デバイス)、ASIC(特定用途向け集積回路)、又はDSP(デジタル信号プロセッサ)の上に実装されていることが好ましい。このようなデジタル素子により、用途に適合した演算が可能となり、更に、例えばFPGAが設定可能な除数を備えたPLLを予め備えている場合には、必要な両周波数を簡単につくり出すことが可能になる。
【0025】
時間ベースユニットが、第一ないし第二周波数の完全な周期を計数するために、第一カウンタ及び第二カウンタを有しており、これらのカウンタが特にトリガーされたシフトレジスタを有しており、時間ベースユニットが、第一周波数のn番目の周期と第二周波数のm番目の周期の間の時間インターバルとして時間シフトをつくり出すように構成されていることが好ましい。両周波数の特定周期のペアが、検知により決まる時間区分以下の時間インクリメントを作り出す。その周波数が上述のnとn+1の関係を満たす場合には、整理がより簡単である。ペアを使って一つの検知周期を満たすことができれば十分である。なぜなら、より長い時間は全検知周期の加算によりつくり出すことができるからである。しかし代替として、検知周期を越えるペアも演算することができる。各同期又は各n番目の同期のたびに、カウンタがリセットされる。
【0026】
時間ベースユニットが、第一周波数、第二周波数、又はマスターサイクルの周期だけ時間シフトを延長するように構成されていると好ましい。それにより、より長い任意の時間シフトをつくり出すことができる。
【0027】
解析ユニットが、受光した光信号の移行条件を適用して、観察時点に光信号を受光しているかを確認するように構成され、観察時点で移行条件を満たすように、得ようとする発光時点を追加の発光遅延時点を使って追跡するように構成されているコントローラが設けられていると好ましい。そこで根拠になっているアイデアは、測定を、例えばひとたび測定値を特定して出力したらセンサがアクティブでなくなるという、一度だけの過程として見ないということである。その代わりに測定結果を最新の状態に維持するために、利用可能な最新の情報を常に利用する。常により正確でより有効な測定値を使用できるが、それはコントロールが常に測定を追跡するからである。観察範囲における動作又は雑音によるエラーが避けられる。コントローラが、滞りなく迅速に作動する。後続のコントロールがない一度だけの測定の場合でもこの手法の方が良いだろう。なぜなら、このコントロールアルゴリズムは、例えばインターバルパケッティング又はシーケンシャルシフトと比べて遙かに短い時間で測定値を見つけ出すからである。コントローラがわずかのサイクルでジャンプすると、この時点から必要な発光遅延時間だけ経過した時点で、正確な距離測定値が得られる。ジャンプ中に既に近似値が特定されて、それに基づいてコントロールにより常により正確な測定値が求まる。
【0028】
以上のコントロールにより、観察時点が発光時点に対して相対的に固定される。その選択は全く任意であって、測定とは無関係で規定される。観察時点は常に同じままであるが、それを変更することを本発明は基本的に禁じていない。この観察時点がコントロールにとって既知でありさえすればよく、許容できるように選択されている限り、それはコントロールにより変更されず、またコントロールに影響を与えない。例えば観察時点は、最大測定距離、次の光信号の発光より少し前の測定インターバルの終端、あるいはその一部分に配置される。こうして常に同じになる観察時間は、コントローラが設定する発光遅延時間(これはコントローラにとっての制御量である)と光通過時間の合計に等しいから、後者は簡単に特定することができる。電気的な信号通過時間のような所定の時間成分は、事前の較正により除去するのが最も良い。
【0029】
別の有利な構成では、コントローラが移行条件を確認し発光遅延を追跡できるコントロール時間インターバルが、センサ測定範囲の一部のみに相当し、更に、位置変化監視ユニットが設けられ、それにより、どの時点に受光信号を受けるかを周期的に確認して、この時点がコントロール時間インターバル外にある場合に、コントローラに新しいコントロール時間インターバルを設定し、位置変化監視ユニットがエージェント、即ち継続して又は規則的に配分された時間スリットで働くと共にコントローラから独立したプロセスを有しており、エージェントが、目標物の光信号を実際に受光する有効なコントロール時間インターバルを見つけ出してコントローラに設定するという目標を有している。
【0030】
従って、コントローラが、求められる測定値の周辺で常に作動する、つまり迅速に対応し、雑音信号の位置又はいつのまにか無くなった目標の位置に間違ってとどまることがない。受光信号を見つけ出すことは、この関連では検知区分においてのみ可能であり、そうせざるを得ないが、コントローラが有効な作動範囲を維持するために正確な測定は必要ない。例えば、第一ゼロ通過にジャンプする危険性なしでコントロールできるようにするために、コントロール時間インターバルを、それが受光信号の最初の降下フランクの単調な部分を含むように選ぶことができる。つまり、コントロール時間インターバルを先に規定することは発光遅延時間の大まかな設定を意味している。そのとき観察時点は変更されないが、初めに十分な間隔を有して選んでおけば、いずれにしてもそれは必要でない。この処置により新しい測定値へ非常に迅速に近づくことができる。
【0031】
