(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
軌道における路盤とまくらぎとにわたって配されたプレストレス部材によって、前記まくらぎと前記路盤との間のバラストにプレストレスを付与するプレストレスト・バラスト軌道において、
前記プレストレス部材が、前記プレストレスを付与する方向に弾性を有し、前記まくらぎを前記路盤側に向かって付勢することを特徴とするプレストレスト・バラスト軌道。
前記拘束部材が、前記軌道の延在方向に離間して配置された少なくとも二つの前記まくらぎ上にわたって配置されたバネ部材であることを特徴とする請求項2に記載のプレストレスト・バラスト軌道。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1、2のプレストレスト・バラスト軌道は、バラストを拘束することによる軌道沈下抑制効果を得ることができるものの、プレストレスが時間の経過とともに低下してしまい、その結果、軌道沈下抑制効果が消失してしまうという問題があった。
即ち、上記プレストレスト・バラスト軌道では、プレストレス部材によるまくらぎやレールの拘束構造の剛性が高すぎるため、列車の走行に伴ってバラストに塑性変形が生じた場合には該塑性変形に追従して拘束を継続することができず、バラストへの拘束力が消失してしまう。
【0006】
この発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、軌道沈下抑制効果を長期間にわたって維持することができるプレストレスト・バラスト軌道を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は以下の手段を提案している。
即ち、本発明に係るプレストレスト・バラスト軌道は、軌道における路盤とまくらぎとにわたって配されたプレストレス部材によって、前記まくらぎと前記路盤との間のバラストにプレストレスを付与するプレストレスト・バラスト軌道構造において、前記プレストレス部材が、前記プレストレスを付与する方向に弾性を有し
、前記まくらぎを前記路盤側に向かって付勢することを特徴とする。
【0008】
このような特徴のプレストレスト・バラスト軌道によれば、プレストレス部材がその弾性によりバラストの塑性変形に追従して該バラストを拘束する。即ち、プレストレス部材がまくらぎと路盤との間においてバラストを弾性拘束した構造とされているため、バラストが塑性変形した場合であってもバラストに対するプレストレスの消失を回避することができる。
【0009】
また、本発明に係るプレストレスト・バラスト軌道においては、前記プレストレス部材が、下端が前記路盤に固定された緊張部材と、該緊張部材の上端側に接続され、上下方向に弾性変位可能とされるとともに前記まくらぎを下方に向かって押圧する拘束部材とを備えることが好ましい。
【0010】
このようにプレストレス部材が弾性変形可能にまくらぎを下方に向かって押圧することによって、バラストの塑性変形に適切に追従しながら該バラストを拘束することができる。
【0011】
さらに、本発明に係るプレストレスト・バラスト軌道においては、前記拘束部材が、前記軌道の延在方向に離間して配置された少なくとも二つの前記まくらぎ上にわたって配置されたバネ部材であることが好ましい。
【0012】
これによれば、バネ部材の付勢力によってプレストレス部材がプレストレスを付与する方向に弾性を有した構造となる。したがって、簡易な構造でもってバラストの塑性変形に適切に追従しながら該バラストを拘束することができ、設置コストやメンテナンスコストを低く抑えることができる。
【0013】
また、本発明に係るプレストレスト・バラスト軌道においては、前記拘束部材が、前記軌道の延在方向に離間して配置された少なくとも二つの前記まくらぎ上にわたって配置された梁部材と、該梁部材と各まくらぎとの間に介在された付勢部材とを備えているものであってもよい。
【0014】
これによれば、付勢部材によってプレストレス部材がプレストレスを付与する方向に弾性を有した構造となる。したがって、バラストの塑性変形に適切に追従しながら該バラストを確実に拘束することができる。
【0015】
