(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電流電圧変換回路は、その一端の電位が固定され、前記差分電流によって充放電される積分用キャパシタを含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の容量電圧変換回路。
スタンバイモードにおいて、前記平均電流にもとづき、ユーザが複数のセンサ容量の少なくともひとつに接触したか否かが判定されることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の容量電圧変換回路。
スタンバイモードにおいて、前記第2電流電圧変換回路の出力電圧にもとづき、ユーザが複数のセンサ容量の少なくともひとつに接触したか否かが判定されることを特徴とする請求項8に記載の容量電圧変換回路。
スタンバイモードにおいて、前記平均電流にもとづき、ユーザが複数のセンサ容量の少なくともひとつに接触したか否かが判定されることを特徴とする請求項13から15のいずれかに記載の容量電圧変換回路。
スタンバイモードにおいて、前記第2積分用キャパシタの電圧にもとづき、ユーザが複数のセンサ容量の少なくともひとつに接触したか否かが判定されることを特徴とする請求項17に記載の容量電圧変換回路。
スタンバイモードにおいて、前記第2積分用キャパシタの電圧にもとづき、ユーザが複数のセンサ容量の少なくともひとつに接触したか否かが判定されることを特徴とする請求項22に記載の容量電圧変換回路。
それぞれが前記センサ容量ごとに設けられ、それぞれが対応するセンサ容量が接続されるノードに所定の期間、所定の電流を供給する、複数のオフセットキャンセル回路をさらに備えることを特徴とする請求項1から25のいずれかに記載の容量電圧変換回路。
スタンバイモードにおいて、前記複数の第2電流の平均電流にもとづいて、ユーザが複数のセンサ容量の少なくともひとつに接触したか否かを判定するステップをさらに備えることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0019】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合や、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0020】
図1は、実施の形態に係る入力装置2を備える電子機器1の構成を示す図である。電子機器1は、入力装置2に加えて、DSP(Digital Signal Processor)6およびLCD(Liquid Crystal Display)7を備える。入力装置2は、タッチパネル3および制御IC4を備える。タッチパネル3は、規則的に配置された複数のセンサ容量Cs
1〜nを含む。複数のセンサ容量Cs
1〜nは、実質的にマトリクス状に配置される。制御IC4は、複数のセンサ容量Cs
1〜nそれぞれと接続され、それぞれの容量値を検出し、それぞれの容量値を示すデータをDSP6に出力する。
【0021】
電子機器1のユーザが、指5あるいはペンなどでタッチパネル3に接触すると、接触した座標のセンサ容量Csの容量値が変化する。DSP6は、複数のセンサ容量Csの容量値にもとづき、ユーザが接触した座標を検出する。たとえばタッチパネル3は、LCD7の表面に設けられてもよいし、別の箇所に設けられてもよい。
【0022】
以上が電子機器1の全体の構成である。続いて入力装置2について詳細に説明する。
【0023】
図2は、実施の形態に係る制御IC4の構成を示すブロック図である。制御IC4は、C/V変換回路100、マルチプレクサ40、A/Dコンバータ50を備え、ひとつの半導体基板上に集積化されている。DSP6の機能の一部も、制御IC4に内蔵されてもよい。
【0024】
C/V変換回路100は、複数のセンサ容量Cs
1〜nそれぞれの容量値を、それぞれに応じた検出電圧に変換する。後述のように、センサ容量Csごとの検出電圧は、同時に生成され、ホールドされる。バッファBUF1〜BUFnは、検出電圧Vs