(ソフトウエア)エージェントが、本来のコントロールとコントロール時間インターバルの検出を切り離しているため、頑強で取り扱いが簡単である。エージェントは、最初に正しいコントロール時間を見つけることだけでなく、このコントロール時間インターバルを常に確認して場合により補正する、即ち結果として測定値を継続して追跡するという目標を有している。従って、エージェントは、上位レベルで監視範囲における動き及び雑音に反応し、求める受光信号又は求める目印を実際に探索するのに適したコントロール時間インターバルへコントローラを移動させる。プロセスの独立性は、実際に専用のハードウエアパス又は、ソフトウエア用語で言うところの独立のスレッド又はタスクの概念で実現することができる。ただし、これらは単に概念上でのみ意味を持つに過ぎない。実際のエージェントは、例えばコントローラの一部を周期的に呼び出すという形で実装される。
【0032】
受光部と解析ユニットの間の受光パスに、単極の受光信号を二極信号に変換するためにフィルタ要素を設けており、そのとき移行条件が、特に二極信号の最初の最大値から最初の最小値へのゼロ通過を含んでいると好ましい。二極信号には(継続)周波も含まれる。移行条件は時間/距離軸上で、コントロール規定値ないし求める距離の値に相当する。フィルタは、解析ユニットのデジタル素子の一部とすることができるが、アナログ素子であると好ましい。なぜなら、そうでなければ、その前にあまりに多くの信号部分が無くなってしまい、精度に影響するからである。フィルタは、例えば微分器又はバンドパスとすることができる。別の複合した特性、即ちもっと後のゼロ通過又は転換点に関する移行条件を定義することも考えられる。更に、ゼロ通過の両側にある極値自体を採用することができるだろうが、その明確さはレベルに依存しているので頑強さに劣る。あるいは精度を更に向上するために、多数の特性ないしゼロ通過を採用することもできるだろう。
【0033】
位置変化監視ユニット又は解析ユニットが、基準点としてまず雑音レベルを特定するように構成されていると好ましい。そのためにヒストグラムにおいて、ビンの全て又は一部を選んで調べることができる。
【0034】
位置変化監視ユニットが、ある目印を手がかりに、特に極大から極小及びその逆向きに交互に振動しながらその都度降下する包絡線(特に対数的な包絡線)を形成するような変化を手がかりに、特に、受光信号を認識するように構成されていると好ましい。目印は関数変化の基本的な特徴を含んでおり、それにより全体の関数変化を使って比較するのとは対照的に速く演算でき、変動があっても認識が可能である。目印は、解析時間及び精度のどちらを重視するかによって、簡単でも複雑でもあり得る。それは雑音に強く、迅速に演算可能であり、誤認の可能性ができるだけ低いものであるべきである。従って、そのためにどれ位の数の交互振動が必要か、そして付属する包絡線の振幅をどれ位の精度で特定すべきかは、用途に応じて最適化することができる。その目印は全監視範囲にわたって、例えば多重反射により何度も見つけ出されることがある。それぞれ最も明確な目印がコントロール時間インターバルを特定することになり、それはしばしば、監視範囲で見つけられる最強の極大値で始まるものである。その目印は、コントローラが移行条件を見つけることができるように、選ばれ明確にされるべきである。
【0035】
位置変化監視ユニットが、周期的な確認動作のそれぞれでコントローラにどのコントロール時間インターバルを設定したかを示す履歴を記憶して、それにより、この履歴の統計解析に従い受光信号のコントロール時間インターバルをコントローラに与えるように構成されていると好ましい。このようにすると、短時間又は一度限りの現象がさしあたり考慮の対象外となるので、急ぎすぎのジャンプが回避される。より良好なコントロール時間インターバルが幾分持続的に見つかると初めてコントローラの設定が変更される。そのとき実際のコントロール時間インターバルに、履歴の中でより高い統計的なウエイトで反映できる一定の慣性があると好ましい。統計解析により二つ又は多数のコントロール時間インターバルのどれを選ぶかを決定できない、又はほとんどできないときには特に、明白な決定を行うことができるまで直近のコントロール時間インターバルが優先されることになる。
【0036】
本発明による方法は、類似の方法で別の特徴により構成することができ、そのとき類似の利点を示す。その種の別の特徴を独立請求項に関連する従属請求項に記載しているが、例示的なものであって確定的ではない。
【0037】
以下において本発明を、他の利点及び特徴も踏まえながら、添付の図面を参照して実施例を使って説明する。図面の各図は次を示している。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、非常に簡略化して図示した光電距離計即ちセンサ10を示しており、それが発光部12を介して光パルスを、リフレクタ又は反射する目標物14に向かって送る。そこで直反射又は拡散反射された光線が、発光部12を取り囲む受光部16に戻る。光線はその経路で拡散するので、発光部12がカバーするのは反射される光のごくわずかな部分のみである。勿論、代替として公知の別の解決手段、例えばビームスプリッタ及び共通の光学系を備えたオートコリメータ、又は二つの個別光学系が設けられており発光部及び受光部が互いに隣接して配置されている瞳孔型配置を使用することもできる。
【0040】
発光部12及び受光部16は、制御部18により制御及び評価される。制御部18が発光部12に、個々の光パルスを既知の時間に発光させる。必要な発光時間遅延をどのように達成するかは、以下で詳細に説明する。また制御部18が受光部16における光パルスの受光時点を特定する方法も、同様に後述する。受光時点と既知の発光時点から光通過時間が求まり、その時間と光の速度から目標14の距離が求まる。
