(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような従来の帯電散布(噴霧)ヘッドによる消火剤の帯電散布によれば、例えば消火剤が水の場合に消火や消煙に要する水量は、非帯電の散布ヘッドによる必要散布水量と比較して大きく減少させることができる。しかし、火災の規模が大きい場合などには、帯電散布ヘッドによる必要水量は、非帯電の散布ヘッドによる場合に比べ相当少水量となるものの、火災による発生熱量を所定以上吸収することができる最低限の総比熱と蒸発潜熱が得られる水量の散布は必要であり、水量が不足すると所望の効果を得ることができない。このように、火災規模が大きい時には、当然に水量の多い帯電散布ヘッドが必要となる。
【0010】
しかし、
図9に示した従来の帯電散布ヘッド100にあっては、ヘッド本体136のノズル回転子138aで水流に回転を与え遠心力を利用して噴射ノズル138から散布放射することで粒子群流に変換したフルコーン形の散布パターンを得ているが、このような従来の帯電散布にあっては、散布量の増加と共に単位水量当たりの帯電量が減少し、クーロン力による消火消煙効果を高める作用が小さくなってしまうという問題が、本願発明者の実験等によって確認されている。
【0011】
図10は
図9に示した従来の帯電散布ヘッド100に印加する帯電用電圧を定常的に+5KVとしたときの帯電散布水の単位散布量当たりの平均帯電量をファラディーケージ法で計測した比電荷で示しており、散布量が増すほど(ヘッドが大型になるほど)平均帯電量を示す比電荷は小さい結果となっている。
【0012】
また、従来の水流に回転を与えて噴射ノズル138から遠心力を利用して散布放射する帯電散布ヘッド100では、消火剤の噴射角度(拡がり角度)はせいぜい90°程度であり、且つ飛距離も比較的短いことから、帯電消火剤を広範囲に散布することができないという問題もある。
【0013】
本発明は、散布量が増加しても十分な帯電量を確保してクーロン力を利用した高い消火消煙効果を奏する
帯電散布ヘッド及び帯電散布装置を提供することを目的とする。
【0014】
また本発明は、帯電量の大きな消火剤を広範囲に、均一的に散布する
帯電散布ヘッド及び帯電散布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
(
帯電散布ヘッド)
本発明は、
散布区画に設置され、散布剤供給設備により供給された散布剤の噴射粒子に、電圧印加部からの帯電電圧の印加により帯電させて散布する帯電散布ヘッドに於いて、
散布剤を外部空間に噴射するノズルと、
ノズルの内部に配置されて散布剤に接触する散布剤側電極部と、
ノズルから出た散布剤の一部を、任意の方向に偏向して第1薄膜流を形成した後に粒子群流に分裂分離させて散布する第1偏向散布部材と、
第1薄膜流の分裂分離部近傍に配置された第1誘導電極部と、
ノズルから出た散布剤の残りを、第1薄膜流の外側に位置して同方向に偏向する第2薄膜流を形成した後に粒子群流に分裂分離させて散布する第2偏向散布部材と、
第2薄膜流の分裂分離部近傍に配置された第2誘導電極部と、
を備え、
第1薄膜流と第2薄膜流との間に位置する第1誘導電極部を、第2誘導電極部から延在して第2薄膜流に局所的に交差するアーム状部材により支持することで2重円錐状に粒子群流を散布させ
、
散布剤側電極部の電圧を所定の基準値とし、これに対し、第1誘導電極部及び第2誘導電極部に帯電電圧として所定の同電圧を印加して、2重円錐状に散布した粒子群流を帯電させることを特徴とする。
【0022】
ノズルは、中心ノズル穴とその後方周囲にリング状ノズル穴を同軸に形成し、
第1偏向散布部材は、円錐形状又は角錐形状の偏向面により、中心ノズル穴から放出された散布剤を円錐面状又は角錐面状の薄膜流に拡散偏向し、
第2偏向散布部材は、円錐形状又は角錐形状の偏向面により、リング状ノズル穴から放出された散布剤を円錐面状又は角錐面状の薄膜流に拡散偏向する。
【0023】