また、本発明に係るプレストレスト・バラスト軌道においては、前記緊張部材が、下方側に配置された第一ロッド材と、該第一ロッド材の上方側に配置された第二ロッド材と、前記第一ロッド材と前記第二ロッド材とを上下方向に弾性変位可能に接続する連結部とを有し、前記拘束部材が、前記第二ロッド材に接続されるとともに、前記軌道の延在方向に離間して配置された少なくとも二つのまくらぎ上にわたって配置された梁部材を有するものであってもよい。
【0016】
これによれば、ロッド自体が上下方向に弾性を有することで、プレストレス部材がプレストレスを付与する方向に弾性を有した構造となる。したがって、バラストの塑性変形に適切に追従しながら該バラストを確実に拘束することができる。
【0017】
さらに、本発明に係るプレストレスト・バラスト軌道においては、前記緊張部材の下端がアンカー部を介して前記路盤に固定されており、該アンカー部は、前記路盤に形成された凹部の底面に敷設され、前記緊張部材の下端が接続された板部材と、前記凹部内における前記板部材上に充填されたコンクリートとを備えていることが好ましい。
【0018】
これによって、緊張部材の下端を路盤に対して確実に固定することができるため、プレストレス部材によるバラストへの拘束力の付与をより確実に行うことができる。また、緊張部材を介して板部材に伝達されるまくらぎからの反力は、該板部材によってコンクリート、バラストに上方向への力として伝達される。これにより、バラストに付与される拘束力を向上させることができる。
【0019】
また、本発明に係るプレストレスト・バラスト軌道においては、前記板部材が、繊維強化プラスチックであることが好ましい。
【0020】
これにより、例えば板部材として鋼材等を用いる場合に比べて該板部材の重量を軽減することができるため、重機の使用が困難な現場での施工性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のプレストレスト・バラスト軌道によれば、プレストレス部材が弾性変形することでバラストの塑性変形に追従するため、該バラストに対する拘束力の消失を回避することができる。したがって、軌道沈下抑制効果を長期間にわたって維持することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の第一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態のプレストレスト・バラスト軌道100は、路盤1上に敷かれたバラスト3上に、軌道幅方向に延在する角柱状をなすまくらぎ4が軌道延在方向に間隔をあけて複数設置されており、これらまくらぎ4上に一対のレール5が軌道延在方向に沿って敷設されることで構成されている。そして、このプレストレスト・バラスト軌道100には、まくらぎ4と路盤1との間にわたって配置されるプレストレス部材10と、該プレストレス部材10を路盤1に対して固定するアンカー部60とが設けられている。
【0024】
プレストレス部材10は、
図1から
図4に示すように、ロッド(緊張部材)20及び拘束部材30から構成されており、隣り合う一対のまくらぎ4と路盤1との間において上下方向にわたるようにして複数が設けられている。本実施形態においては、隣り合う一対のまくらぎ4に一のプレストレス部材10が対応するように複数のプレストレス部材10が設けられている。換言すれば、プレストレス部材10は、軌道延在方向に間隔をあけて複数配置されたまくらぎ4の間に一つ置きに設けられている。
【0025】
ロッド20は、例えば金属やカーボン等からなる棒状の部材であって、隣り合う一対のまくらぎ4の中間の位置における軌道幅方向中央において、路盤1と一対のまくらぎ4の間とにわたって上下方向に延在するように設けられている。
このロッド20は、その下端がアンカー部60を介して路盤1に固定されるとともに、この下端からバラスト3内を通過するように上方に向かって延在し、その上端は一対のまくらぎ4の上面よりも上方に突出するように配置されている。
【0026】
