特許第5797983号(P5797983)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5797983
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】電気自動車のコンデンサ電荷放電装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 9/18 20060101AFI20151001BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20151001BHJP
   B60L 3/00 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   B60L9/18 P
   B60L15/20 S
   B60L3/00 J
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-195700(P2011-195700)
(22)【出願日】2011年9月8日
(65)【公開番号】特開2013-59192(P2013-59192A)
(43)【公開日】2013年3月28日
【審査請求日】2014年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086793
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(72)【発明者】
【氏名】松岡 大輔
【審査官】 清水 康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−145204(JP,A)
【文献】 特開2008−141874(JP,A)
【文献】 特開平07−007807(JP,A)
【文献】 特開2007−020354(JP,A)
【文献】 特開2009−027831(JP,A)
【文献】 特開平09−233830(JP,A)
【文献】 特開2007−216932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00 − 3/12
B60L 7/00 − 13/00
B60L 15/00 − 15/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ独立したインホイール形式のモータで駆動される駆動輪を2輪以上有し、前記各モータを駆動する電源系として、蓄電池と、この蓄電池から電力供給されて前記各モータをそれぞれ駆動する複数のインバータと、前記インバータに並列接続された平滑用のコンデンサと、電源操作手段の操作に応じて開閉指令を出す開閉指令手段と、前記インバータおよびコンデンサの並列回路部よりも蓄電池側に設けられ前記開閉指令手段からの開閉指令に応答して蓄電池とインバータ間の電流の流れを開閉する主電源スイッチとを有する電気自動車において、
前記開閉指令手段から主電源スイッチをオフとするオフ信号を受けると、前記コンデンサに蓄電されている電荷により、前記駆動輪である左右輪、または前後輪に互いに逆回転方向のトルクが生じるように前記各モータのコイルへ電流を流す制御を行う相互逆回転放電制御手段を設けたことを特徴とする電気自動車のコンデンサ電荷放電装置。
【請求項2】
請求項1において、前記各モータは、このモータと、前記駆動輪を支持する車輪用軸受と、前記モータの回転を減速して前記車輪用軸受の回転側輪に伝える減速機とでなるインホイールモータ装置を構成する電気自動車のコンデンサ電荷放電装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記相互逆回転放電制御手段は、前記開閉指令手段から主電源をオフするオフ信号を受信すると、前記インバータの出力電圧が、設定された放電電圧の閾値未満または閾値以下になるまでインバータの動作を開始し、閾値未満または閾値以下になるとインバータの動作を停止する電気自動車のコンデンサ電荷放電装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記モータが設置されている駆動輪は左右の後輪である電気自動車のコンデンサ電荷放電装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記モータが設置されている駆動輪は左右の前輪である電気自動車のコンデンサ電荷放電装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記モータが設置されている駆動輪は左右の前輪と左右の後輪である電気自動車のコンデンサ電荷放電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はインホールモータ形式の電気自動車において、電源オフ時に平滑用のコンデンサの電荷を放電させる電気自動車のコンデンサ電荷放電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電池から電力供給を受けてモータをインバータで駆動する電気自動車では、インバータと並列に平滑用のコンデンサが設けられている。