第1誘導電極部及び第2誘導電極部は、導電性を有する、金属、樹脂、繊維束、ゴムのいずれか又は複合体である。
【0024】
第1誘導電極部及び第2誘導電極部の一部又は全部を絶縁性材料で被覆する。
【0025】
散布剤側電極部は、散布剤供給流路の一部またはノズルである。
【0026】
第1誘導電極部及び第2誘導電極部に直流、交流又はパルス状となる
帯電電圧を印加する。
【0027】
本形態においては、1又は複数の誘導電極部に対し数の異なる偏向散布部材を設けてもよい。
【0028】
または、1又は複数の誘導電極部に対し数の異なる偏向散布部材を1組として複数組設けてもよい。
【0029】
本発明の帯電散布ヘッドにおいて、散布区画は防護区画であり、散布剤供給設備を消火剤供給設備とし、散布剤を消火剤供給設備により供給された消火剤とする。
【0031】
(
帯電散布装置)
本発明は、
水系の散布剤を、配管を介して供給する散布剤供給設備と、
散布区画に設置され、散布剤供給設備により供給された散布剤の噴射粒子に帯電させて散布する帯電散布ヘッドと、
帯電散布ヘッドに帯電電圧を印加する電圧印加部と、
を備えた帯電散布装置に於いて、
帯電散布ヘッドは、
散布剤を外部空間に噴射するノズルと、
ノズルの内部に配置されて散布剤に接触する散布剤側電極部と、
ノズルから出た散布剤の一部を、任意の方向に偏向して第1薄膜流を形成した後に粒子群流に分裂分離させて散布する第1偏向散布部材と、
第1薄膜流の分裂分離部近傍に配置された第1誘導電極部と、
ノズルから出た散布剤の残りを、第1薄膜流の外側に位置して同方向に偏向する第2薄膜流を形成した後に粒子群流に分裂分離させて散布する第2偏向散布部材と、
第2薄膜流の分裂分離部近傍に配置された第2誘導電極部と、
を備え、
第1薄膜流と第2薄膜流との間に位置する第1誘導電極部を、第2誘導電極部から延在して第2薄膜流に局所的に交差するアーム状部材により支持することで2重円錐状に粒子群流を散布させ
、
散布剤側電極部の電圧を所定の基準値とし、これに対し、第1誘導電極部及び第2誘導電極部に帯電電圧として所定の同電圧を印加して、2重円錐状に散布した粒子群流を帯電させることを特徴とする。
【0032】
本発明の帯電散布装置において、散布区画は防護区画であり、散布剤供給設備を消火剤供給設備とし、散布剤を消火剤供給設備により供給された消火剤とする。
【発明の効果】
【0052】
本発明によれば、帯電散布ヘッドのノズルから噴出した消火剤を偏向散布部材となるデフレクターによって任意の所定方向に広がる薄膜流を形成し、薄膜流が粒子群流に変換される分裂分離部近傍に誘導電極を配置して外部電界を印加し帯電させることで、散布量が多いヘッドでありながら、帯電量の大きな帯電散布を行うことができる。
【0053】
また、ノズルから噴射した消火剤を任意の所定方向の薄膜流に偏向する偏向散布部材の偏向形状の設定により、従来に比べ広角の帯電散布が容易に実現でき、散水量の増加と相俟って十分な飛距離が得られ、広範囲に帯電消火剤を散布してクーロン力を利用した高い消火消煙効果を得ることができる。
【0054】
また本発明の他の形態によれば、帯電散布ヘッドのノズルから噴出した消火剤を偏向散布部材となる2段階に同軸配置したデフレクターによってそれぞれ任意の所定方向に広がる薄膜流を形成し、各薄膜流が粒子群流に変換される分裂分離部近傍に誘導電極をそれぞれ配置して外部電界を印加し帯電させることで、二重円錐状(ダブルコーン状)となる粒子群流を散布し、広範囲に帯電量の大きな帯電散布を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1は本発明による
帯電散布ヘッドを備えた火災防災装置(火災防災設備)の実施形態を示した説明図である。
図1において、建物内の例えばコンピュータルームなどの防護エリアA及びBの天井側には、本実施形態による帯電散布ヘッド10が設置されており、これら帯電散布ヘッド10から、ぞれぞれの防護エリアに対し消火剤散布を行うようにしている。
【0057】