また、このロッド20の上端側の外周面には雄ネジ(図示省略)が形成されており、当該雄ネジには内周面に雌ネジを有するロックナット21が螺合されている。これによって、ロックナット21はロッド20の上端側において該ロッド20の外周面から外周側に張り出すように固定されている。なお、このロックナット21は、ロッド20に対して相対回転させた際のみ該ロッド20に対して上下方向に相対移動可能とされている。
【0027】
拘束部材30は、ロッド20の上端側に接続されてまくらぎ4を下方に向かって押圧する役割を有しており、詳しくは
図3及び
図4に示すように、バネ部材31から構成されている。このバネ部材31は、付与される押圧力によって設定値以内で変位するバネ定数を有している。
【0028】
このバネ部材31は、それぞれ水平面に沿って延びる矩形板状をなしており、上下方向に撓むように弾性変形可能とされている。また、これらバネ部材31の長手方向の中央には上下方向に貫通してロッド20の外径よりも大きい内径を有する孔部33がそれぞれ形成されている。このバネ部材31の各孔部33は、互いに上下方向に連通状態とされており、上方から下方に向かってロッド20が挿通されている。
これによって、バネ部材31の上面にはロックナット21が当接しており、該ロックナット21によってバネ部材31からなる拘束部材30のロッド20に対する上方向への相対移動が規制されている。
【0029】
さらに、バネ部材31からなる拘束部材30は、軌道延在方向にバネ部材31の長手方向、即ち、拘束部材30の長手方向を沿わせて配置されている。これによって、拘束部材30はその長手方向の両端側が一対のまくらぎ4の上面に接触するようにして、これら一対のまくらぎ4の上面にわたって配置されている。
【0030】
なお、本実施形態では、バネ部材31の下面における長手方向両端側、即ち、当該下面におけるまくらぎ4に対向する部分には、
図3に示すように、下方に向かって円筒面状に突出する円筒座32がそれぞれ設けられている。これら一対の円筒座32はまくらぎ4の上面に接触しており、即ち、拘束部材30は円筒座32を介してまくらぎ4に接触している。
【0031】
このようなプレストレス部材10の拘束部材30は、ロッド20との接続箇所となるバネ部材31の長手方向中央を支点として、長手方向両側の部分が上下方向に弾性変位可能とされている。即ち、プレストレス部材10は、拘束部材30が弾性変位可能とされることによって、該プレストレス部材10自体が上下方向への弾性を有した構造をなしている。
【0032】
また、拘束部材30は、まくらぎ4との接触箇所を介して該まくらぎ4を下方に向かって押圧している。即ち、拘束部材30は、ロックナット21によってロッド20に対する上方向への移動が規制されることによって、該ロッド20との接続箇所となるバネ部材31の長手方向中央に比べて長手方向両端側の部分が上方に向かって弾性変形している。これにより、ロックナット21から拘束部材30に加えられる押圧力と拘束部材30自体の弾性力によって、まくらぎ4が下方に向かって押圧されている。
【0033】
なお、拘束部材30によるまくらぎ4の押圧力を増加させるには、ロックナット21を回転させて下方に変位させればよい。これにより、ロックナット21から拘束部材30に付与される押圧力の増加に加えて、拘束部材30の長手方向両端側の部分がさらに上方に向かって弾性変形することによる弾性力の増加によって、まくらぎ4への押圧力を増加させることができる。
【0034】
アンカー部60は、
図1及び
図2に示すように、路盤1に形成された凹部2内に設けられている。即ち、路盤1の上面における軌道幅方向中央には下方に向かって窪む凹部2が軌道延在方向に間隔をあけて複数形成されており、これら凹部2のそれぞれにアンカー部60が設けられている。なお、本実施形態においては一のプレストレス部材10に対応する一対のまくらぎ4の下方に一の凹部2が形成されており、即ち、一対のまくらぎ4の直下に凹部2が形成されている。
【0035】
なお、本実施形態では、凹部2の軌道幅方向の寸法が、まくらぎ4の軌道幅方向の寸法と略同一に設定されているが、当該凹部2の軌道幅方向の寸法は任意に設定することができる。また、凹部2の軌道延在方向の寸法は、平面視にて一対のまくらぎ4が凹部2の範囲内に収容される程度の大きさに設定されていることが好ましい。
【0036】