1〜nを受け、マルチプレクサ40に出力する。マルチプレクサ40は、時分割で複数の検出電圧Vs
1〜nを順に選択していく。A/Dコンバータ50は、マルチプレクサ40により選択された検出電圧Vsを順にデジタル値D
OUTに変換する。
【0025】
C/V変換回路100は、複数のセンサ容量Cs
1〜nそれぞれの容量値を、検出電圧Vs
1〜nに変換する。C/V変換回路100は、複数のC/I変換回路10
1〜n、電流平均化回路20、複数のI/V変換回路30
1〜nを備える。
【0026】
C/I変換回路10
1〜nはそれぞれ、センサ容量Cs
1〜nごとに設けられる。C/I変換回路10
i(1≦i≦n)は、対応するセンサ容量Cs
iの容量値に応じた検出電流Is
iを生成し、対応するI/V変換回路30
iおよび電流平均化回路20へと出力する。
【0027】
電流平均化回路20は、複数のC/I変換回路10
1〜nにより生成される検出電流Is
1〜nを平均化する。平均化された検出電流(以下、平均電流ともいう)I
AVEは、複数のI/V変換回路30
1〜nそれぞれへと供給される。
I
AVE=Σ
i=1:nIs
i/n …(1)
【0028】
複数のI/V変換回路30
1〜nはそれぞれ、センサ容量Cs
1〜nごとに設けられる。I/V変換回路30
iは、対応する検出電流Is
iと、検出電流I
AVEとの差分電流I
DIFFi(=Is
i−I
AVE)を電圧に変換し、検出電圧Vs
iとして出力する。
【0029】
図3は、制御IC4の具体的な構成例を示す回路図である。
図3には、センサ容量Cs
1、2に対応する部分のみが示される。
【0030】
C/I変換回路10
iは、リセットスイッチSW1、センススイッチSW2、第1トランジスタM1、第2トランジスタM2を備える。
リセットスイッチSW1は、対応するセンサ容量Csの電荷を初期化するために設けられる。たとえばリセットスイッチSW1は、センサ容量Csと並列に設けられる。リセットスイッチSW1がオンすると、センサ容量Csの電荷が放電されて初期化される。つまりセンサ容量Csの両端間の電位差はゼロとなる。たとえばリセットスイッチSW1はNチャンネルMOSFETを含み、そのゲートに入力されるリセット信号RSTがアサート(ハイレベル)されるとオンする。
【0031】
センススイッチSW2および第1トランジスタM1は、センサ容量Csと固定電圧端子(ここでは電源端子)の間に順に直列に設けられる。センススイッチSW2は、PチャンネルMOSFETであり、そのゲートに入力されるセンス信号EVALBがアサート(ローレベル)されるとオンする。
【0032】
第1トランジスタM1は、PチャンネルMOSFETである。具体的にはそのドレインがセンススイッチSW2を介してセンサ容量Csと接続され、そのソースは電源端子と接続される。また、第1トランジスタM1のゲートドレイン間は結線される。第1トランジスタM1には、対応するセンサ容量Cs
iの容量値に応じた充電電流I
CHGiが流れる。
【0033】
第2トランジスタM2は、第1トランジスタM1と同型のPチャンネルMOSFETであり、第1トランジスタM1とカレントミラー回路を形成するように接続される。具体的には、第2トランジスタM2のゲートは第1トランジスタM1のゲートと接続され、そのソースは電源端子と接続される。第2トランジスタM2には、対応するセンサ容量Csの容量値に応じた検出電流Isが流れる。トランジスタM1とM2のミラー比(サイズ比)をK1とするとき、検出電流Is
iは式(2)で与えられる。
Is
i=I
CHGi×K1 …(2)
【0034】
第1トランジスタM1および第2トランジスタM2が構成するカレントミラー回路は、第2トランジスタM2に流れる検出電流Is
iを、対応する積分用キャパシタC
INTiに、第1の向き(
図3では充電する向き)で供給する。
【0035】
電流平均化回路20は、複数の第3トランジスタM3、複数の第4トランジスタM4、複数の第5トランジスタM5を含む。