消火剤貯留・供給設備として機能する水源14に対し設置されたポンプユニット12から手動弁(仕切弁)13を介して配管16が接続され、配管16は分岐後に調圧弁30及び自動開閉弁32を介して、防護エリアA,Bのそれぞれに設置した帯電散布ヘッド10に接続している。水源14は水、海水、或いはその他水系の消火剤を貯留している。
【0058】
防護エリアA,Bのそれぞれには、帯電散布ヘッド10からの消火剤散布を制御する入力信号源となる専用火災検出器18が設置されている。また防護エリアA,Bのそれぞれに対しては連動制御中継装置20が設けられ、信号線に専用火災検出器18が接続されている。連動制御中継装置20には更に帯電散布ヘッド10からの散布制御を手動操作で行うための手動操作箱22が接続されている。
【0059】
連動制御中継装置20に対しては、このように専用火災検出器18及び手動操作箱22からの信号線が接続されると共に、帯電散布ヘッド10に帯電電圧(帯電駆動電圧)を印加制御するための信号線、及び自動開閉弁32を開閉制御するための信号線が引き出されている。
【0060】
更に防護エリアAには自動火災報知設備の火災感知器26が設置され、自動火災報知設備の受信機28から引き出された感知器回線に接続している。なお、防護エリアBについては自動火災報知設備の火災感知器26を設けていないが、必要に応じて設けてもよいことはもちろんである。
【0061】
防護エリアA,Bに対応して設置した連動制御中継装置20は、一方でシステム監視制御盤24に信号線接続されている。システム監視制御盤24には自動火災報知設備の受信機28も接続されている。更にシステム監視制御盤24はポンプユニット12を信号線接続し、ポンプユニット12のポンプ起動停止を制御するようになっている。
【0062】
図2は
図1の防護エリアAを取り出して示した説明図である。防護エリアAの天井側には帯電散布ヘッド10が設置されている。帯電散布ヘッド10が接続された天井側配管(
図3の
立下り配管34)は、
図1に示したポンプユニット12からの配管16に、調圧弁30及び自動開閉弁32を介して接続されている。
【0063】
また帯電散布ヘッド10の上部には電圧印加部15が設置されており、後の説明で明らかにするように、帯電散布ヘッド10に所定の電圧を印加して、帯電散布ヘッド10から噴射する消火剤を帯電させて散布できるようにしている。また防護エリアAの天井側には専用火災検出器18が設置され、併せて自動火災報知設備の火災感知器26も接続されている。なお、電圧印加部15は帯電散布ヘッド10と一体に設けても良い。
【0064】
図3は
図1及び
図2に示した帯電散布ヘッド10の実施形態であり、その縦断面を示している。また
図4には、帯電散布ヘッド10を天井設置状態で下側(床側)から見た説明図を示す。
【0065】
図3及び
図4において、帯電散布ヘッド10は上下に分割した金属製のボディ36,38をボルト37で連結固定しており、ポンプユニット12からの配管16に接続した立下り配管34の先端にボディ36をねじ込み固定している。ボディ36,38の内部流路には円筒状の消火剤側)電極部46が組み込まれている。消火剤側電極部46は導電性を持つ金属材料で作られ、更に絶縁材料で被覆されており、金属製のボディ36,38に対し電気的に絶縁されている。
【0066】
消火剤側電極部46に対しては、
図2に示したように、外部近傍に設置している電圧印加部15から引き出されたアースケーブル54が接続されている。このアースケーブル54の接続で、消火剤側電極部46を接地するようにしている。
【0067】
下部に配置したボディ38の内部流路先端にはノズル部40が形成される。ノズル部40の噴射側には偏向散布部として機能するデフレクター42が配置される。デフレクター42はボディ38内の消火剤側電極部46に続いて絶縁性のスペーサ43を介して組込み固定したデフレクター支持部44から延在したロッド45の先端に設けられ、ノズル部40前方(図示下方)の空間に対向配置されている。
【0068】