アンカー部60は、凹部2の底面に敷設された板部材61を有している。この板部材61は、例えば繊維強化プラスチック(FRP)によって構成される平板状の部材であって、凹部2の底面の幅方向中央に敷設されている。また、板部材61は、プレストレス部材10のロッド20の下端と互いに固定されている。
【0037】
なお、ロッド20と板部材61との固定は、板部材61に設けられた凹部にロッド20の下端が嵌合することによるものであってもよいし、ロッド20の下端外周面に形成された雄ネジが板部材61に形成された凹孔の雌ネジに螺合することによるものであってもよい。また、ロッド20と板部材61とは必ずしも互いに固定されている必要はなく、ロッド20と板部材61とが互いに当接することにより接続された構成であってもよい。
【0038】
さらに、凹部2内における板部材61の上方には、該凹部2内全域を埋めるようにコンクリート62が充填されており、該コンクリート62にロッド20及び板部材61が一体に固定されている。即ち、本実施形態においては、凹部2に敷設された板部材61と該凹部2に充填されたコンクリート62からアンカー部60が構成されており、これによってロッド20の下端が路盤1に対して強固に固定されている。なお、コンクリート62としては、例えば砕石又は発生材と急硬性モルタルとの混合体から構成されていることが好ましい。
【0039】
以上のような構成のプレストレスト・バラスト軌道100においては、アンカー部60を介して路盤1に固定されたロッド20の上端に接続された拘束部材30が、該拘束部材30に接触するまくらぎ4を下方に向かって押圧をする。この際、まくらぎ4からバラスト3に与えられる押圧力は該バラスト3を上下方向に圧縮する拘束力として作用し、これによって、バラスト3に対してプレストレスが付与される。そして、このプレストレスによってバラスト3が拘束されることにより、軌道沈下を抑制することができる。
【0040】
また、本実施形態のプレストレスト・バラスト軌道100では、プレストレス部材10における拘束部材30が上下方向、即ち、プレストレスが付与される方向に弾性変位可能とされているため、列車の走行によりバラスト3に塑性変形が生じた場合であっても拘束部材30が当該塑性変形に追従して弾性変形する。
【0041】
即ち、本実施形態では、バラスト3に塑性変形が生じた場合であっても、拘束部材30のバネ部材31の長手方向両端側の弾性変位が緩むものの該バネ部材31によるまくらぎ4の下方に向かっての押圧は継続される。
このように、プレストレス部材10がまくらぎ4と路盤1との間においてバラスト3を弾性拘束するため、バラスト3が塑性変形した場合であっても該バラスト3に対するプレストレスの消失を回避することができる。
【0042】
また、拘束部材30として一対のまくらぎ4にわたって配置されるバネ部材31を採用していることにより、簡易な構造でもってバラスト3の塑性変形に適切に追従しながら該バラスト3を拘束することができる。これにより、設置コストやメンテナンスコストを低く抑えることができる。
【0043】
さらに、本実施形態では、凹部2に敷設された板部材61と該板部材61上に充填されたコンクリート62とから構成されているため、ロッド20の下端を路盤1に対して確実に固定することができる。
【0044】
また、押圧力が作用する一対のまくらぎ4の直下に板部材61が配置されているため、拘束部材30からまくらぎ4に付与される押圧力の反力は、ロッド20を介して板部材61に伝達される。このように板部材61に伝達された反力は、コンクリート62を介してバラスト3に上方向への力として付与される。これによって、バラスト3に付与される拘束力を向上させることができ、即ち、プレストレス部材10によるプレストレスを該バラスト3に対して確実かつ効果的に付与することができる。よって、軌道沈下抑制効果をより高く得ることができる。
【0045】
また、アンカー部60の板部材61の材料として繊維強化プラスチックを用いているため、例えば鋼材等を用いる場合に比べて該板部材61の重量を軽減することができ、重機の使用が困難な現場での施工性を向上させることができる。
【0046】
なお、バネ部材31としては、板バネを用いることが好ましい。また、複数枚の板バネを締着シート等によってまとめることで、一のバネ部材31として用いてもよい。