【0041】
センサ10に関しては少なくとも二つの手法が可能である。一つの手法では光通過時間、従って距離を絶対測定する。別の手法では特定の距離、例えば協同する固定目標までの距離を記憶させ、その間隔が変化するかどうかを監視する。
【0042】
センサ10は、光電式検知器又は距離計とすることができる。対象物14までの距離に対する絶対値を求める本来の距離測定の他に、例えば事前に記憶させた、協同する固定目標14までの間隔の変化を監視することも考えられる。別の実施形態は反射光シャッタ、即ち発光部と対向して配置されたリフレクタを有する光シャッタであり、その場合にはそこで反射された光線の遮断を検知する。このリフレクタの距離又は距離変化を測定することにより、まだリフレクタが想定する位置に静止しているかを監視することができる。上述のセンサすべてが距離の値を出力又は表示することができ、若しくは特定距離にある物体を検知した時又は、想定する距離を外れた時にスイッチ動作を起こすスイッチとしても作動することができる。多数のセンサ10を組み合わせて、例えば距離を測定又は監視する光格子を形成することもできる。また、可動式のセンサ10を搭載した移動式のシステムや、発光された光パルスを方向転換ユニットにより動かして監視線又は監視面を走査するスキャンシステムも考えられる。この場合、方向転換ユニットは回転ミラー又はポリゴンミラーホイールとすることができる。
【0043】
センサ10の詳細を
図2で示す。ここでも以下と同じように、同じ参照符号が同じ特徴を表している。ここでは発光部の例としてレーザーダイオード12を図示している。レーザ光源14は、例えば端面発光レーザ又はVCEL(垂直共振器面発光レーザ)等、任意のものでよい。また、時間的に十分にシャープな信号を発生できる限り、別の光源、例えばLEDも原理的に適している。対する受光部として示したのはフォトダイオード16であるが、PSD(位置感応ダイオード)や、列状ないしマトリックス状の受光素子(例えばCMOSチップ)の使用も考えられる。即ち、光信号を電気信号に変換できる一般的な受光器ならどれでもよい。
【0044】
ここに記載している本発明による実施形態では制御部が、FPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)18に設けられている。代替のデジタル素子の例は既に挙げたが、それに限るものではない。制御部18は、発光時点調整部20及び本来の解析ユニット22を有している。信号を妨害なしで伝達できるようにするために、FPGA18の接続は区分して実施されている。切断線24で示した通り、目標物14は大抵、
図2の尺度ではもっと離れている。
【0045】
センサ10は、本来の発光部16の他にレーザ励振部26及び遅延装置20が属する発光パス、及びアナログの前処理部28を介して解析ユニット22にデジタル化された受光信号を送るフォトダイオード12が属する受光パスを有している。
【0046】
アナログの前処理部28は多段ステップの処理パスを形成している。このパスは、増幅部30、例えば、フォトダイオード16の信号を受けて増幅するトランスインピーダンス増幅部で始まる。次に接続されているフィルタ32は、例えばバンドパスフィルタ又は微分器であり、単極の光信号を二極信号に変換する。次の前処理ステップとして設けられた制限増幅部34は、光信号パルスが飽和状態になった矩形パルスになるように、振幅を増幅した後に切り取る。そして前処理の最終段階として、前記信号がA/D変換部36、特に振幅をデジタルの数値ではなく専ら二値に変換する二値化部に送られる。A/D変換部36は、特殊な素子ではなく、FPGA18の入力部を介して前段に接続した簡単なアナログのR又はRCネットワークを使って実現すると好ましい。
【0047】
以下、
図3を参照して、上記の構成部品によるセンサ10の信号・演算パスを説明する。そのとき、多数の個別測定結果を統計的に解析することが好ましい。なぜなら、個々の測定信号には雑音が非常に多く混入しているため、信頼できる受光時点を特定できないからである。
【0048】
発光部16が、各測定周期100においてそれぞれ、正確な時点の特定を可能にする光パルスを発生する。以下において更に説明するように、制御部18が、測定周期の一部(例えば1メートルの測定区間に相当する部分)のみを含むコントロール時間インターバル101を弁別する。光信号としては矩形パルスが適しているが、例えばガウスパルス、各信号をコード化して組み込むためのマルチモード信号、ステップのようなその他のパルスも考えられる。以下においては、これらの信号形態すべてを光パルスと呼ぶ。
【0049】
光パルスは、センサ10の監視範囲において目標物14で直反射又は拡散反射されて、受光部12で電気信号に変換される。引き続いて電気信号は増幅部30で増幅される。図では発生する増幅電気信号102を理想化して描いているが、実際の条件では受光された光パルス102は明確な矩形にはならず、波形側面に過渡部分が生じ、更に全体に雑音が現れる。
【0050】
光の性質上、増幅された電気的受光パルスは常に単極の信号となる。それがフィルタ32で二極信号104に変換される。これをバンドパスフィルタで実現することができるが、そのつくられた信号変化104は少なくとも近似的に、増幅された信号102を広げて導き出したものに相当する。