本実施形態において、デフレクター42は所定の頂角θをもった円錐状板体であり、ノズル部40から出た消火剤を円錐状面に沿って偏向し、薄膜流56に変換して放射する。デフレクター42により形成された薄膜流56は、分裂分離部P付近から薄膜流56が分裂分離して粒子群流58となって放射され、模式的に図示した散布パターン60のように散布される。
【0069】
ボディ38には下部に開口した筒状のフレーム50がボルト37により組付け固定されている。フレーム50はその開口端を分裂分離部Pよりも下部、即ち散布空間側に位置させており、更に分裂分離部Pの近傍となる内周面に円環状の誘導電極部48を配置している。
【0070】
誘導電極部48は導電性の部材で形成されると共に絶縁材料で被覆されており、金属製のフレーム50及び散布される消火剤に対し電気的に絶縁されている。
【0071】
フレーム50の下部内周側に配置した誘導電極部48に対しては、
図2に示した電圧印加部15から引き出された電圧印加ケーブル52が接続されている。
【0072】
なお
図3では、前記誘導電極部48を例えば薄膜流56の分裂分離部Pの上流方向に10mm以下、下流方向に30mm以下、また薄膜流56の表面から20mm以下となる領域内に配置している。
【0073】
ここで、本実施形態の帯電散布ヘッド10に使用している消火剤側電極部46及び誘導電極部48としては、導電性を有する金属以外に、導電性を有する樹脂、繊維束、ゴム等であってもよく、更にこれらを組合せた複合体であってもよい。
【0074】
帯電散布ヘッド10から消火剤を散布する際には、
図2に示した電圧印加部15が
図1に示す連動制御中継装置20からの制御信号により動作し、消火剤側電極部46を基準電位(アース)側とし、誘導電極部48に対し例えば数KVから十数KV程度の直流状(定常)印加電圧、交流又はパルス状となる印加電圧を印加する。発明者の実験によれば、印加電圧は20KVを超えない範囲とするのが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0075】
このように消火剤側電極部46と誘導電極部48との間に例えば数KVとなる電圧が加えられると、この電圧印加によって外部電界が生じ、この作用により、ノズル部40から噴射放出した消火剤がデフレクター42の円錐状面に沿った薄膜流56となり、薄膜流56が分裂分離部P付近から分裂分離を始めて粒子群流58に変換される噴射過程を通じて噴射粒子が帯電され、帯電された噴射粒子を外部の防護エリア対象領域に散布することができる。
【0076】
なお、ノズル部40から噴射した消火剤をデフレクター42で偏向する場合、剥離や飛散等により消火剤の一部が誘導電極部48に接触する場合があるが、誘導電極部48は絶縁材料で被覆されているため、消火剤が接触して短絡や電荷の中和が問題になることなく、消火剤に帯電させることができる。
【0077】
図5はある条件における散布量と比電荷の関係を、デフレクターを設けた本実施形態による帯電散布ヘッドとデフレクターを設けない従来の帯電散布ヘッドの場合とで対比した例を模式的に示したグラフ図である。
【0078】
図5において、特性Bは従来の帯電散布ヘッドの特性であり、所定帯電電圧を定常印加した場合である。単位時間当りの散布量の増加に対し、帯電量を示す比電荷が大きく減少しているが、これに対し本実施形態の帯電散布ヘッド10にあっては、例えば特性Aのように、散布量の増加に対して比電荷の減少が少ない。
図5の例では、本実施形態のノズルの、散布量7[リットル/min]における比電荷(特性Aのa点)は、従来ノズルの散布量1.5[リットル/min]における比電荷(特性Bのb点)に相当するレベルとなっている。
【0079】
このように、本実施形態の帯電散布ヘッド10によれば、従来の帯電散布ヘッドにおける散布量増加に伴い単位水量当りの帯電量が大きく減少してしまうという問題を解決し、高効率で帯電させることができるので、散布量の多い帯電散布ヘッドでありながら、帯電量の大きな散布を行うことができる。
【0080】