複数の第5トランジスタM5はそれぞれ、センサ容量Csごとに設けられる。第5トランジスタM5は、第1トランジスタM1と同型のMOSFETであり、対応する第1トランジスタM1とカレントミラー回路を形成するように接続され、対応する検出電流Isに応じた電流Is’を生成する。
【0036】
複数の第3トランジスタM3はそれぞれ容量センサCsごとに、対応する検出電流Isに応じた電流Is’の経路上に設けられる。複数の第3トランジスタM3の制御端子(ゲート)は共通に接続される。具体的には、第3トランジスタM3のソースは接地され、そのドレインは対応する第5トランジスタM5のドレインと接続される。
【0037】
複数の第4トランジスタM4はそれぞれ、センサ容量Csごとに設けられる。第4トランジスタM4は、対応する第3トランジスタM3とカレントミラー回路を形成するように接続される。全チャンネルの第3トランジスタM3と第4トランジスタM4のサイズは等しい。各第4トランジスタM4に流れる電流は、平均化された検出電流I
AVEとして、対応するI/V変換回路30へと供給される。具体的には、電流平均化回路20は、平均電流I
AVEをそれぞれ、積分用キャパシタC
INTそれぞれに、第2の向き(
図3では放電する向き)で供給する。
【0038】
I/V変換回路30はそれぞれ、積分用キャパシタC
INTおよび初期化スイッチSW3を含む。積分用キャパシタC
INTの一端は接地され、その電位が固定される。積分用キャパシタC
INTiには、対応する検出電流Is
iが第1の向き(充電)で供給され、平均電流I
AVEが第2の向き(放電)で供給される。その結果、積分用キャパシタC
INTiは、差分電流I
DIFFi(=Is
i−I
AVE)によって充放電される。
【0039】
初期化スイッチSW3
iは、検出に先立ち、積分用キャパシタC
INTの電圧を初期化する初期化回路として機能する。初期化スイッチSW3
iの一端は積分用キャパシタC
INTと接続され、その他端にはバッファ(ボルテージフォロア)52によって基準電圧V
CMが印加される。初期化スイッチSW3
iはトランスファゲートであってもよいし、その他のスイッチであってもよい。初期化スイッチSW3
iは、初期化信号VCM_SWがアサートされると、オン状態となる。基準電圧V
CMは、たとえば電源電圧Vddと接地電圧Vssの中点付近の電圧であってもよい。
【0040】
図2のマルチプレクサ40は、
図3において、チャンネルごとのスイッチSW4
1〜nとして示される。また、
図2のA/Dコンバータ50は、
図3において、2つのA/DコンバータADC1、ADC2に分割されている。A/DコンバータADC1には、奇数チャンネルの検出電圧Vs
1,3,…が割り当てられ、A/DコンバータADC2には、偶数チャンネルの検出電圧Vs
2,4,…が割り当てられる。奇数チャンネルのスイッチSW4
1,3,…の出力は共通に接続され、A/DコンバータADC1の入力と接続される。偶数チャンネルのスイッチSW
2,4,…の出力は、共通に接続され、A/DコンバータADC2の入力と接続される。なお、単一のA/Dコンバータによって、全チャンネルの検出電圧Vsをデジタル値に変換してもよい。
【0041】
以上が制御IC4の具体的な構成である。続いてその動作を説明する。
図4は、実施の形態に係る制御IC4の動作を示す波形図である。
【0042】
まずバッファ52がオン状態となり基準電圧V
CMが所定レベルとなる。またすべてのチャンネルの初期化信号VCM_SWがアサートされ、初期化スイッチSW3
1〜nがオンする(時刻t0)。これにより、各チャンネルの積分用キャパシタC
INT1〜nの電圧レベルが、基準電圧V
CMに初期化される。積分用キャパシタC
INTの初期化が終了すると、基準電圧V
CMが0Vとなり、初期化信号VCM_SWがネゲートされ、初期化スイッチSW3
1〜nがオフする。
【0043】
続いて、リセット信号RSTがアサートされ、リセットスイッチSW1
1〜nがオンする。これによりセンサ容量Cs