図2では二極信号104の隣にグレーの矩形を図示しているが、それが雑音レベルを表すことになる。実際では雑音レベルが、増幅された信号102の振幅を上回ることがある。更に図では二極信号104の正弦波を1周期分だけ示している。後続の周波、即ち徐々に振幅が減衰するその後の正弦波周期は、図示を簡単にするために省いている。勿論、常に純粋の正弦波になるとは限らないが、最大値及び最小値を有する曲線になることが想定されている。
【0051】
制限増幅部34では、本来の信号が矩形波面106になりグレーの矩形で図示した雑音レベルの振幅が全体のダイナミックレンジ以上に広がるように、二極信号104が増幅されて切断される。
【0052】
矩形波面106が二値化部36で、例えば2.5nsの検知レートで検知される。この検知レートが
図3では矢印108により表されている。発生するビット列は、記載している数値では2.5nsあたり各1ビットであるが、それがヒストグラム110を形成するために解析ユニット22で使用される。そのために各ビン毎に積算部が設けられており、それが対応するビット値が“1”の時にのみ累積計数される。なお、図の内容とは違うが、検知は必ずしもコントロール時間インターバル101に制限されない。
【0053】
理想的で雑音のない信号の場合には、このヒストグラム110で矩形波面106が上にあるビンのみが満たされる。しかし、制限増幅部34により高くなった雑音レベルがその他のビンも満たす。厳密に言えば、雑音の偶然性のために、例えば測定区間100の二つ目毎にビンが満たされると期待される。
【0054】
ここに記載した方法を反復して、測定周期100のk回分のヒストグラム108をつくると、ビンは雑音により約k/2の値で満たされ、それに統計的な変動が加わる。この値k/2は、二進化に基づく信号値ゼロzに相当する。それにより、二極信号104のプラス部分により形成される極大値が上方に、対応する極小値が下方に突出する。図示していない後続周波とともに、受光信号の時間インターバルにおけるヒストグラムは特徴的変化を示しており、解析ユニット22はその変化を目印として用いて受光時点を特定する。多数の個別測定を統計的に処理することで、雑音割合が高すぎて測定周期100での個別測定によっては信頼性ある距離の特定をできない時にも、受光時点の特定が可能になる。
【0055】
上の例では例として検知レートを2.5nsにしているが、この制限があるため、ヒストグラム110で受光信号を直接求めるだけでは十分ではない。なぜなら、時間分解能が低すぎる可能性があるからである。
図4は、時間分解能を例えばFPGA又はA/D変換部により決まる時間区分の精度以上に改良するという、本発明による処置についての全体図を示している。
図4を見ると、多数の繋がったステップが示されている。この組み合わせで全体として最高の性能が発揮される。しかしながら、ステップの全部を同じように備えることは必ずしも必要ではない。部分的に選択するだけでも、従来のシステムと比べて測定精度が向上する。引き続いて別の図を使って、
図4の全体図による各ステップを詳細に説明する。
【0056】
発光時点調整部20は、時間ベースユニット38を有しており、それが、二つの周波数をベースにした方法を使って高分解能の時間ベースを提供する。その時間ベースを利用して、2.5nsの倍数より明らかに正確に、例えば60.975psの倍数で光パルスの発光を遅らせることができる。
【0057】
更に発光時点調整部20は、発光時間微調整ユニット40を有しており、その中で多数の個別測定値を使って例えばガウス形状の発光パターンを形成することにより、実際に生じている発光時間遅延を、物理的に可能な発光時点と比べて、属する受光パターンの重心により理論的に任意に細分化する。即ち、時間ベースユニット38が直接的に分解能を変更し、その分解能が発光時間微調整ユニット40により、統計的な重心シフトを介して間接的に更に細分化される。
【0058】
このように高分解能にした時間区分で測定領域に送られた光パルスが、受光されてA/D変換部36でデジタル化される。引き続いてヒストグラムユニット42で、
図3にて説明したヒストグラム解析が行われる。
【0059】
本来の距離特定はコントローラ/エージェント44で行われるが、ベースにするのは直接検知ではなく制御工学的なトラッキング原理であり、それにより、つくり出した時間分解能を効果的に利用する。そのとき一方で、求められる安定度基準を満たしていると共にセンサ10が例えば別の反射又はEMVによる妨害要因に対して変化しないように、コントロールパラメータを決めなければならない。一方、このようにすると、旧式のコントローラでは即応性が低すぎて、問題なく本当の目標変化に応答することができない。本発明が意図していることは、背景でエージェントを使ってコントローラを絶えず監視することである。エージェントが規則的にセンサ10の全作動範囲を評価して、目標変化時にコントローラを正しいコントロール時間インターバル101、即ち目標位置の時間範囲に制御する。
【0060】
レベル特定ユニット46では、高分解能のレベル測定のためにヒストグラム110を解析することができる。それにより、一般的に使用される追加のアナログ素子をなくすことができる。しかもこのレベル特定は、特にコントロール原理との組み合わせで非常に正確である。そのレベルを出力することができるが、距離測定を補正するために利用することもできる。
【0061】