【0047】
次に本発明の第二実施形態について
図5及び
図6を参照して説明する。第二実施形態では第一実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。本実施形態のプレストレスト・バラスト軌道100は、プレストレス部材10における拘束部材30の構成について第一実施形態と相違する。
第二実施形態の拘束部材30は、
図5及び
図6に示すように、ロッド20の上端に接続された梁部材41と、該梁部材41に設けられた一対の付勢部材45とを備えている。
【0048】
梁部材41は、水平方向に延在するとともに内部が中空状とされた鋼管であって、その延在方向略中央の下部には、該梁部材41の内部と下方とを連通するロッド挿通孔42が形成されている。このロッド挿通孔42にはロッド20が上下方向に挿通されており、ロックナット21は梁部材41の内部においてロッド20の上端側外周面に固定されている。このロックナット21が梁部材41の内部における下面に当接することで、梁部材41のロッド20に対する上方向への相対移動が規制されている。
【0049】
なお、ロックナット21のロッド20に対する回転の作業性を担保すべく、梁部材41の延在方向略中央の上部に該梁部材41の内部と上方とを連通する孔が形成されていてもよい。この孔を介して梁部材41内に工具を挿入することで、ロックナット21をロッド20に対して容易に相対回転させることができる。
【0050】
この梁部材41はその延在方向を軌道延在方向に沿わせて配置されており、これによって梁部材41の両端は一対のまくらぎ4の上方に間隔をあけて配置されている。また、梁部材41の下部における一対のまくらぎ4の直上に当たる箇所には、該梁部材41の内部と下方とを連通する付勢部材挿通孔(図示省略)がそれぞれ形成されている。
【0051】
さらに、これら付勢部材挿通孔の直上、即ち、一対のまくらぎ4の直上における梁部材41の内部の上面には、バネ受けガイド44が設けられている。このバネ受けガイド44は、梁部材41の内部の上面から下方に向かって突出する筒状をなしており、付勢部材挿通孔から梁部材41外部に露出することのないよう、該梁部材41内に収納されている。
【0052】
付勢部材45は、梁部材41とまくらぎ4との間に介在されてまくらぎ4を下方に向かって押圧する役割を有しており、受台46、軸部材47及びバネ部材48から構成されている。このバネ部材48は、第一実施形態と同様、付与される押圧力によって設定値以内で変位するバネ定数を有するものである。
受台46は、付勢部材挿通孔の直下においてまくらぎ4上に載置される板状の部材である。
【0053】
また、軸部材47は、受台46の上面に固定された下端から上方向に延びて付勢部材挿通孔を介して梁部材41内に挿入され、その上端はバネ受けガイド44の内部に収納されるように配置されている。これによって、軸部材47及びこれに一体に固定された受台46は、バネ受けガイド44に案内されるようにして梁部材41に対して上下方向に相対移動可能とされている。
バネ部材48は、軸部材47の外周側に該軸部材47と同軸に配置されており、下端が受台46の上面に一体に固定され、上端がバネ受けガイド44の下方側を向く端面に一体に固定されている。
【0054】
このような拘束部材30では、ロックナット21のロッド20に対する相対位置の調整により梁部材41の上下方向位置が決定され、該梁部材41の延在方向両側に設けられた付勢部材45を介してまくらぎ4の下方に向かって押圧力が作用する。即ち、押圧力は、梁部材41のバネ受ガイドから該バネ受けガイド44に当接するバネ部材48、該バネ部材48が当接する受台46を介してまくらぎ4に対して伝達される。また、この際、バネ部材48は圧縮状態とされており、該バネ部材48の弾性に従って付勢部材45自体が上下方向に弾性変位可能とされている。
【0055】
このようにして、本実施形態においては、拘束部材30の付勢部材45が上下方向に弾性変位する構成とされており、これによって、プレストレス部材10自体が上下方向に弾性を有した構造をなしている。
【0056】