また、デフレクター42によりノズル部40から噴射した消火剤を、薄膜流56を経て粒子群流58に変換して散布するので、デフレクター42の頂角θを適宜設定することにより、従来の帯電散布ヘッドに比べ広角の帯電散布が容易に実現でき、帯電ロスを抑えつつ散水量を増加させることができるため十分な飛距離が得られ、広範囲に帯電消火剤を散布して高い消火消煙効果を得ることができる。
【0081】
次に
図1の実施形態における監視動作を説明する。いま、防護エリアAにおいて火災Fが発生したとすると、例えば専用火災検出器18が火災を検出して連動制御中継装置20を介しシステム監視制御盤24に火災検出信号を送る。
【0082】
システム監視制御盤24は防護エリアAに設置している専用火災検出器18からの火災検出信号を受信するとポンプユニット12を起動し、水源14から消火用水を汲み上げてポンプユニット12により加圧し、配管16に供給する。
【0083】
同時にシステム監視制御盤24は、防護エリアAに対応して設けている連動制御中継装置20に対し帯電散布ヘッド10の起動信号を出力する。この起動信号を受けて、連動制御中継装置20は自動開閉弁32を開放動作し、これによって調圧弁30により調圧された一定圧力の水系消火剤が、開放した自動開閉弁32を介して帯電散布ヘッド10に供給され、
図2に取り出して示すように、帯電散布ヘッド10から防護エリアAに噴射粒子(群)として散布されることになる。
【0084】
このとき連動制御中継装置20は、
図2に示す帯電散布ヘッド10に設けている電圧印加部15に対し起動信号を送り、この起動信号を受けて電圧印加部15は、帯電散布ヘッド10に対し例えば数KVとなる直流、交流又はパルス状となる印加電圧を供給する。
【0085】
このため
図3及び
図4に示した帯電散布ヘッド10にあっては、ノズル部40から加圧された水系の消火剤を噴射してデフレクター42により偏向した薄膜流56を粒子群流58に変換して散布する際に、フレーム50の内側に設けた環状の誘導電極部48側に例えば消火剤側電極部46の基準電位(アース)に対し数KVの電圧が所定パターンで印加され、この電圧印加により生じた外部電界を、分裂分離部P付近で消火剤に印加することにより帯電させて散布することができる。
【0086】
第2デフレクター42−2は中央にノズル穴を開口形成し、先端外周側を外側に向けて円錐状に広げた形状であり、中央のノズル穴にはロッド
45は挿通されるようになるが、この挿通部に於けるノズル穴とロッド
45との隙間によって、第1デフレクター42−1に向けて消火剤を放出する第1ノズル部40−1を形成している。
【0087】
また、燃焼に伴い発生する煙(火災煙)に対しても同様にして消火剤が付着して落下するため、高い消煙効果が得られる。つまり、このような本実施形態における消煙効果は、従来のような非帯電消火剤粒子の散布による消煙効果が消火剤粒子と煙粒子との確率的な衝突による捕捉作用であることに対し、本実施形態にあっては、帯電散布している消火剤粒子のクーロン力により、反対極性の帯電状態にある煙粒子を捕集し、これによって煙拡散抑制効果を含む高い消煙効果が発揮される。
【0088】
更に
図3及び
図4の帯電散布ヘッド10にあっては、例えば消火剤側電極部46を0ボルトとし、誘導電極部48に対しプラスの電圧を直流的或いはパルス的に印加したような場合には、散布される水粒子はマイナスの電荷のみに帯電することとなる。
【0089】
このようにマイナスの電荷のみに同極性帯電した消火剤粒子を散布した場合には、空間中で帯電した消火剤粒子間には斥力が働き、これによって消火剤粒子が衝突会合して成長落下する確率が小さくなり、空間中に滞留する消火剤粒子の密度が高くなるため高い消火能力が発揮される。即ち、消火剤粒子同士を同極性に帯電させることで、粒子間に働く斥力により対流粒子密度を低下させることなく散布することができ、高い消火能力が発揮される。
【0090】