この平滑用のコンデンサに蓄電された電荷は、主電源スイッチを遮断しても直ぐには放電されずに蓄電された状態にある。この蓄電された電荷は、安全上好ましくなく、放電させてしまうことが好ましい。
【0003】
平滑用のコンデンサの放電の方法としては、モータのコイルに電流を流し、平滑用のコンデンサの電荷をモータのコイルに消費させるものが提案されている(例えば、特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−7807号公報
【特許文献2】特開2009−27831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インホイールモータ型の電気自動車では、主電源オフ時に単にモータコイルに電流を流し、平滑用のコンデンサの電荷をモータコイルに消費させるのでは、僅かではあるが車両が動き、乗員に異常感を与える場合がある。
【0006】
この発明の目的は、インホイールモータ型の電気自動車において、主電源オフ時に、車両に動きを生じさせることなく、平滑用のコンデンサの電荷をモータコイルで消費させて放電させることができ、安全性の向上が図れる電気自動車のコンデンサ電荷放電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の電気自動車のコンデンサ電荷放電装置は、それぞれ独立したインホイール形式のモータ6で駆動される駆動輪2を2輪以上有し、前記各モータ6を駆動する電源系として、蓄電池19と、この蓄電池19から電力供給されて前記各モータ6をそれぞれ駆動する複数のインバータ31と、前記インバータ31に並列接続された平滑用のコンデンサ33aと、電源操作手段18の操作に応じて開閉指令を出す開閉指令手段39と、前記インバータ31およびコンデンサ33aの並列回路部よりも蓄電池19側に設けられ前記開閉指令手段39からの開閉指令に応答して蓄電池19とインバータ31間の電流の流れを開閉する主電源スイッチ38とを有する電気自動車において、
前記開閉指令手段39から主電源スイッチ38をオフとするオフ信号を受けると、前記コンデンサ33aに蓄電されている電荷により、前記駆動輪である左右輪、または前後輪に互いに逆回転方向のトルクが生じるように前記各モータ6のコイルへ電流を流す制御を行う相互逆回転放電制御手段40を設けたことを特徴とする。
なお、この明細書で言う「インホイール形式のモータ」とは、必ずしもモータ6が車輪内に設けられていなくても良く、モータ6と共に一体の組立部品とされたインホイールモータ装置8の一部が車輪2内に設けられているものを含む。
【0008】
この構成によると、主電源スイッチ38をオフさせたときに、相互逆回転放電制御手段40の制御によって、駆動輪である左右輪または前後輪に互いに逆回転方向のトルクが生じるように、モータ6のコイルへ電流を流す。これにより、平滑用のコンデンサ33aの電荷がモータ6のコイルで消費され、放電される。この放電のためのモータコイルの電流により、トルクが発生するが、左右輪の間または前後輪の間でトルクの方向が逆方向であり、また平滑用のコンデンサ33aの電荷は僅かであるため、車両の慣性やタイヤ・路面間の静止摩擦抵抗により、車両が動くまでには至らない。
このように、インホイールモータ型の電気自動車でありながら、主電源オフ時に、車両に動きを生じさせることなく、平滑用のコンデンサ33aの電荷をモータコイルで消費させて放電させることができ、安全性の向上を図ることができる。また、電荷をモータコイルで消費させるので、電荷の消費用の抵抗等を設ける必要がなく、強電系電気部品の増加を伴うことなく、制御のみで安全な放電を実現できる。
【0009】