以上のような構成のプレストレスト・バラスト軌道100においては、第一実施形態同様、プレストレス部材10の拘束部材30からまくらぎ4に伝達される押圧力は該バラスト3を上下方向に圧縮する拘束力として作用する。これによって、バラスト3に対してプレストレスが付与される。そして、このプレストレスによってバラスト3が拘束されることにより、軌道沈下を抑制することができる。
【0057】
また、本実施形態のプレストレスト・バラスト軌道100では、プレストレス部材10の拘束部材30における付勢部材45がプレストレスが付与される方向、即ち、上下方向に弾性変位可能とされているため、列車の走行によりバラスト3に塑性変形が生じた場合であっても拘束部材30が当該塑性変形に追従して弾性変形する。したがって、バラスト3に塑性変形が生じた場合であっても、拘束部材30における付勢部材45のバネ部材48の圧縮状態が緩和されるもののまくらぎ4の下方に向かっての押圧は継続される。
【0058】
よって、第一実施形態と同様、プレストレス部材10がまくらぎ4と路盤1との間においてバラスト3を弾性拘束するため、バラスト3が塑性変形した場合であっても該バラスト3に対するプレストレスの消失を回避することができる。
なお、バネ部材48としては、コイルバネを用いることが好ましい。また、該バネ部材48として皿バネ等の他のバネ要素を用いてもよい。
【0059】
次に本発明の第三実施形態について
図7及び
図8を参照して説明する。第三実施形態では第一実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
第三実施形態のプレストレスト・バラスト軌道100は、プレストレス部材10を構成するロッド20及び梁部材51について第一及び第二実施形態とは相違する。
【0060】
第三実施形態のロッド20は、第一ロッド材22、第二ロッド材23及び連結部70とから構成されている。
第一ロッド材22はロッド20の下端側を構成する部材であって、該第一ロッド材22の下端はアンカー部60を介して路盤1に固定されている。また、第二ロッド材23はロッド20の上端側を構成する部材であって、連結部70を介して第一ロッド材22の上方側に配置されている。これら第一ロッド材22及び第二ロッド材23は、ロッド20の形状に従って上下方向に延在している。この第二ロッド材23の上端外周面にロックナット21が固定一体化されている。
【0061】
連結部70は、第一ロッド材22と第二ロッド材23とを上下方向に相対変位可能に接続する役割を有している。
この連結部70は、上下に延びて内部が中空とされた筒状をなすケーシング71を備えている。このケーシング71は、上端が閉塞される一方、下端にはケーシング71内外を上下方向に連通するロッド材挿通孔(図示省略)が形成されている。このロッド材挿通孔には第一ロッド材22の上端側が下方から上方に向かって挿通されている。ケーシング71の上端には、第二ロッド材23の下端が強固に固定一体化されている。
【0062】
また、連結部70は、ケーシング71内において第一ロッド材22の上端側外周面に固定されるナット部材73を備えている。このナット部材73の外径はロッド材挿通孔の内径よりも大きく設定されており、これによりナット部材73はケーシング71内から脱出不能とされている。そして、このナット部材73が、ケーシング71の上端及び下端に当接することで、第一ロッド材22と第二ロッド材23との上下方向への相対移動範囲が規制されている。
【0063】
さらに、連結部70は、ケーシング71内におけるナット部材73と該ケーシング71の下端との間に介在されたバネ部材74を備えている。このバネ部材74は、その上端がナット部材73に当接するとともに下端がケーシング71の下端に当接し、圧縮状態とされている。これによって、第一ロッド材22をケーシング71に対して下方に付勢することで、該ケーシング71に固定一体化された第二ロッド材23を下方に向かって付勢している。このバネ部材74は、第一、二実施形態と同様、付与される押圧力によって設定値以内で変位するバネ定数を有するものである。
なお、バネ部材74としては、第一ロッド22の外周側に同軸に配置されるコイルバネを採用することが好ましい。また、該バネ部材74として皿バネ等の他のバネ要素を用いてもよい。
【0064】