明確に発光パルスを受光パルスに関連付けすることを可能にするために、発光パルスをコード化ユニット48にある時間軸でコード化して出力することができる。その後、デコードユニット46でデコードされるが、デコードユニットは
図4では簡略化するためにレベル特定ユニットと一緒にしている。発光パターンのコード化を使うことにより、例えば受光パルスを背景から隠すことを達成できる、即ち、本来の配分された測定周期100の経過後に測定範囲外で受光されるようなものである。コード化により回避する取り違いの別の可能性は、同構造システムによる光パルスである。そのときガウス形状の発光パターンが、自然の順番ではなくランダム化された順番で発光され、受光される。デコードユニット46にはランダム化のキーが分かっており、それによりデコードすることができる。光信号パス上では同時に多数のコード符号が通過可能であるが、それは異なる区間部分がコード化により一意に特徴付けられているからである。
【0062】
次に
図5及び6を参照して、2.5nsの検知レートと関係なく、例えば60.975psの時間区分で時間ベースユニット30が時間インクリメントを提供する方法を詳細に説明する。
【0063】
10MHzのマスターサイクル50から第一PLL(フェーズ・ロック・ループ)52及び第二PLL54において、マスターサイクル50の倍数としてf1=400MHzないしf2=410MHzの分割サイクルをつくり出す。時間ベースユニット38はPLL52,54の両周波数を受け取るとともに、同期のためにマスターサイクル50自体も受け取る。これらの周波数を時間ベースユニット38で合わせて、それらの位相の保存記録を利用して、時間インクリメントを再現可能な状態でつくることができる。第一PLL52の周波数400MHzは、同時にA/D変換部36用の検知レートとして使用する。
【0064】
図6で分かるように、異なった二つの周波数400MHz及び410MHzの周期がずれを増大させながら通過して、100nsのマスターサイクル50の周期後に再度合致する。この時点にそれぞれ、理論的に同じ時点において上昇又は下降する波形側部(フランク)への同期が起き、それによりPLL52,54及びマスターサイクル50で場合により起きるずれが解消される。なお、
図6は簡略化されており、本来必要な40ないし41周期の代わりに10ないし11周期のみを示している。
【0065】
PLL52,54がFPGA18に含まれていると好ましい。しかし、PLLを使用せずに二つの周波数をつくり出すこともできる。勿論、マスター周波数を10MHz以外とし、上記の例の周波数f1=400MHz及びf2=410MHzとは別の周波数を用いる構成も本発明に含まれるが、その場合は、導き出した周波数の安定性とできるだけ短い差分周期間とのバランスを選択して見つけなければならない。この選択により少なくとも原理的にはピコ秒以下の範囲における時間区分を達成できる。
【0066】
導出周波数f1及びf2の周期が、この周波数によりトリガーされるシフトレジスタで通算されるので、
図6で図示しているように、あるフランクがどの周期に属しているかが時間ベースユニット38には分かっている。f1及びf2それぞれのi番目の周期の間の位相差が徐々に大きくなり、マスターサイクル50が1周期分進んだところでf2の41番目の周期がf1の40番目の周期と同時となる。この差を時間インクリメント又は時間バジェットの形態で、差異周期ΔT=1/f1−1/f2=60.975psの倍数として使用する。なお、
図6では図示簡略化のために異なる数値10及び11を用いていることを再度確認されたい。
【0067】
差分周期の任意の倍数をつくり出すために、時間ベースユニット38が、周波数f2のn番目の周期及び周波数f1のm番目の周期から成るペアを選ぶ。各ペアの位置はマスターサイクル50に対して固定されている。例えばn=2及びm=6が、4/f2+6ΔTの時間インターバルに相当する。ここで、1/f2=41ΔTである。その際、1μsの測定周期100を満たすために、マスターサイクルのフル周期を加算する。これは例えば、マスターサイクルとリンクし、上位レベルでタイミングをマスキングする制御ユニットにより行われる。そこでは、100ns経過して同期が起きるたびにカウンタがリセットされ、ペアの番号付けが最初から始まる。100ns経過後に同期時点を越えてf1及びf2の周期を更に計数する場合には、前記ペアもまた100nsより長い時間インターバルを直接規定することができる。ペアをはっきりと分離できるようにするためには、PLLによる場合のように、二つの導出周波数f1及びf2をマスターサイクルと確実にリンクさせる必要がある。
【0068】
以上により、二つの導出周波数f1及びf2に基づいて、検知区分よりもはるかに細かい時間ベースを使用できる。これにより、基準時間と比べて差分周期の倍数だけ実際の発光時点を遅らせることができるか、又はペアの一つの要素が発光時点を定義し、別の要素がヒストグラム42における受光パターンの統計的な記録を開始する時点を定義することができる。それにより発光時点及び受光時点の間に、2.5nsという低速の検知区分とは関係がない時間的なずれが生じる。時間ベースユニット38は完全にFPGA18内で作動できるので、実装が容易であり、しかもノイズが生じにくい。
【0069】
時間ベースユニット38によりつくられる時間インクリメントは、非連続であり、周波数を選択することにより決められている。従って、測定周期100内の個別測定の精度は、まず選択した周波数の差分周期により制限される。