この発明において、前記各モータ6は、このモータ6と、前記駆動輪を支持する車輪用軸受4と、前記モータ6の回転を減速して前記車輪用軸受4の回転側輪に伝える減速機7とでなるインホイールモータ装置8を構成するものであっても良い。減速機7を備えたインホイールモータ装置8では、モータ6の僅かなトルクでも車両の動きに繋がるが、上記のように左右輪の間または前後輪の間でトルクの方向を逆方向とすることで、車両の動きを生じさせることなく、モータコイルで電荷を消費させて平滑用のコンデンサ33aの放電が行える。
【0010】
この発明において、前記相互逆回転放電制御手段40は、前記開閉指令手段39から主電源スイッチ38をオフするオフ信号を受信すると、前記インバータ31の出力電圧が、設定された放電電圧の閾値未満または閾値以下になるまでインバータ31が動作を開始し、閾値未満または閾値以下になるとインバータ31の動作が停止しするものであっても良い。
主電源スイッチ38のオフ後に、インバータ31の動作を開始することで、モータ6のコイルによる電荷の消費が行える。また、インバータ31の出力電圧を閾値と比較してインバータ31の動作を停止することで、必要な放電が行われたことを確認し、インバータ31を電流遮断状態とすることができる。これにより、必要な放電後はモータ6を完全に停止させ、安全性を向上させることができる。
【0011】
この発明において、2輪駆動の場合、前記モータ6が設置されている駆動輪は左右の前輪であっても良く、また左右後輪であっても良い。その場合、左右輪に逆回転方向のトルクが生じるようにモータコイルに電流を流すことで、車両に動きを生じさせることなく放電を行わせることができる。
【0012】
4輪駆動、つまりモータが設置されている駆動輪が左右の前輪と左右の後輪であっても良い。その場合、前後輪に互いに逆回転方向のトルクが生じるように電流を流すことで、車両に動きを生じさせることなく放電を行わせることができる。トルクを生じさせる回転方向は、前後輪が互いに近づく方向であっても、互いに遠ざかる方向であっても良い。
【発明の効果】
【0013】
この発明の電気自動車のコンデンサ電荷放電装置は、それぞれ独立したインホイール形式のモータで駆動される駆動輪を2輪以上有し、前記各モータを駆動する電源系として、蓄電池と、この蓄電池から電力供給されて前記各モータをそれぞれ駆動する複数のインバータと、前記インバータに並列接続された平滑用のコンデンサと、電源操作手段の操作に応じて開閉指令を出す開閉指令手段と、前記インバータおよびコンデンサの並列回路部よりも蓄電池側に設けられ前記開閉指令手段からの開閉指令に応答して蓄電池とインバータ間の電流の流れを開閉する主電源スイッチとを有する電気自動車において、前記開閉指令手段から主電源スイッチをオフとするオフ信号を受けると、前記コンデンサに蓄電されている電荷により、前記駆動輪である左右輪、または前後輪に互いに逆回転方向のトルクが生じるように前記各モータのコイルへ電流を流す制御を行う相互逆回転放電制御手段を設けたため、インホイールモータ型の電気自動車でありながら、主電源オフ時に、車両に動きを生じさせることなく、平滑用のコンデンサの電荷をモータコイルで消費させて放電させることができ、安全性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明の一実施形態に係る電気自動車のコンデンサ電荷放電装置を備えた車両の概念構成を示す平面図である。
図2】そのインバータ装置の回路図である。
図3】同コンデンサ電荷放電装置の相互逆回転放電制御手段の制御を示す流れ図である。
図4】2輪駆動車における相互逆回転放電制御手段による各駆動輪のトルク発生方向を示す説明図である。
図5】4輪駆動車における相互逆回転放電制御手段による各駆動輪のトルク発生方向を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の実施形態を図1ないし図5と共に説明する。図1は、この実施形態のコンデンサ電荷放電装置を装備した電気自動車の概念構成を示す平面図である。この電気自動車は、車体1の左右の後輪となる車輪2が駆動輪とされ、左右の前輪となる車輪3が従動輪とされた4輪の自動車である。前輪となる車輪3は操舵輪とされている。駆動輪となる左右の車輪2,2は、それぞれ独立のインホイール型のモータ6により駆動される。モータ6の回転は、減速機7および車輪用軸受4の回転側輪を介して車輪2に伝達される。これらモータ6、減速機7、および車輪用軸受4は、互いに一つの組立部品であるインホイールモータ装置8を構成している。減速機7は、例えばサイクロイド式の減速機であり、10以上の高い減速比を持つ。インホイールモータ装置8は、モータ6が車輪2に近接して設置されており、一部または全体が車輪2内に配置される。蓄電池19は、モータ6の駆動、および車両全体の電気系統の電源として用いられる。