このような本実施形態における消煙効果は、従来のような非帯電水粒子の散布による消煙効果が水粒子と煙粒子との確率的な衝突による捕捉作用であることに対し、本実施形態にあっては、帯電散布している水粒子のクーロン力により、同じく帯電状態にある煙粒子を捕集し、これによって大幅な消煙効果が発揮される。
【0091】
なお、帯電の極性は、散布対象によって適宜選択することができ、単純には、例えば散布対象の極性が概ねプラスである場合には、消火剤粒子をマイナスの極性に帯電させるといった制御を行う。
【0092】
図6は本実施形態の電圧印加部15から帯電散布ヘッド10に加える電圧印加パターンを示したタイムチャートであり、それぞれの時刻t1から以下のように電圧印加している。
【0093】
図6(A)は+Vの直流状(定常)電圧を印加する場合であり、この場合には、マイナスに帯電した消火剤粒子が連続的に散布される。
【0094】
図6(B)は−Vの直流状(定常)電圧を印加する場合であり、この場合には、プラスに帯電した消火剤粒子が連続的に散布される。
【0095】
図6(C)は±Vの交流電圧を印加する場合であり、この場合には、プラスの半サイクルの期間に交流電圧の変化に応じてマイナスに帯電した消火剤粒子が散布され、マイナスの半サイクルの期間に交流電圧の変化に応じてプラスに帯電した消火剤粒子が交互に散布される。
【0096】
図6(D)は+Vのパルス状電圧を所定のインターバルを空けて繰り返し印加する場合であり、この場合には、マイナスに帯電した消火剤粒子が間欠的に散布され、電圧を印加していない期間には、帯電していない消火剤粒子の散布となる。
【0097】
図6(E)は−Vのパルス状電圧を所定のインターバルを空けて繰り返し印加する場合であり、この場合には、プラスに帯電した消火剤粒子が間欠的に散布され、電圧を印加していない期間には、帯電していない消火剤粒子の散布となる。
【0098】
図6(F)は±Vのパルス状電圧を所定のインターバルを空けて交互に繰り返し印加する場合であり、この場合には、マイナスに帯電した消火剤粒子とプラスに帯電した消火剤粒子がインターバルを空けて交互に散布され、電圧を印加していない期間には、帯電していない消火剤粒子の散布となる。このようなインターバルを設けずに±Vのパルス状電圧を交互に繰り返し印加しても良い。
【0099】
図6(C)〜(F)に例示した印加電圧パターンにおける印加周期や転極周期は適宜に定めることができ、また
図6(A)〜(F)の各パターンのうち複数を組み合わせたパターンとすること等もできる。
【0100】
図6に例示した各パターンの印加電圧を帯電散布ヘッド10に供給する電圧印加部15としては、制御入力付きの市販の昇圧ユニットを利用することができる。市販の昇圧ユニットには、例えば入力にDC0〜20ボルトを加えると出力にDC〜20キロボルトを出力するものがあり、このような昇圧ユニットが利用できる。
【0101】
また、誘導電極部やデフレクターの数は任意で、例えばそれぞれを3つ組み合わせたトリプルコーン型としてもよい。もちろん、ノズル部の数
も任意である。
【0102】
図7及び
図8において、帯電散布ヘッド10は上下に分割した金属製のボディ36,38をボルト37で連結固定しており、ポンプユニット12からの配管16に接続した立下り配管34の先端にボディ36をねじ込み固定している。ボディ36,38の内部流路には円筒状の消火剤側電極部46が組み込まれている。消火剤側電極部46は導電性を持つ金属材料で作られ、更に絶縁材料で被覆されており、金属製のボディ36,38に対し電気的に絶縁されている。また消火剤側電極部46の下側には絶縁性のスペーサ43が配置される。
【0103】
消火剤側電極部46に対しては、
図2に示したように、外部近傍に設置している電圧印加部15から引き出されたアースケーブル54が接続されている。このアースケーブル54の接続で、消火剤側電極部46を接地するようにしている。
【0104】
下部に配置したボディ38の内部流路の先端にはノズル部70が形成される。本実施形態のノズル部70は、