梁部材51は、水平方向に延在するとともに内部が中空状とされた鋼管であって、その延在方向略中央の下部には、該梁部材51の内部と下方とを連通するロッド挿通孔52が形成されている。このロッド挿通孔52には第二ロッド材23が上下方向に挿通されており、ロックナット21は梁部材51の内部において第二ロッド材23の上端側外周面に固定されている。このロックナット21が梁部材51の内部における下面に当接することで、梁部材51の第二ロッド材23に対する上方向への相対移動が規制されている。
この梁部材51は、ロッド20の弾性変位に従って上下方向に弾性変位可能とされた状態でまくらぎ4を下方に向かって押圧している。
【0065】
以上のような構成のプレストレスト・バラスト軌道100においては、第二ロッド材23が連結部70によって下方に付勢される際に該第二ロッド材23に接続された梁部材51も下方に付勢されることによって、該梁部材51に当接するまくらぎ4には下方に向かっての押圧力が付与される。このようにまくらぎ4に伝達される押圧力は該バラスト3を上下方向に圧縮する拘束力として作用する。これによって、バラスト3に対してプレストレスが付与される。そして、このプレストレスによってバラスト3が拘束されることにより、軌道沈下を抑制することができる。
【0066】
そして、本実施形態のプレストレスト・バラスト軌道100では、梁部材51が第二ロッド材23に従って上下方向に弾性変位可能とされているため、列車の走行によりバラスト3に塑性変形が生じた場合であっても梁部材51が当該塑性変形に追従する。したがって、バラスト3に塑性変形が生じた場合であっても、拘束部材30における連結部70のバネ部材74の圧縮状態が緩和されるもののまくらぎ4の下方に向かっての押圧は継続される。
【0067】
よって、第一、第二実施形態と同様、プレストレス部材10がまくらぎ4と路盤1との間においてバラスト3を弾性拘束するため、バラスト3が塑性変形した場合であっても該バラスト3に対するプレストレスの消失を回避することができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない限り、これらに限定されることはなく、多少の設計変更等も可能である。
例えば、
図9に示すように、凹部2の軌道幅方向の寸法は、例えば一対のレール5の間隔よりも小さく設定されていてもよい。この場合は、アンカー部60の板部材61は、例えば凹部2の底面全域を覆うように該底面に敷設される。
また、この他、例えば路盤1に形成された凹部2が、軌道の幅方向外側に向かうに従って漸次上方に傾斜する傾斜面を有していてもよい。これによって、凹部2内のコンクリート62は、凹部2の傾斜面に従って、上方に向かうに従って軌道の幅方向外側に広がるように充填される。この場合、板部材61に与えられる反力を、コンクリート62を介して軌道幅方向の広範囲にわたって下方からバラスト3に作用させることができる。よって、バラスト3に対してプレストレス部材10に基づくプレストレスを広範囲にわたって付与することができる。
【0069】
さらに、プレストレスト・バラスト軌道100において、例えば
図10及び
図11にそれぞれ示すように、軟弱地盤改良の改良体をアンカー部60として使用してもよい。
図10のプレストレスト・バラスト軌道100では、凹部2が実施形態で示した場合に比べて深く形成されており、当該凹部2内に満たされた攪拌混合杭62aにロッド20が直接的に固定されている。
また、
図11のプレストレスト・バラスト軌道100では、凹部2を形成することなく、路盤の内部に空間2aを形成し、当該空間2aにロッド20を挿入するととともに該空間2aに薬液注入固化体62bが充填されている。即ち、ロッド20は、薬液注入固化体62bによって固定されている。
これらの場合であっても実施形態と同様、ロッド20を確実に固定することができる。
【0070】
さらに、路盤1が高架橋等のコンクリート路盤の場合には、躯体から直接的にロッド20を立ち上げる構造としてもよい。
【0071】
また、実施形態においてはロッド20の上端側の外周面にロックナット21を設けた構成としたが、拘束部材30の少なくとも上方向への相対移動を規制することができるならばロックナット21に限られず、他の部材であってもよい。