1〜nの電荷がゼロとなり、初期化される(時刻t1)。その後、リセット信号RSTがネゲートされ、リセットスイッチSW
1〜nがオフする。
【0044】
続いてセンス信号EVALBがアサート(ローレベル)され、センススイッチSW2
1〜nがオンする。
第iチャンネルに着目する。センススイッチSW2
iがオンすると、センサ容量Cs
iに対して、第1トランジスタM1およびセンススイッチSW2を介して充電電流I
CHGiが流れ、センサ容量Cs
iの電位が上昇する。そしてその電位Vx
iが(Vdd−Vth)まで上昇すると、第1トランジスタM1がオフし、充電が停止する。Vthは第1トランジスタM1のゲートソース間しきい値電圧である。この充電によってセンサ容量Cs
iに供給される電荷量は、
Qs
i=C・V=Cs
i×(Vdd−Vth) …(3)
となり、センサ容量Cs
iの容量値に依存する。つまりC/I変換回路10
iは、対応するセンサ容量Cs
iの電位が所定レベル(Vdd−Vth)に達するまで、センサ容量Csに電流I
CHGiを供給する。
【0045】
C/I変換回路10は、充電電流I
CHGiをコピーし、容量値に応じた検出電流Is
iを生成して、積分用キャパシタC
INTを充電する。Is
i=K1×I
CHGiであるから、積分用キャパシタC
INTiに供給される電荷量Q
INTiは、式(4)で与えられる。
Q
INTi=Qs
i×K1 …(4)
【0046】
一方、電流平均化回路20は、各チャンネルの検出電流Is
1〜nの平均電流I
AVEによって、積分用キャパシタC
INTiを放電する。電流平均化回路20によって積分用キャパシタC
INTiから放電される電荷量Q
INTAVEは、式(5)で与えられる。
Q
INTAVE=Qs
AVE×K1 …(5)
ここでQs
AVEは、全チャンネルのセンサ容量Cs
1〜nに供給される電荷量の平均値ΣQs
i/nであり、式(6)で与えられる。
Qs
AVE=ΣQs
i/n=ΣCs
i/n×(Vdd−Vth) …(6)
【0047】
センサ容量Cs
iが、全チャンネルのセンサ容量Cs
1〜nの平均値Cs
AVEより大きい場合、Is
i>I
AVEとなるから、積分用キャパシタC
INTiは充電され、検出電圧Vs
iは初期値である基準電圧V
CMよりもΔV
iだけ高くなる。
ΔV
i=(Q
INTi−Q
INTAVE)/C
INTi
=(Qs
i−Qs
AVE)×K1/C
INTi
=(Cs
i−ΣCs
i/n)/C
INTi×K1×(Vdd−Vth) …(7)
【0048】
反対に、センサ容量Cs
iが平均値Cs
AVEより小さい場合、つまりQs
i<Qs
AVEのとき、Is
i<I
AVEとなるから、積分用キャパシタC
INTiは放電され、検出電圧Vs
iは初期値である基準電圧V
CMよりもΔV
iだけ低くなる。
【0049】
センサ容量Cs
iが平均値Cs
AVEと等しい場合、つまりQs
i=Qs
AVEのとき、Is
i=I
AVEとなるから、積分用キャパシタC
INTiの電荷量は変化せず、ΔV
i=0となる。
【0050】
最終的な検出電圧Vs
iは、式(8)で与えられる。
Vs
i=V
CM+ΔV
i
=V
CM+(Cs
i−ΣCs
i/n)/C
INTi×K1×(Vdd−Vth)
…(8)
【0051】
このようにして、各チャンネルのセンサ容量Cs
1〜nの容量変化が検出電圧Vs
1〜nに変換され、積分用キャパシタC
INT1〜nにホールドされる。
【0052】
その後、適切なシーケンスにてスイッチSW4
1〜nを制御することにより、2つのA/DコンバータADC1、ADC2によって、各チャンネルの検出電圧Vs
1〜nをデジタル値に変換する。
【0053】
以上が制御IC4の動作である。
このC/V変換回路100によれば、センサ容量Cs
1〜nそれぞれ容量値を、それらの平均値Cs
AVE(=ΣCs
i/n)との差に比例した電圧として検出できる。ここでチャンネル数nが十分大きく、各容量値の変化量が小さければ、Cs
AVEは一定とみなすことができ、検出電圧Vs