【0070】
図7及び8は、発光時間微調整部40を使って多数の個別測定に対する時間分解能を向上する方法を明らかにしている。そこでは、繰り返し動作のなかで、後続の測定周期100における発光時点が分布に基づいて変更される。包絡線56により、物理的に可能な離散的な発光時点により規定されている離散的なサンプリング点58のそれぞれに対応する頻度が得られる。この分布の重心により、実際に作用する発光時点が決まり、それがk回の測定周期100後のヒストグラム110に対する全体的な統計解析の基準となる。
【0071】
しかしながらこの重心は、離散的な物理的発光時点又はサンプリング点58自体と関係がない。別の分布60、即ち同じ離散的なサンプリング点における別の頻度62を選択することにより、実際に作用する発光時点を理論的に任意に向上可能な精度で、離散的なサンプリング点58の間でも選択することができる。
図7では、一つの分布56の実線で図示したサンプリング点58が、別の分布60の点線で図示したサンプリング点62に対してわずかにずれて示されている。これだけで明らかであるが、そこでは正にサンプリング点それぞれが、同じ離散的な物理的に可能な発光時点に関係付けられている。格子状のサンプリング点を、基準時点に対する可能なオフセットとして解釈し、それにより頻度をオフセット分布として解釈することができる。
【0072】
図8は、どのようにこの方法で細かい時間インクリメントを定義できるかを具体的に示している。
図8の左側では、時間インクリメントΔt
0=0に対する出力状態を図示しており、その状態ではブロック64として示す個別測定が分布を形成しており、その重心時間t
CoMが正に基準時間t
refに符合している。厳密に言えば、この場合にわざわざ分布を持ち出すことは不要である。なぜなら、離散的な時間区分を介して直接でも重心時間t
CoMを得ることができるからである。
【0073】
次の時間インクリメントに対しては、
図8の中央及び右側の図に示したように、重心が幾分ずれた分布を選ぶ。そのために別のオフセットを有する幾つかの個別測定を実施する。例えばそれぞれ矢印66で明示しているように、三つの個別測定結果を右方にずらす。勿論、三つとは異なる別の数を選ぶことが考えられ、そのときシフトされた個別測定結果の一つだけが、可能な最小の時間インクリメントを規定する。段階的に数を変えると、生じる時間の格子は不規則である。
【0074】
同様に、基準時間t
refに対する重心時点t
CoMのずれがΔt
1、Δt
2、...と増加する多数の分布を規定することができる。二つのサンプリング点間のインターバルを満たすような分布の表を使って、サンプリング点の離散的な時間区分が分布及びそれに付属する重心時間t
CoMにより細分化される。発光時間微調整部40は、この表にアクセスすることにより、所望の時間インクリメントを有する発光パターンを出力し、それにより、得ようとする又は実際に作用する発光時点を、離散的なサンプリング点とは関係なく得ることができる。
【0075】
包絡線56,60により規定される分布は、重心の近くでより大きな値を有する必要がある。従って、ベースラインが広くなりすぎないように、例えば三角形、放物線、又はガウス曲線のような標準偏差の小さい単峰の分布が好ましい。この場合、サンプリング点の数はわずかでよい。フランクが急激に降下しないことが必要になるので、ガウス形状が好ましい。
【0076】
この方法ではシステムにおけるある程度の雑音が役立つ。なぜなら、サンプリング点がある程度相互に塗り潰されて、包絡線56,60に近い滑らかな形状を呈するからである。完全に雑音のないシステムでは、離散的なサンプリング点に起因する人為的な特徴が受光パターンに現れる。一般に妨害信号はガウス雑音に近いものとなるので、その意味でも包絡線56,60にはガウス分布が好ましい。
【0077】
達成可能な分解能向上は最終的に、形成するヒストグラム110に含まれる個別測定数kに依存している。測定回数を増やすほど、
図8で図示しているように追加の時間インクリメントを決める可能性が広がる。例えば数百の繰り返し時には、距離測定値を使用できるまでの応答時間はまだ測定周期100数百個分程度であり、即ち
図3の数値を使えば数百μsである。それにより既に概ね二桁レベルの分解能向上を達成できる。サンプリング点の離散的時間区分が時間ベースユニット38により、例えば60.975psで規定されていると、サブピコ秒の分解能が可能になる。
【0078】
離散的な時間区分の細分化は先に紹介した二つの方法により可能であるが、それでもまだヒストグラム110の分解能自体が、A/D変換部36の検知レートにより制限されているという問題がある。そこで分解能向上により十分にメリット得ることができるようにするために、本発明では受光時点を高精度で特定しようとするのではなく、それを最初から観察時点として規定して、受光時点がこの観察時点と一致するまで発光時間の遅延を調整する。
【0079】
このコントロールを
図9及び10で具体的に示す。まず測定周期100内の何処かで検知格子のポイントに観察時点t
Controlを設定する。このポイントは、測定されうる最大の光通過時間より後ろで選択する(例えば測定周期100の中央の0.5μs又は約75mの点)。時間ベースユニット38及び/又は発光時間微調整ユニット40を使って光パルスを、時点t
Sendに発光パルスが実際に発光される前に、共通の基準時間t
Startに対して発光時間遅延分だけ遅らせる。本来の測定量である光通過時間の後に、再び光パルスが時点t