図7に示す如く、中心位置に配置したデフレクター支持部44−1から延在したロッド45の先端側の空間に第1偏向散布部材として第1デフレクター42−1を配置し、また、同軸に配置したデフレクター支持部44−2に円筒基部をねじ込み支持して第1デフレクター42−1の後方となる先端側の空間に第2散布偏向部材として第2デフレクター42−2を配置している。
【0105】
第2デフレクター42−2は中央にノズル穴を開口形成し、先端外周側を外側に向けて円錐状に広げた形状であり、中央のノズル穴にはロッド42−1は挿通されるようになるが、この挿通部に於けるノズル穴とロッド42−1との隙間によって、第1デフレクター42−1に向けて消火剤を放出する第1ノズル部40−1を形成している。
【0106】
またノズル部70のノズル開口と、このノズル開口に挿通して第2デフレクター40−2を支持している円筒基部との間にはリング状の隙間(リング状ノズル穴)が形成され、このリング状の隙間が第2デフレクター42−2に向けて消火剤を放出する第2ノズル部40−2を形成している。
【0107】
本実施形態において、第1デフレクター42−1は所定の頂角θ1をもった円錐状体であり、第1ノズル部40−1から射出された消火剤を円錐状面に沿って偏向し、薄膜流56−1に変換して放射する。第1デフレクター42−1により形成された薄膜流56−1は、分裂分離部P1付近から分裂分離して第1粒子群流58−1となって放射され、模式的に図示した散布パターン60−1のように散布される。
【0108】
また第2デフレクター42−2は、第1デフレクター40−1の頂角θ1より大きな所定の頂角θ2をもった円錐状体を円筒基部の先端に図示の如く形成しており、リング状の隙間をもつ第2ノズル部40−2から射出された消火剤を円錐状面に沿って広角に偏向し、薄膜流56−2に変換して放射する。第2デフレクター42−2により形成された薄膜流56−2は、分裂分離部P2付近から分裂分離して第2粒子群流58−2となって放射され、模式的に図示した散布パターン60−2のように、第1デフレクター40−1による散布パターン60−2の外側を覆うように広角に散布され、これによって2重円錐状(ダブルコーン状)の広域を均一的にカバーする散布パターンを形成する。
【0109】
ボディ38には下側に開口した筒状のフレーム50がボルト37により組付け固定されている。フレーム50はその開口端を第2デフレクター42−2で偏向形成された薄膜流56−2の分裂分離部P2よりも下部、即ち散布空間側に位置させており、更に分裂分離部P2の近傍となる内周面に円環状の第2誘導電極部48−2を配置している。
【0110】
またフレーム50の下方にはホルダアーム72によりリング状のフレーム74が支持されている。フレーム74はその下側の開口端を第1デフレクター40−1で偏向された薄膜流56−1の分裂分離部P1よりも下部、即ち散布空間側に位置させており、更に分裂分離部P1の近傍となる内周面に円環状の第1誘導電極部48−1を配置している。
【0111】
第1誘導電極部48−1及び第2誘導電極48−2は導電性の部材で形成されると共に絶縁材料で被覆されており、金属製のフレーム50,74及び散布される消火剤に対し電気的に絶縁されている。
【0112】
フレーム50,74に配置した第1誘導電極部48−1及び第2誘導電極48−2に対しては、
図2に示した電圧印加部15から引き出された電圧印加ケーブル52が接続されている。
【0113】
また第1誘導電極部48−1及び第2誘導電極48−2は、例えば薄膜流56−1,56−2の分裂分離部P1,P2の上流方向に10mm以下、下流方向に30mm以下、また薄膜流56−1,56−2の表面から20mm以下となる領域内に配置している。
【0114】
ここで、本実施形態の帯電散布ヘッド10に使用している消火剤側電極部46、第1誘導電極部48−1及び第2誘導電極部48−2としては、導電性を有する金属以外に、導電性を有する樹脂、繊維束、ゴム等であってもよく、更にこれらを組合せた複合体であってもよい。
【0115】
図7、
図8の帯電散布ヘッド10から消火剤を散布する場合には、
図2に示した電圧印加部15が