iはセンサ容量Cs
iの変化量に実質的に線形に変化する。
【0054】
このC/V変換回路100では、複数チャンネルのセンサ容量Csの容量変化を、同時に検出できる。したがって、タッチパネル3が受けるノイズが、時々刻々と変化する状況においても、コモンモードノイズをキャンセルできるため、従来の方式に比べて、ノイズ耐性を高めることができる。
【0055】
また式(8)から明らかなように、容量変化に対する検出電圧Vs
iの感度は、C/I変換回路10および電流平均化回路20のミラー比K1と、積分用キャパシタC
INTの容量値によって調節することができる。
【0056】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0057】
(第1の変形例)
図5は、第1の変形例に係る制御IC4の構成を示す回路図である。
図5には、第1チャンネルの構成のみが示される。実際の回路では、制御IC4のセンサ容量Csが接続される端子Nsに、保護ダイオードやパッド(いずれも不図示)が接続されており、それらに起因する寄生容量Cpが存在する。
【0058】
具体的には、第1トランジスタM1には、センサ容量Csに対する充電電流に加えて寄生容量Cpに対する充電電流が流れることになる。寄生容量Cpに流れる電流は、式(9)で与えられる。
Qp
i=Cp
i×(Vdd−Vth) …(9)
この電荷は、内部キャパシタC
INTに充電されてしまう。全チャンネルの寄生容量Cp
1〜nが等しければ、それらの影響はキャンセルされるが、チャンネルごとに寄生容量が異なる場合、センサ容量Csの検出に悪影響を及ぼす
【0059】
そこで
図5の制御IC4aは、チャンネルごとに、寄生容量Cpをキャンセルするためのオフセットキャンセル回路60をさらに備える。オフセットキャンセル回路60は、対応するセンサ容量Csが接続されるノード(ライン)Nsに所定の期間、所定の電流Irefを供給する。
【0060】
具体的には、オフセットキャンセル回路60は、所定の基準電流Irefを生成する電流源62と、基準電流Irefをコピーし、ノードNsに供給するカレントミラー回路64と、カレントミラー回路64の出力電流の経路上に設けられ、所定の期間オンするキャンセル用スイッチSW5と、を含んでもよい。キャンセル用スイッチSW5は、制御信号PWMB[1]がアサート(ローレベル)の期間、オンとなる。
【0061】
続いて
図5のC/V変換回路100aの動作を説明する。
図6は、
図5の制御IC4aの動作を示す波形図である。
センス信号EVALBのアサートに先立ち、各チャンネルにおいて制御信号PWMB[i]があるキャリブレーション期間T
iの間、アサート(ローレベル)される。キャリブレーション期間T
iは、チャンネルごとに異なってもよい。キャリブレーション期間T
iにおいて、ノードNsには、
Q=Iref×T
i
なる電荷が供給される。この電荷量が、Cp
i×(Vdd−Vth)と等しければ、寄生容量Cp
iの影響をキャンセルできる。このときのT
iは、
T
i=Cp
i×(Vdd−Vth)/Iref
で与えられる。キャリブレーション期間T
iを全チャンネルで共通の長さとし、チャンネルごとに基準電流Iref
iの値を調節してもよい。あるいは、キャリブレーション期間T
iと基準電流Iref
iの両方を調節してもよい。
【0062】
このようにオフセットキャンセル回路60を設けることにより、寄生容量Cpの影響をキャンセルでき、センサ容量Csの容量変化を高精度で検出できる。
【0063】
(第2の変形例)
入力装置2が搭載される電子機器は、スタンバイ状態(スリープ状態)と通常状態の2つの状態が切りかえられる。入力装置2は、スタンバイ状態においてスタンバイモードに、通常状態において通常モードに設定される。通常モードでは、タッチパネル3の各センサ容量Csの容量変化が監視される。一方、スタンバイモードでは、電子機器1の消費電力を削減するため、タッチパネル3にユーザが接触したか否かが監視される。そして、スタンバイモードにおいて、ユーザがタッチパネル3に接触すると、通常モードに復帰し、通常の入力が可能となる。この変形例では、スタンバイモードにおいて、低消費電力でユーザによるタッチパネル3の接触の有無を検出するための技術を説明する。