Receiveにおいて受光される。コントロールの目的は、常にt
Receiveがt
Controlと符合するように、フィードバックサイクルで発光時間遅延を調整することであり、それをハッチングしたブロック67a,bの組み替えにより図示している。
【0080】
簡単な減算により光通過時間は計算できる。時間インターバルt
Control−t
Startは予め選んだ既知の定数であり、それは作動状態で発光時間遅延だけ光通過時間とは異なっている。別の定数的な部分、例えばエレクトロニクス回路における信号通過時間は、較正により排除又は計算時に考慮することができる。この部分に対しては場合により温度補償も必要である。
【0081】
フィードバックのためにはコントローラが、受光時点t
Receiveが観察時点t
Controlと一致するかどうか高精度で認識できなければならない。
図3と大部分が一致する
図10が、これを図示している。太い矢印が観察時点を示している。受光時点を規定する移行条件として、ヒストグラム110として示した受光信号の最初の極大値から最初の極小値までゼロ通過を監視する。勿論、別の特性も評価できるが、最初のゼロ通過が最も特徴がはっきりしており、極値自体とは違って信号レベルへの依存度が非常に低い。
【0082】
図10でハッチングした矩形70は、
図9のハッチングした矩形67a,67bに相当しており、理想的な移行位置からの偏差を示している。これは即ち、コントロール偏差量の尺度であり、不可欠な発光時間遅延適合化を計算するための基礎である。信号移行t
Receiveが観察時点t
Controlの近くにあるならば、少なくとも理想的なシステムでは発光時間遅延の追従制御により、このコントロール偏差をゼロに調整できる。
【0083】
そのコントロール部はFPGAにデジタルで設けられており、それによりヒストグラム110にアクセスできる。コントロール方法自体は各公知の種類、例えばカルマンベースのコントロールが利用可能であり、又はコントローラがPI又はPIDコントローラである。
【0084】
コントローラが、全測定周期100ではなくコントロール時間インターバル101内のみで作動すると好ましく、多数の潜在的な目標14を含まないために、これを十分に小さくすることが、コントロールミスを防ぐために有利である。信号移行t
Receiveがこのコントロール時間インターバル101にない場合には、コントローラがコントロール偏差70を特定できない。従って、上位レベルにエージェントを設けており、それがヒストグラム110で全測定範囲にわたって潜在的な目標14を探す。エージェントは独自のプロセスであるか、又はそれを周期的に呼び出すコントロール部から少なくとも概念的に分離しており、コントロール部の上位に配置されている。また、コントロール時間インターバル101を測定周期100のように広く選ぶと、コントローラ自体が目標変化を簡単には識別できない。なぜなら、それが部分的な極値で収斂し、そこから自動的に離れなくなる恐れがあるからである。
【0085】
エージェントが、完全なパターン比較を使って受光信号を認識しないことが好ましい。なぜなら、この方法は雑音に敏感過ぎるからである。代わりに、例えば最大振幅が正から負及びその逆に交互に規則的に移行することにより生じる目印を探す。そのような符号変化を多く監視すればするほど、その目印がより高い要求に対応可能となる。そうすれば、絶対値の対数的な降下を維持するというような別の要求基準を定めることが考えられる。これらの模範的な目印は、単純な発光パルスから発生する正及び負の信号部分を有する簡単な周波に当てはまる。システムを外乱又は同構造のシステムに対して強くするために複雑な発光信号が考えられるが、その場合はそれに応じて適切な目印を選ぶ。
【0086】
図11は目標変化の例を示している。コントロール時間インターバル101がまず信号72に設定されており、コントローラが観察時点をその最初のゼロ通過に調整している。しかし上位配置されたエージェントがその間に、より特徴のある信号74を見つけ出した。目標変更を実施するためにエージェントが時間差76を計算して、コントロール時間インターバル101をシフトすることにより、即ち発光時間遅延を時間差76に合わせることにより、コントローラを新しい信号74にセットする。
図11で示しているように、エージェントが正確な時間差76を計算する必要はなく、コントロール時間インターバル101を大まかに信号74近辺に選定するだけで十分であり、そうすればコントローラが正確な新しい受光時点に調整できる。
【0087】
そのような位置又は目標の置き換えのためには、多数の条件を満たす必要がある。まず、要求された目印を有する実際の信号がどこにあるかを調べる。そのとき、予め簡単な閾値評価で前もって選別することできる。理想的にはk/2にある雑音レベルを、ヒストグラム110又はその一部にわたる中央値の形成により考慮する。引き続いて、そのようにして見つけ出した潜在的な目標の最大振幅を比較する。より大きな振幅を有する潜在的な目標が実際のコントロール時間インターバルの外側にある場合に、この潜在的な目標がエージェントから見た本来の最新の目標14を示している。しかしながら、特異な現象又はエージェントの誤解釈による無用のジャンプを防ぐため、エージェントは、潜在的な目標の履歴を、消滅時間を規定した上で、例えば待ち行列で記録する。この履歴の中で新しい目標が統計的に顕著に積み上がって初めて、例えば履歴の中で8つのケースのうち5つにおいて特定の目標が選択されるであろう時に、エージェントが実際に目標変更を行う。このようにすることでシステムが問題なく新しい位置に変更でき、それにより非常に低い信号レベルに至るまで測定でき、妨害信号にも強くなる。