図1に示す連動制御中継装置20からの制御信号により動作し、消火剤側電極部46をアース側とし、第1誘導電極部48−1及び第2誘導電極48−2に対し例えば数KVから十数KV程度の直流、交流又はパルス状となる印加電圧を印加する。発明者の実験によれば、印加電圧は20KVを超えない範囲とするのが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0116】
このように消火剤側電極部46と第1誘導電極部48−1及び第2誘導電極部48−2の間に例えば消火剤側電極46の基準電位(アース)に対し数KVとなる電圧が所定パターンで印加され、この電圧印加によって外部電界が生じ、第1ノズル部40−1及び第2ノズル部40−2から噴射した消火剤が第1デフレクター42−1及び第2デフレクター42−2の円錐状面に沿った薄膜流56−1,56−2となり、薄膜流56−1.56−2が分裂分離部P1,P2付近から分裂分離を始めて第1粒子群流58−1及び第2粒子群流58−2に変換される過程を通じて消火剤の噴射粒子が帯電され、帯電された噴射粒子を外部に広域を均一的にカバーする2重円錐状(ダブルコーン状)のパターンとして帯電散布することができる。
【0117】
なお、本実施形態で使用する帯電散布ヘッド10としては、デフレクター42や42−1、42−2の頂角を適宜調整することで、防護区画の広さに適合した散布パターンを確保することができる。
【0118】
また、上記の実施形態にあっては、誘導電極部48、48−1、48−2として環状電極を使用しているが、それぞれの形状は任意で、例えばデフレクター42、42−1、42−2で生成された薄膜流56、56−1、56−2の流れ方向に略平行な電極面をもつ環状電極を使用してもよい。このように誘導電極部48、48−1、48−2として薄膜流の流れ方向に略平行な環状電極を使用した場合には、電極面内各部と薄膜流表面との距離が均一となり、帯電効率を高めると共に安定した帯電を得ることができる。
【0119】
また、帯電散布ヘッドへの印加電圧パターンを、消火剤側電極部に対し誘導電極部側をプラスマイナス交互の印加電圧とするか、プラスのみの印加電圧とするか、あるいはマイナスのみの印加電圧とするか、また直流状の印加とするかパルス状の印加とするか、或いは、例えば正弦波状に変化する交流印加等とするかは、散布対象や散布対象領域、その他各種の条件、状況やその変化等に応じて適宜に定めることができる。もちろん、印加や転極の周期なども適宜さだめることができる。
【0120】
また、誘導電極部やデフレクターの数は任意で、例えばそれぞれを3つ組み合わせたトリプルコーン型としてもよい。もちろん、ノズル部の数の任意である。
【0121】
また、誘導電極部の数とデフレクターの数の組み合わせも任意で、例えば1つの誘導電極部に対して複数のデフレクターを設けるものであっても、複数の誘導電極部に対して1つのデフレクターを設けるものであってもよい。またこのように異なる数の誘導電極部とデフレクターの組み合わせからなるノズル部を複数備えたものであってもよい。
【0122】
また、本発明の帯電散布ヘッドおよび消火剤散布方法は、消火や延焼防止、或いは消煙のうち1つまたは複数を目的とした各種の利用が可能である。もちろん、これ以外の他の目的に使用するものであってもよい。
【0123】
また本発明は、上記に限定されず、適宜の散布対象区画に水系の散布剤を帯電散布する静電散布装置(設備)、帯電散布ヘッド及び帯電散布装置の散布方法を含む。この場合には上記の実施形態における消火剤、消火剤側電極部を、散布剤、散布剤側電極部と読み替えれば良い。
【0124】
また、誘導電極部やデフレクターは必ずしも円錐形状である必要は無く、例えば角錐状
としてもよい。
【0125】
また、本発明の帯電散布ヘッドにより帯電散布される消火剤は水或いは各種の水系消火剤などの散布剤が適用できる。
【0126】
また本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。