【0064】
上述のように、各検出電流Isは、対応するセンサ容量Csの容量値に応じており、平均電流I
AVEは、複数のセンサ容量Csの容量値の平均値に応じている。そして、ユーザがタッチパネル3のいずれかの箇所に接触すれば、センサ容量Csの平均値は変動する。この変形例に係る入力装置2aは、この原理を利用したものであり、平均電流I
AVEにもとづいて、ユーザが複数のセンサ容量Csの少なくともひとつに接触したか否かを判定する。
【0065】
図7は、第2の変形例に係る制御IC4aの構成を示すブロック図である。制御IC4aは、
図2の制御IC4に加えて、基準容量C
REF、第2C/I変換回路11、第2I/V変換回路31、バッファBUF
n+1を備える。
【0066】
第2C/I変換回路11は、C/I変換回路10と同様に構成され、基準容量C
REFの容量値に応じた基準電流I
REFを生成する。第2I/V変換回路31は、I/V変換回路30と同様に構成され、電流平均化回路20aにより生成される平均電流I
AVEと、基準電流I
REFの差分電流I
DIFF(=I
REF−I
AVE)を、電圧Vs
n+1に変換する。
【0067】
電流平均化回路20aは、複数の容量電流変換回路10により生成される検出電流Isに加えて、基準電流I
REFを平均化することにより、平均電流I
AVEを生成する。
【0068】
この構成において、基準容量C
REFの容量値は固定されているため、ユーザがタッチパネル3に接触したか否かによらずに、基準電流I
REFは一定値をとる。したがって、第2I/V変換回路31において生成される差分電流I
REF−I
AVEは、平均電流I
AVEに応じた値をとる。そこでスタンバイモードでは、第2電流電圧変換回路31の出力電圧Vs
n+1にもとづき、ユーザがタッチパネル3に接触したか否かを判定することができる。
【0069】
通常モードでは、マルチプレクサ40は、複数の電圧Vs
1〜Vs
nをサイクリックに選択する。そしてA/Dコンバータ50は、複数の電圧Vs
1〜Vs
nを順にデジタル値に変換する。これに対してスタンバイモードにおいては、マルチプレクサ40は、第2I/V変換回路31からのVs
n+1を固定的に選択する。そしてA/Dコンバータ50は、電圧Vs
n+1のみをデジタル値に変換する。これにより、スタンバイモードにおいて、マルチプレクサ40の切りかえ処理が不要となるため、消費電力を低減できる。
【0070】
また、A/Dコンバータ50も1チャンネルの電圧Vs
n+1を変換すれば足りるため、全チャンネルをA/D変換する場合に比べて、消費電力を格段に削減できる。さらにA/Dコンバータ50の出力データを受けるDSP6は、1チャンネルの電圧Vs
n+1のみを処理することにより、ユーザがタッチパネル3に接触したか否かを検出するため、DSP6の演算量も格段に削減することができる。
【0071】
さらに消費電力を削減するために、スタンバイモードにおいて、I/V変換回路30
1〜30
nやバッファBUF
1〜BUF
nなど、不要な回路ブロックを停止することができる。
【0072】
図8は、
図7の制御IC4aの具体的な構成例を示す回路図である。
第2リセットスイッチSW6、第2センススイッチSW7、第2カレントミラー回路(M6、M7)を含む。
第2リセットスイッチSW6は、基準容量C
REFと並列に設けられ、そのオン状態において基準容量C
REFの電荷を初期化する。第2センススイッチSW7の一端は、基準容量C
REFと接続される。第6トランジスタM6および第7トランジスタM7は、第2カレントミラー回路を構成する。第6トランジスタM6は、第2センススイッチSW7の経路上に設けられ、第2センススイッチSW7を介して基準容量C
REFと接続される。第2カレントミラー回路は、その出力側の第7トランジスタM7に流れる電流I