【0016】
制御系を説明する。自動車全般の統括制御を行うメインのECU(電気制御ユニット)である統括制御部21と、この統括制御部21の指令に従って各走行用のモータ6の制御をそれぞれ行う複数(図示の例では2つ)のインバータ装置22とが、車体1に搭載されている。統括制御部21とインバータ装置22とで、モータ駆動装置20が構成される。統括制御部21は、コンピュータとこれに実行されるプログラム、並びに各種の電子回路等で構成される。なお、統括制御部21と各インバータ装置22の弱電系とは、互いに共通のコンピュータや共通の基板上の電子回路で構成されていても良い。
【0017】
統括制御部21は、トルク配分手段48を有していて、トルク配分手段48は、アクセル操作部16の出力するアクセル開度の信号と、ブレーキ操作部17の出力する減速指令と、操舵手段15の出力する旋回指令とから、左右輪の走行用モータ6,6に与える加速・減速指令をトルク指令値として生成し、各インバータ装置22へ出力する。アクセル操作部16およびブレーキ操作部17は、それぞれアクセルペダルおよびブレーキペダル等のペダルと、そのペダルを動作量を検出するセンサとでなる。操舵手段15は、ステアリングホイールとその回転角度を検出するセンサとでなる。統括制御部21は、上記の制御の他に、車両に設けられた車速センサ、荷重センサ、車輪回転センサ(いずれも図示せず)等の各種センサからの信号に基づいて、車両の各部の制御を行う機能を備える。
【0018】
インバータ装置22は、各モータ6に対して設けられた電力変換回路部であるパワー回路部28と、このパワー回路部28を制御するモータコントロール部29とで構成される。モータコントロール部29は、このモータコントロール部29が持つインホイールモータ装置8に関する各検出値や制御値等の情報を統括制御部21に出力する機能を有する。 パワー回路部28は、蓄電池19の直流電力をモータ6の駆動に用いる3相の交流電力に変換するインバータ31と、このインバータ31を制御する手段であるPWMドライバ32とで構成される。
【0019】
図2において、モータ6は、3相の同期モータ、例えばIPM型(埋込磁石型)同期モータ等からなる。インバータ31は、半導体スイッチング素子である複数の駆動素子31aで構成され、モータ6の3相(U,V,W相)の各相の駆動電流をパルス波形で出力する。PWMドライバ32は、入力された電流指令をパルス幅変調し、前記各駆動素子31aにオンオフ指令を与える。上記パルス幅変調は、例えば正弦波駆動する電流出力が得られるように行う。パワー回路部28の弱電回路部であるPWMドライバ32と前記モータコントロール部29とで、インバータ装置22における弱電回路部分である演算部33が構成される。演算部33は、コンピュータとこれに実行されるプログラム、および電子回路により構成される。演算部33は、モータ6の回転角度を検出する角度検出器36の検出値等を用い、ベクトル制御等でモータ電流の制御を行う。
【0020】
インバータ装置22には、この他に、蓄電池19とインバータ31間に並列に介在させた平滑用のコンデンサ33aによる平滑部33が設けられている。平滑部33には、コンデンサ33aが設けられていても良い。
【0021】
主電源スイッチ38は、蓄電池19から各インバータ装置22や車両の各部の電気機器への電力の供給・遮断を切り換えるスイッチである。主電源スイッチ38は電磁接触器等からなり、図1のように開閉指令手段39からの開閉指令に応答して開閉させられる。開閉指令手段39は、電源操作手段18の操作に応じて開閉指令を主電源スイッチ38へ与える手段である。電源操作手段18は、キースイッチであっても、またボタンスイッチ等であっても良い。開閉指令手段39は、図示の例では統括制御部21に設けているが、統括制御部21とは別に設けられていても良く、例えば電源操作手段18と一体であっても良い。
【0022】
この実施形態は、上記のような構成の電気自動車において、次の機能を持つ相互逆回転放電制御手段40を設けたものである。この相互逆回転放電制御手段40は、前記開閉指令手段39から主電源スイッチ38をオフとするオフ信号を受けると、前記平滑用のコンデンサ33aに蓄電されている電荷により、駆動輪である後ろ側左右の車輪2,2に、互いに逆回転方向のトルクが生じるように各モータ6,6のステータのコイルへ電流を流す制御を行う手段である。すなわち、左右のいずれか一方の車輪2を前進側へ、他方の車輪2を後退側へ回転させるようにモータ6,6のコイルへ電流を流す。相互逆回転放電制御手段40は、例えば統括制御部21に設けられるが、インバータ装置22に設けても良い。