【0088】
図12は潜在的な目標の二つのケースを示しており、それは上述の基準の少なくとも一つを満たしておらず、目標変更も引き起こさない。実際にある目標14の信号72の他に、それぞれ信号78及び80による別の潜在的な目標が記載されている。信号78も前記目印の条件を満たしているが、振幅が小さいので選択されない。その場合には更に振幅を距離補正することができる。信号80は既に前記目印の条件を満たしていないので、直ちに妨害信号と認識される。
【0089】
受光信号104ないしヒストグラム110は、時間的位置に関する距離情報に加えて、面積に関するレベル情報も信号に含んでいる。直線的に考慮するときには、レベルが周波の下の総面積に比例している。即ち、別の評価を介して簡単な方法でレベル測定値を使用できる。
図13は受光信号82の変化を、後続周波を含めて示している。他の図では簡単化のために省いているが、この後続周波と共に受光信号82が対数的に減衰する。他の多くの図におけるように、太い矢印が検知区分108内にある観察時点を示しており、その時点に受光信号82の最初のゼロ通過が調整されている。検知ポイント108における信号振幅84の積算値がレベルの尺度である。
【0090】
ゼロ通過点が検知ポイント上にあり、更に光パルスがちょうど5nsの長さ、即ち検知レートの倍数を有するように、受光信号82の位置をコントロールしているので、他のゼロ通過点も正に検知ポイント上にある。このようにヒストグラム108を固定することで、検知レートが低いにもかかわらず良好なレベル情報を導き出すことができることになる。なぜなら、ゼロ通過自体は何も貢献せず、極値がそれぞれ中央、それにより検知ポイント上にあるので、特に意味のある振幅情報のみがレベル測定に含まれるからである。
【0091】
受光パルス102をアナログの前処理部28で弱い共振挙動を示すように形成して、更にフィルタ32の後に制限増幅部34を接続すると、レベル測定のダイナミックレンジが著しく向上する。
【0092】
レベル測定値は外部へ出力できるだけではなく、レベルに依存する距離の保存記録の補正にもレベル情報を利用することができる。白黒シフトの名で知られているこの効果があるため、特定された受光時間は強度への依存性を示すことになる。その依存関係を最初に記憶させておく又は補正計算で考慮すると、求めた距離を補償し、広い強度範囲にわたってレベルと無関係にすることができる。
【0093】
レベル情報は更に、システムの光学系部品の調整のためにも使用することができる。例えば汚れ又は調整不良を検知したり、光センサ12の性能を適合化したりすることができる。
【0094】
センサ10がヒストグラム110で妨害信号を蓄積し、測定ミスに至ることが考えられる。特に測定範囲の向かい側で反射される自己発光パルスに対する受光信号、又は同じ構造のシステムから発せられる光パルスの受光が問題となる。従って、自ら発した特定の発光パターンに受光信号を分類できることが望まれる。そのためにエンコーダー46及びデコーダ48を使用し、補償可能なずれを時間軸上で追加的につくり出して、後で元に戻す。このような時間のずれを作ると、時間的に一定である妨害因子が平均化により塗り潰されるという効果も得られる。その理由は、時間的なコード化により妨害因子と時間との固定的な関係が無くなり、妨害因子がその都度異なるビンに記録されるからである。
【0095】
時間的なコード化の方法として、特に
図14に示した2つを検討する。まず、各測定周期100において重点位置をΔt
1...Δt
nだけシフトする。本来の測定受光信号のみが、この任意で迅速な重点位置シフトに従うので、妨害因子をしたり直接求めたりすることができる。
【0096】
測定範囲を拡張したり、あるいは例えば多重反射又は同じ構造のシステムによるシステム的な妨害がある場合、重点シフトでは必ずしも十分ではない。それゆえ、代替又は追加として、ガウス形状を発光時間微調整ユニット40でつくり出す順番を変更することがある。この順番はヒストグラム110作成のためには重要ではなく、そこで蓄積されるのみである。この自由度を利用して、各コード1...nを使うことにより別の順番を選び、これを
図14で例示的に番号を付けた発光パルス86で図示している。このようにすれば、受光された発光パターンがどの部分範囲に属しているかがコード化を介して明らかであるので、測定範囲を測定周期100の倍数に拡張することが特に可能である。
【0097】
時間的な変化はランダム化してもよく、あるいは決めてしまってもよいある。ランダム化には、同一構造のシステムを区別できるという利点がある。シフトをランダム化した場合にも勿論、デコーダ46が、それを補償できるようにするためにオフセット情報を得なければならない。
【0098】
以上、全体
図4にある個々の要素を説明した。上記説明ではセンサ10を全体的に記述したが、個々の特徴グループを互いに独立させても有効に利用することができる。例えばガウス形状の発光パターンが、二つの周波数により発生した実際の発光時点を更に細分化する。しかし両方の処置は、それだけでも分解能を向上させる。それにより、この特徴グループ及び別の特徴グループを具体的な実施形態での説明とは異なる形で、特に図示した範囲を越えて組み合わせることもできる。