REFを、第2積分用キャパシタC
INTn+1に第1の向きで供給する。
【0073】
第2積分用キャパシタC
INTn+1は、基準容量C
REFに対して設けられ、その一端の電位が固定される。第2初期化回路である初期化スイッチSW3
n+1は、第2積分用キャパシタC
INTn+1の電圧を初期化するために設けられる。
【0074】
電流平均化回路20aは、複数のセンサ容量Cs
1〜nそれぞれに流れる検出電流Is
1〜n’に加えて、基準容量C
REFに流れる基準電流I
REF’を平均化することにより平均電流I
AVEを生成し、平均電流I
AVEを複数の積分用キャパシタC
INT1〜nおよび第2積分用キャパシタC
INTn+1それぞれに第2の向きで供給する。
【0075】
電流平均化回路20aは、
図3の電流平均化回路20に構成に加えて、第8トランジスタM8、第9トランジスタM9、第10トランジスタM10を含む。第10トランジスタM10のゲートは、第6トランジスタM6のゲートと接続される。第8トランジスタM8は、第10トランジスタM10の経路上に設けられる。
【0076】
第9トランジスタM9は、第8トランジスタM8とカレントミラー回路を形成するように接続され、そのドレインは、第2積分用キャパシタC
INTn+1に接続される。
【0077】
スタンバイモードにおいては、第2積分用キャパシタC
INTn+1の電圧Vs
n+1にもとづき、ユーザがタッチパネル3に接触したか否かが判定される。
【0078】
基準容量C
REFは、制御IC4に内蔵され、可変容量として構成されることが好ましい。後述のように、電圧Vs
n+1は、基準容量C
REFの容量値と、センサ容量Csの平均容量の差分に応じた値をとる。したがって基準容量C
REFを可変とすることにより、電圧Vs
n+1のレンジを、後段の回路に適合させることができる。
【0079】
以上が制御IC4aの構成である。続いてその動作を説明する。
図9は、
図8の制御IC4aの、スタンバイモードの動作を示す波形図である。
【0080】
スタンバイモードにおいて、時刻t2より前の動作は、
図4の波形図と同様である。
まずバッファ52がオン状態となり基準電圧V
CMが所定レベルとなる。またすべてのチャンネルの初期化信号VCM_SWがアサートされ、初期化スイッチSW3
1〜n+1がオンする(時刻t0)。これにより、各チャンネルの積分用キャパシタC
INT1〜n+1の電圧レベルが、基準電圧V
CMに初期化される。積分用キャパシタC
INTの初期化が終了すると、基準電圧V
CMが0Vとなり、初期化信号VCM_SWがネゲートされ、初期化スイッチSW3
1〜n+1がオフする。
【0081】
続いて、リセット信号RSTがアサートされ、リセットスイッチSW1
1〜nおよびSW6がオンする。これによりセンサ容量Cs
1〜nの電荷がゼロとなり、初期化される(時刻t1)。その後、リセット信号RSTがネゲートされ、リセットスイッチSW1
1〜nおよびSW6がオフする。
【0082】
続いてセンス信号EVALBがアサート(ローレベル)され、センススイッチSW2
1〜nおよびSW7がオンする。その結果、C/I変換回路10
iおよび11は、対応するセンサ容量Cs
iおよび基準容量C
REFの電位が所定レベル(Vdd−Vth)に達するまで、センサ容量Cs
iおよび基準容量C
REFに電流I
CHGiを供給する。
【0083】
n+1チャンネルに着目する。第2積分用キャパシタC
INTn+1に第1の向きで供給される電流I
REFは、ユーザがタッチパネル3に接触しているか否かにかかわらず一定値をとる。一方、第2積分用キャパシタC
INTn+1に第2の向きで供給される電流I
AVEは、ユーザがタッチパネル3に接触したか否かに応じて変化する。
【0084】
基準容量C
REFが、複数のセンサ容量Csの平均値と等しければ、第2積分用キャパシタC
INTn+1の充電電流I
REFと放電電流I
AVEが等しくなるため、その電位Vs
n+1は、基準電圧V