【0023】
相互逆回転放電制御手段40は、具体的には図3で流れ図で示す制御を行う。主電源のオフ信号を受ける(ステップS1)と、インバータ31の動作を開始する(S2)。このインバータ31の動作開始は、左右の車輪2,2に、互いに逆回転方向のトルクが生じるように各モータ6,6のコイルへ電流を流すように行う。例えば、矢印A,Bで示すように、右側の車輪2が後退方向に、左側の車輪2が前進方向のトルクを受けるようにする場合、右側の車輪2を駆動するインバータ31では、モータ6のコイルに、定められた極低速の後退方向の回転磁界が生じるようにインバータの動作を開始する。左側の車輪2を駆動するインバータ31では、モータ6のコイルに、定められた極低速の前進方向の回転磁界が生じるようにインバータの動作を開始する。なお、左右のいずれの車輪2,2を後退方向とするか、また回転磁界の回転進行速度をどの程度とするかは、相互逆回転放電制御手段40に適宜設定しておく。
【0024】
このようにモータ6のコイルへ電流を流してコンデンサ33aの電荷を放電させ、この間、インバータ31の出力であるインバータ電圧VINV を、設定された放電電圧閾値VTHR と比較し(S3)、インバータ電圧VINV が放電電圧閾値VTHR 未満となると、インバータ31の動作を停止する(S4)。
【0025】
このコンデンサ電荷放電装置によると、電源装置手段18の操作等によって、開閉指令手段39により主電源スイッチ38のオフ指令が出力させると、主電源スイッチ38はこの指令に応答して主電源スイッチ38をオフとする。このとき、開閉指令手段39からの前記オフ指令は、相互逆回転放電制御手段40にも与えられ、相互逆回転放電制御手段40の制御によって、駆動輪である後ろ側左右の車輪2,2に互いに逆回転方向のトルクが生じるように、各車輪2,2のモータ6のコイルへ電流を流す。これにより、平滑用のコンデンサ33aの電荷がモータ6のコイルで消費され、放電される。この放電のためのモータコイルの電流により、トルクが発生するが、左右の車輪2,2のトルクの方向が互いに逆方向であり、また平滑用のコンデンサ33aの電荷は僅かであるため、車両の慣性やタイヤ・路面間の静止摩擦抵抗により、車両が動くまでには至らない。減速機7を備えたインホイールモータ装置8では、モータ6の僅かなトルクでも車両の動きに繋がるが、上記のように左右車輪2,2の間でトルクの方向を互いに逆方向とすることで、車両の動きを生じさせることなく、モータコイルで電荷を消費させ、平滑用のコンデンサの放電が行える。
【0026】
このように、インホイールモータ型の電気自動車でありながら、主電源スイッチ38のオフ時に、車両に動きを生じさせることなく、平滑用のコンデンサ33aの電荷をモータコイルで消費させて放電させることができ、安全性の向上を図ることができる。また、電荷をモータコイルで消費させるので、電荷の消費用の抵抗等を設ける必要がなく、強電系電気部品の増加を伴うことなく、制御のみで安全な放電を実現できる。
【0027】
上記の放電を行わせる間、インバータ電圧VINV を監視し、インバータ電圧VINV が放電電圧閾値VTHR 未満となると、インバータ31の動作を停止するため、必要な放電後はモータ6を完全に停止させ、安全性を向上させることができる。
【0028】
なお、上記実施形態は、車両が2輪駆動で後輪駆動である場合につき説明したが、この発明は、2輪駆動で前輪駆動である場合にも適用できる。前輪駆動の場合、主電源遮断後にコンデンサ33aを放電させるときは、例えば図4(B)に示すように、駆動輪である前側の左右の車輪3,3に互いに逆回転方向のトルクが生じるように、各モータのコイルへ電流を流す制御を相互逆回転放電制御手段によって行う。
また、4輪駆動である場合は、主電源遮断後にコンデンサ33aを放電させるときは、例えば図5(A)または(B)に示すように、互いに左右の同じ方向にある前側車輪3と後ろ側の車輪2とに,互いに逆回転方向のトルクが生じるように、各モータのコイルへ電流を流す制御を相互逆回転放電制御手段によって行う。
なお、図4図5において、矢印は車輪2,3のトルク付与による進行方向を示す。
【符号の説明】
【0029】
1…車体
2,3…車輪
4…車輪用軸受
6…モータ
7…減速機
8…インホイールモータ装置
18…電源操作手段
19…蓄電池
21…統括制御部
22…インバータ装置
31…インバータ
33a…平滑用のコンデンサ
38…主電源スイッチ
39…開閉指令手段
40…相互逆回転放電制御手段
図1
図2
図3
図4
図5