CMと等しくなる。また基準容量C
REFが、複数のセンサ容量Csの平均値より大きければ、I
REF>I
AVEとなり、その電位Vs
n+1は、基準電圧V
CMより高くなる。
反対に基準容量C
REFが、複数のセンサ容量Csの平均値より小さければ、I
REF<I
AVEとなり、その電位Vs
n+1は、基準電圧V
CMより低くなる。
【0085】
ここで、ユーザがタッチパネル3に接触すると、複数のセンサ容量Csの少なくともひとつの容量値が増大するため、複数のセンサ容量Csの平均値も増大する。したがって、第2積分用キャパシタC
INTn+1の電位Vs
n+1は、ユーザがタッチパネル3に接触したか否かに応じて、異なるレベルをとる。
【0086】
センス信号EVALBをアサートした後、マルチプレクサ40aのスイッチAD_SWn+1がオンし、電圧Vs
n+1がA/DコンバータADC2に入力され、デジタル値に変換される。DSP6は、このデジタル値にもとづき、ユーザがタッチパネル3に接触しているか判定し、接触を検出した場合、通常モードに移行する。
【0087】
図9に示すように、スタンバイモードでは、スイッチAD_SW1〜AD_SWnは常にオフしており、マルチプレクサ40aは電圧Vs
n+1を固定的に選択する。したがってスイッチの切りかえが不要である。また、バッファBUF
1〜nを動作させる必要がない。さらに、A/D変換も、(n+1)チャンネルの1回のみでよい。また、制御IC4からDSP6に対して送信するデータも、1チャンネル分である。これらのことから、制御IC4の消費電流を大幅に削減できる。
【0088】
さらにDSP6においても、1チャンネル分のデータに応じて、ユーザがタッチパネル3に接触しているかを判定できる。この判定は、DSP6からの電圧Vs
n+1に応じたデジタルデータを、しきい値と比較すればよく、きわめて簡易な処理である。したがって、DSP6の演算量を大幅に削減できる。
【0089】
(その他の変形例)
実施の形態では、センサ容量Csが実質的にマトリクス状に配置されるタッチパネル3を例に説明したが、C/V変換回路100の適用はそれに限定されない。たとえばC/V変換回路100は、X−Y型のタッチパネルにも適用可能であり、この場合、複数の行センサ電極と、複数の列センサ電極の容量値を、同時に検出できる。
【0090】
実施の形態で示されるC/V変換回路100は、天地反転してもよい。当業者であれば、この際にPチャンネルMOSFETとNチャンネルMOSFETを適宜置換すればよいことが理解できる。このときの充電と放電は逆となるが、本質的な動作は同じである。一部のトランジスタを、MOSFETに代えて、バイポーラトランジスタに置換してもよい。
【0091】
実施の形態においては、容量電圧変換回路100を静電容量の変化を利用した入力装置に適用した場合について説明したが、容量電圧変換回路100の用途はこれに限定されるものではない。たとえば、キャパシタ型マイクロフォンなど、ダイアフラム電極とバックプレート電極によってキャパシタが形成され、音圧によりキャパシタの静電容量が変化するようなマイクロフォンに適用することができる。
また、容量電圧変換回路100は非常に小さな静電容量の変化を増幅して検出することができるため、その他の様々なアプリケーションに用いることができる。
【0092】
実施の形態においては、容量電圧変換回路100はひとつの半導体集積回路上に一体集積化される場合について説明したがこれには限定されず、各回路ブロックをチップ部品やディスクリート素子を用いて構成してもよい。いずれのブロックを集積するかは、採用する半導体製造プロセスや要求されるコスト、特性などに応じて決定すればよい。
【0093】
実施の形態に係る入力装置は、実施の形態で説明した携帯電話端末の他、パーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistance)、デジタルスチルカメラ、CDプレイヤなどのリモコンなど、さまざまな入力装置を備える電子機器に用いることができる。